(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リリーフ弁は、作動油が受圧する受圧部と、前記受圧部に作用する作動油の圧力が高くなるにつれて前記設定圧が低く且つ前記受圧部に作用する作動油の圧力が低くなるにつれて前記設定圧が高くなる設定部材と、を有している請求項1又は2に記載の作業機の油圧システム。
前記油圧機器は、作動油によって回転する油圧モータと、前記油圧モータの回転により回転するファンと、前記油圧モータの一次側と二次側とを連結するバイパス油路と、前記バイパス油路に設けられた作動弁とを有している請求項1に記載の作業機の油圧システム。
前記リリーフ弁は、前記油圧ポンプと前記油圧機器との間の油路に設けられ、前記フィルタに掛かる圧力の上昇が予測される所定条件下では、前記作動弁を作動させることにより前記ファンの回転数を上昇させる制御装置を備えている請求項6又は7に記載の作業機の油圧システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、流体制御弁によって、フィルタの目詰まり状態が検出されたときには、フィルタの目詰まり状態が検出されていないときに比べて、作業具に供給される圧油の圧力が低下させている。特許文献1では、作業具に供給される圧油の圧力を低下させることによってフィルタの保護を行っている。しかしながら、特許文献1は、作業具からタンクに戻る油路に設けられるフィルタを保護できるものの、油圧機器等の下流側に設けられるフィルタを保護を行うことができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の問題点に鑑み、油圧機器の下流に設けられたフィルタを保護することができる作業機の油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業機の油圧システムは、作動油を貯留するタンクと、作動油を吐出する油圧ポンプと、作動油により作動する油圧機器と、前記油圧機器の下流に設けられたフィルタと、前記フィルタと油圧機器とを接続する第1油路と、前記フィルタの上流に設けられ、
前記第1油路の作動油を受圧する受圧部を有し且つ前記受圧部
が受圧した
前記第1油路の作動油の圧力に基づいてリリーフする設定圧が可変するリリーフ弁と、前記第1油路と前記リリーフ弁の前記受圧部とを接続
し且つ、前記第1油路の作動油の圧力を前記受圧部に作用させる第2油路と、を備えている。
【0007】
作業機の油圧システムは、作動油を吐出する油圧ポンプと、作動油により作動する油圧機器と、前記油圧機器の下流に設けられたフィルタと、前記油圧機器の一次側と二次側とを連結するバイパス油路と、前記フィルタと油圧機器とを接続する第1油路と、前記フィルタの上流に設けられ、前記作動油を受圧する受圧部を有し且つ前記受圧部で受圧した作動油の圧力に基づいてリリーフする設定圧が可変するリリーフ弁と、前記バイパス油路と前記リリーフ弁の前記受圧部とを接続する第3油路と、を備え、
前記リリーフ弁の受圧部は、前記第3油路を介して前記バイパス油路の作動油の圧力が作用し、当該受圧部に作用した作動油の圧力に基づいてリリーフする設定圧が可変する。
【0008】
作業機の油圧システムは、作動油を吐出する油圧ポンプと、作動油により作動する油圧機器と、前記油圧機器の下流に設けられたフィルタと、前記フィルタと油圧機器とを接続する第1油路と、前記フィルタの上流に設けられ、作動油が入る入力ポートを有し且つ前記入力ポートに入った作動油の温度に基づいてリリーフする設定圧が可変するリリーフ弁と、前記油圧機器の一次側と二次側とを連結するバイパス油路と、を備え、
前記入力ポートは、リリーフする作動油が入るポートと、前記作動油とは別に前記バイパス油路の作動油が入るポートとを含む。
【0010】
また、前記リリーフ弁は、作動油が受圧する受圧部と、前記受圧部に作用する作動油の圧力が高くなるにつれて前記設定圧が低く且つ前記受圧部に作用する作動油の圧力が低くなるにつれて前記設定圧が高くなる設定部材と、を有している。
また、前記リリーフ弁は、前記入力ポートに入った作動油の温度が高くなるにつれて前記設定圧が低く且つ前記入力ポートに入った作動油の温度が低くなるにつれて前記設定圧が高くなる設定部材を有している。
【0011】
また、前記油圧機器は、作動油によって回転する油圧モータと、前記油圧モータの回転により回転するファンと、前記油圧モータの一次側と二次側とを連結するバイパス油路と、前記バイパス油路に設けられた作動弁とを有している。
また、前記油圧機器は、作動油によって回転する油圧モータと、前記油圧モータの回転により回転するファンと、前記バイパス油路に設けられた作動弁とを有している。
【0012】
また、前記リリーフ弁は、前記油圧ポンプと前記油圧機器との間の油路に設けられている。
また、前記リリーフ弁は、前記油圧ポンプと前記油圧機器との間の油路に設けられ、前記フィルタに掛かる圧力の上昇が予測される所定条件下では、前記作動弁を作動させることにより前記ファンの回転数を上昇させる制御装置を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、油圧機器の下流に設けられたフィルタを保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図6は、本発明に係る作業機の側面図を示している。
図6では、作業機の一例として、スキッドステアローダを示している。但し、本発明に係る作業機はスキッドステローダに限定されず、例えば、コンパクトトラックローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0016】
作業機1は、機体(車体)2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5A、5Bとを備えている。
機体2上にはキャビン3が搭載されている。キャビン3内の後部には運転席8が設けられている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者の前側(
図6の左側)を前方、運転者の後側(
図6の右側)を後方、運転者の左側(
図6の手前側)を左方、運転者の右側(
図6の奥側)を右方として説明する。また、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
【0017】
キャビン3は、機体2に搭載されている。作業装置4は、作業を行う装置で、機体2に装備されている。走行装置5Aは、機体2を走行させる装置であって、機体2の左側に設けられている。走行装置5Bは、機体2を走行させる装置であって、機体2の右側に設けられている。機体2内の後部には原動機7が設けられている。原動機7は、ディーゼルエンジン(エンジン)である。なお、原動機7は、エンジンに限定されず、電動モータ等であってもよい。
【0018】
運転席8の左側には、走行レバー9Lが設けられている。運転席8の右側には、走行レバー9Rが設けられている。左側の走行レバー9Lは、左側の走行装置5Aを操作するものであり、右側の走行レバー9Rは、右側の走行装置5Bを操作するものである。
作業装置4は、ブーム10と、バケット11と、リフトリンク12、制御リンク13と、ブームシリンダC1と、バケットシリンダC2とを有する。ブーム10は、機体2の左及び右に設けられている。バケット11は、ブーム10の先端(前端)に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10の基部(後部)を支持する。ブームシリンダC1は、ブーム10を上又は下に駆動する。
【0019】
詳しくは、リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダC1は、機体2の左側及び右側に設けられている。リフトリンク12の上部は、ブーム10の基部の上部に枢支されている。リフトリンク12の下部は、機体2の後部の側部に枢支されている。制御リンク13は、リフトリンク12の前方に配置されている。制御リンク13の一端は、ブーム10の基部の下部に枢支され、他端が機体2に枢支されている。
【0020】
ブームシリンダC1は、ブーム10を昇降する油圧シリンダである。ブームシリンダC1の上部は、ブーム10の基部の前部に枢支されている。ブームシリンダC1の下部は、機体2の後部の側部に枢支されている。ブームシリンダC1を伸縮すれば、リフトリンク12及び制御リンク13によってブーム10が上下に揺動する。バケットシリンダC2は、バケット11を揺動する油圧シリンダである。バケットシリンダC2は、バケット11の左部と左のブームとの間を連結すると共に、バケット11の右部と右のブームとの間を連結する。なお、ブーム10の先端(前部)には、バケット11の代わりに、油圧圧砕機,油圧ブレーカ,アングルブルーム,オーガー,パレットフォーク,スイーパー,モア,スノウブロア等の予備アタッチメントが装着可能とされている。
【0021】
走行装置5A,5Bは、本実施形態では前輪5F及び後輪5Rを有する車輪型の走行装置5A,5Bが採用されている。なお、走行装置5A,5Bとしてクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置5A,5Bを採用してもよい。
次に、スキッドステアローダ1に設けられた作業系油圧回路(作業系油圧システム)30について説明する。
【0022】
図1に示すように、作業系油圧システム30は、少なくとも予備アタッチメント等を作動させるシステムである。なお、作業系システム30は、予備アタッチメントの他に、ブーム10、バケット11等を作動させることが可能であるが、ブーム10及びバケット11を作動させる回路は従来と同様であるため、説明を省略する。
作業系システム30は、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2と、制御弁56とを備えている。
【0023】
第1油圧ポンプP1は、原動機7の動力によって作動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、タンク(作動油タンク)22に貯留された作動油を吐出可能である。
第2油圧ポンプP2は、第1油圧ポンプP1とは異なる位置に設置され且つ、原動機7の動力によって作動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、作動油タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。なお、説明の便宜上、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油のことを「パイロット油」、パイロット油の圧力のことを「パイロット圧」という。
【0024】
第1油圧ポンプP1の吐出側には、メイン油路(油路)39が設けられている。このメイン油路39には、制御弁56が接続されている。制御弁56は、切換可能な弁であって、予備アタッチメントに装着された油圧アクチュエータ33を制御可能な弁である。油圧アクチュエータ33とは、油圧シリンダ、油圧モータ等である。
制御弁56は、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。制御弁56は、パイロット圧によって、第1位置62a、第2位置62b、第3位置(中立位置)62cに切り換わる。即ち、制御弁56は、第1位置62a、第2位置62b及び第3位置62cに切り換わることによって、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ33へ向かう作動油の方向、流量及び圧力を制御する。
【0025】
制御弁56には、給排油路83が接続されている。給排油路83の一端は、制御弁56の給排ポートに接続され、給排油路83の中途部は、接続部材50に接続され、給排油路83の他端部は、油圧アクチュエータ33に接続される。
詳しくは、給排油路83は、制御弁56の第1給排ポートと接続部材50の第1ポートとを接続する第1給排油路83aを含んでいる。また、給排油路83は、制御弁56の第2給排ポートと接続部材50の第2ポートとを接続する第2給排油路83bとを含んでいる。つまり、制御弁56を操作することによって、制御弁56から第1給排油路83aに向けて作動油を流したり、制御弁56から第2給排油路83bに向けて作動油を流すことができる。
【0026】
制御弁56は、複数の比例弁60によって操作される。比例弁60は、励磁によって開度が変更可能な電磁弁である。複数の比例弁60は、第1比例弁60Aと、第2比例弁60Bである。第1比例弁60A及び第2比例弁60Bには、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油(パイロット油)が供給可能である。
制御弁56と、比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)とは、制御油路86により接続されている。
【0027】
制御油路86は、パイロット油を比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)を介して制御弁56に流す油路である。制御油路86は、鋼管、パイプ、ホース等で構成されている。制御油路86は、第1比例弁60Aと制御弁56の受圧部61aとを接続する第1制御油路86aと、第2比例弁60Bと制御弁56の受圧部61bとを接続する第2制御油路86bとを含んでいる。
【0028】
比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)の操作(開閉)は、制御装置90で行う。制御装置90は、CPU等から構成されている。制御装置90には、操作部材93が接続されている。制御装置90には、操作部材93の操作量(例えば、スライド量、揺動量等)が入力される。操作部材93は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。
【0029】
制御装置90は、操作部材93が操作されると、当該操作部材93の操作量に応じた電流を、第1比例弁60Aのソレノイド、或いは、第2比例弁60Bのソレノイドに印加する。即ち、第1比例弁60Aや第2比例弁60Bは、操作部材93の操作量に応じて開度が変更される。
例えば、操作部材93を一方向に揺動、或いは、スライドすることによって、第1比例弁60Aの開度を調整した結果、受圧部61aに作用するパイロット圧が所定以上になると、制御弁56のスプールが移動して当該制御弁56は、第3位置62cから第1位置62aに切り換わる。また、例えば、操作部材93を他方向に揺動、或いは、スライドすることによって、第2比例弁60Bの開度を調整した結果、受圧部61bのパイロット圧が所定以上になると、制御弁56のスプールが移動して当該制御弁56は、第3位置62cから第2位置62bに切り換わる。以上のように、制御弁56を切り換えることによって、予備アクチュエータ33を作動させることができる。
【0030】
図1に示すように、第2油圧ポンプP2の吐出側には、油路(吐出油路)40が接続されている。また、吐出油路40には、油圧機器51と、フィルタ53と、比例弁60(第1比例弁60A、第2比例弁60B)が接続されている。即ち、吐出油路40は、第2油圧ポンプP2と油圧機器51とを接続する油路40aと、油圧機器51とフィルタ53とを接続する油路40bと、フィルタ53と比例弁60とを接続する油路40cとを含んでいる。
【0031】
油圧機器51は、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油(パイロット油)により作動する機器である。フィルタ53は、作動油を濾過するフィルタであって、油圧機器51の下流側に設けられている。
具体的には、油圧機器51は、冷却を行う冷却機器である。この冷却機器51は、例えば、原動機7の周囲に配置され、原動機7等を冷却する。なお、冷却機器51の配置は、前述したものに限定されない。
【0032】
冷却機器51は、油圧モータ51aと、ファン51bと、作動弁51cとを有している。油圧モータ51aは、作動油によって回転するモータで、一次側のポート(入力ポート)51nが油路40aに接続され、二次側のポート(出力ポート)51uが油路40bに接続されている。ファン51bは、油圧モータ51aの回転により回転可能であって、当該油圧モータ51aの回転軸に設けられている。作動弁51cは、油圧モータ51a(ファン51b)の回転速度を変更するための弁であって、ソレノイドを励磁することによって開度が変更する電磁弁で構成されている。
【0033】
冷却機器51の一次側と冷却機器51の二次側とは、バイパス油路40dによって接続されている。バイパス油路40dの中途部に、作動弁51cが接続されている。詳しくは、バイパス油路40dは、油圧モータ51aの入力ポート51nの下流側と、油圧モータ51aの出力ポート51uの上流側とを接続している。バイパス油路40dに作動弁51cが接続されている。
【0034】
作動弁51cの制御は、制御装置90によって行う。例えば、原動機7の周囲の雰囲気温度(雰囲気温度)、或いは、原動機7の駆動系の温度(駆動温度)が予め定められた所定温度に達すると、制御装置90は、冷却機器51を駆動させる信号(駆動信号)を作動弁51cに出力する。作動弁51cに駆動信号が入力されると、当該作動弁51cの開度を所定値に設定にする。そうすると、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油は、油圧モータ51aへ流入し、油圧モータ51aは開度に応じて回転する。一方、雰囲気温度、或いは、駆動温度が予め定められた所定温度未満になると、制御装置90は、停止させる信号(停止信号)を作動弁51cに出力する。作動弁51cに停止信号が入力されると、当該作動弁51cを全開する(開度を最も大きくする)。そうすると、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油の一部又は全部は、バイパス油路40dに流入して、油圧モータ51aは停止する。即ち、バイパス油路40d及び作動弁51cの開度の変更によって、油圧モータ51aへ流入する作動油の流量を制御することができる。
【0035】
なお、制御装置90による作動弁51cの制御(冷却機器51の制御)は、上述したものに限定されない。例えば、雰囲気温度、或いは、駆動温度が予め定められた所定温度未満である場合には、油圧モータ51aを低速で回転させる構成であってもよいし、雰囲気温度或いは駆動温度以外の要因で、油圧モータ51a(ファン51b)を回転させてもよい。
【0036】
また、制御装置90は、フィルタ53に掛かる圧力の上昇が予測される所定条件下では、作動弁51cを作動させることによりファン51bの回転数を上昇させてもよい。例えば、低温の環境下において原動機7を始動する場合(所定条件1)、原動機7の回転数を上昇させる場合(所定条件2)、原動機7の回転数を高回転にする場合(所定条件3)等は、フィルタ53に掛かる圧力の上昇が予測される。所定条件1〜所定条件3の条件である場合には、制御装置90は、ファン51bの回転数を、条件が整う前の回転数よりも上昇させる。このようにファン51bの回転数を上昇させることによって、フィルタ53の上流側の作動油の圧力を事前に下げることができる。
【0037】
さて、油路40aの中途部、即ち、第2油圧ポンプP2と油圧モータ51aの入力ポート51nとの区間には、当該油路40aと作動油タンク22とを連結する油路40eが接続されている。油路40eの中途部には、リリーフ弁52Aが接続されている。リリーフ弁52Aは、作動油の圧力に基づいてリリーフする設定圧が可変する弁であって、設定圧を設定するための設定部材52aと、作動油を受圧する受圧部52bとを有している。
【0038】
設定部材52aは、スプリングを含んでいる。スプリングは、リリーフ弁52Aに内蔵された弁体を閉鎖する方向に付勢している。スプリングの付勢力によってリリーフ弁52Aの設定圧が決まる。受圧部52bは、作動油を受圧する部分である。ここで、受圧部52bに作動油の圧力を加えると、当該受圧部52bにスプリングの付勢力に抗する力(対向する力)が働き、受圧部52b等でスプリングを付勢力に抗する方向に押すため、設定圧を可変することができる。即ち、受圧部52bに作用する作動油の圧力が高くなるにつれて、スプリングを付勢方向とは反対方向に押す力が増加し、受圧部52bに作用する作動油の圧力が低くなるにつれて、スプリングを付勢方向とは反対方向に押す力が減少する。つまり、設定部材52aは、受圧部52bに作用する作動油の圧力が高くなるにつれて設定圧が低く且つ受圧部52bに作用する作動油の圧力が低くなるにつれて設定圧が高くなる。
【0039】
図1に示すように、フィルタ53と冷却機器51とを接続する油路(第1油路という)40bには、油路(第2油路という)40fが接続されている。第2油路40fは、第1油路40bとリリーフ弁52Aとを接続する油路である。第2油路40fの一端は、第1油路40bであって出力ポート51uとフィルタ53とを結ぶ区間に接続され、他端は、リリーフ弁52Aの受圧部52bに接続されている。したがって、第1油路40bの作動油の圧力が、第2油路40fを介してリリーフ弁52Aに作用する。
【0040】
以上、作業系油圧システム30によれば、リリーフ弁52Aを作動油の圧力に基づいてリリーフする設定圧が可変する弁とし、フィルタ53の上流側とリリーフ弁52Aとを第2油路40fで接続している。このようなことから、作動油が低温である場合等に、フィルタ53に大きな負荷が掛からないようにすることができる。
例えば、作動油の温度が0度以下の場合、特に、作動油の温度が氷点下10度(−10度)以下といった非常に低温である場合では、作動油の粘度が非常に高くなる。即ち、低温とは、作業機で一般的に用いられる粘度グレード(動粘度)の作動油における粘度が非常に高くなる温度域であって、この高い粘度の影響を受けて、油路における油圧が上昇しやすい温度である。作動油が低温である場合に、作動油をフィルタに流すと当該フィルタに大きな負荷が掛かることになる。
【0041】
本発明では、フィルタ53の上流側の第1油路40bに流れる作動油の圧力は、第2油路40fを介してリリーフ弁52Aの受圧部52bに作用する。ここで、第1油路40bの作動油の圧力が上がると、リリーフ弁52Aの受圧部52bに作用する圧力も、第1油路40bの作動油の圧力に連動して上がることになる。リリーフ弁52Aは、受圧部52bに作用した圧力が上昇すると設定圧が下がるため、油路40eから作動油タンク22へ流れる作動油が多くなる。その結果、作動油の温度が低く当該作動油の粘性が高くなる場合でも、第1油路40bに掛かる作動油の圧力は大きくなることが無いため、フィルタ53を保護することができる。
【0042】
一方、作動油の温度が高くなると、作動油の粘性は低くなり、第1油路40bの作動油の圧力が下がることになる。リリーフ弁52Aの受圧部52bに作用する作動油の圧力は下がることで設定圧は上昇し、油路40eから作動油タンク22へ流れる作動油が少なくなる。その結果、作動油の温度が高く当該作動油の粘性が低くなった場合には、より多くの作動油を冷却機器51に流すことができ、油圧モータ51a(ファン51b)を高速で回転させることができる。
【0043】
つまり、上述した作業系油圧システム30では、冷却機器51の下流側にフィルタ53を設けた構造において、作動油が低温時には、冷却機器51の上流側から作動油タンク22に戻す作動油を多くすることで冷却機器51の下流側のフィルタ53を保護する。さらに、作動油の温度が高温時には、冷却機器51の上流側から作動油タンク22に戻す作動油を減らすことで、冷却機器51の性能を確保して当該冷却機器51のファン51bを高回転に回転させることができる。
【0044】
図2は、上述した作業系油圧システム30の変形例を示す図である。
図2に示す変形例では、バイパス油路40dとリリーフ弁52Aとを第3油路40gで接続している。なお、変形例では、第3油路40g以外の構成は、上述した実施形態と同じである。
第3油路40gは、バイパス油路40dであって作動弁51cの下流側の部分と、リリーフ弁52Aの受圧部52bとを接続している。これによれば、作動油が低温であることに起因してバイパス油路40dの作動油の粘性が高い場合でも、バイパス油路40dの下流側に位置するフィルタ53を保護することができる。
【0045】
例えば、作動油が低温である場合は外気も低温であることが多い。そのため、制御装置90の制御により、油圧モータ51a(ファン51b)は停止或いは非常に低速で回転させることになる。ここで、油圧モータ51aを停止或いは低速で回転させている状況下では、作動弁51cは全開であるため、作動油の圧力は、バイパス油路40dを介してフィルタ53に作用することになる。本発明では、バイパス油路40dとリリーフ弁52Aの受圧部52bとを接続しているため、バイパス油路40dの作動油の圧力が受圧部52bに作用する。それゆえ、バイパス油路40dの作動油の圧力に連動して、油路40eから作動油タンク22へ流れる作動油を多くすることができる。その結果、バイパス油路40dの下流側にあるフィルタ53に大きな負荷が掛かることを防止することができる。
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態による作業系油圧システムを示す図である。
図3は、作業系油圧システムにおいて、第1実施形態で示したリリーフ弁52Aを、別のリリーフ弁52Bに変更した回路を示している。第2実施形態では、リリーフ弁52B以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0046】
リリーフ弁52Bは、作動油の温度に基づいてリリーフする設定圧が可変する弁であって、設定圧を設定するための設定部材52aと、第1入力ポート(第1入力部)52cと、第2入力ポート(第2入力部)52dと、出力ポート(出力部)52eとを有している。
設定部材52aは、温度によって形状或いは付勢力が変化するスプリングを含んでいる。スプリングは、リリーフ弁52Bに内蔵された弁体を閉鎖する方向に付勢している。第2入力ポート52dは、吐出油路40が接続され、出力ポート52eは作動油タンク22に接続されている。
【0047】
第1入力ポート52cは、作動油が入る部分であって第2油路40fが接続されている。第1入力ポート52cに作動油が入ると、当該第1入力ポート52cに入った作動油の温度がスプリングに伝わり、当該作動油の温度によってスプリングの形状等が変化して、設定圧が変わる。即ち、スプリングに伝わる作動油の温度が高くなるにつれてスプリングは付勢力が低下し、スプリングに伝わる作動油の温度が低くなるにつれてスプリングは付勢力が大きくなる。つまり、設定部材52aは、第1入力ポート52cに入った作動油の温度が高くなるにつれて設定圧が低く且つ第1入力ポート52cに入った作動油の温度が低くなるにつれて設定圧が高くなる。
【0048】
以上、作業系油圧システム30によれば、リリーフ弁52Bを作動油の温度に基づいてリリーフする設定圧が可変する弁とし、フィルタ53の上流側とリリーフ弁52Bとを第2油路40fで接続している。
これによれば、フィルタ53の上流側の第1油路40bに流れる作動油は、第2油路40f及び第1入力ポート52cを介してリリーフ弁52Bに入る。第1油路40bの作動油が低温であると、リリーフ弁52Bに入る作動油も低温である。リリーフ弁52Bは、第1入力ポート52cに入った温度に応じて設定圧が下がるため、油路40eから作動油タンク22へ流れる作動油が多くなる。その結果、作動油の温度が低く当該作動油の粘性が高くなる場合でも、第1油路40bに掛かる作動油の圧力は大きくなることが無いため、フィルタ53を保護することができる。
【0049】
一方、作動油の温度が高くなると、リリーフ弁52Bに入る作動油の温度も高くなり、設定圧は上昇し、油路40eから作動油タンク22へ流れる作動油が少なくなる。その結果、作動油の温度が高く当該作動油の粘性が低くなった場合には、より多くの作動油を冷却機器51に流すことができ、油圧モータ51a(ファン51b)を高速で回転させることができる。
【0050】
図4は、第2実施形態の作業系油圧システム30の変形例を示す図である。
図4に示す変形例では、バイパス油路40dとリリーフ弁52Bとを第3油路40gで接続している。なお、変形例では、第3油路40g以外の構成は、第2実施形態と同じである。
第3油路40gは、バイパス油路40dであって作動弁51cの下流側の部分と、リリーフ弁52Bの第1入力ポート52cとを接続している。これによれば、作動油が低温であってバイパス油路40dを流れる作動油の温度が低い場合でも、バイパス油路40dの下流側に位置するフィルタ53を保護することができる。
【0051】
上述した実施形態では、フィルタ53の上流側に配置する油圧機器51として冷却機器を例示したが、冷却機器以外の機器であっても適用可能である。また、第2油圧ポンプP2は、定容量型のギヤポンプに限定されず、斜板形可変容量アキシャルポンプであっても、その他のポンプであってもよい。
また、上述した実施形態では、第1油路40b(油圧機器51とフィルタ53とを繋ぐ油路)とリリーフ弁52Bとを繋ぎ、第1油路の作動油の温度が低下した場合にリリーフ弁52Bの設定圧を低くしていた。これに代え、フィルタ53の上流側であって第2油圧ポンプP2と油圧機器51とを繋ぐ油路40aとリリーフ弁52Bとを繋ぎ、油路40aの作動油の温度が低下した場合にリリーフ弁52Bの設定圧を低くしてもよい。
【0052】
図5A〜
図5Cは、上述した実施形態における変形例を示している。
図5Aに示すように、リリーフ弁52Cは、雰囲気の温度に基づいてリリーフする設定圧が可変する弁であってもよい。リリーフ弁52Cは、設定部材52fと、作業機1内の雰囲気(空気)が入る第3入力ポート(入力部)52gとを有している。設定部材52fは、第3入力ポート52gに入った空気の温度が低くなるにつれて設定圧が低く且つ空気の温度が高くなるにつれて設定圧が低くなる。リリーフ弁52C及びフィルタ53とは、エンジンルーム等の同じ場所に配置されている。そのため、雰囲気温度に応じてリリーフ弁52Cの設定圧を変更することができる。なお、第3入力ポート52gは作業機1の外気が入る構成であってもよい。
【0053】
図5Bに示すように、リリーフ弁52Dは、リリーフする作動油に応じて設定部材52aの設定圧が可変する弁であってもよい。即ち、上述した実施形態では、第1入力ポート52cを設けて、当該第1入力ポート52cに入った作動油によって設定圧を変更した。これに代え、リリーフ弁52Dは、リリーフされる作動油が入る第2入力ポート52dの温度によって設定部材52aの設定圧を変える。即ち、リリーフ弁52Dは、第2入力ポート52dから入った作動油する温度が設定部材52aに伝達する構成である。そのため、吐出油路40の作動油がリリーフ弁52Dに流れる場合に、設定部材52aの設定圧を変更することができる。
【0054】
図5Cに示すように、リリーフ弁52Dの第2入力ポート52dと出力ポート52eとの間に絞り部を有するバイパス油路40hを設ける。このようにすれば、リリーフ弁52Dが閉鎖状態でもバイパス油路40hを通って作動油を循環させることができるため、循環している作動油の温度によって、設定部材52aの設定圧を変更することができる。なお、
図5Cにおいて、バイパス油路40hは、出来る限り、第2入力ポート52d及び出力ポート52eに設けることが好ましい。また、パイパス油路40hを、リリーフ弁521Dを構成する本体内に組み込んでもよい。
【0055】
上述した実施形態の内容と、特開2013−117254号公報に示された全ての内容とのあらゆる組合せを適用してもよく、リリーフ弁の設定圧の変更に関して当該公報に示された内容と上述した実施形態の内容とを組み合わせ可能である。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。