(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、航海中には海が荒れることもあるため、自動車を輸送している際に、船舶が大きく揺れることもある。そのように、船舶が大きく揺れた場合には、運搬している自動車もサスペンションの影響で上下や水平方向に大きく揺れることもある。そのように、自動車が上下方向等に大きく揺れた場合には、緊結状態にあるベルトが一時的に弛み、その結果、一方のフックが外れ、自動車が固定されていない状態になる可能性があった。
【0005】
一般的に言えば、荷締具によって被固定物を固定している場合に、被固定物に引っ掛けられているフックの位置が移動することによって荷締具が弛み、フックが外れることによって、被固定物が固定されていない状態になる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、フックの位置が一時的に移動したとしても、フックが外れないようにすることができる荷締具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による荷締具は、被固定物に引っ掛けられる第1のフックと、固定位置に引っ掛けられる第2のフックと、第1及び第2のフックに連結されたベルトと、ベルトの締め付け、及び締め付けの解除を行うためのベルト締具と、ベルトが締め付け状態である場合に、第1のフックの位置が移動しても、ベルトの緊張を維持する緊張維持手段と、を備えたものである。
このような構成により、第1のフックの位置が移動したとしても、ベルトの緊張が維持されることになる。その結果、第1のフックが外れることを防止でき、被固定物が固定されていない状態になることを回避できる。
【0008】
また、本発明による荷締具では、緊張維持手段は、ベルトの長手方向に延びる弾性部材であり、弾性部材の両端は、ベルトが締め付け状態である場合に、両端を近づける方向に力が作用するようにベルトに固定されていてもよい。
このような構成により、第1のフックの位置が移動し、ベルトが弛んだとしても、その弛みを弾性部材の両端間において吸収することができる。その結果、ベルトの緊張を維持することができるようになる。
【0009】
また、本発明による荷締具では、緊張維持手段は、内部にベルトが通る筒状の弾性部材であってもよい。
このような構成により、ベルトが締め付け状態である場合であっても、または、締め付け状態でない場合であっても、緊張維持手段において弛んだベルトが、他の物に引っかかることがないようにできる。
【0010】
また、本発明による荷締具は、緊張維持手段が、外力のない状態では略U字形状である帯状弾性部材と、内部にベルトが通り、帯状弾性部材をベルトの長手方向に沿わせて覆う筒状カバーと、を備えてもよい。
このような構成により、第1のフックが移動し、ベルトが弛んだとしても、その弛みを緊張維持手段が略U字形状に変形することによって吸収することができる。その結果、ベルトの緊張を維持することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による荷締具によれば、第1のフックの位置が一時的に移動しても、フックが外れないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】同実施の形態による荷締具(締め付け解除状態)の側面図
【
図3】同実施の形態による荷締具(締め付け状態)の側面図
【
図5】同実施の形態におけるベルト締具の縦断面を示す部分図
【
図6】同実施の形態による荷締具の使用状態の一例を示す図
【
図7】同実施の形態による荷締具の他の構成を示す側面図
【
図8】同実施の形態による荷締具の他の構成を示す側面図
【
図9】同実施の形態おける緊張維持手段の他の構成を示す縦断面図
【
図10】同実施の形態による荷締具(締め付け解除状態)の他の構成を示す平面図
【
図11】同実施の形態による荷締具(締め付け解除状態)の他の構成を示す側面図
【
図12】同実施の形態による荷締具(締め付け状態)の他の構成を示す平面図
【
図13】同実施の形態による荷締具(締め付け状態)の他の構成を示す側面図
【
図14】同実施の形態おける緊張維持手段の他の構成を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による荷締具について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による荷締具は、ベルトが締め付け状態である場合に、ベルトの緊張を維持できる緊張維持手段を有するものである。
【0014】
図1は、本実施の形態による荷締具1を示す平面図である。
図2は、締め付け解除状態の荷締具1を示す側面図であり、
図3は、締め付け状態の荷締具1を示す側面図である。
図4は、荷締具1が有する緊張維持手段15のベルト13の長手方向の縦断面図である。
図5は、ベルト締具14のベルト13の長手方向の縦断面図である。
【0015】
本実施の形態による荷締具1は、第1のフック11と、第2のフック12と、ベルト13と、ベルト締具14と、緊張維持手段15とを備えている。第1及び第2のフック11,12の間は、ベルト13とベルト締具14とによって連結されており、そのベルト13の一部に緊張維持手段15が設けられている。
【0016】
第1のフック11は、被固定物に引っ掛けられる。その被固定物は、例えば、自動車であってもよく、または、自動車以外のものであってもよい。その被固定物は、揺れなどの影響によって、第1のフック11の引っ掛けられている箇所の位置が移動するものであってもよい。被固定物が自動車である場合には、上述のように、自動車の置かれている場所の揺れと、サスペンションの影響とによって、第1のフック11の引っ掛けられている箇所が一時的に上下方向や水平方向、またはそれらを組み合わせた方向に移動する可能性がある。第2のフック12は、固定位置に引っ掛けられる。その固定位置は、例えば、船舶の甲板や床面等のラッシングホールであってもよく、または、ラッシングホール以外の固定位置であってもよい。ベルト13は、第1及び第2のフック11,12に連結されている。なお、そのベルト13の連結は、直接であってもよく、または間接であってもよい。後者の場合には、ベルト13と、第1または第2のフック11,12とが、他のものを介して連結されていてもよい。本実施の形態では、ベルト13と第1のフック11とが直接連結されており、ベルト13と第2のフック12とがベルト締具14を介して連結されている場合について主に説明するが、ベルト13と第1のフック11とが連結金具等を介して間接連結されていてもよく、ベルト13と第2のフック12とが直接連結されていてもよい。
【0017】
ベルト締具14は、ベルト13の締め付け、及び締め付けの解除を行うためのものである。被固定物を固定する際には、ベルト締具14によって、ベルト13を締め付け状態にすることになる。一方、被固定物の固定を解除する際には、ベルト締具14によって、ベルト13の締め付け状態を解除することになる。そのベルト締具14は、レバー21と、アーム22と、ローレット軸23とを備えており、公知のベルト締具と同様に構成されている。すなわち、第2のフック12の開口12aにU字状のアーム22が通されている。そのアーム22に、一対の連結ピン22aを介して、レバー21が回動可能に連結されている。ローレット軸23は、そのレバー21の両側壁間を連結する軸部材である。そのローレット軸23の表面には、ローレット加工がなされており、締め付け状態のベルト13が不用意に緩むことを防止することができる。
図5(a)は、ベルト13の締め付け状態を示しており、
図5(b)は、ベルト13の締め付け解除状態を示している。ベルト13の締め付け解除状態(
図5(b))においては、ベルト13は、レバー21の天壁に設けられた開口21a,21bを通ると共に、ローレット軸23に接している。なお、その状態では、ベルト13は、ローレット軸23に接しているだけであり、押しつけられてはいないため、作業者がベルト13の端部を引っ張ることなどによって、ベルト13の長さ調整を行うことができる。一方、ベルト13にテンションを掛けた上で、アーム22に対してレバー21を回動させ、ベルト13の締め付け状態(
図5(a))にすると、ベルト13はローレット軸23に圧接され、ベルト13の緩みが防止されて緊締状態になる。ベルト13が締め付け状態である場合には、レバー21の両側壁から外方に突出した突起24がアーム22に当たることによってレバー21の回動が規制されることになり、ベルト13の締め付け状態が維持される。なお、第1及び第2のフック11,12、ベルト13、ベルト締具14の構成は、従来の荷締具と同様のものであり、その詳細な説明を省略する。なお、本実施の形態によるベルト締具14は、上記特許文献1,2に記載されているものと同様のものであるが、ベルト13の締め付け、及び締め付けの解除を行うことができるのであれば、その構成に限定されないことは言うまでもない。
【0018】
緊張維持手段15は、ベルト13が締め付け状態である場合に、第1のフック11の位置が移動しても、ベルト13の緊張を維持するものである。ここで、第1のフック11の位置が移動するとは、第1及び第2のフック11,12の間隔が短くなる方向に移動することである。ベルト13が締め付け状態であるため、両フック11,12の間隔が広がる方向には移動できないからである。通常、その移動は、一時的であり、その一時的な移動の後に、第1のフック11は元の位置に戻ることになる。また、ベルト13の緊張が維持されるとは、緊張維持手段15以外の箇所において、ベルト13が弛まないことであると考えてもよい。第1のフック11の位置の移動に応じて緊張維持手段15がベルト13の緊張を維持している場合には、ベルト13の張力は、第1のフック11の位置の移動前よりも弱くなってもよい。緊張維持手段15は、第1及び第2のフック11,12が外れないようにする程度の力で緊張を維持すればよいからである。緊張維持手段15は、ベルト13の長手方向に延びる弾性部材であってもよい。その弾性部材の両端は、ベルト13が締め付け状態である場合、すなわちベルト13が引っ張られている状態である場合に、その両端を近づける方向に力が作用するようにベルト13に固定されていてもよい。そのため、例えば、
図2,
図4(a)で示されるように、ベルト13が締め付け状態でない場合には、緊張維持手段15において、ベルト13が弛んでいてもよい。一方、
図3,
図4(b)で示されるように、ベルト13が締め付け状態である場合には、緊張維持手段15において、ベルト13が弛んでいないことが好適である。すなわち、ベルト13が締め付け状態である場合には、第1及び第2のフック11,12の間の力は、ベルト13によって伝わるようになっていることが好適である。そのようにすることによって、緊張維持手段15には、大きな強度が要求されないことになる。また、ベルト13が締め付け状態となった場合、すなわち、第1及び第2のフック11,12のそれぞれに反対方向の大きな力が掛かった場合であっても、緊張維持手段15の弾性部材が塑性変形を起こさないようになっていることが好適である。第1のフック11の位置の移動に応じたベルト13の弛みを緊張維持手段15によって吸収できるようにするためである。ベルト13に引っ張り力が掛かった状態(ベルト13の締め付け状態)でも、緊張維持手段15の弾性部材が弾性限界を超えない範囲の伸びとなるように緊張維持手段15がベルト13に固定されることによって、そのような塑性変形を防止できる。緊張維持手段15のベルト13への固定は、例えば、緊張維持手段15である弾性部材をベルト13に縫い付けたり、接着したりすることによって行ってもよい。また、
図1〜
図4で示されるように、緊張維持手段15は、内部にベルト13が通る筒状の弾性部材であってもよい。なお、後述するように、緊張維持手段15は、それ以外の構成であってもよいことは言うまでもない。また、その弾性部材は、例えば、織ゴムや編ゴムによって構成されてもよく、または弾性を有するその他の素材によって構成されてもよい。なお、緊張維持手段15の両端がベルト13に固定される場合について説明したが、両端以外の箇所もベルト13に固定されてもよい。
【0019】
次に、本実施の形態による荷締具1を用いた荷締作業について、被固定物が自動車であり、固定位置が船舶のラッシングホールである場合の例について説明する。
図6(a)で示されるように、作業者は、
図5(b)のようにレバー21の回動された荷締具1の第2のフック12を、床面101のラッシングホール101aに引っ掛け、第1のフック11を自動車の係止部102に引っ掛ける。その後、作業者は、ベルト13の端部を引っ張ることによってベルト13の緩みをなくした上で、レバー21を
図5(a)で示される位置に約180度回動させ、ベルト13を締め上げる。その結果、ベルト13が締め付け状態となり、自動車が船舶に固定されることになる。なお、その状態では、緊張維持手段15の弾性部材は伸びており、その両端が近づく方向に力が作用していることになる。また、この状態では、緊張維持手段15の内部のベルト13にも弛みは存在しない。
【0020】
その後、
図6(b)で示されるように、船舶の揺れに応じて自動車が下方向に揺れ、係止部102の位置が下方に移動したとする。すると、ベルト13が弛むことになるが、緊張維持手段15の両端間には、縮む方向に力が掛かっているため、緊張維持手段15の内部のベルト13が弛むことになり、第1及び第2のフック11,12間のベルト13の緊張は維持されることになる。その結果、第1のフック11または第2のフック12が外れることを防止でき、自動車の固定が解除されることを回避できる。その後、自動車が元の位置に戻ると、
図6(a)で示されるように、緊張維持手段15内のベルト13が緊締状態に戻ることになる。なお、ラッシングホール101aと、係止部102との間が荷締具1によって固縛されているため、自動車が
図6(a)の位置より上に移動することは防止されることになる。
【0021】
なお、上記説明では、ベルト締具14が第2のフック12に直接連結されている場合について説明したが、そうでなくてもよい。
図7で示されるように、ベルト締具14と、第2のフック12とが、ベルト33を介して連結されてもよい。
図7で示される荷締具1では、第1及び第2のフック11,12は、ベルト13と、ベルト33とによって連結されることになる。このように、荷締具1において、ベルトは、2以上の箇所に分かれていてもよい。
【0022】
また、上記説明では、荷締具1が1個の緊張維持手段15を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。
図8で示されるように、ベルト締具14と、第2のフック12との間のベルト33にも、緊張維持手段35が設けられていてもよい。また、上記説明では、第1のフック11とベルト締具14との間のベルト13に緊張維持手段15が設けられる場合について説明したが、第2のフック12とベルト締具14との間のベルトに緊張維持手段15が設けられてもよい。すなわち、緊張維持手段15が設けられる箇所は問わない。
【0023】
また、上記説明では、緊張維持手段15が、内部にベルト13の通る筒状の弾性部材である場合について説明したが、そうでなくてもよい。
図9で示されるように、緊張維持手段15は、筒状ではなく、帯状の弾性部材であり、ベルト13の片面側に設けられていてもよい。なお、
図9(a)は、締め付け解除状態における緊張維持手段15の断面図であり、
図9(b)は、締め付け状態における緊張維持手段15の断面図である。
【0024】
また、上記説明では、緊張維持手段15が筒状の弾性部材である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。荷締具1は、筒状の弾性部材である緊張維持手段15に代えて、帯状弾性部材45aと、筒状カバー45bとを有する緊張維持手段45を備えてもよい。その緊張維持手段45を有する荷締具1について、
図10〜
図14を用いて説明する。
図10,
図11は、その荷締具1の締め付け解除状態の平面図と側面図であり、
図12,
図13は、その荷締具1の締め付け状態の平面図と側面図であり、
図14は、緊張維持手段45の縦断面図である。帯状弾性部材45aは、外力のない状態では略U字形状をしており、例えば、帯状の弾性金属によって構成されてもよい。その帯状の弾性金属は、例えば、板バネであってもよい。なお、外力によって帯状弾性部材45aを略直線状に変形させることができるが、その際には、略U字形状に戻る方向に力が作用することになる。筒状カバー45bは、内部にベルト13が通り、帯状弾性部材45aをベルト13の長手方向に沿わせて覆うものである。筒状カバー45bの両端は、ベルト13に固定されていることが好適であるが、そうでなくてもよい。後者の場合であっても、筒状カバー45bの内部から外に帯状弾性部材45aが出ないようになっていることが好適である。また、筒状カバー45bは、上述の緊張維持手段15とは異なり、弾性を有していないもの、例えば、布や樹脂等で形成されたものであってもよい。ただし、筒状カバー45bは、帯状弾性部材45aの変形に追従できるものであることが好適である。また、筒状カバー45bは、帯状弾性部材45aの変形に応じてベルト13も変形するように、帯状弾性部材45aをベルト13に沿わせることが好適である。そのため、筒状カバー45bの内部において、ベルト13と筒状カバー45bの内壁との間の空間は、あまり大きくないことが好適である。その狭い空間に帯状弾性部材45aが存在することにより、ベルト13が帯状弾性部材45aの変形に従うことになる。
図11,
図14(a)で示されるように、締め付け解除状態においては、帯状弾性部材45aの弾性力によって緊張維持手段45においてベルト13が弛むことになる。一方、
図13,
図14(b)で示されるように、締め付け状態においては、帯状弾性部材45aが略一直線上に伸び、その帯状弾性部材45aが略U字形状に戻ろうとする弾性力によって、第1及び第2のフック11,12の間隔が近づく方向に力が掛かることになる。なお、締め付け状態においても、帯状弾性部材45aはベルト13に沿っているだけであり、ベルト13に固定されていないため、第1及び第2のフック11,12の間の力は、ベルト13によって伝わることになる。そのため、帯状弾性部材45aに大きな強度は要求されない。また、その締め付け状態において第1のフック11の位置が移動すると、緊張維持手段45において、ベルト13が略U字形状に変形することになり、第1及び第2のフック11,12間のベルト13の緊張は維持されることになる。その結果、第1のフック11または第2のフック12が外れることを防止できる。
【0025】
以上のように、本実施の形態による荷締具1によれば、第1のフック11の位置が移動したとしても、ベルト13の緊張が維持されることになる。そのため、第1のフック11が外れることを防止でき、自動車などの被固定物の固定状態を維持することができるようになる。その結果、自動車などの安全な輸送を実現できることになる。
【0026】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。