特許第6556587号(P6556587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6556587-吸気ダクト 図000002
  • 特許6556587-吸気ダクト 図000003
  • 特許6556587-吸気ダクト 図000004
  • 特許6556587-吸気ダクト 図000005
  • 特許6556587-吸気ダクト 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556587
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20190729BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F02M35/10 101E
   F02M35/16 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-207615(P2015-207615)
(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公開番号】特開2017-78380(P2017-78380A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】松橋 高広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−132913(JP,A)
【文献】 特開2000−120497(JP,A)
【文献】 特開2012−246933(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/031192(WO,A1)
【文献】 米国特許第6804360(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に有するダクト本体と、該ダクト本体の前記空気取入口に近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画する内部仕切り部品とを備え、該内部仕切り部品における仕切板の空気取入口に突き当たる突端部を短くして該空気取入口との間に連通部を形成し、前記各流路毎に生じる負圧の偏りを是正し得るようにしたことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
内部仕切り部品における仕切板の一部を幅方向に短くしてダクト本体の内壁面との間に連通部を形成したことを特徴とする請求項に記載の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多い為、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の空気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な空気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で空気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
この為、大型の運搬車両においては、図5に一例を示すように、キャブaの後面に上下方向に長く延在する吸気ダクトbを据え付け、該吸気ダクトbの上側に開口した空気取入口cから外気をエンジン用吸気として取り入れるようにしたものがあり、一般的に前記空気取入口cは、雨や雪の吸い込みを極力回避し得るようルーバーdにより被覆されるようにしてある。
【0004】
斯かる吸気ダクトbにおいては、いくら空気取入口cが大きな開口面積で形成されていても、最短経路で下流側へ流れようとする外気が空気取入口cの下側から偏って吸引されてしまい、該空気取入口cの上側からは殆ど外気が吸引されていないことが判明しており、このように空気取入口cの下側に外気の吸引が偏ることで流速が上昇して局所的な高流速ポジションが形成され、空気取入口cの下側から雨や雪や埃等を吸い込み易くなることが懸念されている。
【0005】
そこで、下記の特許文献1等においては、吸気ダクトbの外殻を成すダクト本体に内部仕切り部品を内蔵させて空気取入口cに近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画し、これにより空気取入口cから吸引される外気の流速分布を均一化することが既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5325764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようにダクト本体における空気取入口cに近い内部空間を複数の流路に分割すると、該各流路の夫々から外気が取り込まれるようになって空気取入口cの全領域が有効に活用され、該空気取入口cから吸引される外気の流速分布が従来よりも均一化されることになるが、その一方で各流路単位において個別に負圧の偏りが生じて吸気ダクトbとしての通気抵抗が大きくなってしまうという問題があり、また、各流路に負圧の偏りに伴う局所的な高流速ポジションが形成されて雨や雪や埃等を吸い込み易くなるという問題も依然として解消していなかった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を複数の流路に区画しても、通気抵抗の増加や局所的な高流速ポジションの形成を抑制し得る吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に有するダクト本体と、該ダクト本体の前記空気取入口に近い内部空間を仕切板により複数の流路に区画する内部仕切り部品とを備え、該内部仕切り部品における仕切板の空気取入口に突き当たる突端部を短くして該空気取入口との間に連通部を形成し、前記各流路毎に生じる負圧の偏りを是正し得るようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、各流路の夫々で負圧が相対的に大きくなっている箇所(圧力が相対的に低くなっている箇所)を連通部を介し隣の流路と連通させることで相互の圧力差が均され、前記各流路毎の負圧の偏りが是正されて吸気ダクトとしての通気抵抗の増加や局所的な高流速ポジションの形成が抑制されることになる。
【0011】
即ち、ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を複数の流路に区画した場合、前述の如き連通部がなければ、各流路毎に個別に負圧の偏りが生じてしまうが、これは空気取入口から取り込まれた外気が最短経路で下流側へ流れようとすることを要因として生じるものである。
【0012】
依って、各流路でどのような負圧の偏りが生じるかは、下流側のダクト構造のレイアウトにより決まり、各流路毎に同じ傾向で負圧の偏りが生じることになるため、ある流路で負圧が相対的に大きくなっている箇所は、隣の流路における負圧が相対的に小さくなっている箇所(圧力が相対的に高くなっている箇所)と隣り合うことになる。
【0013】
このため、ある流路で負圧が相対的に大きくなっている箇所を隣の流路における負圧が相対的に小さくなっている箇所と連通部を介し連通させると、相互の圧力差が均されて各流路毎の負圧の偏りが是正されることになる。
【0014】
更に、本発明の吸気ダクトをより具体的に実施するに際しては、内部仕切り部品における仕切板の空気取入口に突き当たる突端部を短くして該空気取入口との間に連通部を形成することに加え、内部仕切り部品における仕切板の一部を幅方向に短くしてダクト本体の内壁面との間に連通部を形成することも可能である
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、ダクト本体の空気取入口に近い内部空間を複数の流路に区画しても、通気抵抗の増加や局所的な高流速ポジションの形成を抑制することができるので、従来よりも圧力損失を低減して効率の良い吸気を実現することができ、しかも、雨や雪や埃等の吸い込みを大幅に抑制することもできるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の内部仕切り部品の詳細を示す斜視図である。
図3図1の吸気ダクトの正面図である。
図4図3の要部の詳細を示す断面図である。
図5】従来の吸気ダクトの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例における吸気ダクト1は、先に図5で説明した従来の吸気ダクトbの場合と同様に、運搬車両のキャブ2(図1参照)の後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側に開口した空気取入口3から外気をエンジン用吸気として取り入れるように構成されているが、前記空気取入口3を上側に備えて吸気ダクト1の外殻を成すダクト本体4と、該ダクト本体4の前記空気取入口3に近い内部空間に収容されて該内部空間を仕切板5,6,7により複数の流路に区画する内部仕切り部品8とを備えており、前記各流路毎に生じる負圧の偏りを是正し得るよう該各流路間に後述の連通部9,10,11を形成したところを特徴としている。
【0019】
ここで、前記内部仕切り部品8は三枚の仕切板5,6,7を備えており、これらのうちの二枚の仕切板5,6が空気取入口3と対峙する面を成して手前側と奥側に間隔を隔てて配置され且つその上側が空気取入口3側に向け湾曲して該空気取入口3を上下に三分割するようになっていると共に、残りの一枚の仕切板7は、前記二枚の仕切板5,6に挟まれた流路を左右に二分割するように該各仕切板5,6の相互間に直角な向きで渡されており、これら三枚の仕切板5,6,7でダクト本体4の前記空気取入口3に近い内部空間が四つの流路に区画されるようになっている。
【0020】
そして、手前側の仕切板5と奥側の仕切板6の空気取入口3に突き当たる突端部5a,6aが従来よりも短くなっていて、前記空気取入口3との間に隙間が確保されることで連通部9,10(図4参照)が形成されるようになっており、また、手前側の仕切板5の片側が幅方向に短くなっていて、前記ダクト本体4の内壁面との間に隙間が確保されることで連通部11(図2参照)が形成されるようになっている。
【0021】
即ち、ここに図示している例では、手前側の仕切板5と奥側の仕切板6とにより空気取入口3が上下に三分割されているが、最短経路で下流側へ流れようとする外気は、ダクト本体4の内部空間を下向きに吸引されることにより、前記空気取入口3に開口している各流路の下側で負圧の偏りを生じることになるので、前記空気取入口3を上下に分割している各仕切板5,6の突端部5a,6aを短くして前記空気取入口3との間に連通部9,10を形成しておけば、前記各仕切板5,6を挟んで前記空気取入口3近傍で上下に隣接する流路の相互間において、負圧が相対的に大きくなっている箇所(圧力が相対的に低くなっている箇所)と小さくなっている箇所(圧力が相対的に高くなっている箇所)とが連通し、相互の圧力差が均されて各流路毎の負圧の偏りが是正されることになる。
【0022】
一方、手前側の仕切板5の片側に連通部11が形成されているのは、この連通部11を形成した側に下流側のダクト構造(図示せず)がオフセットされている場合で例示しているからであり、このオフセットされた側へ向けて外気が最短経路で流れようとして流路に生じる負圧の偏りが前記連通部11で是正されることになる。
【0023】
ただし、各流路でどのような負圧の偏りが生じるかは、下流側のダクト構造のレイアウトにより決まるものであり、ここに図示している例のように、手前側の仕切板5の片側を幅方向に短くすることで連通部11を形成しているのは一例に過ぎない。
【0024】
尚、本形態例にあっては、先に図5で説明した従来の吸気ダクトbの場合と同様に、前記空気取入口3がルーバー12により被覆されていて、雨や雪の吸い込みを極力回避し得るようにしてある。
【0025】
また、空気取入口3と対峙している二枚の仕切板5,6の下端には、ダクト本体4内に侵入して各仕切板5,6の表面に付着した雨水を集めるドリップチャンネル13,14が樋状に形成されていると共に、前記各仕切板5,6,7をダクト本体4側から支える支持フレーム15が形成されており、この支持フレーム15においては、前記ドリップチャンネル13,14の両端部同士を連結しつつダクト本体4の内壁面に対し緊密に外嵌固着されるようになっていて、その外嵌固着された外周部分に前記各ドリップチャンネル13,14からの雨水をサイドブランチ部16(図3参照)へと導く水路17(図2及び図4参照)が形成されるようになっている。
【0026】
而して、このように吸気ダクト1を構成すれば、各流路の夫々で負圧が相対的に大きくなっている箇所(圧力が相対的に低くなっている箇所)を連通部9,10,11を介し隣の流路と連通させることで相互の圧力差が均され、前記各流路毎の負圧の偏りが是正されて吸気ダクト1としての通気抵抗の増加や局所的な高流速ポジションの形成が抑制されることになる。
【0027】
従って、上記形態例によれば、ダクト本体4の空気取入口3に近い内部空間を複数の流路に区画しても、通気抵抗の増加や局所的な高流速ポジションの形成を抑制することができるので、従来よりも圧力損失を低減して効率の良い吸気を実現することができ、しかも、雨や雪や埃等の吸い込みを大幅に抑制することもできる。
【0028】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、ダクト本体内の分割形式には図示以外の形式を採用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 吸気ダクト
2 キャブ
3 空気取入口
4 ダクト本体
5 仕切板
5a 突端部
6 仕切板
6a 突端部
7 仕切板
8 内部仕切り部品
9 連通部
10 連通部
11 連通部
図1
図2
図3
図4
図5