【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するものであって、以下を要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明は、芯鞘型複合連続繊維により構成される不織布からなる農業用被覆資材であり、
該不織布の目付が10〜30g/m
2であり、
該繊維の芯部がポリエステル系重合体、鞘部がポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点が芯部の重合体の融点よりも40℃以上低く、
不織布は、単繊維繊度が13〜20デシテックスの太繊度繊維と単繊維繊度が5〜10デシテックスの細繊度繊維の2種の繊度の異なる芯鞘型複合連続繊維によって構成され、
構成繊維同士は、熱圧着部により一体化しており、該熱圧着部の面積率が10〜30%であることを特徴とする農業用被覆資材を要旨とするものである。
【0009】
本発明の農業用被覆資材は、芯鞘型複合連続繊維により構成される不織布からなる。連続繊維を構成する芯部はポリエステル系重合体、鞘部はポリオレフィン系重合体からなる。
【0010】
芯部を構成するポリエステル系重合体としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリン−2,6ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、アルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等のジオール化合物とから合成されるホモポリエステルないしは共n重合ポリエステルがあり、上記ポリエステルにパラオキシ安息香酸、5−ソジュームスルフオイソフタール酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフエノールAなどが添加あるいは共重合されていてもよい。また、ポリエステル系重合体としては、芳香族ポリエステルだけではなく、脂肪族ポリエステルを用いてもよい。
【0011】
鞘部を構成するポリオレフィン系重合体としては、炭素原子数が2〜16の脂肪族α−モノオレフイン、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンのホモポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンなどがある。脂肪族α−モノオレフインは、他のオレフィンおよび、または少量(重合体重量の約10重量%まで)の他のエチレン系不飽和モノマー、たとえばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン−1,3、スチレン、α−メチルスチレンの如き類似のエチレン系不飽和モノマーと共重合されていてもよい。特にポリエチレンの場合は、重合体重量の約10重量%までのプロピレン、ブテン−1、ヘ
キセン−1、オクテン−1または類似の高級α−オレフィンと共重合させたものが好ましい。
【0012】
なお、ポリエステル系重合体およびポリオレフィン系重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの任意の添加物が添加されていてもよい。
【0013】
芯部と鞘部の組合せとしては、上記の重合体から、融点差が40℃以上あるものを選択する。すなわち、芯部を構成するポリエステル系重合体の融点よりも鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点が40℃以上低いものを選択する。不織布を構成する連続繊維同士は、熱圧着部を有することにより一体化して不織布として形態を保持している。熱圧着部は、熱エンボス加工により形成されるものであるが、熱圧着部においては、鞘部は溶融または軟化して接着に寄与するが、芯部は熱の影響を完全に受けて溶融するのではなく繊維形態を維持させて、不織布の引裂強力を向上に寄与する。このように熱圧着部において、鞘部は溶融または軟化し、一方、芯部は繊維形態を維持させるために、両者の融点に40℃以上の差を設けることにより、好ましくは50℃以上の差を設けることにより、熱エンボス加工の際に、芯部を熱の影響を受けさせずに、かつ鞘部を確実に溶融させて熱圧着部で溶融固着による熱接着固定することができる。
【0014】
連続繊維における芯鞘複合比率(質量比)は、芯部/鞘部=70/30〜50/50がよい。鞘部よりも芯部の比率を同等以上にすることにより、機械的物性に優れ、実用的な強度が維持できる。なお、芯部の比率が70質量%を超えると、接着成分となる鞘部の比率が小さくなるため、熱圧着部での接着強力が低下する傾向となるため、芯部の比率の上限は70質量%がよい。
【0015】
本発明の農業用被覆資材は、繊度の異なる2種の芯鞘型複合連続繊維によって構成することを特徴とする。すなわち、単繊維繊度が13〜20デシテックスの太繊度繊維と、単繊維繊度が5〜10デシテックスの細繊度繊維とによって構成される。
【0016】
13〜20デシテックスの太繊度繊維を有することにより、風が抜けるための繊維間の空隙を十分に確保することができる。したがって、展張時に、風の抵抗を受けて煽られることにより、資材が地面や作物を傷つけたり、また資材が引裂かれて破れる恐れ等の問題が生じない。そして、13デシテックス以上とすることにより、資材に良好な形態安定性を付与でき、上限を20デシテックス以下にすることにより、敷設した資材内部の保温性をある程度確保できる。
【0017】
また、5〜10デシテックスの細繊度繊維を有することにより、保温性を向上させる。そして、細繊度繊維の単繊維繊度の下限を5デシテックスとすることにより過度に通気度が低下することなく適度な風抜け性も確保し、上限を10デシテックスとすることで保温性を確保し、資材の機械的物性の向上にも寄与する。
上記した機能を効果的に発揮するには、太繊度繊維と細繊度繊維との質量比は、太繊度繊維/細繊度繊維=30/70〜80/20が好ましい。
【0018】
太繊度繊維と細繊度繊維とは、不織布中に混繊状態で混在していてもよく、また、一方の面に太繊度繊維が堆積してなるウェブとし、他方の面に細繊度繊維が堆積してなるウェブとする積層状態により両者が存在しているものであってもよく、積層状態により両者が存在しているものが好ましい。積層状態の不織布としたときは、べたがけシートとして敷設する際に、細繊度繊維側の面が農作物側に位置するように敷設し、柔軟性が良好な細繊度繊維が農作物に触れるようにすることが好ましい。
【0019】
不織布を構成する繊維同士は、熱圧着部により熱接着固定され一体化している。熱圧着部では、芯鞘型複合繊維の鞘成分が溶融固化して接着成分として機能している熱接着部を形成している。熱圧着部は、熱エンボス加工あるいは超音波融着加工によって散点状の多数の熱融着部を形成するとよい。個々の熱圧着部の形状は円形、楕円形、菱形、三角形、織目形、井形、格子形など任意の形状であってよい。なお、不織布の柔軟性を考慮して、熱圧着部は連続線状であったり、個々の熱圧着部が非熱圧着部で分断されずに繋がっている形状のものではなく、個々の熱圧着部が非熱圧着部で分断され、散点状に存在していることが好ましい。個々の熱圧着部の面積は0.2〜3mm
2程度が好ましい。また、不織布の面積に対する熱圧着部の面積比率は、10%以上30%以下であることが好ましい。10%未満では、本発明の目的である優れた機械物性と通気性と剛性を両立し難い。また、30%を超えると、しなやかさを失う傾向となり取扱いにくく展張し難い。
【0020】
上記した不織布の目付は10〜30g/m
2である。目付を10g/m
2以上とすることにより、農業用資材として実用的な強度、保温性を確保することができ、一方、30g/m
2以下とすることにより良好な通風性を維持するとともに、透光性も確保できる。
【0021】
なお、不織布は、本発明の目的を阻害しない範囲で、親水剤、帯電防止剤など任意の剤が塗布等により付着していてもよい。
【0022】
本発明の農業用被覆資材を構成する不織布は、以下の方法により製造できる。まず、不織布を構成する芯鞘複合連続繊維は、一般に使用されている芯鞘型複合紡糸口金を用いて溶融紡糸すればよい。例えば、溶融した熱可塑性重合体を紡糸孔へ導くための導入部分の上部で、溶融した鞘部の重合体の中央部分に溶融した芯部の重合体を注入するような構造を持ったものが多用されている。また、不織布は、いわゆるスパンボンド法により製造することができる。たとえば、空気圧を利用して連続繊維束を引き取りながら延伸し,コロナ放電等の方法で静電気的に開繊し、移動する捕集面上に堆積することでウエブ化した後、熱エンボス加工を施す。2種の繊度の異なる繊維が混合してなる混繊タイプとする場合は、紡糸口金として混繊タイプの口金を用い、適宜吐出量を調整して混繊タイプのウェブを得て、熱エンボス加工を施すとよい。また、2種の繊度の異なる繊維がそれぞれ多数堆積させてそれぞれの面を形成させる積層タイプとする場合は、繊度の異なるそれぞれのウェブを連続工程により積層堆積させて積層ウェブを得る、あるいは、それぞれのウェブをバッチ式で作成したものを積層して積層ウェブを得、この積層ウェブに熱エンボス加工を施すとよい。
【0023】
引き取る際の牽引速度は、2000〜5000m/分に設定することが好ましく、3000〜5000m/分であることがさらに好ましい。牽引速度が2000m/分未満であると、糸条において、十分に分子配向が促進されず、得られる不織布の寸法安定性が劣りやすくなる。一方、牽引速度が5000m/分を超えると紡糸安定性に劣りやすくなる。
【0024】
牽引細化した多数本の連続繊維は、公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊、堆積させて不織ウエブを形成する。その後、この不織ウエブを熱エンボス装置に通して、熱エンボス加工を施して不織布とする。熱エンボス加工の際は、鞘部の重合体のみが溶融し、芯部の重合体は熱の影響を受けない温度や条件を設定して加工する。
【0025】
本発明の農業用被覆資材は、べたがけシートとして用いることにより、特に機能を良好に発揮しうる。また、べたがけシート以外の被覆資材、例えば、直に被覆するのではなくトンネル状に被覆する資材やハウス内の天井部分等にカーテンのごとく被覆する被覆資材、地面を被覆するマルチング資材等の農業用被覆資材としても用いることができる。