特許第6556605号(P6556605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556605
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/02 20060101AFI20190729BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20190729BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B60K13/02 C
   F02M35/10 301D
   F02M35/10 101D
   F02M35/16 E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-226521(P2015-226521)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-94795(P2017-94795A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 智之
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 琢也
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕太
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5325764(JP,B2)
【文献】 特開平11−105553(JP,A)
【文献】 実開平5−32765(JP,U)
【文献】 実開平6−87034(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第0433923(EP,A1)
【文献】 国際公開第2011/094334(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011101765(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/02
F02M 35/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で隣り合う二側面間に亘り開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体と、前記空気取入口を被覆して外気以外の侵入を阻むルーバーとを備え、前記空気取入口における相対的に大きく開口している方の側面を被覆するルーバーの羽板を、その幅方向の姿勢が前記隣り合う二側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置したことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
空気取入口における相対的に小さく開口している方の側面を被覆するルーバーの羽板についても、その幅方向の姿勢が前記空気取入口の隣り合う二側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置したことを特徴とする請求項1に記載の吸気ダクト。
【請求項3】
ルーバーの羽板の傾斜配置が水平を基準として0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多い為、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の空気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な空気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で空気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
この為、大型の運搬車両においては、図7に一例を示すように、キャブaの後面に上下方向に長く延在する吸気ダクトbを据え付けるようにしており、この種の吸気ダクトbは、外気をエンジン用吸気として取り入れる空気取入口cを上側に開口して外殻構造を成すダクト本体dと、前記空気取入口cを被覆して外気以外の侵入を阻むルーバーeとを備えて構成されている。
【0004】
ここで、前記吸気ダクトbにおいては、空気取入口cが車両後方へ向けて大きく開口するようになっているが、図示の如き車幅方向外側の右側面まで回り込んで開口するようになっているものもあり、このように隣り合う二側面間に亘り空気取入口cが開口した構造によれば、荷台の幌が吸気ダクトbの後面に被さっても前記空気取入口cが完全に閉塞されてしまうことを防ぐことができ、外気が取り込めなくなることによりエンジンが失火してしまう虞れを未然に回避することができる。
【0005】
尚、この種の吸気ダクトに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5325764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した如き従来構造にあっては、図8に模式的に示す如く、空気取入口cの隣り合う後面と右側面の夫々から吸い込まれる外気の流れ(図8中の矢印A,B)がダクト本体dの内部で衝突してしまい、これにより吸気抵抗の大幅な増加を招いてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、空気取入口の隣り合う二側面から吸い込まれる外気の流れの衝突を回避して吸気抵抗の低減化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で隣り合う二側面間に亘り開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体と、前記空気取入口を被覆して外気以外の侵入を阻むルーバーとを備え、前記空気取入口における相対的に大きく開口している方の側面を被覆するルーバーの羽板を、その幅方向の姿勢が前記隣り合う二側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置したことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、空気取入口の隣り合う二側面のうち、相対的に大きく開口している方の側面から吸い込まれる外気の流れが、ルーバーの羽板の傾斜配置により隣の側面から吸い込まれる外気の流れとの衝突を避ける方向に曲げられ、これにより空気取入口の隣り合う二側面から吸い込まれる外気の流れの衝突が回避されて吸気抵抗の大幅な低減化が図られることになる。
【0011】
また、本発明においては、空気取入口における相対的に小さく開口している方の側面を被覆するルーバーの羽板についても、その幅方向の姿勢が前記空気取入口の隣り合う二側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置することが好ましく、このようにすれば、空気取入口の隣り合う二側面から吸い込まれる外気の流れの両方が互いを避けるように曲げられて一層確実な衝突回避が成されることになる。
【0012】
更に、本発明においては、ルーバーの羽板の傾斜配置が水平を基準として0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行われていることが好ましく、このようにすれば、雨水や雪等といった外気以外の侵入を阻むルーバーとしての本来の機能を確実に保つことが可能となる。
【0013】
即ち、ルーバーの羽板を傾斜配置するといっても、水平を基準として過剰に傾斜させてしまうと、雨水や雪等といった外気以外の侵入が起こり易くなってルーバーとしての本来の機能が損なわれてしまうことになりかねないが、ルーバーの羽板の傾斜配置を0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行えば、ルーバーとしての本来の機能を大きく損なうことはない。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、空気取入口における相対的に大きく開口している方の側面を被覆するルーバーの羽板を傾斜配置したことにより、空気取入口の隣り合う二側面から吸い込まれる外気の流れの衝突を回避して吸気抵抗の低減化を図ることができ、これによりエンジンの燃費を従来よりも大幅に向上することができる。
【0016】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、空気取入口における相対的に小さく開口している方の側面を被覆するルーバーの羽板についても傾斜配置することにより、空気取入口の隣り合う二側面から吸い込まれる外気の流れの両方を互いを避けるように曲げて一層確実な衝突回避を実現することができる。
【0017】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、ルーバーの羽板の傾斜配置を0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行うことにより、雨水や雪等といった外気以外の侵入を阻むルーバーとしての本来の機能を確実に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の吸気ダクトの詳細を示す拡大図である。
図3図2の吸気ダクトを車両後方から見た図である。
図4図1の吸気ダクトにおける二側面からの外気の流れを示す模式図である。
図5】本発明の別の形態例を示す拡大図である。
図6図5の吸気ダクトにおける二側面からの外気の流れを示す模式図である。
図7】従来例を示す斜視図である。
図8図7の吸気ダクトにおける二側面からの外気の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1図3に示す如く、本形態例における吸気ダクト1は、先に図7で説明した従来の吸気ダクトbの場合と同様に、運搬車両のキャブ2(図1参照)の後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で隣り合う二側面間に亘り開口した空気取入口3から外気をエンジン用吸気として取り入れるように構成されているが、前記空気取入口3を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体4と、前記空気取入口3を被覆して外気以外の侵入を阻むルーバー5とを備え、前記空気取入口3における相対的に大きく開口している方の側面を被覆するルーバー5の羽板5aを、その幅方向(外気の吸い込み方向に対し直角な水平方向)の姿勢が前記隣り合う二側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置したところを特徴としている。
【0021】
即ち、ここに図示している例の場合、ダクト本体4が車幅方向に扁平な矩形断面を成すように形成されていて、主として後面を相対的に大きく開口して右側面にもそのまま回り込んだ空気取入口3となっており、この隣り合う後面と右側面の相互間に亘り開口した空気取入口3を被覆するルーバー5において、前記後面を被覆している羽板5aの幅方向の姿勢が前記後面と右側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置されている。
【0022】
この際、前記空気取入口3の後面を被覆するルーバー5の羽板5aの傾斜配置は、水平を基準として0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行われていることが好ましく、特に図示している例においては、約15°程度の傾斜角度で傾斜配置するようにしているが、図示にて前記空気取入口3の右側面を被覆しているルーバー5の羽板5bについては、従来通り水平配置のままとしている。
【0023】
尚、ルーバー5の各羽板5aが、外気以外の侵入を阻む本来の機能を果たすために、外気の吸い込み方向に上り勾配を成すような傾斜角を有しており、この外気の吸い込み方向における傾斜角を有したまま後面側の羽板5aが幅方向にも傾斜配置されるようになっていることは勿論である。
【0024】
而して、このようにすれば、図4に模式的に示す如く、空気取入口3の隣り合う後面と右側面のうち、相対的に大きく開口している後面から吸い込まれる外気の流れ(図4中の矢印A)が、ルーバー5の羽板5aの傾斜配置により隣の右側面から吸い込まれる外気の流れ(図4中の矢印B)との衝突を避ける方向に曲げられ、これにより空気取入口3の隣り合う後面と右側面から吸い込まれる外気の流れの衝突が回避されて吸気抵抗の大幅な低減化が図られることになる。
【0025】
更に、特に本形態例においては、ルーバー5の羽板5aの傾斜配置が水平を基準として0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行われているので、雨水や雪等といった外気以外の侵入を阻むルーバー5としての本来の機能を確実に保つことが可能となる。
【0026】
即ち、ルーバー5の羽板5aを傾斜配置するといっても、水平を基準として過剰に傾斜させてしまうと、雨水や雪等といった外気以外の侵入が起こり易くなってルーバー5としての本来の機能が損なわれてしまうことになりかねないが、ルーバー5の羽板5aの傾斜配置を0°より大きく且つ30°より小さな角度範囲で行えば、ルーバー5としての本来の機能を大きく損なうことはない。
【0027】
従って、上記形態例によれば、空気取入口3における相対的に大きく開口している後面を被覆するルーバー5の羽板5aを傾斜配置したことにより、空気取入口3の隣り合う後面と右側面から吸い込まれる外気の流れの衝突を回避して吸気抵抗の低減化を図ることができるので、エンジンの燃費を従来よりも大幅に向上することができ、しかも、雨水や雪等といった外気以外の侵入を阻むルーバー5としての本来の機能を確実に保つこともできる。
【0028】
また、図5は本発明の別の形態例を示すもので、本形態例においては、空気取入口3における相対的に小さく開口している右側面を被覆するルーバー5の羽板5bについても、その幅方向の姿勢が前記空気取入口3の隣り合う後面と右側面の境界側へ向け下り勾配を成すように傾斜配置しており、このようにすれば、図6に模式的に示す如く、空気取入口3の隣り合う後面と右側面から吸い込まれる外気の流れの両方(図6中の矢印A,B)が互いを避けるように曲げられて一層確実な衝突回避が成されることになる。
【0029】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 吸気ダクト
2 キャブ
3 空気取入口
4 ダクト本体
5 ルーバー
5a 羽板
5b 羽板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8