特許第6556613号(P6556613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556613異臭推定装置、異臭推定システム、異臭推定方法及び異臭推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556613
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】異臭推定装置、異臭推定システム、異臭推定方法及び異臭推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   G01N21/27 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-240446(P2015-240446)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-106807(P2017-106807A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 梢
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】竹田 智
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美和
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−297240(JP,A)
【文献】 特開平05−172728(JP,A)
【文献】 特開平09−075918(JP,A)
【文献】 特開2000−338030(JP,A)
【文献】 特開平08−242886(JP,A)
【文献】 特開2004−136151(JP,A)
【文献】 特開2013−188157(JP,A)
【文献】 特開2001−083094(JP,A)
【文献】 特開2002−125696(JP,A)
【文献】 特開平09−248198(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0122733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01、
21/17−21/61、
21/64、
15/00、
33/18、
C02F 1/44、
C12M 1/00−1/42、
C12Q 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置の元で被写体からの光を複数の波長帯域毎に光電変換する撮像部から原水を前記被写体とする画像データが入力される画像入力部と、
前記画像入力部に入力された前記画像データにおける前記複数の波長帯域の信号強度に基づいて、前記原水に含まれる第1の藻類の画素領域を抽出し、抽出した前記第1の藻類の画素領域に基づいて、前記原水の単位量当たりの前記第1の藻類の量を取得する藻類量取得部と、
前記藻類量取得部が取得した前記第1の藻類の量に基づいて前記原水の異臭の程度を推定する異臭推定部と、
を備える異臭推定装置。
【請求項2】
被写体からの光を複数の波長帯域毎に光電変換する撮像部から原水を前記被写体とする画像データが入力される画像入力部と、
前記画像入力部に入力された前記画像データにおける前記複数の波長帯域の信号強度に基づいて、前記原水に含まれる第1の藻類の画素領域を抽出し、抽出した前記第1の藻類の画素領域に基づいて、前記原水の単位量当たりの前記第1の藻類の量を取得する藻類量取得部と、
前記藻類量取得部が取得した前記第1の藻類の量に基づいて前記原水の異臭の程度を推定する異臭推定部と、を備え、
前記藻類量取得部は、
前記複数の波長帯域の信号強度に基づいて第2の藻類の画素領域を抽出する波長帯域処理部と、
前記波長帯域処理部が抽出した前記第2の藻類の画素領域に対して形状を判別して前記第1の藻類の画素領域を抽出する形状判別部と、
を備える異臭推定装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記第1の藻類が吸収する光の波長帯域に対応する第1の波長帯域及び第2の波長帯域の光を光電変換し、
前記波長帯域処理部は、前記第1の波長帯域の信号強度及び前記第2の波長帯域の信号強度に基づいて、前記原水に含まれる前記第2の藻類の画素領域を抽出する請求項2に記載の異臭推定装置。
【請求項4】
前記第1の波長帯域は、650nm〜700nmの波長帯域であり、
前記第2の波長帯域は、600nm〜650nmの波長帯域である請求項3に記載の異臭推定装置。
【請求項5】
前記波長帯域処理部は、前記撮像部から出力される前記第1の波長帯域の信号強度をAとし、前記第2の波長帯域の信号強度をBとして、任意の係数m、n(−1≦m≦1、−1≦n≦1)を用いて前記第1の藻類であること示す藻類指標を求める下記の式
藻類指標=(mA−nB)/(mA+nB)
を計算して前記藻類指標を取得し、取得した前記藻類指標に基づいて、前記第2の藻類の画素領域を抽出する
請求項3又は請求項4に記載の異臭推定装置。
【請求項6】
前記第2の藻類は、藍藻類であり、
前記第1の藻類は、前記異臭の原因となる藍藻類である請求項2から5のいずれか一項に記載の異臭推定装置。
【請求項7】
被写体である原水からの光を複数の波長帯域毎に光電変換する撮像部と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の異臭推定装置と、
を備える異臭推定システム。
【請求項8】
照明装置の元で被写体からの光を複数の波長帯域毎に光電変換する撮像部から原水を前記被写体とする画像データが入力される画像入力ステップと、
前記画像入力ステップにおいて入力された前記画像データにおける前記複数の波長帯域の信号強度に基づいて、前記原水に含まれる第1の藻類の画素領域を抽出し、抽出した前記第1の藻類の画素領域に基づいて、前記原水の単位量当たりの前記第1の藻類の量を取得する藻類量取得ステップと、
前記藻類量取得ステップにおいて取得した前記第1の藻類の量に基づいて前記原水の異臭の程度を推定する異臭推定ステップと、
を有する異臭推定方法。
【請求項9】
被写体からの光を複数の波長帯域毎に光電変換する撮像部から原水を前記被写体とする画像データが入力される画像入力ステップと、
前記画像入力ステップにおいて入力された前記画像データにおける前記複数の波長帯域の信号強度に基づいて、前記原水に含まれる第1の藻類の画素領域を抽出し、抽出した前記第1の藻類の画素領域に基づいて、前記原水の単位量当たりの前記第1の藻類の量を取得する藻類量取得ステップと、
前記藻類量取得ステップにおいて取得した前記第1の藻類の量に基づいて前記原水の異臭の程度を推定する異臭推定ステップと、
を有し、
前記藻類量取得ステップは、
前記複数の波長帯域の信号強度に基づいて第2の藻類の画素領域を抽出する波長帯域処理ステップと、
前記波長帯域処理ステップにおいて抽出された前記第2の藻類の画素領域に対して形状を判別して前記第1の藻類の画素領域を抽出する形状判別ステップと、を有する異臭推定方法。
【請求項10】
本願請求項1から6のいずれか一項に記載の異臭推定装置としてコンピュータを機能させるための異臭推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、異臭推定装置、異臭推定システム、異臭推定方法及び異臭推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浄水処理技術の進歩に伴い水道水のかび臭等の異臭味被害は減少傾向にある。しかし、少ない件数ではあるが未だに異臭味被害が発生している。水道事業体では、かび臭対策として、高度浄水処理の導入、粉末活性炭の投入などを行っている。そして、粉末活性炭の投入は、季節や気候に応じてかび臭発生を経験的に予測して行われている。このように経験に基づく予測で、粉末活性炭を投入する場合、予測の精度が低いことを考慮して、粉末活性炭をかなり多めに入れる必要がある。すなわち、粉末活性炭を必要以上に入れる必要があり、粉末活性炭を効率よく利用することができないという問題がある。
【0003】
上記粉末活性炭を効率よく利用する為に、かび臭の発生を検出して、かび臭の発生に応じて粉末活性炭の投入を制御することが考えられる。そして、かび臭の発生を検出する方法として、かび臭物質であるジェオスミン、2−メチルイソボルネオール(2−MIB)を原水から直接測定するガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS法)を利用したかび臭検出装置が存在する。しかし、そのようなかび臭検出装置は、非常に 高価であるため浄水場への導入実績は少なく、かつ、1回の測定に多くの時間を必要とする。1回の測定に時間がかかると、例えばかび臭が急に強くなった場合には対応できないという問題がある。
【0004】
上述したように、従来の技術では、原水におけるかび臭等の異臭の検出に時間を長く要してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−75918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、原水における異臭の検出に要する時間を短縮することができる異臭推定装置、異臭推定システム、異臭推定方法及び異臭推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の異臭推定装置は、画像入力部と、藻類量取得部と、異臭推定部とを持つ。画像入力部は、被写体からの光を複数の波長帯域毎に光電変換する撮像部から原水を被写体とする画像データが入力される。藻類量取得部は、画像入力部に入力された画像データにおける複数の波長帯域の信号強度に基づいて、原水に含まれる第1の藻類の画素領域を抽出し、抽出した第1の藻類の画素領域に基づいて、原水の単位量当たりの第1の藻類の量を取得する。異臭推定部は、藻類量取得部が取得した第1の藻類の量に基づいて原水の異臭の程度を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態におけるかび臭推定システム1の構成例を示す図。
図2】原水に発生する藻類の写真例を示す図。
図3】「ケイ藻」、「ミクロキスティス」、「アナベナ」、「オシラトリア」及び「フォルミジウム」の分光スペクトルを示す図。
図4】第1の実施形態のかび臭推定装置2の構成例を示す図。
図5】第1の実施形態のかび臭推定装置2の動作を説明するフロー図。
図6】第2の実施形態のかび臭推定装置2Aの構成例を示す図。
図7】第2の実施形態のかび臭推定装置2Aの動作を説明するフロー図。
図8】ハイパースペクトルカメラである撮像部15で撮影した画像データに対する画像処理例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の異臭推定装置、異臭推定システム、異臭推定方法及び異臭推定プログラムを、図面を参照して説明する。
【0010】
(概略)
まず、本実施形態におけるかび臭推定システム(異臭推定システム)の概略について説明する。
図1は、本実施形態におけるかび臭推定システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、かび臭推定システム1は、かび臭推定装置2と、表示装置3と、入力装置4、原水撮影装置5と、ケーブル6とを備える。
【0011】
原水撮影装置5は、採水口11と、採水管12と、撮影用トレー13と、遮光壁14と、撮像部15と、光学系16と、光源17と、排水管18と、排水口19とを備える。採水口11は、水源から取水した原水の一部を採水する流入口である。採水口11から流入する原水は、高低差やポンプ等により水圧がかかっており、矢印の方向に原水が流れる。採水管12は、採水口11から流入した原水が流れる管である。
【0012】
撮影用トレー13は、採水管12を通った原水が溜まるトレーである。撮影用トレー13は、撮像部15により撮影対象となる原水を溜めるトレーでもある。撮影用トレー13は、少なくとも撮像部15の撮影対象となる領域においては、仮に原水が透明であれば光源17からの光を波長によらず均一に反射するように例えば白色の部材を配置している。
【0013】
遮光壁14は、例えば、撮像部15及び光源17が設置される上面と、上面を支持する側面とを有する箱状のものである。遮光壁14は、撮像部15が撮影する撮影用トレー13上の原水に光源17からの光以外の光(外光等)が当たらないよう遮光する機能を有する。遮光壁14は、例えば、内壁面には、撮像時にフレアや迷光等の影響を抑制するため反射防止膜がコーティングされている。
【0014】
撮像部15は、複数の特定の波長帯域の信号強度のピークを判別可能な感度を有する画素が配列された撮像素子を備える。撮像部15が備える撮像素子は、被写体からの光を光電変換する画素が配列された構成であり、単板でも多板でもよい。特定の波長は、かび臭を発生する藍藻類を特定するために有効な複数の波長帯域であり、例えば、650nm〜700nm(第1の波長帯域)と、600nm〜650nm(第2の波長帯域)とである。また、複数の特定の波長帯域の信号強度のピークを判別可能な感度を有する画素とは、第1の波長帯域と第2の波長帯域に信号強度のピークがあることを判別可能な複数の波長帯域に感度を有する画素である。第1の波長帯域と、第2の波長帯域とにスペクトルのピークがあることを判別可能な複数の波長帯域とは、例えば、550nm〜600nm、600nm〜650nm、650nm〜700nm及び700nm〜750nmの波長帯域である。撮像部15は、これらの複数の波長帯域に感度を有する画素からの信号を処理して原水画像データとして出力する。これにより、かび臭推定装置2は、撮像部15からの原水画像データに基づいて650nm〜700nm(第1の波長帯域)と、600nm〜650nm(第2の波長帯域)とにスペクトルのピークがあるか否かを判定することができる。
【0015】
光学系16は、撮影用トレー13上にある原水に焦点を合わせるためのレンズである。なお、撮影対象を高倍率で撮影する場合には光学系16は、顕微鏡で構成してもよい。光源17は、例えば白色光を撮影対象に照射する照明装置である。撮像部15は、ケーブル6を介して、撮影用トレー13上にある原水を撮影して得た各画素に特定の波長のスペクトルデータを含む画像データである原水画像データをかび臭推定装置2へ出力する。
【0016】
排水管18は、撮影用トレー13から溢れ出た原水が排水口19へ流れるための管である。排水口19は、原水を外部へ排水するための流出口である。なお、光源17の位置を撮像部15の対面かつ撮影用トレー13の下部に位置する構成でもよく、この構成の場合は、光源17の光を透過できるよう撮影用トレー13を透明とする。
【0017】
かび臭推定装置2は、ケーブル6を介して原水撮影装置5の撮像部15と接続されており、撮像部15から原水画像データを取得する機能を有するコンピューターである。また、かび臭推定装置2は、取得した原水画像データに基づいて、原水のかび臭の度合いを推定した情報であるかび臭情報を出力する機能を有する。また、かび臭推定装置2は、原水画像データに対して、類似のスペクトルデータを有する画素領域ごとに分類して、色分けする処理を行う機能を有する。
【0018】
表示装置3は、コンピューターであるかび臭推定装置2に接続されたディスプレイ装置であり、かび臭情報を表示する。表示装置3は、必要に応じて原水画像データや原水画像データの解析結果を表示してもよい。入力装置4は、コンピューターであるかび臭推定装置2に接続されたキーボード及びマウス等の入力機器である。
【0019】
入力装置4は、コンピューターであるかび臭推定装置2に接続された記録媒体を着脱可能で、装着された記録媒体からデータを読み出し可能な装置であってもよい。これにより、入力装置4は、記録媒体に記録されたデータを入力することができる。なお、タッチパネル端末を用いて、かび臭推定装置2、表示装置3及び入力装置4を一体化した構成としてもよい。
【0020】
ここで、特定の波長帯域を選択する方法について具体例を示して説明する。特定の波長帯域を、各種の藻類を400nm〜1000nmの波長における5〜10nm刻みの各波長の信号強度を各画素で取得可能なハイパースペクトルカメラで撮影して、かび臭を発生する藍藻類を含む各種の藻類の分光スペクトルを特定する。そして、かび臭を発生する藍藻類とその他の藻類とで分光スペクトルの値が顕著に異なる波長帯域があればその波長帯域を特定の波長帯域としてもよい。また、かび臭を発生する藍藻類に特有のピーク波長が複数あればその複数のピーク波長をそれぞれ含む複数の波長帯域の値を用いて、かび臭を発生する藍藻類の画素領域を特定してもよい。
【0021】
かび臭の原因となる藍藻類には、「アナベナ」、「オシラトリア」及び「フォルミジウム」等があり、かび臭の原因とならない藍藻類には「ミクロキスティス」がある。図2は、原水に発生する藻類の写真例を示す図である。図2において、写真41は、かび臭を発生する藍藻類である「オシラトリア」である。写真42は、かび臭を発生する藍藻類である「アナベナ」である。写真43は、かび臭を発生する藍藻類である「フォルミジウム」である。写真44は、かび臭を発生しない藍藻類以外の藻類の一つである「ケイ藻」である。写真45は、かび臭を発生しない藍藻類である「ミクロキスティス」である。
【0022】
図2に示すように、かび臭を発生する藍藻類である「アナベナ」、「オシラトリア」及び「フォルミジウム」は、棒状の形である。かび臭を発生しない藍藻類である「ミクロキスティス」及びかび臭を発生しない藍藻類以外の藻類の一つである「ケイ藻」は、球状の形である。
【0023】
図3は、「ケイ藻」、「ミクロキスティス」、「アナベナ」、「オシラトリア」及び「フォルミジウム」の分光スペクトルを示す図である。図3に示すように、藍藻類である「ミクロキスティス」、「アナベナ」、「オシラトリア」及び「フォルミジウム」は、620nm付近(図3の枠51)と680nm付近(図3の枠52)とに分光スペクトルのピーク(図3では下方向のピーク)がある。「ケイ藻」は、500nm付近と680nm付近とに分光スペクトルのピーク(図3では下方向のピーク)がある。図3には、620nm付近の波長帯域を示す枠51と、680nm付近の波長帯域を示す枠52とが示されている。第1の波長帯域は、枠52の波長帯域を含むものであり、第2の波長帯域は、枠51の波長帯域を含むものである。
【0024】
620nm付近のピークは、主にフィコシアニンという色素による光の吸収により現れているものと考えられる。680nm付近のピークは、主にクロロフィルaという色素による光の吸収により現れているものと考えられる。このように、藻類が含む色素に対応した波長帯域が分光スペクトルのピークとなる。よって、かび臭等の異臭を発生する藻類に特有の色素があれば、その色素が吸収する光の波長帯域がその藻類に特有の波長帯域となる。藍藻類以外の他の藻類においてもフィコシアニンを有しているものは少なく、フィコシアニンは、藍藻類に特有の色素といえる。
【0025】
以上の藻類の特徴を考慮すると、まず、撮像部15から出力される藍藻類に特有のピークの波長帯域である620nm付近を含む第2の波長帯域と680nm付近を含む第1の波長帯域とにおける信号強度を用いて、藍藻類の画素領域であるか否かを特定する。次に、撮像部15から出力される原水画像データに対して画像処理を行い、藍藻類の画素領域と特定した藻類の形状に応じてかび臭を発生する藍藻類の画素領域を特定できると考える。本実施形態のかび臭推定装置2は、撮像部15から出力される原水画像データに基づいて、波長帯域により藍藻類の画素領域を特定した後に、藍藻類の画素領域の形状に基づいて、棒状の藍藻類の画素領域をかび臭を発生する藍藻類の画素領域と判別する処理を行う。
【0026】
次に、かび臭推定システム1におけるかび臭の推定処理の流れについて説明する。
たとえば、採水口11に繋がる管に原水を所定の水圧で流入させることで、原水は、採水口11、採水管12を経て撮影用トレー13に溜まる。撮像部15は、撮影用トレー13に溜まった原水を撮影して、原水画像データをケーブル6経由でかび臭推定装置2へ出力する。かび臭推定装置2は、受信した原水画像データに基づいて、かび臭の程度を示すかび臭情報を算出して、算出したかび臭情報を表示装置3に表示させる。
【0027】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態におけるかび臭推定装置2の構成例について説明する。
図4は、第1の実施形態のかび臭推定装置2の構成例を示す図である。図4に示すとおり、かび臭推定装置2は、画像入力部21と、波長帯域処理部22と、形状判別処理部23と、藻類量取得部24と、かび臭推定テーブル25と、入力処理部26と、かび臭推定部27と、表示制御部28とを備える。
【0028】
画像入力部21は、ケーブル6が接続されており、原水撮影装置5内の撮像部15から撮影された原水画像データが入力される。波長帯域処理部22は、画像入力部21に入力された原水画像データに含まれる第1の波長帯域及び第2の波長帯域の信号強度に基づいて、原水画像データから藍藻類の画素領域を抽出する。波長帯域処理部22は、例えば、第1の波長帯域及び第2の波長帯域にピークを有する画素を特定して、特定した画素の領域を藍藻類の画素領域として抽出する。
【0029】
波長帯域処理部22は、例えば、第1、第2の波長帯域の信号強度が、第1、第2の波長帯域の前後の波長帯域の信号強度よりも低い場合に、第1、第2の波長帯域にピークを有すると判断する。ここで、前後の波長帯域とは、第1、第2の波長帯域より短い波長の波長帯域と、第1、第2の波長帯域より長い波長の波長帯域のことである。また、場合によっては、波長帯域処理部22は、例えば、第1の波長帯域の信号強度が、第1の波長帯域の前又は後の波長帯域の信号強度よりも低い場合に、第1の波長帯域にピークを有すると判断してもよい。上記のピークの判断方法は一例であり、波長帯域処理部22は、波長帯域毎の信号強度の変化に基づいて、各画素に対して、第1の波長帯域及び第2の波長帯域におけるピークの有無を判断する。
【0030】
また、波長帯域処理部22における藍藻類の画素領域の抽出処理は、第1の波長帯域及び第2の波長帯域のピークの有無に基づいて抽出する処理に限定されるものではなく、例えば、以下に示す抽出処理を用いてもよい。波長帯域処理部22は、例えば、第1の波長帯域の画素データAと第2の波長帯域の画素データBとに基づいて、以下の(式1)を用いて藍藻類指標を算出する。
藍藻類指標=(mA−nB)/(mA+nB) … (式1)
【0031】
ただし、m、nは任意の係数であり、藍藻類指標の精度を高める目的で、例えば、−1から1までの値をとる係数である(−1≦m≦1、−1≦n≦1)。係数m、nは、複数種類の藻類について、実際に測定したA、Bの値を入力して、係数m、nの値を変化させた結果に基づいて、藍藻類とその他の藻類とを最も精度良く判別できる値を求める。この場合、波長帯域処理部22は、算出した藍藻類指標に基づいて藍藻類の画素領域か否かを判定し、藍藻類の画素領域を抽出する。
【0032】
形状判別処理部23は、波長帯域処理部22で抽出された藍藻類の画素領域の形状を判別して、かび臭を発生する藍藻類である棒状の藍藻類(図2のオシラトリア、アナベナ、フォルミジウム)の画素領域を抽出する。具体的には、図2の写真41〜43に示した棒状の藍藻類であるのか、写真45に示した球状の藍藻類であるのかを判別する。形状判別処理部23における判別方法は、棒状のテンプレートと、球状のテンプレートとを用いたパターンマッチング等の公知の画像処理を用いることで実現することができる。
【0033】
藻類量取得部24は、形状判別処理部23が抽出した棒状の藍藻類(=かび臭を発生する藍藻類)の画素領域の画素数をカウントして、原水の単位量当たりにおける、かび臭を発生する藍藻類の量に関する情報を取得する。藻類量取得部24は、例えば、撮影用トレー13の深さと、撮像部15の撮影範囲(又は撮影用トレー13の撮影範囲となる面積)とを考慮して、原水画像データの撮影対象となった原水の体積を特定することで、原水の単位量当たりの藍藻類の量を算出する。
【0034】
かび臭推定テーブル25は、原水の単位量当たりのかび臭を発生する藍藻類の量と、かび臭の程度とを対応付けたテーブルである。このかび臭推定テーブル25は、例えば、原水の単位量当たりの藍藻類の量が増えるほど、かび臭の程度が上がるテーブルである。このテーブルの作成方法は、例えば、水の単位量当たりの藍藻類の量を変化させて、それぞれのかび臭の程度を人が判断して、複数のランクに分類することで、藍藻類の量とかび臭の程度を示すランクとを対応させたテーブルを作成する。ここで、かび臭の程度を示すランクは、例えば、原水に対する粉末活性炭の投入量の単位に対応するものとする。これにより、かび臭推定装置2がかび臭のランクを浄水場の管理者に知らせることで、浄水場の管理者は、容易に最適な粉末活性炭の投入量を把握することができる。
【0035】
テーブルの作成方法は、これに限定されるものではなく、人ではなく、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS法)を利用してかび臭の程度を測定して複数のランクに分類してもよい。また、かび臭の程度をランクで表現する以外にも、ガスクロマトグラフィー質量分析法で測定した測定値がある場合は、その測定値と、藍藻類の量とを対応付けたテーブルであってもよい。
【0036】
また、かび臭推定テーブル25は、原水の単位量当たりのかび臭を発生する藍藻類の量の他に、原水の水温、PH値、原水を採水時の気候等の情報の内、かび臭の程度に影響すると判断した情報を格納してもよい。水温がかび臭の程度に影響すると判断した場合のテーブルの作成方法は、例えば、水の単位量当たりの藍藻類の量を変化させて、かつ、各藍藻類の量において水温も変化させて、それぞれ場合におけるかび臭の程度を人が判断して、複数のランクに分類することで、藍藻類の量と、水温と、かび臭の程度を示すランクとを対応させたテーブルを作成する。
【0037】
入力処理部26は、入力装置4からのデータ等の入力を受け付ける。入力処理部26は、入力装置4から入力されるかび臭推定テーブル25に保存するテーブル自体や、テーブル内のデータ等を、かび臭推定テーブル25に記録させる。
【0038】
かび臭推定部27は、かび臭推定テーブル25を参照して、藻類量取得部24が取得したかび臭を発生する藍藻類の量に基づいて、かび臭の程度を推定する。かび臭推定部27は、かび臭推定テーブル25から、かび臭を発生する藍藻類の量に対応するかび臭の程度を特定することで、かび臭を発生する藍藻類の量に応じたかび臭の程度を推定する。かび臭推定テーブル25は、かび臭の程度として例えばランクの情報を表示制御部28へ出力する。表示制御部28は、かび臭推定部27が推定したかび臭の程度を示すランクを表示装置3に表示させる。
【0039】
図4には示していないが、表示制御部28は、かび臭の程度を示すランクに対応する粉末活性炭の投入量のテーブルである活性炭投入量テーブルを保持する構成であってもよい。これにより、表示制御部28は、かび臭の程度を示すランクと合わせて、当該ランクに応じた粉末活性炭の投入量を表示装置3に表示させることができる。
【0040】
次に、第1の実施形態におけるかび臭推定装置2の動作について説明する。
図5は、第1の実施形態のかび臭推定装置2の動作を説明するフロー図である。画像入力部21は、撮像部15から撮影された原水画像データが入力される(ステップS101)。波長帯域処理部22は、画像入力部21に入力された原水画像データに基づいて、第1の波長帯域及び第2の波長帯域にピークを有する画素を特定して、特定した画素の領域を藍藻類の画素領域として抽出する(ステップS102)。
【0041】
形状判別処理部23は、波長帯域処理部22で抽出された藍藻類の画素領域の形状を判別して、かび臭を発生する藍藻類である棒状の藍藻類の画素領域を抽出する(ステップS102)。藻類量取得部24は、形状判別処理部23が抽出したかび臭を発生する藍藻類の画素領域の画素数をカウントして、原水の単位量当たりのかび臭を発生する藍藻類の量を取得する(ステップS104)。
【0042】
かび臭推定部27は、かび臭推定テーブル25を参照して、藻類量取得部24が取得したかび臭を発生する藍藻類の量に基づいて、かび臭の程度を示すランクを推定する(ステップS105)。表示制御部28は、かび臭推定部27が推定したかび臭の程度を示すランクを表示装置3に表示させる(ステップS105)。
【0043】
以上に説明した第1の実施形態のかび臭推定システム1は、撮像部15で撮影した原水画像データに基づいて、直ちに原水のかび臭の程度を示すランクを表示装置3に表示するので、従来と比べて原水におけるかび臭等の異臭の検出に要する時間を短縮することができる。第1の実施形態のかび臭推定システム1は、異臭の検出に要する時間を数秒〜数十秒とすることができるので、任意の間隔で連続して原水のかび臭を検出することができる。かび臭推定システム1は、波長帯域に基づいて藻類を抽出しているので、砂利等の藻類以外の不純物が原水に混入している場合でも、それらの不純物を藻類と誤検出することがない。誤検出を防げる理由は、砂利等の不純物は藻類と分光特性が大きく異なるためである。かび臭推定システム1は、かび臭の程度に応じた粉末活性炭の投入量を表示装置3に表示できるので、浄水所の管理者や作業者は、適切な量の粉末活性炭を投入することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態におけるかび臭推定装置2Aの構成例について説明する。
図6は、第2の実施形態のかび臭推定装置2Aの構成例を示す図である。図6に示すように、かび臭推定装置2Aは、図4に示すかび臭推定装置2と比較して、入力処理部26A、かび臭推定部27A及びかび臭情報格納部29を備える点で異なり、その他の構成は同じである。よって、同じ構成のものには、図4と同一の符号を付与し、説明を省略する。第2の実施形態のかび臭推定装置2Aは、第1の実施形態のかび臭推定装置2に対して、過去に推定したかび臭の程度に関する情報を蓄積し、蓄積したその情報を新たなかび臭の程度の推定に用いる機能を追加した構成である。
【0045】
かび臭情報格納部29は、原水画像データを撮影した日時に関連付けて、かび臭推定部27Aで推定されたかび臭の程度に関する情報と、入力処理部26Aから入力された原水に関する情報(水温、PH値)及び気象情報等の入力情報とを格納するかび臭情報格納部29を備える。また、かび臭情報格納部29は、かび臭の程度に応じて投入された粉末活性炭の投入量に関する情報も更に格納してもよい。以下の説明では、かび臭情報格納部29が格納する過去のかび臭の程度に関する情報、過去の原水に関する情報及び過去の気象情報をまとめて過去情報という。
【0046】
入力処理部26Aは、第1の実施形態と同様に、かび臭推定テーブル25に格納する情報が入力される。また、入力処理部26Aは、かび臭推定部27Aで推定処理に利用する情報及びかび臭情報格納部29に格納する情報も入力される。なお、かび臭推定部27Aで推定処理に利用する情報及びかび臭情報格納部29に格納する情報とは、例えば、原水に関する情報(水温、PH値)及び気象情報であり、以下の説明では、それらをまとめて入力情報という。
【0047】
かび臭推定部27Aは、第1の実施形態と同様に、かび臭推定テーブル25を参照して、藻類量取得部24が取得したかび臭を発生する藍藻類の量に基づいて、かび臭の程度を推定する。また、かび臭推定部27Aは、入力処理部26Aからの入力情報と、かび臭情報格納部29に格納される過去情報とを参照して、推定したかび臭の程度を調整する。例えば、過去情報に基づいて、水温に応じてかび臭の程度が変化する傾向があると判断すれば、かび臭推定部27Aは、水温に応じて推定したかび臭の程度を調整してもよい。また、例えば、過去情報に基づいて、曇っている場合と晴れている場合とで藻類の活動の活発さに差が生じてかび臭にも影響する傾向があると判断すれば、かび臭推定部27Aは、気象情報で特定される天候に応じて推定したかび臭の程度を調整してもよい。
【0048】
次に、第2の実施形態におけるかび臭推定装置2Aの動作について説明する。
図7は、第2の実施形態のかび臭推定装置2Aの動作を説明するフロー図である。図7に示すかび臭推定装置2Aの動作は、図5に示すかび臭推定装置2の動作と比較して、ステップS101〜S104の処理は同じである。よって、同じ処理であるステップS101〜S104の説明を省略する。
【0049】
ステップS104の処理で藻類量取得部24がかび臭を発生する藍藻類の量を取得すると、かび臭推定部27Aは、かび臭推定テーブル25を参照して、藻類量取得部24が取得したかび臭を発生する藍藻類の量に基づいて、かび臭の程度を示すランクを推定する。かび臭推定部27Aは、推定したランクに対して、かび臭情報格納部29より参照する過去情報及び入力処理部26Aからの入力情報に基づいて調整を行い、調整後のかび臭の程度を示すランクを、かび臭情報格納部29及び表示制御部28へ出力する(ステップS107)。
【0050】
かび臭情報格納部29は、かび臭推定部27Aから受信した調整後のかび臭の程度に関する情報を格納する(ステップS108)。表示制御部28は、かび臭推定部27が推定したかび臭の程度を示すランクを表示装置3に表示させる(ステップS105)。なお、表示制御部28は、かび臭の程度を示すランクと合わせて、関連する入力情報及び過去情報を表示装置3に表示させてもよい。
【0051】
以上に説明したように、第2の実施形態のかび臭推定装置2Aは、撮像部15で撮影した原水画像データに基づいて、推定した原水のかび臭の程度を、入力情報及び過去情報に基づいて調整することができる。これにより、第2の実施形態のかび臭推定装置2Aは、より精度よく原水のかび臭の程度を推定することができる。また、過去情報が、過去の粉末活性炭の投入量に関する情報を含んでいる場合は、かび臭推定装置2Aは、粉末活性炭を投入量についても、過去の情報を利用して求めて、より精度のよい粉末活性炭の投入量を推定して表示装置3に表示させることができる。
【0052】
かび臭推定装置2又はかび臭推定装置2Aの機能を1チップ化して、撮像部15内に組み込んでも良い。かび臭推定装置2又はかび臭推定装置2Aの機能を、パーソナルコンピュータや携帯情報端末上で稼働するアプリケーションとして実現してもよい。かび臭推定システム1は、撮像部15で撮影した画像データをネットワーク経由でサーバへ送信し、そのサーバ上にかび臭推定装置2又はかび臭推定装置2Aの機能を実現する構成であってもよい。
【0053】
上述したかび臭推定システム1は、かび臭を発生する藻類を検出する構成であったが、魚臭を発生する藻類(ウログレナ、クリプトモナス等)を検出する構成であってもよい、すなわち、かび臭推定システム1は、異臭を発生する藻類を検出して、異臭の程度を表示できるように構成すればよい。また、原水撮影装置5の構成は、従来からある濁度計の構成と同様の構成であるので、原水撮影装置5に、濁度を測定する濁度計を撮像部15の周辺に設けて、原水の濁度も測定できるようにすることも可能である。そして、かび臭推定システム1は、測定した濁度を異臭の程度を推定する際のパラメータとして用いてもよい。
【0054】
(第1及び第2の実施形態の変形例)
また、撮像部15は、例えば400nm〜900nmの波長における5〜10nm刻みの各波長の信号強度を各画素で取得可能なハイパースペクトルカメラで構成してもよい。撮像部15として、ハイパースペクトルカメラを用いると、形状判別処理部23による藻類の形状に関する処理を行わなくても、ほとんどの藻類を精度良く特定することができる。以下に、ハイパースペクトルカメラである撮像部15で撮影した画像データを処理して藻類を特定する方法についてかび臭推定システム1を例に説明する。
【0055】
図8は、ハイパースペクトルカメラである撮像部15で撮影した画像データに対する画像処理例を示す図である。前提として、ハイパースペクトルカメラである撮像部15は、「アナベナ」、「オシラトリア」、「フォルミジウム」、「ケイ藻」及び「ミクロキスティス」等の複数の藻類をそれぞれ撮影して、図3に示すような各藻類の分光スペクトルを特定する。ハイパースペクトルカメラである撮像部15は、上述した複数の藻類のいくつかを含む水を撮影することで、例えば図8の写真81、82に示すような画像データを得る。次に、写真81、82において、かび臭推定システム1は、類似した分光スペクトルを有する画素を同じ種類の藻類を示す画素と判別する判別分析を行う。かび臭推定システム1は、同じ種類の藻類を示す画素を同じ色で着色して出力すると、写真81に基づいた解析画像83が出力され、写真82に基づいた解析画像84が出力される。
【0056】
解析画像83、84に示されるように、同じ種類の藻類には同じ色が着色されており、藻類の種類を判別できていることが分かる。特に、かび臭を発生する「アナベナ」、「オシラトリア」、「フォルミジウム」が判別できている。
【0057】
藻類の種類によって人がかび臭を感じ始める1ml(ミリリットル)の水に含まれる量が異なる場合がある。例えば、フォルミジウムは1000個/ml以上でかび臭を感じることが多く、アナベナは100個/ml以上でかび臭を感じることが多い。よって、上述したように藻類の種類を特定することで、藻類の種類別に藻類の量を取得できれば、より精度の高いかび臭の程度を推定可能になる。
【0058】
上記各実施形態において、かび臭推定装置2又はかび臭推定装置2A内の各機能部は、ソフトウェア機能部であるものとしたが、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。
【0059】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、原水に含まれるかび臭がどの程度か、原水に含まれる異臭の原因となる藻類の量に基づいて提示することができる。また、かび臭の程度に応じた粉末活性炭の量を表示してもよい。これにより、経験的に予測して粉末活性炭の投入量を決めていた従来の方法に比べて、かび臭の程度に応じて粉末活性炭の投入量を最適に制御することができる。かび臭推定システム1は、持ち運びできる程度にコンパクトに構成することができ、大規模な工事をすることなく、既設の浄水場に導入できる。また、粉末活性炭の投入量を最適に制御することで、無駄な粉末活性炭の投入を防ぎ、コストを低減することができる。
【0060】
また、以上に説明したかび臭推定装置2又はかび臭推定装置2A内の機能をソフトウェアによって実現する場合は、それらの機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)−ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0061】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…かび臭推定システム、2、2A…かび臭推定装置、3…表示装置、4…入力装置、5…原水撮影装置、6…ケーブル、13…撮影用トレー、15…撮像部、16…光学系、17…光源、21…画像入力部、22…波長帯域処理部、23…形状判別処理部、24…藻類量取得部、25…かび臭推定テーブル、26、26A…入力処理部、27、27A…かび臭推定部、28…表示制御部、29…かび臭情報格納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8