特許第6556619号(P6556619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556619
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/04 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   B43K8/04 100
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-253308(P2015-253308)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114040(P2017-114040A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】坂元 大介
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−321162(JP,A)
【文献】 実開昭59−179081(JP,U)
【文献】 特開2014−148069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00− 8/24
B65D 83/00
B65D 83/08−83/76
B05C 7/00−21/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインキが貯留された本体と、前記本体の前端部に前後方向に移動可能に配置されるペン体と、前記ペン体の後方に配置され且つ前記ペン体の後方への押圧によって開口する弁装置と、前記ペン体の周囲に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体とを備えた筆記具であって、前記弁装置の前側に突起部が形成され、前記突起部が前記インキ吸収体の後端部に前方に没入され、前記インキ吸収体の後端部に高密度部が形成されることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記弁装置が、ペン体の後端に当接された弁体と、前記弁体との密接離間作動により開閉自在の弁孔を備える弁座部材と、前記弁体を前方に付勢する弾発体と、前記弁体、前記弁座部材及び前記弾発体を収容する弁収容筒とからなり、前記弁座部材の前面に前記突起部が形成される請求項1記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。詳細には、内部にインキが貯留された本体と、前記本体の前端部に前後方向に移動可能に配置されるペン体と、前記ペン体の後方に配置され且つ前記ペン体の後方への押圧によって開口する弁装置と、前記ペン体の周囲に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体とを備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の筆記具において、例えば、特許文献1には、速乾性顔料インキを収容したインキ収容管の先端に先口を螺合し、この先口の先端開口より突出したペン体を押圧後退させることによりインキ収容管の先端内部に配設されたポンプ機構を作動させるインキをペン体に導くペイントマーカーにおいて、密な海綿体部と粗な海綿体部とからなるインキ含浸体を、密な海綿体部をポンプ側にしてペン体の外周に被装したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−179081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の筆記具は、密度の異なる2種類の海綿体部を必要とするため、部品点数が増加し、組立作業を煩雑なものにする。
また、前記特許文献1の筆記具は、ペン体の周囲を密な海綿体部で覆っているため、空気の浸入を防止できるとしても、密な海綿体部にインキが満たされた状態にあると、ペン体の後方に十分に空気が行き渡らず、ペン体及び海綿体部に含浸されたインキをペン体先端から円滑に吐出させることができず、筆跡が途切れたり掠れたりすることがある。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、部品点数の増加を抑え、且つ、長期保管してもペン体及びインキ吸収体の内部のインキを円滑に吐出でき、筆跡が途切れたり掠れたりすることを防止できる筆記具を提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明において、「前」とはペン体側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、内部にインキが貯留された本体2と、前記本体2の前端部に前後方向に移動可能に配置されるペン体3と、前記ペン体3の後方に配置され且つ前記ペン体3の後方への押圧によって開口する弁装置4と、前記ペン体3の周囲に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体10とを備えた筆記具であって、前記弁装置4の前側に突起部65が形成され、前記突起部65が前記インキ吸収体10の後端部に前方に没入され、前記インキ吸収体10の後端部に高密度部10aが形成されることを特徴とする。
【0008】
前記第1の発明の筆記具1は、前記形態を採用したことにより、部品点数の増加を抑え、且つ、筆記具を長期保管しても、インキ吸収体10の高密度部10aで十分な量のインキを保持することで、ペン体3の乾燥を防止し、筆記開始後、即座に円滑なインキ吐出が可能となる。特に、前記高密度部10aが、インキ吸収体10の後端部に部分的に形成され、インキ吸収体10の全体または広範囲にわたって形成されていない。それにより、ペン体3後方への空気流通が確保され、ペン体3及びインキ吸収体10の内部のインキを円滑に吐出でき、筆跡が途切れたり掠れたりすることを防止できる。
前記突起部65は、インキ吸収体10の後端部の径方向外側に没入されることが好ましい。それにより、突起部65の径方向内側にインキ流通路が確保され、ペン体3及びインキ吸収体10に弁装置4からのインキをスムーズに供給することができる。前記突起部65は、周状に分散配置された複数の突起、または環状の突起が挙げられる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の筆記具1において、前記弁装置4が、ペン体3の後端に当接された弁体5と、前記弁体5との密接離間作動により開閉自在の弁孔64を備える弁座部材6と、前記弁体5を前方に付勢する弾発体7と、前記弁体5、前記弁座部材6及び前記弾発体7を収容する弁収容筒8とからなり、前記弁座部材6の前面に前記突起部65が形成されることを特徴とする。
【0010】
前記第2の発明の筆記具1は、弁座部材6の前面に前記突起部65が形成されることにより、特別な組立作業を必要とせず、インキ吸蔵体の後端部に高密度部10aを容易に形成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の筆記具は、部品点数の増加を抑え、且つ、長期保管してもペン体及びインキ吸収体の内部のインキを円滑に吐出でき、筆跡が途切れたり掠れたりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態のペン体上向き状態の縦断面図である。
図2図1のペン体下向き状態に要部拡大縦断面図である。
図3図1の弁座部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の筆記具の実施の形態を図面に従って説明する。(図1乃至図3参照)
【0014】
本発明の筆記具1は、内部にインキが貯留された本体2と、前記本体2の前端部に前後方向に移動可能に配置されるペン体3と、前記ペン体3の後方に配置され且つ前記ペン体3の後方への押圧によって開口する弁装置4と、ペン体3の周囲に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体10と、前記ペン体3及び前記インキ吸収体10を保持する先体9と、ペン体3側に着脱自在に装着されるキャップ11とを備える。
【0015】
・本体
前記本体2は、前端が開口され且つ後端が閉鎖された有底筒状体により形成され、合成樹脂のブロー成形により得られる。前記本体2の前端部は、縮径され、その外面に螺合部21が形成される。
前記本体2内には、インキと撹拌部材12が収容される。
【0016】
・ペン体
前記ペン体3は、棒状の繊維束の樹脂加工体である。前記ペン体3の両端部が先細状に形成される。前記ペン体3の先細状の両端部の頂部に凸曲面が形成される。
【0017】
・インキ吸収体
前記インキ吸収体10は、合成樹脂の連続気孔体(弾性を有するスポンジ)であり、環状に形成される。前記インキ吸収体10はペン体3が貫通する中心孔を備える。
【0018】
・弁装置
前記弁装置4は、ペン体3の後端に当接される弁体5と、前記弁体5との密接離間作動により開閉自在の弁孔64を備える弁座部材6と、前記弁体5を前方に付勢する弾発体7と、前記弁体5、前記弁座部材6及び前記弾発体7を収容する弁収容筒8とからなる、
【0019】
・弁体
前記弁体5は、棒状の前部51と、前記棒状の前部51より後方に一体に形成され且つ径方向外方に環状に突出される弁部52と、前記弁部52より後方に一体に形成される棒状の後部53とからなる。前記弁体5は合成樹脂の射出成形により得られる。
【0020】
・弁座部材
前記弁座部材6は、両端が開口された円筒体であり、合成樹脂の射出成形により得られる。前記弁座部材6は、前端に径方向外方に突出された環状の鍔部61が一体に形成される。前記鍔部61より後方に筒状部62が一体に形成される。前記筒状部62の後端内面には、径方向内方に突出する座部63が一体に形成される。前記座部63の中心には弁孔64が前後方向に貫設される。前記座部63に、前記弁体5の弁部52が密接離間可能である。前記弁座部材6の前面には、複数の周状に分散配置された突起部65が一体に形成される。前記突起部65は、鍔部61より前方に突出される。
【0021】
・弾発体
前記弾発体7は圧縮コイルスプリングよりなる。前記弾発体7の内部に、弁体5の棒状の後部53が挿通される。前記弾発体7の前端が、前記弁体5の弁部52の後面に係止され、前記弁体5が前方に付勢される。前記弾発体7の後端は、弁収容筒8の係止壁部83に係止される。
【0022】
・弁収容筒
前記弁収容筒8は、両端が開口された円筒体であり、合成樹脂の射出成形により得られる。前記弁収容筒8は、前端に径方向外方に突出された環状の鍔部81が一体に形成される。前記鍔部81より後方に筒状部82が一体に形成される。前記筒状部82の後端内面には、径方向内方に突出する係止壁部83が一体に形成される。前記係止壁部83の中心には、ガイド孔84が前後方向に貫設され、前記ガイド孔84に弁体5の棒状の後部53が挿通される。前記筒状部82の後部側壁には、複数のインキ流通孔85が径方向に貫設される。前記弁収容筒8の筒状部82の前端開口部内面には、前記弁座部材6の筒状部61の外面が圧入固着される。前記弁収容筒8の鍔部81前面は、前記弁座部材6の鍔部61後面に密接される。前記弁収容筒8の鍔部81前面は本体2の前端に密接される。前記弁収容筒8の筒状部82の前端部外面は本体2の前端開口部内面に圧入固着される。前記弁収容筒8内には、弁体5、弁座部材6及び弾発体7が収容され、ユニット化された弁装置4を得る。
【0023】
・先体
前記先体9は、両端が開口された先細円筒体であり、合成樹脂の射出成形により得られる。前記先体9の前端部内面には、前後方向に延びる複数本の縦リブ91が形成され、縦リブ91によりペン体3が摺動可能に保持される。前記先体9の後端部内面には、螺合部92が形成される。前記先体9の後端部内面の螺合部92が、前記本体2の前端部外面の螺合部21と螺着される。前記先体9の螺合部92の前方の内面には環状段部93が形成される。前記環状段部93が、前記弁座部材6の鍔部61前面に密接される。前記先体9と前記本体2との螺着により、先体9の環状段部93と本体2の前端との間で、弁座部材6の鍔部61と弁収容筒8の鍔部81が前後方向に挟持される。
【0024】
前記先体9内面の環状段部93の前方には、係止段部94が形成される。前記先体9内部にインキ吸収体10が収容される。前記係止段部94に前記インキ吸収体10の前面が係止される。
【0025】
前記弁座部材6の前面の突起部65が前記インキ吸収体10の後端部に前方へ没入される。それにより、前記インキ吸収体10の後端部に高密度部10aが形成される。前記突起部65は、インキ吸収体10の後端部の径方向外側に没入される。それにより、突起部65の径方向内側にインキ流通路が確保され、ペン体3及びインキ吸収体10に弁装置4からのインキをスムーズに供給することができる。
【0026】
本実施の形態の筆記具1は、内部にインキが貯留された本体2と、前記本体2の前端部に前後方向に移動可能に配置されるペン体3と、前記ペン体3の後方に配置され且つ前記ペン体3の後方への押圧によって開口する弁装置4と、前記ペン体3の周囲に配置される多孔質材料からなる環状のインキ吸収体10とを備えた筆記具であって、前記弁装置4の前側に突起部65が形成され、前記突起部65が前記インキ吸収体10の後端部に前方に没入され、前記インキ吸収体10の後端部に高密度部10aが形成されることにより、部品点数の増加を抑え、且つ、筆記具を長期保管しても、インキ吸収体10の高密度部10aで十分な量のインキを保持することで、ペン体3の乾燥を防止し、筆記開始後、即座に円滑なインキ吐出が可能となる。特に、前記高密度部10aが、インキ吸収体10の後端部に部分的に形成され、インキ吸収体10の全体または広範囲にわたって形成されていない。それにより、ペン体3後方への空気流通が確保され、ペン体3及びインキ吸収体10の内部のインキを円滑に吐出でき、筆跡が途切れたり掠れたりすることを防止できる。
【0027】
本実施の形態の筆記具1は、前記弁装置4が、弁座部材6の前面に前記突起部65が形成されることにより、特別な組立作業を必要とせず、インキ吸蔵体の後端部に高密度部10aを容易に形成できる。
【符号の説明】
【0028】
1 筆記具
2 本体
21 螺合部
3 ペン体
4 弁装置
5 弁体
51 棒状の前部
52 弁部
53 棒状の後部
6 弁座部材
61 鍔部
62 筒状部
63 座部
64 弁孔
65 突起部
7 弾発体
8 弁収容筒
81 鍔部
82 筒状部
83 係止壁部
84 ガイド孔
85 インキ流通孔
9 先体
91 縦リブ
92 螺合部
93 環状段部
94 係止段部
10 インキ吸収体
10a 高密度部
11 キャップ
12 撹拌部材
図1
図2
図3