(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A)60〜95重量部の、芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)1.0〜15.0重量部の、ゴム変性したグラフト重合体であって、前記グラフト重合体は、
B.1)5〜95重量部の、
B.1.1)50〜95重量部の、スチレン、α−メチルスチレン、メチルにより環−置換されたスチレン、C
1〜C
8−アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、C
1〜C
8−アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、またはこれらの化合物の混合物、および
B.1.2)5〜50重量部の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C
1〜C
8−アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、C
1〜C
8−アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、無水マレイン酸、C
1〜C
4−アルキルまたはフェニルによりN置換されたマレイミド、またはこれらの化合物の混合物
を含む混合物の
B.2)5〜95重量部のゴム含有グラフトベース上へのグラフト重合体であり、
前記ゴム含有グラフトベースのガラス転移温度は、−10℃未満であり、
C)1.0〜14.5重量部の、少なくとも一種の式(X)の環状ホスファゼン:
【化1】
(式中、
kは、1または1〜10の整数、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜5の数であり、
三量体含有量(k=1)が、成分Cに対して、65〜95mol%であり、
Rは、それぞれの場合に、同一であるか、または異なるものであって、アミンラジカル、C
1〜C
8アルキル、それぞれの場合に、所望によりハロゲン化、好ましくはフッ素でハロゲン化されている、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、C
1〜C
8アルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ、C
5〜C
6シクロアルキル、それぞれの場合に、所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されている、C
6〜C
20アリールオキシ、それぞれの場合に、所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素または臭素、および/またはヒドロキシルにより置換されている、好ましくはフェノキシまたはナフチルオキシ、C
7〜C
12アラルキル、それぞれの場合に、所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されている、好ましくはフェニル−C
1〜C
4アルキル、またはハロゲンラジカル、好ましくは塩素、またはOHラジカルである。)、
D) 0〜15.0重量部の、ゴムを含まない、ビニル(共)重合体またはポリアルキレンテレフタレート、
E) 0〜15.0重量部の添加剤、および
F) 0.05〜5.00重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、特に好ましくは0.1〜1.0重量部、の滴防止剤、
を含んでなり、
全ての重量部が、好ましくは組成物中の全ての成分A+B+C+D+E+Fの重量部の合計が100になるように、増減される、組成物。
成分Cが、プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼンおよびフルオロアルキルホスファゼンを含んでなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
それぞれの場合に成分Cに対して、前記三量体含有量(k=1)が65〜85mol%、前記四量体含有量(k=2)が10〜20mol%、より高級のオリゴマー状ホスファゼン含有量(k=3、4、5、6および7)が5〜15mol%、k≧8のホスファゼンオリゴマー含有量が0〜1mol%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
成分Bのグラフトベースが、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、およびアクリレート、ポリウレタン、クロロプレンおよびエチレン/酢酸ビニルゴムを含んでなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の概要】
【0024】
したがって、本発明の一目的は、高加水分解安定性、高耐薬品性(ESC挙動)および高Eモジュラスからなる特性の組合せが顕著であり、機械的特性が良好である。
【0025】
本発明のもう一つの目的は、僅かなホスファゼン含有量だけで良好な耐炎性を有する防炎性成形配合物を提供することであるが、防炎剤は該組成物の製造で実質的なコストファクターであるので、これらの組成物がコスト的により有利になる。
【0026】
好ましくは、これらの成形配合物は、耐炎性であり、薄い壁厚(即ち、1.5mmの壁厚)でもV−0によるUL94の必要条件に適合する。
【0027】
驚くべきことに、本発明の組成物は、
A)60〜95重量部、好ましくは65〜90重量部、より好ましくは70〜85重量部、特に好ましくは76〜88重量部の、芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)1.0〜15.0重量部、好ましくは3.0〜12.5重量部、特に好ましくは4.0〜10.0重量部の
ゴム変性したグラフト重合体、
C)1.0〜14.5重量部、好ましくは1.5〜9.0重量部、より好ましくは2.0〜8.0重量部、特に好ましくは4.5〜8.0重量部の、少なくとも一種の式(X)の環状ホスファゼン:
【化1】
(式中、
kは、1または1〜10の整数、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜5の数であり、
三量体含有量(k=1)が、成分Cに対して、60〜98mol%、より好ましくは65〜95mol%、特に好ましくは65〜90mol%、特に好ましくは65〜85mol%、特に70〜85mol%であり、
Rは、それぞれの場合に、同一であるか、または異なるものであって、アミンラジカル、C
1〜C
8アルキル、それぞれの場合に、所望によりハロゲン化、好ましくはフッ素でハロゲン化されている、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、C
1〜C
8アルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ、C
5〜C
6シクロアルキル、それぞれの場合に、所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されている、C
6〜C
20アリールオキシ、それぞれの場合に、所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素または臭素、および/またはヒドロキシルにより置換されている、好ましくはフェノキシまたはナフチルオキシ、C
7〜C
12アラルキル、それぞれの場合に、所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されている、好ましくはフェニル−C
1〜C
4アルキル、またはハロゲンラジカル、好ましくは塩素、またはOHラジカルである。)、
D) 0〜15.0重量部、好ましくは2.0〜12.5重量部、より好ましくは3.0〜9.0重量部、特に好ましくは3.0〜6.0重量部の、ゴムを含まない、ビニル(共)重合体またはポリアルキレンテレフタレート、
E) 0〜15.0重量部、好ましくは0.05〜15.00重量部、より好ましくは0.2〜10.0重量部、特に好ましくは0.4〜5.0重量部、の添加剤、および
F) 0.05〜5.00重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、特に好ましくは0.1〜1.0重量部、の滴防止剤
を含んでなり、
全ての重量部が、本特許出願では、好ましくは組成物中の全ての成分A+B+C+D+E+Fの重量部の合計が100になるように、増減させる。
【0028】
好ましい実施態様では、組成物は、成分A〜Fのみからなる。
【0029】
好ましい一実施態様では、組成物は、無機防炎剤および防炎性相乗剤、特に水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム−水酸化物およびヒ素および酸化アンチモンを含まない。
【0030】
好ましい実施態様では、組成物は、さらなる有機防炎剤、特にビスフェノールAジホスファートオリゴマー、レゾルシノールジホスファートオリゴマー、トリフェニルホスファート、オクタメチルレゾルシノールジホスファートおよびテトラブロモ−ビスフェノールAジホスファートオリゴカーボネートを含まない。
【0031】
好ましい実施態様は、個別にまたは相互の組合せで行うことができる。
【0032】
本発明は、成形配合物の製造方法、成形配合物の、成形製品の製造における使用、および限定されたオリゴマー分布を有する環状ホスファゼンの、本発明の組成物の製造における使用も提供する。
【0033】
本発明の成形配合物は、あらゆる種類の成形製品の製造に使用できる。成形製品は、射出成形、押出しおよび吹込み成形方法により製造できる。別の加工形態は、予め製造したシートまたはフィルムから、深絞りによる成形製品の製造である。
【0034】
そのような成形製品の例は、フィルム、形材、あらゆる種類のハウジング部品、例えば家庭用電気製品、例えばジュースプレス、コーヒーマシーンおよびミキサー、オフィスマシーン、例えばモニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンター、コピー機、シート、チューブ、電気用導管、窓、ドア−および建設分野向けの他の形材(室内用備品および屋外用途)、電気および電子部品、例えばスイッチ、プラグおよびソケット、および商業的車両用、特に自動車分野における、車体構造および室内部品である。
【0035】
特に、本発明の成形配合物は、例えば下記の成形製品または成形品、即ち、鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび他の自動車の室内仕上げ、小型トランスを含む電気装置のハウジング、情報処理および伝達用装置のハウジング、医療用装置のハウジングおよびシース、安全装置用のハウジング、衛生および浴室用備品の成形品、通気用開口部用カバーグリッドおよび園芸道具のハウジングの製造に使用できる。
【0036】
成分A
本発明に好適な成分Aとしての芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献中で公知であるか、または文献中で公知の方法により製造することができる(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えばSchnell、「ポリカーボネートの化学および物理学(Chemistry and Physics of Polycarbonates)」、Interscience Publishers、1964およびDE−AS 1495626、独国特許出願公開第2232877号、第2703376号、第2714544号、第3000610号および第3832396号参照、芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えば独国特許出願公開第3007934号参照)。
【0037】
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールと炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハロゲン化物の、相界面プロセスにより、所望により連鎖停止剤、例えばモノフェノール、を使用し、および所望により3官能性以上である枝分かれ剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノール、を使用して反応させることにより、製造される。芳香族ポリカーボネートは、ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートの溶融重合方法によっても製造することができる。
【0038】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを製造するためのジフェノールは、好ましくは式(I)のジフェノール:
【化2】
(式中、
Aは、単結合、C
1〜C
5アルキレン、C
2〜C
5アルキリデン、C
5〜C
6シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO
2−、C
6〜C
12アリーレンであり、そこには所望により異原子を含むさらなる芳香族環が縮合することができ、
Bは、それぞれの場合にC
1〜C
12アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、それぞれの場合に相互に独立して、0、1または2であり、
pは、1または0である。)
または式(II)または(III)のラジカルである。
【化3】
【化4】
(式中、
R
5およびR
6は、各X
1に対して個別に選択することができ、それぞれ相互に独立して、水素またはC
1〜C
6アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
X
1は、炭素であり、
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5であるが、ただし、少なくとも一個のX
1上で、R
5およびR
6は、同時にアルキルである。)
【0039】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)−C
1〜C
5アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C
5〜C
6シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα、α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの環−臭素化および/または環−塩素化された誘導体である。
【0040】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびそれらのジ−およびテトラ−臭素化または塩素化された誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0041】
ジフェノールは、個別に、またはどのような望ましい混合物としてでも使用できる。ジフェノールは、文献中で公知であるか、または文献で公知の製法により得られる。
【0042】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤の例は、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、並びに独国特許出願公開第2842005号による長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノールおよび4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノール、またはアルキル置換基中に合計8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。使用すべき連鎖停止剤の量は、一般的に使用する特定のジフェノールのモル合計に対して0.5mol%〜10mol%である。
【0043】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、重量平均分子量(M
w、ポリカーボネート標準によるGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)で測定)が15,000〜80,000g/mol、好ましくは19,000〜32,000g/mol、特に好ましくは22,000〜30,000g/molである。
【0044】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、公知の様式で、好ましくは使用するジフェノールの合計に対して好ましくは0.05〜2.0mol%の、3官能性以上を有する化合物、例えば3個以上のフェノール基を有する化合物、を配合することにより、枝分かれさせることができる。使用するポリカーボネートは好ましくは直鎖状であり、より好ましくはビスフェノールAを基剤とする。
【0045】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方が好適である。本発明による成分Aとしてのコポリカーボネートは、(使用するジフェノールの総量に対して)1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%の、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを使用しても製造できる。これらの化合物は公知(米国特許第3419634号)であり、文献中で公知の製法により製造することができる。ポリジオルガノシロキサンを含んでなるコポリカーボネートも好適であり、ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、例えば独国特許出願公開第3334782号に記載されている。
【0046】
芳香族ポリエステルカーボネートを製造するための芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸のジ酸ジクロライドである。
【0047】
イソフタル酸およびテレフタル酸の比1:20〜20:1のジ酸ジクロライドの混合物が特に好ましい。
【0048】
ポリエステルカーボネートの製造では、さらに炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、を二官能性酸誘導体として同時に使用する。
【0049】
芳香族ポリエステルカーボネートを製造するための好適な連鎖停止剤は、すでに述べたモノフェノールとは別に、それらのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であり、芳香族モノカルボン酸は、所望によりC
1〜C
22アルキル基またはハロゲン原子により置換されていてよい、並びに脂肪族C
2〜C
22モノカルボン酸クロライドである。
【0050】
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合、ジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸クロライド連鎖停止剤の場合、ジカルボン酸ジクロライドのモルに対して、それぞれの場合に0.1〜10mol%である。
【0051】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造には、一種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸をさらに使用できる。
【0052】
芳香族ポリエステルカーボネートは、公知の様式(これに関して独国特許出願公開第2940024号および独国特許出願公開第3007934号参照)で直鎖状および分岐鎖状の両方でよいが、直鎖状ポリエステルカーボネートが好ましい。
【0053】
使用できる枝分かれ剤の例は、3官能性以上のカルボン酸クロライド、例えばトリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸トリクロライド、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸テトラクロライド、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸テトラクロライドまたはピロメリト酸テトラクロライド、を0.01〜1.0mol%(使用するジカルボン酸ジクロライドに対して)、または3官能性以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6,−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6,−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシ−フェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]−フェノキシ)−メタンまたは1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]ベンゼン、を、使用するジフェノールに対して、0.01〜1.0mol%で使用することができる。フェノール系枝分かれ剤は、ジフェノールと共に使用することができ、酸塩化物枝分かれ剤は、酸ジクロライドと共に導入することができる。
【0054】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の比率は、自由に変えることができる。カーボネート基の比率は、エステル基およびカーボネート基の合計に対して、好ましくは100mol%まで、特に80mol%まで、特に好ましくは50mol%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部分およびカーボネート部分の両方は、重縮合生成物中に、ブロックの形態で、または不規則に分布して存在することができる。
【0055】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、それら自体で、またはどのような望ましい混合物ででも使用できる。
【0056】
成分B
グラフト重合体Bは、例えば少なくとも二種類の下記のモノマー、即ちクロロプレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルおよびアルコール成分中に1〜18C原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、から実質的に得られるゴム弾性特性を有する重合体、即ち例えば「有機化学の方法(Methoden der organischen Chemie)」(Houben−Weyl), vol.14/l, Georg Thieme−Verlag, Stuttgart 1961, pp 393−406、およびC.B. Bucknall、「靭性付与したプラスチック(Toughened Plastics) 」、Appl. Science Publishers, London 1977に記載されているような重合体である。
【0057】
特に好ましい重合体Bの例は、ABS重合体(エマルション、バルクおよび懸濁ABS)、例えばDE−OS2035390(=US−PS3644574)、DE−OS2248242(GB−PS1409275)またはUllmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie, vol.19 (1980), p.280以下に記載されている重合体である。
【0058】
グラフト共重合体Bは、フリー−ラジカル重合、例えばエマルション、懸濁、溶液またはバルク重合、好ましくはエマルションまたはバルク重合、により製造される。
【0059】
好ましい重合体Bは、部分的に架橋しており、ゲル含有量(トルエン中で測定)が、20重量%を超え、好ましくは40重量%を超え、特に60重量%を超える。
【0060】
ゲル含有量は、25℃で、好適な溶剤中で測定する(M. Hoffman,H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I und II, Georg Thieme−Verlag, Stuttgart 1977)。
【0061】
好ましいグラフト重合体Bは、
B.1)5〜95重量部、好ましくは30〜80重量部の
B.1.1)50〜95重量部の、スチレン、α−メチルスチレン、メチルにより環−置換されたスチレン、C
1〜C
8−アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、C
1〜C
8−アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、またはこれらの化合物の混合物、および
B.1.2)5〜50重量部の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C
1〜C
8−アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、C
1〜C
8−アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、無水マレイン酸、C
1〜C
4−アルキルまたはフェニルによりN置換されたマレイミド、またはこれらの化合物の混合物、
の混合物の
B.2)5〜95重量部、好ましくは20〜70重量部、のゴム含有グラフトベース
上へのグラフト重合体である。
【0062】
グラフトベースのガラス転移温度は、好ましくは−10℃未満である。
【0063】
本発明で他に指示が無い限り、ガラス転移温度は、標準DIN EN 61006により示差走査熱量測定(DSC)により、加熱速度10K/minで、中間点温度(正接法)としてTgの定義で、不活性ガスとして窒素を使用して測定する。
【0064】
特に好ましいグラフトベースは、ポリブタジエンゴムを基剤とするグラフトベースである。
【0065】
好ましいグラフト重合体Bの例は、スチレンおよび/またはアクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルでグラフト化されたポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体およびアクリレートゴム、即ちDE−OS1694173(US−PS3564077)に記載されている種類の共重合体、およびアクリルまたはメタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンおよび/またはアルキルスチレンでクラフト化されたポリブタジエン、ブタジエン/スチレンまたはブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ポリイソブテンまたはポリイソプレン、例えばDE−OS2348377(=US−PS3919353)に記載されている重合体である。
【0066】
特に好ましいグラフト重合体Bは、
I グラフト生成物に対して、10〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、特に20〜40重量%の少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル、または混合物に対して、10〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、特に20〜40重量%の、10〜50重量%、好ましくは20〜35重量%のアクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸エステル、および混合物に対して50〜90重量%、好ましくは65〜80重量%のスチレンの混合物
の
II グラフトベースとして、グラフト生成物に対して、30〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、特に50〜80重量%の、IIに対して、少なくとも50重量%のブタジエンラジカルを含んでなるブタジエン重合体
の上に対するグラフト化反応により得られるグラフト重合体である。
【0067】
本発明により、グラフト重合体としてABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)を使用するのが特に好ましい。
【0068】
このグラフトベースIIのゲル含有量は、好ましくは少なくとも70重量%(トルエン中で測定)であり、グラフト化Gの程度は、0.15〜0.55であり、グラフト重合体Bの平均粒子径d
50は、0.05〜2μm、好ましくは0.1〜0.6μmである。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステルIは、アクリル酸またはメタクリル酸と、1〜8C原子を有する一価アルコールのエステルである。メチル、エチルおよびプロピルメタクリレートが特に好ましい。
【0070】
ブタジエンラジカルとは別に、グラフトベースIIは、IIに対して50重量%までの、他のエチレン系不飽和モノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、アルコール成分中に1〜4C原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステル(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、ビニルエステルおよび/またはビニルエーテル、を含むことができる。好ましいグラフトベースIIは、純粋なポリブタジエンである。
【0071】
公知のように、グラフト化反応では、グラフトモノマーが、グラフトベース上に完全にグラフト化されている必要はなく、グラフト重合体Bも、本発明により、グラフトベースの存在下で、グラフトモノマーの重合により得られる生成物を意味する。
【0072】
グラフト化Gの程度は、グラフト化されたグラフト重合体モノマーと、グラフトベースの重量比を表し、無次元である。
【0073】
平均粒子径d
50は、粒子の50重量%が、それを超え、粒子の50重量%が、それ未満である直径である。平均粒子径は、超遠心機測定により決定される(W.Scholtan, H.Lange, Kolloid−Z.und Z.fuer Plymere 250(1972), 782−1796)。
【0074】
他の好ましいグラフト重合体Bの例は、
(a)グラフトベースとして、Bに対して、20〜90重量%のアクリレートゴム、および
(b)グラフトモノマーとして、Bに対して、10〜80重量%の、少なくとも一種の重合可能な、エチレン系不飽和モノマー、その、(a)の非存在下で形成された単独重合体または共重合体は、ガラス転移温度が25℃を超える
からなるグラフト重合体である。
【0075】
アクリレートゴムのグラフト重合体ベースは、ガラス転移温度が−20℃未満、好ましくは−30℃未満である。
【0076】
重合体Bのアクリレートゴム(a)は、好ましくはアクリル酸アルキルエステルの重合体であり、所望により、(a)に対して40重量%までの、他の重合可能な、エチレン系不飽和モノマーを含む。好ましい重合可能なアクリル酸エステルとしては、C
1〜C
8−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、n−チル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル、およびそれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0077】
架橋には、2個以上の重合可能な二重結合を有する単量体を共重合させることができる。架橋モノマーの好ましい例は、3〜8C原子を有する不飽和モノカルボン酸および3〜12C原子を有する不飽和一価アルコールまたは2〜4OH基および2〜20C原子を有する飽和ポリオール、例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ポリ不飽和複素環式化合物、例えばトリビニルおよびトリアリルシアヌレート、多官能性ビニル化合物、例えばジ−およびトリビニルベンゼン、およびトリアリルホスファートおよびジアリルフタレートである。
【0078】
好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、および少なくとも3個のエチレン系不飽和基を有する複素環式化合物である。
【0079】
特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンおよびトリアリルベンゼンである。
【0080】
架橋モノマーの量は、グラフトベースに対して好ましくは0.02〜5重量%、特に0.05〜2重量%である。
【0081】
少なくとも3個のエチレン系不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、その量を、グラフトベース(a)の1重量%未満に抑えるのが有利である。
【0082】
アクリル酸エステルとは別に、所望によりグラフトベース(a)を製造するのに使用できる、「他の」好ましい重合可能な、エチレン系不飽和モノマーの例は、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC
1〜C
6−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。グラフトベース(a)として好ましいアクリレートゴムは、ゲル含有量が少なくとも60重量%のエマルション重合体である。
【0083】
成分C
本発明で使用する成分Cのホスファゼンは、式(X)による環状ホスファゼンである。
【化5】
(式中、
Rは、それぞれの場合に、同一であるか、または異なるものであって、
−アミンラジカル、
−C
1〜C
8アルキル、それぞれの場合に所望によりハロゲン化されている、好ましくはフッ素で、より好ましくはモノハロゲン化されている、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、
−C
1〜C
8アルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ、
−C
5〜C
6シクロアルキル、それぞれの場合に所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されている、
−C
6〜C
20アリールオキシ、それぞれの場合に所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素または臭素および/またはヒドロキシルにより置換されている、好ましくはフェノキシまたはナフチルオキシ、
−C
7〜C
12アラルキル、それぞれの場合に所望によりアルキル、好ましくはC
1〜C
4アルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素により置換されている、好ましくはフェニル−C
1〜C
4アルキル、または
−ハロゲンラジカル、好ましくは塩素またはフッ素、または
−OHラジカルを表し、
kは、上に定義した通りである。)
【0084】
下記の、即ちプロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼンおよびフルオロアルキルホスファゼン、並びに下記の構造を有するホスファゼンが、好ましい。
【化6】
上記化合物中、k=1、2または3である。
【0085】
好ましい化合物は、k=1(Cl)のオリゴマー含有量が60〜98mol%であるフェノキシホスファゼン(全てのR=フェノキシ)である。
【化7】
【0086】
式(X)のホスファゼンが、例えば不完全反応した出発材料から、リン上でハロゲン−置換されている場合、このリン上でハロゲン−置換されたホスファゼンの比率は、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満である。
【0087】
ホスファゼンは、それ自体で使用できるか、または混合物として使用できる、即ち、ラジカルRは、同一であるか、または式(X)中の2個以上のラジカルが異なっていてもよい。好ましくはホスファゼンのラジカルRは、同一である。
【0088】
より好ましい実施態様では、同一のRを有するホスファゼンだけを使用する。
【0089】
好ましい一実施態様では、四量体(k=2)(C2)含有量は、成分Cに対して、2〜50mol%、より好ましくは5〜40mol%、さらに好ましくは10〜30mol%、特に好ましくは10〜20mol%である。
【0090】
好ましい一実施態様では、より高級のオリゴマー状ホスファゼン(k=3、4、5、6および7)(C3)の含有量は、成分Cに対して、0〜30mol%、より好ましくは2.5〜25mol%、さらに好ましくは5〜20mol%、特に好ましくは6〜15mol%である。
【0091】
好ましい一実施態様では、k≧8(C4)のオリゴマーの含有量が、成分Cに対して、0〜2.0mol%、好ましくは0.10〜1.00mol%である。
【0092】
より好ましい実施態様では、成分Cのホスファゼンは、含有量(C2〜C4)に関して上記の3条件全てを満たす。
【0093】
好ましくは、成分Cは、三量体含有量(k=1)が、成分Cに対して、65〜85mol%、四量体含有量(k=2)が10〜20mol%、より高級なオリゴマー状ホスファゼンの含有量(k=3、4、5、6および7)が5〜20mol%、およびk≧8のホスファゼンオリゴマーの含有量が0〜2mol%であるフェノキシホスファゼンである。
【0094】
特に好ましくは、成分Cは、三量体含有量(k=1)が、成分Cに対して、70〜85mol%、四量体含有量(k=2)が10〜20mol%、より高級なオリゴマー状ホスファゼンの含有量(k=3、4、5、6および7)が6〜15mol%、およびk≧8のホスファゼンオリゴマーの含有量が0.1〜1mol%であるフェノキシホスファゼンである。
【0095】
別の特に好ましい実施態様では、成分Cは、三量体含有量(k=1)が、成分Cに対して、65〜85mol%、四量体含有量(k=2)が10〜20mol%、より高級なオリゴマー状ホスファゼンの含有量(k=3、4、5、6および7)が5〜15mol%、およびk≧8のホスファゼンオリゴマーの含有量が0〜1mol%であるフェノキシホスファゼンである。
【0096】
kの秤量した算術平均は、下記の式に従ってnにより定義され、
【数1】
(式中、x
iは、オリゴマーk
iの含有量であり、従って、全てのx
iの合計は1である。)
【0097】
代わりの一実施態様では、nは、1.10〜1.75、好ましくは1.15〜1.50、より好ましくは1.20〜1.45、特に好ましくは1.20〜1.40(範囲の限界を含む)の範囲内である。
【0098】
ホスファゼンおよびそれらの製造は、例えば欧州特許出願公開第728811号、独国特許出願公開第1961668号および国際公開第97/40092号パンフレットに記載されている。
【0099】
それぞれのブレンド試料中のホスファゼンのオリゴマー組成物は、配合後、
31P−NMR(化学シフト、δ三量体6.5〜10.0ppm、δ四量体−10〜−13.5ppm、δより高級なオリゴマー−16.5〜−25.0ppm)によっても検出および定量できる。
【0100】
成分D
成分Eは、一種以上の熱可塑性ビニル(共)重合体またはポリアルキレンテレフタレートを含んでなる。
【0101】
好適なビニル(共)重合体Dは、ビニル芳香族化合物、ビニルシアン化物(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸C
1〜C
8−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(酸無水物およびイミド)を含んでなる群からの少なくとも一種のモノマーの重合体である。特に好適な(共)重合体は、
D.1 50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部のビニル芳香族化合物および/または環置換されたビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸C
1〜C
8−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、および
D.2 1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部のビニルシアン化物(不飽和ニトリル)(例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、および/または(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸(例えばマレイン酸)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば酸無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)からなる(共)重合体である。
【0102】
ビニル(共)重合体Dは、樹脂状で熱可塑性であり、ゴムを含まない。D.1としてスチレンとD.2としてアクリロニトリルの共重合体が特に好ましい。
【0103】
Dの(共)重合体は、公知であり、フリー−ラジカル重合、特にエマルション、懸濁、溶液またはバルク重合、により製造できる。(共)重合体は、好ましくは重量−平均分子量M
w(光散乱または沈降により測定)が15,000〜200,000g/mol、特に好ましくは100,000〜150,000g/molである。
【0104】
特に好ましい実施態様では、Dは、77重量%のスチレンおよび23重量%のアクリロニトリルの、重量−平均分子量M
wが130,000g/molの共重合体である。
【0105】
本発明により、一種類のポリアルキレンテレフタレート、または二種以上の異なったポリアルキレンテレフタレートの混合物を含んでなる組成物が成分Dとして好適である。
【0106】
本発明に関して、ポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸(またはその反応性誘導体、例えばジメチルエステルまたは酸無水物)およびアルカンジオール、環状脂肪族または芳香脂肪族ジオールおよびそれらの混合物、例えばプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールおよびシクロヘキシルジメタノール、から誘導されたポリアルキレンテレフタレートであり、本発明のジオール成分が3個以上の炭素原子を含む。従って、成分Dとして、好ましくはポリブチレンテレフタレートおよび/またはポリトリメチレンテレフタレートを使用する、最も好ましくはポリブチレンテレフタレートを使用する。
【0107】
本発明のポリアルキレンテレフタレートは、ジ酸のモノマーとして、5重量%までのイソフタル酸も含むことができる。
【0108】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、公知の方法により、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)および3〜21C原子を有する脂肪族または環状脂肪族ジオールから製造することができる(Kunststoff−Handbuch, Vol. VIII, P.695以下、Karl−Hanser−Verlag, Munich 1973)。
【0109】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジオール成分に対して少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%の1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールラジカルを含んでなる。
【0110】
テレフタル酸ラジカルとは別に、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、20mol%までの、8〜14C原子を有する他の芳香族ジカルボン酸の、または4〜12C原子を有する脂肪族ジカルボン酸のラジカル、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジ酢酸およびシクロヘキサンジカルボン酸のラジカルを含むことができる。
【0111】
1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールラジカルとは別に、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、20mol%までの、3〜12C原子を有する他の脂肪族ジオール、または6〜21C原子を有する環状脂肪族ジオール、例えば2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、2,2−ビス(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンのラジカル(独国特許出願公開第2407674号、第2407776号、第2715932号)を含むことができる。
【0112】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えば独国特許出願公開第1900270号および米国特許出願公開第3692744号に記載されているように、比較的少量の三価または四価のアルコールもしくは三または四塩基性カルボン酸を配合することにより、分岐させることができる。好ましい枝分かれ剤の例は、トリメシン酸、トリメリト酸、トリメチルロールエタン、トリメチルロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0113】
酸成分に対して、1mol%以下の枝分かれ剤を使用することが推奨される。
【0114】
特に好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸からのみ、またはその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル、例えばジメチルテレフタレート)および1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールから製造されたポリアルキレンテレフタレート(ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート)およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物である。
【0115】
他の好ましいポリアルキレンテレフタレートは、上記の酸成分の少なくとも2種類から、および/または上記のアルコール成分の少なくとも2種類から製造されたコポリエステルであり、特に好ましいコポリエステルは、ポリ(1,3−プロピレングリコール/1,4−ブタンジオール)テレフタレートである。
【0116】
ポリアルキレンテレフタレートは、それぞれの場合にフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で25℃で測定して、一般的に固有粘度が約0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gである。
【0117】
代わりの一実施態様では、本発明により製造されたポリエステルは、他のポリエステルおよび/または他の重合体との混合物でも使用することができ、ポリアルキレンテレフタレートと他のポリエステルの混合物が好ましい。
【0118】
他の添加剤E
組成物は、他の従来の重合体添加剤、例えば滴防止剤以外の防炎性相乗剤、潤滑剤および離型剤(例えばペンタエリトリトールテトラステアレート)、核形成剤、安定剤(例えばUV/光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、エステル交換反応防止剤、加水分解安定剤)、帯電防止剤(例えば導電性カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブおよび有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有重合体)、染料、顔料、充填剤および補強剤、特にガラス繊維、鉱物補強剤および炭素繊維を含むことができる。
【0119】
安定剤として、立体障害フェノールおよびホスファイトまたはそれらの混合物、例えばIrganox(登録商標)B900(Ciba Speciality Cemicals)、を使用するのが好ましい。離型剤としては、ペンタエリトリトールテトラステアレートを使用するのが好ましい。黒色顔料としてカーボンブラックを加えるのも好ましい(例えばblack pearls)。
【0120】
所望により使用する他の添加剤とは別に、特に好ましい成形配合物は、成分Eとして離型剤を、特に好ましくはペンタエリトリトールテトラステアレートを、0.1〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1.0重量部、特に好ましくは0.3〜0.8重量部の量で含んでなる。
【0121】
所望により使用する他の添加剤とは別に、特に好ましい成形配合物は、成分Eとして、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.4重量部、特に好ましくは0.06〜0.3重量部の、少なくとも一種の、例えば立体障害フェノール、ホスファイトおよびそれらの混合物を含んでなる群から選択された安定剤、特に好ましくはIrganox(登録商標)B900を含んでなる。
【0122】
PTFE(成分F)、ペンタエリトリトールテトラステアレートおよびIrganox B900と、成分Cとしてリンを基剤とする防炎剤の組合せも特に好ましい。
【0123】
成分F
滴防止剤として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはPTFE含有組成物、例えばPTFEと、スチレンまたはメチルメタクリレートを含んでなる重合体もしくは共重合体の、粉体として、または例えば成分Bと凝固した混合物としてのマスターバッチ、を使用する。
【0124】
滴防止剤として使用するフッ素化ポリオレフィンは、高分子量の、−30℃を超える、一般的に100℃を超えるガラス転移温度を有し、フッ素含有量が好ましくは65〜76重量%、特に70〜76重量%であり、平均粒子径d
50が0.05〜1000μm、好ましくは0.08〜20μmである。一般的に、フッ素化ポリオレフィンは、密度が1.2〜2.3g/cm
3である。好ましいフッ素化ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体である。フッ素化ポリオレフィンは公知である(Schildknechtによる「ビニルおよび関連する重合体(Vinyl and Related Polymers)」、John Wiley & Sons, Inc., New York, 1962, 頁484−494、Wallによる「フルオロ重合体(Fluorpolymers)」、Wiley−Interscience, John Wiley & Sons, Inc., New York, Volume 13, 1970、頁623−654、「最新プラスチック事典(Modern Plastics Encyclopedia)」、1970−1971, Volume 47, No. 10A, 1970年10月、McGraw−Hill, Inc., New York, 頁134および774、「最新プラスチック事典(Modern Plastics Encyclopedia)」、1975−1976、1975年10月、Volume 52、No. 10A, McGraw−Hill, Inc., New York,頁27、28および472、およびUS−PS 3671487、3723373および3838092参照)。
【0125】
フッ素化ポリオレフィンは、公知の方法により、例えば水性媒体中でテトラフルオロエチレンを、フリーラジカル形成触媒、例えばナトリウム、カリウムまたはアンモニアペルオキソジサルフェート、で、圧力7〜71kg/cm
2および温度0〜200℃、好ましくは温度20〜100℃で重合させることにより製造できる(さらなる詳細に関しては、例えば米国特許第2393967号参照)。フッ素化ポリオレフィンが使用される形態に応じて、これらの材料の密度は、1.2〜2.3g/cm
3でよく、平均粒子径は、0.05〜1000μmでよい。
【0126】
本発明で好ましいフッ素化ポリオレフィンは、平均粒子径が0.05〜20μm、好ましくは0.08〜10μm、密度が1.2〜1.9g/cm
3である。
【0127】
粉体形態で使用できる好適なフッ素化ポリオレフィンFは、平均粒子径が100〜1000μmで、密度が2.0g/cm
3〜2.3g/cm
3であるテトラフルオロエチレン重合体である。好適なテトラフルオロエチレン重合体粉体は、市販製品であり、例えばDuPontにより商品名テフロン(登録商標)で供給されている。
【0128】
所望により使用する他の添加剤とは別に、特に好ましい防炎性組成物は、成分Fとして、0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、特に好ましくは0.1〜1.0重量部のフッ素化ポリオレフィンを含んでなる。
【実施例】
【0129】
以下に記載する例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0130】
成分A
ビスフェノールAを基剤とする直鎖状ポリカーボネート、重量平均分子量M
w27,500g/mol(標準としてポリカーボネートで、ジクロロメタン中でGPCにより測定)
【0131】
成分B
ABSグラフト重合体は、ABS重合体に対して、アクリロニトリル27重量%およびスチレン73重量%の混合物43重量%を、ABS重合体に対して、粒子状の架橋したポリブタジエンゴム(平均粒子径d
50=0.35μm)57重量%の存在下で、エマルション重合により製造した。
【0132】
成分C
式(XI)の、表1に示すように、k=1のオリゴマー含有量40〜100mol%、k=2のオリゴマー含有量10〜35mol%、およびk≧3のオリゴマー含有量10〜35mol%を有するフェノキシホスファゼン。
【化8】
【0133】
【表1】
【0134】
成分D
スチレン77重量%およびアクリロニトリル23重量%の共重合体、重量平均分子量M
w130kg/mol(GPCにより測定)バルク製法により製造。
【0135】
成分E1
潤滑剤/離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート。
【0136】
成分E2
熱安定剤Irganox(登録商標)B900(80%Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)ホスファイト)および20%Irganox(登録商標)1076(2,6−ジ−tert−ブチル−4−(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)の混合物、BASF AG、Ludwigshafen)
【0137】
成分F
ポリテトラフルオロエチレン粉体、CFP6000N、DuPont
【0138】
成形配合物の製造および試験
表2に挙げた出発材料を、回転速度225rpm、処理量20kg/hおよび機械温度260℃の双軸スクリュー押出機(ZSK−25)(Werner und Pfleiderer)で配合し、造粒した。
【0139】
完成した顆粒を、射出成形機械(溶融温度240℃、金型温度80℃、流動フロント速度240mm/s)で、好適な試験試料に加工した。
【0140】
材料の特性を試験するために、下記の方法を使用した。
【0141】
IZODノッチ付き衝撃強さは、ISO 180/1Aにより、80mmx10mmx4mmのサイドゲートで形成した試験バーで測定した。
【0142】
溶接部強度anFは、ISO 179/leUにより、80mmx10mmx4mmのサイドゲートで形成した試験バーで測定した。
【0143】
燃焼挙動は、UL 94Vにより、127x12.7x1.5mmのバーで測定した。
【0144】
引張モジュラスおよび破断点伸びは、ISO 527により、170mmx10mmx4mmの引張ダンベル形で測定した。
【0145】
熱をかけた状態での寸法安定性は、ISO 306(Vicat軟化点、方法B、50N負荷、加熱速度120K/h)により、80mmx10mmx4mmのサイドゲートで形成した試験バーで測定した。
【0146】
応力亀裂挙動(ESC挙動)は、80mmx10mmx4mmバーで、処理温度240℃で、試験媒体としてなたね油を使用して試験した。試験片は、円形テンプレートを使用して予備緊張させ(予備緊張%)、室温で、試験媒体中で回復させた。応力亀裂挙動は、試験媒体中で亀裂または破壊が起こるのに要する時間として評価した。
【0147】
融成物流動性は、ISO 1133により、温度240℃、プランジャー負荷5kgで測定した、融成物体積流量(MVR)を基にして評価した。
【0148】
調製した組成物の加水分解安定性は、顆粒を7日間95℃、相対湿度100%で貯蔵(「FWL貯蔵」)後に、ISO 1133により、温度240℃、プランジャー負荷5kgで測定したMVRの変化として測定した。該貯蔵前のMVR値と比較して、MVR値の増加をΔMVR(加水分解)として計算したが、これは、下記の式により定義される。
MVR(FWL貯蔵後)−MVR(貯蔵前)
ΔMVR(加水分解)=―――――――――――――――――――・100%
MVR(貯蔵前)
【0149】
表2は、k=1(三量体)のホスファゼン含有量が、成分Cに対して50mol%≦x≦98mol%である例2、3、4および5の組成物は、本発明の目的、即ち良好な加水分解安定性(7d/95℃/相対湿度100%で貯蔵後に、MVR240℃/5kgの初期値からの≦65%偏差)と、耐薬品性(≧6時間後の試験バーの亀裂および/または破壊)、温度安定性およびEモジュラスと、1.5mmでUL 94V−0区分との組合せを達成していることが明らかである。
【0150】
【表2】