(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)
[Ir(L)
n(L’)
m] 式(1)
の化合物であって、一般式(1)の化合物は、式(2)の部分Ir(L)
nを含有する化合物:
【化1】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される:
Xは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRまたはNであり、ただし、配位子毎の最大2個の記号Xは、Nであり、
Yは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRまたはNであり、ただし、最大1個の記号Yは、Nであるか、または、2個の記号Yは、一緒になって以下の式(3)の基であり、
【化2】
式中、破線の結合は配位子におけるこの基の結合であり;
Rは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、Cl、Br、I、N(R
1)
2、CN、Si(R
1)
3、B(OR
1)
2、C(=O)R
1、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40個のC原子を有する分枝あるいは環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上の基R
1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
1C=CR
1、Si(R
1)
2、C=O、NR
1、O、SまたはCONR
1により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、D、FまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上の基R
1により置換されていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上の基R
1により置換されていてもよい)、または10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上の基R
1により置換されていてもよい)であり;ここで*が付された2個の隣接する基XがCRであるとき、それぞれの基Rが、C原子と一緒になって、式(25)〜(31)の1つの環を形成してもよく;
R
1は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、N(R
2)
2、CN、Si(R
2)
3、B(OR
2)
2、C(=O)R
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40個のC原子を有する分枝あるいは環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2、Si(R
2)
2、C=O、NR
2、O、SまたはCONR
2により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、D、FまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)、または10〜40個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)、または10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)であり;
R
2は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素基(さらにこれらにおいて、1つ以上のH原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)であり;
L’は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、Lとは異なり、その配位原子が、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C、N,OおよびSより成る群から選択される一価アニオン性二座配位子であり、ここで配位子L’は、式(32)〜(55)の二個の組み合わせであって、各場合に#で示される位置で互いに結合するこれらの基によって、これらの基から形成され、
【化3】
式(25)〜(31)中、R
1と、後掲のR
2は、上記に示される意味を有し、破線の結合は配位子中の二個の炭素原子の結合を示し、
A
1、A
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C(R
3)
2、O、S、NR
3またはC(=O)であり;
A
2は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C(R
1)
2、O、S、NR
3またはC(=O)であるか、または式(26)、(27)、(29)、(30)または(31)中のA
2−A
2は、上記で言及した基の組み合わせとは別に、−CR
2=CR
2−または1つ以上の基R
2により置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有するオルト結合アリーレンもしくはヘテロアリーレン基であってよく;
Gは、1つ以上の基R
2により置換されてよい1、2もしくは3個のC原子を有するアルキレン基であるか、または−CR
2=CR
2−もしくは1つ以上の基R
2により置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有するオルト結合アリーレンもしくはヘテロアリーレン基であり、
R
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、F、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または3〜10個のC原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、C=O、NR
2、O、SまたはCONR
2により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、DもしくはFにより置きかえられていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上の基R
2により置換されていてもよい)であり;ここで、同じ炭素原子に結合する2つの基R
2は、互いに、脂肪族もしくは芳香族環系を形成し、それによりスピロ系を形成してよく、
ただし、これらの基中の二個のヘテロ原子は、互いに直接結合せず、二個のC=Oは、互いに直接結合しない;
【化4】
式(32)〜(55)中
、基が金属に配位する位置は、*で示され、Eは、O、SまたはCR
2であり;
nは、1または2であり;
mは、1または2であり;
n+m=3であることを特徴とする。
式(2)の部分中の基X及びYから選択される1つの基がNである化合物であって、式(2)の部分が式(5)〜式(12)もしくは式(14)〜式(24)の構造から選択される請求項3に記載の化合物であって、前記Nに隣接するCR基中の置換基Rが、CF3、OCF3、1〜10個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するジアルキルアミノ基、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系またはアラルキルもしくはヘテロアラルキル基から選択される基である、請求項3に記載の化合物。
式(2)中の*が付された2個の隣接する基XがCRであり、それぞれの基Rが、C原子と一緒になって、式(25)〜(31)の一つの環を形成することを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物。
請求項1〜8の何れか一項に記載の少なくとも1種の化合物を含む、有機エレクトロルミネッセント素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機光学検出器、有機光受容体、有機電場消光素子、発光電気化学電池もしくは有機レーザーダイオードよりなる群から選択される電子素子。
請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物が、1つ以上の発光層で発光化合物として用いられることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセント素子である請求項12に記載の電子素子。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、金属錯体、およびこれらの金属錯体を含む電子素子、特に有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能的材料として用いられる有機エレクトロルミネッセント素子(OLED)の構造は、たとえばUS4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで用いられる発光材料は、次第に、蛍光ではなく燐光を呈する有機金属錯体に代わってきている(M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999、75、4〜6)。量子力学的な理由により、有機金属化合物を燐光エミッタとして使用すると、エネルギーおよび電力効率を最大4倍増大することが可能である。しかしながら、一般に、三重項発光を呈するOLEDでは、特に効率、駆動電圧および寿命に関して依然として改善が求められている。
【0003】
従来技術によれば、燐光OLEDにおいて用いられる三重項エミッタは、特に、たとえば、イミダゾフェナンスリジン誘導体またはジイミダゾキナゾリン誘導体を配位子として含有するイリジウム錯体等のイリジウム錯体である(WO2007/095118)。WO2011/044988は、配位子が、少なくとも一つのカルボニル基を含むイリジウム錯体を開示している。一般的に、特に、効率、駆動電圧および寿命に関してさらなる改善が、燐光エミッターの場合に望ましい。
【0004】
したがって、本発明の目的は、OLEDにおいてエミッタとして使用するのに適すると同時に、特に、効率、駆動電圧および/または寿命に関してOLEDの改善された特性をもたらす新規な金属錯体を提供することである。
【0005】
驚くべきことに、以下により詳細に記載されるある種のヘテロレプチック金属キレート錯体によって、この目的が達成され、有機エレクトロルミネッセント素子において改善された特性を示すことが判明した。これらの金属錯体は、特に、黄緑色、黄色、オレンジもしくは赤色で、すなわち、約540−650nmの範囲の発光最大で、発光する。したがって、本発明は、これらの金属錯体とこれらの錯体を含む電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【0006】
したがって、本発明は、
式(1)
[Ir(L)
n(L’)
m] 式(1)
の化合物であって、一般式(1)の化合物は、式(2)の部分Ir(L)
nを含有する化合物であり:
【化1】
【0007】
式中、使用された記号および添え字には以下が適用される:
Xは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRまたはNであり、ただし、配位子毎の最大2個の記号Xは、Nであり、
Yは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRまたはNであり、ただし、最大1個の記号Yは、Nであるか、または、2個の記号Yは、一緒になって以下の式(3)の基であり、
【化2】
【0008】
式中、破線の結合は配位子におけるこの基の結合であり;
Rは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、Cl、Br、I、N(R
1)
2、CN、Si(R
1)
3、B(OR
1)
2、C(=O)R
1、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40個のC原子を有する分枝あるいは環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
1C=CR
1、Si(R
1)
2、C=O、NR
1、O、SまたはCONR
1により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、D、FまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)、または10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)であり;ここで2つ以上の隣接するラジカルRは、互いに単環式もしくは多環式の脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合環系を形成していてもよく;
R
1は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、N(R
2)
2、CN、Si(R
2)
3、B(OR
2)
2、C(=O)R
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40個のC原子を有する分枝あるいは環式アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2、Si(R
2)
2、C=O、NR
2、O、SまたはCONR
2により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、D、FまたはCNにより置きかえられていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、または5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、または10〜40個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、または10〜40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)であり;ここで2つ以上の隣接するラジカルR
1は、互いに単環式もしくは多環式の脂肪族環系を形成していてもよく;
R
2は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、または1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/もしくはヘテロ芳香族炭化水素ラジカル、特に、炭化水素ラジカル(さらにこれらにおいて、1つ以上のH原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)であり;ここで2つ以上の置換基R
2は、互いに単環式もしくは多環式の脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく;
L’は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、Lとは異なり、その配位原子が、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C、N,OおよびSから成る群から選択される一価アニオン性二座配位子であり;
nは、1または2であり;
mは、1または2であり;
ただし、n+m=3である。
【0009】
このように、式(1)の錯体は、ヘテロレプチック錯体である。
【0010】
以下の説明において、「隣接する基X」は、基Xが、構造中で互いに直接結合することを意味する。
【0011】
さらに、ラジカルの定義における「隣接する」は、これらのラジカルが、同じ原子もしくは互いに直接結合している原子に結合していることを意味し、または直接結合しているC原子にこれらのラジカルが結合していない場合には、置換基が結合し得ることが可能な次の位置であることを意味する。このことを、以下の図で特定の配位子を参照することによって再び説明する。
【化3】
【0012】
アリール基は、本発明の意味では、6〜40個のC原子を含有し、ヘテロアリール基は、本発明の意味では、2〜40個のC原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、簡単な芳香族環、すなわちベンゼン、または簡単なヘテロ芳香族環、たとえばピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえばナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかの意味で使用される。
【0013】
芳香族環系は、本発明の意味では、環系中に6〜60個のC原子を含有する。ヘテロ芳香族環系は、本発明の意味では、環系中に2〜60個のC原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。芳香族またはヘテロ芳香族環系は、本発明の意味では、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基だけを含有するとは限らない系であって、その系の複数のアリールまたはヘテロアリール基が、非芳香族単位(好ましくは10%未満の、H以外の原子)、たとえばsp
3−混成のC、NもしくはO原子またはカルボニル基などによって連結されていてもよい系の意味で使用されることを意図する。したがって、たとえば9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の系は、2つ以上のアリール基が、たとえば直鎖状もしくは環式のアルキレン基によってまたはシリレン基によって中断されている系と同様に、本発明の意味ではやはり芳香族環系の意味で使用されることを意図する。
【0014】
環式アルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基は、本発明の意味では、単環式、二環式または多環式基の意味で使用される。
【0015】
本発明の目的では、さらに個々のH原子またはCH
2基が、前述の基により置換されていてもよいC
1−〜C
40−アルキル基は、たとえば、ラジカルであるメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、tert−ペンチル、2−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、tert−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、2−メチルペンチル、ネオヘキシル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、4−ヘプチル、シクロヘプチル、1−メチルシクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、1−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−(2,6−ジメチル)オクチル、3−(3,7−ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルの意味で使用される。アルケニル基は、たとえばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルの意味で使用される。アルキニル基は、たとえばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルの意味で使用される。C
1〜C
40−アルコキシ基は、たとえばメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシまたは2−メチルブトキシの意味で使用される。各場合において、前述のラジカルRにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して芳香族またはヘテロ芳香族環系に連結していてもよい、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系は、たとえばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis−またはtrans−インデノフルオレン、cis−またはtrans−モノベンゾインデノフルオレン、cis−またはtrans−ジベンゾインデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナンスリイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから得られる基の意味で使用される。
【0016】
本発明による錯体は、fac型(facial)もしくは擬fac型(pseudofacial)であることもできるし、またはmer型(meridional)もしくは擬mer型(pseudomeridional)であることもできる。
【0017】
好ましい一態様では、添え字n=1であり、すなわち、本発明の錯体は、1つの配位子Lと2つの配位子L’を含む。これは、特に、配位子L’が、1つの炭素原子と1つの窒素原子を介してイリジウムに配位するオルト金属化配位子であるならば、好ましい。
【0018】
さらに好ましい一態様では、添え字n=2であり、すなわち、本発明の錯体は、2つの配位子Lと2つの配位子L’を含む。これは、配位子L’が、1つの炭素原子と1つに窒素原子を介してイリジウムに配位するならば、好ましい態様であるのみならず、配位子L’が、2つの酸素原子、2つの窒素原子または1つの酸素原子と1つの窒素原子を介してイリジウムに配位するならば、好ましい態様である。
【0019】
本発明のさらに好ましい一態様では、配位子L中の合計0、1または2個の記号XとYは、Nである。特に、好ましくは、配位子L中の合計0または1個の記号XとYは、Nである。非常に、特に、好ましくは、XとYのいずれもNでなく、すなわち、記号Xは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRであり、かつ、記号Yは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRであるか、または記号Yは、一緒になって、式(3)の基である。本発明のさらに好ましい一態様では、炭素原子を介してイリジウムに配位する環中の記号Yは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRである。特別に好ましくは、全ての記号XとYは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、CRである。
【0020】
式(2)の好ましい態様は、以下の式(4)〜(12)の構造であり、
【化4】
【0021】
式中、使用された記号および添え字は、上記に示される意味を有する。
【0022】
2つの記号Yが、一緒になって、式(3)の基である好ましい部分ML
nは、以下の式(13)〜(24)の構造であり、
【化5】
【0023】
式中、使用された記号および添え字は、上記に示される意味を有する。
【0024】
上記構造において、オルト位で配位するイリジウムに結合するラジカルRは、好ましくは、H、D、Fおよびメチルから選択される。
【0025】
より大きな縮合配位子Lは、置換基Rの環形成を通じて生じてもよい。これは、以下の式(4a)〜(4e)の構造に対する例により示され、ここで、環形成は上記言及されたその他の配位子上で同様に可能である。
【化6】
【0026】
式中、使用された記号および添え字は、上記に示される意味を有する。
【0027】
式(2)の部分中の1つ以上の基XまたはYは、Nであるか、または式(5)〜(12)もしくは式(14)〜式(24)の場合には、水素または重水素ではない基Rは、この窒素原子に隣接する置換基として結合することが好ましい。このRは、好ましくは、CF
3、OCF
3、1〜10個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシ基、特に、3〜10個のC原子を有する分枝あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するジアルキルアミノ基、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系またはアラルキルもしくはヘテロアラルキル基から選択される。これらの基は、バルキーな基である。さらにこのラジカルRは、好ましくは、隣接するラジカルRとともに環を形成することもできる。そこで、これらは、好ましくは、以下により詳細に説明されるとおりの式(25)または(26)の構造である。
【0028】
窒素原子に隣接するラジカルRが、アルキル基であるならば、そこで、このアルキル基は、好ましくは、3〜10個のC原子を有する。2級または3級C原子が、配位子に直接結合するか、または基CH
2を介して配位子に結合するかの何れかである2級または3級アルキル基が、さらに好ましい。このアルキル基は、特に、好ましくは、以下の式(R−1)〜(R−33)の構造から選択され、各場合に、これらの基の配位子への結合は、また、以下に描かれ、
【化7】
【0029】
式中、Ligは、アルキル基の配位子への結合である。
【0030】
窒素原子に隣接するラジカルRが、アルコキシ基であるならば、そこで、このアルコキシ基は、好ましくは、3〜10個のC原子を有する。このアルコキシ基は、好ましくは、以下の式(R−34)〜(R−47)の構造から選択され、各場合に、これらの基の配位子への結合は、また、以下に描かれ、
【化8】
【0031】
式中、Ligは、アルコキシ基の配位子への結合である。
【0032】
窒素原子に隣接するラジカルRが、ジアルキルアミノ基であるならば、そこで、このジアルキルアミノ基は、好ましくは、1〜8個のC原子、特に、好ましくは、1〜6個のC原子を有する。適切なアルキル基の例は、メチル、エチルまたは基(R−1)〜(R−33)として上記示される構造である。ジアルキルアミノ基は、特に、好ましくは、以下の式(R−48)〜(R−55)の構造から選択され、各場合に、これらの基の配位子への結合は、また、以下に描かれ、
【化9】
【0033】
式中、Ligは、ジアルキルアミノ基の配位子への結合である。
【0034】
窒素原子に隣接するラジカルRが、アラルキル基であるならば、そこで、このアラルキル基は、好ましくは、以下の式(R−56)〜(R−69)の構造から選択され、各場合に、これらの基の配位子への結合は、また、以下に描かれ、
【化10】
【0035】
式中、Ligは、アラルキル基の配位子への結合であり、フェニル基は、各場合に1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい。
【0036】
窒素原子に隣接しているラジカルRが、芳香族またはヘテロ芳香族環系を表す場合、この芳香族またはヘテロ芳香族環系は、好ましくは5〜30個の芳香族環原子、特に好ましくは5〜24個の芳香族環原子を有する。この芳香族またはヘテロ芳香族環系は、さらに好ましくは、2つを超える芳香族6員環が互いに直接縮合しているアリールまたはヘテロアリール基を含有していない。芳香族またはヘテロ芳香族環系は、特に好ましくは、縮合アリールまたはヘテロアリール基を全く含有しておらず、特に非常に好ましくは、フェニル基だけを含有している。ここで芳香族環系は、好ましくは次式(R−70)〜(R−88)の構造から選択され、ここで、これらの基と配位子との連結はまた、各場合において下記のとおり描かれ、
【化11】
【0037】
式中、Ligは、芳香族またはヘテロ芳香族環系の配位子との結合であり、フェニル基は、各場合に1つ以上のラジカルR
1により置換されてよい。
【0038】
さらに、ヘテロ芳香族環系は、好ましくは、次式(R−89)〜(R−119)の構造から選択され、ここで、各場合にこれらの基の配位子への結合はまた、各場合において下記のとおり描かれ、
【化12】
【0039】
式中、Ligは、芳香族またはヘテロ芳香族環系の配位子への結合を示し、芳香族およびヘテロ芳香族基は、各場合に1つ以上のラジカルR
1により置換されてよい。
【0040】
本発明の好ましい1態様では、隣接するラジカルRおよび/またはR
1は、互いに環を形成しない。
【0041】
本発明の別の好ましい1態様では、式(2)の部分中の二個の隣接する基XがCRであり、および/または二個の隣接するラジカルYがCRであり、それぞれのラジカルRが、C原子と一緒になって、式(25)〜(31)の環を形成する:式(4)〜(24)の部分中で互いに直接結合するC原子に結合する2つのラジカルRが、それらが結合するC原子と一緒になって、その結果次の式(25)〜(31)の1つの構造が生じることが同様に好ましく:
【化13】
【0042】
式中、R
1とR
2は、上記示されるのと同じ意味を有し、複数のR
1は、互いに結合してもよく、それによりさらなる環系を形成してよく、破線の結合は、配位子中の二個の炭素原子の結合を示し、さらに、
A
1、A
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C(R
3)
2、O、S、NR
3またはC(=O)であり;
A
2は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C(R
1)
2、O、S、NR
3またはC(=O)であるか、または式(26)、(27)、(29)、(30)または(31)中のA
2−A
2は、上記言及した基の組み合わせとは別に、−CR
2=CR
2−または1つ以上のラジカルR
2により置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有するオルト結合アリーレンもしくはヘテロアリーレン基であってよく;
Gは、1つ以上のラジカルR
2により置換されてよい1、2もしくは3個のC原子を有するアルキレン基であるか、または−CR
2=CR
2−もしくは1つ以上のラジカルR
2により置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有するオルト結合アリーレンもしくはヘテロアリーレン基であり、
R
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、F、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または3〜10個のC原子を有する分枝もしくは環式アルキルもしくはアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、C=O、NR
2、O、SまたはCONR
2により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、DもしくはFにより置きかえられていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これらは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)であり;ここで、同じ炭素原子に結合する2つラジカルR
3は、互いに、脂肪族もしくは芳香族環系を形成し、それによりスピロ系を形成してよく、さらに、R
3は、隣接するラジカルRもしくはR
1と共に脂肪族環系を形成していてもよく;
ただし、これらの基中の二個のヘテロ原子は、互いに直接結合せず、二個の基C=Oは、互いに直接結合しない。
【0043】
式(25)〜(31)の基が、2つの基Xまたは2つの基Yが互いに直接結合する式(2)の部分の任意の位置に存在してよい。式(25)〜(31)の基が存在する好ましい位置は、次の式(2a)、(2b)および(2c)の部分であり
【化14】
【0044】
式中、使用された記号および添え字は、上記意味を有し、*は、各場合に、二個の隣接する基XがCRであり、それぞれのラジカルRが、C原子と一緒になって、式(25)〜(31)の1つの環を形成する位置を示す。
【0045】
上記に示した式(25)〜(31)の構造と好ましいとして言及されたこれらの構造のさらなる態様においては、二重結合が、2つの炭素原子間に形式的に示される。これら2つの炭素原子は、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系中に結合され、これら2つの炭素原子間の結合は、それにより、形式的に単結合の結合オーダーと二重結合の結合オーダーとの間であることから、これは、化学結合の単純化である。それゆえ、形式的な二重結合の引通しは、構造を限定するものと解釈されるべきではなく、その代わりこれが芳香族結合であることは当業者には明らかである。
【0046】
式(25)〜(31)の基においては、これらが酸性のベンジル位プロトンを含有していないことが必須である。ベンジル位プロトンは、配位子に直接結合している炭素原子に結合しているプロトンの意味で使用される。酸性のベンジル位プロトンの欠如は、式(25)〜(27)において、A
1およびA
3がC(R
3)
2を表す場合(R
3は水素に等しくならないように定義される)、A
1およびA
3を介して達成される。酸性のベンジル位プロトンの欠如は、二環式構造であることにより、式(28)〜(31)で達成される。厳格な空間配置のせいで、二環式構造の対応するアニオンがメソメリズム的に確立されていないため、R
1は、Hを表す場合には、ベンジル位プロトンよりも著しく酸性度が低い。式(28)〜(31)のR
1がHを表す場合でも、これは、本願の意味では非酸性プロトンである。
【0047】
式(25)〜(31)の構造の好ましい態様では、A
1、A
2とA
3は、ヘテロ原子、特に、OまたはNR
3であり、その他の基がC(R
3)
2またはC(R
1)
2であるか、または、A
1とA
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、OまたはNR
3であり、A
2は、C(R
1)
2である。本発明の特に好ましい態様では、A
1とA
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C(R
3)
2であり、A
2は、C(R
1)
2であり、特に、好ましくは、C(R
3)
2である。したがって、式(25)の好ましい態様は、式(25−A)、(25−B)、(25−C)および式(25−D)の構造であり、式(25)の特に、好ましい態様は、式(25−E)と(25−F)の構造であり、
【化15】
【0048】
式中、R
1とR
3は、上記に示される意味を有し、A
1、A
2とA
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、OまたはNR
3である。
【0049】
式(26)の好ましい態様は、次の式(26−A)〜(26−F)の構造であり、
【化16】
【0050】
式中、R
1とR
3は、上記に示される意味を有し、A
1、A
2とA
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、OまたはNR
3である。
【0051】
式(27)の好ましい態様は、次の式(27−A)〜(27−E)の構造であり、
【化17】
【0052】
式中、R
1とR
3は、上記に示される意味を有し、A
1、A
2とA
3は、出現する毎に、同じかまたは異なっており、OまたはNR
3である。
【0053】
式(28)の構造の好ましい一態様では、橋頭に結合しているラジカルR
1は、H、D、FまたはCH
3を表す。さらにA
2は、好ましくはC(R
1)
2またはO、特に好ましくはC(R
3)
2を表す。したがって、式(28)の好ましい態様は、式(28−A)と(28−B)の構造であり、式(28−A)の特に、好ましい態様は、式(28−C)の構造であり、
【化18】
【0054】
式中、使用された記号は、上記に示される意味を有する。
【0055】
式(29)、(30)および(31)の構造の好ましい一態様では、橋頭に結合しているラジカルR
1は、H、D、FまたはCH
3、特に、好ましくは、Hを表す。さらにA
2は、好ましくはC(R
1)
2を表す。したがって、式(29)、(30)および(31)の好ましい態様は、式(29−A)、(30−A)および(31−A)の構造であり、
【化19】
【0056】
式中、使用された記号は、上記に示される意味を有する。
【0057】
式(28)、(28−A)、(28−B)、(28−C)、(29)、(29−A)、(30)、(30−A)、(31)および(31−A)中の基Gは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい1,2−エチレン基(ここでR
2は、好ましくは出現する毎に、同じかまたは異なっており、Hまたは1〜4個のC原子を有するアルキル基、または6〜10個のC原子を有するオルト−アリーレン基(1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよいが、好ましくは置換されていない)、特にオルト−フェニレン基(これは、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよいが、好ましくは置換されていない)を表す。
【0058】
本発明のさらに好ましい一態様では、式(25)〜(31)中のR
3は、好ましい態様では、出現する毎に、同じかまたは異なっており、F、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3〜20個のC原子を有する分枝もしくは環式アルキル基(ここで各場合において、1つ以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2により置きかえられていてもよく、1つ以上のH原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、または5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよい)を表し;ここで、同じ炭素原子に結合している2つのラジカルR
3は、互いに脂肪族または芳香族環系を形成し、したがってスピロ系を形成していてもよく、さらに、R
3は、隣接するラジカルRまたはR
1と脂肪族環系を形成していてもよい。
【0059】
本発明の特に好ましい一態様では、式(25)〜(31)中のR
3は、好ましい態様では、出現する毎に、同じかまたは異なっており、F、1〜3個のC原子を有する直鎖アルキル基、特にメチル、または5〜12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
2により置換されていてもよいが、好ましくは置換されていない)を表し;ここで、同じ炭素原子に結合している2つのラジカルR
3は、互いに脂肪族または芳香族環系を形成し、したがってスピロ系を形成していてもよく、さらに、R
3は、隣接するラジカルRまたはR
1と脂肪族環系を形成していてもよい。
【0060】
式(25)の特に適切な基の例は、下に示した基である。
【化20-1】
【化20-2】
【化20-3】
【0061】
式(26)の特に適切な基の例は、下に示した基である。
【化21】
【0062】
式(26)、(30)および(31)の特に適切な基の例は、下に示した基である。
【化22】
【0063】
式(28)の特に適切な基の例は、下に示した基である。
【化23】
【0064】
式(29)の特に適切な基の例は、下に示した基である。
【化24】
【0065】
特に、このタイプの縮合2環構造は、構造のキラリティに基づき、キラル配位子Lを生じてもよい。ここで、鏡像異性的に純粋な配位子の使用とまたラセミ体の使用の両者が、適切であり得る。特に、本発明の金属錯体でのある配位子の一つの鏡像異性体だけでなく両鏡像異性体を使用することが適切であり得、その結果、たとえば、錯体(+L)
2(−L)Mまたは錯体(+L)(−L)
2Mが形成され、ここで、+Lまたは−Lは、各場合に配位子の対応する+または−鏡像異性体である。これは、配位子として+Lまたは−Lだけを含む錯体と比べて、対応する錯体の溶解性に関して有利である。
【0066】
さらなるまたは他のラジカルRが、式(2)の部分において結合している場合、これらのラジカルRは、好ましくは出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、N(R
1)
2、CN、Si(R
1)
3、C(=O)R
1、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2〜10個のC原子を有するアルケニル基、または3〜10個のC原子を有する分枝もしくは環式アルキル基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上のH原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、または5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)よりなる群から選択され;ここで2つの隣接するラジカルR、またはRとR
1は、互いに単環式あるいは多環式の脂肪族もしくは芳香族環系を形成していてもよい。これらのラジカルRは、特に好ましくは、出現する毎に、同じかまたは異なっており、H、D、F、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3〜10個のC原子を有する分枝もしくは環式アルキル基(ここで、1つ以上のH原子は、Fにより置きかえられていてもよい)、または5〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)よりなる群から選択され;ここで2つの隣接するラジカルR、またはRとR
1は、互いに単環式あるいは多環式の脂肪族もしくは芳香族環系を形成していてもよい。芳香族もしくはヘテロ芳香族環系の場合には、これは、互いに直接縮合する2個を超えない芳香族6員環を有し、特に、互いに直接縮合する芳香族6員環を絶対的に有さないことが好ましい。
【0067】
式(1)で生じることができる好ましい配位子L’は、以下に説明される。配位子L’は、定義により、出現する毎に、同じかまたは異なっており、C、N、OおよびSより成る群から選択される2つの原子を介してイリジウムに配位する1価の2座配位子である。好ましいのは、CとN、CとO、OとOまたはOとNを介してイリジウムに配位する配位子である。
【0068】
本発明の好ましい一態様では、配位子L’は、1,3−ジケトン、たとえばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、1,5−ジフェニルアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ビス(1,1,1−トリフルオロアセチル)メタン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンなどから得られる1,3−ジケトナート、3−ケトエステル、たとえばエチルアセトアセタートなどから得られる3−ケトナート、アミノカルボン酸、たとえばピリジン−2−カルボン酸、キノリン−2−カルボン酸などから得られるカルボキシラート、グリシン、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、N,N−ジメチルアミノアラニン、カルボキシラート、8−ヒドロキシもしくは8−チオヒドロキキノリン、たとえばメチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン、フェニルサリチルイミンなどから得られるサリチルイミナートから選択される。
【0069】
本発明のさらに好ましい一態様では、配位子L’は、イリジウムと共に、少なくとも1つのイリジウム−炭素結合を有するシクロメタル化された5員環または6員環、特に、環状金属化5員環を形成する二座の一価アニオン性配位子である。これらは、特に、有機エレクトロルミッセンス素子のための燐光金属錯体分野で一般的に使用される配位子、すなわち、フェニルピリジン、ナフチルピリジン、フェニルキノリン、フェニルイソキノリン等のタイプの配位子であり、これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい。このタイプの多様な配位子は、燐光エレクトロルミネッセント素子の分野の技術者に公知であり、当業者は、発明性を要さずに、このタイプのさらなる配位子を式(1)の化合物の配位子L’として選択することができよう。次式(32)〜(59)に示した2つの基の組合せは、一般に、一方の基が、中性原子を介して結合しており、他方の基が、負電荷の原子を介して結合している場合、この目的に一般的に特に適している。ここで、中性原子は、特に、中性窒素原子またはカルベン原子であり、負電荷の原子は、特に、負電荷の炭素原子、負電荷の窒素原子または負電荷の酸素原子である。次に、配位子L’は、式(32)〜(59)の基から、#によって示される位置において、各場合互いに結合しているこれらの基を介して形成され得る。基が金属に配位している位置は、
*によって示される。さらに、式(32)〜(59)の二個の基にそれぞれ結合する2つの隣接するラジカルRは、互いに脂肪族もしくは芳香族環系を形成する。
【化25】
【0070】
ここで、使用される記号は上記と同じ意味を有し、Eは、O、SまたはCR
2であり、好ましくは、各基中の最大二個の記号Xは、Nであり、特に、好ましくは、各基中の最大一個の記号Xは、Nである。非常に、特に、好ましくは、全ての記号Xは、CRである。
【0071】
本発明の、非常に特に、好ましい1態様では、配位子L’は、式(32)〜(59)の二個の基から形成される1価のアニオン性配位子であって、これらの基の1つは負電荷の炭素原子を介してイリジウムに配位し、これらの基の他方は中性の窒素原子を介してイリジウムに配位する。
【0072】
同様に、これらの基中の2つの隣接する記号Xは、上記言及した式(25)または(26)の基であることが好ましい。
【0073】
上記示された構造中でさらに好ましいラジカルRは、配位子LのラジカルRのように定義される。
【0074】
配位子LとL’は、構造に応じてキラルであってもよい。このことは特に、それらが式(28)〜(31)の二環式基を含有しているか、または1つ以上の立体中心を有する置換基、たとえばアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミノもしくはアラルキル基を含有している場合である。錯体の基本構造は、キラル構造であってもよいので、ジアステレオマーおよび鏡像異性体の複数の対の形成が可能である。次に、本発明による錯体は、様々なジアステレオマーまたは対応するラセミ体の混合物、および個々の単離されたジアステレオマーまたは鏡像異性体の両方を包含する。
【0075】
本発明による化合物は、適切な置換によって、たとえば相対的に長いアルキル基(約4〜20個のC原子)、特に分枝アルキル基、または任意に置換されているアリール基、たとえばキシリル、メシチル、または分枝テルフェニルもしくはクアテルフェニル基によって可溶性にすることもできる。次に、このタイプの化合物は、室温において、溶液から、たとえば、たとえば印刷法により、錯体を処理することができるように、一般的な有機溶媒に適切な濃度で溶けることができる。
【0076】
先に示されている好ましい態様は、所望に応じて互いに組み合わせることができる。本発明の特に好ましい一態様では、先に示されている好ましい態様も同時に適用される。
【0077】
本発明の金属錯体は、原理的に種々のプロセスで調製することができる。しかしながら、以下のプロセスが、特に適していることが判明した。
【0078】
したがって、本発明はさらに、対応する遊離配位子と、式(60)のイリジウムアルコキシド、式(61)のイリジウムケトケトナート、式(62)のイリジウムハロゲン化物、式(63)または(64)の二量体イリジウム錯体、またはアルコキシドおよび/またはハロゲン化物および/または水酸化物との反応による、式(1)の化合物を調製する方法に関し、
【化26】
【0079】
式中、記号L’、m、nおよびR
1は、上記示される意味を有し、Hal=F、Cl、BrまたはIである。
【0080】
同様に、アルコキシドおよび/またはハロゲン化物および/またはヒドロキシルならびにケトケトナートラジカルの両方を担持するイリジウム化合物を使用することも可能である。これらの化合物は、帯電していてもよい。出発原料として特に適している対応するイリジウム化合物は、WO2004/085449に開示されている。[IrCl
2(acac)
2]
─、たとえばNa[IrCl
2(acac)
2]が、特に、適している。さらに特に適しているイリジウム出発原料は、イリジウム(III)トリス(アセチルアセトナート)とイリジウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナート)である。
【0081】
錯体の合成は、好ましくはWO2002/060910およびWO2004/085449に記載されているとおりに実施される。ヘテロレプチック錯体は、たとえばWO05/042548にしたがっても合成することもできる。ここで合成は、たとえば熱的に、光化学的に、かつ/またはマイクロ波放射線によって活性化することもできる。さらに、合成は、高圧および/または高温でオートクレーブ中で実施することもできる。
【0082】
本発明の錯体の合成は、好ましくは、スキーム1にしたがって実施することができる。まず、遊離配位子L−Hと、適当なIr前駆体、好ましくは、イリジウム(III)クロライドハイドレートとの、プロトン性溶媒または溶媒混合物の存在下での反応により、塩素ブリッジされた2量体イリジウム錯体を得、次いでさらに、随意に塩基または塩等の付加物の添加により(WO2007/065523)、配位子L’と反応する。
【化27】
【0083】
ヘテロレプチックイリジウム錯体の調製は、塩素ブリッジされた2量体[(L’)
2IrCl]
2から出発して、遊離配位子L−Hの反応により、全く同様に実施することができる(スキーム2)。
【化28】
【0084】
このプロセスにより、クロマトグラフにより分離することができる式Ir(L)
2(L’)およびIr(L)(L’)
2のタイプの錯体を含む混合物が通常得られる。式Ir(L)
2(L’)およびIr(L)(L’)
2のタイプの錯体の相対量は、[Ir(L)
2Cl]
2対配位子L’の化学量論比により調節することができる。したがって、1:2〜約1:6の[Ir(L)
2Cl]
2対配位子L’の化学量論比の場合、式Ir(L)
2(L’)の生成物が主に生成され、約1:8〜約1:25の[Ir(L)
2Cl]
2対配位子L’の化学量論比の場合、式Ir(L)(L’)
2の生成物が主に生成される。
【0085】
塩素ブリッジされた2量体から出発する代わりに、合成は、配位子Lと式[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aもしくは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]Aのイリジウム錯体との反応または、配位子L’と式[Ir(L)
2(HOMe)
2]Aもしくは[Ir(L)
2(NCMe)
2]Aのイリジウム錯体との反応により実施することもでき、ここで、Aは各場合に、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の2極性プロトン溶媒中の、たとえば、トリフレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェイト等の非配位アニオンである。
【0086】
1:1の[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aもしくは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]A対配位子Lの化学量論比の場合、主として式Ir(L)(L’)
2が得られる。1:2以上の[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aもしくは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]A対配位子Lの化学量論比の場合、本質的に式Ir(L)
2(L’)が得られ、この方法が高収率のこれら錯体の調製に極めて適していることを意味している。式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2の2つのタイプの錯体を含む粗生成物は、クロマトグラフにより分離し、それにより精製することができる。
【0087】
ここで、説明された合成方法が、とりわけ、以下に示す本発明の構造の調製のために使用することができる。
【化29-1】
【化29-2】
【化29-3】
【化29-4】
【化29-5】
【化29-6】
【0088】
液相からの、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスによる本発明の化合物の加工のためには、本発明の化合物の調合物を必要とする。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。この目的のためには、二以上の溶媒の混合物を使用することが好ましい可能性がある。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物である。
【0089】
したがって、本発明は、さらに、本発明の化合物と少なくともさらなる化合物を含む調合物に関する。さらなる化合物は、たとえば、溶媒、特に、前述の溶媒の一つまたはこれらの溶媒の混合物である。しかしながら、さらなる化合物は、電子素子で同様に使用されるさらなる有機もしくは無機化合物、たとえば、マトリックス材料であってもよい。適切なマトリックス材料は、有機エレクトロルミッセンス素子に関連して以下に示される。
【0090】
このさらなる化合物は、ポリマー状であってもよい。
【0091】
前述の式(1)の錯体または先に示した好ましい態様は、電子素子における活性成分として使用することができる。したがって、本発明は、さらに式(1)の化合物または好ましい態様の1つの電子素子での使用に関する。さらに、本発明による化合物は、一重項酸素を発生させるため、または光触媒において用いることができる。
【0092】
したがって、本発明は、なおさらに、少なくとも一つの式(1)の化合物または好ましい態様を含む電子素子に関する。
【0093】
電子素子は、アノード、カソードおよび少なくとも1つの層を含む素子の意味で使用され、この層は、少なくとも1種の有機または有機金属化合物を含む。したがって、本発明による電子素子は、アノード、カソード、および前述の式(1)の少なくとも1種の化合物を含む少なくとも1つの層を含む。ここで好ましい電子素子は、少なくとも1つの層に前述の式(1)の少なくとも1種の化合物を含む、有機エレクトロルミネッセント素子(OLED、PLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検出器、有機光受容体、有機電場消光素子(O−FQD)、発光電気化学電池(LEC)または有機レーザーダイオード(O−レーザー)からなる群から選択される。有機エレクトロルミネッセント素子が特に好ましい。活性成分は、一般に、アノードとカソードの間に導入された有機または無機材料、たとえば電荷注入、電荷輸送または電荷阻止材料であるが、特に発光材料およびマトリックス材料である。本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセント素子における発光材料として特に良好な特性を呈している。したがって、有機エレクトロルミネッセント素子は、本発明の好ましい一態様である。
【0094】
有機エレクトロルミネッセント素子は、カソード、アノードおよび少なくとも1つの発光層を含む。有機エレクトロルミネッセント素子は、これらの層とは別に、さらなる層、たとえば各場合において、1つ以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層、電子阻止層、電荷発生層および/または有機もしくは無機p/n接合点を含んでいてもよい。たとえば、励起子阻止機能を有し、かつ/またはエレクトロルミネッセント素子における電荷平衡を制御する中間層も同様に、2つの発光層の間に導入されていてもよい。しかし、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在していなくてもよいことに留意されたい。
【0095】
ここで有機エレクトロルミネッセント素子は、1つの発光層または複数の発光層を含んでいてもよい。複数の発光層が存在する場合、これらは好ましくは、全体で複数の発光極大380nm〜750nmを有しており、その結果、全体的に白色発光が生じ、すなわち蛍光または燐光を発することができる様々な発光化合物が、発光層において使用される。好ましい態様は、三層が、青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する三層系(基本構造については、たとえばWO2005/011013参照)、または3つを超える発光層を有する系である。さらに好ましい1態様は、2層構造であり、2つの層は、青色および黄色もしくはシアン色およびオレンジ色発光を呈する。2層構造は、特に、照明用途に関心がある。本発明の化合物とこのタイプの態様は、黄色もしくはオレンジ色発光を呈することが多いことから、特に、適切である。白色発光エレクトロルミッセンス素子を照明用途、またはディスプレーのバックライトまたはディスプレーとしてのカラーフィルターに用いることができる。
【0096】
本発明の好ましい一態様では、有機エレクトロルミネッセント素子は、1つ以上の発光層における発光化合物として、式(1)の化合物または先に示した好ましい態様を含む。
【0097】
式(1)の化合物は、発光層において発光化合物として用いられる場合、好ましくは1種以上のマトリックス材料と組み合わせて用いられる。式(1)の化合物およびマトリックス材料を含む混合物は、エミッタおよびマトリックス材料を含む全体としての混合物に対して、1〜99体積%、好ましくは2〜90体積%、特に好ましくは3〜40体積%、特に5〜15体積%の式(1)の化合物を含む。それに応じて、混合物は、エミッタおよびマトリックス材料を含む全体としての混合物に対して、99.9〜1体積%、好ましくは98〜10体積%、特に好ましくは97〜60体積%、特に95〜85体積%のマトリックス材料を含む。
【0098】
用いられるマトリックス材料は、一般に、従来技術にしたがってこの目的で公知のあらゆる材料であり得る。マトリックス材料の三重項準位は、好ましくはエミッタの三重項準位よりも高い。
【0099】
本発明による化合物に適したマトリックス材料は、たとえばWO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680による、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえばCBP(N,N−ビスカルバゾイルビフェニル)、WO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527、WO2008/086851もしくはUS2009/0134784に開示されているm−CBPもしくはカルバゾール誘導体、たとえばWO2007/063754もしくはWO2008/056746によるインドロカルバゾール誘導体、たとえばWO2010/136109もしくはWO2011/000455によるインデノカルバゾール誘導体、たとえばEP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160によるアザカルバゾール、たとえばWO2007/137725による双極性マトリックス材料、たとえばWO2005/111172によるシラン、たとえばWO2006/117052によるアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえばWO2010/054729によるジアザシロール誘導体、たとえばWO2010/054730によるジアザホスホール誘導体、たとえばWO2010/015306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746によるトリアジン誘導体、たとえばEP652273もしくはWO2009/062578による亜鉛錯体、たとえばWO2009/148015によるジベンゾフラン誘導体、ベリリウム錯体、またはたとえばUS2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107もしくはWO2011/088877による架橋カルバゾール誘導体である。
【0100】
好ましくは、混合物として複数の異なるマトリックス材料を用いてもよい。この目的に適するのは、特に、少なくとも1種の電子輸送マトリックス材料および少なくとも1種の正孔輸送マトリックス材料または少なくとも2種の電子輸送マトリックス材料の混合物または少なくとも1種の正孔もしくは電子輸送マトリックス材料と、たとえばWO2010/108579に記載されているとおり、電荷輸送マトリックス材料、および電荷輸送に顕著な程度に関与していない、または本質的に関与していない電気的に不活性である広いバンドギャップを有する少なくとも一つのさらなる材料マトリックス材料の混合物である。好ましい組合せは、たとえば、芳香族ケトンもしくはトリアジン誘導体とトリアリールアミン誘導体もしくはカルバゾール誘導体の、本発明の金属錯体の混合マトリックスとしての使用である。
【0101】
2種以上の三重項エミッタをマトリックスと一緒にした混合物を用いることが、さらに好ましい。より短い波長の発光スペクトルを有する三重項エミッタは、より長い波長の発光スペクトルを有する三重項エミッタのための共存マトリックスとして働く。したがって、たとえば、青色もしくは緑色で発光する三重項エミッタを本発明の式(I)の錯体のための共存マトリックスとして用いることができる。
【0102】
カソードは、好ましくは、低仕事関数を有する金属、金属合金、または様々な金属、たとえばアルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイド(たとえばCa、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)などを含む多層構造を含む。アルカリ金属またはアルカリ土類金属および銀を含む合金、たとえばマグネシウムおよび銀を含む合金も適している。多層構造の場合、前記金属に加えて、相対的に高い仕事関数を有するさらなる金属、たとえばAgなどを使用してもよく、この場合、たとえば、Ca/AgまたはBa/Agなどの金属の組合せが一般に使用される。好ましくは、金属カソードと有機半導体の間に、高い比誘電率を有する材料の薄い中間層を導入してもよい。この目的では、たとえばアルカリ金属またはアルカリ土類金属フッ化物が適しているが、対応する酸化物またはカルボナート(たとえばLiF、Li
2O、BaF
2、MgO、NaF、CsF、Cs
2CO
3等)も適している。この層の層厚さは、好ましくは0.5〜5nmである。
【0103】
アノードは、好ましくは高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは真空に対して4.5eV超の仕事関数を有する。この目的に適するのは、一方では高い酸化還元電位を有する金属、たとえばAg、PtまたはAuなどである。他方では、金属/金属酸化物電極(たとえばAl/Ni/NiO
x、Al/PtO
x)が好ましい可能性がある。いくつかの用途では、有機材料の照射(O−SC)または光のカップリングアウト(OLED/PLED、O−LASER)を容易にするために、電極の少なくとも1つは、透明または部分的に透明でなくてはならない。好ましい構造は、透明アノードを使用する。ここで好ましいアノード材料は、導電性の混合金属酸化物である。酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)が特に好ましい。さらに、ドープされた導電性有機材料、特にドープされた導電性ポリマーが好ましい。
【0104】
従来技術にしたがって層に使用されるすべての材料は、一般に、さらなる層において使用することができ、当業者は、これらの材料のそれぞれを、電子素子において発明性を要せずに、本発明による材料と組み合わせることができよう。
【0105】
素子の寿命は、水および/または空気の存在下では大幅に短縮するので、素子は、それに応じて構造化され(用途に応じて)、接点が提供され、最後に密封される。
【0106】
1つ以上の層が、昇華法を用いることによってコーティングされ、その材料が、通常10
-5ミリバール未満、好ましくは10
-6ミリバール未満の初期圧力において真空昇華ユニットで蒸着されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子がさらに好ましい。初期圧力をさらにより低く、またはさらにより高く、たとえば10
-7ミリバール未満にすることも可能である。
【0107】
同様に、1つ以上の層が、OVPD(有機気相堆積)法を用いることによって、またはキャリアガス昇華を利用してコーティングされ、その材料が10
-5ミリバール〜1バールの圧力で適用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子も好ましい。この方法の特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)法であり、その材料は、ノズルを介して直接適用され、したがって構造化される(たとえばM.S.Arnoldら、Appl.Phys.Lett.2008、92、053301)。
【0108】
1つ以上の層が、たとえばスピンコーティングによって、または任意の所望の印刷法を用いて、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷もしくはオフセット印刷などによって、特に好ましくはLITI(光誘導熱画像化、熱転写印刷)またはインクジェット印刷によって溶液から生成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子がさらに好ましい。この目的では、可溶性化合物が必要であり、この化合物は、たとえば適切な置換を介して得られる。
【0109】
有機エレクトロルミネッセント素子は、1つ以上の層を溶液から適用し、気相堆積によって1つ以上の他の層を適用することによって、混成系として製造してもよい。したがってたとえば、式(1)の化合物およびマトリックス材料を含む発光層を溶液から適用し、真空気相堆積によって正孔阻止層および/または電子輸送層を最上部に適用することが可能である。
【0110】
これらの方法は、一般に当業者に公知であり、式(1)の化合物または先に示した好ましい態様を含む有機エレクトロルミネッセント素子に問題を生じることなく、当業者によって適用され得る。
【0111】
本発明による電子素子、特に有機エレクトロルミネッセント素子は、以下の驚くべき利点の1つ以上によって従来技術とは区別される。
【0112】
1.発光材料として式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子は、非常に良好な寿命を有する。
【0113】
2.発光材料として式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子は、非常に良好な効率を有する。
【0114】
3.発光材料として式(1)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子は、非常に低い駆動電圧を有する。
【0115】
先に列挙したこれらの利点には、他の電気的特性の障害が伴わない。特に、本発明の化合物の寿命および/または効率は、対応するホモレプチック錯体IrL
3の寿命もしくは効率よりも良好である。
【0116】
本発明を、以下の例によってより詳細に説明するが、それにより本発明が制限されるものではない。当業者は、発明性を要することなく本説明に基づいてさらなる電子素子を製造することができ、したがって特許請求の範囲の全般にわたって本発明を実施することができよう。
【0117】
例:
以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下、無水溶媒中で行われる。金属錯体を遮光して、または黄色光下で、追加的な処理をする。溶媒および試薬を、たとえばSigma−ALDRICHまたはABCRから購入することができる。文献から知られた化合物の場合に、番号は、そのうちの幾つかのケースでは角括弧内に示されており、対応するCAS番号である。
【0118】
A:シントンSの合成:
例S1:5,6−ジブロモ−1,1,2,2,3,3−ヘキサメチルインダン、S1
【化30】
【0119】
1.3gの無水塩化鉄(III)を、1000mlのジクロロメタン中の101.2g(500ミリモル)の1,1,2,2,3,3−ヘキサメチルインダン[91324−94−6]の溶液に添加し、その後、遮光して、76.8ml(1.5モル)の臭素と100mlのジクロロメタンとを、温度が25℃を超えないような速度で、滴下し、必要ならば、混合物を冷却水浴を使用して向流冷却する。添加が終わったとき、反応混合物を35℃でさらに30時間撹拌し、次いで1000mlの飽和亜硫酸ナトリウム溶液をゆっくりと添加し、水相を分離させ、有機相をその度毎に1000mlの水で三度洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させ、短いシリカゲルカラムを通して濾過し、次いで溶媒を取り除く。最後に、固形分をエタノールから一度再結晶させる。収率:163.9g(455ミリモル)、91%;純度:
1H−NMRによると約98%。
【0120】
以下の化合物を同じように調製する:
【化31】
【0121】
例S6:7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノナフタレン−6−カルボン酸、S6
【化32】
【0122】
J.Organomet.Chem.、L.S.Chenら、1980、193、283−292と同様の手順。−110℃に予冷したヘキサン中40ml(100ミリモル)のn−ブチルリチウム2.5Mを、1000mlのTHFと1000mlのジエチルエーテルとの混合物中の−110℃に冷却した30.2g(100ミリモル)の6,7−ジブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノナフタレン[42810−32−2]の溶液に、温度が−105℃を超えないような速度で添加する。混合物をさらに30分間撹拌し、次いで、二酸化炭素の乾燥蒸気を、15分間激しく撹拌しながら、反応混合物へ通す。次いで、混合物をゆっくりと室温に温まらせ、55mlの2N HClを添加し、混合物をさらに30分間、室温で撹拌し、次いで溶媒を真空中で取り除く。残留物を500mlのジクロロメタン中に溶解させ、有機相を300mlの0.1N HClで一度、100mlの飽和塩化ナトリウム溶液で一度洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させる。最後に、溶媒を真空中で除去し、残留物を150mlのMeOH中で撹拌することにより洗浄し、無色の固形分を吸引濾過し、少量のメタノールで洗浄し、真空中で乾燥させる。収率:17.7g(66ミリモル)、66%;純度:
1H−NMRによると約95%。
【0123】
以下の化合物を同じように調製する:
【化33】
【0124】
例S12:3−ブロモビフェニルー2−塩化カルボニル、S12
【化34】
【0125】
94.3ml(1.1モル)の塩化オキサリルを、1000mlのTHFと0.1mlのDMF中の277.1g(1.0モル)の3−ブロモビフェニルー2−カルボン酸[94654−52−1]の懸濁液に、適度なガスの発生(注意:HCLとCO)が開始するような速度で滴下する。添加が終わったとき、ガスが発生し終えるまで、撹拌を40℃で継続し、次いで、過剰な塩化オキサリルとTHFとを真空中で40℃で除去する。残留物を配位子の合成のためにさらに精製せずに使用する。収率:定量的。
【0126】
以下の化合物を同じように調製する:
【化35-1】
【化35-2】
【0127】
例L1:6H−イソキノ[2,1−a]−キナゾリン−6−オン、L1
【化36】
【0128】
219.5g(1.0ミリモル)の2−塩化ブロモベンゾイル[7154−66−7]と、150mlのジクロロメタンとの混合物を、144.2g(1.0モル)の1−アミノイソキノリン[1532−84−9]と、180.2ml(1.3モル)のトリエチルアミンと、1300mlのジクロロメタン(DCM)との激しく撹拌した、0℃に冷却した混合物へ、温度が+5℃を超えないような速度で、滴下する。添加が終わったとき、混合物を室温までゆっくりと温まらせ、室温でさらに12時間撹拌する。次いで、反応混合物をその度毎に、4×1000mlの水で、および1000mlの飽和塩化ナトリウム溶液で一度洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させる。乾燥剤を濾過し、1000mlのDCMでゆすぎ、その後、濾液を真空中でDCMから完全に除く。残留物を2000mlのo−キシレン中で溶解させ、327.2g(1.0ミリモル)の炭酸セシウムと、9.5g(50ミリモル)のヨウ化銅(I)と、200gのガラスビーズ(直径3mm)を滴下し、混合物を48時間、非常に激しく撹拌しながら、還流下で加熱する。o−キシレンを実質的に蒸留し、反応混合物を冷ましておき、1500mlのDCMを添加し、反応混合物を短いセライト床を通して吸引濾過し、床をその度毎に300mlのDCMで二度ゆすぎ、次いで、溶媒を真空中で除去し、残留物を50℃で2時間、1000mlのエタノールと共に撹拌することにより洗浄する。冷却後、固形分を吸引濾過し、200mlのエタノールで一度洗浄し、真空中で乾燥させ、次いで、T約160℃/p約1×10
-4ミリバールで昇華させ、よって揮発性および非揮発性成分を容易に除去する。収率:94.5g(383ミリモル)、38%、純度:
1H−NMRによると>99.5%。
【0129】
以下の配位子Lを同じように調製する:
【化37-1】
【化37-2】
【化37-3】
【化37-4】
【化37-5】
【0130】
C:金属錯体の合成:
1)式[Ir(L)
2Cl]
2の錯体:
10ミリモルのナトリウム ビスアセチルアセトナトジクロロイリデート(III)[770720−50−8]と、22ミリモルの配位子Lと、ガラス被覆磁気撹拌棒との混合物を、不活性ガス(窒素またはアルゴン)下で、ねじ蓋とTeflonセプタムとを備えた円筒形の反応容器(容量40ml)へ導入する。反応混合物を、溶融物が形成されるまで、撹拌しながらゆっくりと加熱する。次いで、最終温度(以下参照)に達するまで、温度を20分毎に20℃刻みでゆっくりと増加し、形成するアセチルアセトンはセプタムのカニューレを介して排出される。最終温度に達したとき、反応混合物をさらに20時間、最終温度に維持する。保護ガス下で冷却後、焼結ケーキを機械的に粉砕し、指示された100mlの懸濁媒体(懸濁媒体は、その中で配位子が容易に溶解できるが、式[Ir(L)
2Cl]
2のクロロ二量体がその中で低い溶解度を有するように選択され、典型的な懸濁媒体はジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、DCM、アセトン、酢酸エチル、トルエン等である)中で、100gのガラスビーズ(直径3mm)と共に3時間撹拌し、そのプロセスで機械的に温浸する。微細懸濁液をガラスビーズからデカントして移し、依然として約2当量のNaClを含有しており、以下、粗製クロロ二量体と呼ぶ固形分[Ir(L)
2Cl]
2を吸引濾過し、真空中で乾燥させる。このようにして得られた粗製クロロ二量体を、その後、さらに精製しないで用いる。
【0131】
以下のイリジウム錯体が同じように得られる:
【表1-1】
【表1-2】
【0132】
2)O−O、O−N、N−Nドナー原子を含む配位子L’を有する式Ir(L)
2(L’)の錯体
1)で得られた式[Ir(L)
2Cl]
2の粗製クロロ二量体を、75mlの2−エトキシエタノールと25mlの水との混合物中に懸濁させ、13ミリモルの配位子L’と15ミリモルの炭酸ナトリウムとを添加する。還流下で20時間の撹拌および遮光後、さらに75mlの水を滴下し、混合物を冷却し、固形分を吸引濾過し、その度毎に50mlの水で三度、その度毎に50mlのメタノールで三度、洗浄し、真空中で乾燥させる。無水の固形物を連続高温抽出器中の3−5cmの深さを有するセライト床に置き、次いで、指示された抽出剤(最初に、約300mlの量で導入し、抽出剤は錯体が昇温ではその中で容易に溶解し、低温ではその中で低い溶解度を有するように選択され、特に好適な抽出剤は、炭化水素、たとえばトルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、o−ジクロロベンゼン、アセトン、酢酸エチル(EA)、ジクロロメタン(DCM)等である)で抽出する。抽出が完了したとき、抽出剤を約100mlになるまで真空中で蒸発させる。抽出剤での溶解度が極めて良好な金属錯体は、溶出液を50mlまで蒸発させ、200mlのメタノールを添加することによって結晶化させる。このようにして得られた懸濁液の固形分を、吸引濾過し、約50mlのメタノールで一度洗浄し、乾燥させる。乾燥後、金属錯体の純度を、NMRおよび/またはHPLCによって測定する。純度が99.5%未満である場合、熱抽出工程を反復し、純度が99.5−99.9%に達したら、金属錯体を加熱または昇華させる。高温抽出法による精製に加えて、好適な溶出剤(以下参照)を用いて、シリカゲルまたは酸化アルミニウムでクロマトグラフィーにより精製を行うこともできる。加熱を、約200−300℃の温度範囲において高真空(p約10
-6ミリバール)で実施する。昇華を、約250−400℃の温度範囲において高真空(p約10
-6ミリバール)で実施し、この場合、昇華は好ましくは分別昇華の形態で実施される。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0133】
2)[Ir(L)
2Cl]
2からの式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2のヘテロレプチックなトリス−オルト−金属化錯体
前述の化合物を、双極性プロトン性溶媒(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)中での、式[Ir(L)
2Cl]
2の粗製クロロ二量体と、配位子L’との反応により得る。クロマトグラフィーにより分離することができる式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2との両錯体タイプの含む混合物が、通常、形成される。式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2との錯体タイプの相対量を、[Ir(L)
2Cl]
2と共存配位子L’との化学量論比を通じて制御することができる。よって、[Ir(L)
2Cl]
2とL’との化学量論比が1:2〜約1:6の場合、式Ir(L)
2(L’)の生成物が多くを占めて形成され、一方、[Ir(L)
2Cl]
2とL’との化学量論比が約1:8〜約1:25の場合、式Ir(L)(L’)
2の生成物が多くを占めて形成される。
【0134】
1)で得られた式[Ir(L)
2Cl]
2の粗製クロロ二量体を最初に、指示された100mlの溶媒中に導入する。反応混合物を撹拌しながら、不活性ガス(窒素またはアルゴン)蒸気を通すことにより脱気させる。次いで、指示された量の配位子L’を添加し、混合物を遮光して48時間、160℃で撹拌する。70℃に冷却後、100mlのエタノールを滴下し、混合物を撹拌して冷ましておき、沈殿した固形分を吸引濾過し、その度毎に30mlのエタノールで三度洗浄し、真空中で乾燥させる。式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2の錯体をクロマトグラフィーにより単離させ、その進行をTLCカードにより監視する。清浄な部分を結合させ、実質的に蒸発乾固させ、その期間に生成物はしばしば晶出される。次いで、エタノールを添加し、生成物をEtOHと共に保護ガスフリットへ移し、少量のエタノールで複数回洗浄し、真空中で乾燥させる。必要ならば、生成物を、純度>99.5%またはそれ以上に達するまで、再度クロマトグラフィーにかける。加熱を、約200−300℃の温度範囲において高真空(p約10
-6ミリバール)で実施する。昇華を、約250−400℃の温度範囲において高真空(p約10
-6ミリバール)で実施し、この場合、昇華は好ましくは分別昇華の形態で実施される。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0135】
3)[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aまたは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]Aからの式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2のヘテロレプチックなトリス−オルト−金属化錯体
前述の化合物を、双極性プロトン性溶媒(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)中での、配位子Lと、式[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aまたは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]A(A=非配位性アニオン、たとえばトリフラート、テトラフルオロホウ酸塩等)のイリジウム錯体との反応により得る。[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aまたは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]AとLとの化学量論比が1:1の場合、主にIr(L)(L’)
2の錯体が得られる。[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aまたは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]AとLとの化学量論比が1:2またはそれ以上の場合、本質的に式Ir(L)
2(L’)の錯体が形成され、この方法が良好な収率においてこれらの錯体のリアレーションに非常に好適であることを意味している。式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2との2つの錯体タイプを含む粗製生成物を、2)で説明したようにクロマトグラフィーにより単離させ、よって精製することができる。
【0136】
10ミリモルの[Ir(L’)
2(HOMe)
2]Aまたは[Ir(L’)
2(NCMe)
2]Aを最初に、100mlの脱気された溶媒(表を参照)中に、水分離器を有する装置中に導入する。次いで、指示された量の配位子Lを添加し(表を参照)、遮光して混合物を48時間、180℃で撹拌し、その期間に、NMR分析によれば、MeOHまたはMeCNおよび水と、溶媒の熱分解生成物とを含む少量の無色の液体が、水分離器中に集められる。懸濁液を室温に冷ましておき、沈殿した固形分を吸引濾過し、その度毎に20−30mlのエタノールで三度洗浄し、真空中で乾燥させる。式Ir(L)
2(L’)と式Ir(L)(L’)
2の錯体をクロマトグラフィーにより単離させ、その進行をTLCカードにより監視する。清浄な部分を結合させ、実質的に蒸発乾固させ、その期間に生成物はしばしば晶出される。次いで、エタノールを添加し、生成物をEtOHと共に保護ガスフリットへ移し、少量のエタノールで複数回洗浄し、真空中で乾燥させる。必要ならば、生成物を、純度>99.5%またはそれ以上に達するまで、再度クロマトグラフィーにかける。加熱を、約200−300℃の温度範囲において高真空(p約10
-6ミリバール)で実施する。昇華を、約250−400℃の温度範囲において高真空(p約10
-6ミリバール)で実施し、この場合、昇華は好ましくは分別昇華の形態で実施される。
【表4-1】
【表4-2】
【0137】
OLEDの製造
1)真空処理されたデバイス:
本発明によるOLEDおよび先行技術によるOLEDは、WO 2004/058911による一般的なプロセスにより製造されるが、ここに記載される状況(層の厚さの変化、使用する材料)に適合される。
【0138】
種々なOLEDの結果を、以下の例に提示する。ガラス板は、構造化ITO(酸化インジウム錫)と共に、OLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、原則的に次の層構造を有する:基板/正孔注入層1(HIL1)HAT−CN[105598−27−4]、5nm/正孔輸送層1(HTL1)、75nm/正孔輸送層2(HTL2)、10nm/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/随意に電子注入層(EIL)、および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層によって形成される。
【0139】
すべての材料は、真空チャンバ中で熱気相堆積によって適用される。ここで発光層は、常に、少なくとも1種のマトリックス材料(ホスト材料)、および1または複数種のマトリックス材料と一定の体積割合で共蒸発によって予備混合された発光ドーパント(エミッター)からなる。ここでM1:M2:Ir錯体(55%:35%:10%)などの表現は、材料M1が55%の体積割合で層中に存在し、M2が35%の割合で層中に存在し、Ir錯体が10%の割合で層中に存在することを意味する。同じように、電子輸送層は、2種の材料の混合物からなってもよい。OLEDの正確な構造を、表1に示す。OLEDの製造のために使用した材料を、表6に示す。
【0140】
OLEDは、標準の方法によってその特性が決定される。この目的では、エレクトロルミネッセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)、外部量子効率(EQE、%で表示)および電圧(1000cd/m
2において測定、Vで表示)が測定される。さらに寿命が測定される。寿命は、輝度が一定の初期輝度から一定割合に低下した後の時間と定義される。LT80という表現は、所与の寿命が、輝度が初期輝度の80%に低下した、すなわち、たとえば1000cd/m
2から800cd/m
2に低下した時点までであることを意味する。寿命の値を、当業者に公知の変換式を用いて他の初期輝度の値に変換することができる。
【0141】
燐光OLEDにおけるエミッター材料としての本発明による化合物の使用
本発明による化合物は、中でもOLEDの発光層において、燐光エミッター材料として用いることができる。OLEDの結果を、表2に要約する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表6-1】
【表6-2】
【0142】
2)溶液処理されたデバイス:
A:可溶性機能的材料から
本発明による錯体は、溶液から処理することもでき、この場合このプロセスが関与する限り、真空処理されたOLEDと比較して著しく単純であるにもかかわらず良好な特性を有するOLEDが得られる。このタイプの部品の製造は、既に何度も文献(たとえばWO 2004/037887)に記載されているポリマー発光ダイオード(PLED)の製造に基づく。構造は、基板/ITO/PEDOT(80nm)/中間層(80nm)/発光層(80nm)/カソードからなる。この目的を達成するために、Technoprint製の基板(ソーダ石灰ガラス)を使用し、それにITO構造(酸化インジウム錫)をアノードとして適用する。基板を、クリーンルーム中でDI水および洗浄剤(Deconex 15PF)を用いて清浄にし、次いで、UV/オゾンプラズマ処置によって活性化する。PEDOTの80nm層(PEDOTは、H.C.Starck、Goslarから水性分散液として供給されているポリチオフェン誘導体(Baytron P VAI 4083sp.)である)を、次いで、同様にクリーンルーム中でスピンコーティングによって緩衝層として適用する。必要なスピン速度は、希釈度および特定のスピンコーターの形状に応じる(典型的に80nm:4500rpm)。層から残留水を除去するために、基板を、180℃でホットプレート上で10分間加熱することによって乾燥させる。使用する中間層は、正孔注入として働き、この場合Merck製のHIL−012が使用される。あるいは、中間層は、1つ以上の層により置きかえられていてもよく、これらは、その後の溶液からのEML蒸着の処理工程によって再び剥離しない条件を単に満たすだけのものである。発光層を生成するために、本発明によるエミッターを、トルエン中にマトリックス材料と共に溶解させる。ここでのように、デバイスの典型的な層厚80nmがスピンコーティングを用いて達成される場合、このような溶液の典型的な固形分は16〜25g/lである。溶液処理されたデバイスは、(ポリスチレン):M5:M6:Ir錯体(35%:25%:30%:10%)を含む発光層を含む。発光層を、不活性ガス雰囲気中、本発明の場合にはアルゴン中でスピンコーティングによって適用し、130℃で30分間加熱することによって乾燥させる。最後にカソードを、バリウム(5nm)および次いでアルミニウム(100nm)の蒸着によって適用する(Aldrich製の高純度金属、特にバリウム99.99%(注文番号474711);中でもLesker製の蒸着装置、典型的な蒸着圧力は5×10
-6ミリバールである)。随意に、最初に正孔ブロック層、次いで電子輸送層、そしてその次にカソード(たとえばAlまたはLiF/Al)を、真空蒸着によって適用することができる。空気および大気の湿気からデバイスを保護するために、デバイスを最後に密封し、次いでその特性を決定する。表3は得られたデータを要約している。
【表7】
【0143】
3)白色発光OLED
以下の層構造を有する白色発光OLEDを、1)からの一般的なプロセスにしたがって製造する。
【表8】
【表9】
【化38-1】
【化38-2】
【化38-3】