【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明の請求項1による駆動機構によって解決される。
【0006】
本開示の第1の態様によれば、薬物送達デバイス用の駆動機構が提供される。駆動機構は、第1および第2の状態を有し、駆動機構を操作したとき遠位方向で動くように構成されたピストンロッドと、調節部材とを含み、調節部材は、駆動機構の第1の状態では薬物送達デバイスの本体に対して回転可能であり、駆動機構の第2の状態では本体に対して回転しないようにされ、調節部材は、駆動機構の第1の状態においてピストンロッドの軸方向位置を調節するように構成される。
【0007】
「遠位」および「近位」という用語は次のように定義されるものとする。組み立てられた薬物送達デバイスにおいて、駆動機構の遠位端は、薬物送達デバイスの投薬端部に最も近い端部として定義される。組み立てられた薬物送達デバイスにおいて、駆動機構の近位端は、薬物送達デバイスの投薬端部から最も遠い端部として定義される。さらに、遠位方向は遠位端に向かう方向として定義され、近位方向は近位端に向かう方向として定義される。
【0008】
駆動機構は、医薬品の用量を設定し、用量を投薬することを可能にする機構である。駆動機構は、ピストンロッド、ピストンロッドを動かすように構成される要素、およびピストンロッドの動きを抑制するように構成される要素を含んでいる。駆動機構は、用量設定および/または用量投薬操作を実施するのに要するすべての要素を含んでいる。
【0009】
駆動機構の第1の状態は組立て済みの状態である。第1の状態では、駆動機構はカートリッジを保持するカートリッジホルダに組み合わされている。しかしながら、第1の状態では、駆動機構とカートリッジホルダとの間の機械公差、および駆動機構の要素間の機械公差が存在する。第1の状態では、製造公差または他の機械公差により、駆動機構は、薬物送達デバイスの他の要素に対して正確に位置合わせされないことがある。特に、駆動機構の要素間、たとえばピストンロッドとカートリッジの栓との間の距離は、十分に定義されないことがある。製造プロセスにおける機械公差および他の公差により、この距離は、駆動機構の第1の状態において薬物送達デバイスごとに異なる。
【0010】
さらに、薬物送達デバイスの他の要素、たとえばボタンは、駆動機構の第1の状態では薬物送達デバイスに組み合わされていないことがある。
【0011】
第1の状態では、駆動機構は準備目的にのみ使用可能であってもよく、用量設定操作または用量投薬操作に適応していないことがある。
【0012】
第1の状態は、調節部材が薬物送達デバイスの本体に対して回転可能である状態として定義される。
【0013】
駆動機構の第2の状態は、調節部材が本体に対して回転しないようにされる状態として定義される。
【0014】
その第1の状態にある駆動機構は、調節部材を本体に対して回転ロックすることによって、その第2の状態へと移行される。さらに、その第2の状態にある駆動機構は、調節部材が本体に対して回転できるように、調節部材と本体との間の係合を解放することにより、その第1の状態へと移行される。いくつかの実施形態では、調節部材および本体の一方が解放の間に破損した場合にのみ、係合が解放される。
【0015】
駆動機構の第2の状態では、調節部材が本体に対して回転できるように、また調節部材と本体との係合が、駆動機構または薬物送達デバイスの要素の少なくとも1つが破損することによってのみ解放されるように、調節部材が本体に係合される。代替実施形態では、調節部材は、駆動機構の第2の状態において本体に解放可能に係合される。したがって、これらの実施形態では、調節部材と本体との係合は、駆動機構または薬物送達デバイスの要素の1つを破損することなく解放される。
【0016】
駆動機構の第2の状態では、公差は排除される。駆動機構の第2の状態では、薬物送達デバイスは医薬品を適用するために患者によって使用される。したがって、駆動機構は、第2の状態で用量設定および用量投薬操作を実施する準備ができている。特に、駆動機構が最初にその第2の状態で操作されるとき、駆動機構は、第1の用量送達の準備をするプライミング工程を要することなく使用することができる。
【0017】
ピストンロッドは、駆動機構を駆動機構の第2の状態で操作したとき、遠位方向で動くように構成される。駆動機構の操作は用量投薬操作であってもよい。
【0018】
ピストンロッドはまた、駆動機構を駆動機構の第1の状態で操作したとき、遠位方向で動くように構成される。この場合、駆動機構の操作はプライミング操作であってもよい。
【0019】
調節部材はナットを含んでもよい。調節部材は、ピストンロッドとねじ込み係合される。調節部材は、駆動機構の第2の状態でピストンロッドの動きを抑制してもよい。特に、調節部材は、ピストンロッドが調節部材に対する軸方向および回転方向の動きを同時に実施することのみが可能になるように、駆動機構の第2の状態におけるピストンロッドの動きを抑制してもよい。調節部材は、駆動機構の第2の状態において本体に対して回転できないので、調節部材は、ピストンロッドが本体に対する軸方向および回転方向の動きを同時に実施することのみが可能になるように、駆動機構の第2の状態におけるピストンロッドの動きを抑制してもよい。
【0020】
さらに、調節部材は、駆動機構の第1の状態においても同様にピストンロッドと係合される。特に、調節部材は、駆動機構の第1の状態においてピストンロッドとねじ込み係合される。しかしながら、調節部材は、駆動機構の第1の状態において本体に対して回転できるので、調節部材は、駆動機構の第1の状態において本体に対するピストンロッドの動きを抑制しなくてもよい。その代わりに、ピストンロッドは、駆動機構の第1の状態で、本体に対して回転することなく本体に対して軸方向で移動できるようにされる。
【0021】
特に、調節部材は、駆動機構の第1の状態において本体に対して回転するように構成される。それにより、調節部材は、ピストンロッドの軸方向位置がこのような形で調節されるように、本体に対して軸方向でピストンロッドを動かしてもよい。
【0022】
さらに、調節部材は、外部部材の回転が調節部材の回転へと変換されるように構成される。
【0023】
外部部材は駆動機構の一部でなくてもよい。その代わりに、外部部材は、駆動機構の第1の状態では調節部材と係合するように構成され、駆動機構の第2の状態では薬物送達デバイスから取り外される、外部組立て機械の一部であってもよい。したがって、調節部材は、駆動機構の第1の状態において外部部材と係合されるように構成される。
【0024】
調節部材は、外部部材と係合されるのに適した制御機能を含んでもよい。制御機能は調節部材と一体的に形成される。制御機能は、調節部材の周囲に配置される歯を含んでもよい。特に、調節部材の周囲は、外部部材と係合されるように構成される歯車として形成される。
【0025】
外部部材も歯車を含んでもよい。外部部材は、外部組立て機械の駆動機構によって駆動され、特に回転される。外部部材は、調節部材がカートリッジの栓に向かって遠位方向でピストンロッドを動かすように、調節部材を回転させてもよい。
【0026】
さらに、駆動機構は回転防止部材を含んでもよく、回転防止部材は、駆動機構の第2の状態において調節部材と係合され、それによって本体に対する調節部材の回転を防止するように構成される。
【0027】
特に、回転防止部材は、駆動機構の第2の状態において調節部材の制御機能と係合されるように構成される。したがって、制御機能は駆動機構における2つの目的を満たしてもよい。制御機能は、制御機能が外部部材と係合されると、外部部材の回転が調節部材の回転へと移行され、それによってピストンロッドを遠位方向で動かすように構成される。さらに、制御機能は、制御機能が回転防止部材と係合されると、本体に対して調節部材をそれ以上回転させないように構成される。
【0028】
あるいは、回転防止部材は、調節部材の別の要素と係合するように構成される。
【0029】
第2の状態における回転防止部材と調節部材との係合は、さらなる利点を提供してもよい。回転防止部材は、調節部材と係合されると、本体および薬物送達デバイスのハウジングの開口部を閉じてもよい。それにより、回転防止部材は薬物送達デバイスの平滑面を提供してもよい。回転防止部材は、回転防止部材が薬物送達デバイスの内部を閉じ、それによって内部を封入するので、駆動機構の第2の状態において、薬物送達デバイスの内部が汚染されるのを防いでもよい。
【0030】
さらに、調節部材は第1の接触面を含んでもよく、駆動機構の第2の状態では、第1の接触面は本体に当接し、それによって調節部材が本体に対して回転するのを防いでもよい。特に、本体は第2の接触面を含んでもよい。駆動機構の第2の状態では、第1の接触面は第2の接触面に当接してもよい。
【0031】
本体に対する調節部材の回転は、第1の接触面が本体と摩擦係合することによって防止される。したがって、調節部材は自己ロック式であってもよい。摩擦係合は、ピストンロッドによって調節部材に伝達される軸方向負荷によって発生して、第1および第2の接触面間に摩擦をもたらしてもよい。
【0032】
特に、調節部材の第1の接触面およびそれに対応する本体の第2の接触面は、駆動機構の長手方向軸に対して垂直以外の角度で配置される面を含んでもよい。これらの面が互いに当接したとき、摩擦係合が増大して、調節部材が本体に対して回転しなくなる。
【0033】
あるいは、調節部材の第1の接触面と本体との間の摩擦係合は、調節部材と本体との間の回転を防止するのに十分な強さではないことがある。この場合、摩擦係合は本体に対する調節部材の回転を妨害する。したがって、摩擦係合により、調節部材を本体に対して回転させるのに要するトルクは増加してもよい。
【0034】
それに加えて、または別の方法として、第1の接触面は、駆動機構の第2の状態において接触面が本体に当接したとき、本体と係合するように構成されるロック機能を含み、それによって調節部材が本体に対して回転するのを防いでもよい。
【0035】
ロック機能は、第1および第2の接触面上に配置される傾斜形状を含んでもよい。ロック機能は、調節部材が本体に対して少量の軸方向の遊びを有するとき、ロック機能によって本体に対する調節部材の回転を可能にするように構成される。さらに、ロック機能は、少量の遊びが除去されると、本体に対する調節部材の回転を防止するように構成される。したがって、駆動機構の第1の状態では、ロック機能は本体に対する調節部材の回転を防止しなくてもよい。駆動機構の第2の状態では、たとえば、回転防止部材が調節部材に係合され、それによってロック機能が本体に対する調節部材のそれ以上の回転を防止することによって、調節部材と本体との間における軸方向の遊びが除去される。
【0036】
さらに、駆動機構の第2の状態では、調節部材に対して近位方向で力がかかり、それによって第1の接触面を本体と当接させてもよい。近位方向の力はピストンロッドによってかかりてもよい。力は、ピストンロッドが栓と当接することによって発生して、ピストンロッドおよび調節部材を含むシステムの張力をもたらしてもよい。
【0037】
それに加えて、または別の方法として、接着剤が、駆動機構の第2の状態において調節部材が本体に対して回転するのを防いでもよい。接着剤は、第1の接触面および/または第2の接触面上に配置される。したがって、接触面が第2の接触面に当接したとき、接着剤は第1および第2の接触面を互いと結合する。さらに、接着剤は、紫外光を使用して、超音波で、または高周波エネルギーを使用することによって、さらに活性化される。
【0038】
それに加えて、または別の方法として、調節部材は、駆動機構の第2の状態において本体に溶接される。
【0039】
溶接および接着剤結合はそれぞれ、調節部材と本体との間の強力な接合を提供する。特に、溶接および接着剤結合により、歯を含まない調節部材を提供することができる。したがって、調節部材は、本体に対する任意の回転位置で、接着剤によってまたは溶接によって本体と結合することができる。特に、調節部材は、歯によって画成される本体に対する多数の別個の回転位置のうちの1つへと動かす必要はない。したがって、これらの実施形態により、調節部材の角度位置における高い分解能が可能になる。したがって、本体に対する無限の数の回転位置のうちの1つで調節部材を配向させることができるので、ピストンロッドによって栓に加えられる軸方向負荷を非常に精密に設定することができる。
【0040】
さらに、調節部材は固定機能を含んでもよい。固定機能は、調節部材が本体に対して所定の短い距離だけ軸方向で移動可能であるように、薬物送達デバイスの本体と係合するように構成されてもよく、あるいは、調節部材が本体に対して軸方向で動かないように、薬物送達デバイスの本体と係合するように構成される。
【0041】
特に、固定機能は、駆動機構の第1の状態において、調節部材が本体に対して所定の短い距離だけ動くことを可能にしてもよい。駆動機構の第2の状態では、固定機能は、調節部材が本体に対して軸方向で動かないように、回転防止部材と協働してもよい。特に、回転防止部材は、駆動機構の第2の状態において調節部材と本体との間に軸方向の遊びが存在しないように、軸方向の遊びを排除してもよい。
【0042】
固定機能は、スナップ嵌め連結によって本体と係合するように構成される。本体は、固定機能がカチッと留まって突出部に嵌合されるように構成される突出部を含んでもよい。本体の突出部は回転対称であってもよく、それによって調節部材が本体に対して回転することができる。
【0043】
さらに、本開示は、駆動機構および本体を含み、駆動機構が少なくとも部分的に本体の内部に配置される、薬物送達デバイスに関する。
【0044】
特に、駆動機構は上記に開示した駆動機構であってもよいので、その駆動機構に関して開示したすべての構造的および機能的特性が薬物送達デバイスにも存在してもよい。
【0045】
本体は、駆動機構の第2の状態において調節部材を係合するように構成され、それによって駆動機構の第2の状態において調節部材が本体に対して回転するのを防止する、第1の係合機能を含んでもよい。
【0046】
第1の係合機能は本体の内表面に配置される。第1の係合機能はロックアームを含んでもよい。第1の係合機能は歯を含んでもよい。
【0047】
さらに、調節部材は第2の係合機能を含んでもよく、本体の第1の係合機能は、駆動機構の第2の状態において、調節部材の第2の係合機能と係合するように構成される。
【0048】
第2の係合機能は調節部材の周囲に配置される歯を含んでもよい。特に、第1の係合機能の歯は、駆動機構の第2の状態において第2の係合機能の歯と係合するように構成される。
【0049】
あるいは、第2の係合機能は、本体の第1の係合機能が第2の係合機能と係合したとき破砕されるように構成される脆弱面を含んでもよい。脆弱面は薄い材料によって形成される。脆弱面はリングを形成してもよい。脆弱面は、限定された数の別個の位置だけではなく、互いに対する任意の回転位置で、第1および第2の係合機能が互いと係合することができるという利点を提供する。したがって、調節部材の位置は、ピストンロッドによって栓に加えられる軸方向負荷が非常に精密に設定されるように、多数の別個の位置のうちの1つに制約されることなく、非常に精密に選択される。
【0050】
さらに、薬物送達デバイスはハウジングを含んでもよく、本体はハウジングの内部に配置され、本体はハウジングに対する第1および第2の回転位置を有し、本体がその第2の回転位置にあるとき、本体の第1の係合機能は調節部材と係合される。したがって、本体はハウジングに対して回転可能であってもよい。
【0051】
特に、ハウジングは非円形の内径を含んでもよい。傾斜形状は、ハウジングの内表面に配置される。本体も非円形の外径を含んでもよい。ハウジングに対する本体の第1の回転位置は、本体の第1の係合機能が調節部材の第2の係合機能に対してある距離で配置されるように構成される。第2の回転位置は、第1の係合機能が第2の係合機能と係合されるように構成される。特に、本体がハウジングに対して回転している間、ハウジングの傾斜形状が第1の係合機能を動かして第2の係合機能と係合させてもよい。
【0052】
さらに、本体は、本体の周囲に配置される開口部を含んでもよく、外部部材および/または駆動機構の回転防止部材はそれぞれ、開口部を通して本体内へと少なくとも部分的に移動可能であり、それによって調節部材と係合する。
【0053】
開口部はスロットを形成してもよい。開口部は、駆動機構の第2の状態において、回転防止部材によってまたは別の部材によって閉じられてもよい。
【0054】
本開示の別の態様は、駆動機構を組み立てる方法に関する。方法は:
駆動機構をその第1の状態で提供する工程と、
薬物送達デバイスの本体に対して調節部材を回転させ、それによってピストンロッドの軸方向位置を調節する工程と、
調節部材が本体に対して回転しないように、調節部材を本体に対して回転方向でロックし、それによって駆動機構をその第2の状態へと移行させる工程とを含む。
【0055】
特に、駆動機構は上記に開示した駆動機構であってもよいので、その駆動機構に関して開示したすべての構造的および機能的特性が方法にも存在してもよい。
【0056】
本明細書で使用する用語「医薬品」は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0057】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0058】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0059】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0060】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0061】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0062】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0063】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0064】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0065】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0066】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0067】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0068】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0069】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0070】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0071】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0072】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0073】
以下、開示のデバイスおよび方法について図面をさらに詳細に参照して記載する。