特許第6556642号(P6556642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556642
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ラジオ受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20190729BHJP
   H04H 20/24 20080101ALI20190729BHJP
   H04H 20/18 20080101ALI20190729BHJP
   H04H 60/58 20080101ALI20190729BHJP
   H04H 60/82 20080101ALI20190729BHJP
【FI】
   H04B1/16 A
   H04B1/16 R
   H04H20/24
   H04H20/18
   H04H60/58
   H04H60/82
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-28411(P2016-28411)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-147623(P2017-147623A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博之
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−201469(JP,A)
【文献】 特開2013−211631(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0196989(US,A1)
【文献】 米国特許第06088412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04H 20/18
H04H 20/24
H04H 60/58
H04H 60/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオ放送と、当該ラジオ放送と同内容の音声を前記ラジオ放送に対する遅延をもって送信する放送である並行放送とを受信可能なラジオ受信装置であって、
ユーザに音声を出力する出力部と、
ラジオ放送を受信し、受信した音声を前記出力部に出力するラジオ受信部と、
並行放送を受信し、受信した音声を前記出力部に出力する並行放送受信部と、
前記ラジオ受信部が前記出力部に出力する音声に遅延を与える遅延部と、
前記ラジオ受信部で受信している音声が無音区間の割合が所定レベル以上大きい音声である多無音区間音声であるか、前記ラジオ受信部で受信した音声が無音区間の割合が所定レベル以上大きくない音声である少無音区間音声であるかを算定する音声種別判別部と、
ユーザに対して出力する音声の、前記ラジオ受信部で受信した音声から前記並行放送受信部で受信した音声への切替を制御する制御部とを有し、
前記出力部は、前記制御部の制御に従って、前記ラジオ受信部から出力される音声と前記並行放送受信部から出力される音声とのうちの一方を選択的にユーザに対して出力し、
前記遅延部は、前記制御部の制御に従って、
前記ラジオ受信部から出力される音声の無音区間のみを時間的に伸張することにより、当該音声の遅延を増大していく無音区間伸張遅延動作と、
前記ラジオ受信部から出力される音声を時間的に一様に伸張することにより、当該音声の遅延を増大していく全体伸張遅延動作とを行うことができ、
前記制御部は、
前記音声種別判別部が前記ラジオ受信部で受信した音声が前記多無音区間音声であると判別している場合に、前記遅延部に前記無音区間伸張遅延動作を行わせ、前記音声種別判別部が前記ラジオ受信部で受信した音声が前記少無音区間音声であると判別している場合に、前記遅延部に前記全体伸張遅延動作を行わせると共に、
前記遅延部による前記ラジオ受信部から出力される音声の遅延の遅延時間が、前記ラジオ受信部で受信した音声に対する並行放送受信部で受信した音声の遅延時間に一致したならば、前記出力部に、ユーザに対して出力する音声を、前記ラジオ受信部から出力される音声から前記並行放送受信部から出力される音声へ切り替えさせることを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項2】
請求項1記載のラジオ受信装置であって、
前記制御部は、前記遅延部が前記無音区間伸張遅延動作を行っている期間中に、前記遅延部による前記ラジオ受信部から出力される音声の遅延の遅延時間の増加率が所定レベル以下となった場合に、前記無音区間伸張遅延動作を停止し前記全体伸張遅延動作を行うよう、前記遅延部を制御することを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のラジオ受信装置であって、
前記制御部は、前記遅延部が前記全体伸張遅延動作を行っている期間中に、前記ラジオ受信部で受信している音声が無音区間の割合が所定のしきい値以上に大きくなった場合に、前記全体伸張遅延動作を停止し前記無音区間伸張遅延動作を行うよう、前記遅延部を制御することを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のラジオ受信装置であって、
前記全体伸張遅延動作は、前記ラジオ受信部から出力される音声を、より再生速度の遅い音声に変換することにより当該音声の遅延を増大する動作であることを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項5】
請求項1、2または3記載のラジオ受信装置であって、
前記全体伸張遅延動作は、前記ラジオ受信部から出力される音声を、ピッチを変更せずにタイムストレッチする動作であることを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載のラジオ受信装置であって、
前記音声種別判別部は、前記ラジオ受信部で受信している番組の種別を識別し、少なくとも、識別した番組の種別が音楽番組であるときに、前記ラジオ受信部で受信している音声が少無音区間音声であると算定し、識別した番組の種別がニュースであるときに、前記ラジオ受信部で受信している音声が多無音区間音声であると算定することを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載のラジオ受信装置であって、
前記並行放送は、IPラジオ放送であり、
前記並行放送受信部は、IPラジオ放送を受信し、受信した音声を出力するIPラジオプレイヤであることを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載のラジオ受信装置であって、
前記ラジオ放送は、デジタルラジオ放送とアナログラジオ放送とのうちの少なくとも一方であることを特徴とするラジオ受信装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のラジオ受信装置であって、
当該ラジオ受信装置は自動車に搭載された車載型のラジオ受信装置であることを特徴とするラジオ受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオ受信装置において、受信中の放送から、当該放送と同内容の放送を行っている他の放送に、受信対象を切り替える技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジオ受信装置において、受信中の放送から、当該放送と同内容の放送を行っている放送(受信中の放送とサイマル放送の関係にある放送)に、受信対象を切り替える技術としては、放送波による放送と、当該放送とサイマル放送の関係にあるIPラジオ放送とを受信するラジオ受信装置において、放送波による放送で受信した音声から、IPラジオ放送で受信した音声に、出力する音声をシームレスに切り替える技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、この技術では、放送波による放送で受信した音声を再生速度を遅くして出力することにより、放送波による放送で受信した音声の出力を放送波による放送に対するIPラジオ放送の遅延時間分遅延させた上で、出力する音声を、放送波による放送で受信した音声からIPラジオ放送で受信した音声に切り替えることにより、シームレスな切替を実現している。
【0004】
また、このような音声を遅延する技術としては、音声中の無音区間の期間を伸張することにより音声を遅延する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-201469号公報
【特許文献2】特開2015-156584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した放送波による放送で受信した音声を再生速度を遅くして出力することにより、放送波による放送で受信した音声の出力を放送波による放送に対するIPラジオ放送の遅延時間分遅延させる技術によれば、出力される音声のピッチが、放送波による放送で受信した音声本来のピッチから変化してしまう。また、再生速度を遅くする程度を小さく抑えれば、ピッチの変化を小さく抑えることができるが、この場合には所要の遅延時間まで音声が遅延するまでに長時間を要してしまうこととなる。
【0007】
一方、上述した音声中の無音区間の期間を伸張することにより音声を遅延する技術によれば、音声が音楽等の無音区間の少ない音声である場合には、所要の遅延時間まで音声が遅延するまでに長時間を要してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、受信中の放送で受信した音声から当該放送と同内容の放送を行っている放送で受信する音声に、出力する音声をシームレスに切り替えるラジオ受信装置において、出力する音声のシームレスな切替を、音声の無音区間の多寡に関わらずに、できるだけ速やかに行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、ラジオ放送と、当該ラジオ放送と同内容の音声を前記ラジオ放送に対する遅延をもって送信する放送である並行放送とを受信可能なラジオ受信装置に、ユーザに音声を出力する出力部と、ラジオ放送を受信し、受信した音声を前記出力部に出力するラジオ受信部と、並行放送を受信し、受信した音声を前記出力部に出力する並行放送受信部と、前記ラジオ受信部が前記出力部に出力する音声に遅延を与える遅延部と、前記ラジオ受信部で受信している音声が無音区間の割合が所定レベル以上大きい音声である多無音区間音声であるか、前記ラジオ受信部で受信した音声が無音区間の割合が所定レベル以上大きくない音声である少無音区間音声であるかを算定する音声種別判別部と、ユーザに対して出力する音声の、前記ラジオ受信部で受信した音声から前記並行放送受信部で受信した音声への切替を制御する制御部とを備えたものである。ここで、前記出力部は、前記制御部の制御に従って、前記ラジオ受信部から出力される音声と前記並行放送受信部から出力される音声とのうちの一方を選択的にユーザに対して出力する。また、前記遅延部は、前記制御部の制御に従って、前記ラジオ受信部から出力される音声の無音区間のみを時間的に伸張することにより、当該音声の遅延を増大していく無音区間伸張遅延動作と、前記ラジオ受信部から出力される音声を時間的に一様に伸張することにより、当該音声の遅延を増大していく全体伸張遅延動作とを行うことができる。そして、前記制御部は、前記音声種別判別部が前記ラジオ受信部で受信した音声が前記多無音区間音声であると判別している場合に、前記遅延部に前記無音区間伸張遅延動作を行わせ、前記音声種別判別部が前記ラジオ受信部で受信した音声が前記少無音区間音声であると判別している場合に、前記遅延部に前記全体伸張遅延動作を行わせると共に、前記遅延部による前記ラジオ受信部から出力される音声の遅延の遅延時間が、前記ラジオ受信部で受信した音声に対する並行放送受信部で受信した音声の遅延時間に一致したならば、前記出力部に、ユーザに対して出力する音声を、前記ラジオ受信部から出力される音声から前記並行放送受信部から出力される音声へ切り替えさせる。
【0010】
このようなラジオ受信装置によれば、ラジオ放送から並行放送へのシームレスな切替のために遅延させる必要のあるラジオ放送の音声が無音区間の割合が所定レベル以上大きい音声である場合には、ラジオ放送の音声の無音区間のみを時間的に伸張してラジオ放送の音声を遅延させ、他の場合には、ラジオ放送の音声を時間的に一様に伸張してラジオ放送の音声を遅延させる。したがって、ラジオ放送の音声の無音区間が多い場合には、速やかに音声をラジオ放送に対する並行放送の遅延時間分、遅延させることができると共に、ラジオ放送の音声の無音区間が少ない、または、無い場合でも、一定の期間内に確実に音声を、ラジオ放送に対する並行放送の遅延時間分、遅延させることができる。
【0011】
よって、本発明によれば、ラジオ放送から並行放送へのシームレスな切替を、音声の無音区間の多寡に関わらずに速やかに行うことができるようになる。
ここで、このようなラジオ受信装置は、前記制御部において、前記遅延部が前記無音区間伸張遅延動作を行っている期間中に、前記遅延部による前記ラジオ受信部から出力される音声の遅延の遅延時間の増加率が所定レベル以下となった場合に、前記無音区間伸張遅延動作を停止し前記全体伸張遅延動作を行うよう、前記遅延部を制御するように構成してもよい。
【0012】
また、以上のようなラジオ受信装置では、前記制御部において、前記遅延部が前記全体伸張遅延動作を行っている期間中に、前記ラジオ受信部で受信している音声が無音区間の割合が所定のしきい値以上に大きくなった場合に、前記全体伸張遅延動作を停止し前記無音区間伸張遅延動作を行うよう、前記遅延部を制御するように構成してもよい。
【0013】
これらようにすることにより、遅延部によるラジオ放送の音声の遅延を開始した後に、ラジオ放送の音声の無音区間の多寡が変化した場合でも、ラジオ放送から並行放送へのシームレスの切替を速やかに完了することができるようになる。
【0014】
なお、以上のラジオ受信装置において、前記全体伸張遅延動作は、前記ラジオ受信部から出力される音声を、より再生速度の遅い音声に変換することにより当該音声の遅延を増大する動作であてもよいし、前記ラジオ受信部から出力される音声を、ピッチを変更せずにタイムストレッチする動作であってもよい。
【0015】
また、以上のラジオ受信装置は、前記音声種別判別部は、前記ラジオ受信部で受信している番組の種別を識別し、少なくとも、識別した番組の種別が音楽番組であるときに、前記ラジオ受信部で受信している音声が少無音区間音声であると算定し、識別した番組の種別がニュースであるときに、前記ラジオ受信部で受信している音声が多無音区間音声であると算定するように構成してもよい。
【0016】
また、以上のラジオ受信装置は、前記並行放送を、IPラジオ放送とし、前記並行放送受信部を、IPラジオ放送を受信し、受信した音声を出力するIPラジオプレイヤとしてもよい。また、前記ラジオ放送は、デジタルラジオ放送とアナログラジオ放送とのうちの少なくとも一方としてもよい。
【0017】
また、以上のラジオ受信装置は自動車に搭載された車載型のラジオ受信装置であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、受信中の放送で受信した音声から当該放送と同内容の放送を行っている放送で受信する音声に、出力する音声をシームレスに切り替えるラジオ受信装置において、出力する音声のシームレスな切替を、音声の無音区間の多寡に関わらずに、できるだけ速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るラジオ放送システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るラジオ放送受信機の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態において用いる遅延処理アルゴリズムを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るシームレス切替処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るシームレス切替処理の処理例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るシームレス切替処理の処理例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るシームレス切替処理の他の例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係るシームレス切替処理の他の例の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るラジオ放送システムの構成を示す。
図示するように、本実施形態に係るラジオ放送受信機1は、自動車に搭載されるラジオ受信機やポータブルラジオ受信機などの位置が移動する受信機であり、ラジオ放送局2からDABなどの放送規格によるデジタルラジオ放送や、FMラジオ放送などのアナログラジオ放送の受信を行う。また、ラジオ放送受信機1は、移動通信を介してインターネットなどのWAN3に接続しWAN3上のIPラジオサーバ4からIPラジオ放送を受信する。ここで、IPラジオサーバ4が行うIPラジオ放送には、デジタルラジオ放送やアナログラジオ放送とサイマル放送の関係にある、すなわち、デジタルラジオ放送やアナログラジオ放送と同内容の放送を行っているIPラジオ放送が含まれる。なお、本実施形態では、デジタルラジオ放送やアナログラジオ放送とサイマル放送の関係にあるIPラジオ放送から受信される音声は、必ず、当該IPラジオ放送がサイマル放送の関係にあるデジタルラジオ放送やアナログラジオ放送で放送される音声よりも遅延しているものとする。
【0021】
次に、図2に、ラジオ放送受信機1の構成を示す。
図示するように、ラジオ放送受信機1は、デジタルラジオ放送を受信し受信したオーディオデータを出力するデジタルラジオチューナ101、アナログラジオ放送を受信しアナログラジオ放送で受信した音声をデジタル変換しオーディオデータとして出力するアナログラジオチューナ102、IPラジオ放送を受信し受信したオーディオデータを出力するIPラジオプレイヤ103を備えている。
【0022】
ここで、IPラジオプレイヤ103は、移動通信を行う移動通信装置104を介してWAN3上のIPサーバに接続し、IPサーバがIPラジオ放送で配信しているオーディオストリームを受信しオーディオデータを再生出力する。ただし、ラジオ放送受信機1に、移動通信装置104を備える代わりに、移動通信を行うモバイルフォン5を接続する外部インタフェース105を設け、IPラジオプレイヤ103において、モバイルフォン5が行う移動通信を介してWAN3上のIPサーバに接続し、IPサーバがIPラジオ放送で配信しているオーディオストリームを受信しオーディオデータを再生出力するように構成してもよい。
【0023】
また、ラジオ放送受信機1は、入力装置106、表示装置107、制御部108を備えている。
また、ラジオ放送受信機1は、デジタルラジオチューナ101またはアナログラジオチューナ102が出力するオーディオデータを設定された遅延目標時間分、遅延させ出力する遅延部109、遅延部109から出力されるオーディオデータとIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータの一方を選択し出力するセレクタ110、セレクタ110が出力するオーディオデータをアナログ音声信号に変換し出力するDA変換部111、DA変換部111が出力するアナログ音声信号を増幅するアンプ112、アンプ112が増幅した音声信号で駆動され音声を出力するスピーカ113を備えている。
【0024】
また、ラジオ放送受信機1は、音声種別判別部114、チューナ用メモリ115、プレイヤ用メモリ116、比較部117を備えている。
さて、このような構成において、制御部108は、入力装置106を介してユーザから特定のラジオ放送局2のラジオ放送の受信を指示されると、受信を指示されたラジオ放送局2がデジタルラジオ放送の放送局であれば、デジタルラジオチューナ101を現用チューナとし、受信を指示されたラジオ放送局2がアナログラジオ放送の放送局であればアナログラジオチューナ102を現用チューナとし、現用チューナに受信を指示されたラジオ放送局2のラジオ放送の受信と、受信したオーディオデータの出力を開始させる。また、制御部108は、チューナ用メモリ115とプレイヤ用メモリ116の記憶内容をクリアし、遅延部109に遅延目標時間として0を設定し、遅延部109に現用チューナから入力するオーディオデータを、そのままセレクタ110に出力させる。そして、制御部108は、セレクタ110に遅延部109から入力するオーディオデータをDA変換部111に出力させることにより、現用チューナで、ユーザから受信を指示されたラジオ放送局2から受信した音声をスピーカ113から出力する。
【0025】
一方、現用チューナから出力されたオーディオデータはチューナ用メモリ115にも格納される。ここで、チューナ用メモリ115への格納は、常時、チューナ用メモリ115に所定再生時間分の最新のオーディオデータが格納されている状態となるように行われる。また、チューナ用メモリ115に常時格納するオーディオデータの再生時間は、デジタル/アナログラジオ放送に対する、当該デジタル/アナログラジオ放送とサイマル放送の関係にあるIPラジオ放送の遅延時間の最大値として見込まれる時間以上となるように設定されている。
【0026】
さて、ここで、遅延部109は、選択的にリサンプリングとブランクストレッチの二つの遅延処理アルゴリズムのうちの一方の遅延処理アルゴリズムによる遅延処理によってオーディオデータを遅延させることができる。そして、遅延部109は、現用チューナから入力するオーディオデータを、制御部108から設定された設定された遅延処理アルゴリズムによる遅延処理によって、制御部108から設定された遅延目標時間分の時間、遅延させて出力する。
【0027】
ここで、リサンプリングは、図3aに示すように遅延前のオーディオデータを、当該遅延前のオーディオデータが表す音声を時間軸方向に全体的に伸張した音声(遅延前のオーディオデータの再生速度を遅くした音声)を表すオーディオデータに変換して遅延後のオーディオデータとして出力することによりオーディオデータの遅延を、オーディオデータの遅延時間が制御部108から設定された遅延目標時間に達するまで徐々に拡大し、オーディオデータの遅延が制御部108から設定された遅延目標時間に達したならば、以降は、その遅延時間を維持したまま遅延させたオーディオデータを出力する処理である。なお、本実施形態におけるリサンプリングのオーディオデータが表す音声の時間軸方向の伸張の割合は固定(たとえば、10%増加する割合)とする。
【0028】
また、ブランクストレッチは、図3bに示すように遅延前のオーディオデータに含まれる無音区間(聞き手に無音として認識される時間区間)のみを時間軸方向に伸張して、オーディオデータの遅延を、オーディオデータの遅延時間が制御部108から設定された遅延目標時間に達するまで拡大し、オーディオデータの遅延が制御部108から設定された遅延目標時間に達したならば、以降は、その遅延時間を維持したまま遅延させたオーディオデータを出力する処理である。なお、本実施形態におけるブランクストレッチの無音区間の時間軸方向の伸張の割合は固定(たとえば、100%増加する割合)とする。
【0029】
ここで、リサンプリングによる遅延処理は、確実に遅延を拡大していくことができるが音声のピッチの変化などを伴うため、時間軸方向の伸張の度合いを大きくすることができない。そして、このために、オーディオデータの遅延時間が制御部108から設定された遅延目標時間に達するまで拡大するまでに比較的長時間を要する。
【0030】
一方、ブランクストレッチによる遅延処理は、聞き手に認識される非無音区間の音声の劣化は無いため無音区間の時間軸方向の伸張の度合いを大きく設定することができ、遅延前のオーディオデータに多くの無音区間が含まれる場合には、オーディオデータの遅延時間を、制御部108から設定された遅延目標時間に速やかに到達させることができる。一方で、遅延前のオーディオデータが音楽のオーディオデータである場合など、遅延前のオーディオデータに含まれる無音区間が少ない場合には、オーディオデータの遅延時間を、制御部108から設定された遅延目標時間に達するまで拡大するまでに、リサンプリングによる遅延処理よりも長時間を要する。
【0031】
次に、制御部108は、スピーカ113に出力する音声を受信中のラジオ放送で受信した音声と、受信中のラジオ放送とサイマル放送の関係にあるIPラジオ放送で受信した音声との間でシームレスに切り替える処理を行う。
【0032】
以下、このようなシームレスな切替のために、制御部108が行うシームレス切替処理について説明する。
図4に、このシームレス切替処理の手順を示す。なお、本シームレス切替処理は、ユーザから特定のラジオ放送局2のラジオ放送の受信を指示されたときに起動される。
図示するように、この処理では、ラジオ受信機の状態が、遅延部109が出力する、現用チューナで受信中のラジオ放送の音声をスピーカ113から出力している状態となるのを待ち(ステップ402)、ラジオ放送の音声をスピーカ113から出力している状態となったならば、現用チューナで受信中のラジオ放送の受信品質の劣化を監視する(ステップ404)。ここで、現用チューナで受信中のラジオ放送の受信品質の取得は、たとえば、現用チューナとなっているデジタルラジオチューナ101またはアナログラジオチューナ102において受信中のラジオ放送の受信品質を、受信中のラジオ放送の受信電界強度や、SN比や、誤り発生率などより算定すると共に、制御部108が現用チューナにおいて算定されている受信品質を取得することにより行う。
【0033】
次に、受信中のラジオ放送の受信品質が劣化したならば、IPラジオプレイヤ103の、受信中のラジオ放送とサイマル放送の関係にあるIPラジオ放送の受信の開始を制御する(ステップ406)。
【0034】
そして、IPラジオプレイヤ103によるIPラジオ放送の受信が開始されたならば(ステップ408)、受信中のラジオ放送で受信した音声に対する、IPラジオ放送で受信した音声の遅延時間と、現用チューナで受信中のラジオ放送の音声種別とを算出する(ステップ410)。
【0035】
ここで、この遅延時間の算出は、たとえば、次のように行う。
すなわち、制御部108は、IPラジオプレイヤ103から出力されるIPラジオ放送で最初に受信した所定再生時間分のオーディオデータのプレイヤ用メモリ116への格納を行わせる。
【0036】
また、制御部108は、比較部117に、プレイヤ用メモリ116に格納されたオーディオデータの、チューナ用メモリ115に格納されているオーディオデータとの比較による、チューナ用メモリ115に格納されているオーディオデータの、プレイヤ用メモリ116に格納されたオーディオデータと音声パターンが一致する部分の探索を行わせる。
【0037】
そして、制御部108は、プレイヤ用メモリ116に格納されたオーディオデータの受信時刻と、探索されたチューナ用メモリ115に格納されたオーディオデータ中の部分の受信時刻との差を遅延時間として算出する。なお、探索されたチューナ用メモリ115に格納されたオーディオデータ中の部分の受信時刻は、探索された部分のチューナ用メモリ115に格納されたオーディオデータの連続体中の位置より求めることができる。
【0038】
また、音声種別の算出は、以上の遅延時間の算出と並行して音声種別判別部114に、現用チューナから出力されるオーディオデータに含まれる無音区間の時間的な割合を算出させ、無音区間の割合が所定のしきい値Thより大きい場合には音声種別を多無音区間音声と算出し、しきい値Thより大きくない場合には音声種別を少無音区間音声と算出することにより行う。
【0039】
ここで、遅延効率を、期間中の遅延の増加量の前記期間に対する割合として、所定のしきい値Thは、遅延処理としてブランクストレッチを行った方が、遅延処理としてリサンプリングを行った場合よりも遅延効率が良くなる無音区間の時間的な割合、または、当該遅延効率が良くなる無音区間の時間的な割合に所定のマージンを加えた値を用いる。
【0040】
ただし、音声種別判別部114における音声種別の算出は、音声種別判別部114において常時行い、ステップ410における音声種別の算出は、制御部108が音声種別判別部114から現在の現用チューナで受信中のラジオ放送の音声種別を取得する処理としてもよい。
【0041】
または、ステップ410における音声種別の算出は、現用チューナが受信中のラジオ放送に制御/付加情報として含まれる放送中の番組の種類を表す情報より音声種別を算出する処理としてもよい。すなわち、たとえば、算出現用チューナが受信中の番組の種類が音楽であれば、音声種別を少無音区間音声と算出し、現用チューナが受信中の番組の種類が、トーク番組やニュースなど音楽以外であれば、音声種別を多無音区間音声と算出するようにしてもよい。なお、このような音声種別の算出に用いることのできるラジオ放送の制御/付加情報としては、ラジオ放送がRDSやDABである場合のPTY等がある。
【0042】
なお、以上のようなラジオ放送に制御/付加情報として含まれる放送中の番組の種類を表す情報より音声種別を算出する代わりに、別途入手した番組表データが表す、現用チューナが受信中の番組の種類から音声種別を算出するようにしてもよい。
【0043】
そして、ステップ410で算出した音声種別に応じて遅延処理アルゴリズムを遅延部109に設定する(ステップ412)。ここで、ステップ412では、ステップ410で算出した音声種別が多無音区間音声であれば遅延処理アルゴリズムとしてブランクストレッチを遅延部109に設定し、ステップ410で算出した音声種別が少無音区間音声であれば遅延処理アルゴリズムとしてリサンプリングを遅延部109に設定する。
【0044】
また、ステップ410で算出した遅延時間を遅延目標時時間として遅延部109に設定する(ステップ414)。
ここで、このようにして遅延処理アルゴリズムと、遅延目標時間を設定された遅延部109は、設定された遅延処理アルゴリズムによる遅延処理を上述のように実行し、現用チューナから入力するオーディオデータの遅延を設定された遅延目標時間と遅延部109から出力されるオーディオデータの遅延時間が一致するまで拡大し、設定された遅延目標時間と遅延部109から出力されるオーディオデータの遅延時間が一致したならば、以降は、その遅延時間を維持したまま遅延させたオーディオデータの出力を行う。
【0045】
また、遅延部109は、設定された遅延目標時間と遅延部109から出力されるオーディオデータの遅延時間が一致したならば、遅延時間の一致を制御部108に報告する。
一方、制御部108は、ステップ414で設定した遅延時間(遅延目標時間)と遅延部109から出力されるオーディオデータの遅延時間が一致し、遅延時間の一致を遅延部109から報告されたならば(ステップ416)、セレクタ110を制御し、スピーカ113に出力する音声を、IPラジオプレイヤ103がIPラジオ放送から受信している音声に切り替える(ステップ418)。ここで、この時点で、遅延部109は、ラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、ラジオ放送で受信したオーディオデータを遅延させて出力している状態となっているので、セレクタ110の出力するオーディオデータの切替により、スピーカ113から出力するオーディオデータが、ラジオ放送で受信したオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに、シームレスに切り替わる。
【0046】
そして、このようにしてIPラジオプレイヤ103がIPラジオ放送で受信した音声のスピーカ113からの出力が開始されたならば、現用チューナで受信中のラジオ放送の受信品質が良好な受信品質に復帰するのを監視し(ステップ420)、受信品質が良好な受信品質に復帰したならば、セレクタ110がDA変換部111に出力するオーディオデータを遅延部109が出力するオーディオデータに切り替えることにより、スピーカ113に出力する音声を、現用チューナが受信中のラジオ放送の音声に切り替える(ステップ422)。ここで、この時点で、遅延部109は、ラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、ラジオ放送で受信したオーディオデータを遅延させて出力しているので、セレクタ110の出力するオーディオデータの切替により、スピーカ113から出力するオーディオデータが、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータから、ラジオ放送で受信したオーディオデータにシームレスに切り替わる。
【0047】
そして、IPラジオプレイヤ103にIPラジオ放送の受信を停止させ(ステップ422)、ステップ404からの処理に戻る。ここで、IPラジオプレイヤ103は、IPラジオ放送の受信を停止する際に、移動通信装置104またはモバイルフォン5の移動通信を切断する。
【0048】
以上、制御部108が行うシームレス切替処理について説明した。
なお、以上のようなシームレス切替処理は、ユーザからラジオ放送の受信の終了を指示されると終了する。また、以上のようなシームレス切替処理は、ユーザから新たなラジオ放送の受信を指示されたときに再起動される。
【0049】
以下、以上のようなシームレス切替処理の処理例を示す。
図5に、シームレス切替処理の第1の処理例を示す。
いま、図5において、数字を囲む各四角形が、所定時間長の単位時間分のオーディオデータを表し、「‘」無しの数字を囲む四角形が、現用チューナがラジオ放送(デジタルラジオ放送またはアナログラジオ放送)で受信したオーディオデータを表し、「‘」付きの数字を囲む四角形が、IPラジオプレイヤ103がIPラジオラジオ放送で受信したオーディオデータを表すものとする。また、各四角形中の数字の値が等しい四角形は(たとえば、「4」と「 4'」)は、同内容のオーディオデータを表している。
【0050】
いま、時刻T0において遅延部109に遅延目標時間として0が設定されているものとして、時刻T0から時刻T1までの受信品質が良好な状態で現用チューナがラジオ放送を受信している期間中、セレクタ110は、遅延部109から出力されるオーディオデータをDA変換部111に出力するように設定されており、現用チューナがラジオ放送から受信しているオーディオデータ(0-1)は、遅延部109で遅延されずにセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力される。
【0051】
この状態で、時刻T1でラジオ放送の受信品質の劣化が検出されると、IPラジオ放送の受信動作がIPラジオプレイヤ103において開始される。
そして、時刻T1-T2において、音声種別判別部114による無音区間の時間的割合の算出により現用チューナがラジオ放送で受信しているオーディオデータの音声種別が算出されると共に、比較部117による比較により、現用チューナがラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間が算出される。
【0052】
ここでは、現用チューナがラジオ放送で受信しているオーディオデータに無音区間が少なく音声種別として少無音区間音声が算出されたものとする。また、図示した例では、2単位時間が遅延時間として算出される。一方、時刻T1-T2の間も、現用チューナがラジオ放送から受信しているオーディオデータ(2-5)は、遅延部109で遅延されずにセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力され続ける。
【0053】
そして、時刻T2において、算出された少無音区間音声に対応するリサンプリングが遅延処理アルゴリズムとして、算出された遅延時間である2単位時間が遅延目標時間として遅延部109に設定される。遅延部109は、設定された遅延目標時間が、この時点の遅延時間0より大きいので、現用チューナから入力するオーディオデータを、リサンプリングの遅延処理によって時間軸方向に伸張して出力する動作を開始する。そして、時間軸方向に伸張したオーディオデータ(6-9)を順次、セレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力する。
【0054】
そして、時間軸方向に伸張したオーディオデータ(9)の出力を完了した時刻T3で、遅延部109に入力するオーディオデータに対する遅延部109から出力するオーディオデータの遅延時間が、設定された遅延目標時間に一致したならば、セレクタ110がDA変換部111に出力するオーディオデータを、遅延部109から出力されるオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに切り替える。結果、スピーカ113から出力される音声がデジタルラジオ放送またはアナログラジオ放送で受信した音声からIPラジオ放送で受信した音声に切り替わり、時刻T3の時点でIPラジオプレイヤ103が出力しているオーディオデータ(10‘)から、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータ(10’-13')が、セレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力されるようになる。
【0055】
ここで、時刻T3においては、遅延部109は、ラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、ラジオ放送で受信したオーディオデータを遅延させて出力している状態となっているので、スピーカ113から出力するオーディオデータが、ラジオ放送で受信したオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに、シームレスに切り替わる。
【0056】
また、時間軸方向に伸張したオーディオデータ(9)の出力を完了した時刻T3で、遅延部109のオーディオデータ時間軸方向への伸張は停止され、時刻T3以降は、遅延部109からは、現用チューナがラジオ放送から受信したオーディオデータ(10-15)が時間軸方向に伸張されずに出力される。
【0057】
次に、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータ(10’-13')のスピーカ113への出力が完了した時刻T4で現用チューナの受信品質が良好な受信品質に復帰すると、セレクタ110がDA変換部111に出力するオーディオデータを、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータから、遅延部109から出力されるオーディオデータに切り替える。そして、時刻T4以降は、現用チューナがラジオ放送から受信し、遅延部109でラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、遅延されたオーディオデータ(14-)がセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力される。
【0058】
ここで、この時刻T4においては、遅延部109は、ラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、ラジオ放送で受信したオーディオデータを遅延させて出力しているので、スピーカ113から出力するオーディオデータが、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータから、ラジオ放送で受信したオーディオデータに、シームレスに切り替わる。
【0059】
次に、図6に、シームレス切替処理の第2の処理例を示す。
いま、図5に示した場合と同様に、時刻T0において遅延部109に遅延目標時間として0が設定されているものとして、時刻T0から時刻T1までの受信品質が良好な状態で現用チューナがラジオ放送を受信している期間中、セレクタ110は、遅延部109から出力されるオーディオデータをDA変換部111に出力するように設定されており、現用チューナがラジオ放送から受信しているオーディオデータ(0-1)は、遅延部109で遅延されずにセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力される。
【0060】
この状態で、時刻T1でラジオ放送の受信品質の劣化が検出されると、IPラジオ放送の受信動作がIPラジオプレイヤ103において開始される。
そして、時刻T1-T2において、音声種別判別部114による無音区間の時間的割合の算出により現用チューナがラジオ放送で受信しているオーディオデータの音声種別が算出されると共に、比較部117による比較により、現用チューナがラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間が算出される。
【0061】
ここでは、現用チューナがラジオ放送で受信しているオーディオデータに無音区間が多く音声種別として多無音区間音声が算出されたものとする。また、図示した例では、2単位時間が遅延時間として算出される。一方、時刻T1-T2の間も、現用チューナがラジオ放送から受信しているオーディオデータ(2-5)は、遅延部109で遅延されずにセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力され続ける。
【0062】
そして、時刻T2において、算出された多無音区間音声に対応するブランクストレッチが遅延処理アルゴリズムとして、算出された遅延時間である2単位時間が遅延目標時間として遅延部109に設定される。遅延部109は、設定された遅延目標時間が、この時点の遅延時間0より大きいので、現用チューナから入力するオーディオデータの無音区間のみを、ブランクストレッチの遅延処理によって時間軸方向に伸張して出力する動作を開始する。ここで、図示した例は、オーディオデータ(6-9)のうち、オーディオデータ7とオーディオデータ9が無音区間のオーディオデータであった場合を示しており、この場合には、オーディオデータ7とオーディオデータ9のみが時間軸方向に伸張して出力される。
【0063】
したがって、時間軸方向に伸張されない有音区間のオーディオデータ6、時間軸方向に伸張された無音区間のオーディオデータ7、時間軸方向に伸張されない有音区間のオーディオデータ8、時間軸方向に伸張された無音区間のオーディオデータ9が、順次、セレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力する。
【0064】
そして、時間軸方向に伸張したオーディオデータ(9)の出力を完了した時刻T3で、遅延部109に入力するオーディオデータに対する遅延部109から出力するオーディオデータの遅延時間が、設定された遅延目標時間に一致したならば、セレクタ110がDA変換部111に出力するオーディオデータを、遅延部109から出力されるオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに切り替える。結果、スピーカ113から出力される音声がデジタルラジオ放送またはアナログラジオ放送で受信した音声からIPラジオ放送で受信した音声に切り替わり、時刻T3の時点でIPラジオプレイヤ103が出力しているオーディオデータ(10‘)から、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータ(10’-13')が、セレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力されるようになる。
【0065】
ここで、時刻T3においては、遅延部109は、ラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、ラジオ放送で受信したオーディオデータを遅延させて出力している状態となっているので、スピーカ113から出力するオーディオデータが、ラジオ放送で受信したオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに、シームレスに切り替わる。
【0066】
以降の動作は、図5に示した処理例と同様である。
以上、本発明の実施形態について説明した。
本実施形態によれば、ラジオ放送からIPラジオ放送へのシームレスな切替のために遅延させる必要のあるラジオ放送の音声が無音区間の割合が所定レベル以上大きい音声である場合には、ラジオ放送の音声の無音区間のみを時間的に伸張してラジオ放送の音声を遅延させ、他の場合には、ラジオ放送の音声を時間的に一様に伸張してラジオ放送の音声を遅延させる。したがって、ラジオ放送の音声の無音区間が多い場合には、速やかに音声をラジオ放送に対するIPラジオ放送の遅延時間分、遅延させることができると共に、ラジオ放送の音声の無音区間が少ない、または、無い場合でも、一定の期間内に確実に音声を、ラジオ放送に対するIPラジオ放送の遅延時間分、遅延させることができる。
【0067】
ところで、以上の実施形態は、制御部108において図4に示したシームレス切替処理に代えて、図7に示すシームレス切替処理を行うようにしてもよい。
図7に示したシームレス切替処理は、図4に示したシームレス切替処理のステップ414において、ステップ410で算出した遅延時間を遅延目標時時間として遅延部109に設定した後、遅延時間の一致を遅延部109から報告されるまで(ステップ416)の間、遅延部109における遅延の状況を監視し、遅延の状況に応じて、遅延部109で用いる遅延処理アルゴリズムを変更するようにしたものである。
【0068】
すなわち、図示するように制御部108は、ステップ410で算出した遅延時間を遅延目標時時間として遅延部109に設定したならば(ステップ414)、遅延部109に設定されている遅延処理アルゴリズムがブランクストレッチであって、遅延効率がしきい値Th1未満であるかどうかと(ステップ702)、遅延部109に設定されている遅延処理アルゴリズムがリサンプリングであって、遅延前のオーディオデータの無音区間の時間的な割合がしきい値Th2超であるかどうかを(ステップ704)監視する。
【0069】
ここで、しきい値Th1としては、遅延処理としてリサンプリングを行った場合の遅延効率と等しい値、または、リサンプリングを行った場合の遅延効率から所定のマージンを減じた値を用いる。また、しきい値Th2としては、遅延処理としてブランクストレッチを行った方が、遅延処理としてリサンプリングを行った場合よりも遅延効率が良くなる無音区間の時間的な割合、または、当該遅延効率が良くなる無音区間の時間的な割合に所定のマージンを加えた値を用いる。
【0070】
そして、遅延部109に設定されている遅延処理アルゴリズムがブランクストレッチであって、遅延効率がしきい値Th1未満である場合には(ステップ702)、遅延部109にリサンプリングを遅延処理アルゴリズムとして設定し直す(ステップ706)。
【0071】
一方、遅延部109に設定されている遅延処理アルゴリズムがリサンプリングであって、遅延前のオーディオデータの無音区間の時間的な割合がしきい値Th2超である場合には(ステップ704)、遅延部109にブランクストレッチを遅延処理アルゴリズムとして設定し直す(ステップ708)。
【0072】
図8に、図7に示したシームレス切替処理の処理例を示す。
いま、時刻T0において遅延部109に遅延目標時間として0が設定されているものとして、時刻T0から時刻T1までの受信品質が良好な状態で現用チューナがラジオ放送を受信している期間中、セレクタ110は、遅延部109から出力されるオーディオデータをDA変換部111に出力するように設定されており、現用チューナがラジオ放送から受信しているオーディオデータ(0-1)は、遅延部109で遅延されずにセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力される。
【0073】
この状態で、時刻T1でラジオ放送の受信品質の劣化が検出されると、IPラジオ放送の受信動作がIPラジオプレイヤ103において開始される。
そして、時刻T1-T2において、音声種別判別部114による無音区間の時間的割合の算出により現用チューナがラジオ放送で受信しているオーディオデータの音声種別が算出されると共に、比較部117による比較により、現用チューナがラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間が算出される。
【0074】
ここでは、現用チューナがラジオ放送で受信しているオーディオデータに無音区間が多く音声種別として多無音区間音声が算出されたものとする。また、図示した例では、2単位時間が遅延時間として算出される。一方、時刻T1-T2の間も、現用チューナがラジオ放送から受信しているオーディオデータ(2-5)は、遅延部109で遅延されずにセレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力され続ける。
【0075】
そして、時刻T2において、算出された多無音区間音声に対応するブランクストレッチが遅延処理アルゴリズムとして、算出された遅延時間である2単位時間が遅延目標時間として遅延部109に設定される。遅延部109は、設定された遅延目標時間が、この時点の遅延時間0より大きいので、現用チューナから入力するオーディオデータの無音区間のみを、ブランクストレッチが遅延処理によって時間軸方向に伸張して出力する動作を開始する。ここで、図示した例は、オーディオデータ(6-8)が有音区間のオーディオデータであった場合を示しており、この場合には、オーディオデータ(6-8)は時間軸方向に伸張されずに出力され、オーディオデータの遅延は遅延時間0のままとなる。
【0076】
そして、オーディオデータ8の出力を完了した時刻Tcで、オーディオデータ(6-8)を出力した期間の遅延効率がしきい値Th1未満であることが検出されると、制御部108は、遅延処理アルゴリズムとしてリサンプリングを遅延部109に設定し直す。
【0077】
これにより時刻Tc以降、遅延部109は現用チューナから入力するオーディオデータを、リサンプリングの遅延処理によって時間軸方向に伸張して出力する動作を開始する。そして、時間軸方向に伸張したオーディオデータ(9-12)を順次、セレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力する。
【0078】
そして、時間軸方向に伸張したオーディオデータ(12)の出力を完了した時刻T3で、遅延部109に入力するオーディオデータに対する遅延部109から出力するオーディオデータの遅延時間が、設定された遅延目標時間に一致したならば、セレクタ110がDA変換部111に出力するオーディオデータを、遅延部109から出力されるオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに切り替える。結果、スピーカ113から出力される音声がデジタルラジオ放送またはアナログラジオ放送で受信した音声からIPラジオ放送で受信した音声に切り替わり、時刻T3の時点でIPラジオプレイヤ103が出力しているオーディオデータ(13‘)から、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータ(13’-)が、セレクタ110、DA変換部111、アンプ112を介してスピーカ113から出力されるようになる。
【0079】
ここで、時刻T3においては、遅延部109は、ラジオ放送で受信したオーディオデータに対するIPラジオ放送で受信したオーディオデータの遅延時間分、ラジオ放送で受信したオーディオデータを遅延させて出力している状態となっているので、スピーカ113から出力するオーディオデータが、ラジオ放送で受信したオーディオデータからIPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータに、シームレスに切り替わる。
【0080】
以上、処理例を示したように、図7に示したシームレス切替処理によれば、遅延部109によるラジオ放送の音声の遅延を開始した後に、ラジオ放送の音声の無音区間の多寡が変化した場合でも、ラジオ放送からIPラジオ放送へのシームレスの切替を速やかに完了することができる。
【0081】
さて、以上の実施形態では、遅延処理アルゴリズムとしたブランクストレッチとリサンプリングを用いる場合について示したが、これは、リサンプリングに代えて、オーディオデータを時間軸方向に全体的に一様に伸張するものであれば、ピッチを変化させないタイムストレッチなどの任意の遅延処理アルゴリズムを用いるようにしてよい。なお、オーディオデータを時間軸方向に全体的に一様に伸張するアルゴリズムがいかようなものであれ、時間軸方向の伸張の度合いが大きくなると音質の劣化や再現度の劣化が大きくなることが避けられないので、時軸方向の伸張の度合いをあまり大きくすることはできず、やはり、遅延部109において、オーディオデータの遅延まで、制御部108から設定された遅延時間に達するまで拡大するまでに比較的長時間を要することとなる。
【0082】
また、以上の実施形態に係るラジオ受信機には、IPラジオプレイヤ103に代えて、デジタルラジオ放送やアナログラジオ放送とサイマル放送の関係にある、任意の放送方式、放送媒体の放送を受信する受信機を備えるようにしてもよい。この場合にも、IPラジオプレイヤ103が出力するオーディオデータと同様に、IPラジオプレイヤ103に代えて備えた受信機の出力するオーディオデータを処理するようにする。
【符号の説明】
【0083】
1…ラジオ放送受信機、2…ラジオ放送局、3…WAN、4…IPラジオサーバ、5…モバイルフォン、101…デジタルラジオチューナ、102…アナログラジオチューナ、103…IPラジオプレイヤ、104…移動通信装置、105…外部インタフェース、106…入力装置、107…表示装置、108…制御部、109…遅延部、110…セレクタ、111…DA変換部、112…アンプ、113…スピーカ、114…音声種別判別部、115…チューナ用メモリ、116…プレイヤ用メモリ、117…比較部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8