(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物が包装材に包まれてシールされた被検査物(W)を所定間隔おきに搬送しながらX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査装置(1)において、
前記被検査物を透過したX線の透過画像から抽出した外形領域(D1)の画像を、設定入力された前記被検査物のシール部の幅寸法だけ縮小し、縮小した画像を前記外形領域の画像から差し引いてシール部領域(D2)を算出し、前記外形領域において前記被検査物の内容物と対応する所定範囲の濃淡レベルで抽出した1ブロブの透過画像(D4)を第1領域(D3)と該第1領域よりも濃淡レベルが小さい第2領域(D5)とに分離し、分離した前記第2領域が前記シール部領域内に含まれるか否かによりシール不良の有無を判別する信号処理部(6)を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のX線検査装置では、シール部の位置や大きさのバラツキを考慮してシール部の幅寸法が設定されているため、実際にはシールされていない箇所を含む領域をシール部のシール部領域として算出し、このシール部領域内に内容物の画像の濃淡レベルと同等以上の濃淡レベルが存在すれば、その被検査物をシール不良有りと判別する。その結果、本来シール不良が無く良品と判別されるべき被検査物をシール不良有りと誤判別する問題があった。
【0007】
さらに、
図5(a),(b)を参照しながら説明する。
図5(a),(b)は例えば薄切りハムやスライスチーズなどのような包装材内に複数の薄厚品Wa1が積層された内容物Waの一部がシール部領域D2に入り込んだ状態を側面視したときの概略説明図である。
【0008】
従来のX線検査装置では、シール部の幅寸法がある程度の余裕を持って設定されるので、実際にはシールされていない箇所を含んでシール部領域(
図5(a),(b)の左右の四角で囲まれる領域D2)を算出する。そして、
図5(a)の例の場合は、右側のシール部領域D2において実際にシールされた箇所に内容物Waのうち1つの薄厚品Wa1が入り込んで噛み込んだ被検査物Wであり、この被検査物Wをシール不良有りと判別する。また、
図5(b)の例の場合は、左側のシール部領域D2において実際にはシールされていない領域に内容物Waのうち幾つかの薄厚品Wa1が単にずれて入り込んだ被検査物Wであるが、
図5(a)の例の場合と同様に、この被検査物Wもシール不良有りと判別してしまう。
【0009】
このように、従来のX線検査装置では、シール部領域内に内容物の画像の濃淡レベルと同等以上の濃淡レベルが存在すれば、その被検査物をシール不良有りと判別する。このため、シール部領域において実際にはシールされていない箇所に内容物と同等以上の濃淡レベルが存在し、本来シール不良が無く良品と判別されるべき被検査物であってもシール不良有りと誤判別してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、誤判別を低減してシール不良の有無を検査することができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたX線検査装置は、内容物が包装材に包まれてシールされた被検査物Wを所定間隔おきに搬送しながらX線を照射し、前記被検査物を透過したX線の透過画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査装置1において、
前記被検査物を透過したX線の透過画像から抽出した外形領域D1の画像を、設定入力された前記被検査物のシール部の幅寸法だけ縮小し、縮小した画像を前記外形領域の画像から差し引いてシール部領域D2を算出し、前記外形領域において前記被検査物の内容物と対応する所定範囲の濃淡レベルで抽出した1ブロブの透過画像D4を第1領域D3と該第1領域よりも濃淡レベルが小さい第2領域D5とに分離し、分離した前記第2領域が前記シール部領域内に含まれるか否かによりシール不良の有無を判別する信号処理部6を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載されたX線検査装置は、請求項1のX線検査装置において、
前記被検査物Wは前記内容物が搬送時の搬送面の鉛直方向に積層された複数の薄厚品からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載されたX線検査装置は、請求項1のX線検査装置において、
前記被検査物Wは前記内容物が一塊からなることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載されたX線検査装置は、請求項1〜3の何れかのX線検査装置において、
前記第1領域と前記第2領域を分離するための分離閾値を設定する設定入力部5を備え、
前記分離閾値が、前記被検査物Wの良品サンプルの内容物が検出できる限界の濃淡レベルまたは前記被検査物の不良品サンプルの内容物の不良となる部分が検出できる限界の濃淡レベルのいずれかに基づいて設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るX線検査装置によれば、シール部領域において実際にはシールされていない箇所に内容物の一部が単にずれて入り込んだ被検査物をシール不良有りと誤判別することがなく、誤判別を低減してシール部への内容物の噛み込みをより正確に検出してシール不良の有無を判別することができる。
【0016】
内容物として複数の薄厚品が搬送時の搬送面の鉛直方向に積層された被検査物を検査対象とした場合、積層された複数の薄厚品がシール部領域において実際にはシールされていない部分に単にずれて入り込んだ状態と、内容物の一部である薄厚品がシール部領域に噛み込んだ状態とを識別して被検査物のシール不良の有無を判別することができる。
【0017】
内容物が一塊の被検査物を検査対象とした場合、シール部領域において実際にはシールされていない部分に一塊の内容物の一部が単にずれて入り込んだ状態と、一塊の内容物の一部が潰れてシール部領域に噛み込んだ状態とを識別して被検査物のシール不良の有無を判別することができる。
【0018】
1ブロブの透過画像を第1領域と第2領域とに分離する場合、被検査物の良品サンプルと不良品サンプルを用いれば、第1領域と第2領域の分離に適した分離閾値を設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明に係るX線検査装置は、搬送ラインの一部に組み込まれ、食品等の内容物が包装材に包まれてシールされた被検査物を所定間隔おきに搬送させながらX線を照射し、被検査物を透過したX線を検出し、検出したX線の透過画像に基づいて被検査物の外形領域から被検査物のシール部のシール部領域を特定し、特定したシール部領域内の内容物の噛み込みによるシール不良の有無を検査するものである。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態のX線検査装置1は、被検査物Wのシール不良の有無を検査するため、搬送装置2、X線発生器3、X線検出器4、設定入力部5、信号処理部6、表示部7を含んで概略構成される。
【0023】
被検査物Wは、包装材に内容物が収容され、包装材の少なくとも1辺がシールされて包装されたものである。本実施の形態のX線検査装置1は、X線透過データにより透過量が大きいほど淡いとした濃淡レベルをもつ1枚の透過画像(平面画像)上において、所定範囲の濃淡レベルで抽出して前景となる内容物の領域が1ブロブ(同じ論理状態のピクセルが隣接している領域であり、一塊を意味する)として現れる製品を検査対象の被検査物Wとしている。具体的には、
図4(a)に示すような内容物Waが複数の薄厚品Wa1からなり、搬送時に搬送面(後述する搬送ベルト2aの搬送面)の鉛直方向に複数の薄厚品Wa1が積層された状態で一塊となっている薄切りハムやスライスチーズなどの製品、
図4(b)に示すような内容物Wa自体が一塊となっている蒲鉾(練製品)などの製品がある。
【0024】
搬送装置2は、検査対象の被検査物Wを搬送路上で所定間隔おきに順次搬送するもので、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成される。
【0025】
搬送装置としてのベルトコンベア2は、X線を透過しやすい材料(原子量の大きい元素以外の元素)からなる搬送ベルト2aを備える。ベルトコンベア2は、被検査物Wの検査を行うときに、予め設定入力部5にて設定される搬送速度となるように駆動モータMの回転が制御されて搬送ベルト2aが駆動する。これにより、搬入口から搬入された被検査物Wは、設定された搬送速度で搬出口側に向けて
図1の搬送方向Xに搬送される。
【0026】
X線発生器3は、搬入口から搬出口に向かって搬送方向Xに搬送路上を搬送される被検査物WにX線を照射するもので、電圧を印加して加速させた電子をターゲットに射突させてX線を発生させる円筒状のX線管と、X線管が発生させたX線をX線検出器4に向けて照射するための照射スリットとを有する。
【0027】
X線管は、例えば金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成する。X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(
図1のX方向)の平面上で直交する方向に設けられ、生成したX線を、下方のX線検出器4に向けて、長手方向に沿った照射スリットによりスクリーン状にして照射する。
【0028】
X線検出器4は、搬送される被検査物Wの搬送方向Xの平面上で搬送方向Xと直交する方向に複数の素子が一直線上に配置されたものである。図示はしないが、X線検出器4は、ライン状に整列して配設された複数のフォトダイオードと、ライン状のフォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えてアレイ状に構成される。
【0029】
X線検出器4は、複数の素子(フォトダイオードとシンチレータのアレイ)によって被検査物Wおよび搬送ベルト2aを透過するX線を検出し、この検出したX線の検出データを素子毎に複数の素子数を1ラインとして信号処理部6に順次出力し、被検査物Wの搬送に伴い順次出力を繰り返す。
【0030】
設定入力部5は、装置本体に設けられる例えばキー、押しボタン、スイッチ、表示部7の表示画面上のソフトキーなどで構成される。設定入力部5は、被検査物Wのシール部の幅寸法(例えば外形が矩形状であれば、外形の4辺のうちシールが施される各辺から内側に向かう寸法)、シール部を有する箇所の数などのシール部に関する各種情報を設定する際に操作される。
【0031】
また、設定入力部5は、被検査物Wのシール不良の有無を検査するにあたって、内容物の透過画像を抽出するための情報や内容物の透過画像を第1領域と第2領域に分離するための分離閾値を設定する際に操作される。この分離閾値は、例えば被検査物Wの良品サンプルと不良品サンプルを用いて設定することができる。
【0032】
図3(a),(b)は分離閾値を設定する際に用いられる被検査物Wのサンプル(良品サンプル、不良品サンプル)の被検査物Wのサンプルに吸収されたX線の濃度ヒストグラムの一例を示し、濃度値の大きさが濃淡レベルに対応している。
【0033】
被検査物Wの良品サンプルは、
図3(a)に示すように、濃度値が小さい包装材の分布Aと、包装材に比べて濃度値が大きい内容物の分布Bとの間の領域(シール部領域を含む)の度数がほぼ一定値を示す濃度ヒストグラムとなっている。
【0034】
被検査物Wの不良品サンプルは、
図3(b)に示すように、内容物の分布bの度数が良品サンプルの内容物の分布Bの度数よりも小さく、包装材の分布aと内容物の分布bとの間の領域(シール部領域を含む)の度数が良品サンプルのように一定値ではなく他の部分よりも度数の大きい分布cを含む濃度ヒストグラムとなっており、この分布cがシール部領域内の不良となる部分(内容物の噛み込み不良となる部分)を示している。
【0035】
そして、設定入力部5にて分離閾値を設定するにあたって、
図3(a)の濃度ヒストグラムを示す被検査物Wの良品サンプルを用いた場合には、この良品サンプルの内容物が検出できる限界の濃度値(濃淡レベル)に分離閾値を設定する。
【0036】
また、
図3(b)の濃度ヒストグラムを示す被検査物Wの不良品サンプルを用いた場合には、この不良品サンプルの内容物の不良となる部分が検出できる限界の濃度値(濃淡レベル)に分離閾値を設定する。
【0037】
なお、
図4(a)に示すような複数の薄厚品Wa1が内容物Waとして積層された被検査物Wの場合には、包装材の濃淡レベルより大きく1つの薄厚品Waの濃淡レベルより小さい値を分離閾値として設定してもよい。また、分離閾値は、設定入力部5の入力操作により、検査対象となる被検査物Wの内容物の種類に応じて適宜調整することができる。
【0038】
設定入力部5は、上記設定の他、被検査物Wの検査の開始・停止の指示、搬送装置2の搬送ベルト2aの搬送速度の設定、設定内容や検査結果の表示などを行う際にも操作される。
【0039】
信号処理部6は、例えばCPUやメモリなどを含み、位置検出手段8が被検査物Wを検出したときの信号をタイミング信号として、X線検出器4からの電気信号を取り込んで各種信号処理を行う。
【0040】
信号処理部6は、
図1に示すように、記憶手段6a、外形領域抽出手段6b、シール部領域算出手段6c、内容物領域抽出手段6d、淡領域分離手段6e、対象領域算出手段6f、シール部不良判別手段6gを含んで構成される。
【0041】
記憶手段6aは、X線検出器4からの各被検査物W毎のX線透過データを記憶する。X線透過データは、X線検出器4からの電気信号を不図示のA/D変換器によりA/D変換して得られる。さらに説明すると、記憶手段6aは、1つの被検査物Wの検査を行う毎に、X線検出器4の1ライン(Y方向)あたり例えば数百個のX線透過データを、少なくとも搬送される被検査物Wの搬送方向の長さ(前端から後端までの検出期間に相当)に対応した所定ライン数(例えば数百ライン)だけ格納する。
【0042】
外形領域抽出手段6bは、記憶手段6aに格納されたX線透過データから全体の透過画像(被検査物Wとベルト面を含む画像)を作成し、この作成した全体の透過画像から外形領域(
図2(a)に示す被検査物Wの輪郭から内側の面積を示す領域)D1を抽出する。この外形領域D1の抽出は、記憶手段6aに格納されたX線透過データから被検査物Wの全体の濃度ヒストグラムを求め、求めた濃度ヒストグラムから被検査物Wのデータと被検査物W以外(ベルト面)のデータとに切り分けて2値化し、例えば全体の濃度ヒストグラムにおいて、被検査物のデータを255、被検査物以外のデータを0としてデータを2値化し、2値化したデータのうち被検査物Wのデータを外形領域D1として抽出する。
【0043】
シール部領域算出手段6cは、設定入力部5からシール部の幅寸法の数値が入力されると、外形領域算出手段6bにて抽出された外形領域D1の画像を設定入力された幅寸法だけ縮小し、縮小した画像を外形領域D1から差し引いて
図2(b)の右上がりの斜線部分で示すシール部領域D2を算出する。
【0044】
内容物領域抽出手段6dは、設定入力部5にて設定された内容物の透過画像を抽出するための情報を用いて、外形領域D1から内容物領域D4を抽出する。内容物の透過画像を抽出するための情報は、例えば、所定の濃淡レベル以上を所定範囲として抽出するための閾値(抽出閾値)であり、外形領域D1内の透過画像に対し、この閾値を用いて被検査物Wの内容物と対応する1ブロブの内容物領域D4を抽出する。すなわち、内容物領域抽出手段6dは、透過画像からこの閾値を超える濃淡レベルの領域を内容物領域D4として抽出する。この抽出された内容物領域D4は、
図2(d)の右下がりの斜線部分で示すように、濃淡レベルが小さい不良となる薄厚部分の領域D4aを含む内容物の領域である。なお、内容物の透過画像を抽出するための情報を、シール部領域の濃淡レベルに対するレベル差とし、シール部領域内の濃淡レベルとこの情報から抽出閾値を求めて内容物領域D4を抽出するようにしてもよい。
【0045】
淡領域分離手段6eは、被検査物Wの内容物に対し、内容物が通常の厚みの領域と内容物が薄い領域(濃淡レベルが小さい)とを分離して内容物が薄い領域を求める処理を実施する。例えば、内容物領域D4と内容物が通常の厚みである通常厚内容物領域の差分によって求めることができる。外形領域D1内の透過画像に対し、設定入力部5にて設定された分離閾値を用いて通常の厚みである通常厚内容物領域D3を抽出する。この抽出された通常厚内容物領域D3は、
図2(c)の右下がりの斜線部分で示すように、濃淡レベルが小さい不良となる薄厚部分の領域(
図2(d)のD4a)を含まない内容物の領域である。
【0046】
淡領域分離手段6eは、内容物領域抽出手段6dにて抽出した内容物領域D4と通常厚内容物領域D3との差分領域D5を算出する。差分領域D5は、
図2(e)の右下がりの斜線部分で示す領域である。
【0047】
なお、本例において、通常厚内容物領域D3が特許請求の範囲の第1領域に相当し、差分領域D5が特許請求の範囲の第2領域に相当するものである。また、第2領域を差分処理で求めるように説明したが、内容物領域D4を抽出するための抽出閾値と分離閾値の範囲内となる濃淡レベルの領域を抽出して第2領域を求めるようにしてもよい。
【0048】
対象領域算出手段6fは、シール部領域算出手段6cにて算出したシール部領域D2と、淡領域分離手段6eにて算出した差分領域D5との重なり部分(
図2(f)の右下がりの斜線部分)を処理対象領域D6として算出する。
【0049】
シール部不良判別手段6gは、対象領域算出手段6fにて算出した処理対象領域D6がシール部領域内の異常領域(内容物の噛み込み領域)と判断し、シール部の不良有りを示す選別信号を出力する。この選別信号は、後段の処理において、被検査物Wを良品と不良品に選別する際に用いられる。
【0050】
表示部7は、例えば液晶表示器などの表示装置で構成され、被検査物Wの全体画像、外形領域の画像、シール部領域の画像、判別結果に基づく被検査物Wを平面視した透過画像、「OK」や「NG」の良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を設定入力部5の操作に基づいて表示画面に表示する。
【0051】
次に、上記のように構成されるX線検査装置1を用いて被検査物Wのシール不良の有無を検査する場合の動作について説明する。
【0052】
設定入力部5の指示により被検査物Wの検査が開始されると、ベルトコンベア2の搬送ベルト2a上を搬送される被検査物Wに対し、X線発生器3からX線が照射される。X線検出器4は、被検査物WにX線が照射されると、このX線の照射に伴って被検査物Wを透過してくるX線の強さに対応したレベルを有する電気信号を信号処理部6に出力する。
【0053】
信号処理部6は、X線検出器4から入力される電気信号を不図示のA/D変換器によりA/D変換し、このA/D変換したデータを所定のタイミング(位置検出手段8が被検査物Wを検出したときの信号に基づくタイミング)で取り込むことにより、被検査物W毎のX線透過データとして記憶手段6aに格納する。
【0054】
次に、外形領域抽出手段6bは、記憶手段6aに格納されたX線透過データから全体の透過画像を作成し、作成した全体の透過画像から
図2(a)に示す外形領域(被検査物Wの輪郭から内側の面積を示す領域)D1を抽出する。
【0055】
また、シール部領域算出手段6cは、外形領域算出手段6bにて抽出された外形領域D1の画像を設定入力部5から設定入力された幅寸法だけ縮小し、縮小した画像を外形領域D1から差し引いて
図2(b)の右上がりの斜線部分で示すシール部領域D2を算出する。
【0056】
さらに、内容物領域抽出手段6dは、設定入力部5にて設定された内容物の透過画像を抽出するための情報を用い、
図2(d)の内容物領域D4を
図2(a)に示す外形領域D1の透過画像から抽出する。
【0057】
次に、淡領域分離手段6eは、設定入力部5にて設定された分離閾値を用いて内容物が通常の厚みである通常厚内容物領域D3を抽出し、内容物領域抽出手段6dにて抽出した内容物領域D4と通常厚内容物領域D3との差分領域D5を算出する。
【0058】
そして、対象領域算出手段6fは、シール部領域算出手段6cにて算出したシール部領域D2と淡領域分離手段6eにて算出した差分領域D5との重なり部分(
図2(f)の右下がりの斜線部分)を処理対象領域D6として算出する。
【0059】
シール部不良判別手段6gは、対象領域算出手段6fにて処理対象領域D6を算出すると、この算出した処理対象領域D6がシール部領域D2内の異常領域(内容物の噛み込み領域)と判断し、シール部の不良有りを示す選別信号を出力する。
【0060】
ここで、
図4(a),(b)はシール不良有りの被検査物Wの2つの例として、被検査物Wの包装材に収容される内容物Waがシール部領域D2に噛み込んだ状態の透過画像(平面画像)を示す。
【0061】
図4(a)は、例えば薄切りハムやスライスチーズなどのような内容物Waとして複数の薄厚品Wa1が搬送時に
図1の搬送ベルト2aの搬送面の鉛直方向に積層するように包装材に収容された製品を被検査物Wとしたときの透過画像(平面画像)である。
図4(a)の透過画像は、内容物Waの複数の薄厚品Wa1がずれてシール部領域D2に入り込み、そのうちの1つの薄厚品Wa1がシール部に噛み込んでいる状態を示す。
【0062】
本実施の形態のX線検査装置1では、
図4(a)に示す透過画像を取得すると、上述した
図2の処理手順により、シール部領域D2内における1つの薄厚品Wa1の領域を処理対象領域D6として算出し、被検査物Wのシール部にシール不良有りと判別する。
【0063】
図4(b)は、例えば蒲鉾などのような一塊の内容物Waが包装材に収容された製品を被検査物Wとしたときの透過画像(平面画像)である。
図4(b)の透過画像は、一塊の内容物Waの一部が潰れてシール部に潰れ部分Wa2が噛み込んでいる状態を示す。
【0064】
本実施の形態のX線検査装置1では、
図4(b)に示す透過画像を取得すると、上述した
図2の処理手順により、シール部領域D2内における一塊の内容物Waの潰れ部分Wa2の領域を処理対象領域D6として算出し、被検査物Wのシール部にシール不良有りと判別する。
【0065】
また、
図5(a),(b)はシール部領域D2への内容物Waの入り込み状態が異なる被検査物Wを側面から見た概略説明図である。
【0066】
図5(a)の被検査物Wは、内容物Waの一部として1つの薄厚品Wa1が右側のシール部領域D2に噛み込んだ状態であり、シール不良有りの不良品として判別されるべき被検査物Wである。
【0067】
これに対し、
図5(b)の被検査物Wは、内容物Waの一部として積層された複数の薄厚品Wa1が左側のシール部領域D2において実際にはシールされていない部分に単に入り込んだ状態であり、シール不良が無く本来良品として判別されるべき被検査物Wである。
【0068】
従来のX線検査装置では、シール不良が無く本来良品として判別されるべき
図5(b)の被検査物Wを含め、
図5(a),(b)の両方の被検査物Wをシール不良と判別してしまう。これに対し、本実施の形態のX線検査装置1では、
図5(a)の被検査物Wをシール不良と判別するが、
図5(b)の被検査物Wはシール不良無しと判別する。これにより、本実施の形態のX線検査装置1では、本来シール不良が無く良品と判別されるべき被検査物Wをシール不良として誤判別することがない。
【0069】
このように、本実施の形態のX線検査装置は、画像上で1ブロブとなる内容物の縁部がシール領域にかかった部分の濃淡レベルの大きさにより、シール不良を判断することになるので、内容物の縁部がシールでつぶれて濃淡レベルが小さくなったものをシール不良とすることができる。そして、単にシール部領域D2にずれて入り込んだ被検査物は濃淡レベルが小さくならないので、シール部領域D2において実際にはシールされていない箇所に内容物Waの一部が単にずれて入り込んだ被検査物Wをシール不良有りと誤判別することがなく、誤判別を低減してシール部への内容物の噛み込みをより正確に検出して被検査物Wのシール不良の有無を判別することができる。
【0070】
また、
図4(a)に示すように、内容物Waである複数の薄厚品Wa1が搬送時の搬送ベルト2aの搬送面の鉛直方向に積層された被検査物Wを検査対象とした場合は、積層された複数の薄厚品Wa1がシール部領域D2において実際にはシールされていない部分に単にずれて入り込んだ状態と、内容物Waの一部である薄厚品Wa1がシール部領域D2に噛み込んだ状態とを識別して被検査物Wのシール不良の有無を判別することができる。
【0071】
さらに、
図4(b)に示すように、内容物Waが一塊の被検査物Wを検査対象とした場合は、シール部領域D2において実際にはシールされていない部分に一塊の内容物Waの一部が単にずれて入り込んだ状態と、一塊の内容物Waの一部の潰れ部分Wa2がシール部領域D2に噛み込んだ状態とを識別して被検査物Wのシール不良の有無を判別することができる。
【0072】
また、外形領域D1において被検査物Wの内容物と対応する所定範囲の濃淡レベルで抽出した1ブロブの透過画像D4を通常厚内容物領域D3(第1領域)と差分領域D5(第2領域)とに分離するにあたって、被検査物Wのサンプル(例えば
図3(a),(b)に示す濃度ヒストグラムを有する良品サンプルと不良品サンプル)を用いれば、通常厚内容物領域D3と差分領域D5の分離に適した分離閾値を設定することができる。
【0073】
以上、本発明に係るX線検査装置の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。