(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556689
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】区画格子構造
(51)【国際特許分類】
E06B 9/01 20060101AFI20190729BHJP
E05D 13/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
E06B9/01 K
E05D13/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-247549(P2016-247549)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-100546(P2018-100546A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591015739
【氏名又は名称】利高工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 俊之
(72)【発明者】
【氏名】宮地 宏和
(72)【発明者】
【氏名】千代 茂
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−052243(JP,A)
【文献】
特開2002−349131(JP,A)
【文献】
特開2016−176247(JP,A)
【文献】
特開2015−055145(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3116441(JP,U)
【文献】
特許第3342431(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/10
E06B 9/01
E06B 9/24−9/388
E05D 13/00
E05D 15/00−15/58
E05F 7/04
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外空間を建物に沿って設けられる第一屋外空間と建物から離れて設けられる第二屋外空間とに隔てる区画格子構造であって、
上部に設けられる上部構造体と、
前記上部構造体から間隔を開けて設けられる下部構造体と、
前記上部構造体の下面に固定される上レールと、
前記上レールにスライド可能に吊り下げられる吊り車を有し、前記下部構造体との間に間隙を開けて配置される可動面格子と、
前記下部構造体の上面に、前記可動面格子の下端部が挿入される下ガイド溝と、
少なくとも前記下部構造体の上面に固定されて、前記上部構造体及び前記下部構造体の間に立設され、前記可動面格子に平行に隣接する不動面格子と、を備え、
前記可動面格子は、その上枠に2つ以上固定された吊り車が設けられ、該吊り車は前記上レールの内側に挿入されて、当該上レールの開口の両側にそれぞれ形成されるリップの上を走行する2つずつの車輪と、異なるリップの車輪同士を繋ぐ軸部と、該軸部に吊り下がり当該可動面格子の上枠を固定する吊り部とを有し、
前記可動面格子はその下端に鉛直な軸に回転自在な円形平板状の複数の回転体を有すると共にその内の少なくとも1つの回転体は前記第一屋外空間寄りに可動面格子からはみ出し、もう1つの回転体は前記第二屋外空間寄りに可動面格子からはみ出して構成され、当該回転体は前記下ガイド溝の2つの突条の間に挿入されるとともに、前記下ガイド溝の底面から間隔を開けて配置され、
前記第一屋外空間は、建物の2階に設けられるバルコニーと、平面視した場合に前記バルコニーに隣接し1階から2階に跨る屋外の吹き抜け空間と、を有し、
前記可動面格子は、前記不動面格子と重なり合う開状態と、前記不動面格子の側方に配置される閉状態とにスライド可能であり、
前記可動面格子は前記閉状態のとき、前記バルコニー側に配置され、前記不動面格子は、前記吹き抜け空間側に配置されていることを特徴とする区画格子構造。
【請求項2】
前記可動面格子は、水平材を鉛直方向に複数並べる横格子であり、
前記水平材は、下面が前記第一屋外空間から前記第二屋外空間に向かって上り勾配に形成されることを特徴とする請求項1に記載の区画格子構造。
【請求項3】
屋外空間を建物に沿って設けられ、第一屋外空間と建物から離れて設けられる第二屋外空間とに隔てる区画格子構造であって、
上部に設けられる上部構造体と、
前記上部構造体から間隔を開けて設けられる下部構造体と、
前記上部構造体の下面に固定される上レールと、
前記上レールにスライド可能に吊り下げられる吊り車を有し、前記下部構造体との間に間隙を開けて配置される可動面格子と、
前記下部構造体の上面に、前記可動面格子の下端部が挿入される下ガイド溝と、を備え、
前記可動面格子は、その上枠に2つ以上固定された吊り車が設けられ、該吊り車は前記上レールの内側に挿入されて、当該上レールの開口の両側にそれぞれ形成されるリップの上を走行する2つずつの車輪と、異なるリップの車輪同士を繋ぐ軸部と、該軸部に吊り下がり当該可動面格子の上枠を固定する吊り部とを有し、
前記可動面格子はその下端に鉛直な軸に回転自在な円形平板状の複数の回転体を有すると共にその内の少なくとも1つの回転体は前記第一屋外空間寄りに可動面格子からはみ出し、もう1つの回転体は前記第二屋外空間寄りに可動面格子からはみ出して構成され、当該回転体は前記下ガイド溝の2つの突条の間に挿入されるとともに、前記下ガイド溝の底面から間隔を開けて配置され、
前記第一屋外空間は、前記建物の2階に設けられるバルコニーを含み、
前記可動面格子は、矩形枠内に水平材を鉛直方向に複数並べて固定した横格子であり、
前記水平材は、上面が水平であり、且つ、下面が前記第一屋外空間から前記第二屋外空間に向かって上り勾配に形成されることを特徴とする区画格子構造。
【請求項4】
少なくとも前記下部構造体の上面に固定されて、前記上部構造体及び前記下部構造体の間に立設され、前記可動面格子に平行に隣接する不動面格子をさらに備え、
前記可動面格子は、前記不動面格子と重なり合う開状態と、前記不動面格子の側方に配置される閉状態とにスライド可能であることを特徴とする請求項3に記載の区画格子構造。
【請求項5】
前記可動面格子が前記閉状態のときに、当該可動面格子のスライドを規制する施錠手段を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、及び請求項4のいずれか1項に記載の区画格子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に沿って設けられる第一屋外空間と建物から離れて設けられる第二屋外空間とに隔てる区画格子構造に関し、少なくともスライド可能な可動面格子が配置された区画格子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より屋内と屋外を隔てる窓にルーバーなどの面格子が設けられる例が知られている。また、このような例においては格子が引き戸式となっている例が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2)。
【0003】
また、バルコニーなどの屋外空間と当該バルコニーの外側の屋外空間とを隔てる面格子についても記載された例がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−263451号公報
【特許文献2】特開2013−194423号公報
【特許文献3】特開2009−52243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、屋外空間を2つの屋外空間に隔てる区画格子構造において、従来のような引き戸式の格子を用いた場合、下側の溝にゴミや砂などの異物が付着しやすく、掃除されていないとすぐに格子が動かなくなる問題があった。一方、バルコニーの場合のように、屋外空間を隔てる格子であっても引き戸のように動かすことができれば、時間帯や季節によって通風を確保しつつ視線や日射を制御することができるので、屋外空間にこのような格子を配置したい要請もあった。
【0006】
そこで、本発明は、屋外空間を2つに隔てる区画格子構造において、視線及び日射を時間や季節に応じて制御できるとともに、ゴミや砂が付着した場合でも開閉が比較的容易となる可動面格子を有する区画格子構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の区画格子構造は、屋外空間を建物に沿って設けられる第一屋外空間と建物から離れて設けられる第二屋外空間とに隔てる区画格子構造であって、上部に設けられる上部構造体と、前記上部構造体から間隔を開けて設けられる下部構造体と、前記上部構造体の下面に固定される上レールと、前記上レールにスライド可能に吊り下げられる吊り車を有し、前記下部構造体との間に間隙を開けて配置される可動面格子と、
前記下部構造体の上面に、前記可動面格子の下端部が挿入される下ガイド溝と、少なくとも前記下部構造体の上面に固定されて、前記上部構造体及び前記下部構造体の間に立設され、前記可動面格子に平行に隣接する不動面格子と、を備え、
前記可動面格子は、その上枠に2つ以上固定された吊り車が設けられ、該吊り車は前記上レールの内側に挿入されて、当該上レールの開口の両側にそれぞれ形成されるリップの上を走行する2つずつの車輪と、異なるリップの車輪同士を繋ぐ軸部と、該軸部に吊り下がり当該可動面格子の上枠を固定する吊り部とを有し、前記可動面格子はその下端に鉛直な軸に回転自在な円形平板状の複数の回転体を有すると共にその内の少なくとも1つの回転体は前記第一屋外空間寄りに可動面格子からはみ出し、もう1つの回転体は前記第二屋外空間寄りに可動面格子からはみ出して構成され、当該回転体は前記下ガイド溝の2つの突条の間に挿入されるとともに、前記下ガイド溝の底面から間隔を開けて配置され、前記第一屋外空間は、建物の2階に設けられるバルコニーと、平面視した場合に前記バルコニーに隣接し1階から2階に跨る屋外の吹き抜け空間と、を有し、前記可動面格子は、前記不動面格子と重なり合う開状態と、前記不動面格子の側方に配置される閉状態とにスライド可能であり、前記可動面格子は前記閉状態のとき、前記バルコニー側に配置され、前記不動面格子は、前記吹き抜け空間側に配置されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の区画格子構造は、前記可動面格子は、水平材を鉛直方向に複数並べる横格子であり、前記水平材は、下面が前記第一屋外空間から前記第二屋外空間に向かって上り勾配に形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の区画格子構造は、
屋外空間を建物に沿って設けられ、第一屋外空間と建物から離れて設けられる第二屋外空間とに隔てる区画格子構造であって、上部に設けられる上部構造体と、前記上部構造体から間隔を開けて設けられる下部構造体と、前記上部構造体の下面に固定される上レールと、前記上レールにスライド可能に吊り下げられる吊り車を有し、前記下部構造体との間に間隙を開けて配置される可動面格子と、前記下部構造体の上面に、前記可動面格子の下端部が挿入される下ガイド溝と、を備え、前記可動面格子は、その上枠に2つ以上固定された吊り車が設けられ、該吊り車は前記上レールの内側に挿入されて、当該上レールの開口の両側にそれぞれ形成されるリップの上を走行する2つずつの車輪と、異なるリップの車輪同士を繋ぐ軸部と、該軸部に吊り下がり当該可動面格子の上枠を固定する吊り部とを有し、前記可動面格子はその下端に鉛直な軸に回転自在な円形平板状の複数の回転体を有すると共にその内の少なくとも1つの回転体は前記第一屋外空間寄りに可動面格子からはみ出し、もう1つの回転体は前記第二屋外空間寄りに可動面格子からはみ出して構成され、当該回転体は前記下ガイド溝の2つの突条の間に挿入されるとともに、前記下ガイド溝の底面から間隔を開けて配置され、前記第一屋外空間は、前記建物の2階に設けられるバルコニーを含み、前記可動面格子は、矩形枠内に水平材を鉛直方向に複数並べて固定した横格子であり、前記水平材は、上面が水平であり、且つ、下面が前記第一屋外空間から前記第二屋外空間に向かって上り勾配に形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明の区画格子構造は、少なくとも前記下部構造体の上面に固定されて、前記上部構造体及び前記下部構造体の間に立設され、前記可動面格子に平行に隣接する不動面格子をさらに備え、前記可動面格子は、前記不動面格子と重なり合う開状態と、前記不動面格子の側方に配置される閉状態とにスライド可能であることを特徴としている。
【0011】
本発明の区画格子構造は、前記可動面格子が前記閉鎖状態のときに、当該可動面格子のスライドを規制する施錠手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の区画格子構造によると、可動面格子が吊り車によって上部構造体の下面に固定された上レールに吊り下げられてスライド可能となっているので、可動面格子をスライドさせることによって、第一屋外空間への視線及び日射を時間や季節に応じて制御することができる。そして、可動面格子は下部構造体との間に間隔を開けて配置されているので、下部構造体の上にゴミや砂が付着した場合でも可動面格子のスライドが比較的容易である。
【0013】
本発明の区画格子構造によると、下部構造体の上面に設けられた下ガイド溝に可動面格子の下端に設けられた回転体が挿入されており、当該回転体は下ガイド溝の底面から間隔を開けて配置されているので、可動面格子の見込み方向への移動を規制しつつ、下ガイド溝に若干のゴミや砂が付着した場合でも可動面格子のスライドが比較的容易である。
【0014】
本発明の区画格子構造によると、可動面格子を構成する水平材の下面が第一屋外空間から第二屋外空間に向かって上り勾配に形成されているので、第二屋外空間側から第一屋外空間側への日射を比較的受け入れやすく、例えば第一屋外空間がバルコニーである場合などに洗濯物に日光を当てやすい。
【0015】
本発明の区画格子構造によると、可動面格子に平行に隣接する不動面格子をさらに備えており、可動面格子は、不動面格子と重なり合う開状態と、不動面格子の側方に配置される閉状態とにスライド可能であるので、第一屋外空間を第二屋外空間と完全に隔てることができる。しかも、一方の面格子を少なくとも下部構造体の上面に固定される不動面格子とすることで、不動面格子の重量は下部構造体で受けることができるので、上部構造体への負担が大きくなることがなく、両方の面格子を可動面格子とする場合に比べてコストを下げることができる。
【0016】
本発明の区画格子構造によると、可動面格子が閉鎖状態のときに当該可動面格子のスライドを規制する施錠手段を備えているので、第一屋外空間への第二屋外空間からの侵入を防止することができ、防犯性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】可動面格子が閉状態の場合の区画格子構造を示す一部省略平面図。
【
図2】可動面格子が閉状態の場合の区画格子構造を示す正面図。
【
図3】可動面格子が開状態の場合の区画格子構造を示す一部省略平面図。
【
図4】可動面格子が開状態の場合の区画格子構造を示す正面図。
【
図5】区画格子構造の全体構成を示す
図3のB−B線端面図。
【
図7】可動面格子の上端に設けられる吊り車の構成を説明する一部拡大正面図。
【
図9】(A)は可動面格子の下端に設けられる回転体の構成を説明する一部拡大正面図、(B)はその底面図。
【
図10】区画格子構造の全体構成を示す
図1のA−A線端面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る区画格子構造1の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。区画格子構造1は、屋外空間を第一屋外空間2と第二屋外空間3との2つの屋外空間に隔てる区画格子構造1である。この区画格子構造1は、
図1、
図2、及び
図5に示すように、上部に設けられる上部構造体4と、上部構造体4から間隔を開けて下方に設けられる下部構造体5と、上部構造体4の下面に固定される上レール6と、下部構造体5の上面に上レール6と平行に設けられる下ガイド溝7と、上レール6と下ガイド溝7の間に配置される可動面格子8と、下部構造体5の上面に固定されて、上部構造体4及び下部構造体5の間に立設される不動面格子9とを備えている。
【0019】
第一屋外空間2は、建物の屋外側に当該建物に沿って設けられる空間である。第一屋外空間2は本実施形態においては隣接する2つの領域からなり、第一の領域2aは、建物の2階に設けられるバルコニーであり、第二の領域2bは、平面視した場合にバルコニーに隣接し1階から2階に跨る屋外の吹き抜け空間である。第一の領域2aにはバルコニー床10が形成されており、当該バルコニー床10の周縁に支柱11が設けられて、当該支柱11がガラス面材12を支持している。また、第二屋外空間3は、建物から離れて設けられる空間である。第二屋外空間3は区画格子構造1によって第一屋外空間2と隔てられる空間であり、本実施形態においてはバルコニー及び屋外の吹き抜け空間のさらに屋外方向に広がる例えば庭などの空間である。第二屋外空間3は隣地や前面道路と建物との間にある空間であり、これら隣地や前面道路からの視線は第二屋外空間3を通して区画格子構造1を挟んで第一屋外空間2に向かう。
【0020】
なお、第一屋外空間2及び第二屋外空間3は上述のものに限定されるものではなく、第一屋外空間2は、例えばガレージ、ベランダ、バルコニー、外廊下、ピロティ、デッキ、玄関アプローチなどのように外からの視線を遮りたい屋外空間である。また第二屋外空間3は第一屋外空間2のさらに外側の空間であり、例えば庭であったり、駐輪場やガレージが該当する場合もある。また、第一屋外空間2を建物の敷地全体とし、隣地境界や前面道路との間に区画格子構造1を配置した場合には、隣地や前面道路が第二屋外空間3となる。
【0021】
本実施形態における第一屋外空間2は、建物の入隅部の屋外側に形成されており、第一屋外空間2にアクセス可能な掃き出し窓13が設けられた奥側の壁14と、奥側の外壁から突出する袖壁15と、袖壁15と対向して奥側の外壁から突出する側面の壁16とに三方を囲まれた空間である。第一屋外空間2は屋根が設けられず空に向かって吹き抜けていてもよいし、又は、上階にオーバーハング又は屋根が設けられていてもよい。
【0022】
区画格子構造1は、第一屋外空間2の三方の壁によって囲われていない一方に設けられ、第二屋外空間3との間を隔てている。上部構造体4は、
図2、
図5、及び
図6に示されるように、上梁17にアングル18を介して支持される2枚の外装材19によって形成された壁体である。上梁17は、袖壁15及び側面の壁16の内部に設けられた図示しない構造梁に架設されており、連結部20を介して、上レール6を上部構造体4の下面に支持している。上レール6は、下方に向けて開口したリップ溝形鋼であり、上部構造体4の下面に沿って長さ方向を水平に配置されている。上部構造体4の下面の上レール6の第一屋外空間2側には、上梁17から連結部20を介して固定片21が支持されており、固定片21は不動面格子9の上端を固定している。
【0023】
また、下部構造体5は、
図2、
図5、及び
図8に示されるように、下梁22に固定金物23を介して支持される2枚の外装材34によって形成された壁体である。下部構造体5の上面は樹脂又は鋼板製の笠木24で形成されており、当該笠木24の上面には2つのアングル材25を平行に並べて2本の突条26を形成し、当該突条26の間を下ガイド溝7としている。また、笠木24の上面における下ガイド溝7の第一屋外空間2側には不動面格子9の下端を固定するZ金具27が設けられている。
【0024】
可動面格子8は、アルミニウム製で、矩形枠内に水平材28を鉛直方向に複数並べる横格子である。水平材28は、
図5、
図6、及び
図8に示すように、上面が水平で下面が第一屋外空間2から第二屋外空間3に向かって上り勾配に形成されている。このように構成されることで、第二屋外空間3側から第一屋外空間2側への日射を比較的受け入れやすく、例えば第一屋外空間2がバルコニーである場合などに洗濯物に日光を当てやすい。また、上面及び下面がいずれも第二屋外空間3側に下り勾配となっていないので、水平材28に雨水等が付いた場合も水滴は第一屋外空間2側に落ちるので、第一屋外空間2が2Fのバルコニーである場合などにに、水滴が第二屋外空間3側に落ちることを防止できる。
【0025】
可動面格子8の上端には、
図6及び
図7に示すように、吊り車29が設けられている。吊り車29は、上レール6の内側に挿入されて、当該上レール6の開口の両側にそれぞれ形成されるリップの上を走行する2つずつの車輪30と、異なるリップの車輪30同士を繋ぐ軸部31と、軸部31から吊り下がり可動面格子8の上枠をボルト及びナットで固定する吊り部32とを有する。吊り車29は1枚の可動面格子8の上枠に少なくとも2つ以上固定されている。
【0026】
可動面格子8の下端には、
図8及び
図9に示すように、可動面格子8はその下端に鉛直な軸に回転自在な円形平板状の回転体33を有している。回転体33は少なくとも2つ設けられており、一方が可動面格子8の第一屋外空間2寄りに配置され、他方が第二屋外空間3寄りに配置されている。回転体33は下ガイド溝7に挿入されて、当該下ガイド溝7の底面から間隔を開けて配置されている。
図9(B)に示すように、可動面格子8を底面から見た場合に、可動面格子8から第一屋外空間2又は第二屋外空間3にはみ出すように配置されており、下ガイド溝7の突条26に間隙を開けて配置されている。
【0027】
強風時や可動面格子8をスライドさせるときに可動面格子8に見込み方向の荷重が加わった場合には、可動面格子8の下端に設けられた回転体33が下ガイド溝7の突条26に当接することで、可動面格子8の見込み方向への大きな移動を規制することができる。また、可動面格子8に設けられた回転体33は、下ガイド溝7の底面から間隔を開けており、また下ガイド溝7の突条26との間にも隙間を開けて配置されているので、下ガイド溝7にゴミや砂が付着した場合でも可動面格子8のスライドを比較的容易なものとすることができる。
【0028】
不動面格子9は、アルミニウム製で、可動面格子8と同様に矩形枠内に水平材28を鉛直方向に複数並べる横格子である。水平材28の形状及びその効果は可動面格子8と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。不動面格子9の上端は、
図6に示すように、固定片21によって上部構造体4の下面に固定されており、不動面格子9の下端は
図8に示すように、Z金具27によって下部構造体5の上面に固定されている。このように構成されることで、Z金具27が不動面格子9の重量を受けることができ、上部構造体4の上梁17に不動面格子9の重量を負担をさせる必要がない。したがって、2つの面格子のうち一方を不動面格子9とすることで、上部構造体4に加わる荷重を低減することができる。
【0029】
不動面格子9は、
図1及び
図3に示すように、可動面格子8の第一屋外空間2側に平行に配置されており、可動面格子8はそのスライド移動によって、
図3及び
図4に示すように不動面格子9と重なり合う開状態と、
図1及び
図2に示すように不動面格子9の側方に配置される閉状態とに移動可能である。すなわち、可動面格子8が戸袋のない片引き戸のように配置されている。なお、ここで「不動面格子9と重なり合う開状態」とは、第二屋外空間3側から見た場合に可動面格子8が不動面格子9と大きく重なり合った状態をいい、少なくとも可動面格子8はスライド方向の半分以上の長さが重なりあった状態をいう。また、「不動面格子9の側方に配置される閉状態」とは、第二屋外空間3側から見た場合に可動面格子8と不動面格子9とがほとんど重なり合っていない状態をいう。
【0030】
可動面格子8が閉状態のときには、第一屋外空間2を囲っている袖壁15と側面の壁16との間の全幅に可動面格子8及び不動面格子9が配置されており、第二屋外空間3側から第一屋外空間2への視線を遮ることができる。可動面格子8が閉状態のときには当該可動面格子8のスライドを規制する図示しない施錠手段が設けられていてもよい。施錠手段は、例えば袖壁15に固定されるフックと可動面格子8に固定されるリングとで構成し、リングにフックを引っ掛けることによって可動面格子8のスライドを規制するものである。施錠手段はこれに限定されず、可動面格子8をスライド可能な状態とスライド不能な状態とに移行させることができる構成であれば如何なる構成でもよい。このように構成すると、第二屋外空間3から第一屋外空間2への侵入を防止でき防犯性を高めることができる。
【0031】
可動面格子8は閉状態のとき、第一屋外空間2のバルコニーである第一の領域2a側に配置され、不動面格子9は、第一屋外空間2の吹き抜け空間である第二の領域2bに配置されている。バルコニーは季節、時間帯、又は空間を利用する用途などに応じて、第二屋外空間3からの視線を遮る場合と、第一屋外空間2から第二屋外空間3に向かって解放的な視界がほしい場合とがあるので、可動面格子8を閉状態とすることで視線を遮り、また、可動面格子8を開状態とすることで開放的な視界を得ることができる。このように可動面格子8が閉状態のときに可動面格子8の第一屋外空間2側に配置される第一の領域2aは、時間帯や季節などによって面格子の要否が変更される領域が好ましい。また、不動面格子9の第一屋外空間2側に配置される吹き抜け空間は、もともと床の無い空間であるので解放的な視界を必要とすることも無く、常に面格子が第二屋外空間3との間に配置されていても良い空間である。不動面格子9の第一屋外空間2側の第二の領域2bは、吹き抜け空間の他、例えば、給湯器や空気調和機の室外機が配置される位置にも適用することができる。
【0032】
以上のように本実施形態の区画格子構造1によると、可動面格子8が吊り車29によって上部構造体4の下面に固定された上レール6に吊り下げられてスライド可能となっているので、可動面格子8をスライドさせることによって、第一屋外空間2への視線及び日射を時間や季節に応じて制御することができ、しかも、可動面格子8の下端に設けられた回転体33は、下部構造体5に設けられた下ガイド溝7との間に隙間を開けて配置されているので、当該下ガイド溝7にゴミや砂が付着した場合でも可動面格子8のスライドが妨げられることを抑制できる。
【0033】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る区画格子構造1は、例えば住宅のバルコニーとそのさらに屋外側の空間を隔てる区画格子構造1として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 区画格子構造
2 第一屋外空間
3 第二屋外空間
4 上部構造体
5 下部構造体
6 上レール
7 下ガイド溝
8 可動面格子
9 不動面格子
29 吊り車
33 回転体