(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多塩基酸無水物(c)が、単環型芳香族四塩基酸二無水物、二環型芳香族四塩基酸二無水物、多環型芳香族四塩基酸二無水物、及びこれら芳香族無水物の核水添反応による脂環式酸無水物からなる群から選択されるいずれか1種もしくは2種以上である、請求項1に記載の反応性ポリエステル化合物(A)。
多塩基酸無水物(c)が、ピロメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ナフチルテトラカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリット酸無水物、ジオールビストリメリット酸無水物、ビスフタル酸フルオレン無水物、ビフェノールビストリメリット酸無水物、ブタンテトラカルボン酸無水物、及びこれら芳香族無水物の核水添反応による脂環式酸無水物からなる群から選択されるいずれか1種もしくは2種以上である、請求項1に記載の反応性ポリエステル化合物(A)。
請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応性ポリエステル化合物(A)に更に飽和又は不飽和二塩基酸無水物(d)を反応させて得られる反応性ポリエステル化合物(A’)。
請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応性ポリエステル化合物(A)もしくは請求項5に記載の反応性ポリエステル化合物(A’)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
樹脂組成物の固形分の総量に対して、反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)を10〜90重量%、反応性化合物(B)を3〜80重量%、残部として、その他の成
分を含む請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
反応性化合物(B)として、(メタ)アクリレート単量体を、樹脂組成物の固形分の総量に対して、3〜80重量%含む請求項7又は8に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の反応性ポリエステル化合物(A)は、N−フェニルフェノールフタレイン骨格を有する下記式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)に、反応性を付与させるため分子中に1個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と1個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)と1分子中に少なくとも2個の酸無水物構造を有する飽和又は不飽和多塩基酸無水物(c)とを重合反応させて得られる。
【0024】
即ち、エチレン性不飽和基と水酸基を同時にエポキシカルボキシレート化により、分子鎖中に導入することで、本発明の特徴が発揮されるものである。
【0025】
本発明において、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)は、N−フェニルフェノールフタレイン骨格を有する特定の構造であることが必須である。式中、R
1は同一もしくは異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、aは置換基R
1の個数を表し、1又は2である。
【0026】
R
1が示す、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
R
1が示す、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)のうち、R
1が全て水素原子であるものが、好ましい。
さらに、これら一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(a)の製法等については、公知であり、特許文献4に詳しく記載されている。一般的に、R
1が全て水素原子である原料フェノール樹脂はSABIC製による、PPPBPとして市販品を入手可能である。
【0027】
本発明において用いられる、1分子中に1個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と1個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)は、活性エネルギー線への反応性を付与させるために反応せしめるものである。これらにはモノカルボン酸化合物、ポリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0028】
1分子中にカルボキシル基をひとつ含むモノカルボン酸化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。上記においてアクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0029】
さらに1分子中にカルボキシル基を複数有するポリカルボン酸化合物としては、1分子中に複数の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸と複数のエポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0030】
1分子中に1個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と1個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)としては、化合物中に水酸基を有さないものが好ましい。これらのうち最も好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が挙げられる。
【0031】
本発明の反応性ポリエステル化合物(A)を製造するために用いる多塩基酸無水物(c)としては、分子中に少なくとも2個の酸無水物構造を有するものであれば全て用いることができる。即ち、1分子中に少なくとも2個の酸無水物構造を有する飽和又は不飽和の4塩基酸無水物もしくはそれ以上の多塩基酸無水物を用いることができる。
本発明では、2個の酸無水物構造を有する飽和又は不飽和の4塩基酸無水物を用いることが好ましい。
具体的には、ピロメリット酸無水物等の単環型芳香族四塩基酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ナフチルテトラカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリット酸無水物、ジオールビストリメリット酸無水物類(例えば、ヘキサンジオールビストリメリット酸無水物等)等の二環型芳香族四塩基酸二無水物類、ビスフタル酸フルオレン無水物、ビフェノールビストリメリット酸無水物等の多環型芳香族四塩基酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。さらに、これら芳香族無水物の核水添反応による脂環式酸無水物類も好適に使用できる。これらの群の中から選択された1種もしくは2種以上の多塩基酸無水物が特に好ましい。
【0032】
本発明の反応性ポリエステル化合物(A)は、前述のエポキシ化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)とのカルボキシレート化反応(以下、第一の反応という)によりアルコール性水酸基が生成したジオール化合物を得、ついで、得られた化合物とを、多塩基酸無水物(c)でポリエステル化反応(以下、第二の反応という)を行うことにより重合体として得ることができる。
【0033】
第一の反応は、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、カルボキシレート化反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含量が、仕込み液の総量に対して、90〜30重量%、より好ましくは80〜50重量%となるように溶剤を用いる。
【0034】
上記の溶剤として使用しうるものを具体的に例示すれば、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
また、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
また、エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
また、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0035】
この他にも、(A)もしくは(A’)以外の反応性化合物(B)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の成分としても使用したときは、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0036】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ち上記エポキシ樹脂(a)、カルボン酸化合物(b)、及び場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量%である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等の既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0037】
また、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0038】
本反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは3mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
【0039】
第二の反応は、第一の反応終了後、反応液に前述の多塩基酸無水物(c)を徐々に加え反応させるエステル化反応である。無触媒でも反応を行うことができるが、反応を促進させるために塩基性触媒を使用することもでき、該触媒の使用量は、反応物に対して10重量%以下である。この際の反応温度としては40〜120℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。
【0040】
第二の反応における、多塩基酸無水物(c)の仕込み量としては、本発明の反応性ポリエステル化合物(A)の固形分酸価が50〜150mg・KOH/gとなるような計算値で添加し、かつ(カルボキシレート化反応物のモル数)/(多塩基酸無水物cのモル数)の比が1〜5の範囲になるように仕込むことが好ましい。この値が、1未満の場合、本発明の反応性ポリエステル化合物(A)の末端に酸無水物基が残存することになり、熱安定性が低く保存中にゲル化する恐れがあるので好ましくない。また、この値が5を超える場合、反応性ポリエステル化合物(A)の分子量が低くなり、タック性の問題や低感度という問題が生じる恐れがある。また、固形分酸価が50mg・KOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分であり、パターニングを行った場合、残渣として残る恐れや最悪の場合パターニングができなくなる恐れがある。また、固形分酸価が150mg・KOH/gを超える場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が高くなりすぎ、光硬化したパターンが剥離する等の恐れがある。
【0041】
この他にも、後記する反応性化合物(B)等を単独または混合有機溶媒として用いて行うことができる。この場合、硬化型組成物の成分としても使用したときは、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
また、熱重合禁止剤等は、前記カルボキシレート化反応における例示と同様のものを使用することが好ましい。
【0042】
本発明においては、反応性ポリエステル化合物(A)を更に飽和又は不飽和二塩基酸無水物(d)によりエステル反応して反応性ポリエステル化合物(A’)を得ることが出来る。
飽和又は不飽和二塩基酸無水物(d)としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、トリメリット酸無水物等が挙げられる。
反応性ポリエステル化合物(A)と飽和又は不飽和二塩基酸無水物(d)の反応は、反応性ポリエステル化合物(A)中の水酸基1当量あたり飽和又は不飽和二塩基酸無水物(d)を0.1〜1.0当量反応させることが好ましい。反応温度は60〜150℃が好ましく、反応時間は1〜10時間が好ましい。このようにして得られた反応性ポリエステル化合物(A’)の固形分酸価は50〜150mg・KOH/g程度が好ましい。
本発明によって得られた反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)の分子量は、平均分子量として1,000〜10,000程度である。
【0043】
本発明において使用しうる反応性化合物(B)の具体例としては、ラジカル反応型の(メタ)アクリレート単量体、カチオン反応型単量体、ビニル化合物、ラジカル及びカチオンの双方に感応する反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0044】
使用しうるラジカル反応型の(メタ)アクリレート単量体としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0047】
使用しうるビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0048】
さらに、いわゆる反応性オリゴマー類としては、活性エネルギー線に官能可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に官能可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、その他エポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に官能可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0049】
また、カチオン反応型単量体としては、一般的にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定はない。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4,−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6110」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製「ELR−4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4,−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6128」等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン、(1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)グリシジルエーテル(商品名:GTR−1800、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、反応性化合物(B)としては、ラジカル硬化型である(メタ)アクリレート単量体が好ましい。カチオン型の場合、カルボン酸とエポキシが反応してしまうため2液混合型にする必要が生じる。
【0051】
本発明の反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)と、必要に応じて(A)もしくは(A’)以外の反応性化合物(B)とを混合せしめて本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。また、反応性ポリエステル化合物(A)と(A’)とを併用して樹脂組成物中に用いても何ら差し支えない。
このとき、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0052】
即ち、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種用途に適合させる目的で、樹脂組成物中に70重量%を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては、光重合開始剤、着色材料(着色顔料など)、塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤、熱感応性の重合開始剤等が挙げられる。下記に使用しうるその他の成分を例示する。
【0053】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0054】
また、カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0055】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート(三新化学工業社製サンエイドSI−60L/SI−80L/SI−100Lなど)等が挙げられ、ルイス酸のヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられ、ルイス酸のスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート(Union Carbide社製 Cyracure UVI−6990など)、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(Union Carbide社製 Cyracure UVI−6974など)等が挙げられ、ルイス酸のホスホニウム塩としては、トリフェニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0056】
その他のハロゲン化物としては、2,2,2−トリクロロ−[1−4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO 社製 Trigonal PIなど)、2.2−ジクロロ−1−4−(フェノキシフェニル)エタノン(Sandoz 社製 Sandray 1000 など)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製 BMPS など)等が挙げられる。トリアジン系開始剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine Aなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine PMS など)、2,4−トリクロロメチル−(ピプロニル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine PPなど)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン(Panchim社製 Triazine B など)、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製など)、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0057】
ボーレート系開始剤としては、日本感光色素製NK−3876及びNK−3881等が挙げられ、その他の光酸発生剤等としては、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾールなど)、2,2−アゾビス(2−アミノ−プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製 V50など)、2,2−アゾビス[2−(イミダソリン−2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製 VA044など)、[イータ−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,イータ)−(メチルエチル)−ベンゼン]鉄(II)ヘキサフロロホスホネート(Ciba Geigy 社製 Irgacure 261 など)、ビス(y5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]チタニウム(Ciba Geigy 社製 CGI−784など)等が挙げられる。
【0058】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いても良い。また、ラジカル系とカチオン系の双方の開始剤を併せて用いても良い。開始剤は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0059】
また、例えば、メラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することが出来る。
【0060】
また、着色顔料以外の顔料材料としては、例えば、着色を目的としないもの、いわゆる体質顔料を用いることも出来る。例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0061】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆるイナートポリマー)、たとえばその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらは40重量%までの範囲において用いることが好ましい。
【0062】
特に、ソルダーレジスト用途に反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)を用いようとする場合には、活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類として公知一般のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これは活性エネルギー線によって反応、硬化させた後も(A)もしくは(A’)に由来するカルボキシル基が残留してしまい、結果としてその硬化物は耐水性や加水分解性に劣ってしまう。したがって、エポキシ樹脂を用いることで残留するカルボキシル基をさらにカルボキシレート化し、さらに強固な架橋構造を形成させる。
【0063】
また、使用目的に応じて、粘度を調整する目的で、樹脂組成物中に50重量%、さらに好ましくは35重量%までの範囲において揮発性溶剤を添加することも出来る。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中に反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)10〜90重量%、好ましくは20〜87重量%、反応性化合物(B)3〜80重量%、さらに好ましくは5〜70重量%を含む。必要に応じてその他の成分を70重量%程度を上限に含んでいてよい。
【0065】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。ここで活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0066】
本発明において用いうる着色顔料とは、本発明の活性エネルギー線樹脂組成物を着色材料とするために用いられるものである。本発明で用いられる反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)の骨格と水酸基のバランスが特定の範囲にあるがゆえに、特に優れた顔料への親和性、即ち分散性が発揮されると推察される。
【0067】
この機構については定かではないが、分散が良好に進行するために結果として顔料濃度を濃くすることが出来る、また現像を必要とされる組成物においては、分散がより好適な状態にあるために、良好なパターニング特性が発揮され、また現像溶解部における現像残渣も少ないため、好適である。
【0068】
着色顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック等、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらのうちカーボンブラックの分散性が高くもっとも好ましい。
本発明の硬化型樹脂組成物中における着色顔料の含量は、特に制限はないが、本発明の反応性ポリエステル化合物10重量部に対して、通常1〜70重量部、好ましくは2〜50重量部の範囲である。
【0069】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付け物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光などを照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。
【0070】
具体的な用途としては、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂ナノインプリント材料、さらには特に熱的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0071】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用されるものである。具体的な用途としては、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等これに該当する。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフイルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆるドライフイルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0072】
これらのうち、反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)のカルボキシル基の導入によって、基材への密着性が高まるため、プラスチック基材、若しくは金属基材を被覆するための用途として用いることが好ましい。
【0073】
さらには、未反応の反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)が、アルカリ水溶液に可溶性となる特徴を生かして、アルカリ水現像型レジスト材料組成物として用いることも好ましい。
【0074】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。具体的には、照射部、または未照射部を何らかの方法、例えば溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させるなどして除去し、描画を行うことを目的として用いられる組成物である。
【0075】
本発明のレジスト用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば特に、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0076】
特に好適な用途としては、強靭な硬化物を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途、顔料分散性が良好であるとの特性を生かして、印刷インキ、特にカラーフィルタ等のカラーレジスト、ブラックマトリックス用レジストの用途が好ましい。
【0077】
この他、活性エネルギー線による硬化反応前の機械的強度が求められるドライフィルム用途として特に好適に用いられる。即ち、本発明で用いられる前記エポキシ樹脂(a)の水酸基、エポキシ基のバランスが特定の範囲にあるがゆえに、本発明の反応性ポリエステル化合物が比較的高い分子量であるにも関わらず、良好な現像性を発揮させることが出来る。
【0078】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0079】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物とは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させたものを指す。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、「部」は重量部を、「%」は重量%を示す。
【0081】
エポキシ当量、軟化点、酸価及び分子量は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量:JIS K 7236:2001に準じた方法
2)軟化点:JIS K 7234:1986に準じた方法
3)酸価:JIS K 0070:1992に準じた方法
4)分子量:以下の条件におけるGPCによる分析
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:TSKGEL Super HZM−N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン); 0.35ml毎分.40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0082】
合成例1 エポキシ樹脂(a)(一般式(1)でR
1=全て水素原子の化合物)の合成
特許文献4の実施例1の記載に準じて、以下の合成を行った。
温度計、冷却官、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら、フェノール化合物であるN−フェニルフェノールフタレイン(SABIC製PPPBP、純度99%以上)256g、エピクロロヒドリン842g、メタノール180gを加え、水浴を75℃にまで昇温した。内温が65℃を越えたところでフレーク状の水酸化ナトリウム21gを90分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間反応を行った。反応終了後、水300gで二回洗浄を行い生成した塩などを除去した後、加熱減圧下(〜70℃、−0.08MPa〜−0.09MPa)、撹拌しながら、3時間かけて、過剰のエピクロルヒドリン等を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン600gを加え溶解し、70℃にまで昇温した。攪拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液26gを加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行った。水洗後の溶液をロータリーエバポレーターによる減圧下、メチルイソブチルケトン等を留去し、目的とするエポキシ樹脂(一般式(1)でR
1=全て水素原子の化合物)を305g得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は266g/eq.、軟化点が89℃、ICI溶融粘度0.42Pa・s(150℃)で常温で固形であった。
【0083】
実施例1:反応性ポリエステル化合物(A−1)の合成
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)として、合成例1で合成したエポキシ樹脂(N−フェニルフタレイン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:266g/当量)を266g、反応用溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分70%となるように加え、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を72.1g、触媒としてトリフェニルフォスフィン1.01g重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.17g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が1.0mg・KOH/g以下になるまで反応させ、ジオール化合物(理論分子量:649.69)を得た。
次いで、このようにして得られたジオール化合物溶液に、溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、この溶液に多塩基酸無水物(c)として、無水ピロメリット酸(略称PMDA、Mw=218.1)109.1gを添加した。添加後、温度を95℃に昇温し、6時間反応させ、本発明のアルカリ水溶液可溶性ポリエステル化合物(A)65重量%を含む樹脂溶液を得た(この溶液をA−1とする)。酸価を測定したところ、48.03mg・KOH/g(固形分酸価:73.89mg・KOH/g)であった。化合物(A−1)の平均分子量:2,000。
【0084】
実施例2:反応性ポリエステル化合物(A−2)の合成
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、合成例1で合成したエポキシ樹脂(N−フェニルフタレイン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:266g/当量)を266g、反応用溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分70%となるように加え、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を72.1g、触媒としてトリフェニルフォスフィン1.01g、重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.17g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が1.0mg・KOH/g以下になるまで反応させ、ジオール化合物(理論分子量:649.69)を得た。
次いで、このようにして得られたジオール化合物溶液に、溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、この溶液に多塩基酸無水物(c)として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(略称BPDA、Mw=294.2)147.1gを添加した。添加後、温度を95℃に昇温し、6時間反応させ、本発明のアルカリ水溶液可溶性ポリエステル化合物(A)65重量%を含む樹脂溶液を得た(この溶液をA−2とする)。酸価を測定したところ、45.77mg・KOH/g(固形分酸価:70.41mg・KOH/g)であった。化合物(A−2)の平均分子量:3,000。
【0085】
実施例3:反応性ポリエステル化合物(A’−3)の合成
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、合成例1で合成したエポキシ樹脂(N−フェニルフタレイン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:266g/当量)を266g、反応用溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分70%となるように加え、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を72.1g、触媒としてトリフェニルフォスフィン1.01g重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.17g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が1.0mg・KOH/g以下になるまで反応させ、ジオール化合物(理論分子量:649.69)を得た。
次いで、このようにして得られたジオール化合物溶液に、溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、この溶液に多塩基酸無水物(c)として、無水ピロメリット酸(略称PMDA、Mw=218.1)109.1gを添加した。添加後、温度を95℃に昇温し、6時間反応させた後、二塩基酸無水物として、テトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA、Mw=152.2)57.8g、及び溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃で6時間反応させたことにより、本発明のアルカリ水溶液可溶性ポリエステル化合物(A’)65重量%を含む樹脂溶液を得た(この溶液をA’−3とする)。酸価を測定したところ、61.63mg・KOH/g(固形分酸価:94.82mg・KOH/g)であった。化合物(A’−3)の平均分子量:2,600。
【0086】
比較例1:反応性ポリカルボキシレート化合物(H−1)の合成
NC−3000H(日本化薬製、軟化点70℃、エポキシ当量288g/eq)を288g、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を72g、触媒としてトリフェニルフォスフィン1.1g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分80%となるように加え、100℃24時間反応させ、カルボキシレート化合物溶液を得た。次にこのようにして得られたカルボキシレート化合物溶液360gに、テトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA、Mw=152.2)70.4g、及び溶剤として固形分が65重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加し、100℃に加熱し酸付加反応させ反応性ポリカルボキシレート溶液を得た(この溶液をH−1とする)。酸価を測定したところ、60.2mg・KOH/g(固形分酸価:39.13mg・KOH/g)であった。化合物(H−1)の平均分子量:3,500
【0087】
比較例2:反応性ポリエステル化合物(H−2)の合成
(特許文献5の合成例1の化合物)
500ml四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂231g(エポキシ当量231g/eq)と、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.45gと、2,6−ジ−イソブチルフェノール0.1gと、アクリル酸72.0gとを仕込んで混合し、空気を毎分25mlの速度で吹き込みながら90〜100℃で加熱して溶解させた。この溶液は白濁していたがそのまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全に溶解させた。溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま攪拌し続け、この間に酸価を測定して酸価が2.0mgKOH/g未満になるまでこの加熱攪拌を継続した。酸価が目標(酸価0.8)に達するまで8時間を要した。その後、室温まで冷却し、無色透明な固体を得た。次に、このようにして得られたビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂303gをプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート223.2g中に溶解して溶液とした後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38gと、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物73.5gと、臭化テトラエチルアンモニウム1gとを添加し、徐々に昇温して110〜115℃で2時間反応させ、比較する反応性ポリエステル化合物65重量%を含む樹脂溶液を得た(この溶液をH−2とする)。酸価を測定したところ、37.31mg・KOH/g(固形分酸価:57.4mg・KOH/g)であった。化合物(H−2)の分子量:20,000
【0088】
実施例4、比較例4:ハードコート用組成物の調製
実施例1〜3および比較例1、2において合成した反応性ポリエステル化合物(A−1、A−2,A’−3、H−1またはH−2)溶液20g、ラジカル硬化型の単量体(B)であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4g、紫外線反応型開始剤としてイルガキュア184を1.5gを加熱溶解した。
さらにこれを、乾燥時の膜厚20ミクロンになるようハンドアプリケータによってポリカーボネート板上に塗工し、80℃30分間電気オーブンにて溶剤乾燥を実施した。乾燥後、高圧水銀ランプを具備した紫外線垂直露光装置(オーク製作所製)によって照射線量1000mJの紫外線を照射、硬化させ樹脂組成物でオーバーコートされた物品を得た。
この樹脂組成物でオーバーコートされた物品の塗膜の硬度をJIS K5600−5−4:1999により測定し、さらに衝撃性の試験をISO6272−1:2002によって実施した。
【0089】
【表1】
【0090】
上記の結果から明らかなように、本発明における光硬化性樹脂組成物は、比較的高い硬度を有しつつ、耐衝撃性を有している。
【0091】
実施例5、比較例5:ドライフィルム型レジスト組成物の調製
実施例1〜3および比較例1、2で得られた反応性ポリエステル化合物(A−1、A−2,A’−3、H−1またはH−2)溶液を54.44g、その他反応性化合物(B)としてHX−220(日本化薬(株)製 ジアクリレート単量体)3.54g、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリチィーケミカルズ製)を4.72g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)を0.47g、硬化成分として(1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン)グリシジルエーテル(GTR−1800(日本化薬製))を14.83g、熱硬化触媒としてメラミンを1.05g及び濃度調整溶媒としてメチルエチルケトンを20.95g加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させレジスト樹脂組成物を得た。
得られた組成物をロールコート法により、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ30μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付け、ドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをポリイミドプリント基板(銅回路厚:12μm、ポリイミドフィルム厚:25μm)に、温度80℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
【0092】
次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスク、および感度を見積もるために、コダック製ステップタブレットNo.2を通して紫外線を照射した。その後、ドライフィルム上のフィルムを剥離し剥離状態を確認した。その後1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。
【0093】
(剥離性評価)
剥離性は、露光終了後に剥離するフィルムの容易さで判定した。
○:きれいに界面で剥離される
△:慎重に剥離すれば剥離が可能である
×:部分的に(または全面に)凝集剥離する部分がある。
【0094】
(感度評価)
感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、何段目の濃度部分までが現像時に残存したかで判定した。段数(値)が大きいほうがタブレットの濃部で高感度と判定される(単位:段)。
【0095】
(現像性評価)
現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に現像されきるまでの時間、いわゆるブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。×:現像不可
【0096】
(硬化性評価)
硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度をもって示した。
評価方法は、JIS K5600−5−4:1999に準拠した。
【0097】
【表2】
【0098】
上記の結果から明らかなように、本発明におけるレジスト組成物は、良好な剥離性に加え、感度と現像性のバランスを有している。
【0099】
実施例6、比較例6:ブラックマトリクス用感光性着色樹脂組成物の調製
実施例1〜3および比較例1、2で得られた反応性ポリエステル化合物(A−1、A−2,A’−3、H−1またはH−2)溶液を50g(固形分換算:32.5g)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを5g、光重合開始剤としてCGI−124(チバ・スペシャリティーケミカル社製)4g、Dispcrbyk(ウレタン系高分子分散剤、ビックケミー社製)を用いて分散を行ったカーボンブラック分散体溶液224g(固形分換算:56g。うちカーボンブラック43g、高分子分散剤13g)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート218gに混合して感光性黒色樹脂組成物を得た。
【0100】
このようにして得た感光性黒色樹脂組成物を10cm角ガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上で90℃で150秒乾燥した。乾燥後の膜厚は、1μmであった。次に、このサンプルをマスクを通して高圧水銀灯で像露光した後、温度23℃、濃度0.04重量%のKOH水溶液を用いてスプレー現像をすることにより黒色画素(ブラックマトリックス)を形成した。
【0101】
上記調製した各感光性黒色樹脂組成物を用いて形成された画素について、以下の項目で評価し、表3に結果を記した。
【0102】
(密着性)
20μmのマスクパターンを忠実に再現する露光量における解像可能なレジストの最小パターン寸法を200倍の倍率で顕微鏡観察した。最小パターン寸法が小さいほうが密着性は良好なことを示す。最小パターン寸法が10μm以下を密着性が○、10μmを超えるものを×とした。
【0103】
(画素シャープ性)
20μmのマスクパターンを忠実に再現する露光量における細線黒色画素の形状を1000倍の倍率で顕微鏡観察した。直線性の良好なものをシャープ性○、突起や凸凹のあるレジストパターンを×とした。
【0104】
(顔料分散性)
20μmのマスクパターンの塗膜表面の光沢を、60°反射グロス計を用いて測定し、カーボンブラックの分散性を評価した。この際、光沢が高いほうが良好な顔料分散性ということを示している。
【0105】
(耐熱性)
20μmのマスクパターンについて、耐熱試験(300℃、1時間)を行い、そのときの膜厚減少率(%)を示している。
【0106】
【表3】
【0107】
上記の結果から明らかなように、本発明における光硬化性樹脂組成物は、密着性、直線性、分散性および耐熱性を有しており、ブラックマトリクス等に特に好適に用いることが出来る。
【0108】
実施例7、比較例7:カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物の調製
実施例1〜3および比較例1、2で得られた反応性ポリエステル化合物(A−1、A−2,A’−3、H−1またはH−2)溶液を15.4g(固形分換算:10.0g)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを7.5g、光重合開始剤として2一メチルー1一〔4一(メチルチオ)フェニル〕一2一モルフォリノプロパンー1一オン(BASF社製、商品名IRGACURE907)0.8g、2,4一ジエチルチオキサントン(日本化薬社製)0.4g、工タノンー1一[9一エチルー6一(2一メチルベンゾイル)一9H一力ルバゾールー3一イル]一1一(O一アセチルオキシム)](BASF社製、商品名IRGACUREOXEO2)0.2g、フッ素系界面活性剤としてメガファックF−554(DIC株式会社製)0.3g、着色剤として着色剤分散液として40.2g、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、固形分濃度20質量%の着色組成物を得た。
なお、着色剤分散液は、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:6/キサンテン系酸性染料C.I.アシッドレッド52=78/22(質量比)混合物15g、分散剤としてBYK−LPN21116(ビックケミー(BYK)社製)を11g(固形分濃度=40質量%)、反応性ポリエステル化合物(A)もしくは(A’)溶液を12.5g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを固形分濃度が20質量%となるよう用いて、ビーズミルにより混合・分散して、着色剤分散液を調整しておいた。
【0109】
このようにして得た感光性着色樹脂組成物を10cm角ガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上で90℃で120秒乾燥した。乾燥後の膜厚は、2.5μmであった。次に、このサンプルをマスクを通して高圧水銀灯で像露光した後、温度23℃、濃度0.04重量%のKOH水溶液を用いてスプレー現像した。その後、この基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に200℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベータを行うことにより、基板上に着色画素のドットパターンを形成した。
【0110】
上記調製した各感光性着色樹脂組成物を用いて形成された画素について、以下の項目で評価し、表4に結果を記した。
【0111】
(着色耐熱性)
得られたドットパターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。次いで、200℃で90分間追加ベータをした後の色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定し、追加ベータ前後での色変化、即ち△E
abを評価した。その結果、△E
abの値が3.0未満の場合を○、3.0以上5.0未満の場合を△、5.0以上の場合を×として評価した。評価結果を表4に示す。なお、△E
ab値が小さい程、耐熱性が良好であることを意味する。
【0112】
(耐光性)
得られた基板に、白色LEDを1000時間照射した。照射前後の基板について、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用いて分光特性を測定し、色差(△E
ab)を求めた。
その結果、△E
abの値が3.0未満の場合を○、3.0以上5.0未満の場合を△、5.0以上の場合を×として評価した。評価結果を表4に示す。なお、△E
ab値が小さい程、耐光性が良好であることを意味する。
【0113】
(電圧保持率評価)
この画素を形成した基板とITO電極を所定形状に蒸着しただけの基板とを、0.018mmのガラスビーズを混合したシール剤で貼り合わせたのち、メルク社製液晶MLC6608(商品名)を注入して、液晶セルを作製した。
次いで、液晶セルを60℃の恒温層に入れて、液晶セルの電圧保持率を、東陽テクニ力社製液晶電圧保持率測定システムVHR−1A型(商品名)により測定した。このときの印加電圧は5.0Vの方形波、測定周波数は60Hzである。ここで電圧保持率とは、(16.7ミリ秒後の液晶セル電位差/印加直後の電圧)の値である。評価結果を表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
上記の結果から明らかなように、本発明における光硬化性樹脂組成物は、着色耐熱性、耐光性および高い電圧保持率(信頼性)を有しており、カラーフィルター等に特に好適に用いることが出来る。
【0116】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2014年8月26日付で出願された日本国特許出願(2014−171375)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。