特許第6556739号(P6556739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556739
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】小型の流体流れ調節装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20190729BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20190729BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G01N33/497 A
   G01N1/00 101T
   A61M11/00 Z
   G01N1/00 101R
   G01N33/497 Z
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-548173(P2016-548173)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公表番号】特表2017-508953(P2017-508953A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2015051340
(87)【国際公開番号】WO2015110572
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2018年1月10日
(31)【優先権主張番号】1450070-6
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】514023667
【氏名又は名称】エアロクライン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ロックスヘド、 ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ステンメ、 ゴーラン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン、 スタッファン
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−501581(JP,A)
【文献】 特表昭55−500407(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/007659(WO,A1)
【文献】 特表2015−506802(JP,A)
【文献】 米国特許第05906203(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
A61M 11/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部(3)、出口部(4)、および前記入口部と前記出口部との間の流れ調節通路(5)であって、断面積を有する流れ調節通路(5)を備えている流体流路(2)と、前記流体流路(2)内に配置された細長い梁部材(10)と、を含み、呼気の流れを10〜300ml/sの範囲内に維持するように調節する小型の流体流れ調節装置(1)であって、
前記入口部と前記出口部との間の圧力差が、前記流れ調節通路内で前記梁部材が撓んで前記流れ調節通路(5)の前記断面積を小さくし、それによって流体の流れを調節することを引き起こし、
前記細長い梁部材は、第1の端部(13)と第2の端部(14)を有し、前記流路の前記入口部から前記出口部まで延びており、
前記細長い梁部材は、前記入口部と連通している流体スペース(15)を形成し、前記流体スペースは、前記第1の端部を取り付けることによって境界を定められており、
前記装置は、支持手段(19a,19b,20a,20b)を含み、
前記第1の端部と前記第2の端部の少なくとも一方は、前記装置内で、前記支持手段によって支持されており、
前記支持手段は、前記梁部材の撓みと協働して、前記流れを調節するために前記流れ調節通路の前記断面積を小さくすることを特徴とする、小型の流体流れ調節装置。
【請求項2】
前記細長い梁部材の前記第1の端部は、前記装置内で支持されており、前記細長い梁部材の前記第1の端部は、前記流体流路の前記出口部に向けられている、請求項1に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項3】
前記第1の端部は前記装置内で固定され、それによって前記細長い梁部材は片持ち梁を形成している、請求項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項4】
前記第2の端部は自由端である、請求項1からのいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項5】
前記第2の端部は前記装置内で支持されている、請求項1または2に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項6】
前記支持手段は、支持される前記端部の長さに沿う中間位置および/または前記端部の角部に、支持される前記端部の全長に沿う支持をもたらすように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項7】
前記支持手段は、前記梁部材の撓みに応じて、前記梁部材に沿う支持位置で、前記細長い梁部材に沿う支持をもたらすように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項8】
前記梁部材に沿う前記支持位置は、前記梁部材の撓みの程度に応じて連続的に変化する、請求項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項9】
前記支持手段は、前記梁部材が、前記梁部材の撓み時に前記流れ調節通路に向かって移動する支持位置を構成する支持部に接するように構成されており、前記支持手段は、前記梁部材の撓みが増大した時に、細長い前記梁部材の非支持長さを短縮し、それによって前記梁部材の剛性を高くするように構成されている、請求項7または8に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項10】
前記支持手段は、前記梁部材の延びる方向に沿って延びる尾根部(20a,20b)を含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項11】
前記支持手段は、1つまたは複数の個別の支持部(19a,19b)を含む、請求項7から10のいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項12】
前記支持手段は、前記梁部材の延びる方向に沿って延び、前記梁部材の第1および第2の側部の位置に配置されている第1及び第2の尾根部を含み、前記細長い梁部材に沿う、前記尾根部からの支持位置が、前記梁部材の撓みの程度に応じて連続的に変化するように、前記第1および第2の尾根部は湾曲している、請求項7から11のいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置。
【請求項13】
000Paの圧力範囲に亘って、呼気の流れを50±5ml/sの範囲内に維持する、請求項1から12のいずれか1項に記載の小型の流れ調節装置を含む、呼吸分析装置。
【請求項14】
呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を分析するセンサを含む、請求項13に記載の呼吸分析装置。
【請求項15】
気の流れを10〜300ml/sの範囲内に維持するように調節する、呼吸分析装置内の、請求項1から14のいずれか1項に記載の小型の流体流れ調節装置の使用方法。
【請求項16】
1000Paの圧力範囲に亘って、呼気の流れを50±5ml/sの範囲内に維持する、請求項15に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、小型の流体流れ調節装置と、呼吸分析装置内のそのような流体流れ調節装置の使用方法と、そのような流体流れ調節装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床的な方法である呼気診断は、様々な異なる病気においてますます受け入れられている。再現可能な測定結果を保証するために、患者の呼気は、物理的なパラメータ(例えば流量、圧力、温度など)を決定する特定の手続(プロトコル)に従って、その手続の下で試験されなければならない。そのため、加えられる圧力の変動にかかわらず、実質的に一定の呼気の流れの下で測定を行うことが求められている。
【0003】
国際公開第2006/080885A1号には、流体の一定流れを維持するための一定流れ調整装置が開示されている。この装置は、入ってくる流体用の入口管と、ハウジングと、入口管に面し弾性力を受けている可動仕切りと、を含む。入口管と可動仕切りとの間に可変断面積の流体通路が形成されている。ハウジング及び可動仕切りは、入口管と流体が連通して入口管における流体圧力にほぼ等しい流体圧力が内側に確立される内部コンパートメントを形成している。使用時には入口管における流体圧力が増加したとき前記流体通路の断面積を減じるため仕切りが弾性力に逆らって入口管の方へ移動し、また、その逆にも動作し、それにより一定の流体流れを維持するように、可動仕切りのサイズは、入口管のサイズよりも著しく大きい。
【0004】
国際公開第9505208号は、長手軸線を有する貫通空気通路、吸気口、およびマウスピースを形成する排気口を構成する本体と、通路に薬剤をディスペンスする手段と、空気流量調整手段とを含む吸入薬剤の投与装置であって、空気流量調整手段が、吸気口と薬剤をディスペンスする手段との間の位置で通路の横断面積を減少させるようになっている可動遮断手段と、付勢手段とを含み、遮断手段が通路の横断面積が最小となる第1停止位置へ付勢されており、また、吸入によって生じたマウスピースのところでの圧力低下に応答して、通路の横断面積が最大になる第2位置へ、付勢手段の付勢力に抗して移動し、さらに、吸入によって生じたマウスピースのところでのより大きな圧力低下に応答して、空気通路の横断面積が最大値よりも小さくなる第3位置へさらに移動するようになっていることを特徴とする装置を開示している。
【0005】
国際公開第2008016698号は、エアロゾル化された薬物を送達する装置に関する使用のために特に設計された流体流動調節メカニズムを開示している。このメカニズムは、ハウジングと、平面状弾性要素と、調節要素と、位置決め構成要素と、を含む。この装置の各要素は、ハウジングを通る流路が、流路を通る流体の流量に応じて開かれるかまたは閉じられるように構成されている。
【0006】
国際公開第9214199号は、撓みまたは移動によって流体圧力の変動を受動的に補償する、流路内に配置された流れ調節装置を開示している。
【0007】
携帯可能な、被験者の身辺の装置(ポイント・オブ・ケア装置)に向かう現在の傾向は、小型の流れ処理システムの必要性をもたらしている。前に開示された装置は、著しく大きなサイズの仕切りを必要としている。従って、小型化に適し、呼気の比較的大きな流れを調節するためにも用いられる、流体流れ調節の問題の別の解決策を見出すことが望まれている。例えば、ぜんそくの監視(呼気中一酸化窒素濃度、FENO)において、規制ガイドラインが、一酸化窒素の濃度の測定は呼気の流量50±5ml/sにおいて行わなければならないと指示している(「ATS/ERS recommendations for standardized procedures for the online and offline measurement of exhaled lower respiratory oxide and nasal nitric oxide」, 2005. Am. J. Respir Crit. Care. Med. 2005; 171: 912-930)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/080885A1号明細書
【特許文献2】国際公開第9505208号明細書
【特許文献3】国際公開第2008016698号明細書
【特許文献4】国際公開第9214199号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「ATS/ERS recommendations for standardized procedures for the online and offline measurement of exhaled lower respiratory oxide and nasal nitric oxide」, 2005. Am. J. Respir Crit. Care. Med. 2005; 171: 912-930
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前述した装置の問題点を低減することにある。
【0011】
特に、本発明の目的は、携帯可能な分析装置に一体化された流体流れ調節装置を提供することにある。さらなる目的は、サイズが比較的大きい流体流れを受動的に調節できる流体流れ調節装置を提供することにある。低コストで製造可能な流体流れ調節装置を提供することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、入口部3、出口部4、および入口部と出口部との間の流れ調節通路5を備えている流体流路2と、流路内に配置された細長い梁部材10と、を含む小型の流体流れ調節装置1であって、入口部と出口部との間の圧力差が、流れ調節通路内で梁部材が曲がって流体の流れを調節することを引き起こし、
細長い梁部材は、第1の端部13と第2の端部14を有し、流路の入口部から出口部まで延びており、
この装置は、支持手段19a,19b,20a,20bを含み、
第1の端部と第2の端部の少なくとも一方は、装置内で、支持手段によって支持されている、小型の流体流れ調節装置が提供される。
【0013】
第2の態様では、好ましくは1000Paの圧力範囲に亘って、呼気の流れを10〜300ml/s、好ましくは50±5ml/sの範囲内に維持するように調節する前述した小型の流れ調節装置を含む呼吸分析装置が提供される。
【0014】
第3の態様では、好ましくは1000Paの圧力範囲に亘って、呼気の流れを10〜300ml/s、好ましくは50±5ml/sに維持するように調節する、呼吸分析装置内の前述した小型の流れ調節装置の使用方法が提供される。
【0015】
このように、本発明は、入口部、出口部、および入口部と出口部との間の流れ調節通路を備えている流体流路と、流路内に配置された細長い梁部材と、を含み、入口部と出口部との間の圧力差が、流れ調節通路内で梁部材が曲がって流体の流れを調節することを引き起こす小型の流体流れ調節装置に関する。
【0016】
それによって、低コストで製造でき、携帯型の分析装置に一体化された、簡素な流体流れ調節装置が実現する。これは、サイズが比較的大きい流体流れを受動的に調節することができる。
【0017】
細長い梁は第1および第2の面を有し、第1の面は流体の流路の入口部と連通して流体圧力に曝され、細長い梁の第1および第2の面に作用する圧力の差が、流れ調節通路内で梁部材が曲がって流体の流れを調節することを引き起こす。
【0018】
それによって、梁のばね力が梁全体に亘る圧力差を均衡させるように、効果的に自動調整で流れを受動的に調節することが、簡素な手段で達成できる。
【0019】
この装置は、流体流路から分離しており流体流路の入口部と連通している流体スペースを含み、細長い梁の第1の面は流体スペースの壁を形成している。それによって、入口部の圧力は、梁を撓ませて流れを調節するために用いられる。
【0020】
細長い梁は、流路から分離している流体スペースからの漏れ通路が形成され、流体が流体スペースから出口部に向かって導かれるように、配置されていてよい。
【0021】
漏れ通路は、最小化されるか、または特定の漏れ流れ特性をもたらすように構成されていてよい。
【0022】
第2の面は、流れ調節通路の壁を形成してもよい。それによって、梁の屈曲が、流れ調節通路内の流れを直接調節する。
【0023】
流れ調節通路は、流体流路の入口部から出口部に向けて圧力が低下するように構成されてもよい。それによって、入口部と出口部との間の、従って細長い梁部材全体に亘る圧力差が実現する。
【0024】
細長い梁は、延びる方向が流体流路に沿うように配置されてもよい。それによって、梁の屈曲が、流れ調節通路の断面積の統一した調節(a uniform regulation of the cross-sectional area)を引き起こす。
【0025】
細長い梁は、第1の端部と第2の端部を有し、流路の入口部から出口部まで延びている。
【0026】
細長い梁の第1の端部は、装置内で支持されていてよい。第1の端部は装置内で固定されてもよく、それによって細長い梁は片持ち梁を形成する。第2の端部は自由端であってもよい。こうして、梁の大きな撓みが達成される。
【0027】
細長い梁の第1の端部は、流体流路の出口部に向けられていてよい。こうして、装置内で第1の端部が取り付けられることによって、流体スペースが形成される。
【0028】
第2の端部は装置内で支持されてもよく、それによって、例えば梁の共鳴周波数が高くなる。
【0029】
この装置は支持手段を含み、第1の端部と第2の端部の少なくとも一方は、装置内で、支持手段によって支持されている。単純な支持を行うことによって、所望の圧力差のための梁のより大きな撓みが実現する。
【0030】
支持手段は、単純に支持される端部の長さに沿う中間位置および/または端部の角部に、単純に支持される端部の全長に沿う支持をもたらすように構成されていてよい。それによって、支持手段は、梁部材の様々な寸法に応じた支持をもたらすように構成される。
【0031】
支持手段は、梁の撓みに応じて、梁に沿う支持位置で、細長い梁に沿う支持をもたらすように構成されていてよい。
【0032】
梁の撓みに応じて支持位置を形成することによって、調節の、流れに対する圧力への依存性(pressure to flow dependency of regulation)は、所望の挙動に適合する。
【0033】
梁に沿う支持位置は、梁の撓みの程度に応じて連続的に変化してもよい。それによって、調節の、流れに対する圧力への依存性は、所望の挙動に連続的に適合する。
【0034】
支持手段は、梁の支持部が梁の撓み時に流れ調節通路に向かって移動するように構成されていてもよい。それによって、流れ調節通路は、梁の撓みによってさらに絞られ、梁の支持部の位置は、梁の撓みと協働して、流れを調節するために流れ調節通路の断面積を小さくする。
【0035】
従って、支持手段は、梁の撓みが増大した時に、細長い梁の非支持長さを有効に短縮し、それによって梁の剛性を高くするように構成されている。流量が大きいほど梁の非支持長さが短く、それによって、調節が向上する。
【0036】
支持手段は、梁の延びる方向に沿って延びる尾根部、および/または1つまたは複数の個別の支持部を含んでいてよい。
【0037】
支持手段は、梁の延びる方向に沿って延び、梁の第1および第2の側部(側方とは側部に関する意味である)に配置されている第1および第2の尾根部を含んでいてもよい。それによって、梁の側部の安定した支持がもたらされる。
【0038】
尾根部から細長い梁に沿う支持位置が梁の撓みの程度に応じて連続的に変化するように、第1および第2の尾根部は湾曲していてもよい。
【0039】
支持手段は、細長い梁の第1および第2の端部に関して対称であってもよい。
【0040】
細長い梁は、5〜20mm、好ましくは5〜15mmの範囲内の長さ、および/または2〜10mm、好ましくは4〜6mmの範囲内の幅、および/または10〜500μm、好ましくは30〜300μmの範囲内の厚さを有していてもよい。
【0041】
流路は、2〜10mm、好ましくは4〜6mmの範囲内の幅、および/または0.1〜2mm、好ましくは0.5〜1mmの範囲内の高さを有していてもよい。
【0042】
細長い梁は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、金属、または高レベルの疲労強度を有するポリマー材料、例えばポリイミドやPEEKなどを含んでいてよい。それによって、梁は、損傷の危険性が最小であって、繰り返し曲げられる。
【0043】
本発明は、さらに、1000Paの圧力範囲、好ましくは2000Paより大きい圧力範囲に亘って、呼気の流れを10〜300ml/s、好ましくは50±5ml/sの範囲内に維持するように調節する、ここに開示される流れ調節装置を含む呼吸分析装置に関する。
【0044】
呼吸分析装置は、呼気中の一酸化窒素(NO)の含有量を分析するセンサを含んでいてよい。
【0045】
本発明は、さらに、1000Paの圧力範囲、好ましくは2000Paより大きい圧力範囲に亘って、呼気の流れを10〜300ml/s、好ましくは50±5ml/sの範囲内に維持するように調節する、呼吸分析装置内の、ここに開示される流れ調節装置の使用方法に関する。
【0046】
ここで用いられる単数形の「a」、「an」、「the」は、複数形も同様に含む意図である。およそ(about)という用語は、±10%の範囲内のばらつきを表すと定義される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】一実施形態に係る小型の流体流れ調節装置を示す一部切り欠き斜視図である。
図2】一実施形態に係る小型の流体流れ調節装置の一部を示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る小型の流体流れ調節装置を示す断面図である。
図4】一実施形態に係る小型の流体流れ調節装置の一部を示す斜視図である。
図5a】一実施形態に係る小型の流体流れ調節装置を示す断面図である。
図5b】一実施形態に係る小型の流体流れ調節装置を示す断面図である。
図6】梁部材の撓みを示す図である。圧力が大きくなるにつれて、梁部材の撓みは小さくなり、すなわち梁部材はより堅くなることがわかる。最初の5000Paは約202μmの撓みをもたらし、さらに+5000Paだけ圧力が大きくなると+106μmだけ撓みが大きくなり、さらに+5000Paだけ圧力が大きくなると+51μmだけ撓みが大きくなり、さらに+5000Paだけ圧力が大きくなると+12μmだけ撓みが大きくなる。上方の曲線は、μmで表した撓みを示し、下方の曲線は、結果的に生じる流れをml/sで示している。目盛りは左と同じである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明を、例として添付の図面を参照して説明する。
【0049】
以下、小型の流体流れ調節装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0050】
図1には、半分に切断した小型の流体流れ調節装置を示している。この装置は、入口部3と、出口部4と、入口部と出口部の間の流れ調節通路5と、を備えた流体流路2を含む。この装置は、装置のハウジングを形成する材料の第1の部分6と第2の部分7とから組み立てられている。この材料は例えばポリマー材料である。この装置は、装置を例えばチューブに接続する第1のコネクター8および第2のコネクター9を含んでいてもよい。
【0051】
流れ調節装置は、流路2内に配置されており、流路に沿う方向に延びている細長い梁部材10を含む。細長い梁は、第1の端部13と第2の端部14とを有し、流路の入口部と出口部の間を延びている。
【0052】
細長い梁は、第1の面11と第2の面12を含む。細長い梁の第2の面12は、流れ調節通路内の壁を形成している。梁の第1の端部13は、例えば、細長い梁を装置自体と同じ材料片に一体形成することによって、または装置の材料にしっかりと取り付けることによって、装置内で固定(クランプ)されている。梁の第2の端部14は支持されておらず、自由端を形成している。従って、本実施形態では、梁は片持ち梁として形成されている。流体スペース15は装置内に形成されて、流体流路の入口部と連通している。細長い梁の第1の面11は、流体スペース内の壁を形成している。さらに、流体スペースは、細長い梁の第1の端部13を取り付けることによって境界を定められている。
【0053】
図1には、第1の端部と第2の端部の少なくとも一方を支持する支持部材は示されていない。
【0054】
図2には、流体の調節装置の一部を形成する材料の第1の部分6を示している。ここで、細長い梁10は、見る人の方に向いている第2の面12が示されている。本実施形態では、細長い梁は、第1の部分6と同じ材料片に一体形成することによって、装置内で支持されている。こうして、梁は第1の端部13において固定されている。(梁の延びる方向に直交する)梁の側部は移動可能であり、そのため、細長い梁の側部に沿ってスリット16aおよび16bが形成されている。これらのスリットは、流体スペースから流路内へ、および流路の出口部に向かう流れを調節し、最小化している。この流れの漏れは、スリットの設計によって、そして、例えば細長い梁の下および/または上に尾根部(ridge)を設けることによって、制限されている。
【0055】
図2には、第1の端部と第2の端部の少なくとも一方を支持する支持手段は示されていない。
【0056】
材料の第1の部分6には、材料の第1の部分および第2の部分の位置揃えおよび密接な嵌合のための突起17および/または凹み18が設けられている。
【0057】
図3は、この装置の流体調節機能をさらに示している。流路の入口部3と出口部4と流れ調節通路5が示されている。この図面から、梁10の第1の面11が流体の流路の入口部3と連通して流体圧力に曝されるように流体スペース15が配置されていることが明らかである。従って、細長い梁の第1の面11と第2の面12とに作用する圧力の差が、流れ調節通路内で梁部材が曲がって流体の流れを調節することを引き起こす。特に、入口部内(従って流体スペース15内)では流れ調節通路5内よりも圧力が高く、そのことが、細長い梁が流れ調節通路に向かって曲がって流れ調節通路の断面積を小さくすることを引き起こす。それによって、流れ調節通路内の流れ抵抗が増大し、流れ調節通路を通る流体の流速を制限する。
【0058】
図3には、第1の端部と第2の端部の少なくとも一方を支持する支持手段は示されていない。
【0059】
図4には、小型の流体流れ調節装置の実施形態が示されている。図4には、細長い梁の構成と支持が示されている。図4は、この装置の、入口部3、出口部4、および入口部3と出口部4の間の流れ調節通路5を備えた部分が示されている。流れ調節通路には、上に置かれる細長い梁部材を支持する複数の支持手段が設けられている。支持手段は、流路の中間部に入口部と出口部に向けてそれぞれ配置されている個別の第1の支持部19aおよび第2の支持部19bを含む。さらに、支持手段は、細長い梁の側部に沿う支持をもたらすための、流路の両側部に沿って配置された第1の尾根部20aおよび第2の尾根部20bを含む。尾根部は、細長い梁と流路の側壁との間に形成されているスリットを通して流れが漏れるのを制限するためにも形成されている。
【0060】
尾根部である支持部は、細長い梁が撓んだ時にその梁に沿って支持するような形状に形成されている。尾根部は、梁に沿う支持位置が梁の撓みに応じて連続的に変化し、それによって、細長い梁の撓みが大きくなった時にその梁の非支持部の長さが効果的に短くなるような形状であってもよい。このことは、梁が撓んだ時に徐々に(または段階的に)梁を強化するという効果を有する。
【0061】
図5aおよび5bには、この装置の動作が示されている。梁10の第1の面11が流体流路の入口部に連通して流体圧力に曝されるように、流体スペース15が配置されている。細長い梁は、尾根部20を含む支持手段上に単純に支持されている。細長い梁の第1の面11と第2の面12とに作用する圧力の差が、流れ調節通路内で梁部材が曲がって流体の流れを調節することを引き起こす。
【0062】
図示されている例では、尾根部はV字状である。このことは、細長い梁がV字状の支持部に接するように梁が撓むまで、初期状態では梁は第1の端部と第2の端部で単純に支持されるだけであるという効果を有する。その後にさらに撓むと、支持位置がV字状の尾根部の中央に向かって移動する結果になる。支持位置がV字状の尾根部の中央に向かって移動することにより、撓んだ梁の有効長さは減少し、それによって梁の剛性が増大する。
【0063】
このようにして、支持手段の形状が、撓んだ時に剛性が増大するようになっており、それによって、流れ調節通路内の流れが所望の圧力−流れの挙動となるように調節するようになっていてもよい。支持手段は、V字形状、ガルウィング形状、湾曲形状、正弦曲線形状等を有する、尾根部の形態であってもよく、または、撓みが増大した時に支持をもたらすようになっている、異なる高さを有し分離した個別の支持部の形態であってもよい。
【0064】
梁の材料は、例えば単結晶シリコンや金属など、ハウジングを形成する部分の材料以外の材料から選択してよい。材料は、高い疲労強度を有する材料のグループの中から選択されるのが好ましい。
【0065】
装置は、図1に示すように、流れ調節流路内の壁の1つを構成する片持ち梁を含む。入口部に圧力が加えられると、入口圧力が、片持ち梁の第1の面の全長に沿って作用する。片持ち梁の下の狭い流れ調節流路内の流れは、結果として圧力低下をもたらし、その結果、片持ち梁の長さに沿って正味の力が分散し、図3に示すように、片持ち梁を下向きに曲げて流路内の流れを制限する。
【0066】
片持ち梁(細長い梁)のばね力は、それに作用する、流れに誘導された下向きの曲げ力に対して効果的にバランスを取り、その結果、いかなる入口圧力においても予測可能な撓みが生じる。片持ち梁で制御された主な流れに加えて、流れ抵抗が大きくなりすぎるのを回避する漏れ流れが生じる。
【0067】
装置内の総圧力低下は概算され、図3に示すように、3つの領域、すなわち、流れが片持ち梁の先端に接触する急縮領域と、片持ち梁の長さに沿う拡散領域と、出口にある急拡大領域に分けられる。それから、片持ち梁の制限と片持ち梁の底部に沿う流路とに起因する総圧力低下は、以下の式で表される。
【数1】
Δpは流路の急縮に起因する入口の圧力低下であり、Δpは片持ち梁の長さに沿う拡散領域の圧力低下であり、Δpは流路の急拡大に起因する出口の圧力低下である。
【0068】
これらの領域の圧力低下は、以下の式で概算される。
【数2】
ρは流体の密度であり、νは縮小された入口の中間の流速であり、ξ,ξ,およびξは圧力損失係数であり、AおよびAは縮小された入口と縮小されない流路のそれぞれの断面積であり、Cは圧力回復係数である。
【0069】
それから、ベルヌーイの方程式を用いて、メインの流れを以下の式によって概算することができる。
【数3】
BとCは以下の通りである。
【数4】
Lは片持ち梁の長さであり、Eは弾性率であり、bおよびtはそれぞれ片持ち梁の幅と厚さであり、hoは片持ち梁の撓みが0の時の流路の高さである。
【0070】
定数BおよびCは、以下の式を用いて、2つの圧力レベルにおける特定の流量に最適化されてもよい。
【数5】
およびφはそれぞれ第1のターゲット点における圧力と流量であり、Pおよびφはそれぞれ第2のターゲット点における圧力と流量である。
【0071】
理想的な圧力源を有し、装置に接続されたチューブに損失がないと仮定すると、装置を通る総流れは以下の式で概算される。
【数6】
φは漏れ流れであり、Dは漏れのギャップの幾何形状によって規定される定数である。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6