特許第6556761号(P6556761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556761有機エレクトロルミネッセント素子のための材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556761
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセント素子のための材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20190729BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20190729BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20190729BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20190729BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20190729BHJP
   C07D 487/10 20060101ALI20190729BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   C07D403/14
   C07D403/10
   C07D403/04
   C07D405/14
   C07D487/10
   C09K11/06 690
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】16
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2016-574103(P2016-574103)
(86)(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公表番号】特表2017-521397(P2017-521397A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2015001059
(87)【国際公開番号】WO2015192939
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】14002104.9
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ヨーステン、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ハイヤー、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー−フライク、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】リンゲ、ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ハイル、ホルガー
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−531383(JP,A)
【文献】 特表2012−521643(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/094963(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/017189(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/124255(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/100467(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/038867(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/108901(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0256645(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0032787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
C07D 403/04〜14
C07D 405/14
C07D 487/10
C09K 11/06
H05B 33/14〜22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)の化合物:
【化1】
式中、使用される記号と添え字には、以下が適用される;
Yは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ただし、少なくとも一つの基Yは、Nであり;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNであり、ここで、最大2個の基Xは、Nであるか、または2個の隣接する基Xは、次の式(3)もしくは(4)の基であり、その他の基Xは、同一であるか異なり、CRもしくはNであり、
【化2】
式中^は、式(1)または(2)中で対応する隣接基Xを示し、
Vは、出現毎に同一であるか異なり、NR、C(R)、O、S、BR、Si(R)またはC=Oであり;
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ここで、最大2個の基Zは、Nであり;
Arは、1以上のR基により置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Ar、Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、ここで、ArとArおよび/またはArとArは、単結合により、またはC(R、C(R-C(R、NR、OもしくはSから選ばれる基により互いに連結されてもよく;
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、P(Ar、B(Ar、Si(Ar、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基より成る群から選ばれ、ここで、2個の隣接する置換基Rは、1以上の基Rにより置換されてよい単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族R基により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同じN、P、BもしくはSi原子に結合する2個の基Arは、単結合により、または、N(R)、C(R、C(R-C(R、OもしくはSから選ばれるブリッジにより互いにブリッジされてもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、または5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれ、ここで、1以上のH原子は、D、F、CNもしくは1〜10個のC原子を有するアルキル基で置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、単環式あるいは多環式の脂肪族環構造を互いに形成してよく;
mは、0または1であり;
nは、0または1であり;
pは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
qは、0、1または2であり;
rは、0、1、2または3であり;
ここで、以下の化合物は、本発明から除外される。
【化3】
【請求項2】
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNであり、ここで、環毎の最大1個のX基はNであるか、または2個の隣接する基Xは、式(3)の基であり、ここで、Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRであり、Vは、NR、C(R)、OまたはSであり、その他のXはCRであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(5)〜(7)の化合物から選ばれる、請求項1または2記載の化合物:
【化4】
式中、使用される記号と添え字は、請求項1で与えられる意味を有する。
【請求項4】
pは、出現毎に同一であるか異なり、0、1または2であること、qは、0または1であることおよび、rは、0または1であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
式(5a)〜(7a)の化合物から選ばれる、請求項1〜4何れか1項記載の化合物:
【化5】
式中、使用される記号と添え字は、請求項1で与えられる意味を有する。
【請求項6】
式(5b)〜(7b)の化合物から選ばれる、請求項1〜5何れか1項記載の化合物:
【化6】
式中、使用される記号と添え字は、請求項1で与えられる意味を有する。
【請求項7】
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の化合物。
【請求項8】
式(1)または式(2)中の基
【化7】
は、式(Het−Ar−1)〜(Het−Ar−10)の基から選ばれることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の化合物:
【化8】
式中、破線の結合は、Arへの結合であるか、または、m=0に対しては窒素への結合であり、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、Dまたは1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【請求項9】
n=1であり、かつArとArが、互いに単結合を介して連結することを特徴とするか、または、n=0もしくは1であり、かつArとArが、互いに単結合を介して連結することを特徴とするか、または、n=0もしくは1であり、かつAr、ArとArの何れもが、互いに連結しないことを特徴とする請求項1〜8何れか1項記載の化合物。
【請求項10】
Arは、1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とするか、または、ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれることを特徴とする請求項1〜9何れか1項記載の化合物。
【請求項11】
式(1)または式(2)中の基-[Ar]-N(Ar)(Ar)は、式(CARB−1)〜(CARB−5)の基から選ばれることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の化合物:
【化9】
式中、Arは、請求項1で与えてられる意味を有し、基は一以上の基Rで置換されてよい。
【請求項12】
請求項1〜11何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と、少なくとも一つのさらなる化合物を含む調合物。
【請求項13】
請求項1〜11何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項12記載の調合物の電子素子での使用。
【請求項14】
請求項1〜11何れか1項記載の少なくとも一つの化合物を含む電子素子。
【請求項15】
有機エレクトロルミッセンス素子であり、請求項1〜11何れか1項記載の少なくとも一つの化合物が、発光層中で燐光エミッターのためのマトリックス材料として用いられることを特徴とする請求項14記載の電子素子。
【請求項16】
請求項1〜11何れか1項記載の化合物が、さらなるマトリックス材料と組み合わせて燐光エミッターのためのマトリックス材料として用いられることを特徴とする、請求項15記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子、特に、有機エレクトロルミッセンス素子での使用のための材料とこれらの材料を含む電子素子、特に、有機エレクトロルミッセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として用いられる有機エレクトロルミネッセント素子(OLED)は、たとえば、US4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで、用いられる発光材料は、蛍光ではなく燐光を呈する有機金属錯体にますますなっている。量子力学的理由により、エネルギーとパワー効率の4倍までの増加が、燐光エミッターとして有機金属化合物を使用して可能である。しかしながら、一般的に、OLEDの場合、特に、三重項放出(燐光発光)を呈するOLEDの場合にも、たとえば、効率、駆動電圧と寿命に関して、改善の必要性がなお存在する。
【0003】
燐光OLEDの特性は、用いられる三重項エミッターだけによって決定されるのではなく、マトリックス材料等の他の使用されるその他の材料によって決定される。したがって、これら材料における改善とその電荷輸送特性が、OLED特性での顕著な改善をもたらすこともできる。
【0004】
先行技術にしたがうと、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2010/136109にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2012/074210にしたがうフルオレンもしくはスピロビフルオレン誘導体が、有機エレクトロルミッセンス素子での燐光エミッターのためのマトリックス材料として用いられる。ここで、特に、効率、寿命と材料の膜形成性に関して、さらなる改善が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、OLEDでの、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用に適する化合物の提供である。本発明のさらなる目的は、当業者がOLED製造のための材料のより大きな可能な選択を有することを可能とするために、有機エレクトロルミッセンス素子のためのさらなる有機半導体を提供することである。
【0006】
驚くべきことに、以下により詳細に説明される特定の化合物が、この目的を達成し、OLEDでの使用に極めて適し、有機エレクトロルミネッセンス素子における改善をもたらすことが見出された。ここで、改善は、特に、寿命および/また効率に関する。さらに、これらの化合物は、溶液からの加工と引き続く加熱による乾燥を可能とする高いガラス転移温度と高い溶解性を同時に有することから、溶液からの加工の場合において、改善された膜形成性を有する。したがって、本発明は、これらの化合物とこのタイプの化合物を含む、電子素子、特に、有機エレクトロルミッセンス素子に関する。
【0007】
本発明は、式(1)または式(2)の化合物に関し:
【0008】
【化1】
【0009】
式中、使用される記号と添え字には、以下が適用される;
Yは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ただし、少なくとも一つの基Yは、Nであり;
Xは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNであり、ここで、最大2個の基Xは、Nであるか、または2個の隣接する基Xは、次の式(3)もしくは(4)の基であり、その他の基Xは、同一であるか異なり、CRもしくはNであり、
【0010】
【化2】
【0011】
式中^は、式(1)または(2)中で対応する隣接基Xを示し、
Vは、出現毎に同一であるか異なり、NR、C(R)、O、S、BR、Si(R)またはC=Oであり;
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNであり、ここで、最大2個の基Zは、Nであり;
Arは、1以上のR基により置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Ar、Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、ここで、ArとArおよび/またはArとArは、単結合により、またはC(R、C(R-C(R、NR、OもしくはSから選ばれる基により互いに連結されてもよく;
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、P(Ar、B(Ar、Si(Ar、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、C=S、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基より成る基から選ばれ、ここで、2個の隣接する置換基Rは、1以上の基Rにより置換されてよい単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族R基により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同じN、P、BもしくはSi原子に結合する2個の基Arは、単結合により、または、N(R)、C(R、C(R-C(R、OもしくはSから選ばれるブリッジにより互いにブリッジされてもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、または5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ、ここで、1以上のH原子は、D、F、CNもしくは1〜10個のC原子を有するアルキル基で置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、単環式あるいは多環式の脂肪族環構造を互いに形成してよく;
mは、0または1であり;
nは、0または1であり;
pは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
qは、0、1または2であり;
rは、0、1、2または3であり;
ここで、以下の化合物は、本発明から除外される。
【0012】
【化3】
【0013】
アリール基は、本発明の意味では、6〜60個のC原子を含有し、ヘテロアリール基は、本発明の意味では、2〜60個のC原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。ここで、ヘテロアリール基は、好ましくは、最大3個のヘテロ原子を含有し、その中の最大1個はOまたはSから選択され、その他のヘテロ原子は、Nである。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、簡単な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または簡単な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合(縮合環化)アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかの意味で使用される。単結合により互いに結合した芳香族構造は、たとえば、ビピリジン、ビフェニルは、逆に、アリールもしくはヘテロアリール基ではなく、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造と称される。
【0014】
芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に6〜60個のC原子を含有する。複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に2〜60個のC原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子とヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。こここで、複素環式芳香族環構造基は環構造中に存在するヘテロアリール基毎に、好ましくは、最大3個のヘテロ原子を含有し、その中の最大1個はOまたはSから選択され、その他のヘテロ原子は、Nである。本発明の目的のために、芳香族または複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基だけを含有するとは限らない構造であって、非芳香族単位、たとえば、C、NもしくはO原子などによって連結されてもよい構造の意味で使用される。したがって、たとえば、フルオレン、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の構造は、2個以上のアリール基が、たとえば短いアルキル基によって連結されている構造と同様に、本発明の目的のための芳香族環構造の意味で使用されるとみなされるべきである
本発明の目的のために、1〜40個の炭素原子を含んでよく、さらに個々のH原子またはCH基が、前述の基により置換されていてもよい脂肪族炭化水素基またはアルキル基もしくはアルキニル基もしくはアルケニル基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニル基の意味で使用される。1〜40個の炭素原子を有するアルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシおよび2,2,2-トリフルオロエトキシの意味で使用される。1〜40個の炭素原子を有するチオアルキル基は、特に、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオの意味で使用される。一般に、本発明にしたがうアルキル、アルコキシまたはチオアルキル基は、直鎖状、分枝または環状であってよく、1以上の隣接していないCH基は、上記基によって置きかえられていてもよく、さらに、1以上の水素原子も、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO、好ましくは、F、ClまたはCN、さらに好ましくは、FまたはCN、特に好ましくは、CNによって置きかえられていてもよい。
【0015】
各場合において、前述の基Rまたは炭化水素基により置換されていてもよく、任意の所望の位置で、芳香族もしくは複素環式芳香族系に連結していてもよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、トリフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-またはtrans-インデノフルオレン、cis-またはtransインデノカルバゾール、cis-またはtrans-インドロカルバゾール、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールまたはこれらの構造の組み合わせに由来する基の意味で使用される。
【0016】
本発明の意味で隣接する基もしくは隣接する置換基は、順に互いに直接結合するC原子に結合する置換基または同じC、Si、P、NもしくはB原子に結合する置換基の意味で使用される。
【0017】
本発明の好ましい1態様では、Xは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNであり、ここで、環毎の最大1個のX基はNであるか、または2個の隣接するX基は式(3)の基であり、ここで、Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRであり、Vは、出現毎に同一であるか異なり、NR、C(R)、OまたはS、好ましくは、NRまたはC(R)であり、残りのXは、CRである。Xは、特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、CRである。
【0018】
式(1)の化合物の好ましい態様は、以下の式(5)、(6)および(7)の化合物であり、式(2)の化合物の好ましい態様は、以下の式(8)、(9)および(10)の化合物であり、
【0019】
【化4-1】
【0020】
【化4-2】
【0021】
式中、使用される記号と添え字は、上記所与の意味を有する。ここで、Vは、好ましくは、NR、C(R)、OもしくはSであり、特に好ましくは、NRである。VがC(R)である場合は、2個のR基は、互いに環を形成し、スピロ構造を形成することが好ましい可能性がある。
【0022】
本発明の好ましい1態様では、pは、出現毎に同一であるか異なり、0、1または2、特に好ましくは、0または1、非常に特に好ましくは、0である。
【0023】
さらに、qは、0または1、特に好ましくは、0である。
【0024】
さらに、rは、0または1、特に好ましくは、0である。
【0025】
式(5)〜(10)の構造の好ましい態様は、式(5a)〜(10a)の構造であり:
【0026】
【化5-1】
【0027】
【化5-2】
【0028】
式中、使用される記号と添え字は、上記所与の意味を有する。
【0029】
式(5)〜(10)の構造の特に好ましい態様は、式(5b)〜(10b)の構造であり:
【0030】
【化6-1】
【0031】
【化6-2】
【0032】
式中、使用される記号と添え字は、上記所与の意味を有する。
【0033】
本発明のさらに好ましい1態様では、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る群から選ばれる。Rは、特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、N(Ar、1〜6個のC原子を有する、特に、1〜4個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜8個のC原子を有する、特に、3〜6個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基(夫々、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されない。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0034】
Rが芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である場合には、この基Rは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、Ar〜Arに対して適切な基として以下に示されたのと同じ基から選ばれる。
【0035】
真空蒸発により加工される化合物において、アルキル基は、好ましくは、5個を超えないC原子、特に好ましくは、4個を超えないC原子、非常に特に好ましくは、1個を超えないC原子を有する。溶液から加工される化合物に対しては、適切な化合物は、アルキル基、特には、10個迄のC原子を有する分岐アルキル基で置換されたものまたはオリゴアリーレン基、たとえば、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニルまたはクアテルフェニルで置換されたものである。
【0036】
本発明の1態様では、n=1でm=1である。本発明のさらなる1態様では、n=0でm=1である。本発明のなおさらなる1態様では、n=m=1である。本発明のなおさらなる1態様では、n=m=0である。
【0037】
本発明にしたがうと、式(1)および(2)の化合物は、(Het−Ar)と略される次の式の6員環ヘテロアリール基を含む。
【0038】
【化7】
【0039】
この基は、m=1に対しては、Arに結合し、m=0に対しては、窒素に結合する。基(Het−Ar)中の少なくとも一つの基Yは、Nである。本発明の好ましい1態様では、1、2または3個の記号Yは、Nであり、その他の記号Yは、CRである。
【0040】
好ましい態様は、以下の式(Het−Ar−1)〜(Het−Ar−10)の基であり、
【0041】
【化8】
【0042】
式中、破線の結合は、Arへの結合であるか、または、m=0に対しては窒素への結合であり、Rは、所与の意味を有する。
【0043】
特に好ましいのは、以下の式(Het−Ar−1a)〜(Het−Ar−10b)の基であり、
【0044】
【化9】
【0045】
式中、破線の結合は、Arへの結合であるか、または、m=0に対しては窒素への結合であり、その他の記号は、上記所与の意味を有する。
【0046】
非常に特に好ましいのは、基(Het−Ar−1a)、(Het−Ar−2a)および(Het−Ar−2b)である。
【0047】
基(Het−Ar−1)〜(Het−Ar−10)において、Rは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、特に、Hであるか、またはフェニル、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に、オルト-、メタ、パラ-もしくは分岐テルフェニル、クアテルフェニル、特に、オルト-、メタ-パラ-もしくは分岐クアテルフェニル、フルオレニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-フルオレニル、スピロビフルオレニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニル、ジベンゾフラニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-ジベンゾフラニル、カルバゾリル、特に、1-,2-,3-もしくは4-カルバゾリルであって、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されない。
【0048】
基(Het−Ar−1a)〜(Het−Ar−10a)において、置換基Rは、好ましくは、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、特に、フェニル、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に、オルト-、メタ、パラ-もしくは分岐テルフェニル、クアテルフェニル、特に、オルト-、メタ-パラ-もしくは分岐クアテルフェニル、フルオレニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-フルオレニル、スピロビフルオレニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニル、ジベンゾフラニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-ジベンゾフラニル、カルバゾリル、特に、1-,2-,3-もしくは4-カルバゾリルであって、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されない。
【0049】
本発明の好ましい1態様では、m=1で、Arは、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、好ましくは、6〜24個の芳香族環原子を有する、特に好ましくは、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。適切な基Arは、フェニレン、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-フェニレン、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に、オルト-テルフェニル、メタ-テルフェニル、パラ-テルフェニルもしくは分岐テルフェニル、クアテルフェニル、特に、オルト-クアテルフェニル、メタ-クアテルフェニル、パラ-クアテルフェニルもしくは分岐クアテルフェニル、フルオレン、特に、2,7-連結フルオレン、スピロビフルオレン、特に、2,7-、もしくは2,2'-もしくは4,4'-連結スピロビフルオレン、ナフタレン、特に、1,4-もしくは2,6'-連結ナフタレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、特に、2,7-もしくは3,6'-連結カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、フェナントレン、トリフェニレニンまたは2もしくは3個のこれらの基の組み合わせより成る基から選ばれ、夫々、1以上の基Rにより置換されてよい。Arは、特に好ましくは、フェニレン、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-フェニレン、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に、オルト-テルフェニル、メタ-テルフェニル、パラ-テルフェニルもしくは分岐テルフェニルより成る群から選ばれる芳香族環構造である。ここで、基(Het−Ar)は、任意の所望の位置でArに結合する。
【0050】
本発明のさらに好ましい1態様では、m=0で、基Arは、存在しない。
【0051】
本発明のさらに好ましい1態様では、基Ar中の芳香族基は、パラ結合ではなく、換言すれば、パラ-フェニレン、パラ-ビフェニル、パラ-テルフェニルもしくはパラ-クアテルフェニルではないが、その代わりに、たとえば、各々オルト-もしくはメタ-連結構造である。
【0052】
本発明にしたがうと、式(1)および式(2)の化合物は、スピロカルバゾール単位の窒素原子でパラ位に式-[Ar]-N(Ar)(Ar)の基を含む。
【0053】
ここで、n=1に対して、ArとArは、互いに連結してよく、および/またはArとArは、単結合により、またはC(R、C(R-C(R、N、OもしくはSから選ばれる基により、好ましくは、単結合により、互いに連結してよい。ArとArの互いの連結またはArとArの互いの連結は、好ましくは、各場合に窒素原子の結合のオルト位で生じる。
【0054】
本発明の1態様では、n=1であり、かつArとArが、互いに単結合により連結する。本発明のさらなる1態様では、n=0もしくは1であり、かつArとArが、互いに単結合を介して連結する。本発明のなおさらなる1態様では、n=0もしくは1であり、かつAr、ArとArの何れもが、互いに連結しない。
特に好ましくは、n=1で、ArとArは、単結合により互いに連結する。
【0055】
Arは、好ましくは、6〜24個の芳香族環原子を有する、好ましくは、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。Arは、特に好ましくは、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいフェニレン、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-フェニレンまたは、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニルより成る基から選ばれ、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されない。Arは、非常に特に好ましくは、置換されないフェニレン基である。これは、ArがArに単結合により連結する場合にあてはまる。
【0056】
ArおよびArは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。特に好ましい基ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、夫々、1以上の基Rにより随意に置換されてよいフェニル、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に、オルト、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニル、クアテルフェニル、特に、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐クアテルフェニル、フルオレニル、特に、1-,2-、3-もしくは4-フルオレニル、スピロビフルオレニル、特に、1-、2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニル、ナフチル、特に、1-、もしくは2-ナフチル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、カルバゾリル、1-、2-、3-もしくは4-カルバゾリル、ジベンゾフラニル、特に、1-、2-、3-もしくは4-ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、特に、1-、2-,3-もしくは4-ジベンゾチオフェニル、インデノカルバゾリル、インドロカルバゾリル、ピリジニル、特に、2-、3-もしくは4-ピリジニル、ピリミジニル、特に、2-、4-もしくは5-ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フェナンスレニル、トリフェニレニルまたは2,3もしくは4このこれらの基の組み合わせより成る群から選ばれる。ArおよびArは、特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であり、特に、ベンゼン、ビフェニル、特に、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、テルフェニル、特に、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニル、クアテルフェニル、特に、オルト-、メタ-ル、パラ-ルもしくは分岐クアテルフェニル、フルオレニル、特に、1-、2-、3-もしくは4-フルオレニル、スピロビフルオレニル、特に、1-、2-、3-もしくは4-スピロビフルオレニルより成る基から選ばれる。
【0057】
式-[Ar]-N(Ar)(Ar)の好ましい基は、n=1で、Arが、単結合によりArに連結するフェニル基である。これは、カルバゾールまたはカルバゾール誘導体の生成をもたらす。
【0058】
式-[Ar]-N(Ar)(Ar)の特に好ましい基は、以下の式(CARB)の基であり、
【0059】
【化10】
【0060】
式中、ArとArは、上記で与えられる意味、特に、上記好ましい意味を有し、破線の結合は、式(1)もしくは式(2)における式(CARB)からスピロカルバゾール骨格への結合を表す。
【0061】
式(CARB)の好ましい態様は、次の式(CARB−1)〜(CARB−5)の基であり、
【0062】
【化11】
【0063】
式中、Arは、上記で与えてられる意味を有し、構造は一以上の基Rで置換されてよい。
【0064】
式(CARB−2)と(CARB−4)で明確に描かれた基Rは、1〜4個のC原子を有するアルキル基または6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造、特に、メチルである。
【0065】
式(1)もしくは(2)の化合物またはその好まし1態様が、燐光エミッターのためのマトリックス材料として、または燐光発光層に直接隣接する層で使用される場合は、化合物の三重項エネルギーが燐光エミッターと同じか、より高いことがさらに好ましい。これは、特に、2個を超える6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない本発明による化合物によって、赤色燐光エミッターよりも高い三重項エネルギーを有する緑色および青色燐光エミッターに対して実現することができる。したがって、このような化合物は、本発明のさらに好ましい1態様である。特に、この使用のためには、基R、RおよびAr〜Arは、2個を超える6員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まないことが好ましい。
【0066】
上記示された好ましい態様は、所望のとおりに互いに組み合わせることができる。本発明の特に好ましい1態様では、上記選好は同時に生じる。
【0067】
上記示された態様にしたがう好ましい化合物の例は、以下の表に詳細を示される。
【0068】
【化12-1】
【0069】
【化12-2】
【0070】
【化12-3】
【0071】
本発明による化合物の基本構造を、スキーム1aと1bに概説する経路により調製することができる。さらなる誘導体化は、スキーム2および/または3にしたがって、実行することができる。
【0072】
【化13】
【0073】
式(1)の化合物は、文献公知の化合物4-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン(Org. Lett. 2009, 11, 2607)もしくは4,4'-ジブロモ-9,9’-スピロビフルオレン(Org. Lett. 2010, 12, 5648)または対応して置換された誘導体から出発して、通常合成することができる。これらは、オルト-ハロアミノベンゼンと反応し、C−Nカップリング反応で、たとえば、PdもしくはCu触媒下で反応し、ここで、ハロゲンは、好ましくは、Cl、BrもしくはIである。分子間Pd触媒カップリング反応による引き続く閉環は、式(1)の化合物をもたらす。
【0074】
【化14】
【0075】
式(2)の化合物は、文献公知の化合物1-インドロ-9-フルオレン(Tetra-hedron Lett. 2002, 43, 8347)もしくは対応して置換された誘導体から出発して、通常合成することができる。これは、オルト-ハロベンゼンと反応し、C−Nカップリング反応で、たとえば、PdもしくはCu触媒下で反応し、ここで、ハロゲンは、好ましくは、Cl、BrもしくはIである。分子間Pd触媒カップリング反応による引き続く閉環は、インドロカルバゾール誘導体をもたらす。最終工程において、閉環反応が実施され、2-リチウム化ビフェニル誘導体との反応と最後の酸環化によりスピロビフルオレンを得る。
【0076】
【化15】
【0077】
置換基としてアミノもしくはカルバゾール基を未だ有さないm=0である式(1)の化合物の前駆体は、基(Het-Ar)-Halによる求核芳香族置換により得られ、ここで、脱離基としてのハロゲンは、好ましくは、ClもしくはBrである。
【0078】
置換基としてアミノもしくはカルバゾール基を未だ有さないm=1である式(1)の化合物の前駆体は、基(Het-Ar)-Ar−HalとのC-Nカップリング反応、たとえば、ハートウィッグブフバルトカップリングもしくはウルマンカップリングより得られ、ここで、ハロゲンは、好ましくは、BrもしくはIである。
【0079】
スキーム2で説明された反応は、スキーム1bにしたがって、インドロカルバゾール誘導体で同様に実行され、式(2)の化合物の対応する前駆体をもたらす。
【0080】
【化16】
【0081】
さらなる誘導体化は、カルバゾール誘導体の臭素化により、たとえば、N-ブロモスクシンイミドもしくは元素状臭素との反応により実施することができる。引き続くPd触媒C-Nカップリング反応、たとえば、ハートウィッグブフバルトカップリングもしくはウルマンカップリングまたはC-Cカップリング反応、たとえば、スズキ、ネギシ、ヤマモト、グリニャール-クロスもしくはスチルカップリングは、n=0もしくはn=1である本発明による式(1)の化合物を生じる。非置換カルバゾールのボロン酸誘導体、たとえば、化合物Ar-NH-Ar-B(OR)との反応も、同様に実行することができ、カルバゾール上のプロトンは、さらなる工程で置換される。さらに、臭素の、たとえば、ビス(ピナコラート)ジボランとのPd触媒反応は、C-Cカップリング反応で反応することができる対応するボロン酸エステルの調製を可能とする。
【0082】
ボロン酸エステルを得るための上記臭素化と引き続く反応も、基Het-Ar-ArもしくはHet-Arの不在下、同様に実施することができ、その結果、この基は最終工程まで導入されることはできない。
【0083】
上記反応は、スキーム1bにしたがう誘導体またはスキーム2にしたがうそのN-置換誘導体と同様に実行することもでき、ここで、C-NもしくはC-Cカップリング反応が、本発明による式(2)の化合物を与える。
【0084】
液相からの、たとえば、スピンコーティングまたは印刷法による本発明による化合物の加工のためには、本発明による化合物の調合物が必要である。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。二以上の溶媒の混合物を使用することが、この目的のために好ましい可能性がある。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物である。
【0085】
したがって、本発明は、さらに、本発明による化合物と少なくとも一つのさらなる化合物とを含む調合物に関する。さらなる化合物は、たとえば、溶媒、特に、上記言及した溶媒またはこれらの溶媒の混合物であってよい。しかしながら、さらなる化合物は、電子素子で同様に用いられる少なくとも一つの有機もしくは無機化合物、たとえば、発光化合物および/またはさらなるマトリックス材料であってよい。適切な発光化合物とさらなるマトリックス材料は、有機エレクトロルミッセンス素子と関連して、後に挙げられる。このさらなる化合物は、ポリマー状であってもよい。
【0086】
本発明による化合物は、電子素子での、特に、有機エレクトロルミッセンス素子での使用に適している。
【0087】
したがって、本発明は、さらに、本発明による化合物の電子素子での、特に、有機エレクトロルミッセンス素子での使用に関する。
【0088】
本発明は、なおさらに、少なくとも一つの本発明による化合物を含む電子素子に関する。
【0089】
本発明の意味での電子素子は、少なくとも一つの有機化合物を含む少なくとも一つの層を含む素子である。この素子は、また、無機材料または完全に無機材料から構成される層を含んでよい。
【0090】
電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機集積回路(OIC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機太陽電池(OSC)、染料増感性太陽電池(DSSC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(OFQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および「有機プラズモン発光素子」から選ばれるが、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、より好ましくは、燐光OLEDである。
【0091】
有機エレクトロルミッセンス素子は、カソード、アノードと少なくとも一つの発光層を含む。これらの層に加えて、有機エレクトロルミネセンス素子は、さらなる層、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層および/または電荷生成層を含んでもよい。たとえば、励起子ブロック機能を有する中間層を、2個の発光層の間に導入することも同様に可能である。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はないことが指摘されねばならない。ここで、有機エレクトロルミネセンス素子は、一つの発光層を含むことができ、または複数の発光層を含むこともできる。複数の発光層が存在する場合には、これらは、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、その結果全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発し得る種々の発光化合物が、発光層で使用される。特に好ましいものは、3個の発光層を有する構造であり、その3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 2005/011013参照。)。本発明による有機エレクトロルミッセンス素子は、タンデムOLED、特に、また、白色発光OLEDであってもよい。
【0092】
上記詳細な態様による本発明の化合物は、その正確な構造に応じて、種々の層に用いられることができる。好ましいものは、式(1)の化合物またはその好ましい態様を、発光層中で燐光のためのマトリックス材料として含む有機エレクトロルミネッセンス素子である。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一つの発光層を含むか、または複数の発光層を含んでもよく、ここで、少なくとも一つの発光層は、少なくとも一つの本発明による化合物をマトリックス材料として含む。
【0093】
本発明による化合物が、発光層中で、燐光化合物のためのマトリックス材料として用いられる場合には、好ましくは、一以上の燐光材料(三重項エミッター)と組み合わせて用いられる。本発明の意味での燐光発光は、比較的高いスピン多重度、すなわち、スピン状態>1の励起状態から、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスの意味で使用される。本出願の意味で、遷移金属もしくはランタノイドを含むすべてのルミネッセンス錯体、特に、すべてのイリジウム、白金および銅錯体が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0094】
本発明による化合物と発光化合物の混合物は、エミッターとマトリックス材料の全混合物を基礎として、本発明の化合物を、99〜1重量%、好ましくは、98〜10重量%、特に好ましくは、97〜60重量%、特に、95〜80重量%含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料の全混合物を基礎として、エミッターを1〜99重量%、好ましくは、2〜90重量%、特に好ましくは、3〜40重量%、特に、5〜20重量%含む。
【0095】
本発明のさらに好ましい1態様は、本発明による化合物の、さらなるマトリックス材料と組み合わせての燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用である。本発明による化合物が、さらなるマトリックス材料と組み合わせて用いられる場合には、その割合は、好ましくは、全混合物を基礎として20〜50重量%である。本発明による化合物と組み合わせて用いることのできる、適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680にしたがう芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527、WO 2008/086851もしくはWO 2013/041176に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、WO2010/136109、WO2011/000455 WO 2013/041176もしくはWO 2013/056776にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 2006/117052にしたがうアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2007/063754、WO 2008/056746、WO 2010/15306、WO 2011/057706、WO 2011/060859もしくはWO2011/060877にしたがうトリアジン誘導体、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2010/054729にしたがうジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、たとえば、WO 2011/042107、WO 2011/060867、WO 2011/088877およびWO 2012/143080にしたがう架橋カルバゾール誘導体、たとえば、WO 2012/048781にしたがうトリフェニレン誘導体である。通常のエミッターよりも、より短い波長で発光するさらなる燐光エミッターが、同様に、コホストとして混合物中に存在してもよく、または、あっても電荷輸送に顕著な程度に関与しない化合物(たとえば、WO 2010/108579に記載される)が存在してもよい。
【0096】
本発明による化合物と組み合わせてコマトリックス材料として特に適切なものは、広いバンドギャップを有し、それ自身発光層の電荷輸送に関与しないか、または少なくとも顕著でない程度にそうである化合物である。そのような材料は、好ましくは、純粋な炭化水素である。そのような材料の例は、たとえば、WO 2009/124627もしくはWO 2010/006680に見出せる。
【0097】
適切な燐光発光化合物(三重項エミッター)、特に、可視域で適切な励起により発光する化合物は、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子、特に、この原子番号を有する金属を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウムまたは白金を含む化合物である。
【0098】
上記記載のエミッターの例は、出願WO 00/70655、WO 2001/41512、WO 2002/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 2005/033244、WO 2005/019373、US2005/0258742、WO 2010/086089、WO 2011/044988、WO 2011/157339、WO2012/007086、WO 2012/163471、WO 2013/000531およびWO 2013/020631、WO 2014/008982、WO 2014/023377で明らかにされる。さらに、適切なものは、たとえば、未公開出願EP 12008582.4, EP 13003484.6、EP13003485.3、EP 13004552.9、EP 14000345.0およびEP 14000417.7に開示された金属錯体である。一般的には、燐光発光OLEDのために先行技術にしたがい使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切であり、当業者は発明性を行使することなく、更なる燐光発光化合物を使用することができよう。
【0099】
本発明による化合物は、たとえば、WO 98/24271、US 2011/0248247とUS 2012/0223633に記載されるとおり、有機エレクトロルミッセンス素子での燐光エミッターのためのマトリックス材料としても適している。これらの多色表示素子においては、追加的な青色発光層が、青色以外の色を有するものを含む全画素に全領域に亘り気相堆積により適用される。ここで、驚くべきことに、本発明による化合物は、赤色および/または緑色画素のためのマトリックス材料として用いられると、気相堆積された青色発光層と一緒に極めて良好な発光をもたらし続けることが見出された。
【0100】
本発明のさらなる1態様では、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、別々の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔ブロック層および/または電子輸送層を含まず、すなわち、WO 2005/053501に記載されるとおり、発光層は、正孔注入層もしくはアノードに直接隣接し、および/または発光層は、電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接する。さらに、たとえば、WO 2009/030981に記載されるとおり、発光層中の金属錯体と同一または類似する金属錯体を、発光層に直接隣接して、正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用することも可能である。
【0101】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子のさらなる層では、先行技術にしたがい通常用いられるすべての材料を使用することができる。したがって、当業者は、発明性を行使することなく、本発明による式(1)の化合物もしくはその上記示された好ましい態様と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス素子のために知られたすべての材料を用いることができる。
【0102】
更に好ましいのは、1以上の層が、昇華プロセスにより適用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子であり、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で気相堆積により適用される。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0103】
同様に好ましいのは、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)法もしくはキャリアガス昇華により被覆されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子であり、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。この方法の特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)法であり、材料はノズルにより直接適用され、そのように構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0104】
さらに、好ましいのは、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。たとえば、適切な置換により得られた可溶性の化合物が、この目的のために必要である。
【0105】
また、たとえば、一以上の層が溶液から適用され、一以上のさらなる層が気相堆積により適用されるハイブリッドプロセスも可能である。
【0106】
これらの方法は、当業者に一般的に知られており、本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を、発明性を行使することなく適用することができる。
【0107】
本発明による化合物と本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を凌駕する一以上の以下の驚くべき優位性により特徴付けられる。
【0108】
1.本発明による化合物は、燐光エミッターのためのマトリックス材料として用いられ、長い寿命をもたらす。
【0109】
2.本発明による化合物は、高い効率をもたらす。これは、特に、化合物が燐光エミッターのためのマトリックス材料として用いられる場合に、あてはまる。
【0110】
3.溶液から加工する場合、本発明による化合物は、良好な溶解性と高いガラス転移温度により特徴付けられる、極めて良好な膜形成特性を有する。
【0111】
これらの上記優位性は、その他の電子特性を損なうことはない。
【0112】
本発明は、次の例により詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、発明性を行使することなく、開示された範囲全体を実行し、本発明による化合物をさらに調製し、それらを電子素子で使用し、本発明によるプロセスを使用するために説明を使用することができるだろう。
【0113】
例:
合成例:
以下の合成を、別段の指定がない限り、無水溶媒中で保護ガス雰囲気下で実施する。溶媒及び試薬を、ALDRICHまたはABCRから購入することができる。市販されていない出発材料に対して与えられている番号は、対応するCAS番号である。
【0114】
例1a:N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-4-アミノビフェニルの合成
【0115】
【化17】
【0116】
24.0g(142ミリモル)の4-アミノビフェニル[92-67-1]と、32.0g(117ミリモル)の2-ブロモ-9,9’-ジメチルフルオレン[28320-31-2]を、最初に950mlのトルエンに導入する。混合物を激しく撹拌しながら、30分間、アルゴンでフラッシュする。1.0g(1.8ミリモル)の1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン[12150-46-8]と、355mg(1.6ミリモル)の酢酸パラジウム(II)と、28.8g(300ミリモル)のナトリウムtert-ブトキシドとを添加し、反応混合物を還流下で15時間加熱する。室温に冷ました後、反応混合物を300mlのトルエンと1200mlの水とで増す。有機相を分離させ、その度毎に250mlの水で三度洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。50mlの酢酸エチルを、残されたオイルへ添加し、混合物を800mlのヘプタン/酢酸エチル混合物(20:1)へゆっくりと撹拌する。形成された固形物を吸引濾過し、約50mlのヘプタンで二度洗浄し、真空で乾燥させると、29.2g(80ミリモル、理論値の69%)の生成物が残り、これはHPLCによる純度99%を有する。
【0117】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0118】
【化18】
【0119】
例2a:N-(ビフェニル-2-イル)-N-(ビフェニル-4-イル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニルアミンの合成
【0120】
【化19】
【0121】
33.8g(71ミリモル)のN-(ビフェニル-2-イル)-N-(ビフェニル-4-イル)-N-(4-ブロモフェニル)-アミン[1371651-92-1]と、21.9g(86ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボラン[73183-34-3]と、21.7g(221ミリモル)の酢酸カリウムと、1.7g(2.1ミリモル)の1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド/ジクロロメタン付加物[95464-26-4]とを還流下で、1000mlの無水ジオキサン中で16時間、加熱する。室温に冷ました後、有機相を750mlの酢酸エチルで増し、その度毎に300mlの水で三度洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させる。溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物をヘプタンから二度再結晶化させると、淡黄色の固形物として、22.6g(43ミリモル、理論値の61%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約99%を有する。
【0122】
例3a:2-(ビフェニル-3-イル)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンの合成
【0123】
【化20】
【0124】
11.6g(477ミリモル)のマグネシウムをヨウ素の粒を使用して活性化させる。800mlのTHF中、100g(429ミリモル)の3-ブロモフェニル[2113-57-7]の30mlの溶液を添加する;反応をヘアドライヤーを使用して開始させる。反応の開始後、残留する溶液を、還流が反応熱により維持される速度で滴下する。添加が完了したとき、反応混合物を還流下で、さらに2時間加熱する。
【0125】
79.1g(429ミリモル)の2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを最初に500mlのTHF中に導入し、−5℃まで冷却する。前述のグリニャール溶液を、内部温度が0℃を超えない速度で滴下する。冷却を除き、混合物を16時間撹拌し、その後、−5℃に再冷却し、219ml(438ミリモル)のフェニルマグネシウムクロリド溶液(THF中2M)を、内部温度が0℃を超えない速度で滴下する。冷却を除き、混合物をさらに18時間撹拌する。450mlの1M塩酸をゆっくりと撹拌して入れる。1時間後、形成された固形物を吸引濾過し、真空で乾燥させる。トルエンからの二度の再結晶化で、薄茶色の固形物として、52.9g(154ミリモル、理論値の36%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約98%を有する。
【0126】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0127】
【化21】
【0128】
例4a:10-(3-ブロモフェニル)-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロ-10-アザインデノ[2,1-b]フルオレンの合成
【0129】
【化22】
【0130】
150.0g(526ミリモル)の12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロ-10-アザインデノ[2,1-b]-フルオレン[1257220-47-5]と、184.0g(1.05モル)の1-ブロモ-3-フルオロベンゼン[1073-06-9]と、334.7g(1.58モル)のリン酸カリウムとを、最初に2lのジメチルアセトアミドに導入し、還流下で14時間、加熱する。室温に冷ました後、ロータリーエバポレーター中で可能な限り溶媒を除去すると、暗茶色のオイルが残る。フラスコの壁をガラスの棒で激しくこすった後、750mlのエタノール中でゆっくりと撹拌することにより、生成物を沈殿させることができる。形成された固形物を吸引濾過し、その度毎に250mlのエタノールで四度洗浄し、真空で乾燥させ、最後に約10−5mbarの圧力と220℃で昇華させると、黄色のガラス状の固形物として、152.2g(347ミリモル、理論値の66%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約99%を有する。
【0131】
例5a:(2-クロロフェニル)-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-4-イル)アミンの合成
【0132】
【化23】
【0133】
54.1g(137ミリモル)の4-ブロモスピロ-9,9’-ビフルオレン[1161009-88-6]と、17.9g(140ミリモル)の2-クロロアニリン[95-51-2]と、68.2g(710ミリモル)のナトリウムtert-ブトキシドと、613mg(2.7ミリモル)の酢酸パラジウム(II)と、3.03g(5.5ミリモル)の1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンとを最初に、1300mlのトルエンに導入し、還流下で5時間加熱する。室温に冷ました後、反応混合物を700mlのトルエンで増し、セライトを通して濾過する。溶媒をロータリーエバポレーター中で除去し、残留物をトルエン/ヘプタンの混合物(1:2)から再結晶化させる。真空で乾燥させると、淡黄色の固形物として、52.2g(118ミリモル、理論値の86%)の生成物が残る。
【0134】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0135】
【化24】
【0136】
例6a:1-(2-クロロフェニルアミン)フルオレン-9-オン
【0137】
【化25】
【0138】
52g(166ミリモル)の1-ヨードフルオレン-9-オン[52086-21-2]と、19.0ml(171ミリモル)の2-クロロアニリン[95-51-2]と、59.8g(432ミリモル)の炭酸カリウムと、3.85g(6.6ミリモル)の1,1’-(9,9-ジメチル-9H-キサンテン-4,5-ジイル)ビス(1,1-ジフェニル)ホスフィン[161265-03-8]と、746mg(3.3ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とを最初に、400mlのトルエンに導入し、還流下で15時間加熱する。室温に冷ました後、混合物を200mlのトルエンと500mlの水とで増し、有機相を分離させ、その度毎に200mlの3M塩酸で二度、その度毎に200mlの水で二度、洗浄し、酸化アルミニウム(塩基、活性度1)の薄層を通して濾過する。溶媒をロータリーエバポレーター中で除去する。真空で乾燥させると、オレンジ色の固形物として、48.0g(157ミリモル、理論値の95%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約97%を有する。
【0139】
例7a:スピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]-カルバゾール]の合成
【0140】
【化26】
【0141】
45.0g(102ミリモル)の(2-クロロフェニル)-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-4-イル)アミン(例5aから)と、56.0g(405ミリモル)の炭酸カリウムと、4.5g(12ミリモル)のトリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボラートと、1.38g(6ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とを、500mlのジメチルアセトアミド中に懸濁させ、還流下で6時間加熱する。室温に冷ました後、反応混合物を600mlのジクロロメタンと300mlの水とで増し、30分間撹拌する。有機相を分離させ、ロータリーエバポレーター中で溶媒を除去する。残留物を酸化アルミニウム(塩基、活性度1)のベッドを介して250mlの熱トルエンで抽出し、最後にトルエンから一度再結晶化させると、ベージュ色の固形物として、32.5g(80ミリモル、理論値の78%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約98%を有する。
【0142】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0143】
【化27】
【0144】
例8a:N-フェニルスピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]の合成
【0145】
【化28】
【0146】
43.0g(106ミリモル)のスピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール](例7aから)と、17.9g(114ミリモル)のブロモベンゼンと、30.5g(317ミリモル)のナトリウムtert-ブトキシドと、0.5g(2.2ミリモル)の酢酸パラジウム(II)と、4.2mlのトリ-tert-ブチルホスフィン溶液(トルエン中1M)とを最初に、1500mlのp−キシレンに導入し、還流下で16時間加熱する。室温に冷ました後、有機相を固体成分から分離させ、その度毎に200mlの水で三度洗浄し、その後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物を、酸化アルミニウム(塩基、活性度1)を介して約300mlの熱トルエンで抽出し、最後にトルエンから二度再結晶化させると、淡黄色の固形物として、37.6g(78ミリモル、理論値の74%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約99%を有する。
【0147】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0148】
【化29-1】
【0149】
【化29-2】
【0150】
【化29-3】
【0151】
例9a:N-(4’-ブロモスピロ-9,9’-ビフルオレン-4-イル)-N-(9,9’-ジメチルフルオレン-2-イル)-4-アミノビフェニルの合成
【0152】
【化30】
【0153】
200mlのTHF中、24.6g(79ミリモル)の2,2’-ジブロモビフェニル[13029-09-9]を、−78℃に冷却する。32mlのn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)を内部温度が−70℃を超えない速度で滴下する。反応混合物を2時間撹拌する。26.9g(50ミリモル)のN-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-(フルオレノン-4-イル)-4-アミノビフェニル(例8jから)の懸濁液を次いで、内部温度が−70℃を超えない速度で滴下する。冷却を除き、混合物をさらに14時間撹拌する。100mlの水を添加後、混合物を15分間撹拌し、有機相を分離させ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物を500mlの氷酢酸中で懸濁させ、0.5mlの濃硫酸を滴下し、混合物を100℃で2時間、撹拌する。室温に冷ました後、形成された固形物を吸引濾過し、約100mlの氷酢酸で洗浄し、その度毎に100mlのエタノールで三度洗浄し、最後にジオキサンから再結晶化させる。真空で乾燥させると、25.5g(34ミリモル、理論値の68%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約98%を有する。
【0154】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0155】
【化31】
【0156】
同じような方法で、以下の化合物を第1工程において、2-ブロモビフェニル[2052-07-5]のリチウム化により調製できる:
【0157】
【化32】
【0158】
例10a:N-フェニルスピロ[9H-フルオレン-6’-ブロモ-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]の合成
【0159】
【化33】
【0160】
85.2g(177ミリモル)のN-フェニルスピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール](例8aから)を最初に1500mlのTHFに導入する。反応混合物を0℃に冷やし、31.5g(177ミリモル)のN-ブロモ-スクシンイミドを30分間の間に小分けして添加する。冷却を除き、混合物を14時間撹拌し、その後約250mlに濃縮する。1000mlの水を激しく撹拌しながら添加し、形成された固形物を吸引濾過し、その度毎に800mlのエタノールで二度沸騰させることにより洗浄する。真空で乾燥させると、無色の固形物として、87.1g(155ミリモル、理論値の88%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約98%を有する。
【0161】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0162】
【化34-1】
【0163】
【化34-2】
【0164】
【化34-3】
【0165】
例11a:N-フェニルスピロ[9H-フルオレン-6’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]の合成
【0166】
【化35】
【0167】
46.0g(82ミリモル)のN-フェニルスピロ[9H-フルオレン-6’-ブロモ-9,7’(1’H)-インデノ-[1,2-a]カルバゾール](例10aから)と、21.9g(86ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボランと、64.4g(656ミリモル)の酢酸カリウムと、2.0g(2.4ミリモル)の1,1’-ビス-(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド/ジクロロメタン付加物[95464-26-4]とを1000mlのジオキサン中で、80℃の内部温度で22時間加熱する。室温に冷ました後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。700mlのジクロロメタンと1000mlの水とを残留物に添加し、混合物を30分間撹拌する。有機相を分離させ、その度毎に250mlの水で二度洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させ、約100mlに濃縮し、1000mlのヘプタンを撹拌して入れ、形成された固形物を吸引濾過する。真空で乾燥させると、薄茶色の固形物として、43.7g(72ミリモル、理論値の88%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約96%を有する。
【0168】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0169】
【化36】
【0170】
例12a:スピロ[9H-フルオレン-6’-(N-フェニルカルバゾール-3-イル)-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]の合成
【0171】
【化37】
【0172】
31.0g(64ミリモル)のスピロ[9H-フルオレン-6’-ブロモ-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール](例10bから)と、28.4g(76ミリモル)のN-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)カルバゾール[1126522-69-7]とを、最初に、250mlのトルエン、125mlのジオキサン、60mlの水の混合物に導入し、アルゴンで30分間フラッシュする。32.4g(141ミリモル)のリン酸三カリウム一水和物[27176-10-9]と、359mg(1.6ミリモル)の酢酸パラジウム(II)と、974mg(3.2ミリモル)のトリ-o-トリル-ホスフィンとを添加後、反応混合物を還流下で18時間加熱する。室温に冷ました後、混合物を500mlの水で増す。有機相を分離させ、その度毎に250mlの水で二度洗浄し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残留物を150mlのヘプタンでスラリー状にし、形成された固形物を吸引濾過する。後者を、酸化アルミニウム(塩基、活性度1)を通して、約250mlの熱シクロヘキサンで抽出する;必要ならば、抽出溶液を約3分の1に減少させる。形成された固形物を吸引濾過し、真空で乾燥させると、ベージュ色の固形物として、21.7g(34ミリモル、理論値の53%)の生成物が残り、これはH-NMRによる純度約99%を有する。
【0173】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0174】
【化38-1】
【0175】
【化38-2】
【0176】
同じような方法で、以下の化合物を、対応する臭素と、12,12-ジメチル-10-フェニル-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-10,12-ジヒドロ-10-アザインデノ[2,1-b]フルオレン(例11cから)との反応によって調製できる:
【0177】
【化39】
【0178】
同じような方法で、以下の化合物を、対応する臭素と、N-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)カルバゾール[1126522-69-7]との反応によって調製できる:
【0179】
【化40】
【0180】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0181】
【化41】
【0182】
例13a:12’-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-フェニル]-3’-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)スピロ[フルオレン-9,7’-インデノ[1,2-a]-カルバゾール]の合成
【0183】
【化42】
【0184】
21.7g(34ミリモル)の3-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)スピロ[12H-インデノ[1,2-a]カルバゾール-7,9’-フルオレン](例12aから)と、13.2g(34ミリモル)の2-(3-ブロモフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン[1233200-57-1]とを最初に280mlのトルエンに導入し、アルゴンで30分間フラッシュする。175mg(0.3ミリモル)のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)と、250mg(0.6ミリモル)のジシクロヘキシル(2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル)ホスフィンと、4.4g(46ミリモル)のナトリウムtert-ブトキシドとを添加後、反応混合物を還流下で45時間加熱する。室温に冷ました後、350mlの水を撹拌して入れ、有機相を分離させ、溶媒を除去する。残留物をトルエンに取込み、次いで、三倍量のヘプタンを撹拌して入れ、形成された固形物を吸引濾過し、トルエンから一度再結晶化させる。最後に、生成物を、トルエン/ヘプタンの溶離剤混合物(2:1)とともにシリカゲルを通してカラムクロマトグラフィーにより精製する。真空で乾燥させると、淡黄色の固形物として10.8g(12ミリモル、理論値の36%)の生成物が残り、これはHPLCによる純度99.8%を有する。
【0185】
同じような方法で、以下の化合物も調製できる:
【0186】
【化43】
【0187】
例14a:12’-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3’-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)スピロ[フルオレン-9,7’-インデノ[1,2-a]-カルバゾール]の合成
【0188】
【化44】
【0189】
300mlのジメチルホルムアミド中、67.9g(105ミリモル)の3-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)スピロ[12H-インデノ[1,2-a]カルバゾール-7,9’-フルオレン](例12a)の溶液を激しく撹拌しながら、300mlのジメチルホルムアミド中4.2gの水酸化ナトリウム(鉱油中60%、105ミリモル)の溶液へ滴下し、混合物を2時間撹拌する。200mlのTHF中、30.0g(112ミリモル)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン[3842-55-5]の溶液を次いで、ゆっくりと滴下し、混合物を18時間撹拌し、その後、約150gの氷へ注ぐ。有機相を250mlのトルエンで増し、分離させ、100mlの水で二度洗浄し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。残された残留物を酸化アルミニウム(塩基、活性度1)を通して、熱トルエンで抽出し、形成された懸濁液から溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残された残留物を、ヘプタン/THFの溶離剤混合物(4:1)とともにシリカゲルを通してカラムクロマトグラフィーにより精製する。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、180℃および約10−5mbarの圧力で5時間残留物を加熱すると、無色の固形物として、31.5g(33ミリモル、理論値の31%)の生成物が残り、これはHPLCによる純度99.9%を有する。
【0190】
同じような方法で、以下の化合物を調製できる:
【0191】
【化45-1】
【0192】
【化45-2】
【0193】
【化45-3】
【0194】
【化45-4】
【0195】
【化45-5】
【0196】
【化45-6】
【0197】
【化45-7】
【0198】
例AV2およびAV4
比較例AV2およびAV4をDE 102008017591に記載の方法によって調製できる。
【0199】
例AV6
比較例AV6をWO 2011/132683に記載の方法によって調製できる。
【0200】
素子例:
素子例1:溶液処理されたOLEDの製造
本発明による材料を溶液から処理することができ、真空処理されたOLEDと比較すると、製造が著しくより簡単であるにもかかわらず良好な特性を有するOLEDが得られる。たとえば比較材料12mと14o(表2)とは、15mg/mlの濃度でトルエンに溶解されることができず、他方でこのことは本発明による材料14a、14g、13b、14e(表1)で容易に可能である。
【0201】
材料において、トルエン中15mg/mlの溶解度が生じるか否かを検査するため、以下の方法が行われる:30mgの材料が最初に、試料の小瓶に固形物として導入される。2mlのトルエンを室温で添加する。小瓶を密封し、内容物を60℃で、加熱可能な磁気撹拌機で1時間撹拌する。良好な熱的接触が、小瓶が的確に適合する孔を有しているアルミニウムブロック手段により確実にされる。1時間後、小瓶を撤去し、室温までさましておく。比較的大きい粒子のないクリアな溶液が、次いで小瓶に存在し、よって少なくとも15mg/mlの材料がトルエン中で溶解可能である。
【0202】
さらに、本発明によるマトリックス材料の、より高いガラス転移温度は昇温での加熱による乾燥を可能にし、よって、比較材料12mと14oよりも大きい処理ウインドウを与える。
【0203】
【表1】
【0204】
完全に溶液ベースのOLEDの製造は、既に何度も文献(たとえば、WO 2004/037887)に記載されている。真空ベースのOLEDの製造も、同じように既に何度も文献(とくにWO 2004/058911)に記載されている。以下説明する例では、溶液ベースおよび真空ベースで適用される層は、OLED内で組み合わされ、よって、発光層を含めこれまでの処理が、溶液から実施され、引き続く層(正孔ブロック層と電子輸送層)の処理が真空から実施される。前述した一般的な方法はこの目的で、ここに記載される状況(層の厚さの変化、材料)に適合され、以下のように組み合わせられる:
構造は以下のとおりである:
−基板
−ITO(50nm)
−PEDOT:PSS(緑色または赤色の素子ではそれぞれ、20または60nm)
−正孔輸送層(HTL)(20nm)
−発光層(EML)(60nm)
−正孔ブロック層(HBL)(10nm)
−電子輸送層(ETL)(40nm)
−カソード。
【0205】
使用する基板は、厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板である。改善された加工のために、これらはPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン):ポリスチレン・スルホン酸(Heraeus Precious Metals GmbH & Co. KG、独国から購入)で被覆される。PEDOT:PSSは、空気中の水からのスピンコートにより適用され、その後、空気中で180℃で10分間の加熱により乾燥され、残留水を除去する。中間層および発光層がこれらの被覆されたガラス板に適用される。使用する正孔輸送層は架橋可能である。WO2010/097155にしたがって合成することのできる、以下に示す構造のポリマーを使用する。
【0206】
【化46】
【0207】
正孔輸送ポリマーをトルエンに溶解させる。ここでのように、素子の典型的な層厚20nmがスピンコートにより実現されるならば、このような溶液の典型的な固形分含有量は、約5g/lである。層はスピンコートによって、不活性ガス雰囲気中、本願の場合ではアルゴン中で適用され、180℃で60分間の加熱により乾燥させる。
【0208】
発光層は常に、少なくとも一種のマトリックス材料(ホスト材料)と発光ドーパント(エミッター)からなる。さらに、複数のマトリックス材料と共ドーパントとの混合物が生じ得る。TMM−A(92%):ドーパント(8%)のような表現はここでは、材料TMM−Aが発光層中で92重量%の割合で存在し、ドーパントが発光層中で8重量%の割合で存在することを意味している。発光層の混合物はトルエン中に、または随意にクロロベンゼン中に溶解されている。ここでのように、素子の典型的な層厚60nmがスピンコートにより実現されるならば、このような溶液の典型的な固形分含有量は約18g/lである。層は不活性ガス雰囲気中、本願の場合ではアルゴン中で、スピンコートによって適用され、160℃で10分間の加熱により乾燥させる。使用するマトリックス材料を表2に示し、これらは本発明の化合物と、比較例の化合物の両者である。
【0209】
【表2-1】
【0210】
【表2-2】
【0211】
【表2-3】
【0212】
【表2-4】
【0213】
【表2-5】
【0214】
本願で使用するドーパントを表3に示す。
【0215】
【表3】
【0216】
正孔ブロック層と電子輸送層の材料は、真空チャンバ中での熱気相堆積により適用される。電子輸送層はここでは、たとえば、1よりも多数の材料からなることができ、これらの材料は共蒸発によって、ある重量の割合で相互に混合されている。ETM1:ETM2(50%:50%)のような表現はここでは、材料ETM1とETM2がそれぞれ50重量%の割合で層に存在することを意味している。本願の場合で使用する材料を表4に示す。
【0217】
【表4】
【0218】
カソードを厚さ100nmのアルミニウム層の熱気相堆積により形成する。OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト発光特性を仮定して、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)ならびに(動作)寿命が測定される。IUL特性線は、駆動電圧(Vで表示)、ある輝度の外部量子効率(%で表示)のような、固有値を測定するために使用される。8000cd/mにおけるLT80は、OLEDが8000cd/mの初期輝度から初期強度の80%、すなわち6400cd/mに低下するまでの寿命である。対応して、10000cd/mにおけるLT80は、OLEDが10000cd/mの初期輝度から初期強度の80%、すなわち8000cd/mに低下するまでの寿命である。
【0219】
EMLが、(表2と表3による)TMM−Aと、TMM−Bと、ドーパントDとからなるOLEDのデータを表5に示す。ETM−1は、HBLとして使用され、ETM1:ETM2(50%:50%)はETLとして使用される。
【0220】
【表5-1】
【0221】
【表5-2】
【0222】
EMLが、(表2と表3による)TMM−Aと、TMM−Bと、共ドーパントD1と、ドーパントDとからなるOLEDのデータを表6に示す。ETM−1は、ここではHBLとして使用され、ETM1:ETM2(50%:50%)はETLとして使用される。
【0223】
【表6】
【0224】
素子例2:真空処理されたOLEDの製造
本発明の材料の多くは真空気相堆積によっても適用される。以下説明する例では、単独で、真空ベースで適用された層が使用される。前述の一般的方法は、この目的で、ここで記載された状況(層厚の変化、材料)に適合させる。OLEDは基本的に、次の層構造を有する:基板/正孔輸送層(HTL)/随意に、中間層(IL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔ブロック層(HBL)/電子輸送層(ETL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な構造と得られた結果とを、表8に示す。OLEDの製造のために必要とされる補助材料を表7に示す;本発明の材料と比較材料とを表2に示す。
【0225】
【表7】
【0226】
【表8】
【0227】
【表9】