特許第6556790号(P6556790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556790製紙用の繊維を酵素処理する方法及び組成物、並びにそれにより作製された紙製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556790
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】製紙用の繊維を酵素処理する方法及び組成物、並びにそれにより作製された紙製品
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/00 20060101AFI20190729BHJP
   D21C 9/08 20060101ALI20190729BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   D21C5/00
   D21C9/08
   C12N9/24
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-151374(P2017-151374)
(22)【出願日】2017年8月4日
(62)【分割の表示】特願2014-539031(P2014-539031)の分割
【原出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-9279(P2018-9279A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/552,007
(32)【優先日】2011年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518022813
【氏名又は名称】バックマン ラボラトリーズ インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント,スティーヴン ディ.
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,ケヴィン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジェンシー,バーナード
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,シャンドン
(72)【発明者】
【氏名】フークストラ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グローバー,ダニエル イー.
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−506127(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/035972(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/269989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質の酵素分解を増進する方法であって、
親水性親油性バランス(HLB)が少なくとも17である少なくとも1つの非イオン性高分子界面活性剤を基質組成物に添加することと、
セルラーゼ、キシラナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ又はそれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの酵素を前記基質組成物に添加することと、
分解産物を形成するように、前記基質組成物を前記非イオン性高分子界面活性剤及び前記酵素の存在下で分解することと、
を含む、方法であって、
該非イオン性高分子界面活性剤は、HLBが22〜30であり、PEO−PPO−PEO型のブロック共重合体であり、
該酵素及び該非イオン性高分子界面活性剤が、20〜80重量%:2〜8重量%という酵素対非イオン性高分子界面活性剤の重量比で存在する、方法。
【請求項2】
前記非イオン性高分子界面活性剤の存在下での前記酵素の酵素活性が、該酵素単独での酵素活性よりも少なくとも10%高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分解を約5℃〜約80℃の温度で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非イオン性高分子界面活性剤及び前記酵素を、任意の順序で30分以内の間隔で順次添加する、請求項1〜3のいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記非イオン性高分子界面活性剤の平均分子量が約12000ダルトン〜約17000ダルトンである、請求項1〜4のいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記非イオン性高分子界面活性剤が、プロニックRP-108である、請求項1〜5のいずれか一に記載の方法
【請求項7】
前記基質組成物が製紙用パルプ、製紙工場スラッジ又は動物の皮を含む、請求項1〜6のいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記分解産物を脱水することを更に含む、請求項1〜7のいずれか一に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙システムにおいて繊維の漂白を妨げる有機汚染物質を制御する方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、漂白妨害有機汚染物質を繊維から遊離させるように、その任意の漂白前に繊維を少なくとも1つのヘミセルロース分解酵素と少なくとも1つの有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物と接触させることを含む、かかる有機汚染物質を制御する方法及び該方法に有用な組成物に関する。本発明は、これらの組成物で処理した繊維材料で作製された紙製品にも関する。本発明は、様々な状況で酵素の酵素活性を増進する方法に更に関する。
【0002】
本願は、2011年10月27日付けで出願された先の米国仮特許出願第61/552,007号(その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
繊維状のリグノセルロース材料は、紙及び他の紙製品の製造に使用される原材料として商業的に広く利用されている。製紙においては、木質繊維を通常は他の添加剤と組み合わせることによって処理した後、紙又は他の繊維性材料の薄いシートを構成し得る木質繊維のネットワークへと繊維を加工する。様々な紙及び紙製品が販売前に脱色、すなわち白色化又は増白される。脱色した紙製品の製造は、通常はパルプ化、漂白及び製紙のプロセス段階を含む。強靭かつ漂白可能な製紙用繊維を生産するために、木材又はパルプ繊維を通常はリグニンを除去するように処理するが、一般に、この処理の初期部分は蒸解釜内、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウム(クラフトパルプを生産する)又は亜硫酸塩、通常は亜硫酸ナトリウム若しくは亜硫酸マグネシウム(亜硫酸パルプを生産する)等の化学物質の存在下で行われ、それにより化学パルプが生産される。リグニンの除去は脱リグニンと称される。木材パルプのリグニン含量は、通常はパルプ製紙業界技術協会(TAPPI)の標準方法に従う過マンガン酸塩酸化試験によって測定することができ、カッパー価として報告することができる。蒸解釜の化学パルプは、相当量の残留リグニンをこの段階で依然として含有するが、場合によっては更に精製することなく工作用紙又は包装用紙の作製に好適である。例えば印刷用紙、筆記用紙及びトイレットペーパーの製造等の大半の用途については、パルプの色は通常過度に濃く、製紙前に漂白によって明るくしなければならない。紙製品の明度は主に製紙前に供給されるパルプの明度によって決まる。紙の明度を或る程度変更することができる紙料調製の幾つかの改良、例えば充填剤、サイジング、白色化剤、染料(dyeing)等が存在する。しかしながら、パルプの明度は多くの場合、パルプに由来する紙製品において最終的に得ることができる紙の明度の主要要因であるか、又はそれを限定する。
【0004】
非漂白パルプは広範囲の明度値を示し得る。概して、リグニン上の発色団がパルプの色に主に関与することが理解される。例えば、非特許文献1(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい。重金属イオン(例えば鉄、銅)も、リグニンのフェノール基と着色錯体を形成することが知られている。抽出材料も樹脂性木材から作製される機械パルプの色に寄与し得る。より持続的な白色化効果を有する高品質の安定な製紙用パルプを生産するために、パルプを脱色する漂白方法が使用されている。しかしながら、特定のレベルの脱色を得るのに大量の漂白剤を使用することは望ましくないことが多い。
【0005】
パルプを漂白する従来の方法では、複数の段階又は工程を含み、段階間に洗浄を行う又は行わない様々な多段階漂白手順が使用されている。従来、漂白手順は様々な形での塩素及び塩素含有化合物の使用に基づくものであった。使用されている塩素含有化合物の一部は、業界で使用される省略表現で「C」と表される塩素、「D」と表される二酸化塩素、及び「H」と表される次亜塩素酸塩、通常は次亜塩素酸ナトリウムである。二酸化塩素と混合した又は混合していない塩素が一般に化学パルプの漂白に採用されており、塩素処理パルプの水性アルカリ媒体中でのアルカリ(苛性)抽出(「E」と表される)が続いて行われ、合わせてC−Eと表される。酸素、次亜塩素酸塩、又は過酸化物等の酸素発生体も、アルカリ抽出段階と組み合わせた漂白段階又はその両方に漂白剤として使用されている。洗浄装置が漂白段階後及び酸化段階と抽出段階との間に使用されている。従来の漂白システム及びそのプロセス設計に関する付加的な情報は、例えば先述の非特許文献1の引用部に示されている。
【0006】
酵素も、リグノセルロース材料を分解する木質繊維の処理への使用について研究されている。紙製品の作製に使用される木質繊維としては、通常はセルロース、ヘミセルロース及びリグニンが挙げられる。木質繊維中に存在するこれら3つの構成要素の量は繊維の供給源によって決まり、繊維で作製された紙製品中のその量は用いられる製造プロセスによって更に決まり得る。植物細胞壁の接着は主にその主成分である結晶性重合体、セルロース及び3次元高分子、リグノセルロース材料を含むリグニンの存在に起因する。これらの成分は、様々な性質のペクチン多糖及びヘミセルロース多糖のマトリックスに埋め込まれている。概して、これらの異なる重合体間に存在する関係は異なる化学的性質の結合によって確立されることが認められている。例えば、リグニンのブロックは、ヘミセルロース鎖によって結合する。リグノセルロース材料の別の主成分であるヘミセルロースは、大部分がD−キシロースのβ−1,4結合重合体(本明細書でキシランと称される)を含む4−O−メチルグルクロノキシランからなる。概して、広葉樹パルプは針葉樹パルプよりも多量のキシランを含有する。かかるキシランは、エンド−キシラナーゼ、β−1,4−D−キシランキシラノヒドロラーゼ(EC 3.2.1.8と表される)、及びキシロシダーゼ、β−1,4−D−キシロヒドロラーゼによってキシロースへと酵素的に加水分解することができる。キシラナーゼ自体は、紙パルプ工業で化学漂白前のパルプの前処理におけるキシラン分解について言及されている。例えば、非特許文献2を参照されたい。さらに、非処理木材も概して、通常は柔細胞内及び繊維の表面上に位置する幾らかの量のピッチを含有する。エチルエーテル値での溶解度に基づいて、ピッチは例えば、非抽出(オーブン乾燥)木材の全重量ベースで約0.7重量パーセント〜約2.4重量パーセントのブナ及びシラカバ等の広葉樹と、約0.7重量パーセント〜約4.3重量パーセントのカナダツガ及びバンクスマツ等の針葉樹とを含み得る。ピッチ沈着制御のためのセルローススラリーへのリパーゼ及びカチオン性重合体の添加が言及されている。例えば、特許文献1(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい。
【0007】
本発明者らは、木質繊維の漂白を妨げる構成要素を、前処理組成物の個々の成分の効果からは予測されない形で、漂白により得られるパルプの明度を増大させることができる薬剤の組合せによる漂白前の繊維の前処理によって制御する必要性を認識している。
【0008】
酵素は製紙、皮革調製、廃棄物処理、及び燃料へのバイオマスの加工等の多くの産業プロセスにおいて重要な要素である。酵素は化学反応の速度を相当に増加することができるが、酵素の最適化を実現する適切な条件を見出すことが困難であることが分かっている。結果として、酵素を使用する場合、準最適な酵素活性をもたらすようにしか使用されない。この効率の悪さは、付加的な、多くの場合コストの高い酵素の使用、並びにより長い生産時間及び付加的なエネルギー入力の必要性をもたらす。したがって、より効率的かつコスト効率のよいプロセスをもたらすのに酵素の活性を増進する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,256,252号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G.A. Smook, Handbook For Pulp And Paper Technologists, Chapter 11:Bleaching, 163-164, Tappi Pr. (1992)
【非特許文献2】F.I.J. Pastor et al., "Xylanases: Molecular Properties AndApplications," Industrial Enzymes, 65-67, 74-79, 2007
【発明の概要】
【0011】
本発明の特徴は、製紙システムにおいて繊維の漂白を妨げ、及び/又は他の障害(複数の場合もあり)を引き起こす可能性があるキシラン、ピッチ及び/又は他の繊維成分を含む有機汚染物質を制御する方法を提供することである。
【0012】
本発明の付加的な特徴は、有機汚染物質を繊維から遊離させるように、漂白前に繊維をヘミセルロース分解酵素と有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物と接触させることを含む、かかる漂白妨害有機汚染物質を制御する方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の特徴は、製紙システムにおける繊維漂白前の繊維の前処理に有用なヘミセルロース分解酵素と有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物を提供することである。
【0014】
本発明の更なる特徴は、指定の方法において指定の組成物を使用して生産される紙製品を提供することである。
【0015】
本発明の更に別の特徴は、酵素活性を高め、使用する酵素の減少によりコスト削減を実現させる高分子界面活性剤を使用した1つ又は複数の酵素の酵素活性を増進する方法を提供することである。
【0016】
本発明の特徴は、例えばその分解のために基質組成物に共に適用することができる酵素と高分子界面活性剤とを含有する配合物であって、高分子界面活性剤が酵素の活性を顕著に増大させる、配合物を提供することでもある。
【0017】
本発明の付加的な特徴は、酵素及び高分子界面活性剤の存在下で基質組成物を分解するより良好なシステムであって、酵素が基質へとより良好に浸透するのを可能にする、システムを提供することである。
【0018】
本発明の付加的な特徴及び利点は以下の記載に一部説明され、本明細書から一部明らかであり、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される要素及び組合せを用いて実現及び達成される。
【0019】
これら及び他の利点を達成するには、本明細書に具体化され、広く記載される本発明の目的によると、本発明は、製紙システムにおいて繊維の漂白を妨げ、及び/又は他の障害(複数の場合もあり)を引き起こす有機汚染物質を制御する方法に一部関する。該方法は、有機汚染物質が繊維から、繊維を有機汚染物質除去補助剤なしに組成物と接触させた場合よりも多量に遊離する処理繊維が得られるように、任意の漂白工程前に、繊維を少なくとも1つのヘミセルロース分解酵素と少なくとも1つの有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物と接触させることと、続いて処理繊維を漂白することとを含む。組成物による繊維の処理によって遊離する妨害有機汚染物質は、1つ若しくは複数のキシラン、1つ若しくは複数のピッチ成分又はその両方を含み得る。選択肢としては、方法の接触工程によって、接触の前に繊維中に存在する全キシラン及びピッチ成分の少なくとも50重量%が除去される。選択肢としては、有機汚染物質除去補助剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。別の選択肢としては、非イオン性界面活性剤はポロキサマー、例えばHLB値が16以上のポロキサマーであってもよい。ヘミセルロース分解酵素はキシラナーゼ、マンナナーゼ又はその両方であり得る。組成物は脂肪分解酵素を更に含み得る。組成物は、乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約100g〜約1000gの上記ヘミセルロース分解酵素、及び乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約2g〜約100gの上記有機汚染物質除去補助剤をもたらす量で導入することができる。本発明の目的上、別に指定のない限り、全体を通して「トン」への言及はメートルトン(1000kg)を指すものである。選択肢としては、漂白繊維を紙製品の形にすることができ、紙製品のISO明度は、有機汚染物質除去補助剤が前処理組成物に含まれない同じ方法を用いて製造される紙製品よりも約0.5単位〜約1.0単位高いものであり得る。
【0020】
本発明は、少なくとも1つのヘミセルロース分解酵素と、繊維から1つ若しくは複数のキシラン、1つ若しくは複数のピッチ成分又はその両方を含む有機汚染物質を繊維から、繊維を、有機汚染物質除去補助剤を含まない同じ組成物と接触させた場合よりも多量に除去することが可能な少なくとも1つの有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物にも関する。有機汚染物質除去補助剤は指定の材料を含み得る。組成物は、組成物の全固体重量ベースで約10重量%〜約90重量%のヘミセルロース分解酵素と、約1重量%〜約10重量%の有機汚染物質除去補助剤とを含み得る。
【0021】
本発明は、本発明の紙形成方法によって形成される紙製品に更に関する。
【0022】
本発明は、基質の酵素分解を増進する方法にも関する。該方法は、基質の分解のために少なくとも1つの高分子界面活性剤及び少なくとも1つの酵素を組成物に添加することを含み得る。組成物は例えば、製紙用パルプ、製紙工場スラッジ、動物の皮、他の材料等を含有し得る。例えば非イオン性高分子界面活性剤を使用することができる。高分子界面活性剤は、第1級ヒドロキシル基で終端するPEO−PPO−PEO型の少なくとも1つの非イオン性ブロック共重合体を含み得る。非イオン性高分子界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)値は少なくとも17であり得る。非イオン性高分子界面活性剤は、HLB値が少なくとも20のプロポキシル化ブロック共重合体を含み得る。酵素は例えば、セルラーゼ、キシラナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ又はそれらの任意の組合せを含み得る。基質組成物を高分子界面活性剤及び酵素の存在下で分解して分解産物を形成することができ、分解産物を任意で脱水することができる。
【0023】
本発明は、記載の方法を行うシステム及び該方法に使用される酵素と高分子界面活性剤とを含有する配合物に更に関する。本発明は、例えば米国特許出願公開第2011/0300587号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載の成分、組成物、方法、工程及び/又はシステムに従って又はそれらを使用して実施することができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「汚染物質」は、製紙システムにおける加工により及び/又はその結果として負の又は有害な障害を引き起こす可能性がある繊維と一緒の及び/又は繊維上の成分、及び/又は繊維の成分を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヘミセルロース分解酵素」は、ヘミセルロースの加水分解を引き起こす酵素を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ピッチ」は、脂肪酸とグリセロールとのエステル(トリグリセリド等)、並びに他の脂肪、脂肪酸、ステロール及びろうを含む木質繊維中の低分子量及び中間分子量の様々な天然の疎水性の有機樹脂を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「非イオン性界面活性剤」は、液体の表面張力、2つの液体間の界面張力又は液体と固体との間の界面張力を低下させることができる、両親媒性であり、その末端基のいずれにも荷電基を有しない有機化合物である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポロキサマー」は、両側に親水性ポリアルキレンオキシドブロックが隣接した疎水性ポリアルキレンオキシドブロックの中央ブロックを含む非イオン性トリブロック共重合体を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「漂白」はパルプの脱色を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「明度」は特定の条件下で紙によって光が反射される程度の尺度であり、通常は光が反射される程度のパーセンテージとして報告される。このため、より高い明度値は概してより明るい又は白色の紙を表し、反対により低い明度値はより明るくない又は白色でない紙を表す。ISO標準又はTAPPI T 452若しくはT 525標準を、明度の尺度として使用することができる。パルプを、製紙業における慣例に従ってその明度の決定用のハンドシートの形にすることができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、パルプ又は紙の「白色度」は、紙が可視スペクトル全体にわたる全波長の光を拡散反射する程度、すなわち全波長範囲の光の反射率として測定されるスペクトル反射の大きさ及び均一性を指す。白色度の測定に関する手技上の標準はISO 11475に説明される。CIE L比色分析スケール値のL(輝度)値も、パルプ又は紙の相対白色度を示すために本明細書で使用され得る。黒色のLはゼロであり、より高いL値はより高い白色度を示す。a値は赤色度から緑色度に関し、b値は黄色度から青色度に関する。パルプを、その白色度の決定用のハンドシートの形にすることもできる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「遊離する」とは、例えば加水分解の分解生成物の形態での、無傷の分子残留物としての、又は他の放出形態としての繊維からの特定の汚染物質(単数又は複数)の放出を引き起こす、繊維と接触した組成物の活性を指し、繊維中の汚染物質(単数又は複数)の含量が処理によって低減する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「カッパー価」又は「カッパー指数」は、セルロース繊維中に残存する残留リグニン含量の尺度である。カッパー価は、ISO 302によってパルプについて決定することができる。リグニンの存在は、繊維を所望の点まで明るくするために、より多量の酸化剤(環境及びコストの問題)が生じることを必要とする。
【0034】
上記の一般的記述及び以下の詳細な記述は両方とも例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求されるような本発明の更なる説明を与えることを意図しているにすぎないことを理解すべきである。
【0035】
引用することにより本願の一部をなす添付の図面は、本発明の幾つかの実施形態を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願の一実施例による方法を示すプロセスフローチャートである。
図2】本願の一実施例による組成物に使用することができるポロキサマーの構造を示す図である。
図3】漂白プロセス前の木質繊維パルプの前処理に使用した種々の添加剤を含有する種々の組成物又は含有しない組成物(対照)、並びにパルプを本願の実施例によるキシラナーゼと非イオン性界面活性剤とを含有する組成物(「XylA+Surf」、「XylB+Surf」)で処理し、他の比較用パルプをキシラナーゼ単独(「XylA」、「XylB」)、又は市販の酵素複合体(「LBL CONC」)で前処理し、又は酵素若しくは界面活性剤の添加剤で処理しなかった(対照)場合の、塩素漂白段階D及び抽出段階Ep後にパルプについて決定した明度(%ISO)、明度の増大及びCIE Lスケール値を示すデータの表である。
図4図3に示されるパルプ繊維サンプルのパルプ繊維加工の漂白段階(Do)及びアルカリ抽出段階(Ep)後の明度(%ISO)を示す棒グラフである。
図5】明度の増大の値をキシラナーゼ又は界面活性剤で処理しなかった対照サンプルの明度値との比較によって決定した、図3及び図4に示される種々の組成物で処理したパルプ繊維サンプルのEp明度の増大を示す棒グラフである。
図6】本願の一実施例によるパルプ繊維サンプルに対して行った漂白段階及びアルカリ抽出段階前の酵素及び界面活性剤による処理後のパルプ繊維、又は前処理なしのパルプ繊維(対照)のカッパー指数(K)を示す棒グラフである。
図7】本願の一実施例による前処理並びに漂白段階及びアルカリ抽出段階後の図6に示される実施例のパルプ繊維サンプル、又は前処理なしの繊維サンプル(対照)のワイヤ面及びフェルト面での明度(%ISO)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、不要な材料を除去することによってパルプの品質を改善することができる酵素処理及びそのための組成物を提供し、これらの酵素活性は本明細書に記載されるような非イオン性界面活性剤の使用によって予想外に増進する。本発明の組成物の効果は、例えばi)ヘミセルラーゼを使用することによる色素(color bodies)を保持するキシラン/ヘミセルロースの除去、ii)リパーゼ若しくはエステラーゼを使用することによる汚点を引き起こし、沈着を引き起こすピッチの除去、及び/又はiii)本発明の組成物の他の効果による多くの他の酵素の活性及び有効性の改善を含み得る。
【0038】
本発明は、漂白前の繊維からのキシラン及びピッチ成分等の漂白妨害物質及び/又は他の妨害物質の遊離及び除去を増進する、漂白前の繊維に対する前処理に有用な組成物を提供する。キシランは例えば製紙システムにおいて漂白を妨害し、及び/又は他の障害を引き起こし得る。ピッチは例えばパルプ品質を損ない、又は製紙システムにおいて生産効率を妨害し、及び/又は他の障害を引き起こし得る。組成物は、成分の個々の効果から予測又は期待されるよりも大きい、繊維からの漂白妨害汚染物質の除去能力を組合せで示す、ヘミセルロース分解酵素と有機汚染物質除去補助剤とを含有し得る。さらに、本発明の指定の組成物による漂白前の木質繊維の前処理は、漂白によって得られるパルプ及び紙の明度、白色度又はその両方を、個々の成分の効果からは予測されない大きさで増大させることができる。さらに、本発明の指定の組成物による木質繊維の前処理は、組成物で処理していないパルプと比較して、漂白前の処理パルプのカッパー価を低減することができる。本発明者らは、使用される所与の量の漂白剤の漂白を増大させることができる、又は代替的には、より少ない漂白剤量及び関連コストで同様のレベルの漂白をもたらすことができる、漂白前の木質繊維の前処理の必要性を更に認識し、解決した。漂白前の木質繊維の前処理に使用される組成物中の有機汚染物質除去補助剤とヘミセルロース分解酵素との組合せは、酵素のみを含有する組成物での前処理によって遊離する(freed)量と比較して、木質繊維からのキシラン及び/又はピッチ等の遊離(分離)及び除去を少なくとも約5重量%、若しくは少なくとも(atleast)約10重量%、若しくは少なくとも約20重量%、若しくは少なくとも約30重量%、若しくは少なくとも約40重量%、若しくは少なくとも約50重量%、若しくはそれ以上の量で、又は約5%〜約90%、若しくは約10重量%〜約85重量%、若しくは約20重量%〜約80重量%、若しくは約30重量%〜約70重量%、若しくは他の量で増大させることができる。したがって、選択肢としては、本発明は、特定のパルプ明度を得るのに必要な酸化剤量(例えば塩素量)を節約し、要求及び使用される繊維漂白剤の量及びコストを低減し得る漂白向上組成物を提供することができる。
【0039】
本発明によると、基質の酵素分解を増進する方法が提供される。該方法は、高分子界面活性剤を酵素組成物に添加することであって、それにより基質の分解における酵素の有効性を増大させることを含み得る。任意の所望の基質又は基質組成物、例えば製紙用パルプ、製紙工場スラッジ、動物の皮等を処理することができる。任意の好適な高分子界面活性剤、例えば非イオン性高分子界面活性剤を使用することができる。高分子界面活性剤は、例えば第1級ヒドロキシル基で終端するPEO−PPO−PEO型の非イオン性ブロック共重合体を含み得る。非イオン性高分子界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)値は少なくとも17であり得る。非イオン性高分子界面活性剤は、HLB値が少なくとも20のプロポキシル化ブロック共重合体を含み得る。
【0040】
任意の所望の酵素を本発明の組成物に使用することができる。例えば、酵素はセルラーゼ、キシラナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ又はそれらの組合せを含み得る。基質組成物を高分子界面活性剤及び酵素の存在下で分解し、分解産物を形成して、これを任意で脱水することができる。本発明は、記載の方法を行うシステム、及び該方法に使用される酵素と高分子界面活性剤とを含有する配合物も提供する。
【0041】
本発明の方法、配合物及びシステムは非常に多くの異なる用途を有する。以下はかかる用途の例である。繊維改良を行って叩解エネルギーを低減し、及び/又は紙強度を増大させることができる。粘着物及びピッチを製紙プロセスから低減又は排除し、より良好な品質の紙を得て、停止時間を短縮することができる。製紙工場スラッジを分解することにより、輸送コスト及び埋立てコストが低減し得る。パルプ工場での前漂白を行い、漂白効率を改善することができる。製紙工場スラッジをより効果的に脱水することができる。皮革製品の酵素による脱毛プロセス及び脱脂プロセスを改善することができる。抄紙機の煮沸及び清掃をより効率的に行うことができる。製紙工場のフェルト洗浄及び調湿を増進することができる。酵素による熱交換器の清掃を改善することができる。
【0042】
任意の好適な基質組成物を本発明に従って処理することができる。例えば、基質組成物はパルプ製造及び/又は製紙及び/又は他の供給源に由来するスラッジを含有し得る。基質組成物はバイオマスを含み得る。「バイオマス」という用語は、任意の化石化していない、すなわち再生可能な有機物を含む。様々なタイプのバイオマスとして、植物バイオマス、微生物バイオマス、動物バイオマス(任意の動物由来成分、動物排泄物等)及び都市廃棄物バイオマス(金属及びガラス等の再生利用可能なものを除いた住居及び軽商業のごみ)が挙げられる。「バイオマス」という用語は、綿花又は綿混紡品から製作された古着及びタオル等の未加工の又は使用済みのセルロース材料も含む。基質組成物は、1つ又は複数の木材タイプの1つ又は複数のタイプの繊維を含有する組成物を含み得るが、これらに限定されない。基質組成物は、微細繊維を含む1つ又は複数の長さの繊維を含有し得る。基質組成物は他の物質、例えばASAサイジング材料又は他のサイジング材料、加水分解サイジング材料、重合体、粘着物、のり、インク、充填剤、例えば再生紙に由来する他の不純物、消泡剤等を含み得る。基質組成物は酵素分解前に事前加工してもよく、酵素分解後に更に加工してもよい。
【0043】
本発明の方法を用いて、様々な種類のバイオマスを燃料、飼料及び他の製品へと変換することができる。「植物バイオマス」及び「リグノセルロースバイオマス」という用語は、任意の植物由来の有機物(木質又は非木質)を含み得る。植物バイオマスは、例えば農作物若しくは食用作物(例えばサトウキビ、テンサイ又はトウモロコシ穀粒)、又はそれらの抽出物(例えば、サトウキビに由来する糖及びトウモロコシに由来するコーンスターチ)、トウモロコシ茎葉、麦わら、稲のわら、サトウキビバガス、綿花等の農作物及び農作物廃棄物及び残渣等を含み得る。植物バイオマスは、例えば木、木質エネルギー作物、針葉樹間伐材、樹皮くず、おがくず、紙パルプ産業廃棄物流等の木くず及び廃材、木質繊維等を含み得る。植物バイオマスは飼料用農作物、例えばスイッチグラスを含む。植物バイオマスは、庭ごみ(例えば刈り取った芝生、葉、切り落とした木及び枝)及び野菜加工廃棄物を含み得る。
【0044】
本発明の方法に使用される酵素及び高分子界面活性剤は、別個に又は酵素配合物として共に供給することができる。例えば、酵素配合物は酵素、高分子界面活性剤、水及び配合物安定化用の任意の成分を含有し得る。使用することができる安定剤は、例えばポリアミドオリゴマーを含み得る。配合物は様々な製品、例えば繊維改良酵素製品、粘着物及びピッチの制御用の酵素製品、製紙工場スラッジ処理用の酵素製品、水処理用の酵素製品、水処理用の酵素製品、皮革製品の脱毛用の酵素製品、酵素脱脂製品、パルプ前漂白製品、並びにスイミングプール、冷却塔及び他の状況で使用される酵素水処理製品に組み込むことができる。
【0045】
本発明によると、酵素の酵素活性は高分子界面活性剤の存在によって大幅に増大し得る。例えば、酵素の酵素活性は、いかなる高分子界面活性剤も存在せずに酵素を単独で使用した場合と比較して少なくとも10%増大し得る。この活性の増大は、高分子界面活性剤の非存在下に対して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%若しくはそれ以上、又は約10%〜約50%の酵素活性の増大であり得る。これらの増大は酵素と界面活性剤との間で相乗的であり、酵素と界面活性剤との組合せを含まない製品よりも顕著に優れ得る。
【0046】
漂白前に本発明の組成物で前処理される繊維材料は、「パルプ」又は「繊維パルプ」と称される場合もある。本発明の組成物で前処理することができる繊維又はパルプは、未加工の木質繊維、再生紙(例えば紙、板紙、ボール紙)又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0047】
選択肢としては、本発明の組成物で前処理した漂白繊維を、ISO明度(%ISO)が、有機汚染物質除去補助剤が漂白前の木質繊維の前処理に使用される組成物に含まれない同じ方法で製造される紙製品(すなわち、前処理組成物がヘミセルロース分解酵素を含有するが、有機汚染物質除去補助剤を含有しない場合)よりも約0.5単位〜約5.0単位若しくはそれ以上、又は0.5単位〜約1.0単位、又は約0.6単位〜約1.0単位、又は約0.7単位〜約1.0単位高い紙製品の形にすることができる。これらの明度値の増大は、漂白パルプから調製したハンドシート又は漂白パルプで作製された乾燥紙に適用され得る。漂白によって繊維で得られるISO明度値に対する前処理組成物に単独で使用される場合の非イオン性界面活性剤の効果は、通常は全くないか、減少するか、又は予測不能である。しかしながら、ヘミセルロース分解(hemicellulolytic)酵素と組み合わせると、明度は酵素単独の使用によって達成され得るよりも顕著に増大する。本発明の方法によって前処理及び漂白した繊維で生産される紙製品も提供される。脱色した紙製品は紙の明度、白色度又はその両方が増進し、漂白化学物質の要求が低減し、紙料への白色化添加剤及び増白添加剤の添加が低減し、又はその両方の利益を有し得る。選択肢としては、本発明の組成物で処理した繊維のカッパー価は、組成物で処理していない繊維より約0.2単位〜約3.0単位、若しくは約0.2単位〜約1.0単位、若しくは約0.25単位〜約0.95単位、若しくは約0.3単位〜約0.9単位、若しくは約0.35単位〜約0.85単位、若しくは約0.4単位〜約0.8単位低いか、又は他のより低い値であり得る。
【0048】
本発明のヘミセルロース分解酵素と有機汚染物質除去補助剤成分とを含有する組成物は、それらがいずれも木質繊維の任意の漂白前に、両方の成分がパルプの漂白を開始する前にパルプ全体に実質的に均一に分散することを可能にするように添加される限り、製紙システムにおいて処理されるパルプに一緒に又は別個に添加することができる。「漂白の前」とは概して、漂白の5秒〜30分、更には1時間以上前に本発明の組成物を添加することを意味し得る。例えば、漂白工程は、本発明の組成物によるパルプ繊維の処理後の製紙プロセス工程の直後であってもよい。選択肢としては、ヘミセルロース分解酵素及び有機汚染物質除去補助剤成分は、使用前に単一組成物に合わせるか、若しくは同時に若しくはほぼ同時に(1秒〜1時間以内の間隔で)別個に添加することができ、及び/又は順次に若しくは任意の順序で添加することができる。選択肢としては、組成物は両方の指定の成分を水分散形態で、例えば両方の成分を含有する水性プレブレンドとして含有し得る。組成物を、パルプを含有する水性溶媒を十分に撹拌しながらパルプに添加して、導入成分をパルプ全体に実質的に均一に分散させることができる。
【0049】
組成物は、組成物の全固体重量ベースで約10重量%〜約90重量%のヘミセルロース分解酵素(複数の場合もあり)と、約1.0重量%〜約10重量%の有機汚染物質除去補助剤(複数の場合もあり)とを含み得る。組成物は、該組成物の全固体重量ベースで約20重量%〜約80重量%のヘミセルロース分解酵素と、約2.0重量%〜約8.0重量%の有機汚染物質除去補助剤とを含み得る。組成物は、組成物の全乾燥固体重量に基づく乾燥重量ベースで約30重量%〜約70重量%のヘミセルロース分解酵素と、約3.0重量%〜約6.0重量%の有機汚染物質除去補助剤とを含み得る。組成物は、乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約100g〜約1000gのヘミセルロース分解酵素、及び乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約2.0g〜約20gの有機汚染物質除去補助剤をもたらす量で導入することができる。組成物は、乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約200g〜約800gのヘミセルロース分解酵素、及び乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約4.0g〜約18gの有機汚染物質除去補助剤をもたらす量で導入することができる。組成物は、乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約400g〜約600gのヘミセルロース分解酵素、及び乾燥繊維ベースで繊維1トン当たり約5.0g〜約15gの有機汚染物質除去補助剤をもたらす量で導入することができる。
【0050】
図1に示されるプロセスを参照すると、本発明のヘミセルロース分解酵素と有機汚染物質除去補助剤とを含有する組成物を繊維と接触させ、キシラン、ピッチ又はその両方を繊維から遊離させることができる(工程101)。次いで、処理繊維を漂白することができる(工程102)。漂白繊維を、例えば反応生成物の溶解のためにアルカリ性物質で抽出することができる(工程103)。抽出後に、例えば漂白及び抽出した繊維で調製したハンドシートの明度を測定することによって、漂白繊維を明度について評価することができる(工程104)。ハンドシートの明度の測定は、パルプ明度を評価する製紙業において容認された手順である。繊維の明度が任意の適用仕様を満たすのに十分に高いと判定された場合(工程105)、漂白繊維を製紙への使用に進めることができる(加工段階106)。そうでない場合、図示されるように繊維を漂白段階(又は代替的には、図示されていないより前のパルプ化段階)へと再循環させることができる。
【0051】
ヘミセルロース分解酵素(複数の場合もあり)と有機汚染物質除去補助剤(複数の場合もあり)とを含む組成物は、漂白前に任意の利用可能な添加部位で繊維に添加することができる。選択肢としては、組成物は褐色紙料に添加することができる。洗浄した褐色紙料を、最初の漂白段階に投入する前に高密度貯蔵塔に貯蔵してもよい。組成物を、パルプを高密度貯蔵塔に投入すると同時にパルプに添加し、パルプがこの塔を通過する際に作用させてもよい。通常、パルプが貯蔵塔を出るまでに20分〜3時間経過し得る。パルプは、貯蔵塔を出た時点で漂白を受けられる状態にあり得る。酵素と汚染物質除去補助剤との両方を含有する組成物による前処理は、パルプを酵素単独で処理する場合よりも漂白可能にする。本方法によって前処理される繊維を含有する水性溶媒のpHは、中性又はアルカリ性、例えば約7.0〜約11.0、若しくは約7.0〜約8.0、若しくは約7.0〜約7.7、若しくは約7.1〜約7.5、又は他のpH値であり得る。この点で、従来のpH調整剤を使用して、本組成物による処理の前に繊維スラリー又は繊維の他の水性分散形態のpHを事前調節することができる。選択肢としては、前処理中にタンク又は塔内に一時的に保持される場合に水性繊維材料及び添加組成物を撹拌するために、従来の撹拌機を使用することができる。前処理は少なくとも約20分、若しくは少なくとも約30分、若しくは約20分〜約180分、若しくは約30分〜約120分、若しくは約45分〜約90分、又は他の期間にわたって行うことができる。選択肢としては、前処理は任意の酵素不活性化温度未満の温度、例えば約25℃〜約90℃、若しくは約30℃〜約80℃、若しくは約35℃〜約70℃、若しくは約40℃〜約60℃、又は他の温度で行うことができる。選択肢としては、前処理は繊維をスラリー化するか、又は別の形で分散した水性溶媒の沸点未満の温度で行うことができるが、酵素によっては水性溶媒の沸点を超える温度で作用する場合もある。選択肢としては、漸増する前処理温度によって、キシラン、ピッチ若しくはその両方、又は他の漂白を妨害する若しくは別の形で妨害する汚染物質を繊維から遊離するより迅速又は広範な効果をもたらすことができる。本組成物による前処理の後、前処理した繊維又はパルプを漂白システムに直接導入することができる。代替的には、選択肢としては、前処理繊維又はパルプを脱水(例えばスクリーニング、濾過)し、任意で洗浄し、漂白前に再スラリー化することができる。
【0052】
選択肢としては、本方法の接触工程、例えば図1に示される工程101によって、組成物と接触する前に繊維中に存在する全キシラン及びピッチ成分の少なくとも50重量%、又は少なくとも約60重量%、又は少なくとも約70重量%、又は少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%、又は約50重量%〜約99重量%、又は約60重量%〜約95重量%、又は約70重量%〜約90重量%が除去される。
【0053】
漂白プロセスは、少なくとも1つの漂白段階と少なくとも1つの抽出段階とを含む配置を用いることができる。漂白手順は、様々な形での塩素又は塩素含有化合物(例えば二酸化塩素、次亜塩素酸塩)の使用に基づき得る。二酸化塩素(「D」と表す)、又は塩素(「C」と表す)、又はオゾン(「Z」と表す)、又は二酸化塩素及び塩素等のそれらの任意の組合せを使用して、パルプを漂白した後、水性アルカリ媒体中での漂白パルプのアルカリ(苛性)抽出を行うことができる。前処理パルプに対して使用される漂白剤は、リグニンをより小さな酸素含有分子へと分解することができ、これらの分解産物は概して、とりわけpHが7を超える場合に水に可溶である。反応生成物の多くはカルボン酸であり得る。これらの物質を複数の漂白段階の間に除去することができる。この点で、抽出段階を用いて漂白パルプをアルカリ溶液(例えばNaOH溶液)で処理した後、任意で更なる漂白段階の前に洗浄することができる。抽出段階(単数又は複数)によって、塩素化及び酸化した残留リグニンの大部分を可溶化及び除去することができ、更にはヘミセルロースの一部を除去することができる。洗浄装置を酸化段階と抽出段階との間に、又は最終漂白段階の終了後、漂白パルプを製紙システム及び加工へと進める前に任意で使用することができる。漂白段階における二酸化塩素量(又は塩素、若しくは塩素+二酸化塩素)は、処理されるパルプのリグニン含量に比例させることができる。酸素(「O」と表す)、過酸化物等の酸素発生体(「P」と表す)、又はそれらの組合せを、漂白段階(単数又は複数)において漂白剤と組み合わせて使用することができる。酸素、過酸化水素等の酸素発生体、酸素又は次亜塩素酸塩(「H」と表す)、又はそれらの組合せを、抽出段階(単数又は複数)においてアルカリ抽出物質と組み合わせて使用することができる。抽出段階(単数又は複数)については、アルカリ抽出物質を過酸化水素(「Ep」と表す)と組み合わせて使用することができる。漂白段階に続くアルカリ抽出段階は、他の酸化剤又は酸化剤の組合せ、例えばEo(酸素)、Epo(過酸化物及び酸素)又はEho(次亜塩素酸塩及び酸素)と表される酸化抽出段階を含有し得る。漂白プロセスは以下のシーケンスのいずれかを含み得る:Do−Ep;若しくはDo−洗浄機−Ep;若しくはD−E;若しくはD−洗浄機−E;若しくはDo−洗浄機−Ep−洗浄機−Do−洗浄機;若しくはDo−洗浄機−Ep−洗浄機−Do−洗浄機−Ep−Do−洗浄機;C−E;C−Ep;又は他のシーケンス。
【0054】
漂白前の有機汚染物質除去補助剤と組み合わせた木質繊維の前処理において利益を示したヘミセルロース分解酵素としては、例えばキシラナーゼ及び/又はマンナナーゼが挙げられる。ヘミセルロース分解酵素はパルプのヘミセルロース部分に作用することができる。パルプ中のヘミセルロースは、アラビノキシラン及びグルコマンナンという多糖骨格を有する2つのタイプの構造を有し得る。キシラナーゼは例えば、キシラン中の1,4−β−D−キシロシド結合の内部加水分解(endo-hydrolysis)を触媒する1,4−β−D−キシラン−キシロヒドロラーゼ(E.C. 3.2.1.8)であり得る。キシラナーゼは、有機汚染物質除去補助剤との共存下でキシラン分解活性、ピッチ遊離活性又はその両方を有し得る。本明細書で使用される「キシラン分解活性」という用語は、例えばキシラン含有材料を加水分解する生物活性であり得る。マンナナーゼは、例えばエンド−β−マンナナーゼ等のエンドマンナナーゼであり得る。マンナナーゼは、有機汚染物質除去補助剤との共存下でキシラン遊離に寄与する活性、ピッチ遊離活性又はその両方を有し得る。
【0055】
ヘミセルロース分解酵素は、単独で又は互いに若しくは異なるタイプの酵素と組み合わせて使用することができる。他の任意で使用される酵素としては、個々に又は任意に組み合わせて脂肪分解活性を有するもの、例えばリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼが挙げられる。リパーゼ又は他の脂肪分解酵素を本発明の組成物に含めることの効果は、例えばピッチ成分に関連するトリグリセリドの加水分解を増大させることであり得る。リパーゼ又は他の脂肪分解酵素は、含まれる場合、この効果に十分な量、例えばヘミセルロース分解酵素について本明細書に示されるものと同様の濃度で使用することができる。
【0056】
ヘミセルロース分解酵素は、例えば様々な菌類及び他の植物組織から抽出することができ、選択された微生物の発酵によって産生させることができる。例えば、キシラナーゼはアワモリコウジカビ(Aspergillusawamori)種の菌株の発酵、若しくはストレプトミセス・オリボクロモゲネス(Streptomycesolivochromogenes)若しくは枯草菌(Bacillus subtilis)の発酵によって、又は他の発酵プロセスから得ることができる。例えば、遺伝子組み換え微生物を用いて製造され得るタイプ(例えばバシラスタイプ及びトリコデルマタイプ)を含むマンナナーゼ調製物は市販されている。ヘミセルロース分解酵素は、既製の調製物としてNovozymes A/S(Bagsvaerd,Denmark)、又はDyadic International(Jupiter,FL)、又はIogenCorporation(Ottawa,Ontario,Canada)等の供給業者から市販されているものであり得る。酵素は、乾燥粉末若しくは顆粒、非粉塵性(non-dusting)顆粒、液体、安定化液体、若しくは安定化保護酵素、又は繊維スラリー若しくは類似の繊維含有材料への添加に好適な他の形態であり得る。液体酵素調製物は例えば、確立されたプロセスに従って糖、糖アルコール若しくは別のポリオール、及び/又は乳酸若しくは別の有機酸等の安定剤を添加することによって安定化することができる。乾燥粉末形態は凍結乾燥してもよく、基質を含む。酵素基質が乾燥粉末形態の酵素と共に存在する場合、基質は繊維加工段階、例えば漂白、抽出又は製紙プロセスに悪い作用を起こすか、又はそれらを妨げるものであってはならない。脂肪分解酵素は、使用する場合、同様に入手及び使用することができる。
【0057】
本発明の方法、配合物及びシステムには、任意の好適な酵素又は2つ以上の酵素の組合せを使用することができる。酸化/還元反応を触媒する酸化還元酵素(EC1)、官能基の転移を触媒するトランスフェラーゼ(EC2)、様々な結合の加水分解を触媒するヒドロラーゼ(EC3)、加水分解及び酸化以外の手段による様々な結合の切断を触媒するリアーゼ(EC4)、単一分子内の異性化変化を触媒するイソメラーゼ(EC5)、及び共有結合による2つの分子の接合を触媒するリガーゼ(EC6)を含む、国際生化学分子生物学連合によって分類される1つ又は複数の酵素を使用することができる。
【0058】
多くの他の酵素も本発明に使用することができる。グルコース及びフルクトース等のバルク製品の製造、食品加工、洗剤、並びに織物、パルプ及び紙、並びに動物飼料産業用の酵素を使用することができる。食品生産用の酵素を使用することができる。菌類及び植物に由来するアミラーゼは、デンプンからの糖の製造、例えばブドウ糖果糖液糖の製造及び製パンに使用することができる。プロテアーゼは、様々なベーカリー製品の製造用の小麦粉のタンパク質含量を低下させるために使用することができる。トリプシンは、ベビーフードの前消化に使用することができる。醸造及び発酵用の酵素、例えばオオムギ酵素、アミラーゼ、グルカナーゼ、プロテアーゼ、βグルカナーゼ、アラビノキシラナーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、システインエンドペプチダーゼ、グルコアミラーゼ及びアセト乳酸デカルボキシラーゼ(acetolactate decarboxylase)を使用することができる。セルラーゼ及びペクチナーゼは、果汁の清澄化に使用することができる。乳業用の酵素、例えばチーズの製造用のレニン及び凝乳酵素、チーズの熟成用のリパーゼ、乳製品組成物、加水分解物中のラクトースを分解するラクターゼ、トランスグルタミナーゼ並びにβ−ガラクトシダーゼを使用することができる。パパインは肉の軟化に使用することができる。デンプンを糖及び甘味料に変換する酵素、例えばアミラーゼ、アミログルコシダーゼ、グルコアミラーゼ及びグルコースイソメラーゼを使用することができる。製紙業用の酵素、例えばアミラーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ラッカーゼ及びリグニナーゼを使用することができる。酵素の例としては、粘着物制御用のリパーゼ、前漂白用のキシラナーゼ及び繊維改良用のセルラーゼが挙げられる。バイオ燃料用の酵素、例えば発酵用のセルロースを分解するセルラーゼ及びリグナーゼ(lignases)を使用することができる。コンタクトレンズ及び再生膜の洗浄用のプロテアーゼを使用することができる。ラテックスを気泡ゴムへと変換するカタラーゼを使用することができる。制限酵素、リガーゼ及びポリメラーゼは生物工学的用途に使用することができる。皮革産業において動物の皮から毛を除去するプロテアーゼ、及び獣脂を除去するリパーゼを使用することができる。洗剤用の酵素、例えばプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びマンナナーゼを使用することができる。織物用の酵素を、繊維の糊抜き、生糸の精練、繊維の漂白及びデニム生地のエージングに使用することができる。油田、廃水及び重合用途の酵素を使用することもできる。
【0059】
酵素又は酵素を含有する配合物(例えば、本発明の酵素と高分子界面活性剤とを含有する予形成配合物)の酵素活性は、少なくとも10単位/gであり得る。例えば、酵素又は酵素を含有する組成物の酵素活性は少なくとも15単位/g、少なくとも20単位/g、少なくとも25単位/g、少なくとも100単位/g又は少なくとも500単位/g、例えば10単位/g〜1500単位/g、又はそれ以上であり得る。
【0060】
酵素は、標的の基質又は基質組成物に基づいて任意の好適な量又は濃度で存在し得る。例えば、酵素は、少なくとも酵素と高分子界面活性剤とを含有する酵素配合物の全重量ベースで約0.05重量%〜約5重量%の濃度で存在し得る。例えば、酵素の濃度は酵素配合物の全重量ベースで0.1重量%〜35重量%、0.5重量%〜35重量%、1.0重量%〜35重量%、2重量%〜35重量%、5重量%〜35重量%、10重量%〜35重量%、15重量%〜35重量%、20重量%〜35重量%又はそれ以上であり得る。所与の量の水が酵素配合物中に存在する場合、これらのパーセンテージは希釈係数により比例的に低下する。酵素配合物を基質組成物に添加すると、パーセンテージは希釈係数により再度低下する。
【0061】
指摘したように、本発明の組成物で処理した繊維の明度及び白色度値の測定を用いて、繊維の漂白に対する本発明の酵素と有機汚染物質除去補助剤とを含有する組成物の前処理効果を評価することができる。漂白前の繊維に対する本発明の組成物によるキシラン分解活性を評価する方法では、例えば様々なタイプのキシランにより形成される還元糖の定量、又は例えば米国特許出願公開第2011/0078830号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に示されるような炭水化物の比色定量、又はキシラン分解タイプの活性の評価に用いられる他の従来の方法の適用によって測定することができる。
【0062】
高分子界面活性剤は少なくとも1つのポロキサマーであり得る。高分子界面活性剤はPEO−PPO−PEO型のブロック共重合体であり得る。誤解を避けるために、界面活性剤及び有機汚染物質除去補助剤に関する説明(及び本明細書に提示する例)は、互いに等しく適用され、置き替え可能である。
【0063】
有機汚染物質除去補助剤は少なくとも1つの非イオン性界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤は少なくとも1つのポロキサマーであり得る。ポロキサマーは、両側に親水性ポリアルキレンオキシドブロックが隣接した疎水性ポリアルキレンオキシドブロックの中央ブロックを含む非イオン性トリブロック共重合体であり得る。ポロキサマーのポリアルキレンオキシドブロックは、独立して低級アルキレンオキシド鎖、例えばC、C又はCアルキレンオキシド鎖を含み得る。選択肢としては、ポロキサマーは、2つのポリエチレンオキシド(PEO)のブロックに挟まれたポリプロピレンオキシド(PPO)又はポリブチレンオキシド(PBO)の中央ブロックを含んでいてもよい。ポロキサマーは、一般式I:HO(CO)(CO)(CO)H(式中、a及びbは適用可能なPEO及びPPOブロックにおけるEO単量体単位及びPO単量体単位のそれぞれの平均数である)を有し得るPEO−PPO−PEO共重合体であり得る。PEO−PPO−PEO構造は、第1級ヒドロキシル基で終端する二官能性ブロック共重合体界面活性剤であり得る。使用することができるポロキサマーの構造を図2に示す。その両親媒性構造のために、ポロキサマーは非イオン性(すなわち非荷電)界面活性剤特性を有し得る。
【0064】
ポロキサマーは順次に合成することができる。例えば、中央ブロックを初めにPOから重合してPPOを形成した後、EOを用いた第2の重合工程において外側のPEOブロックを中央PPOブロックの末端に付加することができる。ポロキサマーの商業的供給源は、例えばBASF Corporation(Florham Park,New Jersey,U.S.A.)によるPLURONIC(商標)共重合体である。これらの化合物は、一般にポロキサマーという言葉の後に具体的な共重合体を示す番号を用いて命名され、例えばポロキサマー407は、約101単位の2つのPEGブロック(y及びyが各々101に等しい)及び約56単位のポリプロピレンブロックを有する。この重合体はBASFからLUTROL(商標)F−17という商品名で入手可能である。BASFのPLURONIC(商標)コードにおいて、アルファベット表示は室温での製品の物理的形態に基づき得る(Lは液体形態、Pはペースト形態、Fはフレーク(固体)形態である)。数字表示では、最後の数字に10を乗算するとPLURONIC(商標)共重合体における親水性部分のおおよそのパーセンテージ(w/w)が示され得る。本方法及び組成物に使用することができるポロキサマーの商品名には、例えばPLURONIC(商標)F38、PLURONIC(商標)F68、PLURONIC(商標)F88、PLURONIC(商標)F98、PLURONIC(商標)F108、PLURONIC(商標)F87、PLURONIC(商標)P105、及びPLURONIC(商標)F127が含まれる。例えばPLURONIC(商標)F108は、重量:重量(w/w)ベースで約80%のPEO(合計):約20%のPPOを含み、約14600g/molの平均分子量を有し得る。BASFから入手可能な液体エチレンオキシド、プロピレンオキシドブロック共重合体配合物、例えばPLURAFLO(商標)L 1060及びPLURAFLO(商標)L 1220を使用することができる。ポロキサマーの物理的特性は、分子量及びPEO:PPO比の正確な組合せに応じて低粘度液体から、ペースト、固体までの範囲であり得る。全PEO対PPOの質量比は、約1:9〜約9:1、若しくは約1:9〜約8:2、若しくは約2:8〜約8:2、若しくは約2.5:7.5〜約7.5:2.5、若しくは約4:6〜約6:4、又は他の値であり得る。PEOの比率は、質量ベースでポロキサマーの全PEO及びPPO含量の少なくとも過半量(すなわち≧50%)を占めることができる。使用することができるポロキサマーは、重量:重量(w/w)ベースで約50:50:〜約95:5、若しくは約60:40〜約90:10、若しくは約75:25〜約85:15、若しくは約78:22〜約82:18、若しくは約80:20、又は他の値のPEO:PPO比を有し得る。ポロキサマーは概して、例えば約1000g/mol〜約25000g/mol、若しくは約2500〜約22500g/mol、若しくは約5000g/mol〜約20000g/mol、若しくは約7500g/mol〜約18000g/mol、若しくは約10000g/mol〜約16000g/mol、若しくは約12000g/mol〜約15000g/mol、約12000g/mol〜約17000g/mol、約13500g/mol〜約16000g/mol、若しくは約15000g/mol、又は他の値の分子量を有し得る。
【0065】
ポロキサマー等の非イオン性界面活性剤の水溶性は、親水性親油性バランス(HLB)値又は数と関連し得る。HLB値は当該技術分野で既知の手段によって算出することができ、例えば"The HLB System," ICI Americas, Inc., 1980を参照されたい。HLB値は、親水性特性及び/又は脂溶性特性を有する分子、例えば界面活性剤及び乳化剤について算出することができる。HLB値は理論的、実験的に決定するか、及び/又は別の形で推定することができる。HLB値は、分子の親水性部分の重量パーセンテージを5で除算したものに相当し、そのため100%の親水性分子のHLB値は20であり得る。例えば、80モル%のPEO(合計)を含有するポロキサマーのHLB値は16と算出され得る(すなわち80/5=16)。20を超えるHLB値は相対的又は比較的な値である。親水性である分子のパーセンテージは、分子の親水性部分の分子量を分子の全分子量で除算することによって理論的に決定することができる。本発明に使用される高分子界面活性剤のHLB値は、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約22、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約28、少なくとも約30、少なくとも約32、少なくとも約35、少なくとも約40又は少なくとも約50であり得る。使用することができる他の高分子界面活性剤のHLB値は約15未満であり得る。非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン性(zwitterionic)界面活性剤、両親媒性界面活性剤又はそれらの組合せを使用することができる。高分子界面活性剤に加えて、非高分子界面活性剤を使用してもよい。
【0066】
ポロキサマーにおける親水性PEO末端部分の存在は、界面活性剤分子のHLB値が通常ゼロより大きいこと、すなわちそれらが幾らかの親水性特性を有することを意味する。PPOのHLB値はゼロに近く、例えば0.5未満であり得る。ポロキサマーのPEO含量は共重合体の過半量を占め、共重合体の親水性特性が分子の脂溶性特性を上回ることが期待され得る。過半量のPEOを含有するポロキサマーのHLB値は、例えば少なくとも約10、若しくは少なくとも約11、若しくは少なくとも約12、若しくは少なくとも約13、若しくは少なくとも約14、若しくは少なくとも約15、若しくは少なくとも約16、若しくは少なくとも約17、若しくは少なくとも約18、若しくは少なくとも約19、若しくは約10〜約19.9、若しくは約11〜約19、若しくは約12〜約18、若しくは約13〜約17.5、若しくは約14〜約17、又は他の値であり得る。HLB値を実験方法によって推定し、それらのHLB値を既知のHLB値を有する1つ又は複数の分子で調整又は正規化することができる。HLB決定の実験方法は、未知の分子をHLBが既知の分子と様々な比でブレンドすることと、既知の所要のHLBを有する油を乳化するのにブレンドを使用することとを含み得る。最高の性能を発揮するブレンドは、所要の油のHLBにほぼ等しいHLB値を有するものとすることができる。次いで、未知の分子のHLB値を算出することができる。実験手順を繰り返し、平均を取ることができる。HLB値は分子の水溶性又は分散性からも推定することができる。
【0067】
使用される高分子界面活性剤の量は、例えば酵素配合物の全重量ベースで約0.5重量%〜約30重量%、約0.5重量%〜約15重量%、約1.0重量%〜約25重量%、約1.0重量%〜約10重量%、約2.5重量%〜約20重量%、約5.0重量%〜約15重量%、約7.5重量%〜約17.5重量%、又は約10重量%〜約15重量%の量であり得る。高分子界面活性剤は、基質又は基質組成物の全重量ベースで少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1.0重量%、少なくとも5.0重量%、又は少なくとも10重量%の量で存在し得る。酵素及び高分子界面活性剤は、約0.01:10〜約10:0.01、又は約0.1:10〜約10:0.1、又は約0.5:5.0〜約5.0:0.5、又は約1.0:2.0〜約2.0:1.0の酵素対非イオン性高分子界面活性剤の重量比で存在し得る。
【0068】
基質の処理に使用することができる酵素配合物へと配合する場合、酵素配合物は酵素、高分子界面活性剤、水及び配合安定化のための他の成分を含み得る。使用することができる酵素配合物の用量は、例えば乾燥基質1トン当たり約0.01ポンド(lb.)〜約10.0lb.、乾燥基質1トン当たり約0.1lb.〜約5.0lb.、乾燥基質1トン当たり約0.25lb.〜約2.5lb.、又は乾燥基質1トン当たり約0.5lb.〜約2.0lb.であり得る。酵素を界面活性剤なしに単独で添加する場合も同じ用量を使用することができる。酵素及び界面活性剤を別個に添加する場合、界面活性剤の投入量は、例えば乾燥基質1トン当たり約0.001lb.〜約5.0lb.、乾燥基質1トン当たり約0.0015lb.〜約3.0lb.、乾燥基質1トン当たり約0.01lb.〜約1.0lb.、又は乾燥基質1トン当たり約0.025lb.〜約0.75lb.であり得る。
【0069】
非イオン性又はそれ以外の任意の好適な高分子界面活性剤を使用することができる。例えば、そのエステル誘導体、例えばそのメチルエステル又は脂肪酸エステル(例えばPEG−パルミテート)を含むポリ(エチレングリコール)を使用することができる。PEO−PPO−PEO型のブロック重合体及びランダムPEO−PPO重合体を使用することができる。ポリエチレングリコール部分を含有する非イオン性界面活性剤であるTRITON−X−100(ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)を使用することができる。使用することができる高分子界面活性剤のほんの一部の例としては、以下のものが挙げられる:モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN 40);モノラウリン酸ソルビタンポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN 20);TERGITOL 15−S−20;TERGITOL 15−S−30;TERGITOL 15−S−40;ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG、PLURONIC(商標)F−68);ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG、PLURONIC(商標)F−108);分岐したポリオキシエチレン(150)ジノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン、ジノニルフェニル及びノニルフェニルエーテル(IGEPAL(商標)DM−970);ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(BRIJ(商標)S 100)、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG、Pluronic(商標)L−35);分岐したポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル(IGEPAL(商標)CO−890);及びポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(BRIJ(商標)58)。これらの界面活性剤は、Dow Chemical(Midland,Michigan)から入手可能なTERGITOL界面活性剤以外はSigma-Aldrich(St. Louis,Missouri)から入手可能である。高分子界面活性剤の平均分子量(ダルトン)は1000〜約20000、例えば約2000〜約15000、約3000〜約12000、約5000〜約20000、約10000〜約20000、約12000〜約17000、約13500〜約16000、少なくとも約20000、少なくとも約50000、少なくとも約100000又は少なくとも約500000であり得る。漂白前に本発明の組成物によって処理することができる繊維は必ずしも限定されるものではない。指摘したように、繊維はパルプ状であり得るが、これに限定されない。木質繊維は、水性溶媒中でスラリー化、分散又は懸濁した粒子状の木質繊維供給源であり得る。指摘したように、パルプは未加工の木質繊維パルプ、再生繊維パルプ又はそれらの任意の組合せであり得る。木質繊維は広葉樹、針葉樹又はそれらの任意の組合せであり得る。処理されるパルプは例えばクラフトパルプ、亜硫酸パルプ、硫酸パルプ、ソーダパルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケモサーモメカニカルパルプ、再生製紙用パルプ又はそれらの任意の組合せであり得る。紙用途に典型的なパルプスラリーは、例えばスラリーの全重量100%をベースとして約0.2重量%〜約18重量%の有機物を含有し得る。有機物は通常は木質繊維(又はパルプ)と任意の添加剤とから構成される。概して、有機物は有機物の全重量100%をベースとして約90重量%〜約99重量%の木質繊維(又はパルプ)を含む。繊維は少なくとも部分的に、例えば乾燥重量ベースで使用した全繊維に対して少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも75重量%が再生紙に由来し得る。パルプスラリーは当該技術分野で既知の添加剤を含有し得る。かかる添加剤の例としては、殺藻剤;水酸化ナトリウム(又は他の腐食剤);ケイ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及びポリリン酸塩等の過酸化物安定剤;EDTA等のキレート剤;脂肪酸;並びにそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。任意の添加剤は、使用する場合、本発明の前処理組成物の指定の作用、又は漂白プロセス若しくは他の下流のプロセスを妨げないものとする。
【0070】
本発明の方法に従って前処理及び漂白した繊維で生産される紙製品も提供される。脱色される紙製品は、例えば印刷可能又はインク付け可能な(inkable)紙シート、ボール紙構造用のシート、ティッシュペーパー、衛生用及びパーソナルケア用のシート又はライナー材料、並びに他の紙ベースの製品であり得る。本発明の方法によって作製される紙製品は、(a)より広範な漂白、ひいてはよりコストのかかる漂白を伴うか、又は(b)製紙中に外部から添加する増白添加剤又は白色化添加剤の量が増加する、ひいてはよりコストのかかる添加剤要求を有するように変更された方法で作製された比較用紙製品と同じISO%明度を達成することができる。製紙に使用される従来の増白添加剤又は白色化添加剤としては、例えば無機白色化剤(例えば二酸化チタン、硫酸バリウム)、及び有機増白剤(例えば蛍光白色化剤/増白剤)が挙げられる。これらの添加剤の使用量を低減することによりコストを削減することができる。選択肢としては、漂白前の繊維の前処理に本発明の組成物を用いた方法によって作製される紙製品は、製紙中に添加される全増白添加剤又は白色化添加剤の減少を伴い、本組成物による前処理なしに作製される紙製品と同じISO%明度を達成することができる。選択肢としては、漂白前の繊維の前処理に本発明の組成物を用いた方法によって作製される紙製品は、特定の明度を得るのに要求される増白添加剤又は白色化添加剤の全量を、少なくとも約5重量%、若しくは少なくとも約10重量%、若しくは少なくとも約15重量%、若しくは少なくとも約20重量%、又は他の量だけ低減することができる。例えば、二酸化チタンを製紙中に紙に添加してISO%明度が78.0の紙を得る場合、本発明の前処理の追加によって、同じ明度を得るための二酸化チタンの必要量を少なくとも約5.0重量%以上低減することができる。
【0071】
酵素及び高分子界面活性剤に加えて、他の成分、例えば防腐剤、安定剤、脱臭剤、充填剤、増量剤等を更に使用することができる。例えば、PVP等の少なくとも1つの安定剤を、グリセロールを添加して又は添加せずに使用することができる。さらに、1つ又は複数の塩、例えば塩化カルシウム又は他の塩が存在していてもよい。酵素及び高分子界面活性剤は、水又は他の水溶液中で希釈又は調製することができる。例えばグリセロール又は類似の成分は、酵素配合物(水で希釈しない)の全重量ベースで5.0重量%〜約30重量%の量で存在し得る。PVP K90等のPVP又は類似の成分は、酵素配合物(水で希釈しない)の全重量ベースで約1.0重量%〜約10重量%の量で存在し得る。CaCl又は類似の成分は、酵素配合物(水で希釈しない)の全重量ベースで約0.1重量%〜約2.0重量%の量で存在し得る。BUSAN(商標)1078等の防腐剤は、酵素配合物(水で希釈しない)の全重量ベースで0.05重量%〜約0.2重量%の量で存在し得る。
【0072】
殺生物剤を貯蔵目的で使用して本発明の配合物を保存することができる。使用することができる殺生物剤としては、例えばBUSAN(商標)1078等のBuckman Laboratories Internationalによる殺生物剤が挙げられる。殺生物剤が存在する場合、その量は、酵素配合物を形成する存在する成分の全重量(水で希釈しない)ベース、又は(乾燥基質)重量ベースで1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、又は約0.001重量%〜約0.01重量%であり得る。
【0073】
本発明において、酵素、高分子界面活性剤及びいずれの任意成分を共に予形成酵素配合物として添加しても、又は各々個々の成分若しくは成分の任意の組合せを、例えば順次、バッチ式又は同時に異なる入口投入点から別個に添加してもよい。酵素配合物又はその成分は任意の期間、例えば約10秒〜約150時間以上にわたって徐々に導入しても、定期的に導入しても、又は一度に導入してもよい。高分子界面活性剤及び酵素の添加は、同時、順次又は交互であり得る。例えば、酵素及び高分子界面活性剤の添加は任意の順序で10秒間隔、1分間隔、10分間隔、30分間隔、1時間間隔、6時間間隔又は12時間間隔であり得る。酵素配合物は、成分を任意の順序で混合することによって調製することができる。水又は水性成分又は溶液を使用して酵素配合物を形成することができる。水又は水溶液又は成分は、水で希釈した酵素配合物の全重量ベースで約10重量%〜約90重量%の量で存在し得る。
【0074】
本発明の酵素配合物又は本発明の酵素配合物を形成する成分は、基質又は基質組成物に任意の方法、例えば噴射、投入、注入、混入等によって適用又は導入することができる。本発明の酵素配合物の成分と基質又は基質組成物とを接触させる任意の接触技法を使用することができる。酵素配合物又は酵素配合物を構成する成分を、続いて基質組成物と混合するか、又は別の形で基質組成物中に分散させ、分解速度を改善することができる。酵素配合物は液体形態、固体形態、乾燥形態、錠剤形態又は半固体形態であり得る。酵素配合物はカートリッジ内に組み込むか若しくは存在させることができ、又は膜若しくはフィルター内、若しくは基質組成物と接触する任意の表面上に存在させることができる。
【0075】
本発明の酵素配合物又は酵素配合物を構成する成分はタンク、沈殿池及び/又は別の格納場所において基質組成物に導入することができる。処理される基質組成物の含水量は任意の含水量、例えば基質組成物の全(湿)重量ベースで約1.0重量%〜約99重量%であり得る。
【0076】
本発明によると、酵素及び高分子界面活性剤を基質組成物と接触させた後、処理を任意の好適な接触時間にわたって持続させることができる。例えば、接触時間は約30分〜約48時間以上、又は1.0時間〜約150時間以上であり得る。他の例では、接触時間は5.0時間〜100時間、約10時間〜約75時間、約24時間〜約72時間、又は少なくとも約48時間以上であり得る。接触時間は、基質組成物の位置で使用される特定のプロセスによって決まり得る。分解の反応条件は、pH、温度又は任意の他の関連パラメータに関して可変又は一定であり得る。分解は約5℃〜約95℃、約15℃〜約80℃、約25℃〜約60℃又は約35℃〜約50℃の温度で行うことができる。添加される酵素及び高分子界面活性剤を含む基質組成物のpHは、約2.0〜約12、約4.0〜約10又は約6.0〜約8.0であり得る。接触時間の後、分解産物の脱水を行ってもよい。分解産物を脱水する当該技術分野で既知の任意の方法を使用することができる。例えば、脱水は沈殿タンク又は沈殿池を使用した後、加圧、押出、濾過、遠心分離等を行うことによって達成することができる。
【0077】
本発明は、任意の順序及び/又は任意の組合せでの以下の態様/実施形態/特徴を包含する:
1.製紙システムにおいて繊維の漂白を妨げる有機汚染物質を制御する方法であって、
a)任意の漂白工程の前に、上記繊維を、少なくとも1つのヘミセルロース分解酵素と少なくとも1つの有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物と接触させることであって、有機汚染物質が上記繊維を上記有機汚染物質除去補助剤なしに上記組成物と接触させた場合よりも多量に該繊維から遊離する処理繊維が得られ、上記有機汚染物質が1つ若しくは複数のキシラン、1つ若しくは複数のピッチ成分又はその両方を含む、ことと、
b)漂白繊維を形成するように上記処理繊維を漂白することと、
を含む、方法。
2.c)上記漂白繊維を紙製品の形にすることを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
3.上記紙製品のISO明度が、上記有機汚染物質除去補助剤が上記組成物に含まれない方法を用いて製造される紙製品よりも約0.5単位〜約5.0単位高い、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
4.上記接触によって、該接触の前に上記繊維中に存在する全キシラン及びピッチ成分の少なくとも50重量%が除去される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
5.上記漂白が、上記処理繊維を二酸化塩素、過酸化水素、酸素、元素状塩素、次亜塩素酸塩、オゾン又はそれらの任意の組合せである漂白剤と接触させることを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
6.上記有機汚染物質除去補助剤が少なくとも1つの非イオン性界面活性剤である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
7.上記有機汚染物質除去補助剤がポロキサマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
8.上記有機汚染物質除去補助剤が、HLB値が16以上のポロキサマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
9.上記ヘミセルロース分解酵素がキシラナーゼ、マンナナーゼ又はその両方である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
10.上記組成物が脂肪分解酵素を更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
11.上記組成物がリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ又はそれらの任意の組合せである脂肪分解酵素を更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
12.上記組成物を、乾燥繊維ベースで上記繊維1トン当たり約100g〜約1000gの上記ヘミセルロース分解酵素、及び乾燥繊維ベースで上記繊維1トン当たり約2.0g〜約100gの上記有機汚染物質除去補助剤をもたらす量で導入する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
13.上記組成物で処理した上記繊維のカッパー価が、該組成物で処理していない繊維よりも約0.2単位〜約3.0単位低い、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
14.ヘミセルロース分解酵素と、1つ若しくは複数のキシラン、1つ若しくは複数のピッチ成分又はその両方を含む有機汚染物質を繊維から、該繊維を有機汚染物質除去補助剤なしに組成物と接触させた場合よりも多量に除去することが可能な有機汚染物質除去補助剤とを含む組成物。
15.上記有機汚染物質除去補助剤が非イオン性界面活性剤である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物。
16.上記有機汚染物質除去補助剤がポロキサマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物。
17.上記有機汚染物質除去補助剤が、HLB値が16以上のポロキサマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物。
18.上記ヘミセルロース分解酵素がキシラナーゼ、マンナナーゼ又はその任意の組合せである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物。
19.上記組成物が脂肪分解酵素を更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物。
20.上記組成物の全固体重量ベースで約10重量%〜約90重量%の上記ヘミセルロース分解酵素と、約1.0%〜約10%の上記有機汚染物質除去補助剤とを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物。
21.任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法の紙製品。
22.任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の組成物を含む紙製品。
23.基質の酵素分解を増進する方法であって、
親水性親油性バランス(HLB)が少なくとも17である少なくとも1つの非イオン性高分子界面活性剤を基質組成物に添加することと、
セルラーゼ、キシラナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ又はそれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの酵素を上記基質組成物に添加することと、
分解産物を形成するように上記基質組成物を上記非イオン性高分子界面活性剤及び上記酵素の存在下で分解することと、
を含む、方法。
24.上記非イオン性高分子界面活性剤が、上記基質組成物の全重量ベースで少なくとも0.1重量%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
25.上記酵素及び上記非イオン性高分子界面活性剤が、0.01:10〜10:0.01という酵素対非イオン性高分子界面活性剤の重量比で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
26.上記非イオン性高分子界面活性剤の存在下での上記酵素の酵素活性が、該酵素単独での酵素活性よりも少なくとも10%高い、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
27.上記分解を約5℃〜約80℃の温度で行う、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
28.上記非イオン性高分子界面活性剤がPEO−PPO−PEO型のブロック共重合体である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
29.HLBが約22〜約30である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
30.上記非イオン性高分子界面活性剤及び上記酵素を、任意の順序で30分以内の間隔で順次添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
31.上記非イオン性高分子界面活性剤の平均分子量が約12000ダルトン〜約17000ダルトンである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
32.上記基質組成物が製紙用パルプ、製紙工場スラッジ又は動物の皮を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
33.基質の酵素分解を増進する方法であって、
第1級ヒドロキシル基で終端するPEO−PPO−PEO型の非イオン性ブロック共重合体を含む高分子界面活性剤を基質組成物に添加することと、
キシラナーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ペルオキシダーゼ又はそれらの任意の組合せを含む酵素を上記基質組成物に添加することと、
分解産物を形成するように上記基質組成物を上記高分子界面活性剤及び上記酵素の存在下で分解することと、
を含む、方法。
34.上記高分子界面活性剤が、上記基質組成物の全重量ベースで少なくとも0.1重量%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
35.上記酵素及び上記高分子界面活性剤が、0.1:10〜10:0.1という酵素対非イオン性高分子界面活性剤の重量比で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
36.上記高分子界面活性剤の存在下での上記酵素の酵素活性が、該酵素単独での酵素活性よりも少なくとも10%高い、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
37.上記分解を約5℃〜約80℃の温度で行う、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
38.上記高分子界面活性剤が少なくとも20のHLBを示す、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
39.HLBが約22〜約30である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
40.上記高分子界面活性剤及び上記酵素を、任意の順序で30分以内の間隔で順次添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
41.上記高分子界面活性剤の平均分子量が約12000〜約17000である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
42.上記基質組成物が繊維、製紙用パルプ、製紙工場スラッジ又は動物の皮を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
43.上記分解産物を脱水することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
44.基質の酵素分解を増進する方法であって、
親水性親油性バランス(HLB)が少なくとも20の少なくとも1つのプロポキシル化ブロック共重合体を含む少なくとも1つの非イオン性高分子界面活性剤を基質組成物に添加することと、
少なくとも1つの酵素を上記基質組成物に添加することと、
分解産物を形成するように上記基質組成物を上記非イオン性高分子界面活性剤及び上記酵素の存在下で分解することと、
を含む、方法。
45.上記非イオン性高分子界面活性剤が、上記基質組成物の全重量ベースで少なくとも0.1重量%の量で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
46.上記酵素及び上記非イオン性高分子界面活性剤が、0.1:10〜10:0.1という酵素対高分子界面活性剤の重量比で存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
47.上記非イオン性高分子界面活性剤の存在下での上記酵素の酵素活性が、該酵素単独での酵素活性よりも少なくとも10%高い、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
48.HLBが約22〜約30である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
49.上記非イオン性高分子界面活性剤の平均分子量が約13500〜約16000である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
50.上記基質組成物が製紙用パルプ、製紙工場スラッジ又は動物の皮を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
51.上記分解産物を脱水することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
【0078】
本発明は、文及び/又は段落に記載のような上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せは本発明の一部とみなされ、組合せ特徴に関しては限定されないことが意図される。
【0079】
本発明を以下の実施例により更に明らかにするが、これは本発明を純粋に例示するものであることが意図され、その中で量、パーセンテージ、比率等は全て他に特に規定がなければ重量基準とする。
【実施例】
【0080】
以下の実施例では、漂白前に種々の添加剤を含有する種々の組成物で前処理した漂白パルプについて決定した明度(%ISO)、明度の増大及びCIE Lスケール、及び/又はカッパー指標値の結果を提示する。「対照」は前処理しなかった。
【0081】
実施例1:
パルプはAlPac(Alberta,Canada)から入手した。繊維のタイプは、漂白した北方広葉樹クラフトであった。パルプに適用した処理プロセスは、キシラナーゼ及びポロキサマーを含有する組成物でパルプを処理する前処理段階(X)、酸素を伴う二酸化塩素漂白段階(Do)、及び過酸化水素を伴うアルカリ抽出段階(Ep)を含む3つの段階を含んでいた。キシラナーゼ(「XylA」)は、Iogen Corporationから水性懸濁液(およそ5重量%の活性酵素固体)として市販されるものであった。キシラナーゼ(「XylB」)は、Novozymesから水性懸濁液(およそ5重量%の活性酵素固体)として市販されるものであった。供給業者により保証されるキシラナーゼ(「XylB」)の活性は、1000AXU/g又は1000AXU/mLであった。ポロキサマーは、BASF Corporationから入手したPLURONIC(商標)F108ブロック共重合体界面活性剤(「Surf」)であった。キシラナーゼ及びポロキサマーを、図3の表(「表I」)に「g/mT」すなわちg/メートルトンの単位で示される濃度で水性溶媒に分散させた。メートルトンは、1000kgに等しい。使用した比較用組成物(「LBL CONC」)は、Dyadic International Inc.(Jupiter FL,U.S.A)からFIBREZYME(商標)LBLとして入手したセルロース分解性(cellulytic)及びヘミセルロース分解性の酵素複合体であった。漂白プロセスの段階の条件は以下の通りである:
X段階:60分間、50℃、pH7.3〜7.4、濃度10重量%のキシラナーゼ+ポロキサマー組成物。
Do段階:45分間、65℃、pH2.0〜2.1、濃度8%、10kg/メートルトン(繊維)のClO
Ep段階:60分間、65℃、pH11.7〜11.8、濃度10%、6kg/メートルトン(繊維)のH及び1.2重量%のNaOH。
【0082】
前処理していない(すなわち、Do段階及びEp段階前にX段階を有しない)パルプを対照として含めた。パルプの明度(ISO)を、パルプから調製したハンドシートについて抽出段階後に決定した。ハンドシートは、TAPPI T 218(「パルプの反射率試験のためのハンドシートの形成(Forming Handsheets for Reflectance Tests of Pulp)」)又は実質的に同等の方法に従って調製した。パルプの白色度及び色を、比色計を用いたハンドシートのCIE Lスケール値の測定によって評価した。
【0083】
図3の表に、二酸化塩素漂白段階Do及びアルカリ抽出段階Epの両方の後に決定したパルプの明度(%ISO)、明度の増大及びCIE Lスケール値を示す。図3の表中及び図4の棒グラフ中のデータから、パルプ繊維加工の前処理段階(用いる場合)、漂白段階及びアルカリ抽出段階後の明度(%ISO)が、対照(X段階を有しない)、又は漂白段階及び抽出段階前に酵素(キシラナーゼ)のみで処理したパルプ、又は比較用組成物(LBL CONC)と比較して、本発明によるキシラナーゼとポロキサマーとを含む組成物で前処理したパルプで最も高かったことが示される。図3の表中及び図5の棒グラフ中のデータから、パルプ繊維加工の前処理段階(用いる場合)、漂白段階及びアルカリ抽出段階後の明度の増大が、対照(X段階を有しない)、又は漂白段階及び抽出段階前に酵素(キシラナーゼ)のみで処理したパルプ、又は比較用組成物(LBL CONC)と比較して、本発明によるキシラナーゼとポロキサマーとを含む組成物で前処理したパルプで最も高かった。図3の表中の明度増大値は、対照サンプルの値に対して正規化してある。
【0084】
図3の表に示されるLスケール値に関しては、L値は対照(X段階を有しない)、又は漂白段階及び抽出段階前に酵素(キシラナーゼ)のみで処理したパルプ、又は比較用組成物(LBL CONC)と比較して、本発明によるキシラナーゼとポロキサマーとを含む組成物で前処理したパルプで最も高かった。
【0085】
CIELABの3つの座標は、色の明るさ(L=0は黒色を生じ、L=100はディフューズホワイト(diffuse white)を示し、スペキュラホワイト(specular white)では更に高い)、赤色/マゼンタと緑色との間のその位置(a、負の値は緑色を示し、正の値はマゼンタを示す)、及び黄色と青色との間のその位置(b、負の値は青色を示し、正の値は黄色を示す)を表す。図3に示される表中のデータに関しては、本発明によるキシラナーゼとポロキサマーとを含む組成物で前処理したパルプについて観察されるより高いL値は、これらのパルプが対照パルプ並びに漂白段階及び抽出段階前に酵素(キシラナーゼ)のみで処理したパルプ、又は比較用組成物(LBL CONC)よりも白色であったことを意味する。
【0086】
実施例2:
異なる用量の原材料キシラナーゼ(Novozymes A/S(Denmark)のPULPZYME(商標)HC)をベースとする、実施例1と同じ有機汚染物質除去補助剤を含有する様々な実験配合物を、パルプの処理のために調製した。実験を用いて、カッパー価を低減し、続いて明度を増進するキシラナーゼの潜在的有効性を比較した。
【0087】
これらの実験に使用した実験配合物の組成物を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1の配合物1中の「安定剤」は、プロピレングリコールとポリビニルピロリドンとを含有する水溶液である。
【0090】
前処理していない(すなわち、Do段階及びEp段階前にX段階を有しない)パルプを対照として含めた。試験においては、カッパー価(セルロース繊維に付着するキシラン材料の量)を、配合物1の酵素組成物による処理後のパルプ繊維のサンプル及び対照組成物について決定した。実施例1に使用したものと同様のパルプをこれらの実験に使用した。プロセスの全段階の条件は以下の通りとした。
【0091】
X段階:既知の重量の繊維サンプルを、実施例1に用いたのと同様の所定の時間及び温度で、配合物1の組成物と共に既知の濃度の酵素サンプルで処理した。キシラナーゼの特性に応じて、pHは通常僅かにアルカリである(pH=8)。
【0092】
Do段階:次いで、処理の酸性度をpH=2まで低下させ、実施例1に用いた条件と同様に、既知の量の酸化剤溶液(通常はClO)を添加した。
【0093】
Ep段階:各サンプル中の酸及び酵素を塩基及び過酸化物で中和し、実施例1に用いた条件と同様に、繊維をリンスした。
【0094】
配合物1による酵素処理後(X段階後)にカッパー価を決定した後、Do段階及びEp段階後に、処理し、漂白した繊維サンプルを使用して、明度測定用の紙サンプル(「ハンドシート」)を調製した。ハンドシートのワイヤ面及びフェルト面の両方について明度を決定した。製紙プロセスにおいて、抄紙機のワイヤと接触していない紙の側面がフェルト面であり、ワイヤ側と対向する。対照については、配合物1で処理していない繊維を漂白し、明度測定用の紙サンプル(「ハンドシート」)の調製に使用した。ハンドシートのLデータも測定した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2中のデータから、実験に使用した配合物中のキシラナーゼとPLURONIC(商標)F108との用量(g/mT)の増大により繊維のカッパー価が漸減することが実証される。これらの結果を図6の棒グラフに示すが、これにより処理繊維サンプルと比較して非処理対照繊維(対照)のより高いカッパー価が示される。パルプ繊維のカッパー価の酵素還元により観察される更なる結果は、実験器具によって測定される、同時に起こる処理繊維で作製されたハンドシート製品の繊維の明度の改善である。これは図7に示される。キシランの除去を補助する酵素ツール(キシラナーゼ+PLURONIC(商標)F108)の予想外の増進は、配合物1を試験する所与の条件下でのカッパー価の低減及び明度(%ISO)の改善の測定によって示される。これらの実験についての明度を増大させる配合物の最大有効用量は500g/mTと特定された。
【0097】
実施例3:
リパーゼを、実験室において様々な異なる界面活性剤の存在下でその酵素活性について試験した。リパーゼを初めに試験システムに添加した。次いで、脂質を含有する基質組成物を含む界面活性剤をシステムに添加した。界面活性剤の存在下での酵素の酵素活性を、界面活性剤の非存在下での同じ酵素の活性と比較した。結果を表3に示す。非イオン性高分子界面活性剤であるPLURONIC F108は、リパーゼ活性を54.4%増進することが可能であった。2つのカチオン性界面活性剤、すなわちBFL−5031及びBFL−5376をPLURONIC F108の代わりに使用し、リパーゼ活性が実際にそれぞれ45.9%及び57.7%阻害された。別の非イオン性界面活性剤TOMADOL 1−7は、リパーゼ活性を13.9%増進した。PLURONIC F108は、リパーゼ活性の改善についてTOMADOL 1−7よりもはるかに良好であった。アニオン性界面活性剤であるBSP−275は、リパーゼ活性を12.8%低減することにより負の効果を示した。
【0098】
表3:リパーゼ活性に対する界面活性剤の効果
【表3】
【0099】
出願人らはこの開示における全ての引用文献の内容全体を具体的に援用している。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と、任意の範囲下限又は好ましい値との任意の組合せからなるあらゆる範囲を具体的に開示するものと理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び少数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定することは意図されない。
【0100】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施により当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7