特許第6556806号(P6556806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6556806-共鳴音低減タイヤ 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556806
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】共鳴音低減タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20190729BHJP
   C09J 183/12 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B60C5/00 F
   C09J183/12
   C09J11/06
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-216666(P2017-216666)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-83617(P2018-83617A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0151942
(32)【優先日】2016年11月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514040088
【氏名又は名称】ハンコック タイヤ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ビョン、ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハク、ジュ
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/165899(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/031300(WO,A1)
【文献】 特開2009−024107(JP,A)
【文献】 特表2012−530828(JP,A)
【文献】 特表2005−517764(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/021589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
C09J 1/00−5/10
9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナーの内側に塗布された接着剤層と、
前記接着剤層に付着された吸音材層とを含み、
前記接着剤層は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール1〜5重量部、及び 接着促進剤5重量部を含むものである、共鳴音低減タイヤ。
【請求項2】
前記接着剤層は、前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して、可塑剤50〜70重量部をさらに含む、請求項1に記載の共鳴音低減タイヤ。
【請求項3】
前記可塑剤は、ジイソウンデシルフタレート(Di−iso−undecyl phthalate)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP、Di−ethylhexyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(DHP、Di−hexylphthalate)、ブチルベンジルフタレート(BBP、Butyl benzyl phthalate)、ジプロピルフタレート(DprP、Di−propyl phthalate)、ジ−n−ブチルフタレート(DBP、Di−n−butyl phthalate)、ジシクロヘキシルフタレート(DCHP、Dicyclohexyl phthalate)、ジ−n−フェニルフタレート(DPP、Di−n−phenyl phthalate)、ジエチルフタレート(DEP、Diethyl phthalate)、ジイソノニルフタレート(DINP、Di−iso−nonyl phthalate)、ジ−n−オクチルフタレート(DNOP、Di−n−octyl phthalate)、ジイソデシルフタレート(DIDP、Di−iso−decyl phthalate)、ジメチルフタレート(DMP、Dimethyl phthalate)、及びモノエチルヘキシルフタレート(MEHP、Monoethylhexylphthalate)からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項に記載の共鳴音低減タイヤ。
【請求項4】
前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルは、下記化学式1で表されるものである、請求項1に記載の共鳴音低減タイヤ:
【化1】
〜Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜3であるアルキル基又はアルコキシ基であり、
nは、10〜1,000である。
【請求項5】
前記化学式1に含まれたエーテル繰り返し単位は、下記化学式2で表されるオキシプロピレン(oxypropylene)繰り返し単位である、請求項に記載の共鳴音低減タイヤ。
【化2】
【請求項6】
前記アルコキシシランは、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、またはトリアルコキシシランであり、
前記アルコキシシランは、メトキシシラン、エトキシシラン及びプロポキシシランからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項に記載の共鳴音低減タイヤ。
【請求項7】
前記化学式1は、下記化学式1aで表されるものである、請求項に記載の共鳴音低減タイヤ。
【化3】
【請求項8】
前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルは、下記化学式3で表されるウレタン繰り返し単位をさらに含む、請求項に記載の共鳴音低減タイヤ。
【化4】
【請求項9】
前記吸音材層はポリウレタンフォームを含むものである、請求項1に記載の共鳴音低減タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性及び接着強度が向上した接着剤組成物を含むことによって、走行時の発熱及び変形にも吸音材の脱離がない安定した共鳴音低減タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車騒音と関連して政府の規制の強化及び電気車の需要が拡大するにつれて、タイヤから発生する騒音低減の要求が次第に増加している趨勢である。しかし、最近の開発動向は、タイヤの路面に接触するトレッド部が広幅となっており、タイヤの側面に該当するサイドウォール(Side wall)の扁平比が低いUHP(Ultra high performance)タイヤが脚光を浴びている。このようなタイヤは、構造的な特性に起因してサイドウォールの剛性が増加して、路面から伝達された衝撃をタイヤ自体構造で適切なダンピング(Damping)の役割を果たすことができず、これによって、騒音の誘発に関連する音圧を上昇させる結果をもたらす。これは、タイヤの内部(Cavity)で空気の振動を発生させて、車両の内部まで騒音が伝達され、ドライバーがこれを感知するようになるため、走行時の乗車感を減少させる原因となる(以下、空気の振動による騒音は、共鳴音と通称する。)。
【0003】
共鳴音を低減させるための従来の技術としては、開放型セルを有しているポリウレタン材質の発泡体を活用する技術がある。しかし、このようなポリウレタン材質の発泡体をタイヤの内側のインナーライナーに付着するために一般の液状接着剤を使用する場合、接着剤が吸音材層に吸収されてしまい、吸音力及び接着力を著しく低下させるという問題があった。
【0004】
液状接着剤の代わりに、光又は熱で硬化させる接着剤の場合(JP2015−166134A)にも、優れた初期接着力は有し得るが、弾性のような変形力が低いため、車両の荷重によってタイヤに変形が加えられた状態で追加で加えられる反復的な変形と振動に耐えずに破壊されることによって、吸音材の剥離又は離脱が発生するという問題がある。
【0005】
ブチル系ホットメルト接着剤を適用する場合、タイヤの変形にも十分に伸張して外部衝撃を緩和することができるが、ホットメルト系接着剤の特性上、温度が増加するほど粘度が低くなるため、流動性が増加し、走行時にタイヤ内に付着された吸音材の位置が変形し得るため、タイヤのバランス又はユニフォーミティーに悪影響をもたらすことがある。
【0006】
シリコン系列の接着剤を使用した特許があるが、強度が低いため、タイヤの高い変形に脆弱であるという問題がある。
【0007】
そこで、前記のような接着剤の問題点を解決し、タイヤの共鳴音を低減させるための吸音材をインナーライナーに接着させるために、タイヤの変形及び発熱に耐えられる特殊な接着剤の使用が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本公開特許第2015−166134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、保持力が強い接着剤で吸音材を付着して、タイヤの騒音のうちタイヤの内部の空気の振動で発生する共鳴音を低減させたタイヤを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、紫外線吸収剤をさらに含む接着剤を使用してオゾン老化を予防することができるタイヤを提供することである。
【0011】
本発明の更に他の目的は、保持力が強い接着剤組成物で吸音材を付着して、走行時のタイヤの温度変化、自動車の荷重及び外部衝撃による変形にも、吸音材の剥離や離脱なしにタイヤの摩耗寿命まで共鳴音低減性能が維持されるタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、インナーライナーの内側に塗布された接着剤層;及び前記接着剤層に付着された吸音材層を含み、前記接着剤層は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むものである、共鳴音低減タイヤを提供する。
【0013】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、及びメチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0014】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して1〜5重量部含まれてもよい。
【0015】
前記接着剤層は、前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して、可塑剤50〜70重量部をさらに含むものであってもよい。
【0016】
前記可塑剤は、ジイソウンデシルフタレート(Di−iso−undecyl phthalate)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP、Di−ethylhexyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(DHP、Di−hexylphthalate)、ブチルベンジルフタレート(BBP、Butyl benzyl phthalate)、ジプロピルフタレート(DprP、Di−propyl phthalate)、ジ−n−ブチルフタレート(DBP、Di−n−butyl phthalate)、ジシクロヘキシルフタレート(DCHP、Dicyclohexyl phthalate)、ジ−n−フェニルフタレート(DPP、Di−n−phenyl phthalate)、ジエチルフタレート(DEP、Diethyl phthalate)、ジイソノニルフタレート(DINP、Di−iso−nonyl phthalate)、ジ−n−オクチルフタレート(DNOP、Di−n−octyl phthalate)、ジイソデシルフタレート(DIDP、Di−iso−decyl phthalate)、ジメチルフタレート(DMP、Dimethyl phthalate)、及びモノエチルヘキシルフタレート(MEHP、Monoethylhexylphthalate)からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0017】
前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルは、下記化学式1で表されるものであってもよい。
【0018】
【化1】
【0019】
〜Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜3であるアルキル基又はアルコキシ基であり、nは、10〜1,000である。
【0020】
前記エーテル繰り返し単位は、下記化学式2で表されるオキシプロピレン(oxypropylene)繰り返し単位であってもよい。
【0021】
【化2】
【0022】
前記アルコキシシランは、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、またはトリアルコキシシランであってもよく、前記アルコキシシランは、メトキシシラン、エトキシシラン及びプロポキシシランからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0023】
前記化学式1は、下記化学式1aで表されるものであってもよい。
【0024】
【化3】
【0025】
前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルは、下記化学式3で表されるウレタン繰り返し単位をさらに含むものであってもよい。
【0026】
【化4】
【0027】
前記吸音材層はポリウレタンフォームを含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るタイヤは、保持力が強い接着剤で吸音材を付着して、タイヤの騒音のうちタイヤの内部の空気の振動で発生する共鳴音を低減させることができる。
【0029】
本発明に係るタイヤは、紫外線吸収剤をさらに含む接着剤を使用してオゾン老化を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一具現例による空気圧タイヤの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0032】
本発明の一実施例に係る共鳴音低減タイヤは、インナーライナーの内側に塗布された接着剤層;及び前記接着剤層に付着された吸音材層を含み、前記接着剤層は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル及び紫外線吸収剤を含む。
【0033】
本発明の一実施例に係る空気圧タイヤの側断面図を図1に示した。図1を参照すると、本発明に係る空気圧タイヤ1は、インナーライナーの内側面に塗布された接着剤層2、及び前記接着剤層2に付着された吸音材層3を含む。
【0034】
前記接着剤層2は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル及び紫外線吸収剤を含む。
【0035】
一般に、接着剤が紫外線を吸収すると、自由ラジカルが生成される。これらのラジカルは、材料内で光酸化、増殖などの過程を経て遊離基などの再結合によって連鎖終了となる。これにより、接着剤は、クラック、膨れ(Blistering)、分離(Delamization)などの問題が発生するようになり、このような問題は、製品の寿命を低下させる原因となる。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能力が強いため、ポリマーラジカルの発生を抑制することによって、前記の問題を解決するのに効果的である。
【0036】
前記紫外線吸収剤は、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基、ヒドロキシ基、フェニル基、カルボキシ基及びメルカプト基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基を含む化合物を含むものであってもよい。
【0037】
より具体的に、前記紫外線吸収剤は、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基、ヒドロキシ基、フェニル基、カルボキシ基及びメルカプト基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を好ましく使用することができ、ヒドロキシ基及びフェニル基を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることが最も好ましい。前記ヒドロキシ基及びフェニル基を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む接着剤層2は、オゾン老化の条件でも接着剤の物性が維持されるという特徴がある。
【0038】
タイヤは、自動車の走行時に発生するオゾンによって老化(亀裂やひび割れが発生)する現象であるオゾンクラックが発生することがある。オゾンは、自動車の排気ガスと太陽(紫外線)が反応しながら発生するようになるが、本発明の接着剤層2に含まれる紫外線吸収剤で紫外線を吸収する場合、オゾン発生量が減少するようになり、これにより、オゾンによる老化が予防されると予測される。
【0039】
特に、前記ヒドロキシ基及びフェニル基を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、紫外線吸収波長範囲が広く、吸収の程度が大きいため、性能の面で優れている。
【0040】
前記ヒドロキシ基及びフェニル基を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、具体的に、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、及びメチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0041】
前記紫外線吸収剤は、前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して1〜5重量部含まれるものであってもよい。
【0042】
前記紫外線吸収剤が1重量部未満である場合、紫外線吸収による遊離基の発生を抑制することができないため、クラック、膨れ(Blistering)、分離(Delamization)などの問題が発生することがあり、5重量部を超えて含まれる場合、接着剤層2の接着力を低下させる問題が発生することがある。
【0043】
前記の成分以外に、前記接着剤層2は、選択的に可塑剤、脱水剤、接着促進剤、及び硬化促進剤など、通常の接着剤の物性的特性の改善のために用いられる添加剤を1種単独で又は2種以上混合してさらに含むことができる。
【0044】
前記のように接着剤層2に紫外線吸収剤をさらに含む場合、タイヤの製造時に接着剤層を常温で硬化させるステップにおいて、空気中の水分(HO)と反応して縮合反応又は加水分解が起こってしまい、硬化速度が非常に遅いという欠点があり、接着剤層の硬化が遅延すると、タイヤの工程段階が遅延して生産性が低下することがある。
【0045】
前記接着剤層2は、可塑剤の含量を増加させることによって前記問題点を解決することができる。本発明に係る両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む接着剤層2は、前記可塑剤の含量を増加させても物性を維持させることができ、硬化速度及び生産性低下の問題を解決することができる。
【0046】
前記可塑剤は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して50〜70重量部含まれるものであってもよい。
【0047】
前記可塑剤が50重量部未満である場合、混合時に充填剤の混合を適切に行うことができないため、分散が悪くなってしまい、全般的な接着剤の物性に問題が発生することがあり、70重量部を超えて含まれる場合、低分子量材料が多量含有されて強度が低下してしまい、接着力に問題が発生することがある。
【0048】
前記可塑剤は、エポキシ系、ポリエステル系、ベンゾエート系、またはクエン酸系可塑剤であってもよいが、フタレート系可塑剤であることが好ましく、具体的に、ジイソウンデシルフタレート(Di−iso−undecyl phthalate)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP、Di−ethylhexyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(DHP、Di−hexylphthalate)、ブチルベンジルフタレート(BBP、Butyl benzyl phthalate)、ジプロピルフタレート(DprP、Di−propyl phthalate)、ジ−n−ブチルフタレート(DBP、Di−n−butyl phthalate)、ジシクロヘキシルフタレート(DCHP、Dicyclohexyl phthalate)、ジ−n−フェニルフタレート(DPP、Di−n−phenyl phthalate)、ジエチルフタレート(DEP、Diethyl phthalate)、ジイソノニルフタレート(DINP、Di−iso−nonyl phthalate)、ジ−n−オクチルフタレート(DNOP、Di−n−octyl phthalate)、ジイソデシルフタレート(DIDP、Di−iso−decyl phthalate)、ジメチルフタレート(DMP、Dimethyl phthalate)、及びモノエチルヘキシルフタレート(MEHP、Monoethylhexylphthalate)からなる群から選択されるものであってもよい。
【0049】
前記接着促進剤はアミノシランを用いることができ、前記アミノシランは、n−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ機能性トリメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシエチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、シアノエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、及びn−エチル−3−トリメトキシシリル−2−メチルプロパンアミンからなる群から選択されるものであってもよい。
【0050】
前記接着促進剤は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して5〜7重量部含まれるものであってもよい。
【0051】
前記接着促進剤が5重量部未満である場合、被着物(吸音材層3)との接着に問題が発生することがあり、7重量部を超えて含まれる場合、初期接着強度は向上し得るが、熱老化などでの接着力が著しく減少する問題が発生することがある。
【0052】
前記硬化促進剤として錫含有化合物を用いることができ、前記錫含有化合物は、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、錫オクトエート、イソブチル錫トリセロエート、ジブチル錫オキサイド、可溶性ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス−ジイソオクチルフタレート、ビス−トリプロポキシシリルジオクチル錫、ジブチル錫ビス−アセチルアセトン、シリル化ジブチル錫ジオキサイド、カルボメトキシフェニル錫トリス−ウベレート、イソブチル錫トリセロエート、ジメチル錫ジブチレート、ジメチル錫ジ−ネオデカノエート、トリエチル錫タートレート、ジブチル錫ジベンゾエート、錫オレエート、錫ナフテネート、ブチル錫トリ−2−エチルヘキシルヘキソエート、錫ブチレート、及びジオルガノ錫ビス−ジケトネートからなる群から選択されるものであってもよい。
【0053】
前記硬化促進剤は、他の金属系に比べて人体に対する安全度が高く、触媒能及び熱安定性に優れる。主にシリコン系接着剤の常温硬化のために用いられる触媒であって、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して1〜3重量部含まれてもよい。
【0054】
前記硬化促進剤が1重量部未満である場合、硬化速度が遅いため、工程中に被着物が剥離される問題が発生することがあり、3重量部を超えて含まれる場合、ゲル化が促進されてしまい、基本的な物性及び接着力に問題が発生することがある。
【0055】
前記脱水剤は、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxy silane)、及びビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxy silane)からなる群から選択されるものであってもよい。
【0056】
前記脱水剤は、加水分解性及び置換性能を示す結合を分子構造内に有しているため、架橋時に架橋率を向上させ、加水分解によって置換力の向上に影響を及ぼす。また、前記脱水剤は、シランカップリング反応で接着剤層2の結合力に影響を与える。
【0057】
前記脱水剤は、両末端にアルコキシシランを含むポリエーテル100重量部に対して1〜5重量部含まれるものであってもよい。
【0058】
前記脱水剤が1重量部未満である場合、脱水反応が低いため、シランカップリング結合が不足になり、シリカとの結合力が低くなる問題が発生することがあり、5重量部を超えて含まれる場合、結合されなかった低分子量物質が内部に留まってしまい、物性の低下をもたらすことがある。
【0059】
前記接着剤層2に含まれる両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルは、下記化学式1で表すことができる。
【0060】
【化5】
【0061】
〜Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜3であるアルキル基又はアルコキシ基であり、nは、10〜1,000である。
【0062】
前記エーテル繰り返し単位は、下記化学式2で表されるオキシプロピレン(oxypropylene)であってもよい。
【0063】
【化6】
【0064】
前記化学式1の重合体は、両末端に機能性基としてアルコキシシランを含んで重合体間の架橋構造をなし得るようにして、接着強度を強化させた。
【0065】
前記アルコキシシランは、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランであってもよい。
【0066】
前記アルコキシシランは、炭素数1〜3のアルコキシ基を含むものであってもよく、好ましくは、メトキシシラン、エトキシシラン、及びプロポキシシランからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、より具体的に、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジプロポキシシラン、メチルジブトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルジブトキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジプロポキシシラン、プロピルジブトキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルジブトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、ジエチルプロポキシシラン、ジエチルブトキシシラン、ジプロピルメトキシシラン、ジプロピルエトキシシラン、ジプロピルプロポキシシラン、ジプロピルブトキシシラン、ジブチルメトキシシラン、ジブチルエトキシシラン、ジブチルプロポキシシラン、ジブチルブトキシシラン、メチルエチルメトキシシラン、メチルプロピルメトキシシラン、メチルブチルメトキシシラン、メチルエチルエトキシシラン、メチルプロピルエトキシシラン、メチルブチルエトキシシラン、メチルエチルプロポキシシラン、メチルプロピルプロポキシシラン、メチルブチルプロポキシシラン、メチルエチルブトキシシラン、メチルプロピルブトキシシラン、メチルブチルブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、及びトリプロポキシシランからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0067】
前記化学式1は、重量平均分子量が1,000〜30,000g/molであるものであってもよい。
【0068】
重量平均分子量が1,000g/mol未満の場合、分子量が少ないため、伸び率が低下してしまい、引張物性の低下の問題が発生することがあり、30,000g/molを超える場合、両末端の結合基が少ないため、架橋密度が低下してしまい、引張物性及び結合力に問題が発生することがある。
【0069】
前記化学式1は、より具体的に、下記化学式1aで表されるものであってもよい。
【0070】
【化7】
【0071】
〜Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜3であるアルキル基又はアルコキシ基であり、nは、10〜1,000である。
【0072】
両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルを含む接着剤組成物は、自動車の荷重及び外部の衝撃などによる変性や走行中の発熱にも、吸音材の脱着、剥離または離脱なしにタイヤの摩耗寿命まで共鳴音低減性能を維持することができる。
【0073】
前記両末端にアルコキシシランを含むポリエーテルは、下記化学式3で表されるウレタン繰り返し単位をさらに含むことができる。
【0074】
【化8】
【0075】
前記ウレタン繰り返し単位は、1つ以上のウレタン繰り返し単位がポリエーテルと共重合体をなして含まれるものであってもよい(random copolymer)。
【0076】
ウレタン繰り返し単位をさらに含むことによって、一定の弾性力を維持しながらも、外力に耐えられるほど強度を向上させることができる。
【0077】
前記吸音材層3は、吸音材としてポリウレタンフォームを含むことが好ましい。
【0078】
前記ポリウレタンフォームは、基本的にポリイソシアネート化合物(polyisocyanate compound)とポリオール(polyhydroxy compound)をウレタン反応させて製造するものであってもよい。
【0079】
前記ポリウレタンフォームは、開放セルを有するポリウレタン系列の吸音材のことをいい、密度が25〜35kg/mであるものであってもよい。
【0080】
開放セルを有するポリウレタンフォームは、粘性の低い接着剤がポリウレタンフォームに過度に吸収されてしまい、インナーライナーとの接着が難しいという問題があった。しかし、シリコン接着剤は、粘性と弾性が高いため、開放セルの表面にのみ吸収されて接着力が低下せず、高い変形に対しても接着剤層の耐久性が確保されることで、ポリウレタンフォームを接着させるのに好適である。
【0081】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0082】
[製造例:接着剤組成物の製造]
【0083】
下記の表1に示したような組成を用いて接着剤組成物を製造した。
【0084】
【表1】
【0085】
1)変性シリコン重合体:ポリオキシプロピレンメトキシシラン
【0086】
2)紫外線吸収剤1:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2−(2’−hydroxy−5’−methylphenyl)benzotriazole)
【化9】
【0087】
3)紫外線吸収剤2:2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(2−Ethylhexyl 2−cyano−3,3−diphenylacrylate)
【化10】
【0088】
[試験例1:接着力の評価]
【0089】
前記実施例、参考例及び比較例で製造した接着剤をタイヤのインナーライナーに塗布して接着剤層を形成し、吸音材を付着して、共鳴音低減タイヤを製造した。接着剤層の物性を測定して表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
機械的物性及び老化物性はDIN53504、接着力はASTM D1002に準拠して評価した。
【0092】
老化物性は、オゾン雰囲気の老化条件で、オゾン濃度50pphm±5、100℃の条件のオーブンに7日間保管した後に測定した。
【0093】
一般の接着力は、常温(25℃)で7日間硬化させた後に測定し、老化接着力は、前記老化条件と同一に老化させた後に測定した。
【0094】
前記表2を説明すると、紫外線吸収剤を含まない比較例1の場合、オゾン老化後に硬度が向上して、接着剤が多少硬化したことが確認できた。硬化がさらに進行すると、接着剤層が弾性を失って脱着が起こる可能性が大きくなる。
【0095】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ではない紫外線吸収剤を用いる場合(比較例2)、機械的物性、オゾン老化物性及び接着力が比較例1よりは多少向上したが、実施例1〜に比べて低いことが確認できた。
【0096】
紫外線吸収剤を含む実施例1〜は、老化後にも物性の変化が大きくないことが確認できた。
【0097】
特に、実施例2の物性が、硬度及び伸び度が適正な値で示され、老化後にも非常に高い物性を示すものと確認されて、可塑剤を55〜65重量部含むことが最も効果的なものと予想される。
【0098】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた、本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0099】
1 空気圧タイヤ
2 接着剤層
3 吸音材層
図1