(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556843
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】燃料電池用カソード触媒層の製造方法、及びこれを含む燃料電池用膜−電極アセンブリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20190729BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20190729BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20190729BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20190729BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20190729BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20190729BHJP
B01J 23/75 20060101ALI20190729BHJP
C01B 32/15 20170101ALI20190729BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M8/10 101
H01M4/96 M
B01J37/08
B01J35/10 301G
B01J37/04 102
B01J23/75 M
C01B32/15
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-530700(P2017-530700)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-504740(P2018-504740A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】KR2016005530
(87)【国際公開番号】WO2016195313
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0076585
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ ユン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,デ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ホン チョル
【審査官】
高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−071253(JP,A)
【文献】
特開2007−137755(JP,A)
【文献】
鈴木孝宗,山内愁輔,様々なメソ(ナノ)多孔体の合成と応用,オレオサイエンス,日本,2013年,第13巻第8号,pp.29-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm〜1000nmの長さを有するナノロッド(nano rod)の形態の親水性基を含む規則性メソポーラス炭素(ordered mesoporous carbon)を、1500℃〜2000℃で1時間〜2時間加熱することで熱処理する段階;
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素を、アイオノマーとしてのスルホン化した高フッ化ポリマーと共に、有機溶媒としての、水とアルコールとの混合物中に、3ロールミル法を用いて分散させて組成物を形成する段階;及び
前記組成物を支持膜上にコーティング及び乾燥する段階
を含む、燃料電池用カソード触媒層の製造方法。
【請求項2】
前記支持膜は、ポリエチレンフィルム、マイラー膜、ポリエチレンテレフタレート膜、テフロン(登録商標)膜、ポリイミド膜、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の燃料電池用カソード触媒層の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して1重量%〜15重量%含まれる、請求項1または2に記載の燃料電池用カソード触媒層の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により燃料電池用カソード触媒層を製造することを含む、燃料電池用膜−電極アセンブリー(Membrane Electrode Assembly)の製造方法。
【請求項5】
前記燃料電池は高分子電解質型燃料電池(PEMFC)である、請求項4に記載の燃料電池用膜電極−アセンブリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料電池用カソード触媒層、この製造方法、及びこれを含む膜-電極アセンブリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(Fuel cell)は、メタノール、エタノール、天然ガスといった炭化水素系の物質内に含有されている水素と、酸素との化学反応のエネルギーを、直接電気エネルギーに変換させる発電システムである。
【0003】
このような燃料電池は、化石エネルギーに取って替わることができるクリーンエネルギー源であり、単位電池の積層によるスタックの構成でもって多様な範囲の出力を出すことができる利点を有しているのであり、小型のリチウム電池に比べて4倍〜10倍のエネルギー密度を示すことから、小型及び移動用の携帯電源として注目されている。
【0004】
燃料電池の代表的な例としては、高分子電解質型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel cell)、直接酸化型燃料電池(Direct Oxidation Fuel cell)が挙げられる。前記直接酸化型燃料電池において燃料としてメタノールを使う場合は、直接メタノール燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel cell)と言う。
【0005】
前記高分子電解質型燃料電池は、エネルギー密度が高くて出力が高いという利点を持っているが、水素ガスの取扱いに注意を要し、燃料ガスである水素を生産するためにメタン、メタノール及び天然ガスなどを改質するための、燃料改質装置などの付帯設備を必要とする問題点がある。
【0006】
これに対し、直接酸化型燃料電池は高分子電解質型燃料電池に比べてエネルギー密度は低いが、燃料の取扱いが容易で、運転温度が低く、常温での運転が可能であり、特に燃料改質装置を必要としないという利点がある。
【0007】
このような燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させるスタックは、膜-電極アセンブリー(Membrane−Electrode Assembly:MEA)と、セパレーター(Separator;又はバイポーラープレート(Bipolar Plate)ともいう)とからなる単位セルが、数個ないし数十個積層された構造を有する。前記膜電極アセンブリーは、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を挟んで、アノード(一名、“燃料極”又は“酸化電極”という)と、カソード(一名“空気極”又は“還元電極”という)とが位置する構造を有する。
【0008】
燃料電池で電気を発生させる原理は、次のとおりである。燃料が燃料極であるアノードに供給されてアノードの触媒に吸着され、燃料が酸化して水素イオンと電子を生成するのであり、この際、発生した電子は、外部回路を通じて酸化極であるカソードに到逹し、水素イオンは、高分子電解質膜を通過してカソードに伝達される。カソードに酸化剤が供給され、この酸化剤、水素イオン及び電子が、カソードの触媒上で反応して水を生成することで、電気を発生させることになる。
【0009】
燃料電池の性能は、アノード及びカソードの触媒の性能により大きな影響を受けることから、触媒の活性を高める研究が、活発に進められている。
【0010】
特に、高分子電解質型燃料電池は、低い作動温度で高効率及び高出力を出すことができるという利点を有するので、他の燃料電池より早く商用化及び実用化が進められている。
【0011】
高分子電解質型燃料電池の商用化を実現するためには、白金の使用量を減らしてコストを低めることがカギである。しかし、白金の使用量が減れば、出力及び耐久性のいずれの面でも不利に作用するであろう。
【0012】
一般に、大きな比表面積を有するカーボンに、ナノサイズのPtを担持したPt/C触媒が、最も多く使われているが、触媒の劣化現象による耐久性の低下が問題となる。
【0013】
したがって、白金の量の減少による性能及び耐久性の問題点の解決のための、触媒層の構造設計の研究が続けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一具現例では、耐久性及び出力性能に優れるとともに、経済的である燃料電池用カソード触媒層を提供することである。
【0015】
他の一具現例では、前記燃料電池用カソード触媒層の製造方法を提供することである。
【0016】
さらに他の一具現例では、前記燃料電池用カソード触媒層を含む膜電極アセンブリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一具現例は、熱処理された規則性メソポーラス炭素(ordered mesoporous carbon)を含み、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して1重量%〜15重量%含まれる燃料電池用カソード触媒層を提供する。
【0018】
前記熱処理は、900℃〜3000℃で30分〜3時間遂行することができる。
【0019】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、3nm〜10nmの平均直径を有する気孔を含むことができる。
【0020】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、その表面が疎水性であってもよい。
【0021】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、ナノロッド(nano rod)の形態であってもよい。
【0022】
前記ナノロッドは、500nm〜1000nmの長さを有してもよい。
【0023】
前記燃料電池用カソード触媒層内の総気孔の直径の和は、40nm〜120nmであってもよい。
【0024】
前記燃料電池用カソード触媒層は、Co、Ru、又はこれらの組合せをさらに含むことができる。
【0025】
他の一具現例では、親水性基を含む規則性メソポーラス炭素(ordered mesoporous carbon)を熱処理する段階;前記熱処理された規則性メソポーラス炭素をアイオノマーと一緒に有機溶媒中に分散させて組成物を形成する段階;及び前記組成物を支持膜上にコーティング及び乾燥する段階を含む燃料電池用カソード触媒層の製造方法を提供する。
【0026】
前記熱処理は前述したとおりである。
【0027】
前記分散には、3ロールミル法を使うことができる。
【0028】
前記アイオノマーは、スルホン化した高フッ化ポリマーであってもよい。
【0029】
前記支持膜は、ポリエチレンフィルム、マイラー(商標)膜、ポリエチレンテレフタレート膜、テフロン(登録商標)膜、ポリイミド膜、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0030】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、ナノロッド(nano rod)の形態であってもよい。
【0031】
前記ナノロッドは前述したとおりである。
【0032】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して1重量%〜15重量%含まれうる。
【0033】
さらに他の一具現例では、前記燃料電池用カソード触媒層を含む燃料電池用膜電極アセンブリーを提供する。
【0034】
前記燃料電池は、高分子電解質型燃料電池(PEMFC)であってもよい。
【発明の効果】
【0035】
前記燃料電池用カソード触媒層は、耐久性、出力性能及び経済性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例1及び比較例1による膜−電極アセンブリーの電流−電圧グラフである。
【
図2】実施例1及び比較例1による膜−電極アセンブリー内のカソード触媒層を電気化学的インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy;EIS)を用いて分析したグラフ(1)である。
図2及び
図3で、Rclは触媒層にかかる抵抗(触媒層と前記触媒層に隣接した層(メンブレン;membrane)の間の界面抵抗)を意味し、Rmは前記メンブレンの抵抗を意味し、Rtrは物質移動抵抗(mass transfer resistance)を意味し、Rctは電荷移動抵抗(charge transfer resistance)を意味する。
【
図3】実施例1及び比較例1による膜電極アセンブリー内のカソード触媒層を電気化学的インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy;EIS)を用いて分析したグラフ(2)である。
【
図4】実施例1及び比較例1による膜電極アセンブリー内のカソード触媒層の気孔容積及び気孔大きさを比較したグラフ(1)である。
【
図5】実施例1及び比較例1による膜電極アセンブリー内のカソード触媒層の気孔容積及び気孔大きさを比較したグラフ(2)である。
【
図6】燃料電池システムの構造を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、具現例について、当該技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、詳細に説明する。しかし、具現例は、種々の相異なる形態にて具現可能であり、ここで説明する具現例に限定されない。
【0038】
本出願は、2015年5月29日付の大韓民国特許出願第10−2015−0076585号に基づく優先権の利益を主張し、該大韓民国特許出願の文献に開示された全ての内容を、この明細書の一部として含む。
【0039】
図面では多くの層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。
【0040】
層、膜、領域、板などの部分が他の部分“上に”あると言うとき、これは他の部分の“すぐ上に”ある場合だけではなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の“すぐ上に”あると言うときには、中間に他の部分がないことを意味する。
【0041】
本明細書で、“これらの組合せ”とは、構成物の合金、混合物、積層物などを意味する。
【0042】
一具現例は、熱処理された規則性メソポーラス炭素(ordered mesoporous carbon)を含み、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素が、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して1重量%〜15重量%含まれる、燃料電池用カソード触媒層を提供する。
【0043】
前記燃料電池用カソード触媒層は、熱処理された規則性メソポーラス炭素を含むことで、構造的安全性に優れ、物質移動抵抗(mass transfer resistance)及び電荷移動抵抗(charge transfer resistance)を減らして、前記燃料電池用カソード触媒層を含む膜電極アセンブリーの耐久性及び出力性能を大きく向上させることができる。
【0044】
また、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して、1重量%〜15重量%含まれる。前記範囲で、熱処理された規則性メソポーラス炭素が含まれることにより、気孔容積を調節することができ、よって出力性能を向上させることができる。すなわち、前記含量範囲の場合、気孔容積及び気孔の粒径が増加してガス移動経路が充分に確保され、高出力特性を達成することができる。しかし、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素が、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して、1重量%未満含まれる場合、ガス移動経路を充分に確保することができず、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素が、燃料電池用カソード触媒層総量に対して15重量%を超えて含まれる場合、耐久性が低下するため好ましくない。
【0045】
前記熱処理は、900℃〜3000℃で30分〜3時間行うことができる。前記条件の下で規則性メソポーラス炭素を熱処理する場合、前記規則性メソポーラス炭素の表面が改質される。すなわち、前記規則性メソポーラス炭素は、その表面にヒドロキシ基などの親水性基を有するが、前記熱処理の実施によって、その表面が疎水性に変わり、これにより、有機溶媒などに対する規則性メソポーラス炭素の分散度が向上しうる。すなわち、前記温度範囲で規則性メソポーラス炭素を熱処理することにより、前記規則性メソポーラス炭素の表面の親水性及び疎水性の特性を制御して、有機溶媒などでの分散性向上を図ることができる。そして、これは、究極的に、一具現例によるカソード触媒層を含む膜電極アセンブリーについての高加湿条件での高耐久性を達成することができるようにする。
【0046】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、3nm〜10nmの平均直径、例えば3nm〜5nmの平均直径を有する気孔を含むことができる。例えば、前記気孔の平均直径は3.5nmであってもよいが、これに限定されるものではない。また、前記燃料電池用カソード触媒層内における全ての気孔の直径の合計は40nm〜120nmであってもよい。気孔が前記範囲の平均直径を有する場合、又は前記気孔の直径の和が前記範囲内である場合、ガス移動経路が充分に確保されて、高出力などの電気化学的活性を向上させることができる。
【0047】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、ナノロッド(nano rod)の形態であってもよい。この場合、ガスの物質移動が容易になる効果がある。
【0048】
前記ナノロッドは、500nm〜1000nmの長さを有しても良い。この場合、粒子どうし凝集せず、大きな表面積を有することができる。
【0049】
前記燃料電池用カソード触媒層は、Co、Ru又はこれらの組合せをさらに含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記構成を有する一具現例による燃料電池用カソード触媒層の製造工程は、親水性基を含む規則性メソポーラス炭素(ordered mesoporous carbon)を熱処理する段階;前記熱処理された規則性メソポーラス炭素を、アイオノマーと共に有機溶媒内に分散させて、組成物を形成する段階;及び前記組成物を支持膜上にコーティングして乾燥する段階を含む。
【0052】
前記分散には、3ロールミル法を使うことができる。規則性メソポーラス炭素は、自ら凝集する傾向があるため、他の触媒などと溶媒中で混合する際、よく分散しないという問題がある。したがって、ヒドロキシ基などの親水性基を含む規則性メソポーラス炭素を熱処理するにあたり、前記熱処理以外に、3ロールミル法を用い、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素を、少量の有機溶媒(水とアルコールとの溶媒など)及びアイオノマーと共に分散させる。
【0053】
前記アイオノマーとしては、フッ素化アルキレンで構成された主鎖と、末端にスルホン酸基を有するフッ素化ビニルエーテルで構成された測鎖とを有する、スルホン化した高フッ化ポリマー(例えば、Nafion(Dupont社の商標))が、代表的な例であり、これと類似した性質を有する高分子物質であれば、いずれも使うことができる。
【0054】
前記支持膜は、ポリエチレンフィルム、マイラー膜、ポリエチレンテレフタレート膜、テフロン(登録商標)膜、ポリイミド膜又はこれらの組合せを含むことができる。
【0055】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、ナノロッド(nano rod)の形態であってもよい。この場合、ガスの物質移動が容易になる効果がある。
【0056】
前記ナノロッドは、500nm〜1000nmの長さを有してもよい。この場合、粒子どうしが凝集せず、大きな表面積を有することができる。
【0057】
前記熱処理された規則性メソポーラス炭素は、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して1重量%〜15重量%含まれうる。前記範囲で熱処理された規則性メソポーラス炭素が含まれることにより、気孔容積を調節することができ、よって出力性能を向上させることができる。すなわち、前記含量範囲の場合、気孔容積及び気孔の粒径が増加して、ガス移動経路が充分に確保され、高出力特性を達成することができる。
【0058】
他の具現例は、前記燃料電池用カソード触媒層を含む燃料電池用膜−電極アセンブリーを提供する。
【0059】
前記膜−電極アセンブリーはカソード及び/又はアノードをさらに含むことができる。すなわち、燃料電池用膜電極アセンブリーは、互いに対向して位置するカソード及びアノードと、前記カソード及びアノードの間に位置する高分子電解質膜とを含み、前記カソードは一具現例による燃料電池用カソード触媒層をさらに含むことができる。
【0060】
前記高分子電解質膜としては、一般的に燃料電池において高分子電解質膜として使われ、水素イオン伝導性を有する高分子樹脂で製造されたものであれば、いずれも使うことができる。その代表的な例としては、測鎖にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選択される陽イオン交換基を持っている高分子樹脂を挙げることができる。
【0061】
前記高分子樹脂の代表的な例としては、フルオロ系高分子、ベンズイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、ポリエーテルイミド系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル−エーテルケトン系高分子又はポリフェニルキノキサリン系高分子から選択される1種以上を含むことができる。高分子樹脂の代表的な例としては、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)(一般的にナフィオンとして市販される)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルとの共重合体、脱フッ素化した硫化(スルホン化)ポリエーテルケトン、アリールケトン、ポリ[(2,2’−m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾール][poly(2,2’−(m−phenylene)−5,5’−bibenzimidazole]、又はポリ(2,5−ベンズイミダゾール)から選択される1種以上を有することができる。
【0062】
また、このような水素イオン伝導性高分子の水素イオン伝導性基において、Hを、Na、K、Li、Cs、又はテトラブチルアンモニウムに置換することもできる。水素イオン伝導性高分子の水素イオン伝導性基においてHをNaに置換する場合にはNaOHを、テトラブチルアンモニウムに置換する場合にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使って置換し、K、Li、又はCsも適切な化合物を使って置換することができる。この置換方法は、当該技術分野に広く知られた内容であるので、この明細書で詳細な説明は省略する。また、このようなNa、K、Li、Cs、又はテトラブチルアンモニウムでもって置換された場合、以後の触媒層酸処理工程によって、再びプロトン型(H
+−form)の高分子電解質膜となる。
【0063】
前記燃料電池は高分子電解質型燃料電池(PEMFC)であってもよい。
【0064】
さらに他の一具現例は、少なくとも一つの電気発生部、燃料供給部及び酸化剤供給部を含む燃料電池システムを提供する。
【0065】
前記電気発生部は、前記膜電極アセンブリーとセパレーター(バイポーラープレートともいう)を含む。前記電気発生部は燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応によって電気を発生させる役割を果たす。
【0066】
前記燃料供給部は、燃料を前記電気発生部に供給する役割を果たし、前記酸化剤供給部は、酸素又は空気といった酸化剤を前記電気発生部に供給する役割を果たす。
【0067】
一具現例で、燃料は、気体又は液体の状態の水素又は炭化水素燃料を含むことができる。前記炭化水素燃料の代表的な例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又は天然ガスを挙げることができる。
【0068】
一具現例による燃料電池システムの概略的な構造を
図6に示す。これを参照してより詳細に説明するならば、次のとおりである。
図6に示した構造は、燃料及び酸化剤を、ポンプによって電気発生部に供給するシステムを示したものであるが、前記燃料電池システムがこのような構造に限定されるのではなく、ポンプを使わない拡散方式を用いる燃料電池システム構造に使うこともできるのは言うまでもない。
【0069】
一具現例による燃料電池システム1は、燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応によって電気エネルギーを発生させる、少なくとも一つの電気発生部3と、前述した燃料を供給する燃料供給部5と、酸化剤を前記電気発生部3に供給する酸化剤供給部7とを含んでなる。
【0070】
また、前記燃料を供給する燃料供給部5は、燃料を貯蔵する燃料タンク9、及び燃料タンク9に連結設置される燃料ポンプ11を備えることができる。前記燃料ポンプ11は、所定のポンピング力によって燃料タンク9に貯蔵された燃料を排出させる機能をする。
【0071】
前記電気発生部3に酸化剤を供給する酸化剤供給部7は、所定のポンピング力で酸化剤を吸入する少なくとも一つの酸化剤ポンプ13を備える。
【0072】
前記電気発生部3は、燃料と酸化剤を酸化及び還元反応させる膜電極アセンブリー17と、この膜電極アセンブリーの両側に燃料と酸化剤を供給するためのセパレーター19、19’とを含んでなり、このような電気発生部3が少なくとも一つ集まってスタック15を構成する。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の好適な実施例及び比較例を説明する。しかし、下記の実施例は本発明の好適な一実施例であるに過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0074】
(実施例)
実施例1:規則性メソポーラス炭素(OMC)を含むカソード触媒層の製造
超純水と有機溶媒で構成された溶媒を準備した。前記準備した溶媒に、触媒、増粘剤、アイオノマー(例えば、dupont社のNafionなど)を添加した後、1500℃〜2000℃で1時間〜2時間熱処理して表面を改質した、規則性メソポーラス炭素(OMC)を添加した。その後、3ロールミル法で前記材料を混合して分散させて、スラリーを製造した。製造されたスラリーをコーティングして、カソード触媒層を製作した。
【0075】
比較例1:規則性メソポーラス炭素(OMC)を含まないカソード触媒層の製造
超純水と有機溶媒でなった溶媒を準備した。前記準備した溶媒に触媒、増粘剤、アイオノマー(例えば、dupont社のNafionなど)を添加した。その後、3ロールミル法で前記材料を混合して分散させてスラリーを製造した。製造されたスラリーをコートしてカソード触媒層を製作した。
【0076】
評価1:分散性
前記実施例1及び比較例1によるカソード触媒層についての透過電子顕微鏡(TEM)写真及び走査電子顕微鏡(SEM)写真を取って、規則性メソポーラス炭素の分散性を測定した。
【0077】
前記燃料電池用カソード触媒層内の規則性メソポーラス炭素についての、透過電子顕微鏡(TEM)写真は大韓民国特許出願第10−2015−0076585号の
図1に示し、前記走査電子顕微鏡(SEM)写真は大韓民国特許出願第10−2015−0076585号の
図2に示した。
【0078】
前記大韓民国特許出願第10−2015−0076585号の
図1のTEM写真及び大韓民国特許出願第10−2015−0076585号の
図2のSEM写真を見れば、分散性に優れた状態でカソード触媒層が製造されたことを確認することができる。また、気孔の平均粒径が3.5nmであることも、共に確認することができる。
【0079】
評価2:出力特性及び抵抗特性
前記実施例1及び比較例1によるカソード触媒層を含む膜電極アセンブリーについての出力特性及び抵抗特性を測定し、その結果を
図1〜
図3に示した。
【0080】
図1を見れば、規則性メソポーラス炭素を含むカソード触媒層を含む膜−電極アセンブリーは、前記規則性メソポーラス炭素を含まないカソード触媒層を含む膜−電極アセンブリーよりも、優れた出力特性を有することを確認することができる。また、
図2及び
図3から、規則性メソポーラス炭素を含むカソード触媒層を含む膜−電極アセンブリーは、前記規則性メソポーラス炭素を含まないカソード触媒層を含む膜−電極アセンブリーに比べて、抵抗減少の効果を有することを確認することができる。
【0081】
評価3:気孔評価
前記実施例1及び比較例1によるカソード触媒層内の気孔容積及び気孔直径を評価し、その結果を
図4及び
図5に示した。
【0082】
図4及び
図5を見れば、規則性メソポーラス炭素を含むカソード触媒層を含む膜−電極アセンブリーは、前記規則性メソポーラス炭素を含まないカソード触媒層を含む膜−電極アセンブリーよりも、全体的な気孔容積及び気孔直径が増加して、効果的な気体通路を有し、これにより物質移動抵抗が減少するということを確認することができる。
【0083】
以上で本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の多くの変形及び改良の形態も、本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
燃料電池用カソード触媒層、その製造方法及びこれを含む膜−電極アセンブリーに関するものであり、熱処理された規則性メソポーラス炭素(ordered mesoporous carbon)を含み、前記熱処理された規則性メソポーラス炭素が、燃料電池用カソード触媒層の総量に対して1重量%〜15重量%含まれる燃料電池用カソード触媒層、及びその製造方法を提供する。前記燃料電池用カソード触媒層は、耐久性、出力性能及び経済性に優れる。