特許第6556873号(P6556873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556873
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】経皮吸収製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20190729BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20190729BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20190729BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   A61K47/34
   A61K9/70 401
   A61K47/32
   A61K47/38
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-564310(P2017-564310)
(86)(22)【出願日】2017年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2017002553
(87)【国際公開番号】WO2017131034
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-14170(P2016-14170)
(32)【優先日】2016年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】天野 智史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
(72)【発明者】
【氏名】黒川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 真美子
(72)【発明者】
【氏名】栗林 満
(72)【発明者】
【氏名】本村 啓太
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/095537(WO,A1)
【文献】 特開平09−124462(JP,A)
【文献】 特開平11−152224(JP,A)
【文献】 特開平07−157423(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099966(WO,A1)
【文献】 特表2015−508813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の主面を有し、薬物を含有する薬物貯留層と、
前記薬物貯留層の前記第1の主面側に設けられ、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン粘着剤を含有する粘着剤層と、
前記薬物貯留層の側面及び前記第2の主面を覆うように形成される支持体と、
を備える経皮吸収製剤であって、
前記シリコーン粘着剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して20質量%以上であり、
経皮吸収製剤全体としての透湿度が20g/m・24hr以上、314g/m・24hr以下であ
前記薬物貯留層がエチルセルロースを含有する、経皮吸収製剤。
【請求項2】
前記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂及び可塑剤からなる群から選択される1以上の化合物を含有する粘着基剤をさらに含有する請求項1に記載の経皮吸収製剤。
【請求項3】
前記粘着基剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して80質量%以下である請求項2に記載の経皮吸収製剤。
【請求項4】
エチルセルロースの含有量が、前記薬物貯留層の全質量に対して40〜99質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項5】
前記薬物貯留層がさらにアクリル基剤を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項6】
アクリル基剤の含有量が、前記薬物貯留層の全質量に対して40〜99質量%である、請求項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項7】
前記支持体が、ポリエチレンテレフタレート編布又はエチレン酢酸ビニル共重合体フィルムを含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物及びシリコーン粘着剤を含有する経皮吸収製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、短期間にわたって薬物を投与するための経皮吸収製剤だけでなく、薬物を長期間効率的且つ安定的に生体に投与可能な経皮吸収製剤に対する需要が高まっており、その研究開発が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、薬物貯留層、薬物浸透層及び支持体からなる経皮吸収製剤の構造が開示されている。この経皮吸収製剤は、薬物貯留層を直接皮膚に接触させることなく薬物浸透層を介して徐放的に薬物を経皮吸収させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/095537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構造のような経皮吸収製剤は、薬物貯留層を直接皮膚に接触させない構造ではあるものの、長期間皮膚に適用することにより、経皮吸収製剤から放出される薬物により皮膚刺激が生じてしまう場合があった。
【0006】
そこで本発明は、長期間の適用による薬物由来の皮膚刺激が低減された経皮吸収製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粘着剤層に、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン粘着剤を粘着剤層の全質量に対して20質量%以上含有させ、経皮吸収製剤全体としての透湿度を、20g/m・24hr以上、314g/m・24hr以下の範囲内とすることで、薬物の適切な徐放性及び皮膚透過持続性を有する経皮吸収製剤とすることが可能となり、それにより上記課題が解決することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の一形態である経皮吸収製剤は、第1及び第2の主面を有し、薬物を含有する薬物貯留層と、上記薬物貯留層の上記第1の主面側に設けられ、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン粘着剤を含有する粘着剤層と、上記薬物貯留層の側面及び上記第2の主面を覆うように形成される支持体と、を備える経皮吸収製剤であって、上記シリコーン粘着剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して20質量%以上であり、経皮吸収製剤全体としての透湿度が20g/m・24hr以上、314g/m・24hr以下である、経皮吸収製剤を提供する。
【0009】
上記粘着剤層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、粘着付与樹脂及び可塑剤からなる群から選択される1以上の化合物を含有する粘着基剤をさらに含有してもよい。上記粘着基剤を、粘着剤層の全質量に対して80質量%以下含有してもよい。上記薬物貯留層は、エチルセルロースを含有してもよい。上記薬物貯留層中のエチルセルロースの含有量は、薬物貯留層の全質量に対して40〜99質量%であってよい。上記薬物貯留層は、アクリル基剤を含有してもよい。上記薬物貯留層中のアクリル基剤の含有量は、薬物貯留層の全質量に対して40〜99質量%であってよい。前記支持体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)編布又はエチレン酢酸ビニル共重合体フィルムを含有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る経皮吸収製剤は、薬物の適切な徐放性及び皮膚透過持続性を有し、長期間の適用による薬物由来の皮膚刺激を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態は、第1及び第2の主面を有し、薬物を含有する薬物貯留層と、上記薬物貯留層の上記第1の主面側に設けられ、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン粘着剤を含有する粘着剤層と、上記薬物貯留層の側面及び上記第2の主面を覆うように形成される支持体と、を備える経皮吸収製剤であって、上記シリコーン粘着剤の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して20質量%以上であり、経皮吸収製剤全体としての透湿度が20g/m・24hr以上、314g/m・24hr以下である、経皮吸収製剤である。
【0012】
本発明の一実施形態における経皮吸収製剤は、経皮吸収製剤全体としての透湿度が20g/m・24hr以上、314g/m・24hr以下である。経皮吸収製剤全体としての透湿度の下限値は、特に限定されず、25、30、35、40又は100g/m・24hrであってよい。経皮吸収製剤全体としての透湿度の上限値は、特に限定されず、150、200、250又は300g/m・24hrであってよい。
【0013】
薬物貯留層は、経皮投与される薬物を含有する層である。
薬物貯留層の面積は、薬物量及び貼付時間等を考慮して任意に設定することができるが、例えば3〜150cmの範囲であり、10〜100cmの範囲が好ましく、10〜50cmの範囲がより好ましい。また、薬物貯留層の厚みは、特に限定されないが、製剤の貼付期間にわたり、十分な治療効果を発揮できる量の薬物を含有できること、製造の容易さ及び製剤の強度等から25〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましく、75〜250μmがさらに好ましい。
【0014】
薬物は、経皮投与可能なものであれば特に限定されないが、比較的皮膚刺激を生じやすい薬物である程、本発明の皮膚刺激低減効果が発揮されやすい。比較的皮膚刺激を生じやすい薬物としては、例えば、オキシブチニン、アセナピン、ビソプロロール、リスペリドン、ニコチン及びシタロプラム等が挙げられる。他にも、比較的皮膚刺激を生じやすい薬物として、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、ジクロフェナクナトリウム、フルルビプロフェン、フェルビナク、メロキシカム及びロキソプロフェンナトリウム等の非ステロイド性消炎鎮痛薬、エストラジオール、ノルエチステロン及びエストリオール等のホルモン薬、ケトチフェン等の抗ヒスタミン薬、メマンチン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン等の抗アルツハイマー薬、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミン等の抗うつ薬、テプレノン等の胃潰瘍治療薬、トルテロジン、及びソリフェナシン等の過活動膀胱治療薬、ツロブテロール等の気管支拡張薬、ロチゴチン等のパーキンソン病治療薬並びにメトプロロール等の降圧薬、等が挙げられる。薬物は、例えば、オキシブチニン、アセナピン、ビソプロロール、シタロプラム、ジクロフェナクナトリウム、メマンチン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、フルオキセチン、パロキセチン、トルテロジン、及びロチゴチンからなる群から選択されてもよい。
【0015】
薬物貯留層に含まれる薬物は、薬物貯留層中に、溶解状態、飽和状態、過飽和結晶状態又は分散状態で含有させることができる。
薬物貯留層に含まれる薬物の含有量の下限値は、特に限定されず、薬物貯留層の全質量に対して1、5、10、15、20、30又は40質量%であってよい。上記下限値以上であると、薬物の十分な皮膚透過性が得られやすい。薬物貯留層に含まれる薬物の含有量の上限値は、特に限定されず、薬物貯留層の全質量に対して50、60、70、80又は85質量%であってよい。上記上限値以下であると、薬物貯留層の形状を維持するための十分な強度が確保されやすい。薬物貯留層に含まれる薬物の含有量は、例えば、薬物貯留層の全質量に対して1〜90質量%であってよく、15〜85質量%であってよい。
【0016】
薬物貯留層はエチルセルロースを含有してもよい。薬物貯留層がエチルセルロースを含有することによって、皮膚適用部位での発汗及び環境中の水分等に曝されても、薬物貯留層が凝集性を維持し、膨張破壊による皮膚刺激を低減することができる。薬物貯留層に含まれるエチルセルロースの含有量の下限値は、特に限定されず、薬物貯留層の全質量に対して20、25、30、35、40又は50質量%であってよい。上記下限値以上であると、薬物貯留層の凝集性を維持しやすい。薬物貯留層に含まれるエチルセルロースの含有量の上限値は、特に限定されず、薬物貯留層の全質量に対して70、80、90、95又は99質量%であってよい。薬物貯留層に含まれるエチルセルロースの含有量は、例えば、薬物貯留層の全質量に対して、40〜99質量%であってよい。
【0017】
薬物貯留層はアクリル基剤を含有してもよい。薬物貯留層がアクリル基剤を含有することによって、皮膚適用部位での発汗及び環境中の水分等に曝されても、薬物貯留層が凝集性を維持し、膨張破壊による皮膚刺激を低減することができる。薬物貯留層に含まれるアクリル基剤の含有量の下限値は、特に限定されず、薬物貯留層の全質量に対して20、25、30、35、40又は50質量%であってよい。上記下限値以上であると、薬物貯留層の凝集性を維持しやすい。薬物貯留層に含まれるアクリル基剤の含有量の上限値は、特に限定されず、薬物貯留層の全質量に対して70、80、90、95又は99質量%であってよい。薬物貯留層に含まれるアクリル基剤の含有量は、例えば、薬物貯留層の全質量に対して、40〜99質量%であってよい。
【0018】
薬物貯留層に含まれるアクリル基剤としては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又は共重合体、あるいは上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノマ−との共重合体が好適に用いられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0019】
薬物貯留層に含まれるアクリル基剤としては、アクリレート共重合体が好ましい。アクリレート共重合体は、官能基を有さないアクリレート共重合体、ヒドロキシ基を有するアクリレート共重合体及びカルボキシ基を有するアクリレート共重合体並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0020】
官能基を有さないアクリレート共重合体としては、例えば、Duro−tak(登録商標、ヘンケルコーポレーション)87−9900、Duro−tak(登録商標)87−9301及びGELVA(登録商標)GMS 3083等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有するアクリレート共重合体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシアルキルアクリレートが挙げられる。上記ヒドロキシアルキルアクリレートは、さらにハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等で置換されていてもよい。ヒドロキシ基を有するアクリレート共重合体としては、例えば、Duro−tak(登録商標)87−2516、GELVA(登録商標)GMS 788及びGELVA(登録商標)GMS 737等が挙げられる。
カルボキシ基を有するアクリレート共重合体としては、アクリル酸を含有するアクリレート共重合体が挙げられる。アクリル酸と共重合するモノマー成分としては、アクリル酸と共重合できるものであれば、特に制限はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;アクリル酸ジメチルアミド、アクリル酸モルホリンアミド等のアクリル酸アミド;酢酸ビニル;ビニルアルコール;スチレンなどが挙げられる。アクリル酸と共重合するモノマー成分は1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。カルボキシ基を有するアクリレート共重合体としては、例えば、Duro−tak(登録商標)87−2194、Duro−tak(登録商標)87−2852及びGELVA(登録商標)GMS 753等が挙げられる。
【0021】
薬物貯留層は、薬物貯留層の凝集性を維持できるのであれば、薬物及びエチルセルロース以外の他の成分を含有してもよい。他の成分とは、特に限定されないが、例えば、薬物の安定化剤、可塑剤、溶解剤、経皮吸収促進剤及び油脂等が挙げられる。
【0022】
安定化剤は、経皮吸収製剤において安定化作用が認められている化合物であれば特に限定されないが、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸塩等が挙げられる。
【0023】
可塑剤は、経皮吸収製剤において可塑作用が認められている化合物であれば特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン及びエステル化油類等が挙げられる。
【0024】
溶解剤は、薬物に対して溶解作用を有する化合物であれば特に限定されず、経皮吸収促進剤も、経皮吸収製剤において吸収促進作用が認められている化合物であれば特に限定されない。溶解剤及び吸収促進剤としては、例えば、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸エーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル、芳香族系有機酸エーテル(以上は飽和又は不飽和のいずれでもよく、環状、直鎖状又は分枝状のいずれでもよい)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類及び植物油等が挙げられる。具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セバシン酸ジエチル、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ピロチオデカン及びミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0025】
粘着剤層は、薬物貯留層の皮膚と接する側の第1の主面側に設けられ、薬物貯留層が直接皮膚に接触するのを防ぐ役割をしている層である。
粘着剤層の面積は、薬物貯留層の面積以上であれば特に限定されないが、薬物貯留層を覆う支持体を確実に固定するために、薬物貯留層より広い面積であることが好ましい。粘着剤層の厚みは特に限定されず、任意に設定することができる。
【0026】
粘着剤層は、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン粘着剤を含有する。粘着剤層がポリオルガノシロキサンを含むシリコーン粘着剤を含有することにより、経皮吸収製剤の透湿度が高まる。
ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ダウコーニング社のBIO−PSA 7−4202及びBIO−PSA 7−4302等の市販されているものを用いることができる。
シリコーン粘着剤におけるポリオルガノシロキサンの含有量の下限値は特に限定されず、40、50、60、70、80又は90質量%であってよい。シリコーン粘着剤におけるポリオルガノシロキサンの含有量の上限値は特に限定されず、80、90、95又は100質量%であってよい。
シリコーン粘着剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して20質量%以上である。シリコーン粘着剤の含有量の下限値は、粘着剤層の全質量に対して30、35又は40質量%であってもよい。シリコーン粘着剤の含有量の上限値は特に限定されず、粘着剤層の全質量に対して60、70、80、90又は100質量%であってよい。
【0027】
粘着剤層は、シリコーン粘着剤に加え、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂及び可塑剤からなる群から選択される1以上の化合物を含有する粘着基剤をさらに含有することが好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂及び可塑剤からなる群から選択される2以上の化合物を含有する粘着基剤をさらに含有することがより好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂及び可塑剤を含有する粘着基剤をさらに含有することがさらに好ましい。上記粘着基剤をさらに含有することによって、経皮吸収製剤の皮膚透過持続性を高めることができる。
【0028】
上記粘着基剤におけるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有量の下限値は特に限定されず、上記粘着基剤の全質量に対して1、5、10又は20質量%であってよい。また、上記粘着基剤におけるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有量の上限値は特に限定されず、粘着基剤の全質量に対して60、70、80、90又は95質量%であってよい。
粘着付与樹脂は、粘着力を向上させる作用を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂(例えば、荒川化学工業のアルコンP−100)、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジン及び水添ロジングリセリンエステル)、テルペン樹脂(例えば、ヤスハラケミカルのクリアロンP−125)、脂肪族系炭化水素樹脂(例えば、日本ゼオンのクイントンB170)及びマレイン酸レジン等が挙げられる。上記粘着基剤における粘着付与樹脂の含有量の下限値は特に限定されず、上記粘着基剤の全質量に対して5、10、20、30又は40質量%であってよい。また、上記粘着基剤における粘着付与樹脂の含有量の上限値は特に限定されず、粘着基剤の全質量に対して60、70、80、90又は95質量%であってよい。
可塑剤については、上述した通りである。上記粘着基剤における可塑剤の含有量の下限値は特に限定されず、上記粘着基剤の全質量に対して1、5、10又は20質量%であってよい。また、上記粘着基剤における可塑剤の含有量の上限値は特に限定されず、粘着基剤の全質量に対して60、70、80、90又は95質量%であってよい。
【0029】
上記粘着基剤の含有量の下限値は特に限定されず、粘着剤層の全質量に対して5、10、20、30又は40質量%であってよい。また、上記粘着基剤の含有量の上限値は特に限定されず、粘着剤層の全質量に対して60、70、80、90又は95質量%であってよい。
上記粘着基剤を含む場合、粘着剤層におけるシリコーン粘着剤と上記粘着基剤の含有量の割合は、1:4〜7:3であってよく、3:7〜7:3であってよい。上記割合であると、経皮吸収製剤の良好な透湿度を維持しつつ、皮膚透過持続性を高められる傾向にある。
【0030】
粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体をさらに含有してもよい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、主モノマーとして、(メタ)アクリル酸のC4〜C20アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシC4〜C20アルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の共重合モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のC4〜C20アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC4〜C20アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル及びビニルピロリドン等が挙げられる。
【0031】
粘着剤層は、上記粘着剤及び粘着基剤以外の他の成分を含有してもよい。他の成分とは、経皮吸収製剤に一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、安定化剤等が挙げられる。
【0032】
支持体は、薬物貯留層を保持する層である。
支持体の面積は、特に限定されず、任意に設定することができる。支持体の厚みは、特に限定されないが、例えば1〜3000μmであり、1〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましく、100〜250μmがさらに好ましい。
【0033】
支持体は、薬物貯留層中の薬物等の移行等により膨潤しない性質を有するシートからなる。支持体の材質としては、例えば、ポリエステル(PET等)、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)及びポリウレタン等が挙げられる。
支持体の性状としては、例えば、フィルム、不織布、織布、編布及び多孔質シート等が挙げられる。支持体が布状である場合には、撥水処理を施してもよい。支持体を撥水処理することで、薬物貯留層が吸収する環境中の水分等を減少させ、薬物貯留層の膨潤が軽減される傾向にあるからである。撥水処理としては、例えば、シリコーン系撥水剤、フッ素樹脂系撥水剤、パラフィンワックス撥水剤、ジルコニウム化合物系撥水剤、エチレン尿素系撥水剤、メチロールアミド系撥水剤及び脂肪族系撥水剤等による処理が挙げられる。
支持体の材質及び性状としては、PETフィルムとPET不織布のラミネートフィルム(以後、PET/不織布ラミネートフィルム)、ポリウレタン製フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルムが好ましく、撥水処理を施したPET編布がより好ましい。支持体は、例えば、撥水処理を施したPET編布、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、PET/不織布ラミネートフィルム、ポリウレタン製不織布、ポリウレタン製フィルム及びPETフィルムからなる群から選択されてもよい。また、経皮吸収製剤の透湿度を高める観点から、支持体は、撥水処理を施したPET編布、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリウレタン製不織布及びポリウレタン製フィルムからなる群から選択されることが好ましい。さらに薬物の裏抜けを防止する観点から、支持体は、撥水処理を施したPET編布又はエチレン酢酸ビニル共重合体フィルムであることがより好ましい。なお、ここで薬物の裏抜けとは、外的環境からもたらされる水分により支持体側から薬物が抜け出してしまう現象を指す。
【0034】
本発明の経皮吸収製剤は、さらにカバー材により覆われるか、カバー材がさらに積層されていてもよい。
【0035】
カバー材は、支持体と、その片面に積層された粘着剤層とから構成される。カバー材は、本発明の経皮吸収製剤を覆って皮膚に固定するもの及び経皮吸収製剤にさらに積層されるものを含む。カバー材は、例えば、経皮吸収製剤の状態を薬物の投与期間中維持するため及び経皮吸収製剤を外的環境からもたらされる水分(シャワー等)から保護するため等に用いることができる。
【0036】
カバー材の支持体は、適切な強度、透湿性及び耐水性等を備えているものが好ましく、ポリエステル(PET等)、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)及びポリウレタン等から選択させることが好ましい。
【0037】
カバー材の支持体の性状としては、例えば、フィルム(好ましくはウレタンフィルム)、不織布、織布、編布及び多孔質シート等が挙げられるが、経皮吸収製剤を皮膚に適用する際に生じる汗等の水分の揮発を促す点から、布状であることが好ましく、編布がより好ましい。支持体が布状である場合には、その防水性を向上させるために、撥水処理を施してもよい。撥水処理としては、例えば、シリコーン系撥水剤、フッ素樹脂系撥水剤、パラフィンワックス撥水剤、ジルコニウム化合物系撥水剤、エチレン尿素系撥水剤、メチロールアミド系撥水剤及び脂肪族系撥水剤等による処理が挙げられる。
【0038】
カバー材の粘着剤層は、経皮吸収製剤を覆って皮膚に固定するものである場合には、経皮吸収製剤を皮膚に固定するための接着性を備え、経皮吸収製剤にさらに積層される場合には、経皮吸収製剤に接着するための接着性を備える。カバー材は、さらに良好な透湿性を備えることが好ましい。
【0039】
カバー材の粘着剤層に含有される粘着基剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤及びゴム系粘着剤等が挙げられる。アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、主モノマーとして、(メタ)アクリル酸のC4〜C20アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシC4〜C20アルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の共重合モノマーとしては、(メタ)アクリル酸のC4〜C20アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC4〜C20アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル及びビニルピロリドン等が挙げられる。
【0040】
シリコーン粘着剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。
【0041】
カバー材の粘着剤層は、上記粘着剤以外の他の成分を含有してもよい。他の成分とは、経皮吸収製剤に一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤及び安定化剤等が挙げられる。
【0042】
カバー材は、経皮吸収製剤と別個に提供し、経皮吸収製剤の施用の際に併せて用いてもよく、予め経皮吸収製剤と接合させた形態で提供してもよい。
【0043】
本発明の経皮吸収製剤の粘着剤層又はカバー材の粘着剤層は、皮膚への適用時まで粘着剤層を保護するための層、例えば、剥離ライナーからなる層により覆われていてもよい。
【0044】
剥離ライナーは、例えば、ポリエステル(PET等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン及びポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)等のフィルム、上質紙及びグラシン紙等の紙、上質紙若しくはグラシン紙等とポリオレフィンのラミネートフィルム等が挙げられる。
剥離ライナーは、粘着剤層と接する面に、シリコーン樹脂又はフッ素樹脂等を塗布することによって昜剥離処理を施すことができる。
剥離ライナーは、複数の断片から形成されていてもよい。また、剥離ライナーは、少なくとも経皮吸収製剤の粘着剤層又はカバー材の粘着剤層の全体を被覆可能な大きさであり、各粘着剤層よりも外方へ延出してもよい。
【0045】
本発明の経皮吸収製剤等の基本的な製造方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。
【0046】
経皮吸収製剤の製造例
薬物等を秤取及び混合したものを、溶媒を加える又は溶融する等の方法により流動化させてシート状とした後、溶媒を除く等により固化させ、適当な形状に裁断することにより薬物貯留層を得る。次に、薬物貯留層を加熱して軟化させ、支持体に接合する。
【0047】
剥離ライナー上に、常法によりシリコーン粘着剤を含有する粘着剤層を形成した後、粘着剤層上に薬物貯留層を積層し、適切な形状に裁断して経皮吸収製剤を得る。
【0048】
カバー材となるシートは、剥離ライナー上に、常法により粘着剤層を形成した後、粘着剤層に支持体を積層し、適当な形状に裁断することにより得られる。
【0049】
経皮吸収製剤をカバー材により覆う場合には、カバー材シートから剥離ライナーを剥離除去し、露出したカバー材シートの粘着剤層の粘着面に、経皮吸収製剤の支持体層を接合し、必要に応じて適切な形状に裁断する。さらに経皮吸収製剤の粘着剤層を剥離ライナーにより被覆する場合には、必要に応じて経皮吸収製剤に付着している剥離ライナーを剥離除去し、代わりに剥離ライナーによりカバー材シートの粘着面側を被覆してシート化した後、適切な形状に裁断する。
【実施例】
【0050】
[試験1]
粘着剤層の基剤組成の比較
粘着剤層の基剤として、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン系粘着剤と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、粘着付与樹脂及び可塑剤を含む粘着基剤(以後、「SIS含有粘着基剤」とも表す)とを所定の割合で含有した経皮吸収製剤(実施例1〜7及び比較例1)について、透湿度及び薬物の皮膚透過持続性を比較した。
【0051】
実施例1〜7及び比較例1の製造
薬物貯留層は、ビソプロロール40質量%及びエチルセルロース60質量%を秤取し、適量の溶媒(メタノール)を加えて溶解し、塗布液を得た。剥離ライナー上に塗布液を塗布し、溶媒を乾燥除去して、厚み150g/mのシートを得た。このシートを円形(38cm)に裁断し、薬物貯留層を得た。表1の各成分を秤取し、適量の溶媒(トルエン又は酢酸エチル)を加えて溶解し、塗布液を得た。剥離ライナー上に塗布液を塗布し、溶媒を乾燥除去して、厚み75g/mの粘着剤層を得た。粘着剤層上に薬物貯留層を接合し、薬物貯留層の剥離ライナーを剥離除去し、露出した面に支持体(撥水処理したPET編布)を積層し、薬物貯留層を略中心として円形(38cm)に裁断し、経皮吸収製剤を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
評価方法
(1)透湿度試験方法
経皮吸収製剤の透湿度は、JIS Z 0208:1976に規定される防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に従い、温度:40±0.5℃、相対湿度:90±2%における水分の透過速度(MVTR)g/m・24hrを測定した。
【0054】
透湿度試験の評価基準
◎:透湿度が40g/m・24hr以上=透湿度が高く、皮膚の刺激がほとんど生じない
○:透湿度が20g/m・24hr以上〜40g/m・24hr未満=透湿度がやや高く、皮膚の刺激が生じにくい
×:透湿度が20g/m・24hr未満=透湿度が低く、皮膚の刺激が生じやすい
【0055】
(2)in vitroヒト皮膚透過試験方法
ヒト皮膚片の角質層側に経皮吸収製剤を貼り(適用面積3cm)、皮膚真皮側がレセプター槽側になるように、32℃の温水を循環させて保温したフロースルー型拡散セルに皮膚片を装着した。次に、レセプター槽にリン酸緩衝生理食塩水を満たし、一定の流速で置換しながら、6時間毎に168時間後までレセプター槽から溶液を採取した。採取された溶液中の薬物(ビソプロロール)濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定した。
【0056】
次に、濃度測定値から各時間における透過した薬物量を算出し、各時間における薬物の皮膚透過速度(μg/cm/hr)を求めた。さらに、薬物の皮膚透過持続性を表す指標として、168時間後の皮膚透過速度Jlastを最大皮膚速度Jmaxで除してJlast/Jmax値を算出した。Jlast/Jmax値が大きいと、薬物の皮膚透過持続性が高いことを意味する。
【0057】
in vitroヒト皮膚透過試験の評価基準
◎:Jlast/Jmax値が0.60以上
○:Jlast/Jmax値が0.30以上、0.60未満
×:Jlast/Jmax値が0.30未満
【0058】
実施例1〜7及び比較例1の評価結果
【表2】
【0059】
粘着剤層中のポリオルガノシロキサンを含むシリコーン系粘着剤の割合が増加すると、経皮吸収製剤の透湿度が増加する傾向がみられた。薬物の皮膚透過持続性は、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン系粘着剤の割合が増加するに伴い、やや低下したものの、十分な値を維持していた。実施例1〜7、特に実施例2〜7の経皮吸収製剤は、透湿度及び薬物の皮膚透過持続性ともに良好であった。
【0060】
なお、実施例1及び4の薬物貯留層中のビソプロロールを、オキシブチニン、アセナピン、シタロプラム、ジクロフェナクナトリウム、メマンチン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、フルオキセチン、パロキセチン、トルテロジン、及びロチゴチンにそれぞれ変更した経皮吸収製剤も、透湿度及び薬物の皮膚透過持続性ともに良好であった。
【0061】
[試験2]
経皮吸収製剤の支持体の比較
支持体に、撥水処理をしたPET編布、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、PET/不織布ラミネートフィルム、ポリウレタン製不織布又はポリウレタン製フィルムを用いた経皮吸収製剤(実施例8〜12)について、透湿度を比較した。また、支持体に、撥水処理をしたPET編布、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム又はPETフィルムを用いた経皮吸収製剤(実施例8〜9及び29)、及び支持体を積層しない経皮吸収製剤(比較例2)について、薬物の裏抜け防止性を比較した。
【0062】
実施例8〜12、29及び比較例2の製造
薬物貯留層は、ビソプロロール40質量%及びエチルセルロース60質量%を秤取し、試験1で記載した方法と同様の方法により得た。粘着剤層は、ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン系粘着剤100質量%を秤取し、試験1で記載した方法と同様の方法により得た。粘着剤層上に薬物貯留層を接合し、薬物貯留層の剥離ライナーを剥離除去し、露出した面に表3の支持体を積層し(比較例2は支持体の積層なし)、薬物貯留層を略中心として円形(38cm)に裁断し、経皮吸収製剤を得た。
【0063】
【表3】
【0064】
評価方法
(1)透湿度試験方法
経皮吸収製剤の透湿度は、JIS Z 0208:1976に規定される防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に従い、温度:40±0.5℃、相対湿度:90±2%における水分の透過速度(MVTR)g/m・24hrを測定した。
【0065】
透湿度試験の評価基準
◎:透湿度が40g/m・24hr以上=透湿度が高く、皮膚の刺激がほとんど生じない
○:透湿度が20g/m・24hr以上〜40g/m・24hr未満=透湿度がやや高く、皮膚の刺激が生じにくい
×:透湿度が20g/m・24hr未満=透湿度が低く、皮膚の刺激が生じやすい
【0066】
実施例8〜12の評価結果
【表4】
【0067】
PET編布(撥水処理)、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリウレタン製不織布及びポリウレタン製フィルムを支持体に用いた経皮吸収製剤の透湿度は高い傾向がみとめられた。
【0068】
(2)薬物の裏抜け防止性試験方法
実施例8〜9、29及び比較例2の経皮吸収製剤の支持体側を900mLの水に浸し、15分静置した後、水分中の薬物含有率を測定した。
【0069】
薬物の裏抜け防止性の評価基準
○:支持体側からの薬物の裏抜けがほとんど認められなかった。
×:支持体側からの薬物の裏抜けが認められた。
【0070】
実施例8〜9、29及び比較例2の評価結果
【表5】
【0071】
PET編布(撥水処理)、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム及びPETフィルムを支持体に用いた経皮吸収製剤は、薬物の裏抜け防止性が高い傾向が認められた。
【0072】
[試験3]
薬物貯留層の比較
薬物貯留層にエチルセルロース(EC)、アクリル基剤又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含有する経皮吸収製剤(実施例13〜28)について、薬物貯留層の凝集性を比較した。
【0073】
実施例13〜28の製造
表6の各成分を秤取し、試験1で記載した方法と同様の方法により薬物貯留層を得た。
【0074】
ポリオルガノシロキサンを含むシリコーン系粘着剤100質量%(BIO−PSA 7−4202/BIO−PSA 7−4302=50/50)を秤取し、試験1で記載した方法と同様の方法により粘着剤層を得た。
【0075】
粘着剤層上に薬物貯留層を接合し、薬物貯留層の剥離ライナーを剥離除去し、露出した面に支持体(PET/不織布ラミネートフィルム)を積層し、薬物貯留層を略中心として略方形(13.4cm)に裁断し、経皮吸収製剤を得た。
【0076】
【表6】
【0077】
凝集性の評価方法
寒天2質量%を含有するゲルシートを準備し、上記で得られた実施例13〜28の経皮吸収製剤の粘着剤層の剥離ライナーを剥離除去し、露出した粘着面がゲルシートと接するようにゲルシート上に経皮吸収材を積層し、24時間静置した。ゲルシートから経皮吸収製剤を剥離し、経皮吸収製剤の粘着面に付着した水分を風乾させた後、フィンガータックにより、薬物貯留層の凝集性を次の基準に基づいて評価した。
【0078】
凝集性の評価基準
○:薬物貯留層が凝集破壊しなかった
△:薬物貯留層がわずかに凝集破壊した
×:薬物貯留層が凝集破壊した
【0079】
実施例13〜28の評価結果
【表7】
【0080】
薬物貯留層の基剤としてHPCを含有する実施例21〜23の経皮吸収製剤では、薬物貯留層が水分によって膨潤し、経皮吸収製剤をゲルシートから剥離する際に薬物貯留層が凝集破壊する傾向が見られた。
一方、薬物貯留層の基剤としてエチルセルロースを含有する実施例13〜20の経皮吸収製剤、薬物貯留層の基剤としてアクリル基剤を含有する実施例24〜28では、薬物貯留層の凝集破壊が抑えられ、凝集性が維持される傾向が見られた。特に、実施例13〜17、19〜20及び24〜28の経皮吸収製剤では、薬物貯留層が凝集破壊せず、凝集性は良好であった。