(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のボビンホルダでは、ボビンとボビンホルダの相対回転を複数の爪によってロック可能である。しかし、ボビンとボビンホルダとの回転中心を一致させる、いわゆる、芯出しのための手段を備えていないため、ボビンホルダをボビンに装着したときに、ボビンとボビンホルダとの回転中心がずれた状態でロックされてしまうおそれがある。なお、ロック手段である複数の爪によって、ボビンの芯出しも行おうとすると、複数の爪の間で、ボビンへの押し付け力が完全に等しくなっている必要がある。そのためには、複数の爪の寸法精度、および、組み付け精度の双方に関して、高いレベルが要求される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ボビンとボビンホルダの芯出しがなされた状態で、ボビンのボビンホルダに対する回転を確実にロックできるボビンホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のボビンホルダは、糸が巻き付けられるボビンを保持しつつ、前記ボビンとともに回転するボビンホルダであって、前記ボビンの長さ方向端部に装着され、且つ、前記ボビンの端部に挿入されて前記ボビンと回転中心を合わせるテーパ状の芯出し部を有する、ホルダ本体と、前記ボビンの前記ホルダ本体に対する回転をロックするロック機構と、を備えており、前記ロック機構は、前記ホルダ本体に回動可能に取り付けられ、且つ、前記ボビンの周方向に並べて配置された複数の爪を備えており、前記複数の爪の各々は、前記ボビンの内周面に接触しない退避姿勢と、前記ホルダ本体の回転時に生じる遠心力によって前記退避姿勢に対して、前記ボビンの内周面に接触したロック姿勢との間で姿勢を切り換え、前記複数の爪は、前記退避姿勢から前記ロック姿勢への移動時、
前記ボビンを前記ホルダ本体側に引き寄せるように、先端部が前記ボビンの軸方向外側に動くことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、ボビンは、ボビンホルダの長さ方向端部に装着され、且つ、ボビンの端部に挿入されてボビンと回転軸心を合わせる芯出し部によって芯出しされた状態で、ロック機構によってボビンホルダにロックされる。従って、テーパ状の芯出し部によってボビンとホルダ本体との回転中心を一致させた状態で、ロック機構により、両者の間で相対回転が生じないようにロックすることができる。また、ロック機構と芯出し部とがそれぞれ設けられているため、ロック機構には芯出し機能が要求されない。従って、ロック機構の構成部材には、高い加工精度、組み付け精度が必要ない。
【0009】
【0010】
本発明のロック機構は、周方向に並べて配置された複数の爪を有する。複数の爪は、ホルダ本体の回転時に生じる遠心力によって退避姿勢からロック姿勢に切りかわる。これら複数の爪により、ボビンの内周面に対して周方向に均一に力を作用させることができる。従って、複数の爪によって、ボビン本体に対する回転を確実にロックすることができる。
【0011】
また、ホルダ本体が回転していないときは、複数の爪は退避姿勢にある。従って、複数の爪は、ボビンを挿入および取り出す際にボビンに干渉しない。これにより、ボビン挿入時および取り外し時の複数の爪の引っ掛かりを防止することができる。また、ボビンに対して、芯出し部による芯出しを確実に行うことができる。なお、複数の爪は、ボビン本体の回転が止まると遠心力が作用しなくなるため、自然に退避姿勢に戻る。これにより、ロック機構によるロックは、自動的に解除される。
【0012】
【0013】
ここで、ボビンとホルダ本体との間に隙間が存在する場合、ボビンには、回転の際にがたつきおよびはずれが生じるおそれがある。
【0014】
本発明では、複数の爪は、退避姿勢からロック姿勢への移動時、先端部がボビンの軸方向外側に動く。従って、ホルダ本体の回転によって、ボビンをホルダ本体側に引き寄せることができる。これにより、ボビンとホルダ本体との間の隙間をなくすことができるため、ボビンのがたつきおよび外れを防止することができる。
【0015】
第2の発明のボビンホルダは、前記第1の発明において、前記複数の爪は、後
端部よりも前記先端部の厚みが厚いことを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、複数の爪は、後端部よりも先端部の厚みが厚い。従って、複数の爪は、遠心力の影響が小さい後端部よりも遠心力の影響が大きい先端部の質量を大きくすることができることから、遠心力によって複数の爪が確実にボビンの回転をロックすることが可能になる。さらに後端部と先端部との厚みが同じである場合に比べて、ボビンの内周面と複数の爪の先端部とが接触する面積が広くすることができる。これにより、爪をボビンの内周面に対して広い面積で接触させることができる。従って、爪を金属等の硬質材料で構成した場合にも、爪がボビンの内周面に対して広い面積で押し当てられるために、局部的に力が加わることによるボビンの塑性変形を防止することができる。
【0017】
第3の発明のボビンホルダは、前記第1又は2の発明において、前記ロック機構は、前記複数の爪を、前記退避姿勢側にそれぞれ回動付勢する付勢手段を有することを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、ロック機構は、複数の爪を、退避姿勢側にそれぞれ回動付勢する付勢手段を有する。従って、ホルダ本体の回転が止まって爪に遠心力が作用しなくなったときに、付勢部材の付勢力によって、爪が退避姿勢に付勢される。これにより、ロック姿勢にあるときに、爪の先端部がボビンの内周面に強く押し付けられても、回転が止まったときに確実にボビンの内周面から爪が離れて、退避姿勢に確実に切り換えることができる。
【0019】
第4の発明のボビンホルダは、前記第3の発明において、前記付勢手段は、前記複数の爪に共通に取り付けられた環状のバネ部材であり、前記バネ部材は、その縮径方向のバネ力によって、前記複数の爪のそれぞれを、前記退避姿勢側に回動付勢することを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、付勢手段は、複数の爪に共通に取り付けられた環状のバネ部材であり、バネ部材は、その縮径方向のバネ力によって、各爪を退避姿勢側に回動付勢する。従って、複数の爪の退避姿勢への切り替えを、1つの環状のバネ部材によって行うことができる。これにより、例えば、複数の爪それぞれに対して、バネ部材を設ける場合に比べて、部品点数を減少させることができる。これにより、部品にかかるコストを削減することができる。
【0021】
また、簡単な機構によって、複数の爪を退避姿勢とロック姿勢との間で切り替え、ボビンをホルダ本体にロックおよびロック解除することができる。
【0022】
第5の発明のボビンホルダは、前記第1〜4の何れかの発明において、前記ホルダ本体に連結され、このホルダ本体を回転駆動する駆動モータをさらに備えることを特徴とするものである。
【0023】
ここで、ホルダ本体を駆動モータで回転駆動する、つまり、ボビンやパッケージを直接駆動せず、ホルダ本体を介して駆動力を伝える構成である場合、ホルダ本体とボビンとの間に滑りによって回転ずれがあると、ホルダ本体を所定の回転数で回転させても、実際のボビンやパッケージの回転数は、前記所定の回転数からずれてしまう。
【0024】
本発明では、ホルダ本体とボビンとの相対回転が、ロック機構によってロックされる。そのため、糸が巻き取られるボビンを所定の回転数で回転させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
本実施形態は、例えば、ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性合成繊維に、仮撚を施して縮れを付与し、伸縮性に富んだ加工糸を製造する仮撚加工機1に、本発明を適用したものである。仮撚加工機1は、
図1に示すように、主機台2と、2つの巻取台3と、支持部4とを備えている。
【0028】
主機台2は、紙面の奥行き方向に延在している。2つの巻取台3は、主機台2を軸とした対称な位置において、作業空間6を空けて主機台2とそれぞれ対向配置されている。巻取台3の作業空間6とは反対側には、巻取台3に設けられた後述する巻取装置13によって巻き取りが行われた満巻のパッケージPを作業者が取り上げる空間7が存在する。支持部4は、主機台2と2つの巻取台3を連結している。
【0029】
また、仮撚加工機1は、空間7をそれぞれ挟んで2つの巻取台3と対向配置された2つの給糸クリール11と、主機台2の上部に設けられた2つの仮撚装置12と、2つの巻取台3にそれぞれ設けられた巻取装置13とを備えている。
【0030】
給糸クリール11は、給糸パッケージSを保持し、給糸パッケージSの糸Yを給糸するためのものである。仮撚装置12は、給糸クリール11から供給された糸Yを仮撚するためのものである。巻取装置13は、仮撚装置12により仮撚された糸Yを巻き取り、パッケージPを形成するためのものである。なお、巻取装置13の詳細については後述する。
【0031】
給糸クリール11から巻取装置13までの糸道には、糸走行方向の上流から順に第1フィードローラ14と、第1加熱装置17と、冷却装置19と、仮撚装置12と、第2フィードローラ15と、第2加熱装置18と、第3フィードローラ16とが配置されている。仮撚加工機1には、給糸クリール11から巻取装置13までの糸道に沿った各装置が、主機台2をはさんで対称にそれぞれ配置されている。
【0032】
第1フィードローラ14は、巻取台3の上端部に配置されている。第1加熱装置17は、作業空間6の上方に配置されている。冷却装置19は、作業空間6の上方の第1加熱装置17よりも主機台2側に配置されている。第2フィードローラ15は、主機台2の仮撚装置12よりも下方に配置されている。第2加熱装置18は、主機台2の第2フィードローラ15よりも下方に配置されている。また、第1加熱装置17と冷却装置19は、作業空間6の上方に水平方向に沿ってほぼ直線的に配置されており、給糸クリール11から巻取装置13までの糸道は作業空間6を囲むように形成されている。第1加熱装置17と冷却装置19とは、支持部4に固定されている。
【0033】
作業者は、作業空間6において、図示しない糸掛用の作業台車に乗り、第1加熱装置17や冷却装置19近傍の高い位置での糸掛け、及び、メンテナンスを行う。
【0034】
第1〜第3フィードローラ14〜16は、糸走行方向の上流側から下流側へ糸Yを送るためのローラである。第1フィードローラ14の糸送り速度よりも第2フィードローラ15の糸送り速度が速くなるように、各糸送り速度が設定されている。このため、第1フィードローラ14と第2フィードローラ15との間で糸Yは延伸される。第2フィードローラ15の糸送り速度よりも第3フィードローラ16の糸送り速度が遅くなるように各糸送り速度が設定されている。このため、第2フィードローラ15と第3フィードローラ16との間で、糸Yは、弛緩される。
【0035】
ここで、給糸クリール11から給糸された糸Yが巻取装置13で巻き取られるまでの仮撚加工機1の動作について説明する。第1フィードローラ14と第2フィードローラ15との間で延伸された糸Yには、仮撚装置12によって撚りが付与される。仮撚装置12は、例えば、ベルト式のニップツイスタであり、互いに交差する一対のベルト間に走行する糸Yを挟んで、糸Yに撚りと送りを与える。仮撚装置12で形成される撚りは、第1フィードローラ14まで伝播して、延伸されつつ加撚された糸Yは、第1加熱装置17で熱固定された後、冷却装置19で冷却される。加撚および熱固定された糸Yは、仮撚装置12を通過した後、第2フィードローラ15に至るまでに解撚される。このようにして延伸仮撚加工された糸Yは、第2フィードローラ15と第3フィードローラ16との間で弛緩されながら第2加熱装置18で熱処理される。さらに、糸Yは、巻取装置13によってボビンBに巻き取られ、パッケージPが形成される。
【0036】
次に、巻取装置13について詳述する。
図1に示すように、巻取装置13は、1つの巻取台3に、それぞれ、上下方向に4段設けられている。巻取装置13は、1段につき紙面奥行き方向に36個設けられている。さらに、巻取台3は、1台の仮撚加工機1に対し、左右対称に2列設けられている。すなわち、1つの仮撚加工機1には、合計288個(4段×36個×2列)の巻取装置13が設けられている。巻取装置13は、
図2に示すように、クレードル20と、ボビンホルダ100と、トラバース装置(不図示)等を有する。
【0037】
クレードル20は、巻取装置13の支持台22によって、揺動自在に支持されている。クレードル20には、ボビンホルダ100が取り付けられている。
【0038】
ボビンホルダ100は、
図2、
図3に示すように、第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32とを有し、これら第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32とによって、円筒状のボビンBを長手方向両外側から挟み込むように保持する。また、後述するが、ボビンホルダ100は、ボビンBを回転駆動する駆動モータ25を備えている。ボビンBの材質は、例えば、紙、プラスチックなどからなる。ボビンBの厚みは、例えば、約3〜4mm程度である。なお、ボビンホルダ100の詳細な説明については後述する。
【0039】
トラバース装置(不図示)は、ボビンBの軸方向に往復移動するトラバースガイド21を備える。トラバースガイド21は、トラバース駆動モータ(不図示)によって駆動され、第3フィードローラ16によって送られてきた糸Yを左右にトラバースする。トラバースされた糸Yは、ボビンホルダ100と一体的に回転するボビンBに巻き取られて、パッケージPが形成される。
【0040】
次に、ボビンホルダ100の詳細について説明する。ボビンホルダ100は、
図3に示すように、第1ホルダ本体28と、第2ホルダ本体32と、第1ホルダ本体28に取り付けられた駆動ユニット50と、第2ホルダ本体32に取り付けられた着脱ユニット41とを有する。なお、以下では、
図3の紙面右側を右方、紙面左側を左方と定義して、適宜、「右」「左」の方向語を使用して説明する。
【0041】
第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32とは、略円板形状をなす。第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32は、それぞれの回転中心Cが一致するように、対向して配置されている。第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32とは、第1ホルダ本体28の左方の面、第2ホルダ本体32の右方の面において、それぞれ中央部が隆起しており、その隆起部28d,32bの外周部にテーパ状の芯出し部28a,32aが形成されている。また、第1ホルダ本体28には、ロック機構70が設けられている。なお、ロック機構70の詳細な説明については後述する。第1ホルダ本体28は、駆動ユニット50の回転軸23に連結されている。第2ホルダ本体32は、着脱ユニット41の筒部材29にベアリング43を介して連結されている。
【0042】
駆動ユニット50は、ハウジング39と、モータユニット60と、エアシリンダ26などを有する。モータユニット60は、ハウジング39内に、左右方向にスライド自在に収容されている。モータユニット60は、駆動モータ25のロータ部44が固定され、第1ホルダ本体28に連結された回転軸23と、2つのベアリング24を介して回転軸23に連結された駆動モータ25のハウジング61、ステータ部材45などを有する。モータユニット60とハウジング39とは、それらの周方向に並ぶように設けられた4本のバネ27によって連結されている。この4本のバネ27によって、第1ホルダ本体28およびモータユニット60は、ハウジング39に対して左方に付勢されている。
【0043】
着脱ユニット41は、ハウジング40と、筒部材29と、エアシリンダ31などを有する。筒部材29は、ハウジング40内に、左右方向にスライド自在に収容されている。筒部材29は、第2ホルダ本体32を回転可能に連結するとともに、バネ30が収容されている。バネ30は、ハウジング40内に固定されている。このバネ30によって、第2ホルダ本体32および筒部材29は、ハウジング40に対して右方に付勢されている。
【0044】
次に、糸Yが巻かれていない空のボビンBをボビンホルダ100に装着する際の動作について説明する。
【0045】
オペレータがスイッチ(不図示)を押すと、エアシリンダ26に圧空が供給されることで、第1ホルダ本体28およびモータユニット60が、ハウジング39に対して右方に相対移動する。同様に、エアシリンダ31に圧空が供給されることにより、第2ホルダ本体32および筒部材29が、ハウジング40に対して左方に相対移動する。以上により、ボビンホルダ100は、左右方向に開かれた状態となる。
【0046】
この状態でオペレータがボビンを第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32の間に挿入し、スイッチ(不図示)を押すと、エアシリンダ26,31に供給されている圧空回路(不図示)が切り替わり、圧空が排気されることでエアシリンダ26,31の推力が解除される。このため、4本のバネ27によって、第1ホルダ本体28およびモータユニット60が、ハウジング39に対して左方に相対移動する。また、バネ30によって、第2ホルダ本体32および筒部材29が、ハウジング40に対して右方に相対移動する。以上により、ボビンBの両端部が第1ホルダ本体28および第2ホルダ本体32に押し付けられ、糸Yが巻かれていない空のボビンBが、第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32との間で挟持される。
【0047】
このとき、第1ホルダ本体28および第2ホルダ本体32に形成されたテーパ状の芯出し部28a,32aが、ボビンBの両端内径部にそれぞれ挿入されることによって、ボビンBが芯出しされる。
【0048】
次に、ボビンホルダ100から満巻のボビンB(パッケージP)を取り外す際の動作について説明する。
【0049】
制御装置(不図示)からの指令によって圧空回路が切り替わり、エアシリンダ26に圧空が供給されると、第1ホルダ本体28およびモータユニット60が、ハウジング39に対して右方に相対移動する。また、エアシリンダ31によって、第2ホルダ本体32および筒部材29が、ハウジング40に対して左方に相対移動する。以上により、ボビンホルダ100を左右方向に開き、満巻になったボビンB(パッケージP)をボビンホルダ100から取り外すことができる。
【0050】
次に、第1ホルダ本体28に設けられるロック機構70について説明する。ロック機構70は、
図3〜
図5に示すように、3つの爪33と、環状バネ部材38とを有する。なお、
図5では、円板部材42を取り外した状態における第1ホルダ本体28を示している。
【0051】
図4、
図5に示すように、ボビンB内に挿入される第1ホルダ本体28の隆起部28dには、径方向外側へ広がる略扇形状をなす3つの収容凹部37が、周方向等間隔位置に形成されている。3つの収容凹部37の底面28cは、第1ホルダ本体28の周方向に対して、
図4(b)の右側に傾いている。3つの収容凹部37には、3つの爪33がそれぞれ収容されている。
【0052】
各爪33は、収容凹部37内で、回動自在に収容されている。各爪33は、収容凹部37の底面28cの傾きに沿って収容されており、その先端部33aが、第1ホルダ本体28の周方向に対して右側に傾いている。3つの爪33は、それぞれが収容された収容凹部37の側面がなす角度範囲内において回動可能である。3つの爪33には、その先端部33aに、おもり35が取り付けられている。また、3つの爪33は、
図4(a)に示すように、ボビンBの内周面と接する先端部33aの厚みが、後端部(図中の軸23側)に比べて厚くなるように形成されている。
【0053】
ここで、ボビンBは、繰り返し使用に耐えるように、その内周面が滑らかに加工されているために滑りやすい。また、プラスチック製のボビンBが使用されることがあるが、この場合は紙製のボビンB以上に滑りやすい。さらに、ボビンBは、その内径が1種類に限定されず、ある幅の範囲で異なるものが適用されることがある。このため、3つの爪33は、その開き量の大小にかかわらず、ボビンBの回転力に対抗してロックする力を維持することが要求される。従って、3つの爪33の材質は、高摩擦、且つ、柔軟性を有するものが好ましい。より具体的には、3つの爪33の材質は、例えば、エラストマーなどからなる。
【0054】
また、3つの爪33には、それらを共通に付勢するための付勢手段として、1つの環状バネ部材38が3つのピン36に跨るように共通に取り付けられている。環状バネ部材38は、その一部が分断された、例えば、金属製のバネ部材であり、拡縮可能である。3つの爪33は、環状バネ部材38によって、第1ホルダ本体28の径方向内側に付勢されている。また、環状バネ部材38の外側には、環状バネ部材38が一定以上に拡径するのを規制させるための円形の壁部28bが形成されている。
【0055】
図5(a)に示すように、第1ホルダ本体28が回転していないときには、3つの爪33は、環状バネ部材38によって径方向内側に付勢され、その先端部33aが第1ホルダ本体28に装着されるボビンBの内周面から離れた姿勢に維持されている。従って、3つの爪33は、ボビンBを挿入および取り外す際に、ボビンBに干渉しない。これにより、ボビンB挿入時および取り外し時の爪33の引っ掛かりを防止することができる。また、ボビンBに対して、芯出し部28aによる芯出しを確実に行うことができる。
図5(a)の3つの爪33の姿勢を「退避姿勢」という。
【0056】
一方、
図5(b)に示すように、ボビンBを保持している状態で第1ホルダ本体28が回転すると、3つの爪33には遠心力が作用し、環状バネ部材38の付勢力に抗して、各爪33の先端部33aが径方向外側へ移動するように回動する。これにより、爪33の先端部33aがボビンBの内周面に押圧される。
図5(b)の爪33の姿勢を「ロック姿勢」という。なお、図中の矢印は、第1ホルダ本体28の回転方向を示す。
【0057】
次に、上述したロック機構70の動作の詳細について説明する。
【0058】
上述したように、第1ホルダ本体28と第2ホルダ本体32との間で、ボビンBが芯出しされた上で挟持されている状態で、第1ホルダ本体28が駆動モータ25によって回転駆動される。すると、第1ホルダ本体28に取り付けられた3つの爪33は、回転による遠心力を受ける。環状バネ部材38に共通に取り付けられた3つの爪33は、環状バネ部材38の付勢力に抗して、第1ホルダ本体28の回転方向と逆向きに回動するとともに、その先端部33aがボビンBの内周面に向かって移動していく。なお、上述したように、3つの爪33の先端部33aは、後端部に比べて、その厚みが厚くなるように形成され、それぞれにおもり35が取り付けられている。従って、3つの爪33には、第1ホルダ本体28の回転速度が小さい段階から大きな遠心力が作用する。これにより、回転開始直後から、3つの爪33が動き始めるようにすることができる。第1ホルダ本体28の回転によって、3つの爪33は、その先端部33aがボビンBの内周面に接触し、押圧された状態となる。上述したように、3つの爪33は、柔軟性を有するものからなるため、その先端部33aは、ボビンBの内周面に押圧することによって変形し、爪33の先端部33aとボビンBの内周面とが面接触する。
【0059】
以上により、芯出しされたボビンBを第1ホルダ本体28にロックし、第1ホルダ本体28を回転させることによって、ボビンBおよび第2ホルダ本体32をともに回転させて、糸Yを巻き取っていくことができる。
【0060】
上述した構成によれば、ボビンBと第1ホルダ本体28との間の相対回転が防止されるため、所望の回転数でボビンBを回転させることができる。従って、ボビンBの回転とトラバースガイド21の往復移動との関係が乱れることなく、所望の綾角をなすように糸Yを巻き取っていくことができるため、リボン巻き等の問題が生じない。さらに、ボビンBの滑りにより糸Yの張力が緩んで巻き密度下がり、巻径や巻姿が異常になったり、張力の低下による糸切れが発生するといった問題が生じない。
【0061】
また、各爪33は、
図4(b)に示すように、収容凹部37の底面28cの傾きに沿って収容されており、その先端部33aが、第1ホルダ本体28の周方向に対して右側に傾いている。従って、第1ホルダ本体28の回転時、3つの爪33が回動することによって、その先端部33aは、ボビンBの内周面に対して第1ホルダ本体28側に押圧された状
態となる。これにより、ボビンBを第1ホルダ本体28側に引き寄せることができるため、ボビンBとボビンホルダ100との間の隙間をなくすことができる。従って、ボビンBのがたつきおよび外れを防止することができる。
【0062】
また、第1ホルダ本体28には、芯出し部28aと3つの爪33とがそれぞれ設けられている。従って、芯出し部28aによって芯出しした状態で、ボビンBを3つの爪33によってロックすることができる。従って、3つの爪33の加工および組み付けに、ばらつきが生じていたとしても、ボビンBを芯出しした状態でロックすることができる。
【0063】
また、第1ホルダ本体28の周方向に並ぶように設けられた3つの爪33により、ボビンBの内周面に対して周方向に均一に力を作用させることができる。従って、3つの爪33によって、第1ホルダ本体28に対する回転を確実にロックすることができる。
【0064】
また、爪33の先端部33aとボビンBの内周面とは、面接触する。ここで、爪33の先端部33aがボビンBの内周面に点接触する場合、ボビンBの内周面には、局部的に大きな力が加わることになる。これにより、ボビンBの内周面には、その接触部分に塑性変形が生じる。ボビンBの内周面が局部的に塑性変形した場合、爪33の押圧力が低下し、ボビンホルダ100によるボビンBの把持力が低下するおそれがある。本実施形態では、爪33の先端部33aとボビンBの内周面とは、面接触する。従って、ボビンBの内周面には局部的な力が加わらない。これにより、ボビンB内周面の局部的な塑性変形を防止できるため、ボビンホルダ100によるボビンBの把持力の低下を防止できる。
【0065】
さらに、3つの爪33は、後端部よりも先端部33aの厚みが厚い。従って、爪33は、遠心力の影響が小さい後端部よりも遠心力の影響が大きい先端部33aの質量を大きくすることができることから、遠心力によって複数の爪33が確実にボビンBの回転をロックすることが可能になる。さらに、後端部と先端部33aとの厚みが同じである場合に比べて、ボビンBの内周面と3つの爪33の先端部33aとが接触する面積を広くすることができる。これにより、爪33をボビンBの内周面に対してより広い面積で接触させることができる。従って、爪33を金属等の硬質材料で構成した場合にも、ボビンBの塑性変形をより防止することができる。また、爪33が柔軟性を有する材質で構成される場合は爪33の押圧力でボビンBの内面が塑性変形し難いので、ボビンBに接触する爪33の接触面だけを局部的に削って接触面積を狭くして、爪33がボビンBを押圧する圧力を高めてロック力を高くすることも可能である。
【0066】
その後、ボビンBに巻き取られるパッケージPが満巻になって、第1ホルダ本体28の回転が減速を開始すると、パッケージP、及び、3つの爪33には、第1ホルダ本体28の回転方向に慣性力が作用する。これにより、3つの爪33は、ボビンBの内周面への押圧が解消され、第1ホルダ本体28とボビンBとのロックが解除される。
【0067】
ここで、ボビンBは紙製の紙管が一般的であるが、紙は塑性変形して爪33が食い込んでしまうおそれがある。このような場合にも、上記の慣性力により、確実に爪33がボビンBの内周面の食い込みから外れ、第1ホルダ本体28とボビンBとのロックが解除される。回転が停止し、3つの爪33のロックが解除されると、環状バネ部材38の付勢力に抗う力がなくなるため、環状バネ部材38は、バネの付勢力によって拡径前の状態に復元される。つまり、環状バネ部材38は、その径が第1ホルダ本体28の回転前の大きさまで縮径する。環状バネ部材38の縮径に伴って、ピン36を介して環状バネ部材38が共通に取り付けられた3つの爪33は、その先端部33aがボビンBの内周面から離れた状態、すなわち、上述した退避状態へと切り替わる。
【0068】
以上より、第1ホルダ本体28の回転が止まって爪33に遠心力が作用しなくなったときに、環状バネ部材38の付勢力によって、3つの爪33が退避姿勢に付勢される。従って、ロック姿勢にあるときに、3つの爪33の先端部がボビンBの内周面に強く押し付けられても、回転が止まったときに確実にボビンBの内周面から爪33が離れて、退避姿勢に確実に切り換えることができる。
【0069】
また、3つの爪33の退避姿勢への切り替えを、1つの環状バネ部材38によって行うことができる。これにより、例えば、3つの爪33それぞれに対して、バネ部材を設ける場合に比べて、部品点数を少なくすることができる。これにより、部品にかかるコストを削減することができる。
【0070】
また、簡単な機構(1本の環状バネ部材38)によって、3つの爪33を退避姿勢とロック姿勢との間で切り替え、ボビンBを第1ホルダ本体28にロックおよびロック解除することができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0072】
また、本実施形態では、3つの爪33は、遠心力によって動作するが、ロック機構70は、遠心力によって動くものに限られない。ロック機構70は、例えば、ボビンホルダ100の回転時に、同時に回転するカム部材の外周部によって、外側へ押し出される球のようなものでも構わない。
【0073】
また、本実施形態では、3つの爪33は、遠心力により回動することによって、その先端部33aがボビンBの内周面と接触するが、3つの爪は、回動することなく、例えば、遠心力により第1ホルダ本体28の径方向に対してスライド可能な機構を有し、先端部がボビンBの内周面と接触するものであっても構わない。
【0074】
また、本実施形態では、1つの環状バネ部材38が3つの爪33に共通に取り付けられているが、付勢手段は、3つの爪33にそれぞれ取り付けられことによって、3つの爪33を個別に付勢しても構わない。例えば、3つの爪33それぞれにバネ部材が取り付けられることによって、3つの爪33を個別に付勢しても構わない。
【0075】
また、3つの爪33に、付勢手段を設けなくても構わない。しかしながら、この場合、爪33がボビンBに食い込んで引っ掛かることによって、3つの爪33をロック状態から退避姿勢へと切り替えることができなくなるおそれがある。このとき、ボビンホルダ100から、ボビンBを取り外すことができなくなってしまう。従って、本実施形態のように、3つの爪33に対して、環状バネ部材38などの付勢手段が設けられていることが好ましい。
【0076】
また、本実施形態では、駆動ユニット50に駆動モータ25が設けられているため、ボビンホルダ100を直接駆動することができるが、ボビンホルダ100を直接駆動する構成には限られない。例えば、ボビンBが、パッケージP表面に接触しつつ回転する、接触ドラムによって回転駆動されるものでもよい。この場合、ボビンBが直接回転駆動されるので、ボビンBとボビンホルダとの回転ずれは、前記実施形態ほど問題にはならない。但し、ボビンホルダに、パッケージの回転数を検出するセンサ等が設けられる場合、ボビンホルダとボビンの回転数にズレがあると、ボビンの回転数を正確に検出できないという問題が生じる。
【0077】
また、本実施形態では、ロック機構70は、第1ホルダ本体28のみに設けられているが、第1ホルダ本体28および第2ホルダ本体32にそれぞれ設けられていても構わない。
【0078】
また、本実施形態では、第1ホルダ本体28には、3つの収容凹部37が形成されているが、収容凹部37は、2つ、または、4つ以上形成されていても構わない。従って、各収容凹部37にそれぞれ収容される爪33も同様に、2つ、または、4つ以上であっても構わない。
【0079】
また、本実施形態では、3つの収容凹部37は、第1ホルダ本体28の周方向に対して等間隔に形成されているが、3つの収容凹部37は、等間隔に形成されていなくても構わない。