(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0006】
一般的に、いろいろな炭素繊維が、プラスチックのようなマトリクスにおける補強物として好ましくは複数の層に埋め込まれる(CFPsとして同義語的に知られてもいる)炭素繊維樹脂は、繊維樹脂合成物として参照される。ポリマーマトリクスとして、エポキシ樹脂、アクリレート及びポリウレタンのような熱硬化性物質と、アクリロニトリルブタジエン−スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルメタクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタル酸エステル(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリ塩化ビニル(PVC)のような熱可塑性物質の両方を使用することができる。しかしながら、ブレーキディスクのような熱的に非常に安定した化合物を得るために、(セラミック繊維合成物として同義語的に参照される)セラミックからなるマトリクスに炭素繊維を埋め込むこともできるものである。
【0007】
炭素繊維強化樹脂(CFPs)は、低重量であるとともに高い強度と剛性を有し、高い重量比強度及び剛性が要求される分野において使用されることが好ましい。たとえば、CFPsは、航空宇宙産業、風力産業、車両建造技術において、又は、自転車フレーム、スピードスケート、テニスラケット、スポーツ用矢及び釣り竿のようなスポーツ用品に使用される。建築及び建設において、炭素繊維強化樹脂(CFPs)は、構造物を強化するために、構成要素の表面に薄層の形で接着接合されるものである。
【0008】
炭素繊維強化樹脂(CFPs)から製造される材料もしくは構成要素の強度及び剛性は、一般的に、他の繊維マトリクス合成物の場合において、繊維方向の横方向よりも繊維方向において十分に高いものである。このように、たとえば、炭素繊維に対する横方向の強度が、使用されるマトリクス材料の強度よりもより低いものである。空間における全方向においてCFPsからなる材料若しくは構成要素の均一な強度及び剛性を確保するために、それぞれの繊維層は、いろいろな方向に配置される。たとえば、高性能建築構成要素の場合において、所定の強度及び剛性を達成するために、従来の積層理論のようなコンピュータ演算によって決定されるものである。
【0009】
CFPsの製造において使用される(天然繊維として同義語的に参照される)原炭素繊維が、炭素含有開始材料、特にポリアクリロニトリル(PAN)から、空気中での安定化反応、それに続く不活性雰囲気内での熱分解及びそれに続く黒鉛化によって、主に工業的に製造される。原炭素繊維の強度及び剛性は、予張力並びに炭化及び黒鉛化における温度によって、製造工程の間、目標設定法において制御されるので、いろいろな繊維の種類が、商業的に取得可能である。それらの安価な製造によって、HT繊維(高張度繊維)及びIM繊維(中間弾性率繊維)は、原炭素繊維として主に使用される。黒鉛化の後に、原炭素繊維の接着を改善するために、原炭素繊維の表面の酸化が、電気化学処理によって実行される。一般的に、原炭素繊維は、その後エポキシ樹脂のような大きさを有し、ロービングを形成するために集められるものである。これらのロービングは、最終段階において従来の織物スピンドルに巻き上げられる。
【0010】
使用される原炭素繊維の長さによって、いろいろな方法が、炭素繊維強化樹脂(CFPs)を製造するために使用される。長い原炭素繊維を有するCFP部は、一般的に(樹脂トランスファ成形としても参照される)樹脂噴射法によって製造される。樹脂噴射法の最初の段階において、空間において全方向における一定の強度及び剛性を確保するために織られた原炭素繊維の1層若しくは複数層からなるプレフォームが製造される。これらのプレフォームは、第2段階において、樹脂及び硬化剤からなる液化性マトリクスを有する閉鎖鋳造型において混合される。マトリクスの硬化及び過剰なエッジ材料の除去の後、対応するCFP構成要素が取得される。
【0011】
短い原炭素繊維を有する炭素繊維強化樹脂(CFPs)、特に刻んだ原炭素繊維の製造は、一般的に噴射成形によって実行される。この目的に関して、刻んだ原炭素繊維は、樹脂からなる液化性マトリクスとバッチ式に混合され、CFP構成要素を得るために、噴射成形によって押し出しされて加工される。
【0012】
しかしながら、炭素繊維強化樹脂(CFPs)は、アルミニウム、マグネシウム及びチタンのような軽金属からなる同様の構成要素の使用と比較して、最終製品の著しく高いコストを生じるものである。特に、これは、炭素含有開始材料、特にポリアクリロニトリル(PAN)から原炭素繊維を複雑なコストの高い製造を生じる。さらに、CFP構成要素を製造するための原炭素繊維の世界的消費は非常に大きくなっているので、炭素繊維強化樹脂の使用においてコストの十分な減少は、原炭素繊維に関する高い世界的需要により、期待されていない。
【0013】
原炭素繊維の高い需要にもかかわらず、プラスチックが硬化されるか、貯蔵期間を超えた(プリプレグ又は予備含浸繊維として参照される)加工されていないが樹脂に予備含浸された多量の原炭素繊維は、CFP含有スクラップのようなものから形成される。
【0014】
さらに、処理されるべき大量のCFP含有樹脂スクラップは、航空機部品及び風力タービンのための部品の製造において、処分されるべきモデル型、製造スクラップ、プロトタイプ、誤ったバッチ及び「使用済み」構成要素の結果として得られるものである。
【0015】
しかしながら、埋め立て地のCFP含有樹脂スクラップの処置は、そこに存在する有益な炭素繊維により、不経済である。さらに、CFP含有樹脂スクラップは、その化学的不活性により長期間にわたって、埋め立て地で、変化しないままであり、且つ分解されることがない。さらに、CFP含有スクラップの無制限な処置は、多くのヨーロッパの国々において法的な要求により、容易に可能ではなく、また不可能ですらある。
【0016】
それゆえに、CFP構成要素の製造についての炭素繊維に関する世界的需要を考慮すれば、安価で効果的な熱分解プラント及びCFP含有スクラップから炭素繊維を回収するかリサイクルする方法には大きな需要がある。
【0017】
従来技術において、炭素繊維は、熱分解によってCFP含有材料(CFP材料)から回収されるか、リサイクルされる。本発明の目的について、熱分解は、たとえば、300〜1000℃の高温によって、大きい有機分子が小さな有機分子に分割される有機化合物の熱解離である。一般的に、熱分解の間、酸素は導入されない。このように、不活性雰囲気若しくはポリマーマトリクスの除去の間の減圧の使用を確保するために、密封された複雑な熱分解プラント及び複雑な工程を使用することが必要とされた。しかしながら、熱分解工程は、時々、酸素含有雰囲気において、特に管理された状況下において作業されるものである。
【0018】
そのような熱分解プラントは、特許文献1(EP0636428A1)に記載されている。そこでは、CFP含有材料が、保護ガス雰囲気において、熱分解される保護ガス炉が、熱分解を実行するために使用される。しかしながら、熱分解は、リサイクルが不経済であり、工業規模で不適当であるという結果として、長期間にわたって実行される。さらに、熱分解段階を有するリサイクル材料の複雑な後処理が、炭素含有成形体を得るために提供される。
【0019】
また、CFP材料の循環は、ベルト炉を使用した従来の熱分解プラント及びCFP材料から炭素繊維を回収するためにそこで実行される方法においては不可能である。それゆえに、CFP材料の混合及びそれに応じたコンベアベルト上に存在するCFP材料のすべての領域での均一な加熱ができない。その結果は、著しい熱分解であり、リサイクルされた炭素繊維の表面の樹脂残留物であり、それはポリマーマトリクスへの結合における副作用を有するものである。
【0020】
そのような熱分解プラントは、たとえば特許文献2(DE102008002846B4)及びそのパテントファミリー均等物である特許文献3(EP2282879A1)に記載されている。ポリマーマトリクスの熱分解は、ベルト炉を有する熱分解プラントにおいて実行されるとともに、CFP含有材料が、最初に前段分類処理され、その後に小さいサイズに細砕されるものである。さらに、リサイクル炭素繊維のからまりを防止するために、リサイクル炭素繊維の後処理を実行することが必要である。
【0021】
さらに、特許文献4(WO2010/075952A1)は、ベルト炉若しくは回転管状炉の形の加工室を具備する熱分解プラントを記載する。前記加工室は、空気吸入孔及び電気抵抗加熱要素の形の加熱源と、マイクロ波照射源の両方を有し、それが、複雑な装置は、結果としてリサイクルを実行するために必要である。
【0022】
最後に、特許文献5(EP2152487B1)は、ベルト炉を有する熱分解プラントを記載するとともに、ベルト炉上の酸素の割合は、制御装置による目標設定法において制御されるので、本質的に、ポリマーマトリクスの熱分解と、不燃焼若しくはガス化が生じる。
【0023】
さらに、上述された熱分解プラント及び方法は、リサイクル炭素繊維の表面に大量の熱分解残留物を生じるだけでなく、それらの複雑性から、CFP含有スクラップから炭素繊維を回収(リサイクル)するには、高いコストを生じる。さらにまた、CFP含有スクラップの表面は、非最適混合により、上述した熱分解プラント及び方法において均一に処理されない。前記リサイクル炭素繊維は、また品質変動を頻繁に示すものである。
【0024】
また、CFP含有スクラップは、複雑な方法において、特に機械的及び/若しくは化学的方法によって、回収(リサイクル)前に、前処理される必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1乃至
図3に示される熱分解プラントは、図示された実例となる具体例において、炭素繊維で強化される樹脂から炭素繊維を回収するために使用される。この回収技術に対する総合的な背景技術について、最初に述べられた従来技術に記載された内容が参照されるべきである。
【0052】
図1乃至
図3は、炭素繊維含有樹脂から、特に炭素繊維強化樹脂(CFPs若しくはCFP材料)から、好ましくは炭素繊維含有及び/若しくは炭素繊維強化合成物(複合材料)から炭素繊維を回収(リサイクル)し、作業間連続して作業するCFP材料2の連続した熱分解のための細長い分解炉1を有し、その一端で熱分解炉1に加工されるべきCFP材料2を導入するための入口ステーション3を有し、その他端に、前記熱分解炉から回収された炭素繊維材料7を排出するための出口ステーション6を有し、熱分解炉1において製造される熱分解ガス9のためのガス排出装置8であって、特に燃焼後に、オフガス処理装置に熱分解ガス9を運ぶガス排出装置8を有し、且つ、特に熱分解炉1におけるガスの少なくとも個別の構成要素を制御するための、特に熱分解炉1におけるガスに酸素比率(酸素含有物)を制御するための制御装置10を有する本発明に係る熱分解プラントを示すものである。熱分解炉1は、処理されるべきCFP材料2のための収納空間を形成し、前記入口ステーション3及び前記出口ステーション6と接続される細長い回転管11であって、該回転管11が、その円筒壁上に、熱分解の間に形成される熱分解ガス9を排出するための出口開口部12をその長手方向の少なくとも一部に有する回転管11と、外部から断熱され、少なくとも部分的に回転管11を囲み、入口ステーション3のための且つ付加的に出口ステーション6のための開口部を有し、且つ、特に熱分解ガス9のための排出ライン14を有するハウジング13とを、少なくとも構成要素として有する間接的加熱回転管状炉である。
【0053】
図1の長手方向断面において模式的に示される熱分解プラントは、そのコアとして、CFP材料2の連続した熱分解のための細長い、連続的に作業される熱分解炉1を有する。
図1の右手側には、処理されるべきCFP材料2を導入するための入口ステーション3を見ることができる。
図1において、このCFP材料2は、その一端で、その後に熱分解炉1にCFP材料2を運ぶ連続したコンベアベルト5上にシュート4によって注がれる。
【0054】
図1の左手側には、前記熱分解炉1から、回収された炭素繊維材料若しくはリサイクル炭素繊維を排出するための出口ステーション6が存在する。そこでは、出口ステーション6は、単に移動可能な収集槽として図示される。前記熱分解プラントは、熱分解炉1において生成された熱分解ガス9のためのガス排出装置8を有する。
図1において、流れる熱分解ガス9は、曲線矢印によって示される。
【0055】
最後に、前記熱分解プラントは、熱分解プラント1のガス雰囲気を調整するための、特に熱分解プラント1のガスの個々の構成要素を調整するための、好ましくは酸素比率若しくは酸素含有量を調整するための制御装置10を有するものである。
【0056】
本発明の方法に関して、CFP材料のポリマーマトリクスの熱分解の間、ポリマーマトリクスの完全な分解について要求される量に関連した準化学量論的な値に設定されるように熱分解炉1においてガスにおける酸素比率を付与されることが好ましい。さらに、熱分解炉1のさらなる領域において、ポリマーマトリクスの分解のために要求される量に関連した準化学量論的な値に、酸素含有量を設定することを付与することが好ましい。
【0057】
本発明の教示することを理解するために、
図1,2及び3は、本発明の教示の異なる態様を容易に理解できるようにするため、一緒に検討されるべきである。
【0058】
本発明によれば、熱分解炉1は、間接的加熱回転管状炉である。この間接的に加熱される回転管状炉は、第一に、処理されるべきCFP材料2のための収納空間を形成する細長い回転管11を有するものである。これは、入口ステーション3及び出口ステーション6の両方に接続される。前記回転管は、回転管状炉において普通であるように、たとえばロールを介するか適当なボールベアリングを介するかのいずれかで回転可能であるように設けられる(たとえば、DE10 2004 036 109 A1参照)。さらに、
図1には示されていない回転管11のための回転駆動装置が存在する。その右手端部では、そのコンベアベルト5を備えた入口ステーション3が、回転管11に少し突出し、その左手端部では、出口ステーション6の収集容器が、回転管11の出口の直接下方にあることがわかる。
【0059】
本発明の目的にとって、前記回転管11が、その円筒状壁上に、その長手方向の少なくとも一部にわたって熱分解の間に形成された熱分解ガス9を排出するための出口開口部12を有することが重要である。これらの出口開口部12は、
図1のいろいろな箇所で見ることができる。
図3において、回転管11の出口開口部12は、熱分解ガス9のためにそこに示される流れ矢印によって指摘される。
【0060】
熱分解ガス9が、それが発生する箇所に近接する回転管11から連続して排出されるものである。この方法において、回転管11内の酸素含有量は、上記に説明したように、目標設定法において制御されるものである。
【0061】
図2は、入口ステーション3に最も近接する熱分解炉1の右手端部の拡大図を示すものである。
図1で示されるものに加えて、回転管11のローラベアリング11’が、
図2の底部に見られる。これらのローラベアリング11’は、長手方向における温度関連膨張が可能なように前記回転管11を支持する。これらのローラベアリング11’の間に、それぞれの場合で、適当な回転駆動装置が噛合する歯車11”が存在する。
【0062】
熱分解プラントの本発明に係るさらなる重要な構成要素は、外側から断熱され、前記回転管11を囲み、熱分解炉1の入口ステーション3にための開口部を有するハウジング13である。
図1において、回転管11から高く断熱された入口ステーション3のための開口部は、右側に見られる。前記断熱は、これが回転管11の「熱い」端部であるという事実を考慮してものである。
図1に左側では、出口ステーション6が、ハウジング13の外側と逆に配置される。この特色は、下記に詳細に説明される。
【0063】
最後に、特に熱分解ガス9が排出される排出ライン14は、ハウジング13に存在する。
【0064】
図1に示される本発明に係る熱分解プラントの好ましい具体例は、回転管11が、前記入口ステーション3から延出する第1の加熱部15と、前記出口ステーション6に導く冷却部16に隣接する第2の加熱部を有することを特徴とするものである。
図1において、回転管11の加熱部15は、ハウジング13が設けられる箇所の右側に見られる。これは、加熱部15においてのみ回転管11を囲っている。要求される高い熱入口が存在するだけなので、要求された外側からの断熱が存在するだけである。熱分解ガス9のための排出ライン14も、そこに配置される。
図1の熱分解プラントの描写の中央やや左側に、冷却部16への回転管11のための開口部を見ることができる。ハウジング13の開口部は、このように、出口ステーション6にではなく、代わりとして加熱部15と冷却部16の間の熱分解炉1の内側に存在する。
【0065】
図2は、熱分解炉1の加熱部15の右側端部を示している。
【0066】
図示された好ましい具体例は、示された具体例において、回転管11が水によって冷却されるか、冷却部16の水によって冷却されることができることが明らかである;水は、スプレイノズル17を介して上方から散布され、回転管11の冷却部16の下にある集水パン18に集水される。これは、リサイクル炭素繊維7が、出口ステーション6で相対的に低い温度で排出させるものである。
【0067】
前記回転管11は、いずれの場合においても冷却部16において出口開口部は有しないことが望ましい。
【0068】
熱分解炉1の加熱部15における回転管11の形状に関して、出口開口部12は、回転管11の周囲にわたって実質的に均等に分配されるものである。周囲にわたって分配された出口開口部12のいくつかだけが、
図1及び
図2において指摘されている。しかしながら、これは、回転管11の全周囲について単に図示されたものであると考えるべきである。全周にわたる分配は、何か他の理由がないかぎり、回転管11が連続して回転するので、有益である。
【0069】
出口開口部12の大きさは、そこに図示された具体例において、すべての場所で同一ではないことが
図1及び2において見られるものである。右側端の第1の領域において、出口開口部12は、まだ相対的に小さい。そこでは、まだ強く加熱されていないので、熱分解ガス9は、少量しか放出されない。大量の熱分解ガス9は、加熱部15の次の2つの領域においてのみ形成されるので、回転管11の出口開口部12は、その径において十分に大きいものである。次の領域において、熱分解が主にそこで完了するので、出口開口部12は、密度及び大きさの両方で再び減少するものである。
【0070】
本発明によれば、出口開口部12の大きさ若しくは出口開口部12の異なる大きさは、CFP材料2及びそこに存在する炭素繊維の大きさに対応する。また、出口開口部12の大きさ若しくは出口開口部12の異なる大きさは、CFP材料2及びそこに存在する炭素繊維の大きさに対応する、且つ/又は、CFP材料2若しくはリサイクル炭素繊維が、回転管11からハウジング14に落下しないように調整され及び/若しくは規制されるものである。これは、別の回収の様相が無効にされることから、かなりの大きさにはならないはずである。
【0071】
示されない本発明の教示の変形において、回転管11は、回転管11の出口開口部12が調整可能であることによって、異なるCFP材料2に対応させることができるものである。
【0072】
図1及び
図2は、実例となる具体例において、本発明に係る熱分解プラントの構造のさらなる特色を示すものである。熱分解ガスのための排出ライン14は、加熱部15のハウジング13に配置され、そこには再び入口ステーション3に最も近接する端部に配置される。入口ステーション3に最も近いハウジング13の最初の3分の1にあるこの配置について、ハウジング13の後ろ側で形成された特別に熱い熱分解ガス9は、入口ステーション3の方向におけるCFP材料2の流れ方向に対して逆流して流れ、そこで付加的に、CFP材料2の加熱に貢献する。この「逆流」の結果として、熱分解炉1の入り口側を通して、より均一な加熱分配が、達成されるものである。
【0073】
本発明の熱分解プラントの熱分解炉1における回転管11が、加熱に関して特別な方法において構成されることは、すでに上記に指摘されている。本発明の好ましい教示によれば、異なるガス温度を有する複数の領域19が、回転管11の長手方向に沿ってハウジング13に設けられるか、又は、別々に調整可能なガス温度を有する複数の領域19が設けられ(言い換えると、個々の領域19におけるガス温度が別々に若しくはお互いに異なって調整され)、回転管11の出口開口部12が、最も高いガス温度を有する領域に少なくとも設けられるものである。
【0074】
回転管11の加熱領域15の異なる領域19には、熱分解ガス9の異なる形成についてすでに上述したものがある。最後に説明された本発明の教示のさらなる具体例において、熱分解炉1が、複数の領域19、特に少なくとも1つの加熱領域19.1、第1の熱分解領域19.2、第2の熱分解領域19.3、及び冷却領域19.4を有することが得策である。
【0075】
さらに、本発明の好ましい具体例において、熱分解炉1におけるガスの組成は、回転管11のいろいろな領域19において、特に第1の熱分解領域19.2における低い酸素比率(酸素含有量)及び第2の熱分解領域19.3において第1の熱分解領域19.2に比べてより高い酸素比率(酸素含有量)で、別々に調整される(言い換えると、熱分解炉1におけるガスの組成は、異なるものであり、回転管11のいろいろな領域19において別々に調整されるものである)。
【0076】
さらに、熱分解炉1のガスの組成及び/若しくは温度は、回転管11のいろいろな領域19において、好ましくは定義された酸素比率(酸素含有量)G(B1)及び/若しくは第1の熱分解領域19.2における定義された温度T(B1)で、且つ/又は、定義された酸素比率(酸素含有量)G(B2)及び/若しくは第2の熱分解領域19.3における定義された温度T(B2)で、別々に調整されるか、又は別々に調整されることができることは、本発明によって好ましいものである。特に、第2の熱分解領域B2における酸素含有量G(B2)は、第1の熱分解領域B1における酸素含有量G(B1)に比べて増加し、且つ/又は、第2の熱分解領域B2における温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1における温度T(B1)に比べて増加している。
【0077】
指摘された温度、特に指摘された温度T(B1)及びT(B2)、及びこれに関して下記に与えられた特定の温度値又は温度値範囲は、処理されるべき又はリサイクルされるべき対象物に到達する温度に関係する。
【0078】
図3は、熱分解炉1の加熱部15における入口ステーション3に近接した部分の断面図において、右側に、空気及びこれによる酸素を加熱部15の第1の領域19.1に導入する制御弁21を有する空気入口20を示すものである。
【0079】
図示された好ましい具体例において、回転管11は、入口ステーション3から出口ステーション6に下降するように傾斜することが、
図1及び
図2に示されている。この傾斜及び長手方向の軸を中心とした回転管11の回転は、回転管11におけるCFP材料2の軸方法の搬送運動を作り出す。図示された好ましい具体例において、回転管11は、混合要素22、言い換えると、
図3に容易に見られる偏向プレートを、その内部に有するものである。
【0080】
図3A及び
図3Bにおいて図示されるものは、本発明によって使用される回転管11の場合に使用されることが好ましい特色を示すものである。第1に混合要素22及び第2に好ましくは供給スクリュー、特に回旋状、螺旋状若しくはスクリュー状の供給スクリューの形の搬送要素26、好ましくはアルキメディアンスクリューとの結合が、特に好ましいものである。
図3Bにおいて搬送要素26の拡大図に図示されるように、混合要素22は、本発明によれば、供給スクリュー、特にアルキメディアンスクリューの形の搬送要素26の個々の回旋の間に配置されることが好ましい。これによって、CFP材料2は、回転管11の長手方向に強制的に搬送されるものである。
【0081】
図4は、図面における別の図に示されていない特色を示すものである。本発明の一つの変形例において、入口ステーション3が、
図1に示されるように、コンベアベルト5を公然と備えるのではなく、それに代えて入口ロックとして形成されることが可能となるものである。
図4について、入口ロック3は、一種の空気空間スクリーンのように、熱分解炉1の加熱部15の第1の領域19.1に、CFP材料2の不可避の導入が、量に関連して制御されることが確実であることによって、制御するものである。前記ロックは、別々の「部分」においてCFP材料2の仮の連続した導入を可能にするものである。しかしながら、これは、それにもかかわらず、制御装置10による正確な制御について大きな利点である。
【0082】
図面に示されない発明の具体例において、本発明の具体例において、本発明の熱分解プラントは、処理されるべきCFP材料2を粉砕するための粉砕装置を有し、好ましくは入口ステーション3の上流側に配置される。一方、この具体例において、本発明の熱分解プラントは、加工方向(=加工又は作業方向)において入口ステーション3の前若しくは上流側に配置される処理されるべきCFP材料2を粉砕するための粉砕装置を有するものである。これは、処理されそれに続いて入口ステーション3に導入されるCFP材料2が、最適な大きさ又は熱分解のための寸法を有することを確保するものである。適当な粉砕装置は、シュレッダー、叩き、剪断、粉砕、剥ぎ取り、及び/若しくは、切断装置の形において例とされるものであり、制限されるものではない。
【0083】
図面に示されない発明のさらなる具体例において、熱分解プラントは、好ましくは出口ステーション6の下流側に配置したCFP材料2から得られるリサイクル炭素繊維を仕上げする、特に取り出し及び/若しくは粉砕するための仕上げ装置を有するものである。言い換えると、この具体例において、本発明の熱分解プラントは、加工方向(=加工若しくは作業方向)の出口ステーション6の後若しくは後流側に配置されたCFP材料2から得られたリサイクル炭素繊維を、仕上げるための、特に取り出し及び/若しくは粉砕するための仕上げ装置を有するものである。これは、CFP材料2から得られるリサイクル炭素繊維が、それに続く処理のために最適に仕上げられるものである。
【0084】
図1乃至
図3は、これに関連して、熱分解炉1の加熱が、ハウジング13において加熱ガスライン24を介して少なくとも1つの外部ガスバーナー23によってもたせられることを示している。
図3において、外部ガスバーナー23のための接続は、底部左側に見られ、矢印は、回転管11が回転するハウジング13の内側において加熱ガスライン24への加熱ガスの流れを指摘する。それから、これらのガスは、排出ライン14を介して熱分解ガスとともに再びハウジング13を離れる。ハウジング13の底部において回転管11の長手方向の延出方向に対して横方向に配置される加熱ガスライン24を介する導入は、
図1に見ることができる。
【0085】
図1において、にここに接続される典型的な後バーナーのための接続25は、そこにある排出ライン14上の上部右側に見られる。これは、排出ライン14におけるガスの温度を、大きく上昇させ、そこで、熱分解ガスの後燃焼が発生する。
【0086】
図3において、その入り口側で、ガスバーナー23からくる先燃焼が見られる。ここで、後燃焼は、ハウジング13に回転管11を収容する空間の出口側にある排出ライン14において直接始められる。
【0087】
回転管11の代表的な温度は、200℃〜750℃の範囲であると同時に、接続25の上部下流側の代表的な温度は、1000℃〜1200℃である。これに関して、最初に議論された従来技術においてなされた包括的な説明が参照可能である。
【0088】
本発明の第2の様相によれば、本発明は、炭素繊維含有樹脂から、特に炭素繊維強化樹脂(CFPs若しくはCFP材料)から、好ましくは炭素繊維含有及び/若しくは炭素繊維強化合成物(複合材料)から、炭素繊維を回収(リサイクル)するための本発明に係る熱分解プラントの使用を提供する。
【0089】
本発明のこの様相に関するさらなる詳細な情報については、本発明の熱分解プラントに関する上述したものを参照し、本発明のこの様相に類似して適用することができるものである。
【0090】
本発明の第3の様相によれば、本発明は、さらに、炭素繊維含有樹脂から、特に炭素繊維強化樹脂(CFPs若しくはCFP材料)から、好ましくは炭素繊維含有及び/若しくは炭素繊維強化合成物(複合材料)から、炭素繊維を回収(リサイクル)する方法において、 ポリマーマトリクス内に炭素繊維を具備する炭素繊維含有樹脂に基づく対象物が、酸素の存在において複数段階の熱分解にさらされるとともに、ポリマーマトリクスのポリマーが、炭素繊維を与えるための熱分解の間分解されること、且つ、前記熱分解が、本発明の熱分解プラントにおいて実行される方法を提供するものである。
【0091】
図1に関して熱分解プラントにおいて実行される発明の方法についての特別な具体例は、
図5に示される。この具体例は、炭素繊維含有樹脂から、特に炭素繊維強化樹脂(CFPs若しくはCFP材料)から、好ましくは炭素繊維含有及び/若しくは炭素繊維強化合成物(複合材料)から、炭素繊維を回収(リサイクル)する方法に関するもので、その方法において、ポリマーマトリクス内に炭素繊維を具備する炭素繊維含有樹脂に基づく対象物が、酸素の存在において、複数段階の熱分解にさらされるとともに、ポリマーマトリクスのポリマーが炭素繊維を与えるための熱分解の間に分解されるものであり、そこでは、熱分解が熱分解装置P、特に熱分解炉1を有する前述した請求項のいずれかに記載されるような熱分解プラントにおいて実行され、前記熱分解装置Pが少なくとも下記する処理領域、特に下記に特定される順に回転管11の下記する領域19を具備し、対象物が、この順に下記する処理領域を通過するものである:
(A) 処理されるべき及び/若しくはリサイクルされるべき対象物が、所定の温度T(A)まで加熱される加熱領域A(
図1における参照番号19.1に対応する)、
(B1) それに続き、処理されるべき対象物のポリマーマトリクスのポリマーの熱分解が、所定の温度T(B1)及び所定の酸素含有量G(B1)で発生し且つ/又は実行される第1の熱分解領域B1(
図1における参照番号19.2に対応する)、
(B2) それに続き、熱分解領域B1(
図1における参照番号19.2に対応する)の後に、まだ存在する処理されるべき対象物のポリマーマトリクスのポリマーの最終熱分解が、所定の温度T(B2)及び所定の酸素含有量G(B2)で、少なくとも実質的に完全に除去されるまで実行される第2の熱分解領域B2(
図1における参照番号19.3に対応する)、
(C) それに続き、前記第2の熱分解領域B2(
図1における参照番号19.3に対応する)から得られるリサイクル炭素繊維RF(
図1における参照番号7に対応する)を冷却するための冷却領域C(
図1における参照番号19.4に対応する)、
そこで、第2の熱分解領域B2(
図1における参照番号19.3に対応する)における酸素含有量G(B2)は、第1の熱分解領域B1(
図1における参照番号19.2に対応する)の酸素含有量G(B1)と比較して上昇しており、且つ/又は、第2の熱分解領域B2(
図1における参照番号19.3に対応する)における温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1(
図1における参照番号19.2に対応する)の温度T(B1)と比較して上昇している。
【0092】
指摘された温度、特に指摘された温度T(B1)及びT(B2)並びにこれに関して下記に指摘される所定の温度値及び温度値範囲は、処理されるべき又はリサイクルされるべき対象物に到達する温度に関係している。
【0093】
図5は、本発明の好ましい具体例によって、
図1に示される熱分解プラントにおいて実行される炭素繊維含有樹脂から炭素繊維を回収(リサイクル)するための本発明の方法のフローチャート図を模式的に示したものである。処理されるべき炭素繊維含有樹脂CFPのポリマーマトリクスは、最初に熱分解装置Pの加熱領域A(
図1における参照番号19.1に対応する)において所定の温度まで加熱され、第1の熱分解領域B1(
図1における参照番号19.2に対応する)におけるそれに続く段階において、所定の温度及び所定の酸素含有量による選択的熱分解にさらされる。第1の熱分解領域B1に続く第2の熱分解領域B2(
図1における参照番号19.3に対応する)において、ポリマーマトリクスの少なくとも実質的な完全除去及びリサイクル炭素繊維の表面から熱分解残留物の完全除去まで、炭素繊維含有樹脂CFPの残留ポリマーマトリクスの最終熱分解が、所定の温度及び所定の酸素含有量で、実行される。それに続いて、冷却が、冷却領域C(
図1における参照番号19.4に対応する)において実行されるので、リサイクル炭素繊維RF(
図1における参照番号7に対応する)が、最終的な結果としてこの方法において取得されるものである。
【0094】
図6Aは、滑らかな表面構造を有する従来技術の原炭素繊維30を模式的に示すものである。
【0095】
図6Bは、従来の方法によって取得される従来技術のリサイクル炭素繊維31を模式的に示したものである。リサイクル炭素繊維31の表面は、リサイクルの間、炭素繊維の表面の酸化によって形成される溝33を有する。さらに、著しい量の熱分解若しくは炭化残留物が、従来のリサイクル炭素繊維31の表面に存在する。著しい量の熱分解若しくは炭化残留物35によって、従来の方法によって取得された従来のリサイクル炭素繊維の樹脂への取り込み性は、原炭素繊維30の取り込み性よりも良好ではないか、著しく良好ではない。
【0096】
図6Cは、本発明の方法によって取得されるリサイクル炭素繊維32を模式的に示したものである。リサイクル炭素繊維の表面は、リサイクルの間にリサイクル炭素繊維の酸化の結果として生じる溝34を有する。しかしながら、本発明に係る加工条件によれば、本発明に係るリサイクル炭素繊維32の表面に熱分解若しくは炭化残留物が存在しない。このように、本発明のリサイクル炭素繊維32は、原炭素繊維30と比較するか本発明によらずに形成されたリサイクル炭素繊維31の両方と比較しても、樹脂への十分に改善された取り込み性を有するものである。
【0097】
図6A,6B及び6Cにおける模式的描写は、対応する生成物において出願人によって実行された顕微鏡分析に対応する。
【0098】
本発明の特色は、少なくとも実質的に熱分解残留物がなく、さらに炭素繊維の表面の部分的酸化によって、原炭素繊維及び従来のリサイクル炭素繊維に比べてより良い湿潤性を有するリサイクル炭素繊維が、出口開口部を有する間接的加熱回転管状炉を具備する本発明に係る熱分解プラントと、本発明に係る加工条件、特に酸素含有量及び/若しくは第2の分解領域の温度の上昇との結合の結果として得られることである。
【0099】
このように、本発明に係る熱分解プラントと本発明に係る方法との結合は、リサイクル炭素繊維を破壊することなしに、ポリマーマトリクスのポリマーの選択的除去を可能にし、この結果として、機械的特性、特に引張強度及び弾性係数における且つ電気的特性における著しい劣化が生じるので、リサイクル炭素繊維の物質特性は、少なくとも原炭素繊維のそれらと少なくとも実質的に対応する。
【0100】
さらに、本発明に係る熱分解プラントと本発明に係る方法との結合は、結果として、少し酸化されたリサイクル炭素繊維の表面を生じ、言い換えると、その表面が粗く且つ炭素繊維の表面にいくつかの酸素含有官能基、例えば、フェノール、カルボキシル、カルボニル、アルデヒド、ケト、ヒドロキシ及び/若しくはオキソ基が、原炭素繊維若しくは従来のリサイクル炭素繊維の場合よりも十分に大きいことを生じるものである。
【0101】
結果として酸化された表面から生じるリサイクル炭素繊維の粗度及びより大きな親水性は、改善された湿潤性を生じ、さらにこれによるリサイクル炭素繊維の樹脂、建築材料若しくはセメント含有システムへのより良い取り込み性を生じるものである。
【0102】
本発明の好ましい実施例において、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)は、第1の熱分解領域B1における酸素含有量G(B1)と比較して、少なくとも3容量%、特に少なくとも5容量%、好ましくは少なくとも7.5容量%、特に好ましくは少なくとも10容量%まで上昇される。第1の熱分解領域B1における炭素繊維の酸化を防止するために、リサイクル炭素繊維の表面に熱分解残留物の除去が生じる第2の熱分解領域B2よりも少ない酸素量が使用される。このように、ポリマーマトリクスの分解は、第2の熱分解領域B2における熱分解残留物の除去よりも低い酸素含有量で、少なくとも実質的に第1の熱分解領域B1において実行される。第1の熱分解領域B1における少ない量の酸素の存在は、最初に、特に入口ロックの形の入口ステーション3によって、第2に、第1の熱分解領域B1の雰囲気が、実質的に、特にポリマーマトリクスの熱分解において生じるガス状分解生成物からなり、小さい酸素比率のみを有する蒸気で満たされることによって、達成されるものである。
【0103】
これに関して、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)は、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比較して、3容量%〜25容量%、特に5容量%〜20容量%、好ましくは7.5容量%〜17.5容量%、特に好ましくは10容量%〜15容量%の範囲内まで上昇する。上記に指摘したように、第1の熱分解領域B1よりもより高い第2の熱分解領域B2の酸素含有量は、少なくとも実質的に、リサイクル炭素繊維の表面の熱分解残留物を完全に除去するために、設定される。
【0104】
本発明によれば、特に良好な結果は、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)が、0.1容量%〜12容量%の範囲内の値に、特に0.5容量%〜10容量%の範囲内の値に、好ましくは0.75容量%〜6容量%の範囲内の値に、特に好ましくは1容量%〜4容量%の範囲内の値に、設定される時に、且つ、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、2容量%〜30容量%の範囲内の値に、特に3容量%〜20容量%の範囲内の値に、好ましくは5容量%〜17容量%の範囲内の値に、特に好ましくは6容量%〜14容量%の範囲内の値に設定される時に、特に、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比較して、少なくとも3容量%まで、特に少なくとも5容量%まで、好ましくは少なくとも7.5容量%まで、特に好ましくは10容量%まで上昇するものであり、且つ/又は、特に、第2の熱分解了解B2の酸素含有量G(B2)は、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比較して、3容量%〜25容量%まで、特に5容量%〜20容量%まで、好ましくは7.5容量%〜17.5容量%まで、特に好ましくは10容量%〜15容量%まで上昇するという条件において、得られることができるものである。
【0105】
本発明の目的に関して、第1及び第2の熱分解領域B1及びB2の酸素含有量が、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)が分解されるポリマーマトリクスに対する準化学量論的な値に設定され、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が分解される炭素マトリクスに対する超化学量論的な値に設定されることが可能である。このように、ポリマーマトリクスの分解が、第1の熱分解領域B1の少量の酸素の存在において実行され、熱分解残留物の除去が、第2の熱分解領域B2の大量の酸素の存在において実行されることが、本発明によって与えられることが好ましい。特に、第1の熱分解領域B1の酸素含有量が、ポリマーマトリクスのガス状分解生成物の燃焼に要求される酸素の量より小さい量で存在するように設定され、第1の熱分解領域B1の少量の酸素が、炭素繊維の酸化及びこれによる炭素繊維の部分的若しくは完全な破壊を避けるために必要であり、それは、結果として著しく悪化した機械的及び電気的特性を生じるものである。しかしながら、分解されるべきポリマーマトリクスと関連した雰囲気のより高い酸素含有量は、第2の熱分解領域B2におけるリサイクル炭素繊維の表面の熱分解残留物の完全燃焼のために必要である。
【0106】
本発明によれば、熱分解の間、好ましくは全工程の間、酸素含有量、特に第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)及び第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)を、ポリマーマトリクスの分解から発生する分解生成物、特にガス状分解生成物を取り除き、且つ/又は、好ましくは空気の形の酸素の導入によって、制御し、且つ/又は、調整することが好ましい。本発明によれば、第1の熱分解領域B1及び第2の熱分解領域B2の酸素含有量は、第1の熱分解領域B1の酸素含有量が、ポリマーマトリクスの分解及び部分的燃焼をさせるために十分に高いが、一方で、最小レベルで、又はそれを全体的に避けるために、酸化による炭素繊維の破壊を十分に低い状態となるように、間接的加熱回転管状炉の出口開口部を介してポリマーマトリクスのガス状分解生成物を取り除くことによって制御される。さらに、第2の熱分解領域B2の酸素含有量は、本発明によれば、リサイクル炭素繊維を破壊することなしに、リサイクル炭素繊維の表面上の熱分解残留物の燃焼を確保し、リサイクル炭素繊維の部分的な酸化が生じるように、設定されるものである。本発明によれば、第1の熱分解領域B1及び第2の熱分解領域B2の酸素含有量の設定は、ポリマーマトリクスのガス状分解生成物を、間接的加熱回転管状炉の出口開口部を介して、取り出すことによって実行されるものである。燃焼ガスの取り出しは、間接的加熱回転管状炉のそれぞれの領域に、好ましくは開放熱分解プラントを介して空気が流れる結果として、吸入効果を生じる。これによって、それぞれの熱分解領域における酸素含有量の制御及び/若しくは調整は、プロセス工学の視点から大変容易に実行され、且つ、酸素のような高価なガスの使用を要求しない。
【0107】
これに関して、熱分解の間、好ましくは全工程の間の酸素含有量、特に第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)及び第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)は、酸素測定装置、特に酸素高感度センサー及び/若しくは圧力センサーによって測定される。ここで、特に、酸素含有量は、ポリマーマトリクスの分解から生じる分解生成物を取り出すことによる酸素測定装置によって、好ましくはガス取り出し装置によって、且つ/又は、酸素の導入によって、制御され、且つ/又は、調整されるものである。本発明の目的について、第1の熱分解領域B1及び第2の熱分解領域B2の酸素含有量は、ピポット管のようなセンサー及び/若しくは圧力センサーによって測定される。測定された酸素含有量は、本発明に関連して、測定された酸素含有量及びそれぞれの熱分解領域における酸素含有量の意図された値の機能としてガス取り出し装置を制御するために使用されるものである。このように、酸素含有量は、ガス状分解生成物を取り出すことが、吸入効果及び本発明によって使用される開放熱分解プラントのそれぞれの熱分解領域への周囲からの空気の流れを生じることから、間接的加熱回転管状炉の出口開口部を介して、第1及び第2の熱分解領域における燃焼ガスを取り出すことによって上昇するものである。それぞれの熱分解領域の雰囲気にける酸素含有量の増加は、ポリマーマトリクスの燃焼と、リサイクル炭素繊維の表面の熱分解残留物の燃焼の両方を促進するものである。しかしながら、リサイクル炭素繊維の表面の酸化も、上昇するものである。
【0108】
本発明の好ましい具体例において、熱分解の間、好ましくは全工程の間の酸素含有量、特に第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)及び第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)は、ポリマーマトリクスが少なくとも実質的に選択的に第1の熱分解領域B1において熱分解され、第1の熱分解領域B1の後にまだ残っているポリマーマトリクスだけ及び熱分解(コーク)残留物が、少なくとも実質的に選択的に除去され、且つ、この方法においてリサイクルされた炭素繊維の表面が、第2の熱分解領域B2において少なくとも部分的に酸化されるように、制御され且つ/又は調整されるものである。第1及び第2の熱分解領域B1及びB2の酸素含有量の制御は、ポリマーマトリクスを選択的に熱分解させ、言い換えると、リサイクル炭素繊維の表面のさらなる酸化が実行されることなしに、所定の酸素含有量の存在において選択的に熱的に分解させるものである。第1の熱分解領域B1の減少した量の酸素は、ポリマーマトリクスの熱分解に影響を与えず、ポリマーマトリクスのポリマーのガス状分解生成物の燃焼を減少させ、炭素繊維の単に低い酸化を実行する。第2の熱分解領域B2において、酸素含有量は、残留したポリマーマトリクス及び第1の熱分解領域B1においてリサイクル炭素繊維の表面に形成された熱分解残留物が除去されるように、設定される。第2の熱分解領域B2においてより高い酸素量によって、リサイクル炭素繊維の表面の少なくとも部分的な酸化が、そこで実行されると同時に、親水性及びより粗い表面の結果として、改善された湿潤性を生じるものである。
【0109】
上述したように、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、本発明によれば、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比較して上昇しているものである。
【0110】
本発明によれば、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、これに関して、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比較して、少なくとも25℃まで、特に少なくとも50℃まで、好ましくは少なくとも75℃まで、特に好ましくは100℃まで、より好ましくは少なくとも125℃まで、特により好ましくは少なくとも150℃まで、上昇するものである。第2の熱分解領域B2におけるリサイクル炭素繊維の表面上の熱分解残留物の実質的に完全な除去を確実にするために、第1の熱分解領域よりもより高い温度T(B2)は、リサイクル炭素繊維の表面の熱分解(コーク)残留物の少なくとも実質的に完全な除去が、上昇する温度で、特により高い酸素含有量と結合して確保されるので、第2の熱分解領域において選択されるものである。しかしながら、温度は、リサイクル炭素繊維が過度に酸化され、その結果として、生じたリサイクル炭素繊維の少なくとも部分的な破壊が、繊維の機械的安定性を著しき減少させることから、特に最大値を超えるべきではない。
【0111】
特に、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比べて、25℃〜300℃まで、特に50℃〜250℃まで、好ましくは75℃〜200℃まで、特に好ましくは100℃〜175℃まで、上昇するものである。
【0112】
本発明によれば、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)を、375℃〜475℃の範囲内、特に390℃〜465℃の範囲内、好ましくは415℃〜455℃の範囲内、特に好ましくは430℃〜445℃の範囲内に設定することが好ましく、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)を、450℃〜750℃の範囲内、特に480℃〜690℃の範囲内、好ましくは510℃〜675℃の範囲内、特に好ましくは515℃〜650℃の範囲内に設定することが好ましいが、特に、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)が、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比べて、少なくとも25℃まで、特に少なくとも50℃まで、好ましくは少なくとも75℃まで、特に好ましくは少なくとも100℃まで、より好ましくは少なくとも125℃まで、特により好ましくは少なくとも150℃まで、上昇することを条件とし、且つ/又は、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比べて、25℃〜300℃まで、特に50℃〜250℃まで、好ましくは75℃〜200℃まで、特に好ましくは100℃〜175℃まで上昇することを条件とするものである。第1の熱分解領域B1は、選択的にポリマーマトリクスと、少なくとも部分的な燃焼で、第1の熱分解領域B1の雰囲気に存在する酸素によって結果として生じるガス状分解生成物を分解するのに使用される;第1の熱分解領域B1の雰囲気の少量の酸素によって、ポリマーマトリクスの分解はゆっくりと生じるものであり、熱分解残留物は、炭素繊維の表面に形成される。これらの熱分解残留物は、第1の熱分解領域B1よりも高い温度の第2の熱分解領域B2において除去されるとともに、リサ
イクル炭素繊維の過度の酸化が、上述したように、所定の温度の設定及び所定の酸素含有量の設定によって回避されるものである。
【0113】
これについて、熱分解の間、好ましくは全工程の間の温度、特に第1の熱分解領域B1の温度T(B1)及び第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、好ましくは、温度測定装置、特に温度感知センサーによって、制御され且つ/又は調整されるものである。温度感知センサーによる第1及び第2の熱分解領域B1及びB2の温度の制御は、第1の熱分解領域B1におけるポリマーマトリクスの選択的熱分解を確実なものにし、且つ第2の熱分解領域B2でのリサイクル炭素繊維の表面の熱分解残留物の完全な除去を確実にするために、使用される。これについて、第1及び第2の熱分解領域B1及びB2の温度T(B1)及びT(B2)の定義された制御は、炭素繊維の過度の酸化及び/若しくは分解を回避するために確保されるもので、その結果として、リサイクル炭素繊維の十分に減少した機械的安定性を生じるものである。
【0114】
熱分解の間、特に全行程の間の温度、特に第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と第2の熱分解領域B2の温度T(B2)が、ポリマーマトリクスのみが第1の熱分解領域B1において少なくとも実質的に選択的に熱分解され、熱分解(コーク)残留物が少なくとも実質的に選択的に除去されるように、制御されるか又は調整され、この方法においてリサイクルされた炭素繊維の表面は、第2の熱分解領域B2において少なくとも部分的に酸化されることが好ましいものである。
【0115】
本発明の好ましい具体例において、本発明によれば、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)は、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比べて、上昇しており、且つ、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)に比べて上昇している。これに関して、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)は、0.1容量%〜12容量%の範囲内、特に0.5容量%〜10容量%の範囲内、好ましくは0.75容量%〜6容量%の範囲内、特に好ましくは1容量%〜4容量%の範囲内の値に設定され、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)は、2容量%〜30容量%の範囲内、特に3容量%〜20容量%の範囲内、好ましくは5容量%〜17容量%の範囲内、特に好ましくは6容量%〜14容量%の範囲内の値に設定されることが好ましいが、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比べて、少なくとも3容量%まで、特に少なくとも5容量%まで、好ましくは少なくとも7.5容量%まで、特に好ましくは少なくとも10容量%まで上昇し、且つ/又は、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比べて、3容量%〜25容量%まで、特に5容量%〜20容量%まで、好ましくは7.5容量%〜17.5容量%まで、特に好ましくは10容量%〜15容量%まで上昇することを条件とするものである。さらに、本発明によれば、これに関して、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)は、375℃〜475℃の範囲内、特に390℃〜465℃の範囲内、好ましくは415℃〜455℃の範囲内、特に好ましくは430℃〜445℃の範囲内に設定され、且つ、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、450℃〜750℃の範囲内、特に480℃〜690℃の範囲内、好ましくは510℃〜675℃の範囲内、特に好ましくは515℃〜650℃の範囲内に設定されるが、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比べて、少なくとも25℃まで、特に少なくとも50℃まで、好ましくは少なくとも75℃まで、特に好ましくは少なくとも100℃まで、より好ましくは少なくとも125℃まで、さらに好ましくは少なくとも150℃まで上昇し、且つ/又は、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)は、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)に比べて、25℃〜300℃まで、特に50℃〜250℃まで、好ましくは75℃〜200℃まで、特に好ましくは100℃〜175℃まで上昇することを条件とするものである。
【0116】
本発明の目的のために、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比べて、上昇させることが可能であり、且つ、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)が、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)に比べて上昇させることができるものである。これについて、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)が、0.75容量%〜6容量%の範囲内に設定され、且つ、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、6容量%〜14容量%の範囲内に設定されることが可能であるが、第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)が、第1の熱分解領域B1の酸素含有量G(B1)と比べて、少なくとも3容量%〜13容量%まで上昇することが条件となる。本発明によれば、これについて、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)が、375℃〜475℃の範囲内に設定され、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)が、450℃〜750℃の範囲内に設定されることが好ましいが、第2の熱分解領域B2の温度T(B2)が、第1の熱分解領域B1の温度T(B1)と比べて、50℃〜250℃まで上昇されることを条件とするものである。
【0117】
上記に指摘されるように、本発明に係る熱分解プラント及び本発明に係る加工条件の結合、特に出口開口部を有する間接的加熱回転管状炉の第2の熱分解領域B2の酸素含有量G(B2)及び/若しくは温度T(B2)における制御される上昇は、少なくとも実質的に熱分解残留物の残留物をほとんど有さないリサイクル炭素繊維を生じ、表面の部分的酸化により、原炭素繊維若しくは従来のリサイクル炭素繊維と比べて、より親水性を有し且つより粗い表面を有する炭素繊維を生じる。これは、原炭素繊維若しくは従来のリサイクル炭素繊維と比べて、本発明に係る加工条件から結果として生じるリサイクル炭素繊維のより良い湿潤性及び樹脂への取り込み性を生じる。しかしながら、同時に、表面の酸化は、リサイクル炭素繊維の機械的特性、特に機械的安定性、好ましくは剛性及び引張強度は、原炭素繊維のそれらと比較して、実質的に変化しないままである。
【0118】
一般的に、リサイクルされる対象物の滞留時間が、広い範囲内で変化可能である;
特に、第1の熱分解領域B1においてリサイクルされるべき対象物の滞留時間VD(B1)は、0.1〜60分の範囲内、特に0.5〜30分の範囲内、好ましくは0.75〜15分の範囲内、特に好ましくは1〜10分の範囲内、より好ましくは1〜8分の範囲内である。第1の熱分解領域B1における滞留時間は、ポリマーマトリクスの少なくとも実質的に完全な除去を確保するのに十分である;しかしながら、第1の熱分解領域B1における滞留時間は、炭素繊維の酸化及び過度に長い処理時間及びこれによる経済的でない加工期間を避けるために、特別な時間を超えるべきでない。滞留時間VD(B1)は、たとえば、第1の熱分解領域B1内におけるリサイクルされるべき対象物の搬送速度を介して及び/若しくは第1の熱分解領域B1の空間的長さ若しくは延長部分を介して設定されるものである。
【0119】
さらに、本発明によれば、第2の熱分解領域B2におけるリサイクルされるべき対象物の滞留時間VD(B2)は、0.01〜30分の範囲内、特に0.1〜12分の範囲内、好ましくは0.5〜7.5分の範囲内、特に好ましくは1〜6分の範囲内、より好ましくは2〜5分の範囲内に設定されるものである。本発明によれば、第2の熱分解領域B2における滞留時間は、第1に、上昇する温度によるリサイクル炭素繊維の表面の過度の酸化を避け、第2に、熱分解残留物が少なくとも実質的に除去されるように制御されることに利点がある。滞留時間は、特に温度及び/若しくは酸素含有量に依存するので、より長い滞留時間は、低い温度及び/若しくは低い酸素含有量で使用されると同時に、より高い温度及び/若しくはより高い酸素含有量は、結果として低い滞留時間を生じる。さらに、それぞれの熱分解領域B1及びB2における滞留時間は、特に、寸法若しくは大きさ、並びにリサイクルされるべき対象物の分解によるものである。特に、大量の対象物若しくは樹脂含浸対象物は、第1にポリマーマトリクスの完全な除去、及び第2に、リサイクル炭素繊維の表面上の熱分解残留物の完全な除去を確実にするために、第1及び/若しくは第2の熱分解領域B1及びB2における上昇した残留時間を生じる。残留時間VD(B2)は、たとえば、第2の熱分解領域B2内でリサイクルされるべき対象物の搬送速度を介して、且つ/又は、第2の熱分解領域B2の空間的長さ若しくは延長部を介して設定されるものである。
【0120】
これに関して、第2の熱分解領域B2においてリサイクルされるべき対象物の滞留時間VD(B2)に対する第1の熱分解領域B1においてリサイクルされるべき対象物の滞留時間VD(B1)の比率Qは、本発明によれば、少なくとも1.05であり、特に少なくとも1.1であり、好ましくは少なくとも1.2であり、より好ましくは少なくとも1.3であり、特に好ましくは少なくとも1.5であり、且つ/又は、4以下であり、特に3.5以下であり、好ましくは3以下であり、特に好ましくは2.75以下であり、より好ましくは2.5以下であるものである。第2の熱分解領域B2と比べて、第1の熱分解領域B1においてより長い滞留時間は、第2の熱分解領域B2よりもより長い空間的長さ又は延出部を有する第1の熱分解領域B1によって、且つ/又は、第2の熱分解領域B2のそれよりもより大きい第1の熱分解領域B1においてリサイクルされるべき対象物の搬送速度によって達成されるものである。
【0121】
本発明によれば、第2の熱分解領域B2においてリサイクルされるべき対象物の滞留時間VD(B2)対する第2の熱分解領域B1においてリサイクルされるべき対象物の滞留時間VD(B1)の比率Qは、下記する不等式を満足させることが好ましい:
1.05≦Q≦4、特に1.1≦Q≦3.5、
好ましくは1.2≦Q≦3、より好ましくは1.3≦Q≦2.75、
特に好ましくは1.5≦Q≦2.5
【0122】
さらに、本発明によれば、加熱領域Aにおけるリサイクルされるべき対象物の滞留時間が、0.05〜20分間の範囲内、特に0.1〜15分間の範囲内、好ましくは0.5〜10分間の範囲内、特に好ましくは1〜5分間の範囲内、より好ましくは1.5〜4分間の範囲内に設定されることが有益である。これについて、加熱領域Aの温度が、50℃〜350℃の範囲内に、特に100℃〜325℃の範囲内に、好ましくは150℃〜300℃の範囲内に、特に好ましくは205℃〜295℃の範囲内に設定されることが、有益である。加熱領域Aの使用は、リサイクルされるべき材料が、所定の温度まで先加熱され、これによってリサイクルされるべき対象物の均一な温度が、第1の熱分解領域B1において迅速に達成できるものである。これは、比較的短い滞留時間で、ポリマーマトリクスの均一な除去を確実にし、これによって、大きな温度勾配によって生じるポリマーマトリクスの不均一な除去が避けられるので、リサイクル炭素繊維の一定の品質を確実にするものである。さらに、本発明の方法による加工時間は、第1の熱分解領域B1の比較的短い滞留時間が、所定の温度までのリサイクルされるべき対象物の加熱によって可能とされるので、加熱領域Aの使用によって十分に減少されるものである。
【0123】
さらに、冷却領域Cにおけるリサイクル炭素繊維の滞留時間は、本発明によれば、0.1〜30分の範囲内、特に0.5〜25分の範囲内、好ましくは1〜20分の範囲内、特に好ましくは5〜18分の範囲内、より好ましくは7.5〜15分の範囲内である。これに関して、冷却領域Cの温度は、特に、10℃〜350℃の範囲内、特に20℃〜250℃の範囲内、好ましくは25℃〜200℃の範囲内、特に好ましくは30℃〜150℃の範囲内である。冷却領域Cは、リサイクル炭素繊維の先冷却を行うので、その直後に冷却領域16におけるリサイクル炭素繊維の冷却と、これによる迅速な加工、特に粉砕、梱包及び/若しくは貯蔵が確保される。冷却領域Cは、たとえば冷却領域Cに吹き込まれる空気によって冷却される。
【0124】
本発明の方法についてのさらなる詳細に関して、本発明の方法は、原則的に、連続的に若しくはバッチ式において、好ましくは連続的に実行されるものである。連続的に本発明の方法を実行することは、連続的な温度のメンテナンスが、より経済的であることから、省エネ及びこれによる経済的な処理を可能にする。さらに、特に間接的加熱回転管状炉11を有する熱分解炉1のリサイクル炭素繊維の品質上及び熱分解装置Pの寿命における副作用を有する熱分解領域B1及びB2における熱変動は、連続した処理によって避けることができるものである。さらに、連続した処理は、リサイクルされるべき材料の複雑な貯蔵なしに、リサイクルされるべき対象物の直接的な処理を可能にする。
【0125】
さらに、本発明の目的について、特に第1の熱分解領域B1及び第2の熱分解領域B2の間に配置される熱分解装置Pが、少なくとも1つのさらなる熱分解領域、特に少なくとも2つのさらなる熱分解領域、好ましくは少なくとも3つのさらなる熱分解領域を有することができるものである。これについて、本発明によれば、熱分解装置Pが、第1の熱分解領域B1及び第2の熱分解領域B2の間に配置される1〜10のさらなる熱分解領域、特に2〜8のさらなる熱分解領域、好ましくは3〜7のさらなる熱分解領域、さらに好ましくは4〜6のさらなる熱分解領域を有することも可能である。
【0126】
本発明に関して、物理的に分離されることなく且つ/又はお互いに重なる部分を持つ熱分解装置Pの1つ又は複数の領域、好ましくは熱分解装置のすべての領域、又は、物理的に分割される熱分解装置Pの1つ又は複数の領域、特に第1の熱分解領域B1及び第2の熱分解領域B2が、1つ又は複数のロックによって与えられることが好ましい。
【0127】
さらに、処理され及び/若しくはリサイクルされる対象物は、本発明の目的のために、加熱領域Aの上流側で、前処理、特に粉砕にさらされる。リサイクルされるべき対象物は、リサイクルされるべき対象物の最大サイズが、熱分解プラントの入口ステーション3の開口部の寸法に合致するために、加熱領域Aの上流側で粉砕が実行される。特に、このように使用されるリサイクルされるべき対象物の大きさは、熱分解プラントの入口ステーション3の寸法に依存する。しかしながら、リサイクルされるべき対象物は、使用される熱分解プラントの入口ステーション3によって要求されるものよりもより小さいサイズまで粉砕されることも可能である。
【0128】
これに関して、その処理から及び/若しくは冷却領域Cに続く冷却領域の後に結果として生じるリサイクル繊維は、好ましくは切断すること、切り刻むこと、粉砕すること、及び/若しくは、細かく刻むことによって、且つ/又は、好ましくは大きさ、分散剤、消泡剤及び結合剤並びにそれらの混合物若しくは結合から選択された少なくとも1つの処理剤と接触することによって、後処理、特に粉砕にさらされることも可能である。リサイクル炭素繊維の後処理、特に粉砕は、この目的のために特別に製造され、それ自体当業者によって公知である切断装置において実行されると共に、原則的に粉砕が、湿潤及び乾燥工程において実行されるものである。複数の粉砕、特に複数の切り刻みが、リサイクル炭素繊維の繊維長を、所望の繊維長に設定されることを可能にする。これについて、あらかじめ切り刻まれた炭素繊維は、粉砕されたリサイクル炭素繊維を製造するために使用することも可能である;前記粉砕炭素繊維は、特にハンマーミル、衝撃プレートミル、スクリーンバスケットミルのようなミルを使用して、切り刻まれた炭素繊維を粉砕することによって得ることができるものである。さらに、リサイクル炭素繊維、特にリサイクル炭素繊維の表面は、マトリクスの特性に、リサイクル炭素繊維の特性を合致させ、これによって樹脂、建築材料若しくはセメント含有システムへのそれらの取り込み性を改善するために、処理剤で処理されることができる。
【0129】
本発明のこの様相に関するさらなる詳細について、本発明の他の様相に関して上述したことを参照することによって、本発明のこの様相に類似的に適用するものである。
【0130】
本発明の第4の様相によれば、本発明は、さらに、本発明の方法によって取得されるリサイクル炭素繊維を提供するものである。
【0131】
本発明による熱分解プラント及び本発明による加工条件の結合は、結果として生じるリサイクル炭素繊維に直接影響されるものである。出口開口部を有する間接的加熱回転管状炉の形で使用される熱分解炉及び本発明による加工条件により、特に、熱分解で製造されたリサイクル炭素繊維の表面の部分的酸化により、本発明に係る熱分解プラントと本発明に係る加工条件との結合から生じるリサイクル炭素繊維は、実質的に熱分解在留物がなく且つ粗い表面、特に溝、丸溝襞、しわ、くぼみなどを有するものである。さらに、本発明のリサイクル炭素繊維の表面は、部分的酸化によって、原炭素繊維の表面若しくは従来のリサイクル炭素繊維の表面よりも、より親水性を有するものである。本発明のリサイクル炭素繊維のより粗い且つより親水性の表面は、驚くべきことに、改善された湿潤性を生じ、これによって、原炭素繊維若しくは従来のリサイクル炭素繊維と比べて、改善された樹脂への取り込み性を生じるものである。
【0132】
本発明のより好ましい具体例において、リサイクル炭素繊維は、(23±0.5)℃の温度での単繊維測定によるウィルヘルミー理論によって、張力学的に測定された接触角として、75°以下、特に73°以下、好ましくは70°以下、特に好ましくは68°以下、より好ましくは65°以下、より特に好ましくは60°以下の測定された水に対する湿潤性を有するものである。
【0133】
これについて、リサイクル炭素繊維は、(23±0.5)℃の温度での単繊維測定によるウィルヘルミー理論によって張力学的に測定された接触角として、30°〜75°の範囲内、特に35°〜73°の範囲内、好ましくは38°〜70°の範囲内、特に好ましくは40°〜68°の範囲内、より好ましくは45°〜65°の範囲内、より特に好ましくは50°〜60°の範囲内の測定された水に対する湿潤性を有するものである。
【0134】
リサイクル炭素繊維の湿潤性の測定は、水に対する(23±0.5)℃による短繊維測定としてウィルヘルミー理論を使用する張力計によって実行されるものである。ウィルヘルミー理論に関して、特に、アベK.、オーニシS.、アキジマH.、タキグチH.、タマダK.、日本の表面科学学会の雑誌、2000年、21、643頁〜650頁、且つ、バスコンW.D.、繊維の湿潤作用;シュラッダーM.、ロエブG.湿潤性への近代的アプローチ;理論及び応用、プレナム出版、ニューヨーク1992、359頁〜373頁、参照することが可能である。さらに、ウィルヘルミー理論による接触角測定の詳細な説明について、本発明の下記する実施例も参照することが可能である。
【0135】
本発明の目的について、5重量%より小さい、特に4重量%より小さい、好ましくは3重量%より小さい、より好ましくは2重量%より小さい、特に好ましくは1重量%より小さい、特により好ましくは0.9重量%より小さい、最も好ましくは0.5重量%より小さいリサイクル炭素繊維に基づく熱分解残留物(炭化残留物)の比率を有するリサイクル炭素繊維を与えることが好ましい。
【0136】
特に、リサイクル炭素繊維は、本発明によれば、特に重量測定法による、好ましくは熱重量分析によって測定されるリサイクル炭素繊維に基づく熱分解残留物(炭化残留物)の比率、0.001〜5重量%の範囲内、特に0.01〜4重量%の範囲内、好ましくは0.05〜3重量%の範囲内、より好ましくは0.1〜0.95重量%の範囲内の比率を有するものである。一方で、リサイクル炭素繊維の表面上の熱分解在留物の高い比率は、第1に、樹脂、建築材料若しくはセメント含有システムへの低下した取り込み性、第2に、リサイクル炭素繊維の電気的特性における十分な劣化を生じるものである。この理由について、リサイクル炭素繊維は、本発明によれば、優れた取り込み性及び優れた電気的特性を得るために、熱分解残留物の極端に小さい比率を有するものである。前記熱分解残留物は、重量分析法によって、特に熱重量分析法(TGA)によって、測定されるものであり、熱重量分析法(TGA)が好ましいものである。重量分析法及び熱重量分析法(TGA)の詳細な説明については、本発明に係る実施例を参照することができるものである。
【0137】
さらに、リサイクル炭素繊維は、本発明の目的に関して、特にX線電子分光法(ESCA)によって、好ましくはX線光電子分光法(XPS)によって測定されたそれらの表面上に、特に、フェノール、カルボキシル、カルボニル、アルデヒド、ケト、ヒドロキシ及び/若しくはオキソ基から選択された酸素含有官能基、特に極性及び/若しくは親水性基を有することができるものである。本発明に係る熱分解プラントと本発明に係る加工条件との結合から結果として生じるリサイクル炭素繊維の表面上の酸素含有官能基が、リサイクル炭素繊維のより高い親水性表面を生じ、結果として原炭素繊維若しくは従来のリサイクル炭素繊維に比べてより高い湿潤性を有するものである。リサイクル炭素繊維の表面上の酸素含有官能基は、特にX線電子分光法(ESCA)によって、好ましくはX線光電子分光法(XPS)によって測定されるものである。ESCA及びXPSが実行される方法に関するさらなる情報について、レブセンK.、化学の物理的方法;ESCA,現代化学、10、1976、48頁〜53頁、及び、本発明の実施例を参照することができる。
【0138】
さらに、リサイクル炭素繊維は、それらの表面上に、溝、丸溝襞、凹み、しわ、引っ掻き傷、凸凹等を有することができる。本発明に係る熱分解プラントと本発明に係る加工条件との結合は、原炭素繊維と比べて、滑らかな表面を有しないリサイクル炭素繊維を生じる。これは、特に本発明に係る加工条件、特に熱分解残留物の除去の間、リサイクル炭素繊維の表面の酸化によるものである。リサイクル炭素繊維のより粗い表面は、親水性基の存在から離れて、リサイクル炭素繊維の良好な湿潤性の理由であり、それは、発明に係る熱分解プラントと発明に係る加工条件の結合によって取得されるものである。
【0139】
破壊されていない状態におけるリサイクル炭素繊維の繊維長は、広い範囲で変化可能である。破壊されていない状態におけるリサイクル炭素繊維は、0.01〜5mの範囲内、特に0.05〜3mの範囲内、好ましくは0.1〜2mの範囲内、より好ましくは0.2〜1mの範囲内の繊維長を有するものである。本発明の方法によって取得されるリサイクル炭素繊維の寸法は、特にリサイクルのために使用される熱分解プラントの入口ステーション3の大きさに依存し、且つ、リサイクル前にリサイクルされるべき対象物に実行される所定の粉砕に依存するものである。一般的に、繊維長及び繊維径の決定に関して、これは、それ自体その技術分野における通常の知識を有する者にとって公知である方法によって実行されるものである。特に、繊維長及び繊維径は、一般的に光錯乱、特にX線回析及び/若しくはレーザ光回析に基づく測定法によって、また光学顕微鏡法、電子顕微鏡法等によって、決定されるものである。さらに、ミリ単位の繊維長及び繊維径の決定は、DIN66165による篩分析によって実行されるものである。上述したサイズは、特に少なくとも実質的に繊維状基礎構造に関するものである。さらに、下記に与えられたサイズ決定における情報が参照されるものである。
【0140】
さらに、リサイクル炭素繊維は、1000〜6000MPaの範囲内、特に1500〜5000MPaの範囲内、好ましくは2000〜4000MPaの範囲内、より好ましくは2500〜3500MPaの範囲内の引張強度を有するものである。引張強度の決定は、特にEN ISO527−1によって実行される。
【0141】
さらに、リサイクル炭素繊維は、本発明の目的について、20〜1000GPaの範囲内、特に50〜800GPaの範囲内、好ましくは75〜600GPaの範囲内、より好ましくは100〜400GPaの範囲内、特により好ましくは150〜300GPaの範囲内の弾性係数を有するものである。特に、弾性係数は、DIN EN 61によって決定されるものである。
【0142】
さらに、リサイクル炭素繊維は、0.1〜100μmの範囲内、特に1〜50μmの範囲内、好ましくは2〜25μmの範囲内、より好ましくは3〜15μmの範囲内、特に好ましくは4〜10μmの範囲内の平均繊維径を有することができるものである。平均繊維径の決定は、たとえば光学顕微鏡法及び/若しくは電子顕微鏡法に基づく決定法によって、上述されたように、決定されるものである。
【0143】
本発明によって好ましい具体例において、リサイクル炭素繊維は、それらの表面に少なくとも1つの処理剤、特に
(i)熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂;
(ii) 熱可塑性ポリマー、特にポリオレフィン樹脂;
(iii) 分散剤、特に脂肪族アミンエトキシド及び/若しくはジアルキレングリコール;
(iv) 消泡剤、特にポリジアルキルシロキサン;及び
それらの混合物及び結合からなる群から選択された処理剤を含有するものである。本発明に係る熱分解プラント及び本発明に係る加工条件の結合から取得されるリサイクル炭素繊維を取り込むために、リサイクル炭素繊維は、本発明によってリサイクルされる炭素繊維の表面特性を、それぞれのマトリクスに合致させるために、それらの表面上で、少なくとも1つの処理剤によって、その表面特性を改善し、これによるリサイクル炭素繊維の樹脂、建築材料及びセメント含有システムへの取り込み性を改善するものである。それぞれのマトリクスに対する表面特性の適合は、リサイクル炭素繊維の均一な取り込み性を生じ、これによるそれぞれのマトリクスにおける効果的な改善若しくはマトリクスにおける強化を生じるものである。
【0144】
さらに、本発明の目的のために、リサイクル炭素繊維は、粉砕された形状、特に切り刻まれ且つ/又は二重に刻まれ且つ/又は粉砕された形において存在するものである。上記に指摘されたように、リサイクル炭素繊維を切り刻むことは、この目的のために特別に作られ且つその技術における通常の知識を有する者にとってそれ自体公知である切断装置において実行されるとともに、粉砕が、原則的に、湿潤若しくは乾燥法によって実行されることができるものである。リサイクル炭素繊維の繊維長は、複数の粉砕若しくは複数の切り刻みによって適切に設定されるものである。さらに、粉砕されたリサイクル炭素繊維は、先に切り刻まれたリサイクル炭素繊維から、ハンマーミル、衝撃プレートミル若しくはスクリーンバスケットミル等のようなミルを使用することで、得ることができるものである。
【0145】
これに関して、粉砕されたリサイクル炭素繊維は、0.01〜200mmの範囲内、特に0.1〜150mmの範囲内、好ましくは0.2〜100mmの範囲内、より好ましくは0.5〜90mmの範囲内、特により好ましくは1〜80mmの範囲内、最も好ましくは2〜70mmの範囲内の平均繊維長を有することができるものである。繊維長の決定は、特に、上記に指摘した測定方法によって実行されることが可能である。さらに、上述された繊維長は、複数段粉砕リサイクル炭素繊維よりもより長い繊維長を有する単段粉砕リサイクル炭素繊維に関するものである。しかしながら、これは、その技術分野における通常の知識を有する者にとって自明のことである。
【0146】
さらに、粉砕されたリサイクル炭素繊維は、0.1〜70mmの範囲内、特に0.5〜60mmの範囲内、好ましくは1〜50mmの範囲内、より好ましくは2〜40mmの範囲内、特により好ましくは3〜30mmの範囲内、最も好ましくは5〜20mmの範囲内の平均繊維長を有するものである。リサイクル炭素繊維の平均繊維長は、上述されたように決定される。これについて、上述した繊維長は、単段粉砕リサイクル炭素繊維よりもより短い繊維長を有する二段粉砕リサイクル炭素繊維に関するものである。
【0147】
さらに、粉砕されたリサイクル炭素繊維は、0.1〜1000μmの範囲内、特に1〜900μmの範囲内、好ましくは5〜700μmの範囲内、より好ましくは10〜500μmの範囲内、特により好ましくは25〜400μmの範囲内、さらにより好ましくは50〜350μmの範囲内、最も好ましくは75〜250μmの範囲内の平均繊維長を有するものである。上述したリサイクル譚と繊維の平均繊維長の決定は、上記に記載した決定方法によって実行されるものである。これについて、上述したリサイクル炭素繊維の平均繊維長は、粉砕されたリサイクル炭素繊維に関するものである。
【0148】
さらに、粉砕されたリサイクル炭素繊維に関して、粉砕されたリサイクル炭素繊維は、200〜5000kg/m
3の範囲内、特に300〜4500kg/m
3の範囲内、好ましくは500〜4000kg/m
3の範囲内、より好ましくは700〜3500kg/m
3の範囲内、特に好ましくは1000〜3000kg/m
3の範囲内、特により好ましくは1200〜2500kg/m
3の範囲内、最も好ましくは1500〜2200kg/m
3の範囲内の繊維密度を有するものである。リサイクル炭素繊維の繊維密度の決定は、特にDIN29971によって実行されるものである。
【0149】
本発明のこの様相におけるさらなる情報について、本発明の他の様相に関して上記になされたものを参照することができるとともに、本発明のこの様相にも類似的に適用することができるものである。
【0150】
さらに、本発明の第5の様相によれば、本発明は、本発明によるリサイクル炭素繊維の使用のために、添加剤として、特に樹脂、建築材料若しくはセメント含有システムのための、炭素繊維含有樹脂を製造するための、若しくは、樹脂への取り込みのための、特に配合するための、若しくは、炭素繊維含有成形体(たとえば構成要素)、金型及びシート状材料(たとえば不織布)を製造するための添加剤として、提供されるものである。
【0151】
本発明の目的のために、熱可塑性ポリマー、熱可塑性ポリマー混合物及び熱硬化性ポリマーが、使用されることが好ましい。特に樹脂(ポリマー)は、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、硫化ポリフェニレン樹脂(PPS)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリオレフィン樹脂、塩化ポリビニル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルイミド樹脂(PET)、酸化ポリアリーレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリイミド樹脂、及びそれらの混合物及び結合から選択されるものである。
【0152】
これに関して、本発明のリサイクル炭素繊維は、特に、混合するために、特に樹脂への取り込み性のために提供されるものである。特に、本発明のリサイクル炭素繊維の取り込み性は、結果として樹脂の品質向上、且つ/又は、機械的特性の改善を生じるものである。
【0153】
本発明のこの様相におけるさらなる情報について、本発明の他の様相に関して上記になされたものを参照することができるとともに、本発明のこの様相にも類似的に適用することができるものである。
【0154】
さらに、本発明の第6の様相によれば、本発明は、上記詳細に記載されたような本発明に係るリサイクル炭素繊維を具備するか、上記に詳細に記載されたような本発明の方法によって取得されたリサイクル炭素繊維を使用して製造された樹脂、建築材料、若しくはセメント含有システムを提供するものである。本発明のこの様相におけるさらなる情報について、本発明の他の様相に関して上記になされたものを参照することができるとともに、本発明のこの様相にも類似的に適用することができるものである。
【0155】
最後に、本発明の第7の様相によれば、本発明は、特に上記に詳細に記載されたような本発明に係るリサイクル炭素繊維を具備するか、上記に詳細に記載されたような本発明の方法によって取得されたリサイクル炭素繊維を使用して製造された複合材料若しくは化合物の形の成形体(たとえば構成要素)、金型及びシート状材料(たとえば不織布)を提供する。本発明のこの様相におけるさらなる情報について、本発明の他の様相に関して上記になされたものを参照することができるとともに、本発明のこの様相にも類似的に適用することができるものである。
【0156】
上述したように、本発明は、限定を伴うことなしに、いくつかの様相が下記に存在するものの間に多くの利点及び特色と関連する。
【0157】
出口開口部を有する間接的加熱回転管状炉を具備する本発明の熱分解プラントの使用は、熱分解ガスを同時に排出することのできる熱分解炉において、CFP材料の均一な混合、循環及び加熱を可能にするものである。これは、結果として、最適な熱分解条件を生じ、その結果として回転管状炉の所定の場所でポリマーマトリクスの選択的な除去を生じるので、実質的に熱分解(コーク)残留物が、ポリマーマトリクスの改善な除去の後、リサイクル炭素繊維の表面に全く残らないものである。
【0158】
さらに、本発明の熱分解プラントの間接的加熱回転管状炉の出口開口部は、回転管状炉内の雰囲気、特に酸素含有量を制御することを可能にするものである。回転管状炉の間接的な加熱との結合との結合において、温度変動を避けることによって、ポリマーマトリクスの選択的且つ実質的に完全な除去が、リサイクル炭素繊維が過度の範囲、特に過度に強力な酸化に対する損傷なしに、可能となるので、これは、結果として、リサイクル炭素繊維の十分に減少した機械的且つ電気的特性を生じるものである。
【0159】
本発明に係る熱分解プラント及び本発明に係る加工条件の使用によって可能となる酸素含有量及び温度の目標値制御でのCFP材料の均一な加熱と混合との結合は、少なくともそれらの表面に少なくとも実質的に熱分解若しくは炭化残留物を有しないリサイクル炭素繊維を生じるものである。さらに、上述した結合は、結果として、リサイクル炭素繊維の表面の部分的な酸化、言い換えるとより高い接着親和性を示す粗い表面を生じ、且つ、結果として生じるリサイクル炭素繊維の表面での酸素含有基、特にヒドロキシ、アルデヒド、カルボキシル基等を生じるものである。本発明による熱分解プラントと本発明による加工条件の結合から生じるリサイクル炭素繊維の表面の部分的な酸化は、リサイクル炭素繊維のより粗い且つ官能化された、特により高い親水性を有する表面によって、原炭素繊維又は従来のリサイクル炭素繊維と比べて、より高い湿潤性及びこれによる樹脂への改善された取り込み性を生じるものである。
【0160】
さらに、本発明の熱分解プラントと本発明に係る加工条件との結合、特に全工程の間の温度及び酸素含有量の制御は、リサイクル炭素繊維の過度の酸化を避けることから、本発明のリサイクル炭素繊維は、原炭素繊維よりも良好な機械的特性を有するものである。
【0161】
さらにまた、ポリマーマトリクスのガス状分解生成物による酸素の強い発熱反応によって、著しく少ない熱エネルギーが本発明の方法を実行するために要求されるもので、本発明の方法は、極端に経済的である。また、熱分解に必要なそれぞれの温度が、強い発熱反応のために大変迅速に到達するので、リサイクルされるべき対象物の短い滞留時間を本発明によって達成できるものである。その結果として、大量の炭素繊維含有樹脂が、本発明の方法と結合する本発明の熱分解プラントによって、短時間にリサイクルされるものである。
【0162】
本発明の熱分解プラントにおける本発明の方法を実行する前に、リサイクルされる炭素繊維含有樹脂の機械的及び/若しくは化学的前処理を実行する必要がないので、樹脂の付加後に、プリプレグが生成されることから、長い繊維長を有するリサイクル炭素繊維が得られるものである。しかしながら、長い炭素長を有するリサイクル炭素繊維は、たとえば化合において使用されるような所定の繊維長まで粉砕されるものである。
【0163】
本発明の方法が、他の補強材料が容易に除去されることから、リサイクル炭素繊維のそれぞれの剥離層を生じることから、本発明の方法において、複雑な分離なしに、炭素繊維含有樹脂の薄膜状の片及びガラス繊維のような他の補強材料をリサイクルすることもできるものである。
【0164】
さらに、本発明の熱分解プラントにおいて実行される本発明の方法は、また連続した作業及び工業的規模での実現を可能にするものである。
【0165】
本発明のさらなる具体例、改良例及び変形例は、本発明の範囲を逸脱することなしに、本明細書を読み込むことによって、その技術分野における通常の知識を有する者にとって、容易に理解し且つ実現することが可能となるものである。
【0166】
本発明は、下記する実施例の目的について説明されるが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0167】
本発明の特別な利点は、炭素繊維含有樹脂から炭素繊維を回収(リサイクル)するための例について下記に記載される。
【0168】
A) 炭素繊維含有樹脂をリサイクルするための方法
【0169】
航空機建造物(たとえば、航空機の翼)若しくは風力タービン(たとえば、風車羽根)から得られるような炭素繊維強化樹脂スクラップ(CFPスクラップ)が、炭素繊維含有樹脂として使用される。前記CFPスクラップの部品が熱分解プラントの入口ステーションの開口部より大きい場合には、CFPスクラップの粉砕が、その技術分野における通常の知識を有する者にとってそれ自体公知である切断装置によって、リサイクル前に実行される。
【0170】
プリプレッグの形の上述した炭素繊維含有スクラップからの炭素繊維のリサイクルは、表1において指摘される熱分解プラントにおいて実行される。
【0171】
【表1】
【0172】
炭素繊維含有樹脂のリサイクルが上述した熱分解プラントにおいて、それぞれの熱分解プラントにおけるそれぞれの場合に設定される表2に記載された加工条件で、実行されるものである。
【0173】
【表2】
【0174】
いろいろな熱分解プラントにおけるリサイクルによって取得されるリサイクル炭素繊維の表面における表面構造、熱分解残留物と酸素含有基との比率が、下記する測定方法によって決定されるものである。
【0175】
B)測定方法及び結果
【0176】
a) リサイクル炭素繊維の光学顕微鏡検査
表面の性質及び熱分解残留物の存在は、走査電子顕微鏡(SEM)によって検査される。適当な走査電子顕微鏡は、その技術分野における通常を有する者にとって公知である。これに関して、例えばモデルJEOL6400又はヒタチS−3200の走査電子顕微鏡を使用することができる。走査電子顕微鏡データの分析は、走査電子顕微鏡の分析によって決定される。走査電子顕微鏡によって取得されるいろいろな分解炉の結果が、下記する表3において示される。
【0177】
【表3】
【0178】
本発明による加工条件と結合した出口開口部を有する間接的加熱回転管状炉を有する本発明の熱分解プラントの使用が、繊維表面への十分な損傷を有しないが、リサイクル処理の間の酸化の結果として、取得された溝及び凹部の形の粗い表面を有する炭素繊維をリサイクルされるときのみであることが驚くべきことに見いだされていた。さらに、リサイクル炭素繊維は、本発明による加工条件と結合した本発明の熱分解プラントを使用するときに熱分解残留物を有さない(サンプル1及び2参照)ので、取り込み性、又は、機械的特性、特に剛性と伸長性、又は電気特性のいずれも、リサイクル処理によって著しく影響を受けない(サンプル2参照)。特に、リサイクル炭素繊維は、本発明に係る加工条件が使用されるとき(サンプル2参照)に、実質的に同一な剛性と、原炭素繊維に比べて5%〜10%の低い伸長性とを有するものである。出口開口部なしの間接的加熱回転管状炉を具備する熱分解プラントの使用は、結果として著しい量の熱分解残留物を有するリサイクル炭素繊維を生じるものである(サンプル3参照);これは、熱分解ガスが出口開口部の欠如によって、熱分解の間、回転管から逃げることができないことから、特に低い酸素含有量に貢献する。出口開口部がないが2つの処理領域を有する間接的加熱回転管状炉を具備する熱分解プラントの使用は、結果として著しい量の熱分解残留量を有するリサイクル炭素繊維を生じるものである(サンプル4参照)。リサイクル炭素繊維に直接的な大量の熱分解ガスの存在は、リサイクル炭素繊維の表面の高い酸素濃度を防止するが、これは、リサイクル炭素繊維の表面の熱分解残留物の排除及び部分的な酸化に必要なものである。さらに、熱分解ガスの燃焼は、相対的に大量の酸素で実行されるものであり、これは、強力な発熱反応の結果として局部的な温度上昇を生じ、これによってリサイクル炭素繊維の損傷を生じる。ベルト炉を有する熱分解プラントの使用は、熱分解の間、混合の不在と組み合わせた大変低い温度により、著しい量の熱分解在留物を有するリサイクル炭素繊維を生じる(サンプル5参照)。
【0179】
b) ウィルヘルミー法による接触角の測定
いろいろな分解炉を使用して得られたリサイクル炭素繊維の接触角の測定は、例えば、クルースゲーエムベーハー、ハンブルグ、ドイツから得られるK100SF張力計である張力計によって測定される。接触角の測定は、水に対するそれぞれの繊維測定として実行される。
【0180】
この目的のために、それぞれのリサイクル炭素繊維は、最初に0.8〜1cmの長さまで粉砕される。それぞれのリサイクル炭素繊維の粉砕は、例えばこの目的のために製造され、その技術分野における通常の知識を有する者にとってそれ自体公知である切断装置における切り刻みによって達成されるもので、前記粉砕は、原則として、湿潤若しくは乾燥法によって実行される。
【0181】
粉砕されたリサイクル炭素繊維は、サンプルホルダーを用いて、張力計の力センサー(秤量システム)に固定され、テスト液体、この場合水が、測定容器(ガラス、直径70mm、容量70mL)に導入され、力センサー下の張力計の温度制御ユニットに配置される。
【0182】
n−ヘプタンに対するそれぞれ個別の繊維の湿潤長が最初に測定される。n−ヘプタンテスト液体及び測定に要求される水のパラメータは、下記する表に示される。
【0183】
【表4】
【0184】
接触角及び湿潤長の測定は、(23℃±0.5)℃の温度で実行されると共に、動的接触角の測定は、累進角度である。それぞれのリサイクル炭素繊維について、二重の測定が実行される。
【0185】
検出速度は、6mm/minであり、測定速度は、1mm/minであり、感度は、0.0004mgであり、繊維が(適所での)凹んでいるところまでの深さは5mmである。
【0186】
接触角は、力センサーに記録された水と接触するリサイクル炭素繊維における力変化から、位置の関数として、水の表面張力及び予め測定されたリサイクル炭素繊維の湿潤長から、ソフトウェアー(例えば、クルースゲーエムベーハー、ハンブルグ、ドイツによるラブデスクソフトウェアー)によって、自動的に測定され又は演算されると共に、この場合、測定は、オンライン接触角として実行されるものである。
【0187】
リサイクル炭素繊維の湿潤長と接触角は、下記する表5において示される。
【0188】
【表5】
【0189】
サンプル4についての接触角は、リサイクル炭素繊維の部分的な破壊により測定することができなかった。さらに、リサイクル処理が本発明に係る方法と結合した本発明の熱分解プラントを使用して実行されるときに、表面の酸化が実行され、それによって親水性表面が結果として生じることが見いだされたことは驚くべきことである(サンプル1及び2)。これは、熱分解の間の低い酸素含有量によって親水性表面を有しないサンプル3に比べてより小さい接触角によって明確にされる。サンプル5は、親水性表面を有しているが、著しい量の熱分解残留物が、上述したように、ベルト炉の使用を理由として、走査電子顕微鏡によって、リサイクル炭素繊維の表面に見いだされるものである。
【0190】
全体的に見れば、本発明の熱分解プラントが本発明の加工条件と結合して使用される時だけ、リサイクル炭素繊維の表面の酸化が実行されるが、これらの著しい損傷がないことから、本発明のリサイクル炭素繊維の機械的特性が保たれるものである。より高い親水性を有する表面は、75°を超える接触角を有する(例えば湿潤が非常に難しい)原炭素繊維と比べて、樹脂、建築材料若しくはセメント含有システムへのより良好な取り込み性を生じるものである。
【0191】
c) 重量分析及び熱重量分析
熱分解残留物の重量測定は、ジクロロメタンのような溶剤に、予め決められた量のそれぞれのリサイクル炭素繊維を懸濁し、それに続いて超音波槽において懸濁液を処理し、炭素繊維のみを阻害する粗い篩を介して懸濁液を濾過し、且つ乾燥されたリサイクル炭素繊維の重さを再計量することによって実行されるものである。熱分解残留物の比率は、ジクロロメタンのような溶剤で処理した前後のリサイクル炭素繊維の重量の差によって与えられるものである。
【0192】
しかしながら、この場合において、熱分解残留物の比率は、熱重量分析(TGA)によって決定された。前記熱重量分析(TGA)は、その技術分野における通常の知識を有する者にとってそれ自体公知である測定装置を使用して実行されるものである。この場合、いろいろな熱分解プラントの使用によって取得されたリサイクル炭素繊維は、最初に、微粉砕されると共に、粉砕は、その技術分野における通常の知識を有する者にとってそれ自体公知である粉砕方法を使用して、特に切断装置を、又は、ハンマーミル、衝撃プレートミル、スクリーンバスケットミルのようなミルを使用して実行されるものである。それぞれのサンプルの粉砕の後、いろいろな熱分解プラントを使用して得られた1mgの粉砕されたリサイクル炭素繊維が、測定装置に搬送され、熱重量分析が、下記するパラメータを使用して実行される:空気流速度は、20cm
3/sであり、温度の加熱上昇率は、10℃/minであり、記録速度は1/Sである。熱分解残留物である約550℃までに蒸発される残留物は、熱重量分析の前後のサンプルの重量を計量することによって測定される。その測定は、例えば、微量天秤によって実行される。
【0193】
サンプル1及び2の場合において、重量損失が見いだされなかったことから、本発明に係る加工条件と結合した本発明の熱分解プラントは、著しい量の熱分解残留物を生じない。特に、本発明に係る熱分解プラント及び本発明に係る加工条件を使用して製造されたリサイクル炭素繊維は、(例えば、検出制限を下回る)0.1重量%より小さい熱分解残留物を有する。本発明によらないサンプル3及び5は、それぞれの場合において、5重量%より大きい著しい量の熱分解残留物をそれぞれに有するので、これが、それらが樹脂へのより低い取り込み性を有する理由である。さらに、サンプル3乃至5の熱分解残留物の比率は、リサイクル炭素繊維の電気的特性について副作用を有するものである。
【0194】
d) X線光電子分光法(XPS)
最後に、いろいろな熱分解プラントの使用によって製造されるリサイクル炭素繊維の表面上の酸素含有基のタイプ及び量は、X線光電子分光法(XPS)によって決定される。
【0195】
それぞれのリサイクル炭素繊維は、ステンレス鋼からなり、1cmの直径を有するスペーサへの束に適用され、両面接着テープを具備するものである。それに続いて、リサイクル炭素繊維の束の端部は、さらなる接着テープの使用によってスペーサに固定されるものである。6つのサンプルすべてが、このスペーサにおいてお互いから約5mmの距離で配置される。
【0196】
X線光電子分光法は、この目的の溜めに最適な測定装置、15mAのエミッション電流及び10kVのアノード電圧で単色Al−KαX線電子源(1486.6eV)を使用して、例えばクラトスAXIS ULTRAを使用して実行される。スペクトルは、0eV〜1100eVの範囲内で記録されると共に、伝達エネルギーが80eVであり、ステップサイズは、0.5eVに設定されるものである。全てのスペクトルは、90°の反射角を使用して記録される。それぞれの場合において、サンプルの中央の3つの位置が測定されると共に、サンプルの表面積はそれぞれ300μm×700μmである。
【0197】
表面の組成は、CasaXPSのようなソフトウェアーによって演算される。
【0198】
出願人によって実証されたように、本発明によってリサイクルされたサンプル1及び2の炭素繊維は、本発明によらないサンプル3及び4よりも表面上のケト及びカルボキシレート基のより高い濃度を有するものである。同様にサンプル5は、本発明によらないサンプル3及び4のリサイクル炭素繊維よりも高い比率のケト及びカルボキシレート基を有するが、著しい量の熱分解残留物が、使用された加工条件と結合した使用された熱分解プラントを理由として、サンプル5のリサイクル炭素繊維の表面上に見出せるものであり、これらの熱分解残留物が、樹脂への取り込み性を困難にしており、リサイクル炭素繊維の電気的特性に副作用を有するものである。
【0199】
酸素含有基、特にケト及びカルボキシレート基の向上した比率は、本発明のリサイクル炭素繊維のより高い親水性表面を生じる。このより高い親水性表面は、表面のより良い湿潤性によって、より良い取り込み性を生じるものである。