特許第6556884号(P6556884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556884
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】C型肝炎を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20190729BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   A61K31/454
   A61K45/00
   A61P1/16
   A61P31/14
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-26645(P2018-26645)
(22)【出願日】2018年2月19日
(62)【分割の表示】特願2015-532139(P2015-532139)の分割
【原出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2018-109035(P2018-109035A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】61/702,564
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イォク・チャン・ン
(72)【発明者】
【氏名】タミ・ジェイ・パイロット−マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・エム・ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】プリーシ・クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】クラレンス・ジェイ・マーリング
(72)【発明者】
【氏名】ニータ・シー・ミストリー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジェイ・ライシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】ダーチュン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ケイ・プラット
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・マツレンコ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジー・ケディ
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/051361(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/116257(WO,A1)
【文献】 特表2009−526070(JP,A)
【文献】 特表2012−519181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K45/00
A61P1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCV患者におけるHCVを治療するための医薬の製造における、式:
【化1】
を有する化合物1または医薬として許容されるその塩の使用であって、化合物1がHCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤との組み合わせにおいて使用され、患者が治療のために遺伝子型を特定されず、さらに、患者がHCV遺伝子型1、2、3、4、5または6に感染しており、治療が8、12または16週間未満にわたって継続し、および、患者へのインターフェロンの投与を含まない、前記使用。
【請求項2】
患者がHCV遺伝子型1に感染している、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
患者がHCV遺伝子型2に感染している、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
患者がHCV遺伝子型3に感染している、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
患者がHCV遺伝子型4に感染している、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
患者がHCV遺伝子型5に感染している、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
患者がHCV遺伝子型6に感染している、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
化合物1またはその塩がさらに別の抗HCV剤との組み合わせにおいて使用するためのものである、請求項1から7の一項に記載の使用。
【請求項9】
化合物1がHCVプロテアーゼ阻害剤、またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせとの組み合わせにおいて使用するためのものである、請求項1から8の一項に記載の使用。
【請求項10】
化合物1がHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤との組み合わせにおいて使用するためのものであり、ならびに治療が8週間以下にわたって継続する、請求項1から9の一項に記載の使用。
【請求項11】
化合物1がHCVプロテアーゼ阻害剤、またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせとの組み合わせにおいて使用するためのものであり、ならびに治療が12週間以下にわたって継続する、請求項1から9の一項に記載の使用。
【請求項12】
化合物1がHCVプロテアーゼ阻害剤、またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせとの組み合わせにおいて使用するためのものであり、ならびに治療が16週間以下にわたって継続する、請求項1から9の一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎遺伝子型HCV阻害剤に関し、HCV感染を治療するための同阻害剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)はフラビウイルス(Flaviviridae)科のヘパシウイルス(Hepacivirus)属に属するRNAウイルスである。エンベロープを有するHCVビリオンは、1つの中断されないオープンリーディングフレームにおいてあらゆる既知のウイルスに特有なタンパク質をコードするプラス鎖RNAゲノムを含有する。オープンリーディングフレームはおよそ9500のヌクレオチドを含み、約3000のアミノ酸の1つの大きなポリタンパク質をコードする。ポリタンパク質は、コアタンパク質、エンベロープタンパク質E1およびE2、膜結合タンパク質p7ならびに非構造タンパク質NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
HCV感染は、肝硬変および肝細胞癌を含めた進行性の肝臓病変を伴う。C型慢性肝炎は、リバビリンと組み合わせたペグインターフェロンアルファによって治療することができる。多くの使用者が副作用に苦しみ、体内からのウイルスの排除が多くの場合不十分であるため、有効性および耐容性には依然として実質的な限界がある。したがって、HCV感染を治療するための新しい薬物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
驚くことに、メチル{(2S,3R)−1−[(2S)−2−{5−[(2R,5R)−1−{3,5−ジフルオロ−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]フェニル}−5−(6−フルオロ−2−{(2S)−1−[N−(メトキシカルボニル)−O−メチル−L−トレオニル]ピロリジン−2−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)ピロリジン−2−イル]−6−フルオロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}ピロリジン−1−イル]−3−メトキシ−1−オキソブタン−2−イル}カルバメート(以下「化合物1」)および医薬として許容されるその塩が、汎遺伝子型HCV阻害剤であることが知見された。これらの化合物は、HCV遺伝子型1、2、3、4、5および6などの幅広いHCV遺伝子型およびバリアントを阻害するのに有効である。
【0005】
したがって、本発明の第1の態様はHCVを治療するための方法を特徴とする。この方法は、患者が有する特定のHCV遺伝子型にかかわらず、有効量の化合物1または医薬として許容されるその塩をHCV患者へ投与することを含む。したがって、患者は好ましくは治療前に遺伝子型を特定されず、特定のHCV遺伝子型について患者のプレスクリーニングを行わずに治療を開始できる。
【0006】
本発明のこの態様の一実施形態において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。本発明のこの態様の別の実施形態において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。本発明のこの態様の別の実施形態において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。本発明のこの態様のさらに別の実施形態において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。本発明のこの態様のなおさらなる実施形態において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0007】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、別の抗HCV剤と組み合わされるまたは同時投与される。前記別の抗HCV剤の非限定的な例としては、HCVポリメラーゼ阻害剤、HCVプロテアーゼ阻害剤、他のHCV NS5A阻害剤、CD81阻害剤、シクロフィリン阻害剤または配列内リボソーム進入部位(IRES)阻害剤が挙げられる。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0008】
本発明のこの態様のさらに別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0009】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVプロテアーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0010】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVポリメラーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0011】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0012】
本発明のこの態様においてならびに下記に記載のありとあらゆる実施形態および例において、治療は好ましくは24週間未満にわたって継続し、前記患者へのインターフェロンの投与を含まない。そのような治療は、例えば、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。例えば、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVポリメラーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。さらに別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。
【0013】
本発明のこの態様においてならびに下記に記載のありとあらゆる実施形態および例において、治療は好ましくは12週間以下にわたって継続し(例えば、治療は8、9、10、11または12週間継続する;好ましくは治療は12週間継続する。)、前記患者へのインターフェロンの投与を含まない。そのような治療は、例えば、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。例えば、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVポリメラーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。さらに別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。
【0014】
本発明のこの態様においてならびに下記に記載のありとあらゆる実施形態および例において、治療は、前記患者へのリバビリンの投与を含んでいてもよく、または含まなくてもよい;例えば、治療は、前記患者へのリバビリンの投与を含んでいてもよい。
【0015】
第2の態様において、本発明はHCVを治療する方法を特徴とする。この方法は、有効量の化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCV患者へ投与することを含み、前記患者はHCV遺伝子型2、3、4、5または6に感染している。
【0016】
本発明のこの態様の一実施形態において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。本発明のこの態様の別の実施形態において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。本発明のこの態様の別の実施形態において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。本発明のこの態様のさらに別の実施形態において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。本発明のこの態様のなおさらなる実施形態において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0017】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、別の抗HCV剤と組み合わされるまたは同時投与される。前記別の抗HCV剤の非限定的な例としては、HCVポリメラーゼ阻害剤、HCVプロテアーゼ阻害剤、他のHCV NS5A阻害剤、CD81阻害剤、シクロフィリン阻害剤または配列内リボソーム進入部位(IRES)阻害剤が挙げられる。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0018】
本発明のこの態様のさらに別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0019】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVプロテアーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0020】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVポリメラーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0021】
本発明のこの態様の別の実施形態において、化合物1またはその塩は、HCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤と組み合わされるまたは同時投与される。一例において、患者は遺伝子型2aまたは2bなどの遺伝子型2に感染している。別の例において、患者は遺伝子型3aなどの遺伝子型3に感染している。別の例において、患者は遺伝子型4aなどの遺伝子型4に感染している。さらに別の例において、患者は遺伝子型5aなどの遺伝子型5に感染している。なおさらに別の例において、患者は遺伝子型6aなどの遺伝子型6に感染している。
【0022】
本発明のこの態様においてならびに下記に記載のありとあらゆる実施形態および例において、治療は好ましくは24週間未満にわたって継続し、前記患者へのインターフェロンの投与を含まない。そのような治療は、例えば、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。例えば、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤と共に前記患者へ投与することを含んでいてもよい。別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVポリメラーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。さらに別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。
【0023】
本発明のこの態様においてならびに下記に記載のありとあらゆる実施形態および例において、治療は、好ましくは12週間以下にわたって継続し(例えば、治療は8、9、10、11または12週間継続する;好ましくは治療は12週間継続する。)、前記患者へのインターフェロンの投与を含まない。そのような治療は、例えば、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤またはHCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。例えば、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVポリメラーゼ阻害剤と共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。さらに別の例において、治療は、化合物1または医薬として許容されるその塩を、HCVプロテアーゼ阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせと共に、前記患者へ投与することを含んでいてもよい。
【0024】
本発明のこの態様においてならびに下記に記載のありとあらゆる実施形態および例において、治療は、前記患者へのリバビリンの投与を含んでいてもよく、または含まなくてもよい;例えば、治療は、前記患者へのリバビリンの投与を含む。
【0025】
本発明は、患者が有する特定のHCV遺伝子型にかかわらず、HCV患者を治療するのに使用するための、化合物1または医薬として許容されるその塩も特徴とする。そのような使用は、下記のありとあらゆる実施形態および例を含めた、上記の本発明の第1の態様において例証される。
【0026】
本発明は、HCV遺伝子型2、3、4、5または6に感染しているHCV患者を治療するのに使用するための、化合物1または医薬として許容されるその塩をさらに特徴とする。そのような使用は、下記のありとあらゆる実施形態および例を含めた、上記の本発明の第2の態様において例証される。
【0027】
本発明の他の特徴、目的および利点は、下記の詳細な説明において明らかである。しかし、詳細な説明は本発明の好ましい実施形態を示すが、限定ではなく例示のみの目的で示されることを理解するべきである。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、詳細な説明から当業者にとって明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
メチル{(2S,3R)−1−[(2S)−2−{5−[(2R,5R)−1−{3,5−ジフルオロ−4−[4−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]フェニル}−5−(6−フルオロ−2−{(2S)−1−[N−(メトキシカルボニル)−O−メチル−L−トレオニル]ピロリジン−2−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)ピロリジン−2−イル]−6−フルオロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル}ピロリジン−1−イル]−3−メトキシ−1−オキソブタン−2−イル}カルバメートとしても知られる化合物1は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0004196号明細書に記載されている。
【0029】
【化1】
化合物1は、様々な臨床的に関連のあるHCV遺伝子型、例えばHCV遺伝子型1a、1b、2a、2b、3a、4a、5aおよび6aなどに由来するNS5Aを有する安定なサブゲノムレプリコンに対して、10pM未満のEC50値を有することが分かった。サブゲノムレプリコントランジェントアッセイにおいて、化合物1は、他のNS5A阻害剤に耐性のある多くのHCVバリアント、例えば遺伝子型2a T24Aバリアント、遺伝子型2b L28FおよびL31Vバリアント、遺伝子型3a M28TおよびY93Hバリアント、遺伝子型4a L28VおよびL30Hバリアント、遺伝子型5a L28I、L31FおよびL31Vバリアントならびに遺伝子型6a L31V、T58NおよびT58Aバリアントなどに対して、5pM未満のEC50値を有することが分かった。EC50値は、下記の手順に従い、5%ウシ胎仔血清の存在下であるがヒト血漿の非存在下で測定した。
【0030】
本発明は、上記のようなHCVを治療するための化合物1または医薬として許容されるその塩の使用を特徴とする。本明細書に記載の任意の方法または使用において、化合物1または医薬として許容されるその塩は、適切な液体剤形または固体剤形中に配合されていてもよい。好ましくは、化合物1またはその塩は、非晶質の形態の化合物1(または医薬として許容されるその塩)、医薬として許容される親水性ポリマー、および場合により医薬として許容される界面活性剤を含む固体組成物中に配合される。
【0031】
非晶質の形態の化合物1(または医薬として許容されるその塩)を形成させる非限定的な方法は、ポリマー担体を用いて固体分散物を形成させることによる。本明細書で使用する用語「固体分散物」は、少なくとも2つの成分を含む固体状態(液体状態または気体状態とは対照的の)の系を規定し、ここで1つの成分は他の1つまたは複数の成分の全体にわたって分散している。例えば、活性成分または活性成分の組み合わせは、医薬として許容される親水性ポリマーおよび医薬として許容される界面活性剤を含むマトリックス中に分散させることができる。用語「固体分散物」は、1つの相の小粒子が別の相に分散している系を包含する。これらの粒子は多くの場合サイズが400μm未満であり、例えばサイズが100、10または1μm未満などである。成分の固体分散物が、系が化学的および物理的に全体にわたって均一もしくは均質であるまたは1つの相からなる(熱力学において定義される通り)ようなものである場合、そのような固体分散物は「固溶体」と呼ばれる。ガラス溶液は、溶質がガラス溶媒中に溶解している固溶体である。
【0032】
本明細書に記載の任意の方法は、(1)非晶質の形態の化合物1(または医薬として許容されるその塩)、(2)医薬として許容される親水性ポリマー、および(3)医薬として許容される界面活性剤を含む固体組成物を使用できる。化合物1(またはその塩)およびポリマーは、好ましくは固体分散物中に配合される。界面活性剤も同じ固体分散物中に配合してもよい;または界面活性剤は固体分散物と別個に合わされるもしくは混合してもよい。
【0033】
親水性ポリマーは、例えば、限定はされないが、少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、非常に好ましくは少なくとも80℃のTを有していてもよく、限定はされないが、80℃から180℃または100℃から150℃が挙げられる。好ましくは、親水性ポリマーは水溶性である。適切な親水性ポリマーの非限定的な例としては、限定はされないが、N−ビニルラクタムのホモポリマーまたはコポリマー、例えばN−ビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーなど(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはN−ビニルピロリドンと酢酸ビニルもしくはプロピオン酸ビニルとのコポリマー);セルロースエステルまたはセルロースエーテル、例えばアルキルセルロースなど(例えば、メチルセルロースまたはエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、およびセルロースフタレートまたはスクシネート(例えば、セルロースアセテートフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート);高分子ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー;ポリアクリレートまたはポリメタクリレート、例えばメタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、メタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマー、ブチルメタクリレート/2−ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)およびポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);ポリアクリルアミド;酢酸ビニルポリマー、例えば酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマーおよび部分加水分解ポリ酢酸ビニル(部分ケン化「ポリビニルアルコール」とも呼ばれる。)など;ポリビニルアルコール;オリゴ糖または多糖、例えばカラギーナン、ガラクトマンナンおよびキサンタンガムなど;ポリヒドロキシアルキルアクリレート;ポリヒドロキシアルキルメタクリレート;メチルメタクリレートとアクリル酸とのコポリマー;ポリエチレングリコール(PEG);またはそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0034】
好ましい親水性ポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)K17、PVP K25、PVP K30、PVP K90、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)E3、HPMC E5、HPMC E6、HPMC E15、HPMC K3、HPMC A4、HPMC A15、HPMCアセテートスクシネート(AS)LF、HPMC AS MF、HPMC AS HF、HPMC AS LG、HPMC AS MG、HPMC AS HG、HPMCフタレート(P)50、HPMC P 55、Ethocel 4、Ethocel 7、Ethocel 10、Ethocel 14、Ethocel 20、コポビドン(ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー60/40)、酢酸ポリビニル、メタクリラート/メタクリル酸コポリマー(Eudragit)L100−55、Eudragit L100、Eudragit S100、ポリエチレングリコール(PEG)400、PEG 600、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338およびポロキサマー407が挙げられる。
【0035】
これらのうち、N−ビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマー、例えばN−ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマーなどが好ましい。好ましいポリマーの非限定的な例は、60重量%のN−ビニルピロリドンと40重量%の酢酸ビニルとのコポリマーである。他の好ましいポリマーとしては、限定はされないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、USPにおいてヒプロメロースとしても知られる。)、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース E5グレード(HPMC−E5);およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMC−AS)が挙げられる。
【0036】
使用される医薬として許容される界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。好ましくは、界面活性剤は2〜20のHLB値を有する。本発明において使用される固体組成物はまた、医薬として許容される界面活性剤の混合物を含んでいてもよく、少なくとも1つの界面活性剤は少なくとも10のHLB値を有し、少なくとも別の界面活性剤は10未満のHLB値を有する。
【0037】
適切な医薬として許容される界面活性剤の非限定的な例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、例えばポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエートまたはポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL;BASF社)またはポリオキシエチレングリセロールオキシステアレート、例えば、ポリエチレングリコール40硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 40、ポリオキシル40硬化ヒマシ油またはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートとしても知られる。)またはポリエチレングリコール60硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 60)など;またはポリオキシエチレンソルビタンのモノ脂肪酸エステル、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノ脂肪酸エステル、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween(登録商標)40)もしくはリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)が挙げられる。適切な界面活性剤の他の非限定的な例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、例えばポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えばPEG−200モノラウレート、PEG−200ジラウレート、PEG−300ジラウレート、PEG−400ジラウレート、PEG−300ジステアレート、PEG−300ジオレエート;アルキレングリコール脂肪酸モノエステル、例えばプロピレングリコールモノラウレート(Lauroglycol(登録商標));スクロース脂肪酸エステル、例えばスクロースモノステアレート、スクロースジステアレート、スクロースモノラウレート、スクロースジラウレート;ソルビタン脂肪酸モノエステル、例えばソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20)、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート(Span(登録商標)40)またはソルビタンステアレートが挙げられる。他の適切な界面活性剤としては、限定はされないが、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーまたはポリオキシエチレンポリプロピレングリコールとしても知られる。)、例えばPoloxamer(登録商標)124、Poloxamer(登録商標)188、Poloxamer(登録商標)237、Poloxamer(登録商標)388またはPoloxamer(登録商標)407(BASF Wyandotte社)が挙げられる。上記のように、界面活性剤の混合物が本発明で使用される固体組成物中で使用されてもよい。
【0038】
好ましい界面活性剤の非限定的な例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、Cremophor RH 40、Cremophor EL、Gelucire 44/14、Gelucire 50/13、D−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS)、プロピレングリコールラウレート、ラウリル硫酸ナトリウムおよびソルビタンモノラウレートが挙げられる。
【0039】
本発明で使用される固体分散物は、好ましくは固溶体であり、より好ましくはガラス状溶液である。
【0040】
一実施形態において、本発明で使用される固体組成物は、化合物1(または医薬として許容されるその塩)および医薬として許容される親水性ポリマーを含む、非晶質固体分散物または固溶体を含む。固体組成物はまた、好ましくは非晶質固体分散物または固溶体中に配合される医薬として許容される界面活性剤も含む。親水性ポリマーは、例えば、N−ビニルラクタムのホモポリマー、N−ビニルラクタムのコポリマー、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルポリマー、オリゴ糖および多糖からなる群から選択できる。非限定的な例として、親水性ポリマーは、N−ビニルピロリドンのホモポリマー、N−ビニルピロリドンのコポリマー、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、N−ビニルピロリドンとビニルプロピオン酸塩とのコポリマー、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースフタレート、セルローススクシネート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、メタクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、メタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマー、ブチルメタクリレート/2−ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、部分加水分解酢酸ポリビニル、カラギーナン、ガラクトマンナンおよびキサンタンガムからなる群から選択される。好ましくは、親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)K17、PVP K25、PVP K30、PVP K90、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)E3、HPMC E5、HPMC E6、HPMC E15、HPMC K3、HPMC A4、HPMC A15、HPMCアセテートスクシネート(AS)LF、HPMC AS MF、HPMC AS HF、HPMC AS LG、HPMC AS MG、HPMC AS HG、HPMCフタレート(P)50、HPMC P 55、Ethocel 4、Ethocel 7、Ethocel 10、Ethocel 14、Ethocel 20、コポビドン(ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー60/40)、酢酸ポリビニル、メタクリレート/メタクリル酸コポリマー(Eudragit)L100−55、Eudragit L100、Eudragit S100、ポリエチレングリコール(PEG)400、PEG 600、PEG 1450、PEG 3350、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338またはポロキサマー407から選択される。より好ましくは、親水性ポリマーは、ビニルピロリドンのホモポリマー(例えば、12から100のFikentscher K値を有するPVPまたは17から30のFikentscher K値を有するPVP)または30から70重量%のN−ビニルピロリドン(VP)と70から30重量%の酢酸ビニル(VA)とのコポリマー(例えば、60重量%VPと40重量%VAとのコポリマー)から選択される。界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエートまたはポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL;BASF社)またはポリオキシエチレングリセロールオキシステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンのモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキレングリコール脂肪酸モノエステル、スクロース脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸モノエステルからなる群から選択できる。非限定的な例として、界面活性剤は、ポリエチレングリコール40硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 40、ポリオキシル40硬化ヒマシ油またはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートとしても知られる。)、ポリエチレングリコール60硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノ脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(Tween(登録商標)40)またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20))、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル、PEG−200モノラウレート、PEG−200ジラウレート、PEG−300ジラウレート、PEG−400ジラウレート、PEG−300ジステアレート、PEG−300ジオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、スクロースモノステアレート、スクロースジステアレート、スクロースモノラウレート、スクロースジラウレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート(monopalnitate)およびソルビタンステアレートからなる群から選択される。好ましくは、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート 80、Cremophor RH 40、Cremophor EL、Gelucire 44/14、Gelucire 50/13、D−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS)、プロピレングリコールラウレート、ラウリル硫酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートから選択される。より好ましくは、界面活性剤は、ソルビタンモノラウレートまたはD−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネートから選択される。
【0041】
本発明で使用される固体分散物は好ましくは、化合物1または化合物1および別の抗HCV剤の組み合わせが、医薬として許容される親水性ポリマーを含有するマトリックス中に分子状に分散している単一の相(熱力学で定義される。)を含むまたはその単一の相からなる。そのような場合、示差走査熱量測定法(DSC)を用いた固体分散物の熱分析は典型的には1つのTのみを示し、固体分散物は粉末X線回折分光法により測定されるいかなる検出可能な結晶性化合物1も含有しない。
【0042】
本発明で使用される固体組成物は、様々な方法によって、例えば限定はされないが、溶融押出、噴霧乾燥、共沈、凍結乾燥または他の溶媒蒸発法によって調製することができ、溶融押出および噴霧乾燥が好ましい。溶融押出プロセスは典型的には、活性成分、親水性ポリマーおよび好ましくは界面活性剤を含む溶融物を調製するステップ、および次いで溶融物を凝固するまで冷却するステップを含む。「溶融」とは、1つの成分が他の1つまたは複数の成分中に埋め込まれる、好ましくは均質に埋め込まれることが可能であるような液体状態またはゴム状態への転移を意味する。多くの場合、ポリマー成分は溶融し、活性成分および界面活性剤を含めた他の成分が溶融物中に溶解しそれによって溶液が生じる。溶融は通常、ポリマーの軟化点を超えて加熱することを伴う。溶融物の調製は様々な方法で行うことができる。成分の混合は、溶融物の生成前、生成中または生成後に行うことができる。例えば、成分は最初に混合され次いで溶融される、または同時に混合および溶融されてもよい。溶融物は、活性成分を効率的に分散させるために均質化させてもよい。加えて、ポリマーを最初に溶融し、次いで活性成分に混合し均質化させるのに都合がよいこともある。一例において、界面活性剤以外のすべての材料が混合され押出機へ供給され、一方で界面活性剤は外部で溶融され、押出の間にポンプ注入される。
【0043】
溶融押出プロセスを開始するために、活性成分(例えば、化合物1または化合物1および少なくとも別の抗HCV剤の組み合わせ)は、それらの固体形態、例えばそれらのそれぞれの結晶形態で使用されてもよい。活性成分はまた、アルコール、脂肪族炭化水素、エステルまたは場合により液体二酸化炭素などの適切な液体溶媒中の溶液または分散液として使用されてもよい。溶媒は、溶融物の調製の際に除去(例えば蒸発)されてもよい。
【0044】
様々な添加剤、例えば、流動性調整剤(flow regulator)(例えばコロイダルシリカ)、バインダー、潤滑剤、フィラー、崩壊剤、可塑剤、着色剤または安定化剤(例えば、抗酸化剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤および微生物の攻撃に対する安定化剤)も、溶融物中に加えられてもよい。
【0045】
溶融および/または混合は、この目的において慣例的な装置で行われてもよい。特に適切な装置は押出機またはニーダーである。適切な押出機としては、1軸押出機、噛み合い型スクリュー押出機または多軸押出機、好ましくは、同方向回転または反対方向回転であってもよく場合によってニーディングディスクを備えていてもよい2軸押出機が挙げられる。作業温度は使用される押出機の種類または押出機内部の形状の種類によって決まることが理解される。押出機において成分を溶融、混合および溶解させるのに必要なエネルギーの一部は、発熱体によって供給することができる。しかし、押出機中の材料の摩擦およびせん断も相当量のエネルギーを混合物へ供給し、成分の均質な溶融物の形成に役立つことができる。
【0046】
溶融物は粘性の低いものからペースト状、粘性の高いものまで様々であってもよい。押出物の成形は、互いに一致する凹部が表面上にある2本の異方向回転ローラーを有するカレンダーにより好都合に行われてもよい。押出物は冷却され凝固させられてもよい。押出物はまた、凝固前(ホットカット)または凝固後(コールドカット)のいずれかで切断されて小片とされてもよい。
【0047】
凝固した押出生成物は、さらに粉砕する、すりつぶすまたは小さくして顆粒としてもよい。凝固した押出物ならびに生成した各々の顆粒は、親水性ポリマーおよび場合により医薬として許容される界面活性剤を含むマトリックス中の活性成分の固体分散物、好ましくは固溶体を含む。顆粒が界面活性剤を含有しない場合、上記の医薬として許容される界面活性剤が加えられ顆粒と混合されてもよい。押出生成物はまた、粉砕またはすりつぶして顆粒とする前に他の活性成分および/または添加剤と混合されてもよい。顆粒は適切な固形経口剤形へとさらに加工されてもよい。
【0048】
噴霧乾燥による溶媒蒸発の方法は、必要に応じて低温での加工を可能にする利点をもたらし、粉末特性をさらに改善するためのプロセスの他の修正を可能にする。噴霧乾燥した粉末は、次いで必要に応じてさらに調合されてもよく、カプセル、錠剤または任意の他の固形剤形のいずれが望ましいかにかかわらず、最終的な薬物生成物は適応性がある。
【0049】
例示的な噴霧乾燥プロセスおよび噴霧乾燥装置は、K.Masters、SPRAY DRYING HANDBOOK(Halstead Press、New York、第4版、1985)に記載されている。本発明に適した噴霧乾燥デバイスの非限定的な例としては、Niro Inc.、またはGEA Process Engineering Inc.、Buchi Labortechnik AG、およびSpray Drying Systems,Inc.製の噴霧乾燥機が挙げられる。噴霧乾燥法は一般に、液体混合物を小さい液滴へと分割し、液滴から溶媒を蒸発させる強力な推進力がある容器(噴霧乾燥装置)中で液滴から溶媒を急速に除去することを含む。噴霧技術としては、例えば二流体ノズルもしくは圧力ノズルまたは回転噴霧器が挙げられる。溶媒蒸発の強力な推進力は、例えば、噴霧乾燥装置中の溶媒の分圧が乾燥させる液滴の温度における溶媒の蒸気圧を十分に下回るように維持することによってもたらされ得る。これは、(1)噴霧乾燥装置中の圧力を部分真空で維持すること;(2)液滴を加温乾燥ガス(例えば加熱窒素)と混合すること;または(3)その両方のいずれかによって達成できる。
【0050】
乾燥ガスの温度および流量ならびに噴霧乾燥器のデザインは、液滴が装置の壁に達する時間までに十分に乾燥するように選択することができる。これは、乾燥した液滴が本質的に固体であり微粉末を形成することができ装置の壁に張り付かないことを確実にするのに役立つ。噴霧乾燥生成物は、材料を手作業で取り出すことによって、空気圧によって、機械によって、または他の適切な手段によって収集できる。好ましい乾燥のレベルに達する実際の時間の長さは、液滴のサイズ、処方および噴霧乾燥器の運転によって決まる。凝固に続いて、溶媒を固体粉末からさらに蒸発させるために、固体粉末は噴霧乾燥チャンバー中でさらに時間を延ばして(例えば5〜60秒)とどまってもよい。乾燥機を出る際の固体分散物中の最終的な溶媒含量は、好ましくは最終製品の安定性を改善するのに十分低いレベルである。例えば、噴霧乾燥粉末の残留溶媒含量は2重量%未満であってもよい。非常に好ましくは、残留溶媒含量は医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization(ICH))ガイドラインに示される制限内である。さらに、噴霧乾燥組成物をさらに乾燥させて残留溶媒をさらに低いレベルにまで低下させるのが有用である場合がある。溶媒レベルをさらに低下させる方法としては、限定はされないが、流動床乾燥、赤外線乾燥、回転式乾燥、真空乾燥ならびにこれらの方法および他の方法の組み合わせが挙げられる。
【0051】
上記の固体押出物のように、噴霧乾燥生成物は、親水性ポリマーおよび場合により医薬として許容される界面活性剤を含むマトリックス中の活性成分の固体分散物、好ましくは固溶体を含有する。噴霧乾燥生成物が界面活性剤を全く含有しない場合、さらなる加工の前に上記の医薬として許容される界面活性剤が加えられ噴霧乾燥生成物と混合されてもよい。
【0052】
噴霧乾燥機へ供給する前に、活性成分(例えば、化合物1、または化合物1および少なくとも別の抗HCV剤の組み合わせ)、親水性ポリマーならびに他の任意選択の活性成分または賦形剤、例えば医薬として許容される界面活性剤などは、溶媒中に溶解させてもよい。適切な溶媒としては、限定はされないが、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールまたはそれらの混合物)、アセトン、アセトン/水、アルカノール/水の混合物(例えば、エタノール/水の混合物)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。溶液はまた、噴霧乾燥機へ供給される前に予熱されてもよい。
【0053】
溶融押出、噴霧乾燥または他の技術により生成される固体分散物は、任意の適切な固形経口剤形へと調製されてもよい。一実施形態において、溶融押出、噴霧乾燥または他の技術により調製された固体分散物は圧縮して錠剤とすることができる。固体分散物は、直接圧縮するまたは圧縮前に粉砕もしくはすりつぶして顆粒または粉末とすることができる。圧縮は鋼製金型などの錠剤プレスで、2つの可動パンチの間で行うことができる。本発明の固体組成物が化合物1および別の抗HCV剤を含む場合、各々の個々の活性成分の固体分散物を別々に調製し、次いで、場合により粉砕またはすりつぶした固体分散物を圧縮前に混合することが可能である。化合物1および他の活性成分は、同じ固体分散物中で調製され、場合により他の添加剤と共に粉砕および/または混合され、次いで錠剤へと圧縮されることも可能である。
【0054】
固体分散物の圧縮において、流動性調整剤、バインダー、潤滑剤、フィラー、崩壊剤または可塑剤から選択される少なくとも1つの添加剤を使用してもよい。これらの添加剤は、すりつぶされたまたは粉砕された固体分散物と圧縮前に混合されてもよい。本発明の固体組成物の調製において、様々な他の添加剤、例えば、アゾ色素などの色素、有機顔料または酸化アルミニウムまたは二酸化チタンなどの無機顔料または天然由来の色素;抗酸化剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、微生物の攻撃に対する安定化剤などの安定化剤も使用してもよい。
【0055】
本明細書に記載の任意の態様、実施形態および実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)は別の抗HCV剤と組み合わせてHCV患者へ投与されてもよい。好ましくは、そのような治療は治療計画の全体を通してインターフェロンの使用を含まない。治療計画は例えば、限定はされないが、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9または8週間継続できる。好ましくは、治療計画は例えば、限定はされないが、12週間継続する。治療計画はまた、11、10、9または8週間など、12週間未満にわたって継続してもよい。
【0056】
化合物1(または医薬として許容されるその塩)と組み合わせることができる適切な抗HCV剤としては、限定はされないが、HCVポリメラーゼ阻害剤(例えば、ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤または非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤)、HCVプロテアーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤、他のHCV NS5A 阻害剤、HCV侵入阻害剤、シクロフィリン阻害剤、CD81阻害剤、配列内リボソーム進入部位阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、前記別の抗HCV剤はHCVポリメラーゼ阻害剤であってもよい。別の例において、前記別の抗HCV剤はHCVプロテアーゼ阻害剤であってもよい。
【0057】
前記別の抗HCV剤は、2つ以上のHCV阻害剤も含んでいてもよい。例えば、前記別の抗HCV剤は、HCVポリメラーゼ阻害剤およびHCVプロテアーゼ阻害剤の組み合わせであってもよい。別の例において、前記別の抗HCV剤は2つの異なるHCVプロテアーゼ阻害剤の組み合わせであってもよい。別の例において、前記別の抗HCV剤は2つの異なるHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせであってもよい(例えば、1つはヌクレオシドまたはヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤であり、他方は非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤である;または両方ともヌクレオシドまたはヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤である;または両方とも非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤である。)。さらに別の例において、前記別の抗HCV剤は別のHCV NS5A阻害剤およびHCVポリメラーゼ阻害剤の組み合わせであってもよい。さらに別の例において、前記別の抗HCV剤は別のHCV NS5A阻害剤およびHCVプロテアーゼ阻害剤の組み合わせであってもよい。なお別の例において、前記別の抗HCV剤は2つの他のHCV NS5A阻害剤の組み合わせであってもよい。
【0058】
本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)との組み合わせに適した抗HCV剤の具体例としては、限定はされないが、PSI−7977(Pharmasset/Gilead)、PSI−7851(Pharmasset/Gilead)、PSI−938(Pharmasset/Gilead)、PF−00868554、ANA−598、IDX184、IDX102、IDX375、GS−9190、VCH−759、VCH−916、MK−3281、BCX−4678、MK−3281、VBY708、ANA598、GL59728、GL60667、BMS−790052、BMS−791325、BMS−650032、BMS−824393、GS−9132、ACH−1095、AP−H005、A−831(Arrow Therapeutics)、A−689(Arrow Therapeutics)、INX08189(Inhibitex)、AZD2836、テラプレビル、ボセプレビル、ITMN−191(Intermune/Roche)、BI−201335、VBY−376、VX−500(Vertex)、PHX−B、ACH−1625、IDX136、IDX316、VX−813(Vertex)、SCH 900518(Schering−Plough)、TMC−435(Tibotec)、ITMN−191(Intermune、Roche)、MK−7009(Merck)、IDX−PI(Novartis)、BI−201335(Boehringer Ingelheim)、R7128(Roche)、MK−3281(Merck)、MK−0608(Merck)、PF−868554(Pfizer)、PF−4878691(Pfizer)、IDX−184(Novartis)、IDX−375、PPI−461(Presidio)、BILB−1941(Boehringer Ingelheim)、GS−9190(Gilead)、BMS−790052(BMS)、CTS−1027(Conatus)、GS−9620(Gilead)、PF−4878691(Pfizer)、RO5303253(Roche)、ALS−2200(Alios BioPharma/Vertex)、ALS−2158(Alios BioPharma/Vertex)、GSK62336805(GlaxoSmithKline)、または任意のそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)との組み合わせに適したHCVプロテアーゼ阻害剤の非限定的な例としては、ACH−1095(Achillion)、ACH−1625(Achillion)、ACH−2684(Achillion)、AVL−181(Avila)、AVL−192(Avila)、BI−201335(Boehringer Ingelheim)、BMS−650032(BMS)、ボセプレビル、ダノプレビル、GS−9132(Gilead)、GS−9256(Gilead)、GS−9451(Gilead)、IDX−136(Idenix)、IDX−316(Idenix)、IDX−320(Idenix)、MK−5172(Merck)、narlaprevir、PHX−1766(Phenomix)、テラプレビル、TMC−435(Tibotec)、vaniprevir、VBY708(Virobay)、VX−500(Vertex)、VX−813(Vertex)、VX−985(Vertex)またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)との組み合わせに適したHCVポリメラーゼ阻害剤の非限定的な例としては、ANA−598(Anadys)、BI−207127(Boehringer Ingelheim)、BILB−1941(Boehringer Ingelheim)、BMS−791325(BMS)、filibuvir、GL59728(Glaxo)、GL60667(Glaxo)、GS−9669(Gilead)、IDX−375(Idenix)、MK−3281(Merck)、tegobuvir、TMC−647055(Tibotec)、VCH−759(Vertex & ViraChem)、VCH−916(ViraChem)、VX−222(VCH−222)(Vertex & ViraChem)、VX−759(Vertex)、GS−6620(Gilead)、IDX−102(Idenix)、IDX−184(Idenix)、INX−189(Inhibitex)、MK−0608(Merck)、PSI−7977(Pharmasset/Gilead)、PSI−938(Pharmasset/Gilead)、RG7128(Roche)、TMC64912(Medivir)、GSK625433(GlaxoSmithKline)、BCX−4678(BioCryst)、ALS−2200(Alios BioPharma/Vertex)、ALS−2158(Alios BioPharma/Vertex)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ポリメラーゼ阻害剤は、ヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤、例えばGS−6620(Gilead)、IDX−102(Idenix)、IDX−184(Idenix)、INX−189(Inhibitex)、MK−0608(Merck)、PSI−7977(Pharmasset/Gilead)、PSI−938(Pharmasset/Gilead)、RG7128(Roche)、TMC64912(Medivir)、ALS−2200(Alios BioPharma/Vertex)、ALS−2158(Alios BioPharma/Vertex)、またはそれらの任意の組み合わせなどであってもよい。ポリメラーゼ阻害剤はまた、非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤、例えばANA−598(Anadys)、BI−207127(Boehringer Ingelheim)、BILB−1941(Boehringer Ingelheim)、BMS−791325(BMS)、filibuvir、GL59728(Glaxo)、GL60667(Glaxo)、GS−9669(Gilead)、IDX−375(Idenix)、MK−3281(Merck)、tegobuvir、TMC−647055(Tibotec)、VCH−759(Vertex & ViraChem)、VCH−916(ViraChem)、VX−222(VCH−222)(Vertex & ViraChem)、VX−759(Vertex)、またはそれらの任意の組み合わせなどであってもよい。本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)との組み合わせに適したNS5A阻害剤の非限定的な例としては、GSK62336805(GlaxoSmithKline)、ACH−2928(Achillion)、ACH−3102(Achillion)、AZD2836(Astra−Zeneca)、AZD7295(Astra−Zeneca)、BMS−790052(BMS)、BMS−824393(BMS)、EDP−239(Enanta/Novartis)、GS−5885(Gilead)、IDX−719(Idenix)、MK−8742(Merck)、PPI−1301(Presidio)、PPI−461(Presidio)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)との組み合わせに適したシクロフィリン阻害剤の非限定的な例としては、アリスポロビル(alisporovir)(Novartis & Debiopharm)、NM−811(Novartis)、SCY−635(Scynexis)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)との組み合わせに適したHCV侵入阻害剤の非限定的な例としては、ITX−4520(iTherx)、ITX−5061(iTherx)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)は例えば、限定はされないが、前記別の抗HCV剤と同時に投与できる。化合物1(または医薬として許容されるその塩)は例えば、限定はされないが、前記別の抗HCV剤と共に順次投与することもできる。例えば、化合物1(または医薬として許容されるその塩)は、前記別の抗HCV剤の投与直前または投与直後に投与できる。投与の頻度は同じまたは異なっていてもよい。例えば、化合物1(または医薬として許容されるその塩)および前記別の抗HCV剤は1日1回投与できる。別の例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)は1日1回投与でき、前記別の抗HCV剤は1日2回投与できる。
【0061】
本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)は前記別の抗HCV剤と共に単一の剤形で同時配合(co−formulate)されてもよい。適切な剤形の非限定的な例としては、液体または固形剤形が挙げられる。好ましくは、剤形は固形剤形である。より好ましくは、剤形は、化合物1(または医薬として許容されるその塩)が非晶質状である、または非常に好ましくは医薬として許容される水溶性ポリマーおよび医薬として許容される界面活性剤を含むマトリックス中に分子状に分散している、固形剤形である。前記別の抗HCV剤はまた、非晶質状である、または医薬として許容される水溶性ポリマーおよび医薬として許容される界面活性剤を含む同じマトリックスまたは異なるマトリックス中に分子状に分散していてもよい。前記別の抗HCV剤はまた、異なる形態で(例えば結晶形態で)配合されてもよい。
【0062】
非限定的な別法として、化合物1(または医薬として許容されるその塩)および前記別の抗HCV剤は異なる剤形で配合されてもよい。例えば、化合物1(または医薬として許容されるその塩)および前記別の抗HCV剤は異なるそれぞれの固形剤形で配合されてもよい。
【0063】
本明細書に記載の任意の態様、実施形態または実施例において、化合物1または医薬として許容されるその塩は、適切な量で、例えば体重当たり、約0.1mg/kgから約200mg/kgまたは約0.25mg/kgから約100mg/kgまたは約0.3mg/kgから約30mg/kgの用量などで投与してもよい。別の非限定的な例として、化合物1(または医薬として許容されるその塩)は、約5mgから約300mgまたは約25mgから約200mgまたは約25mgから約50mgまたはそれらの間の量の1日総用量で投与されてもよい。単回容量の組成物は、そのような量または1日用量を構成するようなそれらの約数を含有していてもよい。
【0064】
しかし、任意の特定の患者における特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排出の速度、薬物の組み合わせおよび治療を受ける疾患の重篤度を含めた、様々な要因によって決まることが理解されることになる。投与しようとする化合物および組成物の1日総投与量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決められることも理解されることになる。
【0065】
以下の表は、化合物1(または医薬として許容されるその塩)と本明細書に記載の任意の態様、実施形態または例において使用できる別の抗HCV剤との組み合わせの非限定的な例を挙げている。各治療において、化合物1(または医薬として許容されるその塩)および前記別の抗HCV剤はHCV患者へ毎日投与できる。各治療はインターフェロンを使用しないものであってもよい。リバビリンの投与は各投与計画に含まれていてもよい。しかし、本発明は、各治療計画がインターフェロンおよびリバビリンの両方とも使用しないものであってもよいことを意図している。加えて、インターフェロンおよび/またはリバビリンは必要に応じて各治療計画に含まれていてもよい。各治療計画はまた、1つまたは複数の他の抗HCV剤を患者へ投与することを場合により含んでいてもよい。各治療計画の期間は例えば、限定はされないが、患者の反応に応じて8〜48週間継続してもよい。表1に記載される任意の所与の投与計画において、薬物は例えば、限定はされないが、単一の固形剤形で同時配合されてもよい。例えば、投与計画で使用されるあらゆる薬物は、医薬として許容される水溶性ポリマーおよび場合により医薬として許容される界面活性剤を含むマトリックス中に、非晶質状で同時配合されるまたは分子状に分散していてもよい;別の例において、化合物1は、医薬として許容される水溶性ポリマーおよび場合により医薬として許容される界面活性剤を含むマトリックス中に、非晶質状で配合されるまたは分子状に分散し、その他の薬物は結晶形態であり、単一の固形剤形で非晶質化合物1と組み合わされる。さらに別の例において、化合物1は他の薬物の剤形とは異なる剤形で配合される。
【0066】
【表1】
【0067】
上記の実施形態および以下の実施例は限定ではなく例証として示されることが理解されるべきである。本発明の範囲内の様々な変更および修正は本発明の説明から当業者に明らかとなる。
【実施例】
【0068】
[実施例1] HCVレプリコン細胞培養アッセイにおける化合物1の抗ウイルス活性
化合物1の阻害活性は以下のプロトコルを使用して評価できる。2つの遺伝子型1の安定なサブゲノムレプリコン細胞株が細胞培養物の化合物特性決定に使用できる:1つは遺伝子型1a−H77に由来し他方は遺伝子型1b−Conlに由来する。レプリコン構築物は2シストロン性サブゲノムレプリコンであってもよい。遺伝子型1aレプリコン構築物は、HCVのH77株(1a−H77)に由来するNS3−NS5Bコード領域を含有する。レプリコンはホタルルシフェラーゼレポーターおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neo)選択マーカーも有する。FMDV 2aプロテアーゼによって分離されるこれらの2つのコード領域は、2シストロン性レプリコン構築物の第1のシストロンを含み、第2のシストロンは適応突然変異E1202G、K1691R、K2040RおよびS2204Iを加えたNS3−NS5Bコード領域を含有する。1b−Conlレプリコン構築物は、HCV 5’ UTR、3’ UTRおよびNS3−NS5Bコード領域が1b−Conl株に由来し、適応突然変異がK1609E、K1846TおよびY3005Cであること以外は、1a−H77レプリコンと同一である。加えて、1b−Conlレプリコン構築物はHCV IRESとルシフェラーゼ遺伝子との間にポリオウイルスIRESを含有する。レプリコン細胞株は、10%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)、100IU/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)および200mg/mlのG418(Invitrogen)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持することができる。HCV複製に対する化合物1の阻害効果は、ルシフェラーゼレポーター活性を測定することにより決定できる。例えば、レプリコン含有細胞は、5%のFBSを含有する100μlのDMEM中に1つのウェル当たり5000個の細胞の濃度で、96ウェルプレート中に播種できる。翌日に化合物1はジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈されて、一連の8種のハーフログ(half−log)希釈液中の200×ストックを得ることができる。次いで希釈系列は、5%のFBSを含有する培養液でさらに100倍に希釈できる。阻害剤を含む培養液が、5%のFBSを含む100μlのDMEMを既に含有しているオーバーナイト細胞培養プレートへ加えられる。細胞は組織培養インキュベータ中で3日間インキュベートすることができ、その後30μlのPassive Lysis緩衝剤(Promega)が各ウェルへ加えられ、次いでプレートは細胞を溶解させるように振動させながら30〜45分インキュベートされる。ルシフェリン溶液(100μl、Promega)が各ウェルに加えられ、Victor IIルミノメーター(Perkin−Elmer)によりルシフェラーゼ活性が測定できる。HCV RNA複製の阻害率は各化合物濃度について計算することができ、EC50値は4パラメーターロジスティック方程式への非線形回帰曲線フィッティングおよびGraphPad Prism 4ソフトウェアを使用して計算できる。
【0069】
化合物1が非遺伝子型1 HCVに由来のNS5Aを阻害する能力は、以下に従って評価できる。遺伝子型2a、2b、3a、4a、5aまたは6a HCVに由来のNS5Aの一部を含有するいくつかの安定なサブゲノム1b−Conlレプリコン細胞株が作られる。レプリコン構築物はNotI制限部位をNS5Aの上流に含有し、BlpI制限部位をNS5Aアミノ酸214の直後に含有する。HCV RNAは感染対象から単離され(Middletonら、J VIROL METHODS 145:137−145(2007)、およびTripathiら、ANTIVIRAL RES 73:40−49(2007)を参照)、RT−PCRがRNAについて行われて、HCV NS5Aアミノ酸1−214をコードするDNA断片を得る。PCR断片はNotIおよびBlpIの互換性末端(compatible end)を組み込み、この断片は1b−Conlレプリコンを含有するプラスミドへ結合される。これらの構築物をHuh−7細胞へ導入することにより、これらのキメラレプリコンを含有する安定な細胞株が生成される。これらのレプリコンにおけるHCV複製に対する化合物1の阻害効果は、上記のようにルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性を測定することにより決定できる。
【0070】
上記のアッセイまたは同様の細胞系レプリコンアッセイを使用して、化合物1は遺伝子型1〜6(表2)に由来のNS5Aを含むHCVレプリコンの複製に対して著しい阻害活性を示した。
【0071】
【表2】
【0072】
[実施例2] 他のHCV NS5A阻害剤と比較した、HCV非遺伝子型1野生型およびバリアントに対する化合物1の抗ウイルス有効性
表3に示す参照化合物を含めた他のNS5A阻害剤への耐性のある変異体に対して、化合物1が試験された。遺伝子型2〜6野生型由来のNS5Aを含有する一時的複製(transiently replicating)キメラレプリコンまたはNS5A内にバリアントを含有するレプリコンは、1b−Conlのバックグラウンドで構築された。これらのレプリコンはホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子も含有していた。バリアントはChange−IT Multiple Mutation Site Directed Mutagenesis Kit(USB)を使用して部位特異的突然変異誘発により導入された。突然変異誘発が配列解析により確認された後、プラスミドはScaI制限酵素により直線化された。TranscriptAid T7 High Yield Transcription Kit(Fermentas)を使用してプラスミドからHCVサブゲノムRNAを転写した。3×10個の細胞が15μgの鋳型RNAを用いて電気穿孔され、96ウェルプレートがウェル1個当たり7.5×10個の細胞により播種されたこと以外は、記載のようにRNAが電気穿孔によりHuh−7由来の細胞株へトランスフェクトされた(上記のMiddletonらおよびTripathiらを参照)。トランスフェクションの4時間後、1つのプレートのウェルがルシフェラーゼ測定のために回収された。このプレートは翻訳可能なインプットRNAの量の指標、ひいてはトランスフェクション効率を示した。残りのプレートのウェルへ、培養液中の試験化合物のハーフログ希釈系列(0.5%のDMSO最終濃度)が加えられ、プレートは37℃、5% COにおいて加湿インキュベータで4日間インキュベートされた。この期間後、培養液が除去されプレートはウェル1個当たり100μlのリン酸緩衝食塩水で洗浄された。ルシフェリン溶液(50μl、Promega)が各ウェルに加えられ、Victor IIルミノメーター(Perkin−Elmer)によりルシフェラーゼ活性が測定された。HCV RNA複製の阻害率が各化合物濃度について計算され、EC50値は4パラメーターロジスティック方程式への非線形回帰曲線フィッティングおよびGraphPad Prism 4ソフトウェアを使用して計算された。
【0073】
上記のアッセイまたは同様の細胞系レプリコンアッセイを使用して、化合物1は非遺伝子型1野生型NS5Aならびに耐性バリアントを含むNS5Aを含有するHCVレプリコンの複製に対して著しい阻害活性を示した(表3)。
【0074】
【表3】
【0075】
本発明の前述の説明は例証および説明を示し、網羅的であることまたは本発明を開示された正確なものに限定することを意図していない。修正および変更は上記の教示に照らして可能であるまたは本発明の実施から得られる場合がある。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲およびそれらの均等形態により定義されることが特筆される。