特許第6556885号(P6556885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556885反射型マスクブランク及び反射型マスク、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556885
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク及び反射型マスク、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20190729BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20190729BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G03F1/32
   G03F7/20 521
   G03F7/20 503
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-29498(P2018-29498)
(22)【出願日】2018年2月22日
(62)【分割の表示】特願2013-266982(P2013-266982)の分割
【原出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2018-88006(P2018-88006A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2018年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−122468(JP,A)
【文献】 再公表特許第2009/122972(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2011/071086(JP,A1)
【文献】 特開2006−332153(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/004850(JP,A1)
【文献】 特開2010−080659(JP,A)
【文献】 特開2012−033715(JP,A)
【文献】 特開2010−251490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/24
G03F 1/32
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜がこの順に形成された反射型マスクブランクであって、
前記保護膜は、Ru金属単体、RuにNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co及びReから選ばれる少なくとも1つの金属を含有するRu合金、又はこれらに窒素を含む材料からなり、
前記位相シフト膜は、タンタルを含むタンタル系材料層を有し、
前記保護膜表面上に、又は、前記保護膜の一部として前記位相シフト膜と接する側に、前記位相シフト膜との相互拡散を抑止するルテニウムと酸素とを含む拡散防止層が形成され
前記拡散防止層のルテニウムと酸素の比率は、ルテニウムを1としたときに酸素が0.8以上2.2以下であることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記位相シフト膜は、塩素系ガス又はフッ素系ガスでエッチング可能な材料層を有し、
前記材料層が前記拡散防止層と隣接していることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記拡散防止層の膜厚は0.2nm以上1.5nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記拡散防止層はN又はHを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記位相シフト膜は積層構造で形成され、最表面層がクロム系材料層であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記クロム系材料層は、炭素を含むことを特徴とする請求項5に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記位相シフト膜は積層構造で形成され、最表面層がルテニウム系材料層であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記位相シフト膜上に、エッチングマスク膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記多層反射膜の最上層は、ケイ素(Si)であって、前記最上層と前記保護膜との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の反射型マスクブランクによって作製されることを特徴とする反射型マスク。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の反射型マスクブランクにおける前記位相シフト膜をスパッタリング法にて成膜し、成膜開始から成膜終了まで大気に曝されず連続して成膜することを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項12】
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項10に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記露光光源のパワー(電力)は、80W以上であることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク及びこれによって作製される反射型マスク、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきており、より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線 (EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィが提案されている。EUVリソグラフィでは、EUV光に対する材料間の吸収率の差が小さいことなどから、反射型のマスクが用いられる。反射型マスクとしては、たとえば、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、露光光を吸収する位相シフト膜がパターン状に形成されたものが提案されている。露光機(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光は、位相シフト膜パターンのある部分では吸収され、位相シフト膜パターンのない部分では多層反射膜により反射されることにより、光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写されるものである。位相シフト膜パターンにおいて入射する露光光の一部が、多層反射膜により反射される光と約180度の位相差をもって反射され(位相シフト)、これによりコントラストを得ている。
【0003】
このようなEUVリソグラフィ用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクスに関連する技術が特許文献1〜4などによって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-080659号公報
【特許文献2】特開2009-212220号公報
【特許文献3】特開2005-268750号公報
【特許文献4】特開2010-092947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EUV露光機は、まだ本格的な商用化に至っていない技術であり、露光光源のパワーも研究開発用として適したものが選択されている(現状で、15W程度の光源が使用されている)状態である。しかし、本格的な商用化の際には当然に一定以上のスループットが得られる必要があり、そのためには露光光源のパワーを上げる必要がある。露光光源が高パワーになると、露光(パターンの転写)の際の反射型マスクにおける単位時間当たりの発熱量も多くなり(位相シフト膜で吸収した光のエネルギーが熱に変換されるため)、この熱による熱拡散により、保護膜とこれに隣接する位相シフト膜パターンの材料との間で相互拡散が生じる。このような相互拡散により、EUV光に対する反射率に変動が生じてしまい、繰り返し使用により反射型のマスクとしての機能が低下する(設計通りのコントラストが得られなくなる)おそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、EUV露光機の露光光源が高パワー化した場合においても、保護膜とこれに隣接する位相シフト膜パターンの材料との間で、熱拡散による相互拡散によってEUV光に対する反射率が変動してしまうことを抑止することができる反射型マスクブランク及びこれによって作製される反射型マスクの提供、並びに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0008】
(構成1)
基板上に多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜がこの順に形成された反射型マスクブランクであって、前記保護膜は、ルテニウムを主成分として含む材料からなり、前記位相シフト膜は、タンタルを含むタンタル系材料層を有し、前記保護膜表面上に、又は、前記保護膜の一部として前記位相シフト膜と接する側に、前記位相シフト膜との相互拡散を抑止するルテニウムと酸素とを含む拡散防止層が形成されていることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0009】
(構成2)
前記タンタル系材料層が前記拡散防止層と隣接していることを特徴とする構成1記載の反射型マスクブランク。
【0010】
(構成3)
前記拡散防止層の膜厚は0.2nm以上1.5nm以下であることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【0011】
(構成4)
前記位相シフト膜は積層構造で形成され、最表面層がクロム系材料層であることを特徴とする構成1乃至構成3の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【0012】
(構成5)
前記クロム系材料層は、炭素を含むことを特徴とする構成4記載の反射型マスクブランク。
【0013】
(構成6)
前記位相シフト膜は積層構造で形成され、最表面層がルテニウム系材料層であることを特徴とする構成1乃至構成3の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【0014】
(構成7)
前記位相シフト膜はスパッタリング法にて成膜され、成膜開始から成膜終了まで大気に曝されず連続して成膜された積層構造を有することを特徴とする構成1乃至構成6に記載の反射型マスクブランク。
【0015】
(構成8)
前記位相シフト膜上に、エッチングマスク膜が形成されていることを特徴とする構成1乃至構成7に記載の反射型マスクブランク。
【0016】
(構成9)
前記多層反射膜の最上層は、ケイ素(Si)であって、前記最上層と前記保護膜との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を有することを特徴とする構成1乃至構成8の何れか1つに記載の反射型マスクブランク。
【0017】
(構成10)
構成1乃至9のいずれか一つに記載の反射型マスクブランクによって作製されることを特徴とする反射型マスク。
【0018】
(構成11)
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、構成10記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0019】
(構成12)
前記露光光源のパワー(電力)は、80W以上であることを特徴とする構成11記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の反射型マスクブランク(これによって作製される反射型マスク)によれば、保護膜表面上にまたは保護膜の一部として位相シフト膜と接する側に、ルテニウムと酸素とを含む拡散防止層が形成されているため、EUV露光機の露光光源が高パワーである使用環境下でも保護膜と位相シフト膜(吸収体膜)の間における熱拡散による相互拡散が抑制され、EUV光の反射率の低下が抑制される。したがって、位相シフト効果の低下を抑制した反射型マスクが得られる。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の製造において、同様に、反射型マスクにおける位相シフト効果の低下を抑制した製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの概略構成を説明するための図
図2】実施例1の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図
図3】実施例2の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図
図4】実施例3の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図
図5】実施例4の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図
図6】本発明に係るEUVリソグラフィ用反射型マスクを使用した半導体装置の製造方法を説明するための概略図
図7】比較例である従来のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクからEUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0023】
<反射型マスクブランクの構成及びその製造方法>
図1は、本発明に係るEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクの構成を説明するための概略図である。同図に示されるように、反射型マスクブランク10は、基板12と、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜13と、当該多層反射膜13を保護するためのルテニウムを主成分とした材料で形成されるRu系保護膜14と、ルテニウムと酸素とを含む材料で形成される拡散防止層15と、EUV光を吸収するとともに一部のEUV光を反射し、その位相をシフトさせるための位相シフト膜16と、を有し、これらがこの順で積層されるものである。また、基板12の裏面側には、静電チャック用の裏面導電膜11が形成される。
【0024】
以下、各層ごとに説明をする。
【0025】
<<基板>>
基板12は、EUV光による露光時の熱による吸収体膜パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO−TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0026】
基板12の転写パターン(後述の位相シフト膜がこれを構成する)が形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、位相シフト膜が形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面であって、その142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。なお、本明細書において平坦度は、TIR(Total Indecated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小二乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0027】
また、EUV露光の場合、基板12として要求される表面平滑度は、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さが、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0028】
さらに、基板12は、その上に形成される膜(多層反射膜13など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0029】
<<多層反射膜>>
多層反射膜13は、EUVリソグラフィ用反射型マスクにおいて、EUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜の構成となっている。
【0030】
一般的には、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜13として用いられる。多層膜は、基板12側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜13の最表面の層、すなわち多層反射膜13の基板12と反対側の表面層は、高屈折率層とすることが好ましい。上述の多層膜において、基板12から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となるが、この場合、低屈折率層が多層反射膜13の最表面を構成すると容易に酸化されてしまい反射型マスクの反射率が減少するので、最上層の低屈折率層上に高屈折率層をさらに形成して多層反射膜13とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となるので、そのままでよい。
【0031】
本実施形態において、高屈折率層としては、Siを含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N、Oを含むSi化合物でもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィ用反射型マスクが得られる。また本実施形態において基板12としてはガラス基板が好ましく用いられるので、Siはそれとの密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、Mo、Ru、Rh、及びPtから選ばれる金属単体や、これらの合金が用いられる。例えば波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜13としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40〜60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜13の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、当該最上層(Si)とRu系保護膜14との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。これにより、マスク洗浄耐性(位相シフト膜パターンの膜剥がれ耐性)を向上させることができる。
【0032】
このような多層反射膜13の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜13の各構成層の厚み、周期は、露光波長により適宜選択すればよく、そしてブラッグの法則を満たすように選択される。多層反射膜13において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層どうし、そして低屈折率層どうしの厚みが同じでなくてもよい。また、多層反射膜13の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3〜10nmとすることができる。
【0033】
多層反射膜13の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えばイオンビームスパッタ法により、各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタ法により、先ずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板12上に成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜し、これを1周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜13を形成する(最表面の層はSi層とする)。
【0034】
<<Ru系保護膜>>
Ru系保護膜14は、後述するEUVリソグラフィ用反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングや洗浄から多層反射膜13を保護するために、多層反射膜13の上に形成される。Ru系保護膜14は、ルテニウムを主成分として含む材料(主成分:50at%以上)により構成され、Ru金属単体でもよいし、RuにNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したRu合金であってよく、窒素を含んでいても構わない。また、Ru系保護膜14を3層以上の積層構造とし、最下層と最上層を、上記Ruを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、若しくは合金を介在させたものとしても構わない。
【0035】
このようなRu又はその合金などにより構成されるRu系保護膜14の厚みは、その保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されないが、EUV光の反射率の観点から、好ましくは、1.5〜8.0nm、より好ましくは、1.8〜6.0nmである。
【0036】
Ru系保護膜14の形成方法としては、公知の膜形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。具体例としては、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0037】
<<位相シフト膜>>
【0038】
Ru系保護膜14の上に、後に説明する拡散防止層15を介して、位相シフト膜16が形成される。位相シフト膜16は、EUV光を吸収するとともに一部を反射させて位相をシフトさせるものである。即ち、位相シフト膜16がパターンニングされた反射型マスクにおいて、位相シフト膜16が残っている部分では、EUV光を吸収しつつパターン転写に影響がないように一部を反射させて多層反射膜13からの反射光との位相差を形成するものである。位相シフト膜16は、EUV光に対する反射率が1〜30%、位相シフト膜16からの反射光と多層反射膜13からの反射光との位相差が170〜190度となるように形成される。位相シフト膜16の膜厚は、用いる材料と反射率の設計値に応じて、且つ、位相差が上記範囲内に入る条件となるように適宜定められるものである。
【0039】
位相シフト膜16は、EUV光を吸収する機能を有し、エッチング等により除去が可能である限り、その材料は特に限定されないものであるが、本実施形態においては、エッチング選択性等の観点から、タンタル単体又はタンタルを含むタンタル系材料が用いられ、TaとBを含有するTaB合金、TaとSiを含有するTaSi合金、Taとその他遷移金属(例えば、Pt、Pd、Ag)を含有するTa合金や、Ta金属やそれらの合金にN、O、H、Cなどを添加したタンタル系化合物などであってよい。
【0040】
このようなタンタルやタンタル化合物により構成される位相シフト膜16は、DCスパッタリング法やRFスパッタリング法などのスパッタリング法といった公知の方法で形成することができる。
【0041】
また、位相シフト膜16の結晶状態は、平滑性の観点から、アモルファス状又は微結晶の構造であることが好ましい。位相シフト膜16が平滑でないと、位相シフト膜パターンのエッジラフネスが大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなることがある。位相シフト膜16の好ましい表面粗さは0.5nmRMS以下であり、更に好ましくは0.4nmRMS以下、0.3nmRMS以下であれば更に好ましい。
【0042】
TaはEUV光の吸収係数が大きく、また塩素系ガスやフッ素系ガスで容易にドライエッチングすることが可能であるため、加工性に優れた位相シフト膜材料である。さらにTaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、位相シフト膜16の平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、位相シフト膜16の酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができるという効果が得られる。
【0043】
なお、後の実施例の説明にてより明らかになるが、位相シフト膜16はタンタル系材料層一層によって形成されるものだけでなく、他の材料層との積層によって形成されるものが含まれる。具体的には、クロム系材料層とルテニウム系材料層であり、クロム系材料はCr単体やCrとその他遷移金属(例えば、Pt、Pd、Ag)を含有するCr合金や、Cr金属やCr合金にN、O、H、Cなどを添加したクロム系化合物であってもよい。ルテニウム系材料は、Ru金属単体でもよいし、RuにNb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co、Reなどの金属を含有したRu合金であってもよい。また、Ru金属やそれらの合金にN、O、H、Cなどを添加したルテニウム系化合物であってもよい。位相シフト膜16を、タンタル系材料層と他の材料層との積層構造によって形成する場合(タンタル系材料層の上に他の材料層を積層する場合)には、成膜開始から成膜終了まで大気に曝さず連続して成膜することが好ましい。このようにすることで、タンタル系材料層161の表面に酸化層(酸化タンタル層)が形成されることを防止できる(酸化タンタル層を除去するための工程を要しない)。
【0044】
位相シフト膜16におけるタンタル系材料層とクロム系材料層の積層順序、積層数は特に限定されず、例えば、基板12側からTa/Crの2層構造、Cr/Taの2層構造、Ta/Cr/Taの3層構造、Cr/Ta/Crの3層構造、Ta/Cr/Ta/Crの4層構造、Cr/Ta/Cr/Taの4層構造、Ta/Ta/Cr/Crの4層構造、Cr/Cr/Ta/Taの4層構造等であってよく、またこれら以外であっても構わない。ただし、以下の実施例で示されるように、拡散防止層15と隣接する材料はタンタル系材料層とすることがより好ましく、また、位相シフト膜16の最表面層はクロム系材料層とすることがより好ましい。これによりクロム系材料層がタンタル系材料層に対する酸化防止膜としての機能も有することができるためである(Taが最上層であることにより、これが酸化されてエッチングレートが落ちることが抑止される)。さらに、クロム系材料層を位相シフト膜16の最表面層とする場合には、マスク洗浄時の耐薬性の観点から、炭素を含む材料、具体的には、CrC、CrCO、CrCN、CrCON、CrCH、CrCOH、CrCHN、CrCONHとすることがより好ましい。TaとCrは単金属以外にも窒化物や酸化物、合金を含み、必ずしも同じ材料、組成でなくても構わない。
【0045】
位相シフト膜16におけるタンタル系材料層とルテニウム系材料層の積層順序、積層数についても特に限定されず、例えば、基板12側からTa/Ruのニ層構造、Ta/Ru/Taの三層構造、Ta/Ru/Ta/Ruの四層構造、Ta/Ta/Ru/Ruの四層構造等であってよく、またこれら以外であっても構わない。ただし、以下の実施例で示されるように、拡散防止層15と隣接する材料はタンタル系材料層とすることがより好ましく、また、位相シフト膜16の最表面層をルテニウム系材料層とすることがより好ましい。これによりルテニウム系材料層がタンタル系材料層に対する酸化防止膜としての機能も有することができる。TaとRuは単金属以外にも窒化物や酸化物、合金を含み、必ずしも同じ材料、組成でなくても構わない。
【0046】
さらに、位相シフト膜16においては、タンタル系材料層、ルテニウム系材料層、クロム系材料層を積層してもよく、積層順序、積層数についても特に限定されない。例えば、基板12側からTa/Ru/Crの三層構造、Ta/Cr/Ruの三層構造等であってもよく、またこれら以外であっても構わない。
【0047】
<<拡散防止層>>
本発明は、EUV露光機の露光光源が高パワー化した場合においても、反射型マスクのRu系保護膜14とこれに隣接する位相シフト膜パターン(位相シフト膜16)の材料との間で、熱拡散による相互拡散が生じ、これによってEUV光に対する反射率が変動してしまうことを抑止することを目的としており、これを解決するための手段として、Ru系保護膜14の表面上に、又は、Ru系保護膜14の一部として位相シフト膜16と接する側に、拡散防止層15が備えられるものである。拡散防止層15が形成されることによって、EUV露光機の露光光源が高パワーである使用環境下でも保護膜と位相シフト膜の間における熱拡散による相互拡散が抑制されることによりEUV光の反射率の低下が抑制され、反射型マスクが繰り返し使用されても位相シフト効果が低減することが抑止されるものである。
【0048】
拡散防止層15は、ルテニウム(Ru)と酸素(O)とを含む材料によって形成され、RuとOを含んでいれば良く、その他、NやHなどを含んでいても構わない。RuはRu金属単体でもよいし、Ru合金であってもよい(保護膜材料と同じ材料系が好ましい)。例えば、保護膜がRuの場合には、拡散防止層15の材料としてRuO、RuONなどが挙げられる。保護膜がRu合金(例えばRuNb)の場合は、拡散防止層15の材料としてRuNbO、RuNbONなどが挙げられる。熱拡散による相互拡散の抑制とEUV光に対する反射率の観点から、拡散防止層15のルテニウム(Ru)と酸素(O)の比率(原子%)は、Ruを1とした時にOが0.8以上2.2以下、好ましくは1.0以上2.0以下とすることが望ましい。
【0049】
拡散防止層15の形成・生成方法としては、スパッタリング法(イオンビームスパッタ、DCスパッタ、RFスパッタ)によるものや、Ru系保護膜14の表面を大気中、酸素ガス、オゾンガス雰囲気中にてアニール処理することによって拡散防止層の生成をするものであってよい。なお、スパッタリング法にてRu系保護膜14上に積層する場合には、上記例示等の材料を自由に選択して拡散防止層15を形成できるが、Ru系保護膜14の表面をアニール処理して拡散防止層15を形成する場合には、Ru系保護膜14の材料に基づく酸化膜等となる。また、スパッタリング法にて積層する場合には、Ru系保護膜14の上に新たに拡散防止層15が積層される(膜厚が増加する)ものであるが、Ru系保護膜14の表面をアニール処理する場合には、全体の膜厚の増加はせずに、Ru系保護膜14の一部(位相シフト膜16と接する側)が拡散防止層15の機能を有することになる。
【0050】
拡散防止層15の膜厚は、熱拡散の抑制効果及びEUV光に対する反射率特性の観点から、0.2nm以上1.5nm以下とすることが好ましい。0.2nm未満だと熱拡散の抑制効果が十分に発揮されず好ましくなく、また、1.5nm超だとEUV光に対する反射率が63%を下回るので好ましくない。より好ましくは、0.3nm以上1.2nm以下、さらに好ましくは、0.5nm以上1.0nm以下である。
【0051】
<<裏面導電膜>>
基板12の裏面側(多層反射膜13の形成面の反対側)には、静電チャック用の裏面導電膜11が形成される。静電チャック用の裏面導電膜11に求められる電気的特性は通常100Ω/sq以下である。裏面導電膜11の形成方法は、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタ法により、クロム、タンタル等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。裏面導電膜11の厚さは、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10〜200nmである。
【0052】
以上、本実施形態の反射型マスクブランク10の構成について各層ごとに説明をした。なお、後の実施例の説明でより明らかになるが、反射型マスクブランクとしては位相シフト膜16上にエッチングマスク膜やレジスト膜を備えているものであってもよい。エッチングマスク膜の代表的な材料としては、ケイ素(Si)やケイ素(Si)に酸素、窒素、炭素、水素を加えた材料とすることができる。具体的には、Si、SiO、SiN、SiON、SiC、SiCO、SiCN、SiCONなどが挙げられる。後の実施例で説明しているが、エッチングマスク膜を形成することにより、レジスト膜の厚さを薄くすることが可能となり、パターンの微細化に対して有利である。なお、例えば、位相シフト膜16の最表面層の材料が塩素系ガス(酸素を含んでもよい)でエッチングされる材料の場合、エッチングマスク膜の材料は、塩素系ガスに対して耐性を有しフッ素系ガスに対してエッチング可能な材料が選定され、位相シフト膜16の最表面層の材料がフッ素系ガス(酸素を含んでもよい)でエッチングされる材料の場合、エッチングマスク膜の材料は、フッ素系ガスに対して耐性を有し塩素系ガス(酸素を含んでもよい)に対してエッチング可能な材料が選定される。この場合においては、レジスト膜の薄膜化の観点からは、酸素を含まない塩素系ガスに対してエッチング可能な材料を選定することが好ましい。
【0053】
<反射型マスク及びその製造方法>
上記説明した本実施形態の反射型マスクブランク10を使用して、反射型マスクを作製することができる。EUVリソグラフィ用反射型マスクの製造には、高精細のパターニングを行うことができるフォトリソグラフィー法が最も好適である。
【0054】
本実施形態では、フォトリソグラフィー法を利用した反射型マスクの作製について説明する。なお、後に実施例において図面を参照しつつ説明するため、ここでは概要説明のみとする。
【0055】
反射型マスクブランク10の最表面(以下の実施例で説明するように、位相シフト膜上またはエッチングマスク膜上)に、レジスト膜を形成し(反射型マスクブランク10としてレジスト膜を備えている場合は不要)、このレジスト膜に所望のパターンを描画(露光)し、さらに現像・リンスすることによって所定のレジスト膜パターンを形成する。このレジスト膜パターンをマスクとして使用して、エッチングガスによるドライエッチングを実施することにより、位相シフト膜16がエッチングされ、位相シフト膜パターンが形成される。なお、エッチングガスとしては、Cl、SiCl、CHCl、CCl等の塩素系のガス、これら塩素系ガス及びOを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス、CF、CHF、C、C、C、C、CH、CHF、C、SF、F等のフッ素系のガス、これらフッ素系ガス及びOを所定の割合で含む混合ガスやOガスが挙げられる。後の実施例で説明しているが、位相シフト膜が複数材料の積層構造で構成される場合には、それぞれの材料に適したエッチングガスによるエッチングが複数回行われることになる。
【0056】
そして、例えば、レジスト剥離液によりレジスト膜パターンを除去した後、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行い、高い反射率を達成したEUVリソグラフィ用反射型マスクが得られる。なお、後の実施例で説明しているが、位相シフト膜の構成によっては、位相シフト膜の積層構造の内の1層をエッチングする際に、同時にレジスト膜も除去されるため、レジスト膜パターンを除去するためだけの工程が不要となる場合もある。また、エッチングマスク膜を設ける場合には、これを除去する工程が別途必要になる場合もある。
【0057】
<半導体装置の製造方法>
上記本実施形態の反射型マスクを使用して、リソグラフィ技術により半導体基板上に反射型マスクの位相シフト膜パターンに基づく転写パターンを形成し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板上に種々のパターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
【0058】
より具体的な例として、図6に示すパターン転写装置(露光装置)50により、本実施形態の反射型マスクを用いてレジスト膜付き半導体基板(被転写基板)30にEUV光によってパターンを転写する方法を説明する。
【0059】
本実施形態の反射型マスク20を搭載したパターン転写装置50は、レーザープラズマX線源(露光光源)31、反射型マスク20、縮小光学系32等から構成される。縮小光学系32としては、X線反射ミラーを用いている。なお、レーザープラズマX線源(露光光源)31は、スループットの適正化の観点等に基づき、パワーが80W以上のものが使用される。
【0060】
縮小光学系32により、反射型マスク20で反射されたパターンは、通常1/4程度に縮小される。例えば、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用し、光路が真空中になるように予め設定する。このような状態で、レーザープラズマX線源31から得られたEUV光を反射型マスク20に入射させ、ここで反射された光を縮小光学系32を通してレジスト膜付き半導体基板30上に転写する(被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する)。
【0061】
反射型マスク20に入射したEUV光は、位相シフト膜16が残っている部分では、位相シフト膜16に吸収されて反射せず、一方、位相シフト膜16が残っていない部分では、多層反射膜13にEUV光が入射して反射される。このようにして、反射型マスク20から反射される光によって形成される像が、縮小光学系32に入射し、縮小光学系32を経由した露光光は、レジスト膜付き半導体基板30上のレジスト層に転写パターンを形成する(なお、位相シフト膜16ではEUV光の一部が反射され、この光が、多層反射膜13から反射される光に対して位相が180度シフトされていることで、像のコントラストを高めている)。そして、この露光済レジスト層を現像することによって、レジスト膜付き半導体基板30上にレジストパターンを形成することができる。そして、このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このような工程、その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例】
【0062】
以下、各実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施例において図1と同様の構成要素については同一の符号を使用し、説明を簡略化若しくは省略する。
【実施例1】
【0063】
図2は、実施例1の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図である。
【0064】
実施例1の反射型マスクブランク10は、図2(a)に示されるごとく、裏面導電膜11と、基板12と、多層反射膜13と、Ru系保護膜14と、拡散防止層15と、位相シフト膜16と、を有する。位相シフト膜16は、タンタル系材料層161とクロム系材料層162とによって形成(この順に下から積層)され、位相シフト膜16の上に、エッチングマスク膜17が形成される。
【0065】
((反射型マスクブランク))
先ず、実施例1の反射型マスクブランク10について説明する。
(((裏面導電膜)))
SiO−TiO系ガラス基板12の裏面にCrNからなる裏面導電膜11をマグネトロンスパッタリング法により下記の条件にて形成した。
裏面導電膜形成条件:Crターゲット、Ar+Nガス雰囲気(Ar:N:90%:N:10%)、膜厚20nm。
【0066】
(((多層反射膜)))
次に、裏面導電膜11が形成された側と反対側の基板12の主表面上に、多層反射膜13を形成した。基板12上に形成される多層反射膜13は、13.5nmのEUV光に適した多層反射膜とするために、Mo/Si周期多層反射膜を採用した。多層反射膜13は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Arガス雰囲気)により基板12上にMo層およびSi層を交互に積層して形成した。まず、Si膜を4.2nmの厚みで成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの厚みで成膜した。これを一周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの厚みで成膜し、多層反射膜13を形成した。
【0067】
(((Ru系保護膜)))
引き続き、RuNb(Ru:80at%、Nb:20at%)ターゲットを使用したイオンビームスパッタリング(Arガス雰囲気)によりRuNb保護膜14を2.5nmの厚みで成膜した。
【0068】
(((拡散防止層)))
次に、Ru系保護膜14の表面に高濃度オゾンガス処理を行った。この場合のオゾンガスの濃度は100体積%とし、処理時間は10分、多層反射膜付き基板を60度に加熱した。これにより、Ru系保護膜14の位相シフト膜16と接する側に、RuO(膜厚1.0nm)の拡散防止層15を形成した。即ち、Ru系保護膜14の一部が拡散防止層15の機能を有することになる(2.5nmのRu系保護膜14の内の表層側1.0nmが拡散防止層15として機能する)。
【0069】
(((位相シフト膜)))
次に、DCスパッタリングによりTaN膜(タンタル系材料層161)とCrCON膜(クロム系材料層162)を積層して、位相シフト膜16を形成した。TaN膜は、タンタルターゲットとし、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリング法で膜厚5nmのTaN膜(Ta:92.5 at%、N:7.5 at%) を形成した。CrCON膜は、クロムターゲットとし、ArガスとCOガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで膜厚46nmのCrCON膜(Cr:45 at%、C:10 at%、O:35 at%、N:10 at%) を形成した(TaN膜からCrCON膜の形成まで大気に触れさせず連続成膜)。
上記形成したTaN膜とCrCON膜の波長13.5nmにおける屈折率、n、消衰係数kは、それぞれ以下であった。
TaN:n→0.94、k→0.034
CrCON:n→0.93、k→0.037
なお、上記、TaN膜とCrCON膜の膜厚は、波長13.5nmにおいて反射率が2%、位相差が180度となるように設定してある。
【0070】
(((エッチングマスク膜)))
次に、位相シフト膜16上にエッチングマスク膜17であるSiO膜をRFスパッタリングにより膜厚5nmで形成した。
【0071】
上記により、実施例1の反射型マスクブランク10を得た。なお、上述と同様の製造方法により作製した反射型マスクブランク(エッチングマスク膜なし)の状態で、位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、2.5%であった。次に、露光光源が高パワーであることを想定しての使用環境評価として、真空中にて80℃×1時間の加熱処理を実施し、加熱処理後における位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、2.4%とほぼ変化がなかった。これは、Ru系保護膜14と位相シフト膜16との間における熱拡散が、拡散防止層15により抑制されたものと推察される。即ち、本発明に係る拡散防止層15が形成されることにより、露光光源が高パワーの使用環境下でも保護膜と位相シフト膜の間における熱拡散が抑制されるので、EUV光の反射率の低下が抑制され、したがって、位相効果の低下を抑制した反射型マスクが得ることができるものである。
【0072】
なお、熱拡散防止効果を発揮するためには、本実施例のごとく、タンタル系材料層161を拡散防止層15と隣接して形成することがより好ましい。また、後述する反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する際にも、タンタル系材料層161を拡散防止層15と隣接して形成することにより、タンタル系材料層161をパターニングする際に、保護膜・拡散防止層のダメージが少なく、高反射率の反射型マスクが得られる点で好ましい。クロム系材料層162を拡散防止層15と隣接して形成した場合、クロム系材料層162をパターニングする際に使用するエッチングガスが、塩素と酸素の混合ガス(Cl+O)であるため、Ru系保護膜が浸蝕されるためである。
【0073】
また、本実施例のごとく、位相シフト膜16を、スパッタリング法にて、成膜開始から成膜終了まで大気に曝されず連続して成膜された積層膜として形成することで、タンタル系材料層161の表面に酸化層(酸化タンタル層)が形成されことを防止できる点で好適である。即ち、位相シフト膜の材料としてタンタル系材料層が含まれている場合、これが大気に曝されるとその表面に酸化タンタル層が形成される。酸化タンタル層はエッチングガスとしてフッ素系ガスを使用しなければエッチングできず、プロセスが複雑化するので好ましくない(クロム系材料層は、表面が酸化されても塩素+酸素の混合ガスでエッチングできる)が、本実施例によれば当該問題が回避されるものである。なお、同様の観点で、位相シフト膜16の最表面層はクロム系材料層とすることが好ましい(最表面層のクロム系材料層が酸化防止層としての機能を有する)。
【0074】
((反射型マスク))
次に、上記反射型マスクブランク10を用いて、反射型マスク20を作製した。
【0075】
反射型マスクブランク10のエッチングマスク膜17上に、レジスト膜18を40nmの厚さで形成し(図2(b))、このレジスト膜に所望のパターンを描画(露光)し、さらに現像・リンスすることによって所定のレジスト膜パターン18aを形成する。このレジスト膜パターン18aをマスクとして使用して、フッ素系ガス(CFガス)によりSiO膜をドライエッチングしてエッチングマスク膜パターン17aを形成する(図2(c))。次に、レジスト膜パターン18aとエッチングマスク膜パターン17aをマスクにしてClとOの混合ガス(以下、単に「Cl+Oガス」)によりCrCON膜(クロム系材料層162)のドライエッチングを行い(図2(d))、その後、ClガスによりTaN膜(タンタル系材料層161)のドライエッチングを行うことで、位相シフト膜パターン16aを形成する(図2(e))。最後に、エッチングマスク膜パターン17aをフッ素系ガス(CFガス)により除去することで、反射型マスク20が作製される(図2(f))。なお、レジスト膜18は、Cl+Oガスによるドライエッチング(クロム系材料層162のエッチング)時に除去されるものである。
【0076】
本実施例の反射型マスク20によれば、前述のごとく、露光光源が高パワーの使用環境下でも保護膜と位相シフト膜の間における熱拡散が抑制されるので、EUV光の反射率の低下が抑制され、したがって、繰り返し使用によっても、位相効果の低下が抑制されるため、安定した半導体装置の製造が可能となり、非常に有用である。また、本実施例の反射型マスク20では、最表面層が炭素を含むクロム系材料層162であるため、マスク洗浄耐性(残留カーボンを除去する洗浄液(たとえば、酸系洗浄液)に対する耐性)を有する点においても有用である。反射型マスクは通常ペリクルなしの環境下で使用され、反射型マスク使用時(真空中)に残留カーボンが反射型マスクに付着してしまうため、残留カーボンを除去する洗浄液に対して耐性を有する必要があるものである。なお、クロム系材料層は、更に、酸素、窒素、水素等を含んでいても構わない。
【0077】
さらに、本実施例の反射型マスク20によれば、位相シフト膜16上にエッチングマスク膜17が形成されていることにより、転写パターンを形成するためのレジスト膜18が薄膜化でき、微細パターンを有する反射型マスクが得られる。即ち、エッチングマスク膜17が無い場合、クロム系材料層162をエッチングする際(図2(c)→(d))に、Oを含むCl+Oガスによってレジスト膜パターン18aもエッチングされてしまうことになるため、レジスト膜18の膜厚を厚くしておく必要があるが(一般にレジスト層はCr層の3倍程度の厚さが必要)、レジスト膜パターン18aが高くなりすぎると倒れたりするおそれもあるため、細かいパターン作製にはより薄膜のパターンが必要となるものである。本実施例では、位相シフト膜16の最表面層の材料に対してエッチング選択性を有するエッチングマスク膜17が形成されていることにより、レジスト膜18を薄膜化できるものである。
【実施例2】
【0078】
図3は、実施例2の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図である。
【0079】
実施例2は、実施例1に対して、位相シフト膜におけるTaN膜(タンタル系材料層161)とCrCON膜(クロム系材料層162)のそれぞれの膜厚を27nm、25nmとし、エッチングマスク膜を形成しなかった以外は(クロム系材料層162の厚さが一定値以下であれば、レジスト膜18を厚くすることで対応できる範囲内となる(本実施例ではレジスト膜18を80nmの厚さで形成))、実施例1と同様にして反射型マスクブランク及び反射型マスクを作製したものである。従って、エッチングマスク膜をフッ素系ガスにてエッチングする工程が不要となり、一方で、最後にレジスト膜パターン18aを酸素系ガスにてエッチングする工程が必要になっている(図3(d)→(e))。なお、上記、TaN膜(タンタル系材料層161)とCrCON膜(クロム系材料層162)の膜厚は、波長13.5nmにおいて反射率が2%、位相差が180度となるように設定してある。
【0080】
上述と同様の方法により作製した反射型マスクブランク(エッチングマスク膜なし)の状態で、位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、2.2%であった。次に、露光光源が高パワーであることを想定しての使用環境評価として、真空中にて80℃×1時間の加熱処理を実施し、加熱処理後における位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、2.3%であった。実施例1と同様に、反射率についてほぼ変化がないという結果が得られた。
【実施例3】
【0081】
図4は、実施例3の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図である。
【0082】
実施例3は、実施例1の位相シフト膜16がTaN膜(タンタル系材料層161)とCrCON膜(クロム系材料層162)であるのに対し、位相シフト膜16をTaN膜(タンタル系材料層161)とRu膜(ルテニウム系材料層163)をこの順で積層することで形成し、それぞれの膜厚を5nm、27nmとしている。
【0083】
位相シフト膜16の形成は、DCスパッタリングによりTaN膜(タンタル系材料層161)とRu膜(ルテニウム系材料層163)を積層することで形成した。TaN膜は、タンタルターゲットとし、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリング法で膜厚5nmのTaN膜(Ta:92.5 at%、N:7.5 at%)を形成した。Ru膜は、ルテニウムターゲットとし、Arガス雰囲気にてスパッタリングで膜厚27nmのRu膜を形成した(TaN膜からRu膜の形成まで大気に触れさせず連続成膜)。
【0084】
上記形成したTaN膜とRu膜の波長13.5nmにおける屈折率、n、消衰係数kは、それぞれ、以下であった。
TaN:n→0.94、k→0.034
Ru:n→0.888、k→0.017
なお、上記、TaN膜とRu膜の膜厚は、波長13.5nmにおいて反射率が26%、位相差が180度となるように設定してある。
【0085】
上述と同様の方法により作製した反射型マスクブランク(エッチングマスク膜なし)の状態で、位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、25.9%であった。次に、露光光源が高パワーであることを想定しての使用環境評価として、真空中にて80℃×1時間の加熱処理を実施し、加熱処理後における位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、25.8%であった。実施例1と同様に、反射率についてほぼ変化がないという結果が得られた。
【0086】
実施例3の反射型マスクブランクによる反射型マスクの作製では、実施例1で位相シフト膜のCrCON膜(クロム系材料層162)としているところを、実施例3ではRu膜(ルテニウム系材料層163)としているため、レジスト膜パターン18aとエッチングマスク膜パターン17aをマスクにしたエッチング処理時(図4(c)→(d))において、OガスによりRu膜をドライエッチングしている点で異なるが、その他においては実施例1と同様である。なお、レジスト膜18は、OガスによるRu膜のドライエッチング時に除去されるものである。
【0087】
実施例3によれば、位相シフト膜16においてRu膜(ルテニウム系材料層163)を用いていることにより、位相シフト膜16全体の膜厚を薄くすることができる(後に述べる比較例では位相シフト膜が58nm、実施例1は51nm、実施例2は52nmであるのに対し、本実施例では32nm、また実施例4では40nmである)。これにより、シャドーイング効果を小さくした反射型マスク及び反射型マスクブランクを提供でき、有用である。
【実施例4】
【0088】
図5は、実施例4の、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクから、EUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図である。
【0089】
実施例4は、実施例3に対して、位相シフト膜におけるTaN膜(タンタル系材料層161)とRu膜(ルテニウム系材料層163)のそれぞれの膜厚を24nm、16nmとした以外は、実施例3と同様にして反射型マスクブランク及び反射型マスクを作製したものである。 なお、上記、TaN膜とRu膜の膜厚は、波長13.5nmにおいて反射率が6%、位相差が180度となるように設定してある。
【0090】
上述と同様の方法により作製した反射型マスクブランク(エッチングマスク膜なし)の状態で、位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、6.2%であった。次に、露光光源が高パワーであることを想定しての使用環境評価として、真空中にて80℃×1時間の加熱処理を実施し、加熱処理後における位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、6.1%であった。実施例1と同様に、反射率についてほぼ変化がないという結果が得られた。
【実施例5】
【0091】
実施例5は、実施例1に対して拡散防止層の形成を、Arガス雰囲気下でRuターゲットを使用したDCスパッタリングによりRu保護膜14を1.5nmの厚みで成膜した後、Ar+O2混合ガス雰囲気下でRuターゲットを使用したDCスパッタリングによりRuOの拡散防止層15(組成比Ru:O=1:2)を1.0nmの厚みで形成した以外は実施例1と同様にして反射型マスクブランク及び反射型マスクブランクを作製した。
【0092】
上述と同様の方法により作製した反射型マスクブランク(エッチングマスク膜なし)の状態で、位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、2.0%であった。次に、露光光源が高パワーであることを想定しての使用環境評価として、真空中にて80℃×1時間の加熱処理を実施し、加熱処理後における位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、2.1%であった。実施例1と同様に、反射率についてほぼ変化がないという結果が得られた。
【0093】
以上、各実施例について説明した。次に、本発明に係る上記各実施例との比較例について説明する。
【0094】
(比較例)
図7は、比較例である従来のEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクからEUVリソグラフィ用反射型マスクを作製する工程を示す模式図である。
【0095】
当該比較例では、本発明に係る拡散防止層が形成されていないものを作製している。即ち、上述の実施例において、Ru系保護膜14上に(又はRu系保護膜14の一部として)拡散防止層15を設けることなく、DCスパッタリングによりTaN膜(位相シフト膜160)を58nm成膜した。このときTaN膜の膜厚は反射率3%、位相差180度となるように設定してある。
【0096】
上述と同様の方法により作製した反射型マスクブランクの状態で、位相シフト膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、3.4%であった。次に、露光光源が高パワーであることを想定した使用環境評価として、真空中にて80℃×1時間の加熱処理を実施し、加熱処理後における吸収体膜表面のEUV光における反射率を測定したところ、1.8%であった。即ち、比較例においては、反射率が3.4%から1.8%へ低下しており、露光光源が高パワーの使用環境下では、設計通りの機能が得られなくなる(位相シフト効果が低減してしまう)ことを示している。
【0097】
以上のごとく、本実施例の反射型マスクブランク(及びこれによって作製される反射型マスク)によれば、Ru系保護膜14の位相シフト膜16と接する側に、ルテニウムと酸素とを含む拡散防止層15が形成されているため、EUV露光機の露光光源が高パワーである使用環境下でも保護膜と位相シフト膜(吸収体膜)の熱拡散が抑制されることによりEUV光の反射率の低下が抑制され、反射型マスクが繰り返し使用されても位相シフト効果が低減することが抑止される(従来例と比較しても有意な相違が得られている)。また、比較例ではレジスト膜〜位相シフト膜の厚さの合計が158nm(レジスト膜:100nm、位相シフト膜:58nm)であるのに対し、実施例ではより薄く形成でき(実施例1:96nm(レジスト膜:40nm、エッチングマスク膜:5nm、位相シフト膜:51nm)、実施例2:132nm(レジスト膜:80nm、位相シフト膜:52nm)、実施例3:77nm(レジスト膜:40nm、エッチングマスク膜:5nm、位相シフト膜:32nm)、実施例4:85nm(レジスト膜:40nm、エッチングマスク膜:5nm、位相シフト膜:40nm))、微細パターンの形成において有利である。
【0098】
なお、多層反射膜13の最上層をケイ素(Si)で形成し、当該最上層(Si)とRu系保護膜14との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。従来の反射型マスクでは、多層反射膜上に保護膜が設けられ、Si層と保護膜との間でSiがRu系保護膜に拡散し、さらに酸化を受けて酸化ケイ素を形成し、反射型マスクの製造工程や製品として完成した後の使用における繰り返しの洗浄を受けることで膜剥がれが生じてしまうものであった。これに対し、多層反射膜13の最上層のSiとRu系保護膜14との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成することにより、多層反射膜13の最上層とRu系保護膜14との拡散が抑制されるので、EUV光の反射率の低下が抑制され、また、マスク洗浄耐性(位相シフト膜パターンの膜剥がれ耐性)が向上するものである。ケイ素酸化物層の厚みは、Siの保護膜への移行抑制の観点からは0.2nm以上であることが好ましい。また、EUV光の反射率低下抑制の観点から3nm以下が好ましい。両観点に基づくより好ましい範囲は0.5〜2nmである。ケイ素酸化物層は、イオンビームスパッタリング法、スパッタリング法、CVD、真空蒸着法などによって形成することができ、また、多層反射膜13の最上層であるケイ素(Si)をアニール処理することにより、最上層のケイ素層の表層にケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10...反射型マスクブランク、12...基板、13...多層反射膜、14...Ru系保護膜、15...拡散防止層、16...位相シフト膜、17...エッチングマスク膜、18...レジスト膜、30...レジスト膜付き半導体基板(被転写基板)、31...レーザープラズマX線源(露光光源)、50...パターン転写装置(露光装置)、161...タンタル系材料層、162...クロム系材料層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7