特許第6556897号(P6556897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556897
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】組織切断及び封止装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-57072(P2018-57072)
(22)【出願日】2018年3月23日
(62)【分割の表示】特願2015-533711(P2015-533711)の分割
【原出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-118094(P2018-118094A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】61/705,721
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルバーグ エリック
(72)【発明者】
【氏名】ラウダーミルク ブランドン
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0230875(US,A1)
【文献】 特開2012−161606(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/097469(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を切断及び封止するための電気手術デバイスであって、
前記電気手術デバイスは、
前記電気手術デバイスの遠位端に位置する上部つかみ具と、
前記上部つかみ具に対向する下部つかみ具であって、旋回接続部によって前記上部つかみ具に旋回接続されている前記下部つかみ具と、
前記上部つかみ具及び下部つかみ具の屈曲運動又は回転運動を制御する関節運動機構と、を備え、
前記関節運動機構は、
ハウジングと、
前記ハウジング内で回転可能に変位可能な割出ディスクと、
前記割出ディスクを回転させるように動作可能な関節運動器と、を備え、
前記ハウジングは、複数のラチェット切欠きを備え、
前記割出ディスクは、前記ラチェット切欠きと係合して、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具の位置を割り出す割出アームを備え、
前記関節運動機構は自動係止機構と、中心合わせ機構と、をさらに備え、
前記自動係止機構は、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具に対する外部の力が前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具を割出位置から移動させるのを防止する受動噛合い機構であり、
前記中止合わせ機構は、
それぞれの前記割出ディスクから延在する一対の板ばねであって、前記関節運動器によって係留位置に保持される遠位端を有する前記一対の板ばね、を有し、
中心合わせ力を印加し、前記関節運動器を中立状態に付勢する、
電気手術デバイス。
【請求項2】
前記関節運動機構は、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具の関節運動位置を保持する一対の前記割出ディスクを含んでおり、
それぞれの前記割出ディスクが、一対の前記割出アームを有している、請求項に記載の電気手術デバイス。
【請求項3】
前記ラチェット切欠きは、内側に向いている複数のラチェット歯によって互いに分離されており、
前記割出アームは、前記割出ディスクが前記ハウジング内で回転するときに、前記ラチェット切欠きと係合及び係合解除するように動作可能である、請求項に記載の電気手術デバイス。
【請求項4】
前記一対の板ばねの前記遠位端は、前記関節運動器に設けられた一対の突起の間の前記係留位置に保持される、請求項2又は3に記載の電気手術デバイス。
【請求項5】
前記自動係止機構は、前記関節運動器に4つのデテント含み、
それぞれの前記デテントは、係止位置と解除位置との間で、前記割出ディスクに対して移動可能である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電気手術デバイス。
【請求項6】
前記関節運動器は、前記割出ディスクから外側に延在する一対のハンドルを含んでおり、
前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具は、前記ハンドルに回転力を印加することによって関節運動し、
前記回転力は、前記中心合わせ力によって抵抗される、請求項4又は5に記載の電気手術デバイス。
【請求項7】
前記回転力が前記中心合わせ力よりも大きい場合に、前記関節運動器は前記割出ディスクに対して回転し、それにより、前記デテントは前記係止位置から前記解除位置に移動する、請求項に記載の電気手術デバイス。
【請求項8】
前記関節運動器は4つの当接縁を有し、前記割出ディスクは対応する当接縁を有しており、
前記関節運動器の前記当接縁と、前記割出ディスクの前記当接縁とは、前記回転力が前記関節運動器の前記ハンドルに印加されると、互いに近づいて接触し、
前記割出ディスクと前記関節運動器は、前記関節運動器の前記当接縁が前記割出ディスクの前記当接縁と接触したときに、互いに並んで回転する、請求項6又は7に記載の電気手術デバイス。
【請求項9】
前記自動係止機構は、前記関節運動器にデテントを含み、
前記デテントは、係止位置と解除位置との間で、前記割出ディスクに対して移動可能であり、
前記関節運動器に印加される力が前記中心合わせ力よりも大きい場合に、前記関節運動器は、前記デテントが前記係止位置から前記解除位置に移動するように前記割出ディスクに対して回転する、請求項に記載の電気手術デバイス。
【請求項10】
前記旋回接続部は、前記上部つかみ具の一部を収容する通路を備え、
前記上部つかみ具は、相対的開放状態と相対的閉鎖状態との間で、前記上部つかみ具を前記下部つかみ具に対して旋回させるように、前記通路を通って軸方向に変位可能であり、
前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具は、前記相対的閉鎖状態で組織にRFエネルギーを送達するように動作可能である、請求項1〜のいずれか一項に記載の電気手術デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2012年9月26日に出願された米国仮特許出願第61/705,721号明細書に対する優先権を主張し、その内容は、全体としてかつすべての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概して、組織を切断及び封止するための対向するつかみ具(ジョー)を有する電気手術器具に関し、より詳細には、剛性及び圧縮強度が改善されたつかみ具と、改善された関節運動機構と、を備えた電気外科器具に関する。
【背景技術】
【0003】
バイポーラ電気手術器具は、手術部位に高周波(RF)エネルギーを印加して、組織を切断し、焼灼し、又は凝固させる。これらの電気手術効果の特定の用途は、血管又は組織シートを封止することである。典型的な器具は、一対の対向するつかみ具又は鉗子の形態をとり、各つかみ具先端に1個以上の電極がある。電気手術処置では、つかみ具が標的部位の上で閉じられると電極は互いに近接して配置され、それにより、2つの電極の間の交流の経路が標的部位内の組織を通過する。つかみ具によってかけられる機械的力と電流とが結合して、所望の手術効果をもたらす。つかみ具によって印加される圧力、電極間の間隙距離、ならびに組織に印加される電気手術エネルギーの電圧、電流、周波数及び持続時間等、機械的パラメータ及び電気的パラメータのレベルを制御することにより、外科医は、治療目的に向かって組織を凝固させ、焼灼し、封止することができる。
【0004】
電気手術処置を、従来の切開を通して観血的環境で、又は腹腔鏡手技を用いて行うことができる。腹腔鏡手技では、電気手術器具は、通常は5mmと10mmとの間である非常に小さい内径を有するカニューレ又はトロカールを通り抜けることができなければならない。このサイズ要件を満たすのに十分な小さい電気手術器具を作製することは可能である。それにも関らず、器具をより小さくしようとすることは、他の等しく重要な設計基準に対して競合することが多い。
【0005】
器具によってかけられる圧縮力は、器具サイズと競合する最も重要な設計基準のうちの1つである。通常、適度に短時間内で適切なシールを形成するために、つかみ具の間の高い圧縮力が必要である。十分な圧縮力がなければ、器具は、適切なシールを形成することができない可能性があり、又は長時間後でなければ適切なシールを形成しない可能性がある。器具のサイズが低減するに従い、つかみ具における非構造的要素によって占められる空間の割合が増大するため、比較的小さい電気手術器具を用いて十分な圧縮力をもたらすことは非常に困難である可能性がある。たとえば、組織切断、つかみ具作動、関節運動及び電力供給を制御する構成要素はすべて、つかみ具内の空間を占める。各構成要素は、その構成要素のための空間を提供するためにつかみ具から材料を除去する必要がある。これによって、つかみ具において材料の質量及び剛性が低減し、それにより、生成することができる圧縮力が低減する。
【0006】
上述したことに基づいて、圧縮強度のような重要なパラメータを犠牲にすることなくサイズを低減することができる改善された電気手術デバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一例によると、組織を切断及び封止するための電気手術デバイスは、電気手術デバイスの遠位端に位置する上部つかみ具と、上部つかみ具に対向する下部つかみ具と、を備える。下部つかみ具は、旋回接続部によって前記上部つかみ具に旋回接続されている。電気手術デバイスは、上部つかみ具及び下部つかみ具の屈曲運動又は回転運動を制御する関節運動機構をさらに備える。関節運動機構は、ハウジングと、ハウジング内で回転可能に変位可能な割出ディスクと、を備える。ハウジングは、複数のラチェット切欠きを備え、割出ディスクは、ラチェット切欠きと係合して、上部つかみ具及び下部つかみ具の位置を割り出す割出アームを備える。関節運動機構は自動係止機構をさらに備え、自動係止機構は、上部つかみ具及び下部つかみ具に対する外部の力が上部つかみ具及び下部つかみ具を割出位置から移動させるのを防止する受動噛合い機構である。
【0008】
上述した概要及び以下の詳細な説明は、図面の図とともにより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による電気手術デバイスの切り取られた斜視図である。
図2図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の切り取られた斜視図である。
図3図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の別の切り取られた斜視図である。
図4図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の別の切り取られた斜視図である。
図5図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の別の切り取られた斜視図である。
図6図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の別の切り取られた斜視図である。
図7図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる、交差形態での作動ワイヤの弧の長さに対応する弧を示す概略図である。
図8図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の切り取られた斜視図である。
図9図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる電気手術デバイス構成要素の別の切り取られた斜視図であり、関節運動機構の構成要素を示す。明確にするためにいくつかの構成要素が取り除かれている。
図10図9の構成要素の別の切り取られた斜視図であり、明確にするためにいくつかの構成要素が取り除かれている。
図11図9の構成要素の別の切り取られた斜視図であり、明確にするためにいくつかの構成要素が取り除かれている。
図12図9の構成要素の別の切り取られた斜視図であり、明確にするためにいくつかの構成要素が取り除かれている。
図13図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる構成要素の間の旋回インタフェースの平面図である。
図14】電気手術デバイスの切り取られた斜視図である。図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる内部構成要素の構成を示すために構成要素が取り除かれている。
図15図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる内部構成要素の構成を示す、電気手術デバイスの拡大された切り取られた部分断面図である。
図16図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる内部構成要素の構成を示す電気手術デバイスの別の拡大された切り取られた部分断面図である。
図17図1の実施形態又は他の実施形態で使用することができる内部構成要素の構成を示す電気手術デバイスの切り取られた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願人らは、サイズの低減に対する必要性に対処する一方で、つかみ具の間の高い圧縮力に対する必要性も対処する、改善された電気手術デバイスを開発した。改善された電気手術デバイスは、つかみ具における強度及び剛性を最大限にしながら、適切な場合は個々の構成要素をなくし、簡略化し、又は組み合わせる全体論的手法を使用して設計された。
【0011】
以下の例は、競合する、サイズの低減、及び、より強固でより剛性の高いつかみ具に対する必要性に対処するように設計されている特徴を示す。電気手術デバイス100に対して種々の特徴について説明し図示するが、それらの特徴の多くは独立した特徴である。これらの特徴のうちのいくつか又はすべてが、同じデバイスに現れることができるが、同じデバイスにある必要はなく、本発明の種々の実施形態において種々の組合せで使用され得る。本発明によるデバイスは、米国特許出願第12/027,231号明細書及び同第13/070,391号明細書に示され記載されているデバイスの特徴及び特性の多くを含むことができ、それらの内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
(旋回接続部)
図1を参照すると、1つの例示的な実施形態による電気手術デバイス100が示されている。デバイス100は細長いシャフト102を含む。細長いシャフト102は、上部つかみ具120及び下部つかみ具ハウジング130を特徴とする遠位端(先端)部分110を有している。下部つかみ具ハウジング130は下部つかみ具132を収容している。上部つかみ具120と下部つかみ具132との間で、図2及び図3に示す切刃160が組織を切断するように変位可能である。
【0013】
上部つかみ具120及び下部つかみ具ハウジング130は、旋回接続部140によって旋回接合されている。旋回接続部140は、上部つかみ具が下部つかみ具ハウジングに対して旋回して上部つかみ具を開閉するのを可能にする。旋回接続部140は、上部つかみ具120の第1面122と係合する凸状面143を有する半円筒状要素142を含む。旋回接続部140はまた、上部つかみ具120の第2面124と係合する弧状の凹状面144も含む。凸状面143及び凹状面144は、旋回点148を中心に同心である円形輪郭に従う。半円筒状要素142及び凹状面144は、弓形通路145によって互いから分離されている。弓形通路145の縁はトラック又はシュート146を形成し、そこを通って上部つかみ具120がスライドする。トラック146の弓形形状により、上部つかみ具が通路を通って摺動する際、上部つかみ具120は下部つかみ具ハウジング130に対して旋回する。上部つかみ具120は、旋回点148を中心に旋回する。
【0014】
図1及び図3に見ることができるように、旋回接続部140は、従来のピン接続部とは著しく異なっている。まず、旋回接続部140は、つかみ具からの材料の除去を必要としない。上部つかみ具120は、弓形通路145を通って下部つかみ具ハウジング130の本体内に嵌合し、上部つかみ具及び下部つかみ具ハウジング内に又はその周囲に間隙空間はほとんど又はまったくない。対照的に、従来のピン接続部は、ピンを収容し、各つかみ具が互いに対して旋回するのを可能にするために、材料の除去が必要である。つかみ具から材料を除去することにより、つかみ具の質量、したがって、剛性及びつかみ具が閉じられた時に組織にかけることができる圧縮力の量が低減する。
【0015】
旋回接続部140は、つかみ具に対する旋回接続部の位置に関しても従来のピン接続部とは異なっている。ピン接続部は、通常、上部つかみ具と下部つかみ具との間の器具の中線に沿って位置している。対照的に、旋回点148は、上部つかみ具120の外縁121に隣接して、デバイスの中心線101からずれている。このずれた配置は、中線を通る開けた遮られない経路を提供するため、中線に位置する交差ピン接続部よりも有利である。妨げられない経路により、切刃160は、ピンによって生成されるいかなる障害物もなしに、刃の間の中線に沿って移動することができる。
【0016】
(電極構成)
デバイス100における電極構成は、サイズを低減しつかみ具の剛性を増大させる必要のバランスをとる別の特徴である。多くの既知の電気手術デバイスは、つかみ具に配置された1つ又は複数の独立した電極を使用する。独立した電極は、つかみ具内で電極を捕捉し、絶縁し、収容するための空間を必要とし、つかみ具における剛性を犠牲にする。この問題に対処するために、デバイス100は、独立した電極なしに設計されている。電力は、上部つかみ具120及び下部つかみ具ハウジング130に直接供給される。
【0017】
(電力供給)
既知の電気手術デバイスは、つかみ具を通って延在する専用の送電ワイヤを用いて電極に電力を供給する。多くの場合、これらの専用送電ワイヤは、固定された編組ワイヤ又はジャケット付きワイヤの形態である。専用送電ワイヤは、著しい量の空間を占有し、つかみ具から材料を除去する貫通ボア、通路等を必要とする。したがって、専用送電ワイヤ及びそれらの貫通ボアによりつかみ具の剛性が低減し、それにより、封止中につかみ具の間に印加することができる圧縮力の量が低減する。専用送電ワイヤが、器具が移動する際に移動するか又は伸びるために十分なたるみ又は弾性を有していない場合、専用送電ワイヤにより、器具の移動も制限される可能性がある。
【0018】
つかみ具における剛性を保持し、より優れた器具移動性及び可撓性を提供するために、本発明によるデバイスは、好ましくは、動き及び電力供給の両方を制御する多機能構成要素を含む。つかみ具の剛性及び器具の移動性を犠牲にする専用送電ワイヤは、好ましくは回避される。エネルギー供給を、たとえば、作動及び/又は関節運動を制御する同じ構成要素を通して提供することができる。エネルギー供給を、並進構成要素を通して提供することも可能である。
【0019】
図2を参照すると、デバイス100の断面が「手首」部又は「椎体」部170において示されている。後のセクションでより詳細に記載する手首部170は、4つの貫通通路を除いて実質的に中実である椎体173を含む。2つの貫通通路は、ループ状関節運動ワイヤ167を収容し、1つの貫通通路は、ループ状作動ワイヤ169を収容する。関節運動ワイヤ167は、デバイスの遠位端部分がデバイスの長手方向軸に対して屈曲するのを可能にするように動作可能である。作動ワイヤ169は、上部つかみ具120を開閉するように動作可能である。関節運動ワイヤ167は、通路を通ってループ状になり、2つの略平行な関節運動ワイヤ部172及び174を形成している。同様に、作動ワイヤ169は、通路を通ってループ状になり、2つの略平行な作動ワイヤ部176及び178を形成している。作動ワイヤ部176及び178は、後により詳細に説明するように、図2に示す部分において互いに交差している。図3及び図14は、関節運動ワイヤ167及び作動ワイヤ169がデバイスの遠位端部分にいかに通されているかを示し、関節運動ワイヤのループ状端部が見える。
【0020】
椎体173の外周部に位置する第1貫通通路173aは、第1関節運動ワイヤ部172を収容している。椎体173の別の外周部に位置する第2貫通通路173bが、第2関節運動ワイヤ部174を収容している。椎体173の内部に位置する第3貫通通路173cが、切刃160を収容している。椎体173の内部に位置する第4貫通通路173dが、作動ワイヤ部176及び178を収容している。
【0021】
作動ワイヤ169を通して上部つかみ具120に電力が供給される。電力は、関節運動ワイヤ167を通して下部つかみ具ハウジング130に供給される。電力は、金属である可能性がありかつ直列に互いに接触するつかみ具ブッシュ、椎体又はシャフトを含む他の任意の一続きの金属構成要素を通して供給されてもよい。当該金属構成要素は、作動ワイヤ169から隔離されている、下部つかみ具ハウジング130及び下部つかみ具132はともに、互いに接触する金属面を含み、それにより、下部つかみ具ハウジングに供給される電力は、下部つかみ具まで導かれる。
【0022】
(絶縁)
下部つかみ具ハウジング130及び下部つかみ具132と連結する上部つかみ具120の表面を電気的に絶縁しなければならない。これに対処するために、デバイス100は、上部つかみ具120の上にプラスチック覆い180を含む。上部つかみ具120は、プラスチック覆い180とオーバーモールドされて、下部つかみ具ハウジング130と連結する表面を絶縁する。オーバーモールドでは構成要素の間に隙間が不要であり、それにより、つかみ具がより多くの材料質量を有することを可能にする空間が保持される。上部つかみ具120をオーバーモールドすることにより、次のセクションで説明するように、上部つかみ具にオフセット特徴を生成することも可能になる。
【0023】
(オフセット特徴を生成する間隙)
オーバーモールドされる覆い180は複数の機能を有している。オーバーモールドされる覆いの第1機能は、上述したように、下部つかみ具ハウジング130から上部つかみ具120を電気的に絶縁することである。オーバーモールドされる覆いの第2機能は、つかみ具が閉じられた時、電極、すなわち上部つかみ具120と下部つかみ具132との間の間隙空間をもたらすオフセット特徴を生成することである。図4において、デバイスの実施形態は、上部つかみ具120を横切って横方向に延在するストラップ150の形態で示されるオフセット特徴を含む。ストラップ150は、オーバーモールド工程中に製造される。オーバーモールドされる覆いの第3機能は、組織燃焼のリスクを低減するように、組織と接触するつかみ具の背面の温度を低下させることである。
【0024】
本発明による、間隙を生成するオフセット特徴は、横方向ストラップの形態をとる必要はなく、つかみ具が閉じられた時に電極の間の分離を提供するあらゆる表面不規則性又は突起であり得る。たとえば、上部つかみ具120は、リベット又はリベット状部材を受け入れる複数の穴を含むことができる。リベット又はリベット状部材は、上部つかみ具の表面から突出し下部つかみ具132と接触する。
【0025】
(ピンなし下部つかみ具)
下部つかみ具132は、下部つかみ具旋回接続部190によって下部つかみ具ハウジング130に旋回接続されている。下部つかみ具132と下部つかみ具ハウジング130との間の旋回接続部190は、十分な圧縮力を提供するために下部つかみ具において剛性及び強度を最大限にしなければならない最も重要な領域のうちの1つを表す。ピン接続部及び貫通ボアは、上述したように、下部つかみ具からの材料の除去を必要とし、つかみ具の剛性及び強度を低減する。したがって、旋回接続部190は、一対のボス136の形態である「ピンなし」接続部を特徴とする。ボス136は、下部つかみ具132から外側に突出し、下部つかみ具ハウジング130の小さい開口部138内にスナップ式に嵌まる。この構成により、旋回接続部190の位置においてつかみ具の幅を横切って下部つかみ具132から材料は除去されない。
【0026】
ボス及び開口部に対する代替形態として、下部つかみ具ハウジング130に軽くひだを付けて、下部つかみ具ハウジングと下部つかみ具132との間に旋回インタフェースをもたらすことができる。
【0027】
図5を参照すると、つかみ具132は、曲線的な凸状底面133を有し、下部つかみ具ハウジング130は、曲線状の凹状内面131を有している。凹状内面131は、下部つかみ具ハウジング130が上部つかみ具120に対して旋回した時に凸状底面133に当接する。したがって、凹状内面131及び凸状底面133は支持面を形成し、支持面は、下部つかみ具132と下部つかみ具ハウジング130との間の圧縮力を吸収し、圧縮力をボス136及び開口部138から離れるように向ける。したがって、下部つかみ具132の構造的完全性は、ボス136又は旋回接続部190の強度にそれほど依存しない。
【0028】
(作動ワイヤ)
関節運動デバイスの難題のうちの1つは、関節運動部材を通して動きを伝達することである。デバイスが屈曲した時、継手を通る弧の長さは、中心線から離れるように移動するに従って変化する。これには、概して、デバイスの中心線に沿って移動する(強度のため)縦長のかつ(可撓性のため)薄い作動部材の使用が必要である。左及び右の関節運動により、関節運動面に対して垂直に配置された、短くかつ平坦な作動部材又は対になったワイヤ部材の使用が阻止される。それは、それら部材又はワイヤが座屈しかつ/又は動き及び力を不均一に伝達するためである。
【0029】
デバイス100は、上述したように、一対の平行な作動ワイヤ部176及び178を形成するようにループ状にされた作動ワイヤ169を使用する。作動ワイヤ部176及び178は、作動ワイヤ部を通して力が印加される時に下部つかみ具ハウジング130に対して上部つかみ具120を旋回させるように構成されている。ループ状作動ワイヤ169は、上部つかみ具120のピン(図示せず)に接続されている。上部つかみ具120を開放位置まで旋回させるために、作動ワイヤ部176及び178を通して上部つかみ具に押込み力(又は遠位端部分110に向かって向けられた力)が印加される。上部つかみ具120を閉鎖位置に旋回させるために、作動ワイヤ部176及び178を通して上部つかみ具に、引張力(又は、遠位端部分110から離れる方向に向けられた張力)が印加される。作動ワイヤ部176及び178の各々は、関節運動面の中心線から外れるように、ただしワイヤが左から右に等しく押し込むか又は引っ張るのを可能にする構成で設定される。解決法は、ワイヤを180°ねじり、交差点Pにおいて関節運動部材の中間で交差させることである。
【0030】
図2は、交差点Pと交差する平面を通して取り出されたデバイス100の断面図であり、そこでは、作動ワイヤ部176は、作動ワイヤ部178と交差している。図14は、デバイス100の遠位端の斜視図であり、作動ワイヤ部176が点Pにおいてワイヤ部178といかに交差するかを示すために、構成要素が取り除かれている。図15は、作動ワイヤ169が上部つかみ具120といかに接触するかを示すデバイス100の断面図である。作動ワイヤ169は、上部つかみ具120の基礎部分に形成されたU字型溝穴125を通してループ状にされている。図16及び図17は、作動ワイヤ部176及び178がデバイスの近位端にいかに接続するかを示すデバイス100の断面図である。作動ワイヤ部176及び178の交差により、関節運動領域を通る弧の長さが、互いに鏡像となり同じ長さのまま維持されることになる。弧の長さを、図7に概略的に示す。交差点Pは、ワイヤに対する旋回点のように作用する。等しい弧の長さを維持することにより、つかみ具の関節運動中に作動ワイヤ部が屈曲した場合であっても、作動ワイヤ部176及び178の間の力の平衡が保たれ、それにより、ワイヤ部は、上部つかみ具を均一に引っ張り、関節運動ワイヤ部172及び174に対して最小限の抵抗を与える。関節運動ワイヤ部172及び174は、引張状態で維持される。それにより、システムの構成要素は共に引張状態で維持され、つかみ具が適切に開閉し、デバイスの遠位端が適切に関節運動するのを可能にすることができる。
【0031】
(つかみ具輪郭)
図8を参照すると、上部つかみ具120は、下部つかみ具132と嵌合する嵌合面131を有している。下部つかみ具132は、上部つかみ具120と嵌合する嵌合面133を同様に有している。嵌合面131及び133は、各々、平面嵌合面に対していくつかの利点を提供する、図示するようなV字型輪郭を有している。
【0032】
V字型輪郭は、上部つかみ具120及び下部つかみ具132が互いに位置合せされた状態を維持する自動位置合せ特徴を提供する。自動位置合せ特徴により、位置合せを制御するためにつかみ具の後方に長い構成要素の長さ及び厳密な公差の形状が不要になる。V字型嵌合面131及び133はまた、平面より大きい表面積も有し、それにより、組織と係合するために徐々に広がる領域がもたらされる。
【0033】
嵌合面131の軸方向中心線123は、デバイス100の中心線101からずれている線137に沿った嵌合面133の軸方向中心線135と一致する。この構成では、切断面103を、デバイス100の中心線101から離れるように移動させることができ、切刃160が中心から離れて位置することが可能になる。それにより、他の構成要素をデバイスの中心に向かって配置することができる。
【0034】
(下部つかみ具ばね)
再び図1を参照すると、下部つかみ具ハウジング130は、下部つかみ具ハウジングと下部つかみ具132との間に下部つかみ具ばね134を収容している。下部つかみ具ばね134は、下部つかみ具ハウジング130の内側に当接して、下部つかみ具132を旋回させる。この構成では、下部つかみ具ばね134は、下部つかみ具132の遠位部137を上部つかみ具120に向かって付勢する。
【0035】
下部つかみ具ばねを含む既知の電気手術デバイスは、ばねを下部つかみ具の近位部に、旋回点に対して近位側に位置する点に配置する。ばねに対する空間を提供するために、下部つかみ具の近位部分から、かつ/又は同様の領域における下部つかみ具ハウジングから、所定量の材料が除去される。この材料の除去により、下部つかみ具及び/又は下部つかみ具ハウジングの近位部において強度及び剛性の実質的な低減がもたらされる可能性がある。近位部が圧縮力を提供する重要な領域であるため、つかみ具の強度及び剛性は、下部つかみ具及びつかみ具ハウジングの近位部において特に重要である。図1は、その近位部135及びその遠位部137における下部つかみ具132の相対的な厚さを示す。
【0036】
下部つかみ具132の近位部分135におけるつかみ具の強度及び剛性の喪失を回避するために、下部つかみ具の遠位部分137に下部つかみ具ばね134が位置している。これにより、必要な場合に近位部135の周囲のより多くの質量が保持される。下部つかみ具132の遠位部137は、近位部135より元々の質量が大きいため、下部つかみ具ばね134を収容するのにより適している。
【0037】
下部つかみ具ばね134は、2つの場所132a及び132bにおいて下部つかみ具132と摩擦係合する。2つの位置におけるこの係合は、下部つかみ具ハウジング130から下部つかみ具132へのエネルギーの伝達に役立つ。
【0038】
(関節運動機構)
図9図12は、本発明による関節運動機構200を示す。関節運動機構200は、手首部170における屈曲運動又は回転運動を制御する。それにより、上部つかみ具120及び下部つかみ具132は左又は右に屈曲することができる。より具体的には、関節運動機構200は、関節運動ワイヤ部172及び174のうちの一方に引張力を印加して手首部170においてデバイスを屈曲させるように動作可能である。
【0039】
関節運動機構200は、上方つかみ具120及び下部つかみ具132の関節運動位置を保持する一対の割出ディスク210を含む。関節運動器機構200はまた、割出ディスク210を回転させるように動作可能な関節運動器220も含む。関節運動器220は、割出ディスクから外側に延在する一対のハンドル222を有している。ハンドル222及び割出ディスク210は、ハウジング230内で回転可能に変位可能である。ハウジング230は、ラチェット切欠き234と整列する内壁232を有している。各割出ディスク210は、割出ディスクがハウジング230内で回転する時にラチェット切欠き234と係合しかつ係合解除するように動作可能な一対の割出アーム212を有している。ラチェット切欠き234は、一続きの内側に向いているラチェット歯235によって互いに分離されている。各割出アーム212は、割出ディスク210がハウジング内で回転する際にラチェット切欠き234及びラチェット歯235とスライド可能に相互作用しかつ係合するように構成された尖った先端部215を備えた遠位端213を有している。割出アーム212は、弾性可撓性材料から形成される。それにより、割出アームは、先端部215と割出歯235との間の接触に応じて、割出ディスク210の中心に向かって半径方向内側に撓曲又は屈曲することができる。先端部215がラチェット歯235の最内部と係合すると、割出アーム212は蓄積されたエネルギーの下で内側に屈曲する。割出ディスク210が回転し、先端部215がラチェット切欠き234と整列すると、割出アーム212は、外側にスナップ式に移動し、先端部がラチェット切欠き内に配置された状態で弛緩状態に戻る。
【0040】
関節運動機構200は、関節運動器220を中心合せされた状態又は「中立」状態に付勢する中心合せ機構240を含む。中立状態を図9に示す。中心合せ機構240は、各割出ディスク210から延在する一対の可撓性板ばね216を含む。各板ばね216は、関節運動器220の一対の突起226の間の係留位置に保持される遠位端217を有している。関節運動器220が中立状態にある時、各板ばね216は、弛緩状態で実質的にまっすぐである。関節運動器220が左又は右に回転を開始すると、突起226もまた回転するが、割出ディスク210は、後により詳細に説明するように、即座には回転せず、停止したままである。したがって、各板ばね216は、突起226の初期移動に応じて屈曲し、付勢力をもたらすエネルギーを板ばねに蓄積する。各板ばね216における付勢力は、関節運動器が回転した方向に対して反対方向において関節運動器220に力を印加し、関節運動器を中立状態に向かって戻るように付勢する。関節運動器200から回転力が解除されると、板ばね216における付勢力により、関節運動器200は中立状態に戻る。
【0041】
関節運動機器200は、自動係止機構250をさらに含む。係止機構250は、上方つかみ具120及び下部つかみ具132に対する外部の力がつかみ具をそれらの割出された位置から移動させるのを防止する受動噛合い機構である。係止機構250は、関節運動器220に4つのデテント228を含み、それらのうちの2つは図に見え、2つは関節運動器の反対側にある。各デテント228は、係止位置と解除位置との間で割出ディスク210に対して移動可能である。図9に示す係止位置では、各デテント228は、割出アーム212のうちの1つに位置する内側突起219と位置合せされている。この位置では、内側突起219は、割出アームを阻止し、それらが内側に屈曲するのを防止する。それにより、割出アームがラチェット切欠きから係合解除するのを防止し、つかみ具の割出位置からのつかみ具の関節運動を防止する。図10に示す解除位置では、各デテント228は、対応する内側突起219との位置合せから外れるように回転し、割出アームが内側に屈曲してラチェット切欠きから係合解除して、つかみ具の別の位置への関節運動を容易にすることができる。
【0042】
この構成では、関節運動機構200は、割出ディスクに対して中立状態に向かって付勢される浮動機構である。動作時、つかみ具は、ハンドル222を介して関節運動器220をハウジング230に対して右回りに又は左回りに回転させることにより、関節運動する。最初にハンドル222に回転力が印加される時、印加された力は、板ばね216の中心合せ力によって抵抗される。印加された力が中心合せ力より大きい場合、関節運動器220は、割出ディスク210に対して回転する。それにより、デテント228は、係止位置から解除位置に移動する。
【0043】
関節運動器220は4つの当接縁225を有し、割出ディスク210は対応する当接縁211を有している。関節運動器が中立状態にある時、当接縁211は当接縁225から間隔を空けて配置され、移動の限界を画定する小さい間隙229をもたらす。ハンドル222の初期回転時、関節運動器220は回転し、当接縁225のうちの2つは、割出ディスク210の対応する当接縁211に近づく。ハンドル222が、5度等、小さい閾値回転角度で回転した後、割出ディスク210の当接縁211に近づいている当接縁225は、それらの移動の限界に達し、割出ディスク210に接触する。この時点で、ハンドルに印加された回転力は、割出ディスク210に伝達され、関節運動器220と並んで割出ディスクを回転させる。割出ディスク210が回転すると、割出アーム212の先端部215は、ラチェット歯235とスライド可能に係合する際は内側に屈曲し、次の割出位置でラチェット切欠き234と位置合せされる際は外側にスナップ式に移動する。所望の割出位置に達すると、ハンドル222から回転力が解除され、それにより、板ばね216は関節運動器220を中立状態に戻し、デテント228は係止位置に戻る。係止位置では、デテント228は、割出アーム212がラチェット切欠き234を係合解除するのを防止して、関節運動ワイヤ172及び174ならびに手首部170を割出位置で有効に係止する。
【0044】
図11及び図12を参照すると、デバイス100は、関節運動ワイヤ172及び174の近位端に取り付けられるばね板260を含む。ばね板260は、関節運動ワイヤ172及び174を引張状態にして、手首部170の構成要素を合わせて固定し、それにより、手首構成要素を物理的に接合する他の手段を使用する必要をなくす。割出ディスク210は、ばね板260をハウジング230内の適所に保持する。各関節運動ワイヤ172及び174は、ばね板260の翼部分262の穴を通って延在する。各関節運動ワイヤ172及び174の近位端は、屈曲し、ワイヤストッパ270に捕捉される。各ワイヤストッパ270は、ばね板260に対してその向きを維持するように固定される。各翼部分262は、ばね板260の残りの部分に対して近位方向に屈曲する弛緩状態を有している。組み立てられた状態では、ワイヤストッパ270は、翼部分262に対して遠位側に引っ張られ、関節運動機構200に張力をかける。
【0045】
(手首機構)
実施形態は、「非円形」旋回インタフェースを有する構成要素を備えた手首機構を含むことができる。たとえば、構成要素の間の旋回インタフェースは、放物線形状、段形状又はV字切欠き形状を有することができ、それにより、球状又は円筒状インタフェース形状等、厳密に「円形」形状に関連する従来の固定された回転軸以外の移動回転軸がもたらされる。移動回転軸は、自動的にまっすぐになるか又は自動的に中心合せする結合の利益を提供する。そこでは、隣接する椎体は、関節運動した後にまっすぐな形態に戻るように促進される。このまっすぐな形態に向かう付勢により、つかみ具の位置が安定化し、つかみ具が係止されるか又は他の物体と接触している時における微動に対する抵抗が提供される。
【0046】
非円形インタフェースは、つかみ具が有効シャフト長を伸ばすことによって関節運動する時につかみ具によって示される圧縮力の損失も抑制する。つかみ具を閉じる「引張り」型機構を有するデバイスでは、(つかみ具係止機構に変更なしに)シャフトを伸ばすことにより、より大きい圧縮力に対してより激しく引っ張ることになる。
【0047】
図13は、手首部170における椎体173とブッシュ182との間の非円形インタフェース171の一例を示す。非円形インタフェース171は、椎体173における曲線状の凸状嵌合面175と、ブッシュ182における曲線状凹状嵌合面184と、を含む。段又は「ローブ」177が、凸状嵌合面175から外側に延在している。ローブ177と凸状嵌合面175との間の表面遷移部は曲線状であり、椎体173の縁に沿って平滑な複合湾曲を形成している。凹部185が、凹状嵌合面184内に延在し、図示するようにローブ177の幾何学的形状に一致する形状を有している。
【0048】
手首部170がまっすぐである時(すなわち、椎体が関節運動しておらず、つかみ具がまっすぐである時)、凸状嵌合面175及びローブ177は、凹状嵌合面184及び凹部185と一致し、ローブは凹部内に入れ子になっている。手首部170が関節運動すると、凸状嵌合面175及びローブ177はシフトして、凹状嵌合面184及び凹部185と一致しなくなり、それにより、ローブは凹部から出て凹状嵌合面と係合する。この状態では、椎体173とブッシュ182との間の距離は漸進的に増大し、部品の間の回転軸をシフトさせる。ローブ177の寸法を、凸状嵌合面175のサイズに対して非常に小さくすることができる。ローブ177の曲線状外周部は、凸状嵌合面175から0.002インチ程度突出することができる。より小さい、又は、より大きいローブ構成もまた使用することができる。
【0049】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態について示し記載したが、こうした実施形態は単に例として提供されることが理解されよう。本発明から逸脱することなく、当業者は、多数の変形形態、変更形態及び置換形態を想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内にあるこうした変形形態のすべてを包含するように意図されている。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
組織を切断及び封止するための電気手術デバイスであって、
前記電気手術デバイスは、
前記電気手術デバイスの遠位端に位置する上部つかみ具と、
前記上部つかみ具に対向する下部つかみ具であって、旋回接続部によって前記上部つかみ具に旋回接続されている前記下部つかみ具と、を備え、
前記旋回接続部は、前記上部つかみ具の一部を収容する通路を備え、
前記上部つかみ具は、相対的開放状態と相対的閉鎖状態との間で、前記上部つかみ具を前記下部つかみ具に対して旋回させるように、前記通路を通って軸方向に変位可能であり、
前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具は、前記相対的閉鎖状態で組織にRFエネルギーを送達するように動作可能である、電気手術デバイス。
(項目2)
前記上部つかみ具は、前記上部つかみ具の外側縁に隣接して位置する旋回点を中心に前記下部つかみ具に対して旋回可能であり、
前記旋回点は、前記電気手術デバイスの中心線からずれている、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目3)
前記旋回接続部は、前記上部つかみ具の第1面と係合する凸状面を有する半円筒状要素を備える、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目4)
前記旋回接続部は、さらに、前記上部つかみ具の第2面と係合する凹状面を備える、項目3に記載の電気手術デバイス。
(項目5)
前記凸状面及び前記凹状面は、前記通路の対向する壁を画定する、項目4に記載の電気手術デバイス。
(項目6)
前記凸状面及び前記凹状面は、共通する1点を中心として同心である円形輪郭に従う、項目4に記載の電気手術デバイス。
(項目7)
前記電気手術デバイスは、さらに、前記下部つかみ具を収容する下部つかみ具ハウジングを備え、
前記下部つかみ具は、前記下部つかみ具ハウジングの遠位部分に配置されている、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目8)
前記下部つかみ具は、下部つかみ具旋回接続部によって前記下部つかみ具ハウジングに旋回接続されている、項目7に記載の電気手術デバイス。
(項目9)
前記下部つかみ具旋回接続部が、前記下部つかみ具から外側に突出する一対のボスを備えるピンなし接続部を備え、
前記ボスは、前記下部つかみ具ハウジングの一対の開口部と係合している、項目8に記載の電気手術デバイス。
(項目10)
前記電気手術デバイスは、前記下部つかみ具ハウジングと前記下部つかみ具との間に配置された下部つかみ具ばねを備える、項目7に記載の電気手術デバイス。
(項目11)
前記下部つかみ具ばねは、前記下部つかみ具の遠位部分に位置し、
前記下部つかみ具ばねは、前記下部つかみ具の遠位部分を前記上部つかみ具に向かって付勢する、項目10に記載の電気手術デバイス。
(項目12)
前記上部つかみ具は、前記上部つかみ具を前記下部つかみ具から電気的に絶縁するように前記上部つかみ具の上に成形されたプラスチック覆いを備える、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目13)
前記電気手術デバイスは、さらに、前記電気手術デバイスの細長いシャフトと、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具と、の間に手首部を備え、
前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具は、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具が前記細長いシャフトに対して屈曲するのを可能にするように、前記手首部において変位可能である、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目14)
前記電気手術デバイスは、さらに、前記手首部の通路を通してループ状にされた関節運動ワイヤを備える、項目13に記載の電気手術デバイス。
(項目15)
前記関節運動ワイヤを通して前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具に電力が供給される、項目14に記載の電気手術デバイス。
(項目16)
前記手首部は、
椎体と、
ブッシュと、
前記椎体と前記ブッシュとの間の自動的にまっすぐになる結合部であって、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具を中心位置に向かって付勢する前記結合部と、を備える、項目13に記載の電気手術デバイス。
(項目17)
前記電気手術デバイスは、さらに、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具のうちの一方の通路を通ってループ状にされた作動ワイヤを備える、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目18)
前記作動ワイヤは、
第1作動ワイヤ部と、
第2作動ワイヤ部と、を備え、
前記第1作動ワイヤ部は、前記第2作動ワイヤ部と交差し、それにより、前記第1作動ワイヤ部と前記第2作動ワイヤ部とが、前記作動ワイヤがループ状にされている前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具のうちの前記一方に等しい力をかける、項目17に記載の電気手術デバイス。
(項目19)
前記作動ワイヤを通して前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具に電力が供給される、項目17に記載の電気手術デバイス。
(項目20)
前記上部つかみ具は、第1嵌合面を備え、
前記下部つかみ具は、前記第1嵌合面と嵌合する第2嵌合面を備え、
前記第1嵌合面及び前記第2嵌合面のそれぞれは、V字型輪郭を備える、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目21)
前記電気手術デバイスは、さらに、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具の屈曲運動又は回転運動を制御する関節運動機構をさらに具備する、項目1に記載の電気手術デバイス。
(項目22)
前記関節運動機構は、
ハウジングと、
前記ハウジング内で回転可能に変位可能な割出ディスクと、を備える、項目21に記載の電気手術デバイス。
(項目23)
前記ハウジングは、複数のラチェット切欠きを備え、
前記割出ディスクは、前記ラチェット切欠きと係合して、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具の位置を割り出す割出アームを備える、項目22に記載の電気手術デバイス。
(項目24)
前記関節運動機構は、前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具に対する外部の力が前記上部つかみ具及び前記下部つかみ具を割出位置から移動させるのを防止する自動係止機構を備える、項目22に記載の電気手術デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17