特許第6556912号(P6556912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556912ヘテロアレーンを有するアルキンのカルボニル化のためのマルコフニコフ選択的パラジウム触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556912
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ヘテロアレーンを有するアルキンのカルボニル化のためのマルコフニコフ選択的パラジウム触媒
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/572 20060101AFI20190729BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20190729BHJP
   C07D 207/333 20060101ALI20190729BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   C07F9/572 ZCSP
   B01J31/24 Z
   C07D207/333
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-110054(P2018-110054)
(22)【出願日】2018年6月8日
(65)【公開番号】特開2019-14705(P2019-14705A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】17178595.9
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハオチュァン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェ リウ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マッティアス ベラー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 ロシア国特許出願公開第02225412(RU,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02517324(CA,A1)
【文献】 LIU, Jie et al.,Markovnikov-Selective Palladium Catalyst for Carbonylation of Alkynes with Heteroarenes,Angewandte Chemie, International Edition,2017年 8月25日,vol.56, no.39,p.11976-11980
【文献】 Sajad A. Bhat, et al.,Coodination of bis(azol-1-yl)methane-based bisphosphines towards RuII, RhI, PdII and PtII:synthesis, structural and catalytic studies,Dalton Transactions,2017年,vol.46,p.227-241
【文献】 Li, Haoquan et al.,The scope and mechanism of palladium-catalysed Markovnikov alkoxycarbonylation of alkenes,Nature Chemistry,2016年12月,vol.8, no.12,p.1159-1166
【文献】 Liu, Jie et al.,Selective Palladium-Catalyzed Aminocarbonylation of Olefins to Branched Amides,Angewandte Chemie, International Edition,2016年 9月26日,vol.55, no.43,p.13544-13548
【文献】 Zhang, Jing et al.,Phosphane-Ligated Ionic Palladium Complexes: Synthesis, Characterization and Application as Efficient and Reusable Precatalysts for the Homogeneous Carbonylative Sonogashira Reaction under CuI-Free Conditions,European Journal of Inorganic Chemistry,2014年,no.6,p.975-985
【文献】 Beller, Matthias et al.,Palladium-Catalyzed Methoxycarbonylation of 1,3-Butadiene: Catalysis and Mechanistic Studies,Advanced Synthesis & Catalysis,2002年,vol.344, no.5,p.517-524
【文献】 Yun Yang, et al.,Selective Ethylene Tri-/Tetramerization by in Situ-Formed Chromium Catalysts Stabilized by N,P-Based Ancillary Ligand Systems,ACS Catalysis,2013年 9月 3日,vol.3,p.2353-2361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
B01J 21/00 − 37/36
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(1):
【化1】
(1)
を有する化合物。
【請求項2】
カルボニル化反応を触媒するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
以下の工程:
a)最初にアルキンを充填する工程と、
b)請求項1に記載の化合物とPdを含有する物質とを添加する工程と、
c)N−メチルピロールおよびCOを供給する工程と、
d)当該反応混合物を加熱し、前記アルキンを生成物に転化する工程と、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロアレーンを有するアルキンのカルボニル化のためのマルコフニコフ選択的パラジウム触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
リガンドの開発は重要な役割を果たし、均質な触媒作用および有機合成における重要な革新を提供する。実例には、重合、有機金属カップリング反応、カルボニル化、水素化およびメタセシス反応が含まれる。過去数十年間にわたり、多量の窒素系リガンドおよびリン系リガンドが開発されてきたが、容易に調製および変性することが可能な高活性触媒システムを提供する合理的設計は、この分野において引き続き重要な話題である。
公知の万能リガンド群の中でも、特に二座配位及び多座配位の誘導体は、非常に安定で選択的な有機金属錯体を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、アルキンをカルボニル化するためのパラジウム触媒中のリガンドとして良好な特性を有し、さらにカルボニル化反応の収率に関し良好な結果を成す化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本問題は、請求項1に記載の化合物により解決される。
【0005】
構造(1):
【0006】
【化1】
【0007】
を有する化合物。
【0008】
カルボニル化触媒用のリガンド金属錯体中のリガンドとしての前記化合物の使用がさらに特許請求されている。
【0009】
カルボニル化触媒用のリガンド金属錯体中の上記化合物の使用。
【0010】
前記化合物を、オレフィンをアルデヒドに転化させるためのリガンド金属錯体中のリガンドとして使用する方法も同様に特許請求されている。
【0011】
以下の工程:
a)最初にアルキンを充填する工程と、
b)上記化合物とPdを含有する物質とを添加する工程と、
c)N−メチルピロールおよびCOを供給する工程と、
d)当該反応混合物を加熱し、前記アルキンを生成物に転化する工程と、
を含む方法。
【0012】
本方法において、工程a)〜d)は任意の順番で実施され得る。
【0013】
本方法の好適な変形例では、金属原子はRhである。
【0014】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0015】
リガンド合成
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
N,N’−ジピロリルメタンの合成
DMSO(100mL)に粉末水酸化カリウム(24g、0.43mol、3.31当量)を溶かした撹拌懸濁液に、ピロール(9.00mL、130mmol)を室温で添加した。1時間後、当該混合物を40℃に加熱し、DCM(6.32mL、98.6mmol、0.76当量)をゆっくり添加した。当該溶液を40℃でさらに4時間加熱した。一旦冷却し、エーテル(100mL)と水(100mL)を添加し、層を分離した。水層をエーテルで3回抽出し、混合した有機抽出物を水で3回洗浄し、次いで食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、淡黄色の固体を得た。クロロホルムからの再結晶化により、1,2−ジ(ピロール−1−イル)メタンを収率72%で得た。
【0019】
N、N’−ジイミダゾールメタンの合成
N、N’−ジピロリルメタンの類似物
(1)および(2)の合成:
3つ口の100mL丸底フラスコ中で、N、N’−ジピロリルメタン(5mmol)を、アルゴン下で、新たに蒸留したEt2O(15mL)に溶かした。TMEDA(15mmol)を添加し、続いてn−BuLi(10.5mmol、ヘキサン中1.6M)を室温で添加した。当該反応混合物を室温で1時間撹拌し、黄色の懸濁液を得た。次いで、当該黄色懸濁液をシリンジを介してClPR2溶液(Et2O15mL中10mmol、R=PhまたはCy)にゆっくり添加した。当該混合物をさらに1時間撹拌し、次いで脱気した水(10mL)を添加し、当該混合物を攪拌して透明な溶液を得た。水層をEt2O(2×15ml)で抽出し、混合した有機層を脱気水(10mL)で洗浄した。当該溶液をNa2SO4で乾燥させ、さらに濃縮し、エタノールから再結晶させた黄色の粘性液体を得た。収量および特性については、下記を参照。
【0020】
特徴付け:
【化4】
【0021】
1.0g、収率39%(5mmolスケール、純度97%)、白色固体。
1H NMR(300MHz、CD2Cl2)δ7.23−7.18(m,20H)、6.85−6.83(m,2H)、6.17(t,J=2.8Hz,2H)、6.00(dd,J=3.6,2.8Hz,2H)、5.83(dd,J=3.6,1.6Hz,2H);
13C NMR(75MHz,CD2Cl2)δ137.1、133.7、129.1、128.1、127.1、128.8、129.8、110.5、58.1
31P NMR(122MHz,CD2Cl2)δ−33.0。
HRMS(ESI)[C335222+H]+計算質量539.36785、測定質量539.36811。
【0022】
【化5】
【0023】
0.54g、収率20%(5mmolスケール、純度95%)、オフホワイトの固体。
1H NMR(300MHz,d8−トルエン)δ7.18−7.15(m,2H)、6.53−6.51(m,2H)、6.40−6.38(m,2H)、6.31−6.29(m,2H)、1.86−1.56(m,24H)、1.25−1.06(m,20H);
13C NMR(75MHz,d8−トルエン)δ126.1、124.3、116.7、109.6、57.0、34.2、30.4、29.1、27.1;
31P NMR(122MHz,d8−トルエン)δ−31.0。
HRMS(ESI)[C335222+H]+計算質量539.36785、測定質量539.36811。
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
触媒の結果
触媒実験の結果を表1にまとめる:
【0027】
【表1】
【0028】
反応条件:(Ia)(1.0mmol)、(IIa)(0.5mmol)、Pd(acac)2(2.0mol%)、リガンド(4.0mol%)、p−TsOH(10.0mol%)、CO(40バール)、トルエン(1.0mL)、70℃、12時間。
【0029】
異なるアルキン(I)を用いたカルボニル化実験のさらなる結果を表2に要約する:
【0030】
【表2】
【0031】
反応条件:アルキン(I)(1.0mmol)、N−メチルピロール(II)(0.5mmol)、Pd(acac)2(1.0mol%)、(1)(2.0mol%)、p−TsOH)(5.0mol%)、CO(40バール)、トルエン(1.0mL)、70℃、12時間。
それぞれの場合において、単離化合物(III)の収率が示され、括弧内の数字は、GC分析により測定された(III/III’)比を示す。
[a]90℃で反応させる
[b]100℃で20時間反応させる
[c]90℃で20時間反応させる
【0032】
上記実験に基づき、記載された課題が本発明の化合物によって解決されたことが示された。