(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のカーボンナノチューブを提供し、複数の前記カーボンナノチューブを予め酸化し、複数の前記カーボンナノチューブは超配列カーボンナノチューブアレイから得られる第一ステップと、
複数の前記カーボンナノチューブを溶媒中で超音波により分散させて、カーボンナノチューブ懸濁液を形成する第二ステップと、
前記カーボンナノチューブ懸濁液に遷移金属オキシ酸含有物質を添加し、均一に撹拌して混合して、混合液を形成する第三ステップと、
前記混合液をろ過して乾燥させ、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極を形成する第四ステップと、
を含むことを特徴とする電池電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電池電極及びその製造方法の実施形態について説明する。以下の各実施形態において、同じ部材は同じ記号で標示する。
【0013】
(実施例1)
実施例1は電池電極を提供する。電池電極は複数のカーボンナノチューブ及び遷移金属酸化物ナノ粒子を含む。遷移金属酸化物ナノ粒子及び複数のカーボンナノチューブは、C−0−M化学結合で結合される。ここで、Mは遷移金属を表す。
【0014】
カーボンナノチューブの直径は制限されない。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであってもよく、多層カーボンナノチューブであってもよい。好ましくは、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブである。複数のカーボンナノチューブは、互いに絡み合って緊密に結合してカーボンナノチューブ構造体を形成する。カーボンナノチューブ構造体は自立構造体である。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができる形態のことである。カーボンナノチューブ構造体は、遷移金属酸化物ナノ粒子の導電ネットワーク及び付着担体として使用することができる。
【0015】
遷移金属酸化物ナノ粒子は電池電極に均一に分布される。遷移金属酸化物ナノ粒子は、二酸化マンガン(MnO
2)、二酸化チタン(TiO
2)、四三酸化鉄(Fe
3O
4)、三酸化クロム(Cr
3O
4)、三酸化コバルト(Co
3O
4)、二酸化モリブデン(MoO
2)、二酸化バナジウム(VO
2)などのいずれか一種または多種である。
【0016】
好ましくは、カーボンナノチューブの表面は、少なくとも一つの孔を有する。遷移金属酸化物ナノ粒子はカーボンナノチューブの表面或いは孔に均一に設置されている。
【0017】
複数のカーボンナノチューブは互いに絡み合って自立構造体を形成することができる。自立構造体はより優れた電気伝導性及び可撓性を有し、遷移金属酸化物ナノ粒子は複数のカーボンナノチューブと化学結合によって結合され、カーボンナノチューブから脱落しにくい。これにより、電池電極は集電体、導電剤、バインダーを省略でき、電池電極の重さを低下させ、小型化、軽量化を実現することができる。一つの例において、電池電極は複数のカーボンナノチューブ及び遷移金属酸化物からなる。電池電極において、C−0−M化学結合で、複数のカーボンナノチューブ及び複数のカーボンナノチューブは複合される。もう一つの例において、電池電極は少量の構造水及び微量の金属イオンを含む。例えば、金属イオンはK
+などのアルカリ金属イオンであってもよい。構造化水及び金属イオンは、電池電極の構造を安定化させ、電池のサイクル性能を維持するのに有利である。
【0018】
本発明では、遷移金属酸化物ナノ粒子は化学結合によってカーボンナノチューブに緊密に結合される。これにより、その後の大電流充放電時に遷移金属酸化物ナノ粒子がカーボンナノチューブから脱落することを防止することができる。
【0019】
図1を参照すると、電池電極の製造方法を提供する。電池電極の製造方法は、以下の工程を含む。
S1、複数のカーボンナノチューブを提供し、複数のカーボンナノチューブを予め酸化し、複数のカーボンナノチューブは超配列カーボンナノチューブアレイから得られる。
S2、複数のカーボンナノチューブを溶媒中で超音波により分散させて、カーボンナノチューブ懸濁液を形成する。
S3、カーボンナノチューブ懸濁液に遷移金属オキシ酸含有物質を添加し、均一に撹拌して混合して、混合液を形成する。
S4、混合液をろ過して乾燥させ、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極を形成する。
【0020】
ステップ(S1)において、カーボンナノチューブの直径は制限されない。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであってもよく、多層カーボンナノチューブであってもよい。複数のカーボンナノチューブを予め酸化する強い反応により、複数のカーボンナノチューブが破壊されないために、好ましくは、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブである。超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は次のステップを含む。ステップ(a)において、平らな基板を提供する。該基板はp型のシリコン基板、n型のシリコン基板及び酸化層が形成されたシリコン基板のいずれか一種である。本実施例においては、4インチのシリコン基板を選択することが好ましい。ステップ(b)において、基板の表面に均一に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びこれら2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)において、触媒層が形成された基板を700℃〜900℃の空気によって30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)において、アニーリングされた基板を反応炉に置き、保護ガスによって500℃〜740℃の温度に加熱した後カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応させて、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes)を成長させる。このカーボンナノチューブアレイが成長する高さは200μm〜400μmである。該カーボンナノチューブアレイは互いに平行し、基板に垂直になるように成長する複数のカーボンナノチューブからなる。成長の条件を制御することによって、カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブは、お互いに分子間力によって緊密に接触してアレイを形成する。
【0021】
本実施例において、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブの直径は20nm〜30nmであり、その高さは300μmである。
【0022】
複数のカーボンナノチューブを予め酸化し、複数のカーボンナノチューブの表面には、複数の負電荷サイト(例えば、酸素含有官能基である)が導入されている。カーボンナノチューブを予め酸化した後に複数のカーボンナノチューブの表面に複数の負電荷サイトを形成できれば、カーボンナノチューブを予め酸化する方法は限定されない。具体的には、複数のカーボンナノチューブを酸素、二酸化炭素または空気雰囲気で一定時間加熱してもよいし、複数のカーボンナノチューブを過酸化水素や強酸などの酸化性溶液に一定時間浸漬してもよい。複数のカーボンナノチューブを酸素や強酸などの強い酸化剤で処理するとき、複数のカーボンナノチューブの表面に複数の孔を形成することができる。
【0023】
本実施例において、複数のカーボンナノチューブを空気中に置き、550℃で30分間加熱することにより、複数のカーボンナノチューブを予め酸化する。複数のカーボンナノチューブの表面に複数の孔を形成する。
【0024】
ステップ(S2)において、複数のカーボンナノチューブを溶媒中で超音波により分散させて、カーボンナノチューブ懸濁液を形成する。溶媒は、有機溶媒、水または有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。超音波で処理した後、複数のカーボンナノチューブは溶媒に均一に分散される。遷移金属オキシ酸アニオンが後の工程で他の物質と反応するのを防ぐために、溶媒は脱イオン水であることが好ましい。溶媒が水であるとき、ステップ(S3)において、水に遷移金属酸素基は予め酸化されたカーボンナノチューブと反応するので、ステップ(S4)に形成された遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極は構造水を含むことができる。構造水の存在は、電荷を迅速に移動させ、電池の電気化学的活性を維持することができる。
【0025】
複数のカーボンナノチューブは水で容易に凝集するため、最初に水に溶解できる有機溶媒中で超音波により複数のカーボンナノチューブを均一に分散させた後、水で徐々に有機溶媒を置換する。これにより、溶媒が水であるカーボンナノチューブ懸濁液を得ることができる。
【0026】
本実施例において、まず、予め酸化された複数のカーボンナノチューブをエタノールに分散させ、複数のカーボンナノチューブをエタノールに均一に分散させた後、脱イオン水で徐々にエタノールを置換してカーボンナノチューブ懸濁液を得る。
【0027】
ステップ(S3)において、カーボンナノチューブ懸濁液に遷移金属オキシ酸含有物質を添加し、均一に撹拌して混合して、混合液を形成する。
【0028】
遷移金属オキシ酸含有物質は、遷移金属酸素酸または遷移金属酸素酸塩などであってもよい。遷移金属オキシ酸含有物質における遷移金属元素の価数は、形成しよう金属酸化物における遷移金属元素の価数より高くなければならない。遷移金属酸素酸は過マンガン酸(HMnO
4)、チタン酸(H
4TiO
4)、クロム酸(H
2CrO
4)、重クロム酸(H
2CrO
7)、鉄酸(H
2FeO
4)、コバルト酸(H
3CoO
4)、モリブデン酸(H
2MoO
4)、バナジン酸(H
3VO
4)などのいずれか一種である。遷移金属酸素酸塩は、過マンガン酸塩、チタン酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、鉄酸塩、コバルト酸塩、モリブデン酸塩、バナジン酸塩などのいずれか一種である。
【0029】
ステップ(S3)において、一つの遷移金属酸素酸基を添加してもよいし、複数の遷移金属酸素酸基を同時に添加してもよい。複数の遷移金属酸素酸基を同時に添加する場合、複数の遷移金属酸化物が形成される。
【0030】
複数のカーボンナノチューブを予め酸化した後、表面に複数の負電荷サイトが形成され、撹拌及び混合中に遷移金属酸素酸アニオンは複数の負電荷サイトと酸化還元反応が生じて遷移金属酸化物ナノ粒子が形成される。遷移金属酸化物ナノ粒子がC−0−M化学結合で複数のカーボンナノチューブと結合される。ここで、Mは遷移金属を表す。遷移金属酸化物における金属元素とカーボンナノチューブにおける炭素元素とは酸素原子によって結合している。
【0031】
遷移金属酸素酸基がカーボンナノチューブと反応するプロセスは、加熱を必要とせず、室温で行うことができる。反応中、連続的に撹拌混合することにより、遷移金属オキシ酸アニオンがカーボンナノチューブと均一に接触する。これにより、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極において、遷移金属酸化物ナノ粒子が均一に分布することを保証できる。
【0032】
本実施例において、過マンガン酸カリウム(KMnO
4)をカーボンナノチューブの懸濁液に添加し、室温で1日〜8日間磁気撹拌を行う。KMnO
4と予め酸化されたカーボンナノチューブは酸化還元反応を生じて、MnO
2ナノ粒子を形成する。MnO
2ナノ粒子は、複数のカーボンナノチューブの表面または穴に形成される。
【0033】
ステップ(S4)において、混合液をろ過して乾燥させ、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極を形成する。
【0034】
懸濁液中の溶媒を真空ろ過により除去し、複数のカーボンナノチューブを相互に絡み合わせて緊密に結合させて自立のカーボンナノチューブ構造体を形成する。遷移金属酸化物ナノ粒子は自立のカーボンナノチューブ構造体に均一に分布し、且つC−0−M化学結合で複数のカーボンナノチューブと結合される。ここで、Mは遷移金属を表す。
【0035】
本実施例において、懸濁液中の脱イオン水を濾過により除去し、乾燥した後に自立のMnO
2/カーボンナノチューブ複合膜構造体を得る。MnO
2/カーボンナノチューブ複合膜構造体は良好な自立性と導電性を有するので、バインダー、導電剤及び集電体を使用せずに電池電極として直接使用することができる。
【0036】
本発明の実施例により製造されたMnO
2/カーボンナノチューブ複合膜構造体について、
図2〜
図11を参照して説明する。空気で予め酸化されたカーボンナノチューブを「air−CNT」と略記し、MnO
2/カーボンナノチューブを「MnO
2/aCNT」と略記する。
【0037】
図2において、
図2aは予め酸化されていない超配向カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡写真である。
図2bは予め酸化された後の超配向カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡写真である。
図2cはKMnO
4と反応した後の超配向カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡写真である。
図2aでは、予め酸化されていない超配向カーボンナノチューブの表面は滑らかである。
図2bでは超配向カーボンナノチューブが予め酸化された後に、カーボンナノチューブの表面に欠陥が形成され、その欠陥部の炭素層の一部が酸化されることによって凹みを帯びて孔が形成される。
図2cでは、KMnO
4はair−CNTと反応した後、カーボンナノチューブの表面にナノ粒子が形成される。
【0038】
図3及び
図4は、カーボンナノチューブの表面に形成されたナノ粒子がδ−MnO
2であることを証明している。
図3は「MnO
2/aCNT複合膜構造体のX線回折(XRD)図である。
図3のイラストは、MnO
2の格子形態のTEM写真である。XRD図において、約26度の強いピークは、カーボンナノチューブにおけるグラファイト格子の結晶面に対応し、残りのピークは水ナトリウムマンガン鉱型δ−MnO
2に対応する。イラストにおいて、MnO
2ナノクリスタルの面内間隔は0.25nmであることが観察できる。これは、文献に報告されている単斜晶系重炭酸ナトリウム型δ−MnO
2の面内間隔と一致する。
図4はMnO
2/aCNT複合膜構造体のMn2pX線光電子分光法(XPS)図である。Mn2p
3/2ピーク及びMn2p
1/2ピークは、結合エネルギーが642.0eV及び653.5eVである位置にそれぞれ現れる。これは、酸化された4価マンガンイオンと一致する。
【0039】
図5はair−CNT及びMnO
2/aCNT複合膜構造体の窒素吸着−脱着等温線を示す。
図5のイラストはair−CNT及びMnO
2/aCNT複合膜構造体における気孔径分布を示す図である。air−CNTの表面は複数の孔の微細構造を有し、その孔の孔径は主に3.7nmと62nmであることが分かる。しかし、air−CNTがKMnO
4と反応してMnO
2/aCNT複合膜構造体を形成した後、その比表面積は減少し、孔径3.7nmの孔はほとんど消滅する。これは、MnO
2がair−CNTの表面及びair−CNTにおける孔に形成されたことを示す。
【0040】
図6はMnO
2/aCNT複合膜構造体の透過型電子顕微鏡写真である。
図6から分かるように、MnO
2ナノ粒子のサイズは10nmであり、MnO
2ナノ粒子はカーボンナノチューブの表面に均一に分布し、または隣接するカーボンナノチューブに充填され、MnO
2ナノ粒子がカーボンナノチューブの束の外側で凝集しない。
【0041】
図7はMnO
2/aCNT複合膜構造体の写真である。
図7から分かるように、本発明の実施例で製造されたMnO
2/aCNT複合膜構造体は、自立且つ柔軟構造体であり、そのまま電池電極として使用できる。
【0042】
図8における三つの曲線は、air−CNT、MnO
2粉末及びMnO
2/aCNT複合膜構造体のラマンスペクトルである。
図8から分かるように、air−CNT及びMnO
2/aCNT複合膜構造体は1348cm
-1(すなわち、Dピークであり、sp
3混成炭素−欠損6員環構造の相対含量を表す)及び1582cm
-1(すなわち、Gピークであり、sp
2混成炭素原子−完全なグラファイト型6員環構造の相対含量を表す)の二つのラマンピークが存在する。これは、in situ酸化還元反応によりMnO
2を形成する工程には、カーボンナノチューブの完全な構造が破壊しないことを示す。しかし、in situ酸化還元反応の後、DピークとGピークとの強度比が増加する。これは、カーボンナノチューブの欠陥が増加することを示す。また、MnO
2粉末は634cm
-1にラマンピークを有し、MnO
2/aCNT複合膜構造体は650cm
-1にラマンピークを有する。両者はMn−O結合の伸縮振動に対応する。ラマンピーク位置の違いは、MnO
2/aCNT複合膜構造体にカリウムイオン(K
+)が存在する可能性がある。K
+はMnO
2/aCNT複合膜構造体の層間構造に挿入し、局所的な格子歪みを生じ、Mn−O結合の長さを短くする。
【0043】
図9は、それぞれair−CNT及びMnO
2/aCNT複合膜構造体のC1s及び K2pX線光電子分光法(XPS)図である。
図9から分かるように、K2p
3/2ピーク及びK2p
1/2ピークは、結合エネルギーが292.9eV及び295.5eVである位置にそれぞれ現れる。MnO
2/aCNT複合膜構造体にK
+があり、K
+がMnO
2の二次元構造を安定化させ、MnO
2/aCNT電極がサイクルにおける安定性を向上させることができる。C1sのXPS図には、、結合エネルギーが284.8eV、285.5〜285.7eV及び287〜288.3eVである位置に三つピークが現れる。三つのピークはsp
2混成炭素、sp
3混成炭素及び酸素含有官能基の炭素それぞれと対応する。air−CNTと比較してMnO
2/aCNT複合膜構造体における酸素含有官能基の相対含量及び炭素の価数が増加する。これは、KMnO
4とカーボンナノチューブとの間の酸化還元反応によって引き起こされることによる。
【0044】
図10において、
図10aはMnO
2粉末のO1sX線光電子分光法(XPS)スペクトルである。
図10bはair−CNTのO1sX線光電子分光法(XPS)スペクトルである。
図10cはMnO
2/aCNT複合膜構造体のO1sX線光電子分光法(XPS)スペクトルである。
図10aでは、MnO
2粉末は529.6eV、530.8eV及び532.2eVである位置に三つのピークを有し、酸化物(Mn−O−Mn)、水酸化物(Mn−O−H)及び構造水(H−O−H)にそれぞれ対応する。
図10bでは、air−CNTは530.8eV及び532.2eVである位置に二つのピークを有し、C=O結合及びC−O結合にそれぞれ対応する。
図10cでは、MnO
2/aCNT複合膜構造体は529.6eV、530.8eV、531.5eV及び532.2eVである位置に四つのピークを有し、Mn−O−Mn、Mn−O−H/C=O結合、Mn−O−C結合及びH−O−H/C−O結合にそれぞれ対応する。air−CNTと比較して、MnO
2/aCNT複合膜構造体における余分なC−O基は、MnO
2/aCNT複合膜構造体の界面におけるC−O−Mn化学結合から獲得するべきである。カーボンナノチューブにおける酸素含有基は、様々な金属アニオン(例えば、VO
3−、MnO
2−、MnO
2−など)を引き付け、且つ酸化還元反応を生じて金属酸化物を生成することができる。C−O−Mn化学結合によってMnO
2ナノ粒子とカーボンナノチューブとは強固に結合し、MnO
2がカーボンナノチューブの表面から剥離するのを防止でき、MnO
2がカーボンナノチューブの表面上で凝集するのを防止することができる。
【0045】
図11は、MnO
2/aCNT複合膜構造体の熱重量分析曲線である。
図11から分かるように、MnO
2/aCNT複合膜構造体における物理的に吸着された水は100℃で蒸発し、構造水は100℃〜300℃で除去され、カーボンナノチューブは300℃〜500℃で酸化されガスになって散逸し、残り物質はMnO
2粒子である。分析後、MnO
2/aCNT複合膜構造体において、MnO
2の質量含有率は50%であり、構造水及び物理吸着水の質量含有率は8%であり、カーボンナノチューブの質量含有量は42%である。
【0046】
本発明の実施例によって製造されたMnO
2/aCNT複合膜構造体は、可撓性を有する自立構造体である。ここで、MnO
2ナノ粒子はδ相であり、MnO
2ナノ粒子のサイズは10nmより小さく、MnO
2ナノ粒子はカーボンナノチューブの表面または孔に均一に分布し、MnO
2ナノ粒子はC−O−Mn化学結合によってカーボンナノチューブと緊密に結合される。MnO
2/aCNT複合膜構造体はK
+及び構造水を有し、K
+及び構造水はMnO
2/aCNT複合膜構造体の構造を安定化させ、大電流充放電によりカーボンナノチューブの表面からMnO
2ナノ粒子が脱落するのを防止できる。
【0047】
(実施例2)
実施例2はハイブリッドエネルギー貯蔵装置を提供する。ハイブリッドエネルギー貯蔵装置には、少なくとも一つ電極は実施例1の電極である。
【0048】
遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極及びそれを用いたハイブリッドエネルギー貯蔵装置の性能をさらに説明するために、本発明の実施例によって製造されたMnO
2/aCNT複合電極(MnO
2/aCNT電極と称する)、MnO
2電極、MnO
2/rCNT電極、air−CNT電極をそれぞれ有する電池について一連の試験を行う。ここで、MnO
2電極は従来のブレード電極である。rCNTは無秩序なカーボンナノチューブアレイから得られる。無秩序なカーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブは無秩序に成長しランダムに配向している。air−CNT電極はブランク対照として使用する。
【0049】
(実験例1)
MnO
2/aCNT電極の製造方法は以下のステップを含む。まず、超配向カーボンナノチューブアレイを大気中に置き、550℃で30分間加熱してair−CNTを得る。次いで、100mgのair−CNTを脱イオン水に分散させて、カーボンナノチューブの懸濁液を獲得し、1.0gのKMnO
4をカーボンナノチューブの懸濁液に加え、室温で6日間磁気的に撹拌する。次いで、真空濾過してMnO
2/aCNT複合膜構造体を形成する。MnO
2/aCNT複合膜構造体は複数のカーボンナノチューブとMnO
2ナノ粒子を含む。MnO
2ナノ粒子はC−O−Mn結合によってカーボンナノチューブと結合される。複数のカーボンナノチューブは絡み合って自立構造を有する膜を形成する。MnO
2/aCNT複合膜構造体は良好な自立性と導電性を有するため、MnO
2/aCNT複合膜構造体は電池電極としてそのまま使用することができる。集電体や導電剤を省略できる。
【0050】
MnO
2/aCNT電極を作用電極とし、リチウムシートを参照電極とし、ポリプロピレンフィルムをセパレータとし、1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)をエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)に溶解して形成した混合溶液を電解質とし、EC/DEC=1/1(w/w)であり、ボタン電池を組み立てる。
【0051】
(比較例1)
質量百分率50%のMnO
2粉末、質量百分率40%のカーボンブラック及び質量百分率10%のPVDFを混合して、N-メチルピロリドン(NMP)によって分散してスラリーを形成し、スラリーを銅箔の表面に塗布し、真空乾燥して、MnO
2電極を形成する。
【0052】
MnO
2電極を作用電極とし、リチウムシートを参照電極とし、ポリプロピレンフィルムをセパレータとし、1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)をエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)に溶解して形成した混合溶液を電解質とし、EC/DEC=1/1(w/w)であり、ボタン電池を組み立てる。
【0053】
(比較例2)
MnO
2/rCNT電極の製造方法はMnO
2/aCNT複合膜構造体の製造方法と基本的に同じである。rCNTが無秩序なカーボンナノチューブアレイから取り出されるため、自立構造を形成できず、遷移金属酸化物に導電ネットワークを設けることができない。これにより、集電体、導電剤、バインダーが依然として必要であり、且つ電極におけるMnO
2の質量比は50%であることを保証する。MnO
2/rCNT複合材料、カーボンブラック及びPVDFを混合して、N-メチルピロリドン(NMP)によって分散してスラリーを形成し、スラリーを銅箔の表面に塗布し、真空乾燥して、MnO
2/rCNT電極を形成する。
【0054】
MnO
2/rCNTを作用電極とし、リチウムシートを参照電極とし、ポリプロピレンフィルムをセパレータとし、1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)をエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)に溶解して形成した混合溶液を電解質とし、EC/DEC=1/1(w/w)であり、ボタン電池を組み立てる。
【0055】
(比較例3)
適量のair−CNTを採取し、水に分散させて、カーボンナノチューブ懸濁液を獲得し、カーボンナノチューブ懸濁液を真空ろ過して、air−CNT電極を得た。
【0056】
air−CNTを作用電極とし、リチウムシートを参照電極とし、ポリプロピレンフィルムをセパレータとし、1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)をエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)に溶解して形成した混合溶液を電解質とし、EC/DEC=1/1(w/w)であり、ボタン電池を組み立てる。
【0057】
(一)形態の比較
図12では、
図12(a)は不規則なカーボンナノチューブrCNTの走査電子顕微鏡写真である。
図12(b)はair−CNTの走査電子顕微鏡写真である。
図12(c)はMnO
2の従来のブレード電極の走査電子顕微鏡写真である。
図12(d)はMnO
2/rCNT電極の走査電子顕微鏡写真である。
図12(e)はMnO
2/aCNT電極の走査電子顕微鏡写真である。
図12から分かるように、凝集するrCNTは導電性の支持体として作用することが困難であるため、rCNTを採用する電極は自立構造を持たず、結合剤及び金属集電体を必要とする。連続な紡糸のようなair−CNTは、超音波で処理された後に、超配列構造を有さないが、三次元導電支持体として使用することができる。従来のMnO
2電極におけるMnO
2ナノ粒子は、導電剤と凝集して球状構造を形成する。rCNTが凝集しやすいために、MnO
2/rCNT電極の形態は従来のMnO
2電極の形態に類似している。透過型電子顕微鏡写真から見ると、MnO
2粒子はair−CNT電極の表面を均一に覆う。MnO
2粒子はair−CNT電極の表面を均一に覆うので、MnO
2/aCNT電極の形態はair−CNT電極の形態に類似している。
【0058】
(二)充放電性能の比較
図13では、
図13(a)はMnO
2の放電曲線である。
図13(b)はMnO
2/rCNT電極の放電曲線である。
図13(c)はMnO
2/aCNT電極の放電曲線である。
図13から分かるように、他の二つの電極と比較して、MnO
2/aCNT電極は以下の三つの特性を有する。第一に、ΔU電荷が放電に変わるときの電池電圧降下の値である。ΔU
1st=0Vであり、ΔU
2nd=0.22Vであり、ΔU
50th=0.08Vであることから見ると、電圧降下値は非常に小さい。これは、電池の内部接触抵抗が低く、分極が小さいことを示している。直径10nmのMnO
2はカーボンナノチューブの表面に均一に付着し、化学結合でカーボンナノチューブと結合しているので、十分な反応速度を保証できる。第二に、初めのサイクルの比容量維持率は70%に達し、他の二つの電極は初めのサイクル比容量維持率は50%未満である。この利点は、電極の固体電解質界面にはSEI膜が形成しやすく、平滑なカーボンナノチューブ及び酸素含有官能基がSEI膜の形成に有利である。他の電極における凝集した粗い形態を有する非活性のバインダー及び導電剤はSEI膜の形成に有利ではない。第三に、第50回目のサイクルでは、MnO
2/aCNT電極の比容量が第2回目のサイクルの比容量に比べて増加する。その原因は以下のように説明される。(1)、通常、電解液がポールピースに完全に浸透するまで0.5〜2週間かかり、前記三つの電極におけるMnO
2ナノ粒子は活性化されて反応中の活性物質になるので、すべてのMnO
2電極は初期容量増加プロセスを有する。(2)、リチウムイオン電池において、分極、活性物質の損失などの不可逆的変化によって、放電容量はサイクル回数を増加するとともに減少する。MnO
2/aCNT電極では分極が小さいので、(1)の記載工程が支配的であり、最初の50回の容量が増加する。他の二つの電極では強く分極されるので、(1)に記載される工程が支配的であるため、容量は低下し続ける。
【0059】
(三)比容量サイクル性能の比較
図14を参照すると、充放電電流0.2A・g
−1におけるMnO
2、MnO
2/rCNT、air−CNT、MnO
2/aCNT電極の四つのサイクル特性曲線が示されている。MnO
2/aCNT電極の初めのサイクル及び第2回のサイクルの比放電容量はそれぞれ1043.5mAh・g
−1、718.3mAh・g
−1であり、且つ第3回のサイクル後に比容量が増加し続け、第70回のサイクルの比容量が最大値843.8mAh・g
−1に達する。さらに、MnO
2/aCNT電極の実際の比容量はその理論値を超える。第70回のサイクルを例として、図からわかるように、第70回のサイクルでは、air−CNTの理論的比容量は175.3mAh・g
−1であり、MnO
2の理論比容量は1233mAh・g
−1であり、MnO
2/aCNT電極の理論的比容量は690.1mAh・g
−1である(MnO
2/aCNT電極おいては、カーボンナノチューブ、MnO
2及び水の質量分率がそれぞれ42%、50%及び8%であるため、MnO
2/aCNT電極の理論的比容量は以下の式で計算できる。175.3mAh・g
−1×42%+1233mAh・g
−1×50%+0×8%=690.1mAh・g
−1)。しかし、MnO
2/aCNT電極の実際の比容量は843.8mAh・g
−1である。MnO
2/aCNT電極の実際の大きい比容量は、MnO
2とカーボンナノチューブとの間の界面容量性リチウム貯蔵現象に関する。すなわち、電解液におけるリチウムイオンの正電荷がカーボンナノチューブの表面の負電荷によって引き付けられ、カーボンナノチューブの表面に吸着される。20回のサイクル後、他の三つの電極の比容量は、初期比容量(1203.8mAh・g
−1、835.4mAh・g
−1、616.5mAh・g
−1)から20回のサイクル後の比容量((380.2mAh・g
−1、182.7mAh・g
−1、145.4mAh・g
−1)までに急激に減少する。ほかの三つの電極と比べて、MnO
2/aCNT電極は優れたサイクル安定性を示す。
【0060】
図15を参照されたい。一定の放電率0.5mAh・g
−1で、異なる充電電流を有するMnO
2、MnO
2/rCNT、air−CNT、MnO
2/aCNT電極に対して倍率試験を行う。充電電流が0.5Ag
−1、1Ag
−1、2Ag
−1、5Ag
−1、10Ag
−1であるとき、MnO
2/aCNT電極の放電比容量はそれぞれ671.9mAh・g
−1、649.1mAh・g
−1、619.2mAh・g
−1、539.9mAh・g
−1、395.8mAh・g
−1である。充電電流を0.5mAh・g
−1に再び設けると、MnO
2/aCNT電極の比容量を648.1mAh・g
−1に戻すことができる。しかし、他の二つの電極の倍率性能が悪い。充電電流が0.5Ag
−1であるとき、他の二つの電極の比容量は、MnO
2/aCNT電極の比容量よりはるかに小さい。さらに、充電電流が2Ag
−1以上であるとき、他の二つの電極の比容量は急速に減衰する。二つの電極の倍率性能が悪い原因は、活物質が凝集しやすく、リチウムイオンを急速に挿入/脱着させる大電流で集電体の表面から脱落しやすいことである。これにより、MnO
2/aCNT電極は大電流で良好な倍率性能を有することが分かる。
【0061】
(四)大電流でMnO
2/aCNT電極の長サイクル性能試験
図16を参照されたい。MnO
2/aCNT電極の長サイクル性能は、それぞれ2Ag
−1及び5Ag
−1の大きな充放電電流で試験された。電流が2Ag
−1または5Ag
−1であるとき、MnO
2/aCNT電極の初期比容量はそれぞれ824.0mAh・g
−1または718.3mAh・g
−1である。電流が2Ag
−1であるとき、MnO
2/aCNT電極の比容量は第3回のサイクル後に増加し続け、第150回のサイクルに最大値630.2mAh・g
−1に達する。また、電流が2.0Ag
−1であるとき、1000回のサイクル後に、MnO
2/aCNT電極の比容量減衰率は低い、MnO
2/aCNT電極の比容量減衰率は0.075%である。電流が5.0A・g
−1であるとき、1000回のサイクル後に、MnO
2/aCNT電極の比容量減衰率は低い。MnO
2/aCNT電極の比容量減衰率は0.140%である。これにより、MnO
2/aCNT電極は、大電流での長サイクル特性に優れていることが分かる。
【0062】
MnO
2/aCNT電極の優れた長サイクル安定性および及び倍率性能は、以下の四つの要因に関連する。第一に、MnO
2/aCNT電極の厚さは薄く、ほとんどの表面原子を電極と接触させるだけでなく、リチウムイオンの拡散経路を短くし、リチウムイオンの拡散時間を短縮することができる。第二に、活性物質MnO
2ナノ粒子は、C−O−Mn化学結合によってカーボンナノチューブに結合され、カーボンナノチューブは柔軟性があり、急速充放電過程で活性物質のリチウムイオン脱離による体積変化を緩和し、活性物質を電極から脱落することを防止できる。第三に、複数のカーボンナノチューブが相互に絡み合って自立構造を有する支持体を形成し、3次元の連続な電子チャネルを提供し、電子を効率的に移動させ、偏極現象の発生を緩和する。第四に、K
+及び構造化水は、サイクル中に電極の構造を安定化させる。
【0063】
さらに、MnO
2/aCNT電極の優れた倍率性能は、その容量記憶機構にも関係している。
図16のイラストには、三つのイラストは、電流が2Ag
−1及び5Ag
−1であるとき、第2回のサイクル、第500回のサイクル及び第1000回のMnO
2/aCNT電極の充放電曲線である。イラストから分かるように、第2回のサイクルには、明らかな充放電プラットフォームを有し、電池式拡散を通じて主に蓄電/放電する。第500回のサイクルには、明らかな放電プラットフォームのみを有する。第1000回のサイクルの後に、最後の放電プラットフォームはほとんど消えて、充放電曲線は線形になる。この第1000回のサイクル工程では、容量性電荷蓄積が支配的である。これにより、サイクル回数が増加するにつれて、MnO
2/aCNT電極は、主に容量の方式で電量を蓄えて放電する。
【0064】
(五)MnO
2/aCNT電極の反応速度論の研究
以上により、MnO
2/aCNT電極における容量性電荷蓄積の存在が明らかになり、MnO
2/aCNT電極における容量性電荷蓄積の割合について以下にさらに説明する。
【0065】
図17を参照されたい。MnO
2/aCNT電極に対して反応速度論分析を行う。
図17(a)は、0.2mV・s
−1から20mV・s
−1までの異なる走査速度(scanrate)におけるサイクルボルタンメトリー(cycle voltammetry)曲線を示す。電流応答(i)と走査速度(v)との間のべき乗関係(power law relation)を使用して、記憶機構を掲示する。べき乗関係は式(1)で示す。ここで、a及びbは保留中のパラメータである。bは1であるとき、応答電流は走査速度と正比例であり、リチウム貯蔵プロセスは容量内の二重層容量電荷蓄積プロセスである。bは0.5であるとき、応答電流と走査速度との関係は、Cottrellを満足する。リチウム貯蔵プロセスは電池内の固相拡散制御蓄積プロセスである。
図17(b)を参照すると、bは0.5〜1.0であるとき、リチウム貯蔵プロセスには、固相拡散と容量性界面貯蔵との両方を有する。
【0067】
図17(c)を参照すると、斜線部分の面積は、20mV・s
−1の走査速度での容量性電荷蓄積の割合を表す。容量式電荷蓄積からの容量(460C・g
−1)は、総容量(700C・g
−1)の65.6%を占めるが、電池式固相拡散制御蓄積からの容量はわずか240C・g
−1である。これは、20mV・s
−1の高い走査速度では、MnO
2/aCNT電極が主に容量的に電荷を蓄積し放出することを示している。
【0068】
マンガンの原子価状態は、Mn 3s XPSスペクトルにおける二つの主なピークの間隔によって特徴付けることができる。
図17(d)を参照すると、3.0Vまで充電するとき、二つの主なピークの間隔は5.83eVであり、2.4価のマンガンと対応する。0.01Vまで放電するとき、二つの主なピークの間隔は6.25eVであり、2.0価のマンガンと対応する。走査速度が20mV・s
−1であるとき、容量式電荷蓄積は支配的であるため、放電前後のマンガンの価電子状態の変化は小さい。マンガンとリチウムとの間の酸化還元反応は222C・g
−1しか寄与せず、これは上記反応速度論分析の結果に近い。
【0069】
本発明のMnO
2/aCNT電極及びハイブリッドエネルギー貯蔵装置は、容量特性及び電池特性を兼ね備え、容量特性が支配的であるため、電極は短時間に大量のエネルギーを受けたり移動したりすることができ、ハイブリッドエネルギー貯蔵装置は高エネルギー密度と高出力密度を備える。リチウムイオン貯蔵機構は、リチウムイオンの一部が活性物質に拡散し、且つこの過程にはリチウムイオンと活性物質の酸化還元反応を伴う。リチウムイオンの残りの正電荷は、カーボンナノチューブの表面上の過剰な負電荷によって引き付けられ、活性材料とカーボンナノチューブとの間の界面に貯蔵される。
【0070】
本発明により提供される電池電極は、以下の利点を有する。第一に、電池電極における遷移金属酸化物ナノ粒子は、C−O−M化学結合によってカーボンナノチューブに緊密に結合されて、脱落しにくく、分散性が良好で、凝集しにくい。第二に、カーボンナノチューブは、良好な機械的特性と良好な導電性を有し、遷移金属酸化物ナノ粒子の接着キャリア及び導電ネットワークとして使用することができる。第三に、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合膜構造体は、構造水及び少量のアルカリ金属イオンをさらに含み、サイクル中に電極構造を安定化させることができる。第四に、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合膜構造体は自立構造であるため、電池電極は複合膜構造体のみを含んでいてもよく、集電体、導電剤及びバインダーは不要であり、電池電極の軽量化を図ることができる。第五に、遷移金属酸化物/カーボンナノチューブ複合電極における活性物質の平均粒径は10nmであり、リチウムイオンの拡散経路を短くし、リチウムイオンの拡散時間を短くすることができる。
【0071】
本発明により提供される電池電極の製造方法は、以下の利点を有する。第一に、この方法には、遷移金属オキシ酸アニオンと予め酸化されたカーボンナノチューブとを反応させて遷移金属酸化物ナノ粒子を形成し、反応中連続的に撹拌して混合して遷移金属酸化物を電池電極に均一に分布させ、且つC−O−M化学結合によって遷移金属酸化物をカーボンナノチューブと密接に結合させる。第二に、電池電極の製造方法は、遷移金属酸素酸基と予め酸化されたカーボンナノチューブとを均一に混合し、室温で一定時間撹拌するだけで、他の試薬や操作が不要であり、反応終了後に有毒物質が発生しない。簡単であり、且つ環境にやさしい。
【0072】
本発明により提供されるハイブリッドエネルギー貯蔵装置は、電池特性と容量特性とを有し、容量減衰率が低く、サイクル安定性と倍率性能が優れている。
【課題】本発明は、遷移金属酸化物の分散性がよく、凝集が起こりにくく、電極から脱落しにくい電池電極、電池電極の製造方法およびハイブリッドエネルギー貯蔵装置を提供する。
【解決手段】本発明の電池電極は、複数のカーボンナノチューブ及び遷移金属酸化物ナノ粒子を含み、遷移金属酸化物ナノ粒子及び複数のカーボンナノチューブはC−0−M化学結合で結合され、Mは遷移金属を表す。