特許第6556940号(P6556940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556940通信回路を搭載した外装アセンブリー要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556940
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】通信回路を搭載した外装アセンブリー要素
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/28 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   G04B19/28 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-512903(P2018-512903)
(86)(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公表番号】特表2018-526652(P2018-526652A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】EP2016070388
(87)【国際公開番号】WO2017042053
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年3月22日
(31)【優先権主張番号】15184594.8
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】キスリング,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フェリ,イヴァン
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02228695(EP,A1)
【文献】 国際公開第2005/065404(WO,A2)
【文献】 米国特許第02252647(US,A)
【文献】 特開平09−119986(JP,A)
【文献】 特開平10−160872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0140058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器(1)のベゼル(100)であって、
第1の材料を含み、通信回路(102)が配置される溝(104)があり、
前記通信回路(102)は、前記溝を充填するポリマー材料(106)によってオーバーモールドされ
さらに、分のインジケーションを可能にする表盤トレーン要素(108)を有し、
この表盤トレーン要素は、第2の材料によって作られた細長材(109)を有し、このリーフ材である細長材(109)には、インデックスの数字(110)を形成する厚みが大きい領域があり、
前記表盤トレーン要素(108)は、前記通信回路(102)とポリマー材料で作られた前記オーバーモールド(106)の間に位置しており、
前記厚みが大きい領域が前記オーバーモールドの表面と同じ高さの面一構成であるように構成している
ことを特徴とするベゼル
【請求項2】
計時器(1)のベゼル(100)であって、
第1の材料を含み、通信回路(102)が配置される溝(104)があり、
前記通信回路(102)は、前記溝を充填するポリマー材料(106)によってオーバーモールドされ
さらに、分のインジケーションを可能にする表盤トレーン要素(108)を有し、
この表盤トレーン要素は、第2の材料によって作られた細長材(109)を有し、このリーフ材である細長材(109)には、インデックスの数字(110)を形成する厚みが大きい領域があり、
前記通信回路(102)は、上に前記表盤トレーン要素(108)が配置される第1のオーバーモールド(106a)と、及び前記表盤トレーン要素上に配置されている第2のオーバーモールド(106b)とによってカバーされており、
前記第1及び第2のオーバーモールドは、前記厚みが大きい領域が前記第2のオーバーモールドの表面と同じ高さの面一構成となっている
ことを特徴とするベゼル。
【請求項3】
前記細長材を形成する前記第2の材料は、光透過性の材料であり、
前記表盤トレーン要素(108)は、さらに、発光性の材料によって作られた第2の細長材(111)を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のベゼル
【請求項4】
前記表盤トレーン要素(108)は、金属、セラミックス、木材及び石からなる群から選ばれる材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のベゼル
【請求項5】
前記表盤トレーン要素(108)は、発光性の色素が混入しているポリマーを含む材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のベゼル
【請求項6】
計時器(1)のベゼル(100)であって、
第1の材料を含み、通信回路(102)が配置される溝(104)があり、
前記通信回路(102)は、前記溝を充填するポリマー材料(106)によってオーバーモールドされ
前記オーバーモールドを形成する前記ポリマー材料は、空欠空間(107)を形成するようにオーバーモールドされ、
前記空欠空間は、発光性の材料(112)で充填される
ことを特徴とするベゼル
【請求項7】
非導電性の材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のベゼル
【請求項8】
ミドル部(20)を有するケース(2)を有する計時器(1)であって、
前記ミドル部(20)は、裏部(3)と風防(4)によって閉じられ、かつ、請求項1〜7のいずれかに記載のベゼル(100)が取り付けられ
ことを特徴とする計時器。
【請求項9】
前記ベゼルと前記ミドル部は、一体化された単一の部品のみを形成している
ことを特徴とする請求項に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の材料を含む計時器の外装アセンブリー要素に関する。
【0002】
本発明は、計時器用の回転式ベゼルに関する。
【背景技術】
【0003】
回転するベゼルシステムや回転しないベゼルシステムが知られている。回転式ベゼルシステムは、ユーザーから見える面である上側面と、下側面とを有する環状のベゼルを有する。このベゼルは、回転式ベゼルシステムのためのばね要素と連係する歯列システムを有する。このばね要素とベゼルの歯列の間の連係によって、ステップごとに回転可能なベゼルが可能になる。
【0004】
通信機能の開発が進歩したために、通信回路のための空間を確保することが必要になった。1つの手法は、このような通信回路をベゼルに搭載することである。このために、通信回路やアンテナが配置される溝を形成する空欠空間があるようなベゼルが知られている。そして、このアセンブリー全体がカバーによって密封される。
【0005】
溝を樹脂で充填して、通信回路及びその中のアンテナの運動を制限することができる。
【0006】
しかし、この構成には複雑であるという短所がある。この構成には、溝を閉じるためのカバーを必要とし、そして、回路とアンテナである2つの構成部品において通信デバイスを必要とするからである。また、この構成では、通信回路やそこに格納されたデータを取り出そうとする悪意を持った人が容易に分解してしまうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、通信回路が取り付けられ、単純であり密封されセキュリティ度合いが高いようなベゼルシステムを提供することを提案することによって、従来技術の短所を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、計時器の外装アセンブリー要素に関し、これは、第1の材料を含み、通信回路が配置される溝があり、前記通信回路は、前記溝を充填するポリマー材料によってオーバーモールドされる。
【0009】
第1の好ましい実施形態において、当該外装アセンブリー要素は、さらに、分のインジケーションを可能にする表盤トレーン要素を有し、この表盤トレーン要素は、第2の材料によって作られた細長材を有し、この細長材には、インデックスの数字を形成する厚みが大きい領域がある。
【0010】
第2の好ましい実施形態において、前記細長材を形成する前記第2の材料は、光透過性の材料であり、前記表盤トレーン要素は、さらに、発光性の材料によって作られた第2の細長材を有する。
【0011】
第3の好ましい実施形態において、前記表盤トレーン要素は、前記通信回路とポリマー材料で作られた前記オーバーモールドの間に位置しており、前記厚みが大きい領域が前記オーバーモールドの表面と同じ高さの面一構成であるように構成している。
【0012】
第4の好ましい実施形態において、前記通信回路は、上に前記表盤トレーン要素が配置される第1のオーバーモールドと、及び前記表盤トレーン要素上に配置されている第2のオーバーモールドとによってカバーされており、前記第1及び第2のオーバーモールドは、前記厚みが大きい領域が前記第2のオーバーモールドの表面と同じ高さの面一構成となっている。
【0013】
第5の好ましい実施形態において、前記表盤トレーン要素は、金属、セラミックス、木材及び石からなる群から選ばれる材料によって作られている。
【0014】
第6の好ましい実施形態において、前記表盤トレーン要素は、発光性の色素が混入しているポリマーを含む材料によって作られている。
【0015】
第7の好ましい実施形態において、前記オーバーモールドを形成する前記ポリマー材料は、空欠空間を形成するようにオーバーモールドされ、前記空欠空間は、発光性の材料で充填される。
【0016】
本発明は、さらに、ミドル部を有するケースを有する計時器に関し、前記ミドル部は、裏部と風防によって閉じられ、かつ、ベゼルが取り付けられ、前記ベゼルは、前の請求項のいずれかに記載の外装アセンブリー要素であり、前記溝は環状である。
【0017】
第1の好ましい実施形態において、前記ベゼルと前記ミドル部は、一体化された単一の部品のみを形成している。
【0018】
もっぱら非限定的な例として与えられ添付の図面に示されている本発明の少なくとも1つの実施形態についての下記の詳細な説明を読むことで、本発明に係るベゼルシステムの目的、利点及び特徴が一層と明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の全体図である。
図2】本発明に係る外装アセンブリー要素としてはたらくベゼルについての詳細図である。
図3】本発明に係る外装アセンブリー要素としてはたらくベゼルについての詳細図である。
図4】本発明の第1の実施形態の第1の代替形態を示している。
図5】本発明の第1の実施形態の第1の代替形態を示している。
図6】本発明の第1の実施形態の第2の代替形態を示している。
図7】本発明の第1の実施形態の変種を示している。
図8】本発明に係る第2の実施形態を示している。
図9】本発明に係る第2の実施形態を示している。
図10】ベゼルのミドル部が単一の部品のみによって形成されている場合の本発明を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、組み立てが容易な回転式ベゼルシステムを設けることを伴う大きな創造性のある考えから発展したものである。
【0021】
図1及び2は、本発明に係るベゼル100のような外装アセンブリー要素10を示しており、このベゼル100は、裏部3と風防4によって閉じられるケース2を有する計時器1にマウントされている。このベゼル100は、環状の部品であり、ユーザーから見える上側面100aと、下側面100bを有する。このベゼル100は、プラスチック、セラミックス材料、又は他の非導電性の材料によって作ることができる。
【0022】
このベゼル100をミドル部のレベルにてマウントすることができ、このベゼル100を回転させることができ、また、回転しないようにすることができる。回転式ベゼル100の場合には、ばねキャッチアセンブリー又はラチェットロックシステム(図示せず)を設ける。このばねキャッチアセンブリーは、ばね手段と歯付き要素を有する。これらのばねキャッチアセンブリーの要素の一方は、ミドル部に対して角度的に固定され、他方は、ベゼル100に対して角度的に固定され、これによって、ミドル部に対してベゼルを角度的にインデクシングすることが可能になる。
【0023】
当該計時器は、ベゼル100の組み立てのために、肩部21があるミドル部20を有し、この肩部21は、側壁22と基礎23によって定められる。この肩部は、ベゼルのための台座としてはたらく。一般的には、側壁22は、側壁22の周部全体にわたって延在している隆起部24を有する。この隆起部24が基礎23と壁22と協同して、保持溝25を定めることができる。この保持溝25によって、後のベゼルの組み立て時にベゼルを保持溝25内に入れ込んで保持することが可能になる。
【0024】
好ましいことに、本発明によれば、図2及び3に示すように、ベゼル100に通信回路102が取り付けられる。このために、ベゼルは、上側面100aのレベルにて溝104があるように構成しており、この溝104も環状である。すなわち、溝104が上側面100aに沿って延在している。通信回路102は、支持体を有する。すなわち、ベゼルにある溝104の形と同様な形、すなわち、環状の形、を有するプリント回路、を有する。この場合において、プリント回路は、スパイラルアンテナやシステムを機能させることを可能にする異なる電子部品のための基材としてはたらく。
【0025】
そして、このアセンブリー全体が、台座としてはたらくベゼル100の溝104内に配置される。
【0026】
図3に示すように、アセンブリー全体を閉じるために、溝104内にゴムタイプのポリマー材料が直接オーバーモールドされて、オーバーモールド106を形成する。この古典的なオーバーモールド操作によって、リング状の通信回路102を完全にカバーするように意図されている。このような完全なカバーによって、一方では、システムを良好に密封することを可能にする。なぜなら、ポリマー材料が溝104の全体内に挿入され、これによって、いずれの液体も入ることを防ぐからである。
【0027】
この構成の第2の利点は、このベゼルのセキュリティを改善させることができることである。実際に、このベゼル100のための通信回路102は、非接触NFCタイプの通信プロトコル又は他の無線通信手段を用いることができる。また、商品の認識(又はトラッキング)のための電子タグとしても、このシステムを用いることができる。このプロトコルは主に支払い機能のために用いられ、このことは、この回路はセンシティブなデータを含んでいることを意味する。結果的に、それらを保護することが必要である。非接触通信プロトコルが非常に近い範囲までしか及ばないので、センシティブなデータの回復が直接回路に対して行われる。結果的に、ポリマーを通信回路102上にオーバーモールドすることによって、情報の回復がより困難になる。なぜなら、通信回路102にアクセスできるようにするためにはポリマーを溶かさなければならないからである。
【0028】
また、オーバーモールド操作の存在は、適応性のあるベゼルを設けることができることを意味している。すなわち、通信回路ではないものを持つことを考えることができる。実際に、ベゼルのレベルにて、表盤トレーンのインジケーション及び/又は他の技術的ないし装飾的なインジケーションを設けることを考えることができる。
【0029】
好ましい実施形態によると、本発明に係るベゼル100は、さらに、表盤トレーン要素108を有する。図4に示すように、この表盤トレーン要素108は、細長材ないしラメラ109の形態にて設けられ、その寸法構成によって、ベゼル100の溝104内に位置することができる。ベゼル100の場合には、細長材109の形は環状である。この細長材109は、プラスチック又は金属性の材料、木材のような有機材料、サファイアやルビーのような結晶質、セラミックス、又は発光性(リン光性や蛍光性)の要素が組み込まれたポリマー材料によって作られたリングの形態にて設けられる。そして、表盤トレーンのインデックスの数字110がレリーフ状に形成される。すなわち、厚みが大きい領域を作るように形成される。そして、このリング109が溝内に巧妙に配置される。
【0030】
この表盤トレーンリング108の設置において、2つの代替形態が可能である。
【0031】
第1の代替形態は、表盤トレーン要素108が溝104内に位置しているときにレリーフ110の高さがベゼル100の上側面100aの平面と同じ高さの面一構成となるように溝104の寸法構成を形成することを伴う。そして、オーバーモールド106を形成するポリマーによってアセンブリー全体がオーバーモールドされる。図5に示すように、オーバーモールドの際にインデックスの数字110をこのような同じ高さの面一構成にすることによって、レリーフがユーザーから見えるようになる。
【0032】
第2の代替形態は、表盤トレーン要素108を設置する前に通信回路102上に第1のポリマー層ないしオーバーモールド106aをオーバーモールドすることを伴う。そして、第2のポリマー層ないしオーバーモールド106bを堆積させてベゼル100の溝104内に表盤トレーン要素108を保持するように、第2のオーバーモールド操作を行う。図6に示すように、堆積させる第1のポリマー層106aの厚みは、表盤トレーン要素108のレリーフがベゼル100の上側面100aの平面と同じ高さの面一構成となるように定められる。
【0033】
これらの2つの代替形態の変種の1つにおいて、表盤トレーン要素108は、光透過性の材料によって作られた第1の表盤トレーン細長材109と、発光性のリーフ材となる表盤トレーン細長材109の下に配置されている第2のリーフ材111とを有するように設計されている。したがって、表盤トレーン細長材109と発光性の色素の材料の混合が可能ではない場合にも、図7に示すように、発光性の外観を有することができる。
【0034】
図8及び9に示している別の好ましい実施形態によると、ベゼル100上に表盤トレーンのマーキングがある。このために、ベゼル100の表面に空欠部107を形成するために、ポリマーによる溝のオーバーモールドを行う。これらの空欠部107の形は、好ましくは、表盤トレーンのインデックスの数字の形である。これらの空欠部107の目的は、インクのような材料の層112を充填することである。このような材料の層112は、スプレー又はシルクスクリーン印刷によっても堆積させることができる。このインクは、要件に応じて、発光性であることができ、また、非発光性であることができる。また、空欠空間をアモルファス金属のような金属で充填することができる。
【0035】
図10に示している別の実施形態において、ベゼルが一体化されていることを考えることができる。このために、ミドル部は、このミドル部の面の少なくとも1つがベゼルとしてはたらくことができるように構成しており、このミドル部は、ベゼルのミドル部と呼ばれる。この実施形態において、ベゼルとしてはたらくミドル部の面には、空欠空間が形成され、この空欠空間に通信回路が配置される。
【0036】
なお、上で概説した本発明の異なる実施形態に対して、添付の請求の範囲によって定められる本発明のフレームワークから逸脱せずに、当業者にとって明らかな様々な改変及び/又は改善及び/又は組み合わせを行うことができることを理解できるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10