【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [発行者] The Institute of Electrical Engineers of Japan [刊行物名] The 29th International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs(ISPSD)講演要旨集 [発行年月日] 2017年5月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [研究集会名] The 29th International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs(ISPSD)[主催者名] The Institute of Electrical Engineers of Japan [開催日] 2017年6月1日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電力変換回路における総合損失のうち、前記MOSFETをターンオフしたときのターンオフ損失、前記MOSFETをターンオンしたときのターンオン損失及び前記フリーホイールダイオードのリカバリ損失の3つの損失の和が占める割合が、前記フリーホイールダイオードの導通損失が占める割合よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおいて、前記n型コラム領域の不純物総量は、前記p型コラム領域の不純物総量よりも多いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおいて、前記n型コラム領域の不純物総量は、前記p型コラム領域の不純物総量と等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおいて、前記p型コラム領域の不純物総量は、前記n型コラム領域の不純物総量の1.00倍よりも多く、1.03倍と等しいかそれよりも少ないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおいて、前記第3期間における単位時間当たりの前記ドレイン電流の減少量は、前記第1期間における単位時間当たりの前記ドレイン電流の減少量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおいて、前記MOSFETをターンオフしたとき、ミラー期間終了後にゲート・ソース間電圧が一時的に上昇する期間が出現するように動作することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおける前記半導体基体は、前記n型コラム領域及び前記p型コラム領域の表面に形成されたp型のベース領域と、前記ベース領域の表面に形成されたn型のソース領域とをさらに有し、
前記MOSFETは、
平面的に見て前記n型コラム領域が位置する領域内に、前記ベース領域の最深部よりも深い深さ位置まで形成され、かつ、前記ソース領域の一部が内周面に露出するように形成されたトレンチと、
前記トレンチの内周面に形成されたゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内部に埋め込まれてなるゲート電極とをさらに有するトレンチゲート型のMOSFETであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電力変換回路。
前記MOSFETにおける前記半導体基体は、前記n型コラム領域の一部及び前記p型コラム領域の全部の表面に形成されたp型のベース領域と、前記ベース領域の表面に形成されたn型のソース領域と、前記n型コラム領域の表面のうち前記ベース領域が形成されていない部分に形成されたn型の表面高濃度拡散領域とを有し、
前記MOSFETは、
前記MOSFETの第1主面側に、前記ソース領域と前記n型コラム領域とに挟まれた前記ベース領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極をさらに有するプレーナーゲート型のMOSFETであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電力変換回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明の発明者らは、電力変換回路におけるMOSFETのスーパージャンクション構造のチャージバランスにバラツキが生じると、ターンオフしたときのMOSFETのドレイン電流の波形に比較的大きなコブ波形(ドレイン電流が減少し始めてからドレイン電流が最初に0となるまでの間に、ドレイン電流が減少する第1期間と、ドレイン電流が増加する第2期間と、ドレイン電流が再び減少する第3期間とがこの順番に出現する波形、
図4及び
図5参照)が出現する場合があり、このようなコブ波形によって(ドレイン・ソース間電圧のサージ電圧が小さくなるというメリットはあるものの)ターンオフ損失が大きくなってしまう場合がある、という問題があることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、ターンオフしたときのドレイン電流のコブ波形を比較的小さくすることができ、ターンオフ損失が大きくなり難い電力変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の電力変換回路は、n型コラム領域及びp型コラム領域を有し、前記n型コラム領域及び前記p型コラム領域でスーパージャンクション構造が構成された半導体基体を有するMOSFETと、フリーホイールダイオードと、誘導性負荷とを備え、前記MOSFETのスイッチング周波数は、10kHz以上であり、前記MOSFETは、ターンオフしたときに、ドレイン電流の波形が、前記ドレイン電流が減少し始めてから前記ドレイン電流が最初に0となるまでの間に、前記ドレイン電流が減少する第1期間と、前記ドレイン電流が増加する第2期間と、前記ドレイン電流が再び減少する第3期間とがこの順番に出現するように動作し、前記フリーホイールダイオードは、ライフタイムコントロールされたSi−FRD、又は、SiC−SBDであり、前記電力変換回路の定格最大負荷又は定格最大回生電流で前記電力変換回路を運転した場合において、前記フリーホイールダイオードの順方向電流のピーク時に、前記順方向電流の電流値を前記フリーホイールダイオードの活性領域の面積で割った電流密度は、前記フリーホイールダイオードが前記Si−FRDの場合には、200A/cm
2〜400A/cm
2の範囲内にあり、前記フリーホイールダイオードが前記SiC−SBDの場合には、400A/cm
2〜1500A/cm
2の範囲内にあることを特徴とする電力変換回路。
【0009】
[2]本発明の電力変換回路においては、前記フリーホイールダイオードは、ライフタイムコントロールされたSi−FRDであることが好ましい。
【0010】
[3]本発明の電力変換回路においては、前記フリーホイールダイオードは、SiC−SBDであることが好ましい。
【0011】
[4]本発明の電力変換回路においては、前記フリーホイールダイオードは、MPS構造又はJBS構造を有することが好ましい。
【0012】
[5]本発明の電力変換回路においては、前記電力変換回路における総合損失のうち、前記MOSFETをターンオンしたときのターンオフ損失、前記MOSFETをターンオフしたときのターンオン損失及び前記フリーホイールダイオードのリカバリ損失の3つの損失の和が占める割合が、前記フリーホイールダイオードの導通損失が占める割合よりも大きいことが好ましい。
【0013】
[6]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいて、前記n型コラム領域の不純物総量は、前記p型コラム領域の不純物総量よりも多いことが好ましい。
【0014】
[7]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいて、前記n型コラム領域の不純物総量は、前記p型コラム領域の不純物総量と等しいことが好ましい。
【0015】
[8]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいて、前記p型コラム領域の不純物総量は、前記n型コラム領域の不純物総量の1.00倍よりも多く、1.03倍と等しいかそれよりも少ないことが好ましい。
【0016】
[9]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいて、前記第3期間における単位時間当たりの前記ドレイン電流の減少量は、前記第1期間における単位時間当たりの前記ドレイン電流の減少量よりも小さいことが好ましい。
【0017】
[10]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいて、前記MOSFETをターンオフしたとき、ミラー期間終了後にゲート・ソース間電圧が一時的に上昇する期間が出現するように動作することが好ましい。
【0018】
[11]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおける前記半導体基体は、前記n型コラム領域及び前記p型コラム領域の表面に形成されたp型のベース領域と、前記ベース領域の表面に形成されたn型のソース領域とをさらに有し、前記MOSFETは、平面的に見て前記n型コラム領域が位置する領域内に、前記ベース領域の最深部よりも深い深さ位置まで形成され、かつ、前記ソース領域の一部が内周面に露出するように形成されたトレンチと、前記トレンチの内周面に形成されたゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内部に埋め込まれてなるゲート電極とをさらに有するトレンチゲート型のMOSFETであることが好ましい。
【0019】
[12]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおける前記半導体基体は、前記n型コラム領域の一部及び前記p型コラム領域の全部の表面に形成されたp型のベース領域と、前記ベース領域の表面に形成されたn型のソース領域と、前記n型コラム領域の表面のうち前記ベース領域が形成されていない部分に形成されたn型の表面高濃度拡散領域とを有し、前記MOSFETは、前記MOSFETの第1主面側に、前記ソース領域と前記n型コラム領域とに挟まれた前記ベース領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極をさらに有するプレーナーゲート型のMOSFETであることが好ましい。
【0020】
[13]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいては、前記半導体基体の一方面にソース電極が形成されており、かつ、前記半導体基体の他方面にドレイン電極が形成されており、前記ソース電極側における前記p型コラム領域の幅は、前記ドレイン電極側における前記p型コラム領域の幅よりも広く、前記ソース電極側における前記n型コラム領域の幅は、前記ドレイン電極側における前記n型コラム領域の幅よりも狭いことが好ましい。
【0021】
[14]本発明の電力変換回路においては、前記MOSFETにおいては、前記半導体基体の一方面にソース電極が形成され、かつ、前記半導体基体の他方面にドレイン電極が形成されており、前記ソース電極側においては、前記p型コラム領域の不純物濃度が、前記n型コラム領域の不純物濃度よりも高く、前記ドレイン電極側においては、前記p型コラム領域の不純物濃度が、前記n型コラム領域の不純物濃度よりも低いことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電力変換回路によれば、電力変換回路の定格最大負荷又は定格最大回生電流で運転した場合において、フリーホイールダイオードの順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオードの活性面積で割った電流密度は、Si−FRDの場合には200A/cm
2以上、SiC−SBDの場合に400A/cm
2以上であり、流れる電流に対してフリーホイールダイオードの活性領域の面積が比較的小さいことから、フリーホイールダイオードの接合容量Cjが小さくなる。従って、MOSFETをターンオフしたときの第2期間にフリーホイールダイオードからMOSFETに向かって流れる電流成分が小さくなるため、MOSFETのドレイン電流のコブ波形を比較的小さくすることができ(
図5(a)参照。)、その結果、ターンオフ損失を小さくすることができる。
【0023】
また、本発明の電力変換回路によれば、上記したように、フリーホイールダイオードの活性領域の面積が比較的小さいことから、フリーホイールダイオードの接合容量Cjが小さくなる。従って、フリーホイールダイオードのリカバリ電流が小さくなるため(
図7の破線Bで囲まれた領域参照。)、フリーホイールダイオードのリカバリ損失を小さくすることができる。また、フリーホイールダイオードのリカバリ電流が小さくなるため、MOSFETをターンオンしたときのドレイン電流のピーク電流が小さくなり(
図6の破線Aで囲まれた領域参照。)、MOSFETのターンオン損失を小さくすることができる。
【0024】
また、本発明の電力変換回路によれば、上記電流密度は、Si−FRDの場合には400A/cm
2以下であり、SiC−SBDの場合には1500A/cm
2以下であることから、フリーホイールダイオードの活性領域の面積が小さくなりすぎることがない。このため、半導体素子等から発する熱を外部に放出し易くなるため、フリーホイールダイオードが高温になることを防ぐことができ、半導体素子等から発する熱を外部へ放出する際の熱抵抗を比較的小さくすることができる。その結果、スイッチング損失や導通損失によって発生する熱を効率よく外部へ排出することができる。
また、フリーホイールダイオードの活性領域の面積が小さくなりすぎることがないため、電源に接続されていない状態の電力変換回路を電源に接続したときなどに流れる、ピーク値が大きい電流(ラッシュ電流)が、フリーホイールダイオードを通過するときでも、IFSM破壊が起こることを防ぐことができる。
【0025】
また、本発明の電力変換回路によれば、MOSFETのスイッチング周波数は、10kHz以上であるため、総合損失(=導通損失+スイッチング損失)に対する導通損失の割合よりも、スイッチング損失(ターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリ損失を含む)の割合の方が大きくなる。このため、上記したような構成としてターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリ損失を小さくすることにより、総合損失を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の電力変換回路について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の回路構成やグラフを厳密に反映したものではない。
【0028】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る電力変換回路1の構成について
実施形態1に係る電力変換回路1は、DC−DCコンバータやインバータ等の構成要素であるチョッパ回路(昇圧チョッパ回路)である。実施形態1に係る電力変換回路1は、
図1に示すように、MOSFET100、フリーホイールダイオード200と、誘導性負荷(リアクトル)300と、電源400と、平滑コンデンサ500とを備える。実施形態1に係る電力変換回路1の外部端子には負荷600が接続されている。
【0029】
MOSFET100は、電源400から誘導性負荷300に供給する電流及び電源400から供給される電流を制御する。具体的には、MOSFET100は、ドライブ回路(図示せず)からMOSFET100のゲート電極に印加されるクロック信号に応答してスイッチングし、オン状態になると、誘導性負荷300と電源400の負極との間を導通させる。MOSFET100の具体的な構成については、後述する。
フリーホイールダイオード200は、電源400から誘導性負荷300に供給する電流の整流動作を行う。フリーホイールダイオード200の具体的な構成については後述する。
誘導性負荷300は、流れる電流によって形成される磁場にエネルギーを蓄えることができる受動素子である。
【0030】
電源400の陽極(+)は、誘導性負荷300の一方端と電気的に接続されており、電源400の負極(−)は、MOSFET100のソース電極と電気的に接続されている。また、MOSFET100のドレイン電極は、誘導性負荷300の他方端及びフリーホイールダイオード200のアノード電極と電気的に接続されている。
【0031】
2.実施形態1におけるMOSFET100の構成について
実施形態1におけるMOSFET100は、
図2に示すように、半導体基体110と、ゲート絶縁膜124と、ゲート電極126と、層間絶縁膜128と、ソース電極130と、ドレイン電極132とを備えるトレンチゲート型のMOSFETである。MOSFET100のドレイン・ソース間耐圧は、300V以上であり、例えば600Vである。MOSFET100のスイッチング周波数は、10kHz以上である。
【0032】
半導体基体110は、低抵抗半導体層112と、低抵抗半導体層112上に形成され低抵抗半導体層112よりも不純物濃度が低いn型のバッファ層113、バッファ層113上に水平方向に沿って交互に配列されたn型コラム領域114及びp型コラム領域116と、n型コラム領域114及びp型コラム領域116の表面(表面上)に形成されたp型のベース領域118と、ベース領域118の表面に選択的に形成されたn型のソース領域120を有し、n型コラム領域114及びp型コラム領域116でスーパージャンクション構造117が構成されている。なお、バッファ層113及びn型コラム領域114は一体的に形成されており、バッファ層113とn型コラム領域114とでn型半導体層115を構成している。
【0033】
半導体基体110において、n型コラム領域114の不純物総量は、p型コラム領域116の不純物総量よりも多く、具体的には、n型コラム領域114の不純物総量は、p型コラム領域116の不純物総量の1.05倍〜1.15倍の範囲内にあり、例えば、1.10倍である。なお、n型コラム領域114の不純物総量をp型コラム領域116の不純物総量よりも多くするためには、n型コラム領域114の不純物濃度をp型コラム領域116の不純物濃度よりも高くしてもよいし、n型コラム領域114の幅をp型コラム領域116の幅よりも広くしてもよい。
【0034】
なお、「不純物総量」とは、MOSFET内の構成要素(n型コラム領域又はp型コラム領域)の不純物(n型不純物又はp型不純物)の総量をいう。
【0035】
ソース電極130側におけるp型コラム領域116の幅は、ドレイン電極132側におけるp型コラム領域116の幅よりも広く、ソース電極130側におけるn型コラム領域114の幅は、ドレイン電極132側におけるn型コラム領域114の幅よりも狭い。p型コラム領域の幅(断面積)をソース電極側に向かうに従って非線形的に大きくし、n型コラム領域の幅(断面積)をソース電極側に向かうに従って非線形的に小さくすることもできる。この場合には、(1)ゲート周辺がp過多になり、n型コラム領域114が空乏化されやすくなるため、ドレイン電圧が上昇してもゲート周辺のn型コラム領域114の電位が高くなり難くなる。また、(2)n型コラム領域114における空乏化されていない領域とゲート電極との間隔が比較的長くなり、帰還容量Crss(ゲート・ドレイン間容量Cgdと等しい)が比較的小さくなるため、MOSFETをターンオフしたときにドレイン電圧が上昇するのに伴ってn型コラム領域114(n型コラム領域のうちの空乏化されていない領域)の電位が上昇しても、ゲート電極がn型コラム領域の電位変化の影響を受け難くなる。その結果、ゲート周辺のチャージバランスのバラツキがあったとしても、ターンオフしたときのスイッチング特性のバラツキを従来よりも小さくすることができる、という効果を得ることができる。
n型コラム領域114及びp型コラム領域116の不純物濃度はそれぞれ、深さによらず一定になっている。
【0036】
n型コラム領域114、p型コラム領域116、ソース領域120及びゲート電極126はいずれも、平面的に見てストライプ状に形成されている。
【0037】
低抵抗半導体層112の厚さは、例えば100μm〜400μmの範囲内にあり、低抵抗半導体層112の不純物濃度は、例えば1×10
19cm
−3〜1×10
20cm
−3の範囲内にある。n型半導体層115の厚さは、例えば5μm〜120μmの範囲内にある。n型半導体層115の不純物濃度は例えば5×10
13cm
−3〜1×10
16cm
−3の範囲内にある。p型コラム領域116の不純物濃度は例えば5×10
13cm
−3〜1×10
16cm
−3の範囲内にある。ベース領域118の最深部の深さ位置は、例えば0.5μm〜4.0μmの範囲内にあり、ベース領域118の不純物濃度は、例えば5×10
16cm
−3〜1×10
18cm
−3の範囲内にある。ソース領域120の最深部の深さ位置は、例えば0.1μm〜0.4μmの範囲内にあり、ソース領域120の不純物濃度は、例えば5×10
19cm
−3〜2×10
20cm
−3の範囲内にある。
【0038】
トレンチ122は、平面的に見てn型コラム領域114が位置する領域内に、ベース領域118の最深部よりも深い深さ位置まで形成され、かつ、ソース領域120の一部が内周面に露出するように(露出する位置に)形成されている。トレンチ122の深さは、例えば3μmである。
【0039】
ゲート電極126は、トレンチ122の内周面に形成されたゲート絶縁膜124を介してトレンチ122の内部に埋め込まれてなる。ゲート絶縁膜124は、熱酸化法により形成された厚さが例えば100nmの二酸化珪素膜からなる。ゲート電極126は、CVD法及びイオン注入法により形成された低抵抗ポリシリコンからなる。
【0040】
層間絶縁膜128は、ソース領域120の一部、ゲート絶縁膜124及びゲート電極126を覆うように形成されている。層間絶縁膜128は、CVD法により形成された厚さが例えば1000nmのPSG膜からなる。
【0041】
ソース電極130は、ベース領域118、ソース領域120の一部、及び、層間絶縁膜128を覆うように形成され、ソース領域120と電気的に接続されている。ドレイン電極132は、低抵抗半導体層112の表面上に形成されている。ソース電極130は、スパッタ法により形成された厚さが例えば4μmのアルミニウム系の金属(例えば、Al−Cu系の合金)からなる。ドレイン電極132は、Ti−Ni−Auなどの多層金属膜により形成されている。多層金属膜全体の厚さは、例えば0.5μmである。
【0042】
3.実施形態1におけるフリーホイールダイオード200の構成について
実施形態1に係るフリーホイールダイオード200は、
図3に示すように、半導体基体210と、層間絶縁膜220と、アノード電極230と、カソード電極240とを備える、ライフタイムコントロールされたSi−FRD(シリコン−ファスト・リカバリ・ダイオード)である。
【0043】
アノード電極230は、半導体基体210の第1主面(
図3の上方の主面)上に形成されており、活性領域ARにおいて、半導体基体210(p型高濃度領域218及びp型半導体層216)と接している。周辺領域においては、半導体基体210の表面上に層間絶縁膜220が形成されている。カソード電極240は、半導体基体210の第2主面(
図3の下方の主面)上に形成されている。
【0044】
半導体基体210は、低抵抗半導体層212と、低抵抗半導体層212上に形成され低抵抗半導体層212よりも不純物濃度が低いn型半導体層214と、n型半導体層214の表面に形成されたp型半導体層216と、p型半導体層216の表面に選択的に形成され、かつ、p型半導体層216を貫通してn型半導体層214に達する深さで形成されたp型高濃度領域218とを有し、n型半導体層214とp型半導体層216の間、及び、n型半導体層214とp型高濃度領域218との間でPN接合が形成されている。
【0045】
フリーホイールダイオード200は、電子線照射、重金属の拡散、局所ライフタイム制御(Heやプロトン照射)等によりライフタイムコントロールされている。
【0046】
電力変換回路1の定格最大負荷で電力変換回路1を運転した場合において、フリーホイールダイオード200の順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオード200の活性領域ARの面積(有効面積)で割った電流密度は、200A/cm
2〜400A/cm
2の範囲内にある。
【0047】
なお、フリーホイールダイオード200の活性領域ARは、平面的に見て実質的にダイオードとして有効な領域(アノード電極と半導体基体とが接している領域)のことをいう。また、定格最大負荷とは、電力変換回路が外部に電力を供給できるときの最大の負荷のことをいう。
【0048】
なお、電力変換回路が、回生運転を行う回路の場合には、電力変換回路の定格最大負荷又は定格最大回生電流で電力変換回路を運転した場合において、フリーホイールダイオードの順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオードの活性領域ARの面積で割った電流密度は、200A/cm
2〜400A/cm
2の範囲内にある。
なお、定格最大回生電流とは、回生運転(負荷がブレーキをかけるなどした場合において、負荷で発電し、発電された電力を電源側に逆潮流として戻す運転)をしたときに、負荷から電源に向かって電力が供給できるときの最大の電流のことをいう。
【0049】
上記したような回生運転を行う電力変換回路の場合において、同一の電力変換回路を用いて通常運転から回生運転に入る場合、(降圧チョッパ又は昇圧チョッパとなるように)結線を変更して使用する(例えば、従来の電力変換回路900において、通常運転時においては、
図12の左から右に向かって電力が供給され、回生運転時においては、
図12の右から左に向かって電力が供給される。)。
この場合であっても、MOSFETとフリーホイールダイオードの役割は、通常運転の場合とほとんど変わらないため、MOSFETのターンオフ時に、電流波形にコブ波形が出現することや、そのコブ波形の大きさがフリーホイールダイオードの接合容量によって影響を受ける点も、通常運転の場合とほとんど同様である。また、ダイオードの面積が大きければ、リカバリ電流も大きくなることも通常運転の場合と同様である。
従って、回生運転を行うことを前提にした回路においては、回生運転時の定格最大電流におけるフリーホイールダイオードの電流密度の条件は、通常運転時における電流密度の条件と同じになる。
【0050】
4.実施形態1に係る電力変換回路1の動作について
(1)オン状態(
図4の時刻t1〜t2、t5〜t6参照)
電力変換回路1(
図1参照。)のMOSFET100がオン状態のとき、電源400の正極(+)から誘導性負荷300及びMOSFET100を経由して負極(−)に至る電流経路が形成され、当該電流経路に電流が流れる。MOSFET100においては、ベース領域118にチャネルが形成され、ドレイン電極132とソース電極130とが導通し、ドレイン電流Idは徐々に大きくなっていく(
図4(a)参照。)。一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsは0のままである。
フリーホイールダイオード200においては、アノード電極側のp型領域とカソード電極側のn型領域とのpn接合面から生じる空乏層が広がっている。従って、順方向電流Ifは流れておらず(0になっている)、順方向電圧−Vfが所定の電圧値となっている(
図4(b)参照。)。このとき、誘導性負荷300には電源400の電気エネルギーが蓄積される。
【0051】
(2)ターンオフ期間(
図4の時刻t2〜t3参照)
電力変換回路1(
図1参照。)のMOSFET100をターンオフしたとき、電源400の正極(+)から誘導性負荷300及びMOSFET100を経由して負極(−)に至る電流経路を流れる電流が減少し、やがて0になる。一方、誘導性負荷300は、自己を流れる電流を維持するために起電力を発生する。発生した起電力はフリーホイールダイオード200に印加している逆バイアスを順バイアスに変化させるため、順方向電圧−Vfが低下し、フリーホイールダイオード200に順方向電流が流れる。詳細は以下のとおりである。
【0052】
(2−1)第1期間
MOSFET100においては、ゲート電位が大きく低下し、ベース領域118に形成されていたチャネルが狭くなる。従って、ソース電極130から半導体基体110中に電子が流入し難くなりドレイン電流Idが低下する(
図4(a)の第1期間参照。)。一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsは急激に大きくなる。
フリーホイールダイオード200においては、逆バイアスが減少し、pn接合面から広がっていた空乏層に向かってキャリアが移動する(アノード電極側のホールが空乏層に向かい、カソード電極側の電子が空乏層に向かう)。これにより、空乏層が徐々に狭くなっていくことから、フリーホイールダイオード200に変位電流が流れ、順方向電流Ifが増加する(
図4(b)参照。)。
【0053】
第1期間においては、MOSFET100のドレイン電位が時間経過とともに高くなっており、ゲート周辺のn型コラム領域114の電位(静電ポテンシャル)も時間経過とともに高くなる。そして、低下したゲート電極126の電位がゲート・ドレイン間容量Cgdを介して高くなり、チャネルが広くなるとドレイン電流Idが増加し、第2期間に移行する。
【0054】
(2−2)第2期間
電力変換回路1においては、電源400の正極(+)から誘導性負荷300及びMOSFET100を経由して負極(−)に至る電流経路を流れる電流が一時的に大きくなる。一方、誘導性負荷300からフリーホイールダイオード200へ流れる電流成分が一時的に小さくなる。
MOSFET100においては、ゲート電極の電位が高くなり、ひいては、ゲート・ソース間電圧Vgsが高くなることにより、ベース領域118のチャネルが一時的に広くなる。これにより、ソース電極130から電子が流入し、一時的にドレイン電極132からソース電極130へと流れる電流が増加する(
図4(a)の第2期間参照。)。一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsは増加する割合が減少し、緩やかに増加する。
フリーホイールダイオード200においては、アノード電極から空乏層に向けて流入し、 空乏層の縮小に寄与していたホールの移動が一時的に止まるとともに、 カソード電極から空乏層に向けて流入し、空乏層の縮小に寄与していた電子の移動が一時的に止まる。 従って、フリーホイールダイオード200の内部(空乏層中)を、変位電流が流れなくなり、 フリーホイールダイオード200を通過する電流量が減少する(順方向電流Ifが減少する(
図4(b)参照。))。
【0055】
(2−3)第3期間
電力変換回路1(
図1参照。)においては、電源400の正極(+)から誘導性負荷300及びMOSFET100を経由して負極(−)に至る電流経路に流れる電流が小さくなる。一方、誘導性負荷300は、自己を流れる電流を維持するために起電力を発生する。発生した起電力はフリーホイールダイオード200に印加している逆バイアスを減少させる。
MOSFET100においては、ゲート・ソース間電圧Vgsが再び低下し始め、第1期間の場合と同様に、ベース領域118に形成されていたチャネルが狭くなり、ドレイン電流Idが減少する(
図4(a)の第3期間参照。)。このため、第2期間と第3期間とが切り替わる時点をピークとしたコブ波形が形成される。一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsは再び増加する割合(傾き)が増加し、定格電圧を超える電圧になった後に定格電圧へと減少する。
フリーホイールダイオード200においては、空乏層が再び狭くなっていき変位電流が流れるため、順方向電流Ifが再び増加する(
図4(b)参照。)。
そして、ゲート・ソース間電圧Vgsがゲート閾値電圧未満になるとチャネルが消滅しドレイン電流Idが0になる(オフ状態へ移行)。
【0056】
なお、MOSFET100において、第3期間における単位時間当たりのドレイン電流Idの減少量は、第1期間における単位時間当たりのドレイン電流の減少量よりも小さい(
図4、
図5及び
図9参照。)。また、MOSFET100は、MOSFETをターンオフしたとき、ミラー期間終了後にゲート・ソース間電圧が一時的に上昇する期間が出現するように動作する(
図5及び
図9参照。)。
【0057】
(3)オフ状態(
図4の時刻t3〜t4参照)
電力変換回路1(
図1参照。)においては、電源400の正極(+)から誘導性負荷300及びMOSFET100を経由して負極(−)に至る電流経路に流れる電流が0になる。
MOSFET100においては、ゲート・ソース間電圧Vgsがゲート閾値電圧未満になるため、チャネルが消滅しておりドレイン電流Idが0になる。一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsは定格電圧を超える電圧になった後に定格電圧へと減少し、定格電圧が維持される(
図4(a)参照。)。
フリーホイールダイオード200においては、pn接合面から広がる空乏層がなくなり、電子及びホールがそれぞれ直接流れるため、順方向電流Ifが流れ、時間が経過するに従って徐々に減少する(
図4(b)参照。)。また、順方向電圧−Vfが、負値になり(逆方向電圧が発生する)、導通損失が発生する。
【0058】
(4)ターンオン期間(
図4の時刻t4〜t5参照)
MOSFETをターンオンすると、電力変換回路1においては、電源400の正極(+)から誘導性負荷300及びMOSFET100を経由して負極(−)に至る電流経路が形成され、当該電流経路に電流が流れ始める。このとき、フリーホイールダイオード200に流れる順方向電流が減少し始める。
MOSFET100においては、電子がソース電極130からソース領域120を経由してn型コラム領域114へと流入するため、ドレイン電流Idが一時的に急激に増加した後、急速に減少する(
図4(a)参照。)。また、ドレイン・ソース間電圧Vgsは急激に減少する。
フリーホイールダイオード200においては、pn接合を介して順方向に電流が流れていたが、アノード電極からカソード電極に拡散したホールの一部が、アノード電極に戻りはじめる。一方、カソード電極からアノード電極に拡散した電子の一部が、カソード電極に戻りはじめる。これらのキャリア(電子およびホール)の動きにより、順方向電流が減少し、やがて、pn接合面から空乏層が広がり始め、ホールがアノード電極からカソード電極へ移動できなくなるとともに電子がカソード電極からアノード電極へ移動できなくなる。このとき、ホールがアノード電極側に移動するとともに電子がカソード電極側に移動し、逆回復電流が発生する(順方向電流Ifが負値になっている)が、これらのホール・電子の回収が終わると順方向電流Ifが0になる(
図4(b)参照。)。また、順方向電圧−Vfは急激に上昇し、定格電圧を超える値(サージ電圧)まで増加した後、定格電圧まで減少する。
【0059】
5.実施形態1に係る電力変換回路1の波形について
実施形態1に係る電力変換回路1を説明するために、まず比較例に係る電力変換回路を説明する。
比較例に係る電力変換回路は、基本的には実施形態1に係る電力変換回路1と同様の構成を有するが、フリーホイールダイオードとして、活性領域の面積が実施形態1におけるフリーホイールダイオードの活性領域の面積の4倍の面積であるフリーホイールダイオードを用いた電力変換回路である。比較例に係る電力変換回路において、MOSFETは、MOSFETをターンオフしたときに、ドレイン電流Idが減少する第1期間と、ドレイン電流Idが増加する第2期間と、ドレイン電流Idが再び減少する第3期間とがこの順番に出現するように動作する(
図5(b)参照。)。比較例に係る電力変換回路においては、MOSFETをターンオフしたときにドレイン電流Idが急激に低下した後に、ドレイン電流の低下前の1/2程度まで急激に増加している。その後上下に振動を繰り返した後0になっている。
【0060】
これに対して、実施例に係る電力変換回路(実施形態1に係る電力変換回路1)において、MOSFET100は、比較例に係る電力変換回路と同様に、MOSFETをターンオフしたときに、ドレイン電流Idが減少し始めてからドレイン電流Idが最初に0となるまでの間に、ドレイン電流Idが減少する第1期間と、ドレイン電流Idが増加する第2期間と、ドレイン電流Idが再び減少する第3期間とがこの順番に出現するように動作するが、MOSFETをターンオフしたときにドレイン電流Idが低下した後に、ドレイン電流の低下前の1/3程度まで増加し、その後上下に振動を繰り返したのち0になっている(
図5(a)参照。)。すなわち、比較例に係る電力変換回路の場合よりもコブ波形が小さくなっている。従って、比較例の場合よりもターンオフ損失が小さくなっている。
【0061】
次に、実施形態1に係る電力変換回路1におけるターンオン損失について説明する。
比較例に係る電力変換回路において、MOSFETは、MOSFETをターンオンしたときに、ドレイン電流Idは、定常電流を超える値となるまで増加した後(ピーク電流)、リンギングをしながら定常値に近づいていく(
図6の細実線参照。)。
また、ドレイン・ソース間電圧Vdsは、単調に、かつ急激に減少する(
図6の細破線参照。)。
【0062】
これに対して、実施例に係る電力変換回路1において、MOSFET100は、MOSFETをターンオンしたときに、比較例に係る電力変換回路の場合よりもピーク電流が小さく、かつ、リンギングも小さく、かつ、早くリンギングが終了する(
図6の太実線参照。)。従って、実施例に係る電力変換回路は、比較例に係る電力変換回路よりもターンオン損失が小さくなっている。
【0063】
次に、実施形態1に係る電力変換回路1におけるリカバリ損失について説明する。
比較例に係る電力変換回路において、フリーホイールダイオードは、MOSFETをターンオンしたときに、順方向電流Ifが急減に負値になるまで低下した後、リンギングをしながら0に回復する(
図7の細実線参照。)。
また、順方向電圧−Vfは、定常値を超える電圧まで上昇した後、リンギングしながら定常値に収束していく(
図7の細破線参照。)。
【0064】
これに対して、実施例に係る電力変換回路において、フリーホイールダイオードは、逆回復電流(ピーク)値Irpが比較例の場合よりも小さく、逆回復時間trrも比較例の場合よりも短く、逆回復容量Qrrが小さくなっている(
図7の太実線参照。)従って、実施例に係る電力変換回路は、比較例に係る電力変換回路よりもリカバリ損失が小さくなっている。
また、順方向電圧−Vfは、定常値に達する前に一度急激に減少し、再び定常値付近まで増加する。このとき、比較例の場合よりもリンギングの振幅が小さくなっている(
図7の太破線参照。)。
【0065】
6.実施形態1に係る電力変換回路1の効果について
実施形態1に係る電力変換回路1によれば、電力変換回路1の定格最大負荷又は定格最大回生電流で運転した場合において、フリーホイールダイオード200の順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオード200の活性面積で割った電流密度は、Si−FRDの場合には200A/cm
2以上であり、流れる電流に対してフリーホイールダイオード200の活性領域ARの面積が比較的小さいことから、フリーホイールダイオード200の接合容量Cjが小さくなる。従って、MOSFETをターンオフしたとき(ターンオフしたときの第2期間)にフリーホイールダイオード200からMOSFET100に向かって流れる電流成分が小さくなるため、MOSFET100のドレイン電流Idのコブ波形を比較的小さくすることができ(
図5(a)参照。)、その結果、ターンオフ損失を小さくすることができる。
【0066】
なお、フリーホイールダイオード200の順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオード200の活性面積で割った電流密度を200A/cm
2以上としたのは、当該電流密度が200A/cm
2未満である場合には、フリーホイールダイオード200の活性領域ARの面積が比較的大きくなり、フリーホイールダイオード200の接合容量Cjが大きくなり、MOSFETをターンオフしたとき(ターンオフしたときの第2期間)にフリーホイールダイオード200からMOSFET100に向かって流れる電流成分が小さくなるため、コブ波形を小さくすることが難しいからである。
【0067】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、電力変換回路1の定格最大負荷又は定格最大回生電流で運転したときに、フリーホイールダイオード200の順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオード200の活性面積で割った電流密度は、Si−FRDの場合には200A/cm
2以上であり、フリーホイールダイオード200の活性領域ARの面積が比較的小さいことから、フリーホイールダイオード200の接合容量Cjが小さくなる。従って、フリーホイールダイオード200のリカバリ電流が小さくなるため(
図7の破線Bで囲まれた領域参照。)、フリーホイールダイオード200のリカバリ損失を小さくすることができる。また、フリーホイールダイオード200のリカバリ電流が小さくなるため、MOSFET100をターンオンしたときのドレイン電流Idのピーク電流が小さくなり(
図6の破線Aで囲まれた領域参照。)、MOSFET100のターンオン損失を小さくすることができる。
【0068】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、上記電流密度は、Si−FRDの場合に400A/cm
2以下であることから、フリーホイールダイオード200の活性領域の面積が小さくなりすぎることがない。このため、半導体素子等から発する熱を外部に放出し易くなるため、フリーホイールダイオード200が高温になることを防ぐことができ、半導体素子等から発する熱を外部へ放出する際の熱抵抗を比較的小さくすることができる。その結果、スイッチング損失や導通損失によって発生する熱を効率よく外部へ排出することができる。
また、フリーホイールダイオード200の活性領域の面積が小さくなりすぎることがないため、電源に接続されていない状態の電力変換回路を電源に接続したときなどに流れる、ピーク値が大きい電流(ラッシュ電流。電力変換回路に内蔵された平滑コンデンサをいきなり電源電圧の最大値に対応する電荷量で充電する場合に流れる電流)が、フリーホイールダイオード200を通過するときでも、IFSM破壊が起こることを防ぐことができる。
【0069】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、MOSFETのスイッチング周波数は、10kHz以上であるため、総合損失(=導通損失+スイッチング損失)に対する導通損失の割合よりも、スイッチング損失(ターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリ損失を含む)の割合の方が大きくなる。このため、上記した構成にしてターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリ損失を小さくすることにより、総合損失を小さくすることができる。
【0070】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、フリーホイールダイオード200は、ライフタイムコントロールされたSi−FRDであるため、順方向電圧−Vfが大きくなり難くなる。このため、Si−SBDを用いた場合よりも導通損失が大きくなり難くなる。
【0071】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、電力変換回路における総合損失のうち、MOSFETをターンオフしたときのターンオフ損失、MOSFETをターンオンしたときのターンオン損失及びフリーホイールダイオード200のリカバリ損失の3つの損失の和が占める割合が、フリーホイールダイオード200の導通損失が占める割合よりも大きいため、上記した構成とすることにより、ターンオン損失、ターンオフ損失及びリカバリ損失を小さくすることができ、総合損失を小さくすることができる。
【0072】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、MOSFET100において、n型コラム領域114の不純物総量は、p型コラム領域116よりも多いため、MOSFET100をターンオフしたときに、ゲート周辺のn型コラム領域114が空乏化され難くなる。従って、ドレイン・ソース間耐圧を高くすることができる。また、ターンオフ時にコブ波形が発生することとなり、ドレイン電流Idの電流値が0になるまでの時間を長くすることができる。従って、MOSFETのサージ電圧が大きくなり難くなる。
【0073】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、MOSFET100において、n型コラム領域114の不純物総量は、p型コラム領域116の不純物総量よりも多いため、ドレイン・ソース間電圧Vdsが最大になるまでの時間を長くでき、かつ、ドレイン・ソース間電圧Vdsが最大になるまでのドレイン・ソース間電圧Vdsの単位時間当たりの増加量を小さくすることができるため、発振が起こり難くなる。
【0074】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、MOSFETにおいて、第3期間における単位時間当たりのドレイン電流の減少量は、第1期間における単位時間当たりのドレイン電流の減少量よりも小さいため、MOSFET100をターンオフしたとき、MOSFET100のサージ電圧をより一層小さくすることができる。
【0075】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、MOSFETにおいて、MOSFETをターンオフしたとき、ミラー期間終了後にゲート・ソース間電圧が一時的に上昇する期間が出現するように動作するため、ドレイン電流Idの電流値が0になるまでの時間を確実に長くでき、かつ、第3期間における単位時間当たりのドレイン電流Idの減少量を確実に小さくすることができる。従って、MOSFET100のサージ電圧を確実に小さくすることができる。
【0076】
また、実施形態1に係る電力変換回路1によれば、MOSFET100においては、ソース電極130側におけるp型コラム領域の幅は、ドレイン電極132側におけるp型コラム領域116の幅よりも広く、ソース電極130側におけるn型コラム領域114の幅は、ドレイン電極132側におけるn型コラム領域114の幅よりも狭いため、ゲート周辺がp過多になるため、ターンオフ時に空乏層を広げやすく、L負荷アバランシェ破壊耐量を大きくすることができる
【0077】
[実施形態2]
実施形態2に係る電力変換回路(図示せず。)は、基本的には実施形態1に係る電力変換回路1と同様の構成を有するが、フリーホイールダイオードがSiC−SBD(シリコンカーバイド−ショットキー・バリア・ダイオード)である点で実施形態1に係る電力変換回路1の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る電力変換回路において、
図8に示すように、フリーホイールダイオード202は、半導体基体210aがSiC(シリコンカーバイド)からなり、かつ、アノード電極232における少なくとも半導体基体210aと接する位置にはショットキーバリアメタルが配置されており、当該ショットキーバリアメタルと半導体基体210aとがショットキー接合されたショットキー・バリア・ダイオードである。
【0078】
フリーホイールダイオード202は、ショットキー接合とpn接合とを組み合わせたJBS構造(又はMPS構造)を有する。すなわち、半導体基体210aには、実施形態1におけるフリーホイールダイオード200の場合のようなp型半導体層216は形成されていない。
JBS構造(又はMPS構造)は、順方向にラッシュ電流が突入した時、ショットキー接合だけでなく、PN接合を使って電流を流すことで、ショットキー接合が破壊しにくく、IFSM破壊を回避する構造となっている(IFSM耐量が大きい)。
【0079】
フリーホイールダイオード202の電流密度は、400A/cm
2〜1500A/cm
2の範囲内にある。フリーホイールダイオード202の電流密度が、Si−FRD構造を有するフリーホイールダイオード200の電流密度の場合のように200A/cm
2以上ではなく、400A/cm
2以上となっているのは、以下の理由による。すなわち、SiCの場合には一般的に絶縁破壊電界強度が高く、高耐圧のSBD(ショットキーバリアダイオード)を、耐圧層(ドリフト層)の厚さが薄く、かつ、不純物濃度が濃い状態で作製することができる(一般的である)ため、順方向電圧降下をSiの場合よりも小さくすることができ、その結果、活性面積をSi−FRDの場合よりも小さくすることが可能(すなわち、電流密度をSi−FRDの場合よりも高くすることが可能)だからである。
また、フリーホイールダイオード202の電流密度が、Si−FRD構造を有するフリーホイールダイオード200の電流密度の場合のように400A/cm
2以下ではなく、1500A/cm
2以下となっているのは、順方向にラッシュ電流が突入した時でもショットキー接合が破壊しにくく、IFSM耐量が大きいからである。
【0080】
なお、電流密度が高い場合、SiC半導体は破壊され難いが、電極で使用されるメタルや半田、ボンディングワイヤ等が発熱して溶断するおそれがあり、周辺の部材の物性限界により、許容電流密度が制限されてしまう。従って、フリーホイールダイオード202の電流密度は、400A/cm
2〜1000A/cm
2の範囲内にあることがより一層好ましい。
【0081】
このように、実施形態2に係る電力変換回路は、フリーホイールダイオードがSiC−SBDである点で実施形態1に係る電力変換回路1の場合とは異なるが、実施形態1に係る電力変換回路1の場合と同様に、電力変換回路1の定格最大負荷又は定格最大回生電流で運転した場合において、フリーホイールダイオード202の順方向電流のピーク時に、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオード202の活性面積で割った電流密度は、SiC−SBDの場合に400A/cm
2以上であり、流れる電流に対してフリーホイールダイオード202の活性領域ARの面積が比較的小さいことから、フリーホイールダイオード202の接合容量Cjが小さくなる。従って、MOSFETをターンオフしたとき(ターンオフしたときの第2期間)にフリーホイールダイオード202からMOSFETに向かって流れる電流成分が小さくなるため、MOSFETのドレイン電流Idのコブ波形を比較的小さくすることができ、その結果、ターンオフ損失を小さくすることができる。
【0082】
また、実施形態2に係る電力変換回路によれば、電力変換回路の定格最大負荷又は定格最大回生電流で運転したときに、フリーホイールダイオード200の順方向電流のピーク時において、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオード200の活性面積で割った電流密度は、SiC−SBDの場合には400A/cm
2以上であることから、流れる電流に対してフリーホイールダイオード202の活性領域ARの面積が比較的小さくなり、フリーホイールダイオード200の接合容量Cjが小さくなる。従って、フリーホイールダイオード202のリカバリ電流が小さくなるため(
図7の破線Bで囲まれた領域参照。)、フリーホイールダイオード202のリカバリ損失を小さくすることができる。また、フリーホイールダイオード202のリカバリ電流が小さくなるため、MOSFETをターンオンしたときのドレイン電流Idのピーク電流が小さくなり(
図6の破線Aで囲まれた領域参照。)、MOSFETのターンオン損失を小さくすることができる。
【0083】
また、実施形態2に係る電力変換回路によれば、電流密度は、SiC−SBDの場合に1500A/cm
2以下であることから、フリーホイールダイオード202の活性領域の面積が小さくなりすぎることがない。このため、半導体素子等から発する熱を外部に放出し易くなるため、フリーホイールダイオード200が高温になることを防ぐことができ、半導体素子等から発する熱を外部へ放出する際の熱抵抗を比較的小さくすることができる。その結果、スイッチング損失や導通損失によって発生する熱を効率よく外部へ排出することができる。
また、フリーホイールダイオード202の活性領域の面積が小さくなりすぎることがないため、電源に接続されていない状態の電力変換回路を電源に接続したときなどに流れる、ピーク値が大きい電流(ラッシュ電流)が、フリーホイールダイオード200を通過するときでも、IFSM破壊が起こることを防ぐことができる。
【0084】
また、実施形態2に係る電力変換回路によれば、フリーホイールダイオード202は、SiC−SBDであるため、高速スイッチングが可能となり、スイッチング損失を低減することができる。
【0085】
また、実施形態2に係る電力変換回路によれば、フリーホイールダイオード202は、ショットキー接合とpn接合とを組み合わせたJBS構造を有するため、低導通損失であるとともに漏れ電流の少ないダイオードとなり、総合損失の少ない電力変換回路とすることができる。
【0086】
また、フリーホイールダイオード202は、JBS構造を有するため、ラッシュ電流がフリーホイールダイオードを通過するときにp型高濃度領域218から電流を流すことができ、IFSM破壊が起こることを確実に防ぐことができる。
【0087】
なお、実施形態2に係る電力変換回路は、フリーホイールダイオードがSiC−SBDである点以外の点においては実施形態1に係る電力変換回路1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る電力変換回路1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0088】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0089】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0090】
(2)上記各実施形態においては、MOSFETにおいて、n型コラム領域の不純物総量をp型コラム領域の不純物総量よりも多く(n過多)したが、本発明はこれに限定されるものではない。n型コラム領域の不純物総量をp型コラム領域の不純物総量と等しくてもよいし(Just)、p型コラム領域の不純物総量をn型コラム領域の不純物総量よりもわずかに多い(p過多。例えば、p型コラム領域の不純物総量をn型コラム領域の不純物総量の1.00倍よりも多く、1.03倍と等しいかそれよりも少ない)こととしてもよい。この場合においても、MOSFETのドレイン電流Idには(n過多の場合よりも小さいものの)コブ波形が出現するように動作する(
図9及び
図10参照。)。
【0091】
(3)上記実施形態2においては、フリーホイールダイオードとして、JBS構造(又はMPS構造)を有するSiC−SBDを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。JBS構造又はMPS構造以外の構造を有するSiC−SBDを用いてもよい。この場合には、JBS構造(又はMPS構造)の場合と比べるとIFSM耐量がやや小さいため、フリーホイールダイオードの電流密度は、400A/cm
2〜1000A/cm
2の範囲内にあることが好ましく、電極で使用されるメタルや半田、ボンディングワイヤ等が発熱して溶断することを防ぐ観点からは、上限は1000A/cm
2よりも小さくすることがさらに好ましい。
【0092】
(4)上記各実施形態においては、電力変換回路として、昇圧チョッパ回路を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。電力変換回路として、降圧チョッパ回路(
図11参照。)、フルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路、三相交流コンバータ、非絶縁型フルブリッジ回路、非絶縁型ハーフブリッジ回路、プッシュプル回路、RCC回路、フォワードコンバータ、フライバックコンバータその他の回路を用いてもよい。
【0093】
(5)上記各実施形態においては、MOSFETとして、トレンチゲート型のMOSFETを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。MOSFETとして、半導体基体110が、n型コラム領域114の一部及びp型コラム領域116の全部の表面に形成されたp型のベース領域118と、ベース領域118の表面に形成されたn型のソース領域120と、n型コラム領域114の表面のうちベース領域118が形成されていない部分に形成されたn型の表面高濃度拡散領域119とを有し、MOSFETの第1主面側(ソース電極側)には、ソース領域120とn型コラム領域114(n型の表面高濃度拡散領域119)とに挟まれたベース領域118上にゲート絶縁膜134を介して形成されたゲート電極136をさらに有するプレーナーゲート型のMOSFETを用いてもよい(変形例2におけるMOSFET102、
図12参照。)。
【0094】
(6)上記各実施形態においては、ソース電極側におけるp型コラム領域の幅をドレイン電極側におけるp型コラム領域の幅よりも広くし、かつ、ソース電極側におけるn型コラム領域の幅をドレイン電極側におけるn型コラム領域の幅よりも狭くしたが、本発明はこれに限定されるものではない。p型コラム領域116の深さ方向に沿って、p型コラム領域116の幅を一定にしてもよい。
【0095】
(7)上記各実施形態においては、p型コラム領域116の不純物濃度を深さによらず一定としたが、本発明はこれに限定されるものではない。ソース電極側において、p型コラム領域の不純物濃度をn型コラム領域の不純物濃度よりも高くし、ドレイン電極側において、p型コラム領域の不純物濃度をn型コラム領域の不純物濃度よりも低くしてもよい(変形例3におけるMOSFET104、
図13参照。)。この場合、p型コラム領域の深さ方向に沿って、p型コラム領域及びn型コラム領域の幅を一定にしてもよいし(
図13参照。)、ソース電極側におけるp型コラム領域の幅をドレイン電極側におけるp型コラム領域の幅よりも広くし、かつ、ソース電極側におけるn型コラム領域の幅をドレイン電極側におけるn型コラム領域の幅よりも狭くしてもよい。このような構成とすることにより、L負荷アバランシェ破壊耐量をより一層大きくすることができる、という効果を得ることができる。
【0096】
(8)上記各実施形態においては、n型コラム領域114、p型コラム領域116、トレンチ122、ゲート電極126を平面的に見てストライプ状に形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。n型コラム領域114、p型コラム領域116、トレンチ122、ゲート電極126を平面的に見て、円状(立体的に見て柱状)、四角形の枠状、円形の枠状又は格子状等に形成してもよい。
【0097】
(9)上記各実施形態においては、電源として、直流電源を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。電源として、交流電源を用いてもよい。
本発明の電力変換回路1は、スーパージャンクション構造が構成されたMOSFETと、誘導性負荷と、フリーホイールダイオードとを備え、MOSFETのスイッチング周波数は、10kHz以上であり、MOSFETは、ターンオフしたときに、ドレイン電流が減少する第1期間と、ドレイン電流が増加する第2期間と、ドレイン電流が再び減少する第3期間とがこの順番に出現するように動作し、フリーホイールダイオードは、Si−FRD又はSiC−SBDであり、順方向電流の電流値をフリーホイールダイオードの活性領域の面積で割った電流密度は、Si−FRDの場合には200〜400A/cm