特許第6556951号(P6556951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556951複合されたコモンモードインダクタおよび差動信号変圧器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556951
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】複合されたコモンモードインダクタおよび差動信号変圧器
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/30 20060101AFI20190729BHJP
   H04B 3/50 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H04B3/30
   H04B3/50
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-524425(P2018-524425)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公表番号】特表2019-504524(P2019-504524A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】SE2016051114
(87)【国際公開番号】WO2017086863
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】1551493-8
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】グスタフ、ベルグクエスト
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム、アスプルンド
(72)【発明者】
【氏名】トマス、モデーア
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−020941(JP,A)
【文献】 特開2000−278860(JP,A)
【文献】 特開2009−147253(JP,A)
【文献】 特開2004−214334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/30
H04B 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンモードノイズの抑制およびディファレンシャルモード信号の伝送のためのコモンモードインダクタ(10)であって、
第1の巻線(11)および第2の巻線(12)を有するコア(15)であって、前記第1の巻線および前記第2の巻線は、差動通信信号を伝達するように配置された導体の差動対を形成する、コア(15)と、
前記第1の巻線の少なくとも一部分に沿って延び、これに誘導結合された第3の巻線(13)と、
前記第2の巻線の少なくとも一部分に沿って延び、これに誘導結合された第4の巻線(14)と、
を備え、
前記第3の巻線および前記第4の巻線は互いに直列に接続されており、前記第1の巻線および前記第2の巻線内の前記差動通信信号によって誘導されたセンサ信号を提供するように適合されている、コモンモードインダクタ。
【請求項2】
前記コアが、強磁性、リング状、C字状またはE字状コアである、請求項1に記載のコモンモードインダクタ。
【請求項3】
前記第1の巻線および前記第2の巻線が、入力DC電源に接続されたスイッチングユニット(110)からの差動出力ACを伝達するように適合されている、請求項1に記載のコモンモードインダクタ。
【請求項4】
前記差動通信信号が、中央ユニット(130)によって生成される、請求項3に記載のコモンモードインダクタ。
【請求項5】
入力DC電力を受電し、出力AC電力を出力するように適合されたスイッチングユニットと、
前記スイッチングユニットに接続されており、前記出力ACを差動出力ACとして伝達するように適合された、請求項1に記載のコモンモードインダクタと、
を備える、システム。
【請求項6】
前記差動通信信号が、前記スイッチングユニットの動作を制御するための情報を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
合成出力ACを生成するために相互接続された複数のスイッチングユニットを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記合成出力ACを伝送するように適合された共通線(120)をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記共通線が、前記差動通信信号を伝送するように適合されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記入力DC電力が、太陽電池パネルで生成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のスイッチングユニットが、カスケード接続構成で配置されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のスイッチングユニットが、Hブリッジコンバータである、請求項5に記載のシステム。
【請求項13】
コモンモードインダクタ内の差動通信信号を測定するための方法であって、
前記コモンモードインダクタは、
第1の巻線および第2の巻線を有するコアであって、前記第1の巻線および前記第2の巻線は、差動信号を伝達するように配置された導体の差動対を形成する、コアと、
前記第1の巻線の少なくとも一部分に沿って延び、これに誘導結合された第3の巻線と、
前記第2の巻線の少なくとも一部分に沿って延び、これに誘導結合された第4の巻線と、を備え、
前記第3の巻線および前記第4の巻線は互いに直列に接続され、
前記方法は、
前記第1の巻線および前記第2の巻線を通じて差動通信信号を伝送し、
前記第3の巻線および第4の巻線内に誘導されたセンサ信号に基づいて前記差動通信信号を測定する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される発明は、電気システム内における通信に関し、特に、ディファレンシャルモード信号の伝送または受信、および、同時に、コモンモードノイズの抑制のためのコモンモードインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば通信信号などの信号の転送は電気システムに関して重要である。信号は、システムの異なる構成要素の制御および動作に関する情報を搬送し得、特に、測定された動作パラメータ、およびシステムの性能を制御または最適化する命令に関する情報を送達するために用いられ得る。例えば、電力変換システムでは、入力電力、単数または複数のパワーコンバータの性能、出力電力および/または動作命令に関する情報の高速で効率的な伝達が、システムの効率的な動作を達成するために望まれる。さらに、コモンモード電流および/または電圧は、システム自体、および外界の他のシステムの両方を乱し得、例えば、送電網を通して長距離転送され得るため、このようなシステムでは、コモンモードノイズの抑制も重要になり得る。
【0003】
この課題の一部が、例えば国際公開第2014/131734号および国際出願PCT/EP2012/066782号において対処されており、同文献では、中央適応ユニットとパワーインバータシステムの複数のスイッチングユニットとの間の制御信号が無線または共通線通信チャネルによって転送される。
【0004】
このような通信チャネルが実装されるためのよく知られた方法が存在してはいるものの、このようなパワーインバータシステムに関する情報をコスト効率およびエネルギー効率のよい方法で転送するための代替的な改善された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態のうちの少なくともいくつかの目的は、上述された技法に対する改善された代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、独立請求項の特徴を有するコモンモードインダクタ、システムおよび方法を提供する。従属請求項は有利な諸実施形態を規定する。
【0007】
第1の態様では、コモンモードノイズの抑制および差動信号の伝送のためのコモンモードインダクタが提供される。インダクタは、第1の巻線および第2の巻線を有するコアであって、第1の巻線および第2の巻線は、差動通信信号を伝達するように配置された導体の対を形成する、コアを含む。さらに、第3の巻線が、第1の巻線の少なくとも一部分に沿って延びるように配置されており、第4の巻線が、第2の巻線の少なくとも一部分に沿って延びるように配置されている。第3の巻線および第4の巻線は第1の巻線および第2の巻線にそれぞれ局所的に誘導結合され得る。さらに、第3の巻線および第4の巻線は、第3および第4の巻線へ変圧される第1および第2の巻線上の差動信号が互いに合算され得るよう(すなわち、増幅され得るよう)、互いに直列に接続されている。それゆえ、第3の巻線および第4の巻線は、第1の巻線および第2の巻線内の差動通信信号によって誘導されたセンサ信号を提供するように適合され得る。
【0008】
第2の態様によれば、システムが提供される。システムは、入力電力を受電し、出力電圧波形および交流電流を出力するように適合されたスイッチングユニットと、第1の態様に係るコモンモードインダクタと、を備える。出力電圧は、それゆえインダクタによって伝達され得る差動信号である。
【0009】
第3の態様によれば、第1の態様に係るコモンモードインダクタ内の、出力AC信号よりも実質的に高い周波数を有し得る、差動通信信号を測定するための方法が提供される。本方法は、第1の巻線および第2の巻線を通して差動通信信号を伝送することと、第3および第4の巻線へ変圧された差動通信信号を測定することと、を含む。
【0010】
コモンモード信号は、第1の巻線および第2の巻線の両方において同じ符号を有する信号と理解され得る。このような信号によって発生された磁界は、インダクタのコア内で合算し得、その結果、インダクタは、信号を阻止する、または減衰させる高インピーダンス構成要素として作用し得る。逆に、第1の巻線および第2の巻線内で異なる符号を有する信号と理解され得るであろう差動信号、磁界は大きな範囲で互いに相殺し得る。したがって、インダクタは、信号を通過させる低インピーダンス構成要素として作用し得る。
【0011】
第1の巻線および第2の巻線は、差動信号が、相互に相殺する、または減衰する磁界をコア内に発生するよう配置され得るが、第3の巻線および第4の巻線は、変圧効果をもたらすために、第1の巻線および第2の巻線にそれぞれ誘導結合され得る。
【0012】
本態様は、第3の巻線および第4の巻線が、インダクタを通して伝送される差動信号を測定するためのセンサ巻線を形成するために用いられ得るとの理解を利用する。これは、コモンモードインダクタを元から備えるシステムにおいて特に有利であり、それは、その構成要素が、追加の第3の配線および第4の配線によって複合センサデバイスへ補完または拡張され得るためである。それゆえ、別個の感知または測定デバイスをさらに追加せずとも、センサまたは測定の機能性がもたらされ得る。さらに、これは、共通(電力)線内で伝送される信号が測定されることを可能にし、これは、別個の通信チャネルおよび追加のケーブルまたは無線の通信手段の必要性を解消し得る。さらに、既存の構成要素を用いることによって、追加の感知段階、または信号を受信するための受信器の必要性がなくなる。その代わりに、電気システムの既存の機器が追加の通信目的のために用いられ得、これが、部品目録、サイズ、および例えば、製造および保守に関連するコストの低減を可能にする。
【0013】
上述されたように、コモンモードインダクタ(コモンモードチョークまたはコモンモードチョークコイルもしくはコイル群とも呼ばれる)は、本出願の文脈では、コモンモード電流に対してインダクタとして作用するが、ディファレンシャルモード電流のためにはインダクタとして作用しない電気部品を指し得る。それゆえ、コモンモードインダクタは、差動信号送信または電力伝送におけるフィルタリングの目的のために用いられ得、フィルタリング効果は主としてコモンモードに関して望まれ得る。導体は、磁気コア上に反対方向に巻かれた差動導体の対を形成する2つのコイルを含み得る。巻線は、巻線内のディファレンシャルモード電流によって生成された磁界は互いに相殺する傾向を有し、それに対して、巻線内のコモンモード電流からの磁界は合算する傾向を有し、これにより、コモンモードノイズを抑制するインピーダンスをもたらすような方法で構成され得る。
【0014】
センサ巻線、すなわち、第3の巻線および第4の巻線を第1の巻線および第2の巻線の少なくとも一部に沿って配置することによって、電磁相互作用が第1の巻線および/または第2の巻線とセンサ巻線との間に達成され得る。電磁相互作用のゆえに、差動信号または電力がインダクタ内を流れるのに従い、センサ信号がセンサ巻線内に誘導され得る。第3の巻線および第4の巻線の直列接続は、ディファレンシャルモードでは、電流が第3の巻線および第4の巻線内に同じ方向に誘導されることを可能にする。逆に、電流は、コモンモードでは、異なる方向に誘導され得、それにより、第3の巻線内に誘導された電流は、第4の巻線内に誘導された電流に対抗するか、またはそれを相殺し得る。それゆえ、ディファレンシャルモード動作の間に誘導された電流は、センサ巻線から引き出され、ディファレンシャルモードにおいてコモンモードインダクタ内を流れる差動信号の尺度として用いられ得るセンサ信号に合算してなり得る。
【0015】
センサ信号は差動信号に対応し得、それゆえ、差動信号を決定または測定するために用いられ得る。これにより、これらの態様は、コモンモードノイズが抑制されることを可能にし、その一方で、ディファレンシャルモード信号は、比較的低いディファレンシャルモード含有量に対してさえも変圧され得る。
【0016】
差動信号は、例えば、システム内の電圧または電流に関する情報、ならびに例えば、電気システムの温度、能力および性能に関する他のパラメータを含み得る。
【0017】
一実施形態によれば、コモンモードインダクタのコアは、強磁性、および/またはリング状、C字状もしくはE字状であり得る。
【0018】
一実施形態によれば、第1の巻線および第2の巻線は、DC源などの入力電源に接続されたスイッチングユニットからの差動出力ACを伝達するように適合され得る。ディファレンシャルモード電力は共通線内でディファレンシャルモード通信信号と一緒に転送され、それゆえ、インダクタのセンサ巻線によって測定され得る。差動通信信号は、例えば、差動出力AC上の重畳信号として伝達され得る。さらに、差動通信信号は、スイッチングユニットを動作させるための命令を含み得る。本実施形態は、スイッチングユニットが同じ線を介してACを出力し、例えば、動作命令などの、情報を受信し得るため、スイッチングユニットにおいて有利である。差動信号のための追加の通信チャネルは必要ない。同時に、コモンモード信号はインダクタによって阻止されるか、または減衰させられ得る。
【0019】
一実施形態によれば、スイッチングユニットは、カスケード接続構成で互いに電気的に接続された複数のスイッチングユニットを備えるパワーインバータシステムの一部を形成し得る。スイッチングユニットの各々は、例えば、太陽電池パネルからのそれぞれの入力電力を受電するように適合され得る。さらに、スイッチングユニットの各々は、共通線へ出力される合成出力ACを生成するよう個々に制御され得る。スイッチングユニットは、差動信号を介して伝送され、コモンモードインダクタのセンサ巻線によって受信され得る指令信号に応じて動作させられ得る。
【0020】
スイッチングユニットの個々の制御は、それぞれの入力電力が経時的に変化し、および/または予測が難しい適用物およびシステムにとって特に意味がある。例えば、出力電力が電圧と電流との非線形関係によって決定され得る、太陽光発電素子または太陽光パネルにおける場合がこれに当たり得る。通過する影のような事象、または汚染、経年化の差、もしくは製造時の相違に起因するパネル性能の相違が、パネルのアレイが全体としてそのピーク効率点で動作することを妨げ得る。本態様は、各パネルが、各スイッチングユニットにおけるコモンモードインダクタによって測定された差動信号に応じて個々に動作させられ得るそれぞれのスイッチングユニットに接続され得る解決策を提供する。それゆえ、スイッチングユニットの動作は動作中の特定の要求に適応させられ得る。
【0021】
一実施形態によれば、パワーインバータシステムは、スイッチングユニットのうちの少なくとも一部の動作を制御するための指令信号を発生するように適合された中央ユニットに接続され得る。中央ユニットは、スイッチングユニットのうちの1つもしくは数個の電流状態を示す情報、入力電圧もしくは電流、発生された出力電圧もしくは電流を示す尺度、または例えば、パワーインバータシステムに接続された太陽電池パネルの所望の出力AC、温度、もしくは性能に関するさらなる情報を受信するように適合され得る。中央ユニットは、指令信号を発生するように構成され得、指令信号は共通線を介してスイッチングユニットへ伝送され、そこで、指令信号はコモンモードインダクタによって決定され得る。それゆえ、パワーインバータシステムのスイッチング動作は、指令信号によって搬送された、受信された情報またはパラメータに基づき得る。
【0022】
いくつかの例では、指令信号は、スイッチングユニットに、電力を出力または受電させ、好ましくは、特定のレベル(正、0、負、またはそれらの間の電圧)の電圧を出力させる状態指令を含み得る。追加的に、または代替的に、状態指令は、スイッチングユニットに、電力または電圧の出力を停止させ得る。指令信号はまた、スイッチングユニットに、正電圧、負電圧、0電圧、およびこれらの間の電圧のうちの2つ以上の任意の組み合わせを出力させるさらなる指令、または代替的指令をも含み得る。
【0023】
一実施形態によれば、スイッチングユニットはHブリッジコンバータである。Hブリッジコンバータは、例えば、4つの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、または任意の他の種類の半導体スイッチもしくはトランジスタを含み得る。スイッチングユニットはまた、例えば、ハーフブリッジコンバータでも形成され得る。しかし、用語「スイッチングユニット」は、本出願の文脈では、入力DC電力を受電し、2つ以上の異なる電圧/電流レベルのマルチレベル出力を生成する能力を有する任意の電気部品を示し得ることが理解されるであろう。
【0024】
一実施形態によれば、スイッチングユニットは、スイッチングユニットが、共通線上で転送される合成出力電圧波形を生成するよう、指令信号のスイッチング指令に応じて個々にスイッチングされるインバータモード、およびスイッチングユニットが、共通線上で伝送される通信信号を生成するよう、2つの連続したスイッチング指令の間でスイッチングされる通信モードで動作可能であり得る。スイッチングユニットのうちの少なくとも1つは、残りのスイッチングユニットがそれらの現在の状態に維持されている間に、すなわち、残りのスイッチングユニットがスイッチングされていない間に、通信モードで動作させられ得る。本実施形態は、出力電圧波形のサイレント期間、すなわち、スイッチングユニットの2つの相互に隣接したスイッチングイベントの間に位置し、マルチレベル出力電圧波形の電圧が比較的一定であり、比較的低い高調波含有量を有する時間期間が、合成出力電圧波形上の重畳通信信号を伝送するために利用され得るという点で、有利である。通信信号は、スイッチングユニットのうちの1つまたは数個を、残りのスイッチングユニットが「サイレント」である間、すなわち、スイッチングしない現在の状態のままとどまらせている間に、スイッチングすることによって提供され得る。換言すれば、スイッチングユニットは、2つの異なるモード − 合成多段出力電圧波形を発生するインバータモード、および通信信号を発生する通信モード − で動作すると見なされ得る。インバータモードでは、スイッチングユニットの各々または少なくとも一部は、所望の多段出力電圧波形を形成するよう、指令信号のスイッチング指令に基づいてスイッチングされ得る。2つの相互に隣接したスイッチング指令によって規定される期間は、この期間中には、出力が、不必要な高調波の観点から比較的低くなり得るため、多段出力電圧波形のサイレント期間と呼ばれ得る。換言すれば、出力電圧波形は、このサイレント期間中には、比較的低いノイズを有し得、比較的低いノイズレベルは通信信号のフィルタリングおよび増幅の必要性を低減し得るため、これは、信号送信に関して特に有利である。このサイレント期間内に、スイッチングユニットのうちの1つまたは数個が通信モードで動作させられ得、このモードにおいて、これらは、重畳通信信号を発生するために複数回スイッチングされ得る。
【0025】
中央ユニットは、上述されたのと同様の方法で、すなわち、信号を伝送するためのサイレント期間を用いて動作し、指令信号を発生するように適合されたスイッチングユニットを備え得ることは理解されるであろう。
【0026】
一実施形態によれば、コモンモードインダクタは中央ユニットに設けられており、共通線を介して、スイッチングユニット(単数または複数)において発生された通信信号を受信するように配置され得る。通信信号は、例えば、グリッド電圧波形などの、要求電圧波形の周波数、位相、振幅および高調波のうちの少なくとも1つを表し得る。情報は、受信された通信信号に基づいて指令信号を算出するように適合されたプロセッサによって処理され得る。算出された指令信号は、その後、共通線を介して出力され、スイッチングユニットへ転送され得、スイッチングユニットは、それに応じて、複数のスイッチングユニットからの合成出力が、要求電圧波形に一致する電圧波形を生成するよう、個々に制御され得る。
【0027】
本出願の文脈において、用語「出力電圧波形」、「出力電圧」、「出力電力」、「AC」、「交流電流」および「交流電圧」は交換可能に用いられ得る。パワーインバータシステムまたはスイッチングユニットから出力される電力は、交流電流を駆動する交流電圧と理解され得る。
【0028】
また、本態様は高電力伝送システム内で実施されるか、または高電力伝送システムとして実現され得ることも理解されるであろう。
【0029】
本態様は、プログラム可能なコンピュータを、コンピュータが、以上において概説された方法を遂行するよう制御するためのコンピュータ読取可能命令として具体化され得る。このような命令は、命令を記憶するコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品の形態で配布され得る。特に、命令は中央ユニットのマイクロコントローラ内にロードされ得る。
【0030】
以下の詳細な開示、図面、および添付の請求項を吟味することで、本態様のさらなる目的、特徴、および利点が明らかになるであろう。当業者は、本態様の異なる特徴は、たとえ、異なる請求項に記載されている場合でも、以下に説明されているもの以外の諸実施形態において組み合わせられ得ることを認識する。
【0031】
本発明の、上述ならびに追加の目的、特徴および利点は、本発明の諸実施形態の以下の例示の非限定的な詳細説明を通じて、より深く理解されるであろう。添付の図面が参照されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係るコモンモードインダクタを示す図である。
図2】一実施形態に係るコモンモードインダクタを備えるパワーインバータシステムを図式的に示す図である。
図3】一実施形態に係るスイッチングユニットを示す図である。
図4】一実施形態に係るシステムのレイアウトおよびその関連信号経路を概略的に示す図である。
図5】一実施形態に係るシステムからの合成マルチレベル出力電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
全ての図は概略的なものであり、本発明を説明するために必要である部分を大まかに示すのみであり、それに対して、他の部分は省かれるか、または単に示唆されるのみであり得る。
【0034】
図1は、一実施形態に係るコモンモードインダクタを示す。本例では、コモンモードインダクタ10は、リング状コア15の周りに反対方向に巻かれた第1の巻線11および第2の巻線12を有する。巻線の配置は誘導磁界をコア15内に生じさせ得、コモンモード電流は協働磁界を誘導し得、ディファレンシャルモード電流は、互いに打ち消し合う反対磁界を誘導し得る。その結果として、コモンモードインダクタは主としてコモンモード電流に関しては高インピーダンスとして作用し、その一方で、コモンモードインダクタは、ディファレンシャルモード電流に対しては有意な影響をほとんどまたは全く与えない。
【0035】
コモンモードインダクタ10は、ともにセンサ巻線13、14を形成し得る、第3の巻線13および第4の巻線14をさらに含み得る。第3の巻線13は、第1の巻線11の少なくとも一部分と並行して、またはそれに沿って巻かれ得、それにより、第1の巻線11内に流れる電流は第3の巻線13内に電流を誘導し得る。同様に、第4の巻線14は、第2の巻線12の少なくとも一部分と並行して、またはそれに沿って巻かれ得、それにより、第2の巻線12内に流れる電流は第4の巻線14内に電流を誘導し得る。第3の巻線13および第4の巻線14内の誘導電流はそれぞれ、第1の巻線11および第2の巻線12内にそれぞれ流れる電流と同じ方向を有し得る。第3の巻線13と第4の巻線14との直列接続のゆえに、したがって、電流は、コモンモードでは、センサ巻線13、14内に反対方向に誘導され得る。それゆえ、誘導電流は、コモンモードでは、互いに抑制し合うか、またはさらに、相殺し得、その結果、比較的低い、または0の正味電流がセンサ巻線13、14内を流れることになる。対応して、電流は、ディファレンシャルモードでは、同じ方向に誘導され得、その結果、第3の巻線13内の誘導電流は第4の巻線14内の誘導電流と協働することになる。それゆえ、誘導電流は、ディファレンシャルモードでは、センサ巻線13、14から引き出され、インダクタ10内を流れる差動信号の尺度として用いられ得るセンサ信号に合算してなり得る。
【0036】
図2は、一実施形態に係る中央ユニット130に接続されたパワーインバータシステム100を示す。パワーインバータシステム100は、例えば、太陽光発電素子(図1には示されていない)などの、それぞれの供給源から入力DC電力および電圧VDCを供給されるように各々配置された、例えば、Hブリッジコンバータ110などの、複数のスイッチングユニットを含み得る。Hブリッジコンバータ110は、共通線120を介して中央ユニット130へ給電され得る、マルチレベル出力電圧VOUTを生成するようにカスケード接続され得る。スイッチングユニット110の各々は、図1に関して説明された諸実施形態と同様に構成され、それぞれのスイッチングユニット110の出力側に接続され得る、コモンモードインダクタ10を含み得る。ディファレンシャルモード動作の間には、それゆえ、センサ信号がセンサ巻線13、14から引き出され得る。信号は、例えば、中央制御ユニット130からの指令信号に対応し得る。測定された差動信号は、測定された差動信号に基づいて、対応するスイッチングユニットを制御するように適合された、例えば、マイクロコントローラなどの、制御回路機構へ転送され得る。
【0037】
中央ユニット130は、グリッドACに一致するAC VACを出力し、スイッチングユニット110の1つまたは数個の動作を制御するための指令信号を発生するように適合され得る。指令信号は、例えば、中央ユニット130におけるスイッチングユニットによって発生され得、スイッチングユニットは、通信モードで動作するように適合され得、合成出力AC VOUTのサイレント期間、すなわち、インバータモードスイッチングが生じない期間が、指令信号を発生するために利用される。指令信号は合成出力AC VOUT上に重畳され、共通線120を介してパワーインバータシステム100へ伝送され得、そこで、この信号はコモンモードインダクタ10によって測定され、スイッチングユニット110の動作を制御するために利用され得る。
【0038】
入力電圧源が太陽電池パネルである場合には、各Hブリッジコンバータ110およびコモンモードインダクタ10は、例えば、それぞれのパネルの配線接続箱内で統合され得る。
【0039】
図3は、図1および図2を参照して説明された諸実施形態と同様に構成されたコモンモードインダクタ10およびスイッチングユニット110の例示的実施形態を示す。より具体的には、4つの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)Q1、Q2、Q3、Q4の形態の4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4を含む、Hブリッジコンバータ21の出力端子に結合されたコモンモードインダクタ10の回路図が示されている。しかし、ゲート絶縁型バイポーラトランジスタ(IGBT)、または接合型バイポーラトランジスタ(BJT)などの、任意の他の適切なスイッチング要素がコモンモードインダクタ10とともに用いられ得る。
【0040】
コモンモードインダクタ10は、コモンモードノイズ、特に、出力AC信号の周波数と比べて比較的高い周波数を有するノイズを抑制するために、スイッチングユニット110の出力端子52、54に接続され得る。図3に示されるように、コモンモードインダクタ10の第1の巻線11はスイッチングユニット110の第1の出力端子52に接続され得、第2の巻線12はスイッチングユニット110の第2の出力端子54に接続され得る。差動信号は第3の巻線13および第4の巻線14内の誘導電流として測定され得る。
【0041】
第1のトランジスタQ1のドレインD1および第2のトランジスタQ2のドレインD2は、例えば、太陽電池パネル(図示されていない)などの、入力DC電源の正極15に電気的に接続され得、その一方で、それぞれの第1および第2のトランジスタQ1およびQ2のソースS1およびS2は第4および第3のトランジスタQ4、Q3のドレインD4およびD3にそれぞれ電気的に接続され得る。第3および第4のトランジスタQ4、Q3のソースS3およびS4は入力DC電源の負極16に電気的に接続され得る。第1のトランジスタQ1のソースS1は第1の出力端子52において第4のトランジスタQ4のドレインD4に電気的に接続され得、それに対して、第2のトランジスタQ2のソースS2は第2の出力端子54において第3のトランジスタQ3のドレインD3に電気的に接続され得る。第1および第2の出力端子52、54はパワーインバータシステム(図3には示されていない)の共通線に接続され得る。
【0042】
4つのトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のゲート端子G1、G2、G3、G4はスイッチ制御回路機構もしくはマイクロコントローラ60に電気的に接続されているか、またはMOSFET Q1、Q2、Q3、Q4を、ゲート電圧をそれらのそれぞれのゲートG1、G2、G3、G4へ供給することによって制御するように適合され得る。スイッチ制御回路機構またはマイクロコントローラ60は、例えば、スイッチングユニット110とともにプリント回路板(図示されていない)上に実装され得る。マイクロコントローラ60はまた、コモンモードインダクタ10にも接続され得、マイクロコントローラに、共通線上で伝送される情報を提供する。
【0043】
マイクロコントローラ60は、パワーインバータシステム100の複数のスイッチングユニット110からの合成出力が、要求されるACに一致する合成マルチレベルACを生成するよう、スイッチングユニット110をインバータモードで動作させるように適合され得る。さらに、マイクロコントローラ60は、スイッチングユニット110を通信モードで動作させることができ、スイッチングユニット110は、複数のスイッチングユニット110のうちの任意のものの2つの連続したスイッチングイベントの間のサイレント期間内に、通信信号を生成し得る。これは、スイッチングユニットQ1、Q2、Q3、Q4を、所望の通信信号を形成する出力を発生するよう動作させ得る、マイクロコントローラ60によって達成され得る。マイクロコントローラ60は、コモンモードインダクタ10のセンサ巻線13、14によって指令信号を中央ユニットから受信し、それに応じてスイッチングユニット110をインバータモードで動作させるように構成され得る。
【0044】
図4は、図1図3を参照して説明された諸実施形態と同様に構成されたパワーインバータシステムおよび中央ユニットを示す。パワーインバータシステム100は、パワーインバータシステム100によって発生された通信信号を受信し、パワーインバータシステム100の動作を制御する指令信号を伝送するように適合され得る中央ユニット130に接続された複数のカスケード接続されたスイッチングユニット110を備え得る。さらに、スイッチングユニット110の各々は、共通線120内の差動信号を測定するためのコモンモードインダクタ10に接続され得る。図4に示されるように、例えば、共通線120内の通信信号の反射を低減するためのターミネータ122などの、さらなる構成要素も設けられ得るであろう。さらなる構成要素は、例えば、出力AC VACを、出力AC VACが例えばグリッドへ出力される前にフィルタリングするためのフィルタ126、および例えば指令信号をフィルタリングするためのフィルタ124であり得る。フィルタ124、126は、例えば、中央ユニット130と構造的に合体され得る。
【0045】
図4において、通信信号および指令信号は点線によって表され、矢印が、パワーインバータシステム100および中央ユニット130の動作の間における信号の経路を概略的に示すために提供されている。図示されているように、通信信号および指令信号は、パワーインバータシステム100のスイッチングユニット110から、共通線120を介して中央ユニット130へ循環し、中央ユニット130から、指令信号(通信信号に基づき得る)はスイッチングユニット110のコモンモードインダクタ10へ出力される/戻される。合成出力AC VOUTは同じ共通線120内で通信信号および/または指令信号として伝送され得るが、出力AC VACとして例えばグリッドへさらに伝送され得る。
【0046】
図5は、図1図4のうちの任意のものを参照して説明された諸実施形態として同様に構成され得るパワーインバータシステムからの合成マルチレベル出力AC VOUTを示す図である。図において、合成出力AC VOUTは電流I(縦軸)として時間t(横軸)の関数として示されている。目下の例示的実施例では、12個のカスケード接続されたスイッチングユニットが、所望の正弦波AC VACに一致する合成マルチレベル出力AC VOUTを発生するために用いられる。スイッチングユニットのスイッチングイベントは横軸上のt、t、・・・、tによって示され、スイッチングユニットに異なる出力レベルの間でスイッチングさせる、指令信号のスイッチング指令に対応し得る。信号送信のために用いられ得るサイレント期間は、2つの連続したスイッチング指令またはスイッチングイベントt、tn+1の間の平坦な段によって概略的に表される。本図では、通信信号はスイッチングイベントtおよびtの間のサイレント期間Tの間に発生される。信号は、例えば、その期間中にスイッチングユニットのうちの1つを通信モードで動作させることによって、すなわち、スイッチングユニットをtとtとの間に複数回スイッチングすることによって、および/または中央ユニットのスイッチングユニットを同様の方法でスイッチングすることによって、発生され得る。それゆえ、通信信号および/または指令信号は合成マルチレベルAC上に重畳され得る。
【0047】
また、上述の実施形態のうちの任意のものを参照して説明されたとおりのコモンモードインダクタは、上述されたとおりの差動通信信号を測定するための方法において用いられ得ることも理解されるであろう。本方法によれば、差動通信信号が第1の巻線および第2の巻線を通して伝送され得、差動通信信号が、第3および第4の巻線内に誘導されたセンサ信号に基づいて測定され得る。このような方法は、このような命令を記憶するコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品の形態で配布され、用いられるコンピュータ実行可能命令として具体化され得る。例として、コンピュータ読取可能媒体は、コンピュータ記憶媒体および通信媒体を含み得る。当業者によく知られているように、コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータなどの情報の記憶のための任意の方法または技術で実装される、揮発性および不揮発性の両方の、着脱式および非着脱式媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、限定するものではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリまたはその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)またはその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置またはその他の磁気記憶デバイスを含む。さらに、通信媒体は通例、搬送波またはその他の輸送機構などの変調データ信号でコンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータを具現し、任意の情報送達媒体を含むことが当業者に知られている。
図1
図2
図3
図4
図5