【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、独立請求項の特徴を有するコモンモードインダクタ、システムおよび方法を提供する。従属請求項は有利な諸実施形態を規定する。
【0007】
第1の態様では、コモンモードノイズの抑制および差動信号の伝送のためのコモンモードインダクタが提供される。インダクタは、第1の巻線および第2の巻線を有するコアであって、第1の巻線および第2の巻線は、差動通信信号を伝達するように配置された導体の対を形成する、コアを含む。さらに、第3の巻線が、第1の巻線の少なくとも一部分に沿って延びるように配置されており、第4の巻線が、第2の巻線の少なくとも一部分に沿って延びるように配置されている。第3の巻線および第4の巻線は第1の巻線および第2の巻線にそれぞれ局所的に誘導結合され得る。さらに、第3の巻線および第4の巻線は、第3および第4の巻線へ変圧される第1および第2の巻線上の差動信号が互いに合算され得るよう(すなわち、増幅され得るよう)、互いに直列に接続されている。それゆえ、第3の巻線および第4の巻線は、第1の巻線および第2の巻線内の差動通信信号によって誘導されたセンサ信号を提供するように適合され得る。
【0008】
第2の態様によれば、システムが提供される。システムは、入力電力を受電し、出力電圧波形および交流電流を出力するように適合されたスイッチングユニットと、第1の態様に係るコモンモードインダクタと、を備える。出力電圧は、それゆえインダクタによって伝達され得る差動信号である。
【0009】
第3の態様によれば、第1の態様に係るコモンモードインダクタ内の、出力AC信号よりも実質的に高い周波数を有し得る、差動通信信号を測定するための方法が提供される。本方法は、第1の巻線および第2の巻線を通して差動通信信号を伝送することと、第3および第4の巻線へ変圧された差動通信信号を測定することと、を含む。
【0010】
コモンモード信号は、第1の巻線および第2の巻線の両方において同じ符号を有する信号と理解され得る。このような信号によって発生された磁界は、インダクタのコア内で合算し得、その結果、インダクタは、信号を阻止する、または減衰させる高インピーダンス構成要素として作用し得る。逆に、第1の巻線および第2の巻線内で異なる符号を有する信号と理解され得るであろう差動信号、磁界は大きな範囲で互いに相殺し得る。したがって、インダクタは、信号を通過させる低インピーダンス構成要素として作用し得る。
【0011】
第1の巻線および第2の巻線は、差動信号が、相互に相殺する、または減衰する磁界をコア内に発生するよう配置され得るが、第3の巻線および第4の巻線は、変圧効果をもたらすために、第1の巻線および第2の巻線にそれぞれ誘導結合され得る。
【0012】
本態様は、第3の巻線および第4の巻線が、インダクタを通して伝送される差動信号を測定するためのセンサ巻線を形成するために用いられ得るとの理解を利用する。これは、コモンモードインダクタを元から備えるシステムにおいて特に有利であり、それは、その構成要素が、追加の第3の配線および第4の配線によって複合センサデバイスへ補完または拡張され得るためである。それゆえ、別個の感知または測定デバイスをさらに追加せずとも、センサまたは測定の機能性がもたらされ得る。さらに、これは、共通(電力)線内で伝送される信号が測定されることを可能にし、これは、別個の通信チャネルおよび追加のケーブルまたは無線の通信手段の必要性を解消し得る。さらに、既存の構成要素を用いることによって、追加の感知段階、または信号を受信するための受信器の必要性がなくなる。その代わりに、電気システムの既存の機器が追加の通信目的のために用いられ得、これが、部品目録、サイズ、および例えば、製造および保守に関連するコストの低減を可能にする。
【0013】
上述されたように、コモンモードインダクタ(コモンモードチョークまたはコモンモードチョークコイルもしくはコイル群とも呼ばれる)は、本出願の文脈では、コモンモード電流に対してインダクタとして作用するが、ディファレンシャルモード電流のためにはインダクタとして作用しない電気部品を指し得る。それゆえ、コモンモードインダクタは、差動信号送信または電力伝送におけるフィルタリングの目的のために用いられ得、フィルタリング効果は主としてコモンモードに関して望まれ得る。導体は、磁気コア上に反対方向に巻かれた差動導体の対を形成する2つのコイルを含み得る。巻線は、巻線内のディファレンシャルモード電流によって生成された磁界は互いに相殺する傾向を有し、それに対して、巻線内のコモンモード電流からの磁界は合算する傾向を有し、これにより、コモンモードノイズを抑制するインピーダンスをもたらすような方法で構成され得る。
【0014】
センサ巻線、すなわち、第3の巻線および第4の巻線を第1の巻線および第2の巻線の少なくとも一部に沿って配置することによって、電磁相互作用が第1の巻線および/または第2の巻線とセンサ巻線との間に達成され得る。電磁相互作用のゆえに、差動信号または電力がインダクタ内を流れるのに従い、センサ信号がセンサ巻線内に誘導され得る。第3の巻線および第4の巻線の直列接続は、ディファレンシャルモードでは、電流が第3の巻線および第4の巻線内に同じ方向に誘導されることを可能にする。逆に、電流は、コモンモードでは、異なる方向に誘導され得、それにより、第3の巻線内に誘導された電流は、第4の巻線内に誘導された電流に対抗するか、またはそれを相殺し得る。それゆえ、ディファレンシャルモード動作の間に誘導された電流は、センサ巻線から引き出され、ディファレンシャルモードにおいてコモンモードインダクタ内を流れる差動信号の尺度として用いられ得るセンサ信号に合算してなり得る。
【0015】
センサ信号は差動信号に対応し得、それゆえ、差動信号を決定または測定するために用いられ得る。これにより、これらの態様は、コモンモードノイズが抑制されることを可能にし、その一方で、ディファレンシャルモード信号は、比較的低いディファレンシャルモード含有量に対してさえも変圧され得る。
【0016】
差動信号は、例えば、システム内の電圧または電流に関する情報、ならびに例えば、電気システムの温度、能力および性能に関する他のパラメータを含み得る。
【0017】
一実施形態によれば、コモンモードインダクタのコアは、強磁性、および/またはリング状、C字状もしくはE字状であり得る。
【0018】
一実施形態によれば、第1の巻線および第2の巻線は、DC源などの入力電源に接続されたスイッチングユニットからの差動出力ACを伝達するように適合され得る。ディファレンシャルモード電力は共通線内でディファレンシャルモード通信信号と一緒に転送され、それゆえ、インダクタのセンサ巻線によって測定され得る。差動通信信号は、例えば、差動出力AC上の重畳信号として伝達され得る。さらに、差動通信信号は、スイッチングユニットを動作させるための命令を含み得る。本実施形態は、スイッチングユニットが同じ線を介してACを出力し、例えば、動作命令などの、情報を受信し得るため、スイッチングユニットにおいて有利である。差動信号のための追加の通信チャネルは必要ない。同時に、コモンモード信号はインダクタによって阻止されるか、または減衰させられ得る。
【0019】
一実施形態によれば、スイッチングユニットは、カスケード接続構成で互いに電気的に接続された複数のスイッチングユニットを備えるパワーインバータシステムの一部を形成し得る。スイッチングユニットの各々は、例えば、太陽電池パネルからのそれぞれの入力電力を受電するように適合され得る。さらに、スイッチングユニットの各々は、共通線へ出力される合成出力ACを生成するよう個々に制御され得る。スイッチングユニットは、差動信号を介して伝送され、コモンモードインダクタのセンサ巻線によって受信され得る指令信号に応じて動作させられ得る。
【0020】
スイッチングユニットの個々の制御は、それぞれの入力電力が経時的に変化し、および/または予測が難しい適用物およびシステムにとって特に意味がある。例えば、出力電力が電圧と電流との非線形関係によって決定され得る、太陽光発電素子または太陽光パネルにおける場合がこれに当たり得る。通過する影のような事象、または汚染、経年化の差、もしくは製造時の相違に起因するパネル性能の相違が、パネルのアレイが全体としてそのピーク効率点で動作することを妨げ得る。本態様は、各パネルが、各スイッチングユニットにおけるコモンモードインダクタによって測定された差動信号に応じて個々に動作させられ得るそれぞれのスイッチングユニットに接続され得る解決策を提供する。それゆえ、スイッチングユニットの動作は動作中の特定の要求に適応させられ得る。
【0021】
一実施形態によれば、パワーインバータシステムは、スイッチングユニットのうちの少なくとも一部の動作を制御するための指令信号を発生するように適合された中央ユニットに接続され得る。中央ユニットは、スイッチングユニットのうちの1つもしくは数個の電流状態を示す情報、入力電圧もしくは電流、発生された出力電圧もしくは電流を示す尺度、または例えば、パワーインバータシステムに接続された太陽電池パネルの所望の出力AC、温度、もしくは性能に関するさらなる情報を受信するように適合され得る。中央ユニットは、指令信号を発生するように構成され得、指令信号は共通線を介してスイッチングユニットへ伝送され、そこで、指令信号はコモンモードインダクタによって決定され得る。それゆえ、パワーインバータシステムのスイッチング動作は、指令信号によって搬送された、受信された情報またはパラメータに基づき得る。
【0022】
いくつかの例では、指令信号は、スイッチングユニットに、電力を出力または受電させ、好ましくは、特定のレベル(正、0、負、またはそれらの間の電圧)の電圧を出力させる状態指令を含み得る。追加的に、または代替的に、状態指令は、スイッチングユニットに、電力または電圧の出力を停止させ得る。指令信号はまた、スイッチングユニットに、正電圧、負電圧、0電圧、およびこれらの間の電圧のうちの2つ以上の任意の組み合わせを出力させるさらなる指令、または代替的指令をも含み得る。
【0023】
一実施形態によれば、スイッチングユニットはHブリッジコンバータである。Hブリッジコンバータは、例えば、4つの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、または任意の他の種類の半導体スイッチもしくはトランジスタを含み得る。スイッチングユニットはまた、例えば、ハーフブリッジコンバータでも形成され得る。しかし、用語「スイッチングユニット」は、本出願の文脈では、入力DC電力を受電し、2つ以上の異なる電圧/電流レベルのマルチレベル出力を生成する能力を有する任意の電気部品を示し得ることが理解されるであろう。
【0024】
一実施形態によれば、スイッチングユニットは、スイッチングユニットが、共通線上で転送される合成出力電圧波形を生成するよう、指令信号のスイッチング指令に応じて個々にスイッチングされるインバータモード、およびスイッチングユニットが、共通線上で伝送される通信信号を生成するよう、2つの連続したスイッチング指令の間でスイッチングされる通信モードで動作可能であり得る。スイッチングユニットのうちの少なくとも1つは、残りのスイッチングユニットがそれらの現在の状態に維持されている間に、すなわち、残りのスイッチングユニットがスイッチングされていない間に、通信モードで動作させられ得る。本実施形態は、出力電圧波形のサイレント期間、すなわち、スイッチングユニットの2つの相互に隣接したスイッチングイベントの間に位置し、マルチレベル出力電圧波形の電圧が比較的一定であり、比較的低い高調波含有量を有する時間期間が、合成出力電圧波形上の重畳通信信号を伝送するために利用され得るという点で、有利である。通信信号は、スイッチングユニットのうちの1つまたは数個を、残りのスイッチングユニットが「サイレント」である間、すなわち、スイッチングしない現在の状態のままとどまらせている間に、スイッチングすることによって提供され得る。換言すれば、スイッチングユニットは、2つの異なるモード − 合成多段出力電圧波形を発生するインバータモード、および通信信号を発生する通信モード − で動作すると見なされ得る。インバータモードでは、スイッチングユニットの各々または少なくとも一部は、所望の多段出力電圧波形を形成するよう、指令信号のスイッチング指令に基づいてスイッチングされ得る。2つの相互に隣接したスイッチング指令によって規定される期間は、この期間中には、出力が、不必要な高調波の観点から比較的低くなり得るため、多段出力電圧波形のサイレント期間と呼ばれ得る。換言すれば、出力電圧波形は、このサイレント期間中には、比較的低いノイズを有し得、比較的低いノイズレベルは通信信号のフィルタリングおよび増幅の必要性を低減し得るため、これは、信号送信に関して特に有利である。このサイレント期間内に、スイッチングユニットのうちの1つまたは数個が通信モードで動作させられ得、このモードにおいて、これらは、重畳通信信号を発生するために複数回スイッチングされ得る。
【0025】
中央ユニットは、上述されたのと同様の方法で、すなわち、信号を伝送するためのサイレント期間を用いて動作し、指令信号を発生するように適合されたスイッチングユニットを備え得ることは理解されるであろう。
【0026】
一実施形態によれば、コモンモードインダクタは中央ユニットに設けられており、共通線を介して、スイッチングユニット(単数または複数)において発生された通信信号を受信するように配置され得る。通信信号は、例えば、グリッド電圧波形などの、要求電圧波形の周波数、位相、振幅および高調波のうちの少なくとも1つを表し得る。情報は、受信された通信信号に基づいて指令信号を算出するように適合されたプロセッサによって処理され得る。算出された指令信号は、その後、共通線を介して出力され、スイッチングユニットへ転送され得、スイッチングユニットは、それに応じて、複数のスイッチングユニットからの合成出力が、要求電圧波形に一致する電圧波形を生成するよう、個々に制御され得る。
【0027】
本出願の文脈において、用語「出力電圧波形」、「出力電圧」、「出力電力」、「AC」、「交流電流」および「交流電圧」は交換可能に用いられ得る。パワーインバータシステムまたはスイッチングユニットから出力される電力は、交流電流を駆動する交流電圧と理解され得る。
【0028】
また、本態様は高電力伝送システム内で実施されるか、または高電力伝送システムとして実現され得ることも理解されるであろう。
【0029】
本態様は、プログラム可能なコンピュータを、コンピュータが、以上において概説された方法を遂行するよう制御するためのコンピュータ読取可能命令として具体化され得る。このような命令は、命令を記憶するコンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品の形態で配布され得る。特に、命令は中央ユニットのマイクロコントローラ内にロードされ得る。
【0030】
以下の詳細な開示、図面、および添付の請求項を吟味することで、本態様のさらなる目的、特徴、および利点が明らかになるであろう。当業者は、本態様の異なる特徴は、たとえ、異なる請求項に記載されている場合でも、以下に説明されているもの以外の諸実施形態において組み合わせられ得ることを認識する。
【0031】
本発明の、上述ならびに追加の目的、特徴および利点は、本発明の諸実施形態の以下の例示の非限定的な詳細説明を通じて、より深く理解されるであろう。添付の図面が参照されることになる。