特許第6556959号(P6556959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556959ジアルキル−ポリアルキルアミン組成物、それらの製造方法およびそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556959
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ジアルキル−ポリアルキルアミン組成物、それらの製造方法およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/14 20060101AFI20190729BHJP
   C07C 209/48 20060101ALI20190729BHJP
   C07C 255/24 20060101ALI20190729BHJP
   C07C 253/18 20060101ALI20190729BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20190729BHJP
   C10M 149/22 20060101ALI20190729BHJP
   B01J 27/10 20060101ALI20190729BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   C07C211/14
   C07C209/48
   C07C255/24
   C07C253/18
   C10M133/06
   C10M149/22
   B01J27/10 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-544319(P2018-544319)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公表番号】特表2019-508425(P2019-508425A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2017054281
(87)【国際公開番号】WO2017148808
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年10月17日
(31)【優先権主張番号】62/300,992
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16161213.0
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オスカーソン,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ボーウェン,リネット スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ジャニャーク,ジョン アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】バンド,エリオット イサーク
(72)【発明者】
【氏名】ラス,クリスタン アレクサンダー
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0049310(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/076929(WO,A1)
【文献】 特開2000−034259(JP,A)
【文献】 特開平03−240757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 211/14
B01J 27/10
C07C 209/48
C07C 253/18
C07C 255/24
C10M 133/06
C10M 149/22
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)および(II)
【化1】
(式中、各Rは、他のRから独立して、8〜22個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルキレン部分であり、nおよびzは互いに独立して0、1、2または3であり、z>0の場合、oおよびpは互いに独立して0、1、2または3である)
の化合物から選択されるポリアルキルアミンまたはその誘導体の混合物を含む、ジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン組成物であって、
記ポリアルキルアミン誘導体が、メチル化されたもの、もしくはアルコキシル化されたもの、またはその両方であり、
前記混合物が、a)nおよびzのうちの少なくとも1つが>=1である式(I)の化合物と、n>=1である式(II)の化合物との合計を少なくとも3重量%、およびb)n=0およびz=0である式(I)の化合物と、n=0である式(II)の化合物との合計を少なくとも5重量%含む、ジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン組成物。
【請求項2】
nおよびzのうちの少なくとも1つが>0である式(I)の化合物と、n>0である式(II)の化合物との合計を少なくとも4%w/w、少なくとも5%w/w、少なくとも6%w/w、少なくとも7%w/w、少なくとも7.5%w/w、少なくとも10%w/w、または少なくとも20%w/w含む、請求項1に記載のポリアルキルアミン組成物。
【請求項3】
式(I)および(II)においてnが0であり、式(I)においてzが0である、直鎖状構造を有する式(I)および(II)の化合物を少なくとも5重量%含む、請求項1または2に記載のポリアルキルアミン組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアルキルアミン組成物を製造する方法であって、ジ脂肪アルキル(アルキレン)アルキルジアミンを2回以上のサイクルで反応させ、各サイクルがシアノエチル化ステップおよびその後の水素化ステップを含む、方法。
【請求項5】
前記シアノエチル化ステップ中に酸性触媒を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性触媒がHClまたは酢酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
後のシアノエチル化ステップ中の反応温度が、前のシアノエチル化ステップの温度よりも高い、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
出発ポリアミン1モル当たり1モル超のアクリロニトリルを使用する、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアルキルアミン組成物を製造する方法であって、ジ脂肪アルキル(アルキレン)アルキルジアミンを、シアノエチル化ステップおよびその後の水素化ステップに供し、前記シアノエチル化ステップにおいて、ジ脂肪アルキル(アルキレン)アルキルジアミン1モル当たり少なくとも2モルのアクリロニトリルを使用し、かつ酸性触媒を使用する、方法。
【請求項10】
前記ジ脂肪アルキル(アルキレン)アルキルジアミンを、シアノエチル化ステップおよびその後の水素化ステップを含む1回または複数のさらなるサイクルに供する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シアノエチル化ステップにおいて、C1〜4アルコールおよびC2〜4ジオールから選択される1種または複数の溶媒が存在する、請求項4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶媒の量が液体反応混合物の0.1〜50重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンがメチル化、アルコキシル化、またはその両方を受ける、追加のステップを含む、請求項4から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
水中油型エマルションの解乳化剤、腐食防止剤、燃料添加剤、抗スケーリング剤、アスファルト添加剤、油井用石油増進回収剤、切削油添加剤、および帯電防止剤としての、請求項1から3のいずれか一項に記載のジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキルアミン部分が特定のレベルの分枝を示すジ脂肪アルキル(またはアルキレン)ポリアルキルアミンの組成物、そのような組成物の製造方法、および種々の用途におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンは周知であり、とりわけアスファルト用途に使用される。
【0003】
国際公開第2006/076929号パンフレットは、完全に第三級のモノ脂肪アルキルポリアルキルアミンの合成における中間体として、1つの脂肪アルキル部分を有する完全に直鎖状の生成物を開示している。反応経路は言及されているが、反応条件は明確ではなく、ただ1つの脂肪アルキル部分を有する生成物は、純粋なようである。完全に第三級のモノ脂肪アルキルトリアミンの塩は、水性の緩結性ビチューメン・骨材混合物中での使用に適していると言われている。
【0004】
米国特許第4,967,008号明細書は、第一級、第三級および任意選択で第二級アミン部分を有するモノ脂肪アルキルポリアルキルアミンに関する。例示的な生成物は、直鎖状N−タロー−N−メチルジプロピレントリアミンである。米国特許第4967008号明細書の方法における中間体は第2のシアノエチル化ステップの前にメチル化されているので、生成物に分枝は存在しない。
【0005】
CAS登録番号1623405−26−4から、CAS名称「N’−{3−[(3−アミノプロピル)アミノ]プロピル}−N,N−ジ−C16〜18アルキルトリメチレンジアミン類」を有する直鎖状ジ脂肪アルキルテトラミンが知られている。
【0006】
米国特許出願公開第2003/049310号明細書は、多量のカチオン性脂質およびリポソームにおけるそれらの使用を開示しており、機能性生物活性剤を培養細胞に導入する。特許請求されたようなポリアミンの混合物は、開示も示唆もされていない。
【発明の概要】
【0007】
潤滑油については、過去に種々のアミンが評価されてきた。特に、2ストローク船舶用エンジンの場合、排出ガス規制の変更により、その上使用される種々の燃料のために、潤滑油において使用するための、特に2ストロークディーゼル船舶用エンジンの潤滑用に、硫黄含有油を燃焼させるエンジンに使用する潤滑油において特に使用するための、改善されたアミン配合物が必要であることが知られている。
【0008】
驚くべきことに、特定の量の直鎖状および分枝状分子を有するジ脂肪アルキル(アルキレン)テトラミンの組成物は、潤滑油において、ならびに水中油型エマルションの解乳化剤や、腐食防止剤、燃料添加剤、抗スケーリング剤、アスファルト添加剤、油井からの石油増進回収剤、切削油添加剤、および帯電防止剤としての一般的な使用など、ポリアルキルアミンを使用することが知られている他の用途において使用する場合、優れた特性を示すことが見出された。さらに、ジ脂肪アルキル(アルキレン)テトラミンを製造するための特許請求された方法は、所望の組成物の製造において非常に経済的であることが見出された。
【0009】
したがって、本発明は、式(I)および(II)
【0010】
【化1】
(式中、各Rは、他のRから独立して、本明細書で定義するように、8〜22個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の脂肪アルキルまたは脂肪アルキレン部分であり、nおよびzは互いに独立して0、1、2または3であり、z>0の場合、oおよびpは互いに独立して0、1、2または3である)
の化合物から選択される1つまたは複数のポリアルキルアミンまたはそれらの誘導体の混合物を含む、そのようなジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン組成物であって、
前記混合物が、nおよびzのうちの少なくとも1つが>=1である、少なくとも3重量%の化合物を含み、前記混合物が、純粋な直鎖状構造を有する、少なくとも5重量%の化合物を含む、ジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン組成物に関する。直鎖状および分枝状両化合物を有するそのような混合物は、望ましい粘度プロファイルを有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態では、混合物中の直鎖状構造を有する生成物の量は、全ポリアルキルアミンの重量に基づいて6、7.5、10または14重量%またはそれ以上である。一実施形態では、混合物中の直鎖状生成物は、nおよびzが0である式(I)の生成物である。一実施形態では、混合物中の直鎖状生成物は、nが0である式(II)の生成物である。
【0012】
一実施形態では、混合物は、全てのポリアルキルアミンの重量に基づいて、少なくとも4重量%(%w/w)、好適には少なくとも5%w/w、好適には少なくとも6%w/w、好適には7%w/w超、好適には7.5%w/w超、好適には10%w/w超、好適には20%w/w超の分枝状化合物を含み、この分枝状化合物は、式(I)の生成物では、nおよびzのうちの少なくとも1つが>=1である。このことは、式(II)の生成物では、分枝状生成物についてnが>=1でなければならないことを意味する。
【0013】
n、o、p、またはzが0であるときはいつでも、水素は窒素に共有結合していることに留意されたい。経済的理由のため、n、o、pおよびzの各々は独立して、0でない場合、1または2、好ましくは1である。
【0014】
2つのR基は異なっていてもよいが、一実施形態では、そのような物質は、より経済的に製造されるため、同じである。R基の一方または両方は、それらが同じであるか否かにかかわらず、独立して、典型的には、化学原料由来または天然油脂などの天然源由来である。特に、天然源を使用する場合、それは、各R基が一定の炭素鎖長分布を有し得ることを意味する。好適には、Rは、タロー、ヤシ油およびパーム油などの動物性および植物性油脂由来である。本発明によるジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンの製造には水素化ステップが含まれるので、特許請求された方法を用いて本発明の生成物を調製する前に、水素化R基を使用することが有益となり得る。しかし、特定の原料では、水素化後でさえ、かなりの量の不飽和結合が残ることがある。好適には、完全に水素化されたタロー基をR基として使用し、ジ脂肪アルキルポリアルキルアミンの対応する混合物を形成する。あるいは、R基の原料は不飽和であり、したがって不飽和R基は、プロセス中に、全部または部分的に水素化して、ジ脂肪アルキルポリアルキルアミンとジ脂肪アルキレンポリアルキルアミンとの混合物である、特許請求されたジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンを製造してもよい。1つの完全飽和R基および1つの不飽和R基を有する生成物も、本発明の生成物を指す。
【0015】
したがって、本明細書で使用する場合はいつでも、「ジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン」は、ジ脂肪アルキルポリアルキルアミン、ジ脂肪アルキレンポリアルキルアミン、脂肪アルキル脂肪アルキレンポリアルキルアミン、およびそれらの混合物を指す。
【0016】
「からなる」という用語は、本明細書で使用する場合はいつでも、「実質的に、からなる」ことを包含するが、任意選択で「完全に、からなる」という厳密な意味に限定されてもよい。
【0017】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という単語およびその単語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」とは、「含む(including)がこれに限定されない」ということを意味し、他の部分、添加物、成分、整数またはステップを排除するものではない。さらに、単数形は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、複数形を包含し、特に不定冠詞を使用する場合、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、明細書は複数形および単数形を意図していると理解されるべきである。
【0018】
特性のために、例えば成分の濃度のために、上限および下限を引用する場合、上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによって定義される値の範囲も含意され得る。
【0019】
本明細書で開示された詳細な説明の様々な態様および実施形態は、本発明を製造および使用する特定の方法の例示であり、特許請求の範囲および詳細な説明を考慮すれば本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。さらに、本発明の異なる態様および実施形態の特徴は、本発明の異なる態様および実施形態の特徴と組み合わせることができることも理解されるであろう。
【0020】
本発明のジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンの誘導体は、本発明のジアルキルポリアルキルアミンの1つまたは複数のNH部分がメチル化された、アルコキシル化された、またはその両方である生成物を含む。このような生成物は、特に潤滑油中でジアルキルポリアルキルアミンが望ましい溶解性を有することが見出された。アルコキシル化誘導体は、好適には、ブトキシル化、プロポキシル化および/またはエトキシル化される。2つ以上の異なるアルコキシル化剤を使用する場合、任意の配列、例えばEO−PO−EOで使用することができ、種々のアルコキシ単位は、ブロック性であってもよく、かつ/またはランダムに存在してもよい。好適には、第一級−NH基は、従来の方法で1つまたは複数のアルキレンオキシドでアルコキシル化されて−NH−AO−H基を形成し、ここでAOは1つまたは複数のアルキレンオキシ単位を表す。得られた−NH−AO−H基を、さらにアルコキシル化して−N(AO−H)基を形成することができる。特に、多量のアルキレンオキシド(すなわち、ポリアルキルアミン分子当たり8個超のAO分子)を使用する場合、典型的にはまた、第2級アミン官能基が存在する場合には、その第2級アミン官能基の1つまたは複数をアルコキシル化する。一実施形態では、ジアルキルポリアミンの全ての第1級および第2級アミン官能基を、アルコキシル化する。別の実施形態では、ジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンは、従来の方法、例えばギ酸とホルムアルデヒドとの反応によって、1つまたは複数のN−H官能基をメチル化することにより、誘導体化する。別の実施形態では、アルコキシル化されたジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンの1つまたは複数のO−H官能基は、従来の方法でメチル化する。
【0021】
本発明者らは以下の理論に縛られることを望まないが、完全に分枝状または完全に直鎖状の生成物と比較した場合、特許請求されたジアルキルポリアルキルアミン組成物の有益な特性は、組成物中のアミンの特別な相互作用にあると考えられる。より具体的には、直鎖状生成物および分枝状生成物の混合物は、組成物を使用する流体のレオロジー特性および耐腐食特性の所望の組み合わせを達成するための成分であると考えられる。
【0022】
この理論を考慮すると、多数の異なる分枝状分子を有する生成物を有することが好ましいことがある。この場合、式(I)のポリアルキルアミンの混合物を含む組成物が好ましい。しかし、式(II)のポリアルキルアミンの混合物を含む組成物は、製造がより経済的となり得るため、特定の状況下では、式(II)のポリアルキルアミンの混合物を含む組成物が好ましいことがある。好適であれば、式(I)および(II)のジアルキル(アルキレン)ポリアルキルアミンの混合物を含む組成物を使用する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、nおよびzが0である式1の直鎖状生成物と組み合わせた両方の分枝状生成物を含む組成物の使用に関し、この組成物は所望のレオロジーおよび特性も示すことが見出された。
【0024】
特許請求された組成物は、好適には、水中油型エマルションの解乳化剤、腐食防止剤、燃料添加剤、抗スケーリング剤、アスファルト添加剤、油井からの石油増進回収剤、切削油添加剤、帯電防止剤、および潤滑油の添加剤、特に様々な量の酸性の汚染物質、具体的には硫酸の汚染物質を含む機械用潤滑油の添加剤として使用される。1つの特定の興味深い使用分野は、可用性、価格、および環境規制に応じて、それぞれ異なる硫黄含有量を有する、種々の燃料で典型的に運転される2ストローク船舶用ディーゼルエンジンである。
【0025】
特許請求されたジアルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン混合物は、特許請求された混合物が得られるような順序および方法で実施される従来のプロセスステップを用いて製造することができる。それらを製造するための好適な方法は、以下の実験の項に記載されており、ジアミンから出発して、2回以上、経済的な理由から好ましくは2回のサイクルを含み、そのサイクルが、それぞれシアノエチル化ステップおよび水素化ステップを含む(以下、2サイクルプロセス)。しかし、1当量のジアルキルジアミンを1ステップで2当量以上のアクリロニトリルと反応させた後に水素化し、任意選択のさらなるサイクルにシアノエチル化および水素化ステップが含まれる代替の方法は、必要な反応ステップがより少ないので、有益でありうる。
【0026】
2サイクルプロセスにおいて分枝を増加させるために、HClまたは酢酸などの酸性触媒を使用する。また、シアノエチル化中の反応温度を上昇させると、このプロセスにおいて分枝が増加する。マルチサイクルプロセスの一実施形態では、所望の分枝を有する生成物を得るために、後のシアノエチル化ステップの温度は、前のシアノエチル化ステップの温度よりも高い。一実施形態では、出発ポリアミン1モル当たり1モル超のアクリロニトリルを使用し、これにより、得られた生成物の分枝が、所望のレベルに増加することも見出された。
【0027】
各シアノエチル化ステップの温度は、70〜125℃の範囲で好適に選択する。一実施形態では、反応は、経済的理由から、最高80℃、85℃、90℃、95℃、または100℃の温度で実施する。
【0028】
均質な反応混合物を維持するために、溶媒を好適に使用する。好適な溶媒としては、C1〜4アルコールおよびC2〜4ジオールが挙げられる。エタノールは取扱いの容易さから最適な溶媒となり得る。驚くべきことに、C1〜4アルコールおよびC2〜4ジオールは、単なる溶媒ではないことが見出された。それらはまた、シアノエチル化ステップにおいて共触媒活性を有することが判明した。
【0029】
使用する溶媒の量は、広い範囲にわたって変えることができる。経済的な目的のために、その量は、典型的には最小限に抑えられている。特にシアノエチル化ステップにおける溶媒の量は、好適には液体反応混合物の50重量%、40重量%、30重量%または25重量%未満である。特にシアノエチル化ステップにおける溶媒の量は、好適には液体反応混合物の0.1重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%または10重量%超である。
【0030】
本発明のジ脂肪アルキル(アルキレン)ポリアルキルアミン組成物は、特に切削油および潤滑油において腐食防止剤として特に好適であることが見出された。しかし、それらはまた、水中油型エマルションの解乳化剤、燃料添加剤、抗スケーリング剤、アスファルト添加剤、油井用石油増進回収剤として、および帯電防止剤としても好適に使用される。
【実施例】
【0031】
Duomeen(登録商標)2HTは、AkzoNobelから入手可能である。
別段の記載がない限り、他の化学物質はSigmaAldrichから調達した。
【0032】
[実施例1]
Prominent Gamma/L膜ポンプを使用して化学薬品を投入することができ、Lauda K6KP加熱浴を用いて温度調節を行う、タービン攪拌棒を備えた1Lガラス反応器を使用して、4アミン官能基を有する完全分枝状生成物を調製した。
【0033】
原材料
【0034】
【表1】
【0035】
手順および結果
シアノエチル化ステップは、反応器にDuomeen 2HT、イソプロパノール(形成されるジシアノ生成物の共触媒および溶媒)、水およびHClを充填し、続いて約3時間以内にアクリロニトリルを投入して実施する。反応経路:
【0036】
【化2】
HTは水素化タローを表す。
【0037】
80%転化後、反応が停止するほど遅くなった。反応器に真空を適用し、温度を110℃に上昇させてアクリロニトリル、水およびIPAを除去した。生成物を洗浄し、4%NaCO溶液で2ステップで中和して、全てのHClを除去し、続いて同じ装置を用いて水素化した。反応経路:
【0038】
【化3】
【0039】
さらに、ジシアノ生成物を含む攪拌した反応器に、Johnson MattheyのA−7000またはCatAlloyのActicat(登録商標)1100などの慣用のラネーコバルト触媒を充填し、続いて窒素をスパージしながら130℃に加熱して微量のアクリロニトリルおよび水を除去した。次いで、105℃の温度に保ちながら、反応器にアンモニア(13〜14barg)を充填した。次いで、反応器を150℃に加熱し、水素を加えて49bargの圧力を維持した。反応完了後、温度を80℃に下げ、残留水素およびアンモニアを窒素でフラッシングした。
【0040】
得られた組成物をGC−MSを用いて分析したところ、n=1の式(II)の生成物2HTYを>70%、ならびに直鎖状生成物(HT)N−(CH−NH−(CH−NHを14%w/w超、少量の出発生成物(HT)N−(CH−NHおよび若干の同定されていないさらなるアルキルアミンを含んでいることが見出された。
【0041】
[実施例2aおよび2b]
直鎖状生成物および分枝状生成物の混合物(Tetrameen 2HTb)を、上記のシアノエチル化ステップおよび水素化ステップを繰り返す2サイクルプロセスによって調製した。0.6モルのDuomeen 2HTを0.65モルのアクリロニトリルと混合し、第1のシアノエチル化ステップで反応させた。水素化後、トリアミンを追加の0.65モルのアクリロニトリルと混合し、反応させた。各シアノエチル化ステップの終了時に、NMRを用いて反応混合物を分析し、1モルのアクリロニトリルが1モル当たりの出発物質に反応したかどうかを判定した。反応が低すぎると判明した場合、追加のアクリロニトリルをいくらか投入し、1時間後に分析を繰り返した。所望の反応を得るまで、このサイクルを繰り返した。最終生成物を、以下の条件を適用してGC−MSを用いて分析した。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例では、実施例2aおよび2bそれぞれについて、85℃および75℃の温度で実施した第1のシアノアクリル化(cyanoacrylation)ステップの後に、追加のアクリロニトリルを添加する必要がなかった。第2のシアノアクリル化(cyanoacrylation)ステップでは、温度は実施例2aおよび2bについてそれぞれ、85℃および80℃であった。実施例2aでは、第2のシアノアクリル化(cyanoacrylation)ステップを完了するために0.025モルのアクリロニトリル追加量を必要としたが、実施例2bでは0.12モルのアクリロニトリル追加量を添加して、追加のアクリロニトリルは0.60モルになった。最も高い温度の試料2aにおいて、最も多い分枝量を観察した。
【0044】
室温でペースト状/粘性の液体であったオフホワイトの生成物は、nおよびzのうちの1つまたは複数が>=1である式(I)の分枝状生成物を13.8%w/wより多く含み、また、n=z=0の直鎖状生成物を14%w/wより多く含んでいたことが確認された。
【0045】
[実施例3〜5]
市販の潤滑油(Talusia HR70、過塩基性であり、CaCOを含む、Total LubMarine製)に、5wt%の実施例2aの2HTb、2HTYまたは2HTYおよび2HTbの50/50ブレンドを添加し、完全に混合し、その後、50BNポイントの潤滑油組成物を95%硫酸で中和して、船舶用エンジンにおける潤滑組成物の実際の使用条件により近くなるように組成物の中和現象をシミュレートした。
【0046】
本プロセスでは、過塩基性清浄剤と共にアミンが硫酸を中和する。生成した硫酸イオンは、正に荷電したアンモニウム基の対イオンとなり、かつ/またはCaCOのカルシウムと反応してセッコウCaSOを形成する。
【0047】
上記で調製した潤滑油およびアルキルポリアミンの3種の酸性化ブレンドの40℃での粘度(Pa・s)の測定は、表に示すように0.05s−1の剪断速度で粘度を測定することによって実施した。全ての測定は、TA instruments製のAR−G2レオメーターにおいて40℃で実施した。
【0048】
【表3】
これらの試料は全て、許容可能な粘度を示す。
【0049】
[比較実施例A〜C]
実施例3〜5について記載したように調製した、潤滑油におけるAkzoNobelの市販モノオレイルトリプロピレンテトラミン(Tetrameen OV)およびAkzoNobelの市販モノタロートリプロピレンテトラミン(Tetrameen T)の酸性化ブレンドを、その粘度について分析し、2HTbブレンドおよび潤滑油のみの粘度と比較した。
【0050】
【表4】
結果は、Tetrameen OVおよびTetrameen Tが、許容できない粘度の酸性化ブレンドをもたらしたことを示している。
【0051】
[比較実施例D〜F]
実施例3〜5について記載したように調製した、潤滑油におけるAkzoNobelの市販二水素化タロージプロピレントリアミン(Triameen(登録商標)2HT)およびAkzoNobelの市販二水素化タロープロピレンジアミン(Duomeen(登録商標)2HT)の酸性化ブレンドを、トリアミンの量を6.2%w/wに増加させ、Duomeenの量を8%w/wに増加させて同じ全塩基価を達成して、その粘度について分析し、比較例A〜Cのブレンドの粘度と比較した。剪断速度0.05s−1での粘度(Pa・s)は、Tetrameen OVの粘度とTetrameen Tの粘度の間であることが判明して、ここでもまた望ましくない高粘度を示した。
【0052】
[メンタル(Mental)実施例6]
この実施例では、実施例1、2aおよび2bの化合物は、水中油型エマルションの解乳化剤、腐食防止剤、燃料添加剤、抗スケーリング剤、アスファルト添加剤、油井用石油増進回収剤、切削油添加剤、および帯電防止剤、として使用する。これらの化合物は、この分子量を有するジ脂肪アルキル(アルキレンン)ポリアルキルアミンの典型的な性能を示すだけでなく、驚くべき粘度プロファイルも示す。