(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象である流体を通過させる計測流路を備えた筒状の管本体と、流体が流れる前記管本体の上流位置と下流位置とにそれぞれ配置され相互に超音波信号を伝播させる一対の超音波センサとを備え、
一方の超音波センサから他方の超音波センサまでの超音波信号の伝播時間と、他方の超音波センサから一方の超音波センサまでの超音波信号の伝播時間との到達時間差から測定対象である流体の流量を測定する超音波流量計であって、
前記管本体は、前記計測流路と連通する計測空間を含み、当該計測空間は、前記一対の超音波センサの超音波伝播経路を規定し、
前記超音波伝播経路は、前記計測流路の中心軸に対して斜めに交差する中心軸を有し、
前記超音波流量計はさらに、
前記一対の超音波センサを保持する一対の超音波センサユニットと、
前記一対の超音波センサユニットを保持する一対の超音波センサユニット保持部と、を備え、
前記一対の超音波センサユニット保持部は、前記計測流路の中心軸を含む面と直交する方向に開口し、前記一対の超音波センサユニットを同一方向から挿入して保持可能な開口部を含み、
前記一対の超音波センサユニットは、前記超音波センサが前記超音波伝播経路の中心軸に沿った方向に超音波信号を送出するように前記超音波センサユニット保持部に配置されることを特徴とする超音波流量計。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態を
図1〜8に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の超音波流量計1の使用状態を示す斜視図であり、周辺との接続関係の例も示す。
図2は、本実施形態の超音波流量計1の分解斜視図を示す。
図3は、
図1のA−A断面であり、管本体2の計測流路中心線CL1に沿った水平断面図である。
図4は、
図3のB−B断面であり、計測空間中心線CL2に沿った垂直断面図である。なお、本願においては構成の説明の便宜上、図示された姿勢において鉛直や水平の語を説明に用いるが、いうまでもなく実際の超音波流量計の設置の姿勢はこれに限定されるものではない。
【0029】
(超音波流量計1の全体構成)
図1に示すように本実施形態の超音波流量計1は、管本体2を備え、例えば金属、実施形態ではステンレススチールから構成されている。管本体2は測定対象である流体F、例えばこの実施形態では熱量供給用の温水を通過させる流路管10を備える。また、この流路管10と斜めに交差する計測管20を備え、計測管20の両端部には超音波センサ50を備えた超音波センサユニット保持部30が設けられている。
【0030】
(計測流路15)
図3に示すように、管本体2の流路管10は、上流側(
図1〜3において左側)に開口する流入口11と、その周囲のフランジ部12を備えるとともに、下流側に開口する流出口13と、その周囲のフランジ部14とを備える。流路管10は、管本体2の内部に流入口11から流入した温水を通過させ流出口13から流出させる計測流路15を形成する。超音波流量計1の内部において、流入口11の上流側の端部には円筒状の空間が形成されている。流入口11の下流側の端部から下流側に行くにしたがって内径が狭まるテーパ部16が続く。そして、流路管10の中央部にはテーパ部16のもっとも小さな内径と同径の空間を有した円筒形の縮径部17が形成されている。そして、縮径部17の下流側の端部には、下流に行くにしたがって径が拡がるテーパ部18が連続して設けられ、テーパ部18のもっとも大きな内径と同径の円筒状の流出口13が下流側に開口している。流路管10の上流側と下流側は、対称な形状となっている。また、流入口11、流出口13には、管接続のための周知の加工がなされているが、詳細な説明は省略する。
【0031】
(計測空間21)
管本体2の計測流路中心線CL1に対してこれを含む水平面において交差角θで斜めに交差する計測空間中心線CL2を有する計測空間21を形成する円筒形の計測管20が形成されている。計測空間21は、超音波センサ50、50(
図1)から送受信される超音波信号USが伝播される超音波伝播経路22を形成する。
【0032】
計測管20内部の計測空間21は管本体2内で計測流路15を斜めに横断するように形成され、計測流路15と計測空間21は連通するように形成されている。計測空間21は、管本体2の計測流路15を形成する縮径部17と同径の内径を有する。計測管20の両端部は管本体2の計測流路中心線CL1に対して対向する側に配置され、超音波センサユニット保持部30がテーパ部16、18より管本体2の長手方向内側の縮径部17の一部に飛び出すように配置される。
【0033】
(超音波センサユニット保持部30)
図4に示すように、計測空間21の両端部には、それぞれ超音波センサユニット保持部30が形成されている。超音波センサユニット保持部30は、計測空間21と連通する筒部31からなり、計測空間中心線CL2と直交する鉛直方向の超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心とした上部が開放した有底円筒状の空間として形成されている。すなわち、超音波センサユニット保持部30、30の中心線CL3、CL3は、相互に平行で、超音波センサユニット保持部30、30は、同じ垂直方向上側に開口している。超音波センサユニット保持部30、30の内径は計測空間21の内径よりも大きな内径となっている。超音波センサユニット保持部30、30の底面32、32は、水平な平面として形成され、計測空間21のもっとも低い位置より低く掘り下げるように形成されている。超音波センサユニット保持部30は、詳細にはその上部と下部が同心異径の円筒形の形状となっており、上端から3分の1あたりまでの上部の内面である上部内壁面34の内径は、それより下部の下部内壁面35の内径より大きく形成されている。そして、上部内壁面34と下部内壁面35との境界部分は、ドーナツ状の水平な平面として形成された段差部33となっている。
【0034】
図2に示すように、超音波センサユニット保持部30、30には、超音波センサユニット40を介して超音波センサ50及び反射板44が所定の位置に保持される。
(超音波センサユニット40)
図5(a)は、超音波センサユニット40の斜視図であり、
図5(b)は、計測空間中心線CL2と直交する方向から見た超音波センサユニット40の側面図、
図5(c)は、超音波センサユニット40の平面図である。
【0035】
図5(a)に示すように、超音波センサユニット40は、周方向の断面が長方形をなす水平な円環状の嵌合リング41と、この嵌合リング41の直径方向で対向する位置に、やや内側にオフセットされて下方に舌状に延びる一対の反射部材保持部42、42を備える。嵌合リング41は、超音波センサ50を保持する超音波センサ保持部として機能する。また、超音波センサユニット40は、反射部材保持部42、42の下端内側間に設けられた反射板保持部43と、ここに保持された反射板44を備える。反射板44は、
図5(b)に示すように側面視では計測空間中心線CL2と45度の傾きをもっている。
【0036】
図6(a)に示す嵌合リング41の下面41bはドーナツ状の環状の水平面とされ、
図2に示す段差部33に対応するように当接し(
図4参照)、高さ方向に嵌合リング41が正確に位置決めされる。従って、嵌合リング41は、超音波センサユニット40の挿入方向における高さ位置を決定する高さ位置決定部としても機能する。
【0037】
図6(a)に示すように、嵌合リング41の側面41aの外径は、上部内壁面34(
図4)の内径よりわずかに小さく、上部内壁面34内に嵌入された嵌合リング41の側面41aは、上部内壁面34とほぼ隙間なく当接して位置決めされる。
【0038】
嵌合リング41の下方に舌状に延びる一対の反射部材保持部42、42は、嵌合リング41の内側からさらに内側にオフセットされ、下部内壁面35に沿ってほぼ当接するように延びる構成とされている。
【0039】
反射部材保持部42、42の下端内側間には反射板保持部43がステンレススチールなどの金属製の反射板44(
図5(a)参照)を保持している。反射板44は、
図5(a)〜5(c)に示すように鉛直線から45度傾けられた楕円の板状に形成され、
図5(c)に示す平面視(超音波センサユニット保持部中心線CL3上側からの鉛直下向きの視点)及び図示しないが計測空間中心線CL2の方向から見た正面視のいずれから見ても概ね円形になるように構成されている。そして、反射板44は、超音波信号USを超音波センサユニット保持部中心線CL3に沿った方向から正確に計測空間中心線CL2に沿った方向に反射させるとともに、計測空間中心線CL2に沿った方向から正確に超音波センサユニット保持部中心線CL3に沿った方向に反射させるように構成されている。
【0040】
そして、この反射板44を正確な位置に保持するための反射板保持部43が反射部材保持部42、42の間に設けられる。本実施形態では、反射板保持部43とここに保持された反射板44が反射部材を構成している。本実施形態では嵌合リング41、反射部材保持部42、42、反射板保持部43は、樹脂で一体成形されている。そして、反射板44は、反射板保持部43にインサート成形されて反射板保持部43と反射板44も一体に成形されている。なお、これらは、別々に成形して組み合わせることは妨げないが、一体成形とすることで、各要素の位置的な関係を正確に特定しやすい。
【0041】
(位置規制構造)
図6(a)に示すように、嵌合リング41の下面41bのうち計測空間21に近い位置には、下方に突出する突部からなる上部位置被規制部45が嵌合リング41と一体に形成されている。
【0042】
図6(b)に示すように、超音波センサユニット保持部30の段差部33のうち計測空間21に近い位置には、上部位置被規制部45がずれなく嵌入される穴状の上部位置規制部37が凹設される。
【0043】
図6(a)に示すように、反射板保持部43の反射板44と反対の背面には、鉛直下方に延びる棒状の突起からなる底部位置被規制部46が設けられている。
図6(b)に示すように、超音波センサユニット保持部30の底面32の計測空間21と反対側には、底部位置被規制部46がずれなく嵌入される穴状の底部位置規制部36が凹設される。
【0044】
(超音波センサユニット40の装着)
図2に示すように、超音波センサユニット保持部30に超音波センサユニット40を挿入すると、嵌合リング41の下面41bと段差部33とが当接し、これにより嵌合リング41の鉛直方向の位置が決まるとともに嵌合リング41が水平に載置される。嵌合リング41の側面41aと上部内壁面34により嵌合リング41の水平方向の位置が決まる。そして、超音波センサユニット40の上部位置被規制部45と段差部33の上部位置規制部37(
図6(b))と、超音波センサユニット40の底部位置被規制部46と底面32の底部位置規制部36(
図4)とにより、反射板44の水平面における回転方向の向きが決まる。すなわち、超音波センサユニット保持部30に超音波センサユニット40を挿入するだけで、超音波センサユニット保持部30に対する超音波センサユニット40の高さ、水平位置、向きが正確に決まる。
【0045】
図2、
図4に示すように、超音波センサ50の下部が超音波センサユニット40の嵌合リング41の内部に嵌めこまれる。このとき、超音波センサ50は、嵌合リング41を介して段差部33により鉛直高さ方向の位置が簡単かつ正確に決まるとともに正確に水平に載置される。
【0046】
図4に示すように、超音波センサ50が超音波センサユニット保持部30に挿入されるだけで、超音波センサ50の側面が超音波センサユニット保持部30の上部内壁面34に当接して超音波センサ50の水平位置が簡単かつ正確に決まる。なお、図示しない超音波センサの超音波素子は、その底面の中央部に配置されているため、超音波センサ50の回転方向によってはその位置は変化しないので、位置ずれは生じない。
【0047】
なお、超音波センサユニット40や超音波センサ50を超音波センサユニット保持部30に固定するためのねじなどの固定部材やカバー部材、気密性を高めるシール部材などの周知の構成については、適宜適用されるものとして説明を省略する。
【0048】
(交差角θ)
次に、
図3、
図4、
図7(a)〜7(c)に基づいて、計測流路中心線CL1と計測空間中心線CL2との交差角θについて説明する。
【0049】
図7(a)は、本実施形態の到達時間差を説明する模式図である。一対の超音波センサ50と一対の反射板44による超音波伝播経路22を模式的に示す。超音波センサユニット保持部中心線CL3に沿った超音波センサ50から反射板44までの距離をx
1、x
2として、一対の超音波センサユニット保持部30の超音波センサユニット保持部中心線CL3、CL3間の離間距離Lを一定とすると、超音波伝播距離=L+x
1+x
2となる。管本体2の計測流路中心線CL1方向と計測空間中心線CL2とが交差する交差角θは、到達時間差Δtが、予め設定された最小流量時において予め設定した値を超えるとともに、最大流量時に圧力損失が予め設定された数値を超えないように設定される。
【0050】
図3に示すように、本実施形態では、一対の超音波センサユニット保持部30の超音波センサユニット保持部中心線CL3の離間距離L、言い換えると計測空間中心線CL2に沿った超音波伝播距離について一定とすることにしている。その理由は、この離間距離Lを一定とすることで、計測流路の管径が異なる場合であっても、一対の超音波センサ50からの信号を受信し解析し表示する外部機器を一対の超音波センサユニット保持部30、30に共通して装着できるからである。
【0051】
一方、超音波流量計(特に取引に用いられる計器として超音波流量計)に公的な規格が課せられることがある。すなわち、条件1「計測精度が求められる(計測精度の為に、十分な到達時間差を得られること)」、条件2「圧力損失が規格以内であること」が求められる。
【0052】
そこで、本実施形態では、このような条件を満たす交差角θを求めるため、以下のような構成としている。
(条件1:「計測精度が求められる」(計測精度の為に、十分な到達時間差を得られること))
特に、最小流量の場合に計測流路15内の流速v
fが最も遅くなるので、この時の到達時間差Δtが測定器の分解能以上であることが問題となる。
【0053】
図7(a)を参照して、条件1を満たすため、まず、交差角θ=0としたときの「到達時間差Δt」の算出を説明する。到達時間差Δtは、以下の式により算出する。
Δt=2Lv
f/c
2
ここで、Δt:到達時間差、c:音速(流体内の音速)、v
f:流速(計測流路中心線CL1と平行な向きの流体の流速)、L:離間距離(超音波センサユニット保持部中心線CL3-CL3間の離間距離)である。
【0054】
t
d:上流から下流に向けて発信した時の到達時間
=(x
1/c)+(x
2/c)+L/(c+v
f)
t
u:下流から上流に向けて発信した時の到達時間
=(x
1/c)+(x
2/c)+L/(c−v
f)
を用いると、到達時間差Δtは、次式で表される。
【0055】
Δt=t
u −t
d
=L/(c−v
f)−L/(c+v
f)
=(L(c+v
f)−L(c−v
f))/(c−v
f)(c+v
f)
=2Lv
f/(c
2−v
f2)
c>>v
fより
Δt=2Lv
f/c
2
すなわち、到達時間差Δtは、流速v
fと比例する。
【0056】
(超音波信号の伝播速度v
d、v
u)
しかしながら、c:音速、v
f:流速、L:離間距離を一定としても(厳密にいえば、超音波伝播経路が曲線となるためLは変化するが、ここでは無視できる。)、実際の超音波信号の伝播速度は、交差角θが変化すると、流速v
fが音速cに与える影響が変化するため変化する。
【0057】
すなわち、上流から下流に向けて発信した時の伝播速度v
d、下流から上流に向けて発信した時の伝播速度v
uは、流速v
fの交差角θでの伝播方向の速度ベクトルと音速cの速度ベクトルとの和となる。
【0058】
v
d=c+v
f・cosθ
v
u=c−v
f・cosθ
図7(b)に示すように、交差角θがゼロに近い時には、伝播速度v
uはc−v
fに近づき、伝播速度v
dはc+v
fに近づくため、速度差は2v
fに近づく。
【0059】
一方、
図7(c)に示すように交差角θが大きくなると、v
f・cosθがゼロに近づくため、伝播速度v
uと伝播速度v
uはいずれも、音速cに近づき、速度差はゼロに近づく。
【0060】
ここで、Δt:到達時間差、c:音速、L:超音波伝播距離として、
v
d:上流から下流に向けて発信した時の伝播速度
v
u:下流から上流に向けて発信した時の伝播速度
t
d:上流から下流に向けて発信した時の到達時間
=(x
1/c)+(x
2/c)+L/v
d
t
u:下流から上流に向けて発信した時の到達時間
=(x
1/c)+(x
2/c)+L/v
u
を用いると、到達時間差Δtは、次式で表される。
【0061】
Δt=t
u −t
d
=L/v
u−L/v
d
=L(1/v
u−1/v
d)
ここで、cosθがゼロ、すなわちθ=90°に近づけば、v
u≒v
d≒cとなり、到達時間差Δtは小さくなってゼロに近づき、流量の測定が困難となる。
【0062】
したがって、交差角θは、仕様の最小流量の時に、十分な到達時間差Δtが満たされる範囲とする必要がある。
(条件2:圧力損失が規格以内であること)
圧力損失は、一般に最大流量のときが最大になるが、流体の種類、管本体2の形状・材質、反射部材保持部42の形状や位置、乱流や層流の発生状態など、スペックだけでは算出できないため、実験若しくはシミュレーションによる流体解析により算出する。一般的には、交差角θが大きいほど流路抵抗が小さくなる傾向がある。一般に、取引用の超音波流量計においては、規格により圧力損失が定められている。
【0063】
(本実施形態の交差角θ)
以上のように条件1と条件2を満たす交差角θを決定する。
以上のような理由から、本実施形態においては、例えば温水による熱量供給のカロリメータとして使用する超音波流量計であり、条件1及び条件2を満たすために交差角θを5〜70°に設定している。もちろん上記範囲内で、必要に応じて、到達時間差Δtか圧力損失かのいずれかを重視するような設計としてもよい。
【0064】
(製造方法)
続いて、本実施形態の超音波流量計1の製造方法について説明する。
本実施形態の超音波流量計1の管本体2は、ステンレススチールを鋳造して製造する。その後、安全のための面取りや、精度を確保したり、流路抵抗を下げたりするために、切削・研削・研磨等を行う。
【0065】
特に、管本体2に対する超音波センサ50と反射板44の位置は、測定精度を確保するために極めて重要である。このため、超音波センサユニット保持部30は、リーマや砥石等で正確に加工される。
【0066】
本実施形態では、鋳造後の管本体2は、
図1に示すような姿勢でリーマや研削盤等の工作機械のステージにチャックや治具を用いてワークとして所定の位置に固定される。この時、例えば超音波センサユニット保持部30を鉛直上方に開口する姿勢とする。また、管本体2の流路管10と計測管20が水平になるようにする。そして、一方の超音波センサユニット保持部30を、工具を鉛直下方に向けて移動させて加工する。続いて、他方の超音波センサユニット保持部30を、工具を水平移動して鉛直下方に向けて移動させて加工する。いずれも鉛直上方に開口しているので、管本体2は、工作機械のステージに治具を用いて所定の位置に固定したまま、超音波センサユニット保持部30の工具の加工方向の角度を精密に割り出す必要もなく、そのまま、工具の水平位置のみ平行移動して移動して加工をする。この場合、一方の超音波センサユニット保持部30と他方の超音波センサユニット保持部30は、管本体2を固定したままで移動がなく、工具の水平移動のみであるので工作機械の精度を最大限に活かした加工が可能となる。
【0067】
また、工数の面からもチャックによるワークの持ち替えなどの作業も不要となり、加工の工数の低減も可能となる。
このため、一方の超音波センサユニット保持部30と他方の超音波センサユニット保持部30は、相互に高度な精度で平行な関係を維持できる。また、水平に載置された管本体2の流路管10と計測管20の中心線を含む面に対しても、高い精度で垂直な位置関係とすることができる。このことは、高精度な超音波流量計の前提として重要な構成となる。
【0068】
次に、
図2に示すように表面や内部の加工が終了した管本体2に対して、超音波センサユニット40を装着する。超音波センサユニット40は、反射板44が既にインサート成形された反射板保持部43を含め、全体が樹脂で正確に一体成形されている。このため、嵌合リング41と反射板44との位置関係は正確に維持されている。この反射板44がインサート成形された超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部30に挿入する。挿入するだけで、前述のように嵌合リング41が段差部33と上部内壁面34とにより位置決めされ、また、上部位置被規制部45も上部位置規制部37に嵌合し、超音波センサユニット40の回転を規制する。さらに
図4に示すように底部位置被規制部46が底部位置規制部36に嵌合し、超音波センサユニット40の高さと回転方向の向きを規定する。底部位置被規制部46は、位置決めのみならず、超音波センサユニット40を支え、特に反射板44が流体によって振動等しないように安定させる。
【0069】
そして、段差部33に嵌合リング41を介して超音波センサ50を固定する。
なお、各種蓋材、シール部材、シール剤、接着剤、スペーサ、ねじなど周知の材料を適宜用いることができるが、その説明は省略する。
【0070】
(本実施形態の作用)
次に、このように構成された本実施形態の超音波流量計1の作用について説明する。
図1に示すように超音波流量計1は、例えば、暖房等の熱源となる温水の供給流路6の上流側6a、下流側6bの間に流入口11と流出口13が接続されて直列に配置される。配置位置はエルボ管などから離間して流れの安定した位置に取付けられる。取付姿勢は、図示に限定されず管内に気泡等が貯留されないような姿勢とする。このように装着された超音波流量計1の一対の超音波センサユニット保持部30、30には、仮想線で示すような表示部5が装着される。
【0071】
表示部5は、その接続部5a、5bが、超音波センサユニット保持部30、30に気密に接続される。表示部5は、内部の図示を省略するが、超音波センサ50、50に電気的に接続され、信号を送受信させて信号を解析し流量を算出する制御部と、流量を表示する表示部5と、流量をデータとして外部に送信する出力部とを内蔵する。表示部5の取付に当たっては、接続部5a、5bの間隔を一定にしており、一対の超音波センサユニット保持部30、30の中心線CL3、CL3間の離間距離Lがその一定値に合わせてあるので、特に調整をすることなく表示部5を超音波流量計1に簡単に装着することができる。
【0072】
図4に示すように、このように装着した超音波流量計1は、超音波センサ50、50から、超音波信号USを送受信する。一方の超音波センサ50から送出される超音波信号USは、超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心として、
図4の下方向に送出され、反射板44に当たって反射し、超音波信号USは、正確に90度屈曲して計測空間中心線CL2を中心として計測空間21を進む。その超音波信号USの送出幅と同等の幅を有する超音波伝播経路22が、計測管20により計測空間21として形成されている。
【0073】
図3に示すように、送出した超音波信号USを大きく減衰させることなしに、流路管10の縮径部17により形成された計測流路15を流体(温水)が流下するときにその計測流路15の幅全体を、超音波信号USが斜めに横断する。
【0074】
その後、
図4に示すように計測空間中心線CL2を中心として計測空間21を進む超音波信号USは反射板44に当たって反射し、90度屈曲して
図4の上方向に送出され、超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心として進み他方の超音波センサ50の受信面に到達する。
【0075】
このため、超音波伝播経路22を進行する超音波信号USは、流路管10の縮径部17により流体の流速が高まるように形成された計測流路15の幅方向中心部のみならず、もれなく計測流路15の幅全体にわたる流体の流れの影響を受ける。そのため中心部と端部との間で流速が異なる場合や、上下左右に流心が偏った偏流や、乱流などが生じた場合でも、測定精度の低下を抑制できる。
【0076】
また、
図5(a)などに示す超音波センサユニット40は、反射部材保持部42、反射板保持部43の位置が、
図3、
図4に示すように、流路管10の縮径部17により形成された計測流路15から、幅方向にオフセットされるようにして、その流路を妨げにくい構成となっている。このため、超音波センサユニット40は、計測流路15の流路抵抗を上げて、超音波流量計1の圧力損失が高くならないような構成となっている。
【0077】
このようにして、流路内の上流側の超音波センサと下流側の超音波センサ50により、一方からの超音波信号の伝播時間と、他方からの超音波信号の伝播時間の差から、流体の流量を計測する。計測した流量は、表示部5により表示され、記憶され、外部に送信される。
【0078】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、上記のような構成を備えるため、以下のような効果を奏する。
○同一方向から管本体2の超音波センサユニット保持部30を加工できるので、ワークである管本体2のチャックによるワークの持ち替えや、ワークである管本体2を保持する治具の回転をさせないで、管本体2を同一位置に固定したまま超音波センサユニット保持部30を加工することができる。そのため加工の工数を減らし、工程の簡易化が可能となる。
【0079】
○また、加工中にチャックによるワークとしての管本体2の持ち替えや、管本体2を保持する治具を回転させることがないので、ワークとしての管本体2の位置を移動する必要がなくなるため、ワークの移動に起因する位置ずれが生じない。このため、同一位置に固定された管本体2の位置を基準として、超音波センサユニット保持部30の工具の加工方向の角度を精密に割り出す必要もなく、工具を平行移動するだけで同一方向から一対の超音波センサユニット保持部30を加工することで、管本体2に対する超音波センサユニット保持部30の開口方向を容易に精度高く形成できる。
【0080】
○超音波センサユニット保持部30の形状を精度高く加工することができるので、ここに保持される超音波センサユニット40の管本体2に超音波信号の射出方向の位置ずれを小さく正確な送出方向とすることができ、測定精度を向上させることができる。
【0081】
○共通した超音波センサユニット保持部30に共通した超音波センサユニット40を用いることで、管径が異なっても共通の構成を共用できる。
○超音波センサユニット保持部30の開口部が同一方向に向いているので、表示部5を取り付ける場合でも、超音波センサ50の配線の取り回しも同一方向とすることができるため、外部機器の装着が容易となる。また、超音波センサ50の配線なども取り回しが短くなり、外部への突出や露出を抑えることができる。
【0082】
○一対の超音波センサユニット保持部30、30の超音波センサユニット保持部中心線CL3、CL3の離間距離Lを共通化すれば、供給流路6の管径が異なっても、交差角θを調整することで、同一規格の表示部5のような外部機器の共通化ができる。
【0083】
○精度の高い加工ができるため、超音波センサ50間で正確に超音波信号USの送受信ができる。そのため、受信される超音波信号USが減衰されることが少なく、高い波高を得ることができるため、S/N比を大きくして精度が高い流量計1とすることができる。
【0084】
○また、受信される超音波信号USが減衰されることが少なく、高い波高を得ることができるため、流体Fの流れにより超音波信号USの超音波伝播経路22が変化して曲がっても、受信する超音波信号USの波高を比較的高く維持できる。
【0085】
○超音波信号USが管本体2の流路管10の縮径部17により形成された計測流路15を斜めに通過するため、流体Fが流れる計測流路15の幅方向中央部分のみならず周縁部を含めた幅方向全体に超音波信号USが伝播するので計測流路15の全体を測定でき、流量の計測精度を向上させることができる。
【0086】
○超音波伝播経路22の計測空間中心線CL2と、管本体2の流路管10の縮径部17により形成された計測流路15の計測流路中心線CL1とが所定の交差角θを有しているので、超音波センサユニット40が計測流路15を妨げにくい位置にオフセットすることができるため、流路抵抗を下げて圧力損失を小さくすることができる。小径の管でも流路を妨げにくく比較的小さな圧力損失とすることができる。
【0087】
○超音波伝播経路22の計測空間中心線CL2と、管本体2の流路管10の縮径部17により形成された計測流路15の計測流路中心線CL1とが所定の交差角θを有しているので、超音波センサユニット保持部中心線CL3、CL3間の離間距離Lを大きくとることができるので、測定に必要な十分な到達時間差Δtを得ることができる。
【0088】
○反射板44、超音波センサ50を一体に保持する超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部30に保持するので、超音波センサ50や反射板44を超音波流量計1に容易に装着することができる。
【0089】
○超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部30に挿入する。それだけで、超音波センサユニット40の嵌合リング41が超音波センサユニット保持部30の段差部33に当接し、超音波センサユニット40を管本体2に対して正確な高さと水平位置とすることができる。
【0090】
○また、超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部30に挿入するだけで、超音波センサユニット40の嵌合リング41が超音波センサユニット保持部30の段差部33に当接し、上部位置被規制部45が上部位置規制部37に嵌合する。このため、超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心とした正確な回転方向の向きに取り付けることができる。
【0091】
○また、超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部30に挿入するだけで、超音波センサユニット40の反射板保持部43の背面から下方に突出した底部位置被規制部46が、超音波センサユニット保持部30の底面32に凹設された底部位置規制部36に嵌合するため、超音波センサユニット40の管本体2に対する高さが正確に設定される。
【0092】
○また、底部位置被規制部46が底部位置規制部36に嵌合するため、超音波センサユニット40を超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心とした正確な回転方向とすることができる。
【0093】
○また、底部位置被規制部46が底部位置規制部36に嵌合するため、超音波センサユニット40に保持された反射板44が流体の影響により不安定となることを抑制することができる。
【0094】
(反射部材変形例)
なお、上記実施形態において、反射部材は以下のように実施してもよい。
(変形例1)
・上記実施形態では、反射板保持部43の背面が板状に形成されたものであったが、
図8(a)に示すように、傾き45度の斜面を上面として有する円柱によって反射板保持部43を形成し、この反射板保持部43の斜面(上面)に反射板44を保持してもよい。
【0095】
このように構成することで、反射板44を安定して保持することができる。また、反射板44の背面への流体の回り込みを少なくすることで、流体の流れを円滑にすることができ、流路抵抗の上昇を抑制できる。
【0096】
(変形例2)
・
図8(b)に示すように反射板保持部43の背面を半球状としてもよい。
このように構成することで、反射板保持部43の背面を流れる流体の流れを円滑にすることができ、流路抵抗の上昇を抑制できる。
【0097】
(変形例3)
・
図8(c)に示すように、反射部材保持部42を反射板44の背面部分にも拡張して反射板44の背面を覆うようにしている。このように構成することで、反射板44の背面への流体の回り込みを少なくすることで、流体の流れを円滑にすることができ、流路抵抗の上昇を抑制できる。
【0098】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した超音波流量計1の第2の実施形態を
図9〜
図10にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の計測管20により構成される計測空間21の形状を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0099】
図9は第2実施形態の超音波流量計1の斜視図である。
図10は、
図9のC-C線における水平断面図である。
図9に示すように、第2実施形態の管本体2は、計測流路15(
図10)を構成する流路管10は第1の実施形態と同様の構成であるが、一対の超音波センサユニット40は、管本体2の計測流路中心線CL1に対して同一の側に配置される。
【0100】
図10に示すように、上流側の計測管20が形成する計測空間21の計測空間中心線CL2aは、管本体2の流路管10が形成する計測流路15の計測流路中心線CL1に対して斜めに交差する。この計測空間中心線CL2aは、管本体2の流路管10が形成する計測流路15の内壁面に達している。したがって、この計測空間中心線CL2aに沿って送出された超音波信号USは、この内壁面で反射される。反射した超音波信号USは再び計測流路中心線CL1に対して斜めに交差して進む。
【0101】
下流側の計測管20が形成する計測空間21の計測空間中心線CL2bは、この超音波信号USの進路に沿って形成されている。そのため管本体2は、上流側と下流側が面対象の形状となっている。
【0102】
第2実施形態では、一方の超音波センサ50aから送出される超音波信号USは、超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心として、
図9の下方向に送出され、反射板44に当たって反射し、超音波信号USは、正確に90度屈曲して計測空間中心線CL2aを中心として計測空間21を進む。その超音波信号USの送出幅と同等の幅を有する超音波伝播経路22が、計測管20により計測空間21として形成されている。
【0103】
図10に示すように、送出した超音波信号USを大きく減衰させることなしに、流路管10の縮径部17により形成された計測流路15を流体(温水)が流下するときに、その計測流路15の幅全体を、超音波信号USが斜めに横断する。
【0104】
次に、超音波信号USは、流路管10の縮径部17の内壁面に到達して反射する。その後、
図10に示すように再び計測流路中心線CL1と交差し、計測空間中心線CL2bを中心として計測空間21を進む超音波信号USは反射板44に当たって反射し、90度屈曲して上方向に送出され、超音波センサユニット保持部中心線CL3を中心として進み他方の超音波センサ50bの受信面に到達する。
【0105】
管本体2はステンレススチール製で、管本体2の内壁面は、流路抵抗が小さくなるように平滑に研磨されているので、超音波信号USを十分効率よく反射する。この時、計測流路中心線CL1を通過した超音波信号USは再び計測流路中心線CL1を通過するように反射するが、超音波伝播経路22の高さ方向において各中心線CL2a,CL2bよりも上方及び下方の位置、特に上下の周縁部の位置で超音波伝播経路22を伝播する超音波信号USは、中心線CL2a,CL2bと平行な方向には反射しない。そのため第1の実施形態よりは、一方の超音波センサ50a又は50bから送出した超音波信号USが、他方の超音波センサ50b又は50aには効率よく到達しない。
【0106】
一方、上記第2の実施形態の超音波流量計1によれば、以下のような効果を得ることができる。
○上記第2の実施形態では、第1の実施形態の超音波流量計1よりもコンパクトな形状とすることができる。
【0107】
○超音波センサユニット保持部中心線CL3、CL3の離間距離Lが第1の実施形態の超音波流量計1の場合と同一であれば、超音波伝播距離を長くして、第1の実施形態よりも到達時間差Δtを大きくすることができる。
【0108】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した超音波流量計1の第3の実施形態を
図11にしたがって説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態の反射板44の角度を変更し、計測空間21における超音波伝播経路22を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0109】
第3の実施形態の超音波流量計1において、一対の超音波センサユニット40は、第1の実施形態と同様に管本体2の流路管10の計測流路中心線CL1に対して対向する側に配置されている。そして、超音波信号USは、管本体2の流路管10の計測流路中心線CL1に対して斜めに交差する。
【0110】
第1の実施形態と異なる点は、各反射板44a、44bの傾斜角度が超音波センサユニット保持部中心線CL3に対して45度ではないことである。
具体的には、一方の超音波センサ50aから送出された超音波信号USは超音波センサユニット保持部中心線CL3aに沿って下方に送出されて反射板44aに当たり反射する。このとき、超音波信号USは、計測空間中心線CL2よりも上方に向けて反射され、計測管20の内部に形成された計測空間21の上方の内壁面に到達する。超音波信号USは、その内壁面で再び反射し、次は、計測空間21の下方の内壁面に到達して再び反射する。そして、反射した超音波信号USは、反射板44bに到達し、超音波センサユニット保持部中心線CL3bに沿って上方に伝播し、超音波センサ50bで受信される。
【0111】
上記第3の実施形態の超音波流量計1によれば、以下のような効果を得ることができる。
○ 超音波センサユニット保持部中心線CL3、CL3の離間距離Lが第1の実施形態の超音波流量計1の場合と同一であれば、第1の実施形態より超音波伝播距離を長くして、到達時間差Δtを大きくすることができる。
【0112】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した超音波流量計1の第4の実施形態を
図12にしたがって説明する。なお、第4の実施形態は、第1の実施形態の超音波流量計1の反射板44を省略した点で変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0113】
第4の実施形態では、超音波センサユニット40は、超音波センサ50の超音波信号が計測空間中心線CL2に沿って送出されるように、計測空間21内で超音波センサ50を保持する。
【0114】
超音波センサ50は、超音波センサユニット40により、第1の実施形態において反射板44を保持するのと同様な方法で保持することができる。つまり第4の実施形態では、超音波センサユニット40の反射部材保持部42が、超音波センサ50を計測空間21内において保持する超音波センサ保持部として機能し得る。
【0115】
上記第4の実施形態の超音波流量計1によれば、以下のような効果を得ることができる。
○上記第4の実施形態では、第1の実施形態と比較して反射板44を備えていないため、部品点数も少なく簡単な構造とすることができる。そのため、製造に必要な工数も少なくすることができる。
【0116】
○上記第4の実施形態では、第1の実施形態と比較して反射板44を備えていないため、よりコンパクトな構成とすることができる。
○超音波センサ50は、超音波センサユニット40により、この超音波センサユニット40との位置関係が正確に保持される。そのうえで、超音波センサユニット40は超音波センサユニット保持部30に保持される。
【0117】
第1の実施形態で説明したとおり、超音波センサユニット保持部30は、管本体2に対して極めて正確な位置関係に加工されている。また、超音波センサユニット40に保持された超音波センサ50は、超音波センサユニット保持部30に挿入するだけで、管本体2に対して、極めて正確な位置に保持され、且つ安定した状態で保持される。
【0118】
○さらに、反射板44を備えないため、測定精度を下げる要素が少なくなり、より測定精度を高めることができる。また、反射に由来する超音波信号の減衰もない。
(第5の実施形態)
次に、本発明を具体化した超音波流量計1の第5の実施形態を
図13にしたがって説明する。なお、第5の実施形態は、第1の実施形態の計測管20により構成される計測空間の形状と、超音波伝播経路22を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0119】
図13は第5実施形態の超音波流量計1の水平断面図である。第5実施形態の管本体2において、計測流路15を構成する流路管10は第1の実施形態と同様の構成であり、一対の超音波センサユニット40も、管本体2の計測流路中心線CL1に対して対向する側に配置される。
【0120】
計測管20が形成する計測空間21の計測空間中心線CL2は、管本体2の流路管10が形成する計測流路15の計測流路中心線CL1に対して斜めに交差する。また、この計測空間21の計測空間中心線CL2は、管本体2の流路管10が形成する計測流路15の計測流路中心線CL1を含む面に沿って延びている。この計測空間中心線CL2に沿って伝播する超音波信号USは計測空間21の内壁面で反射する。そして、反射した超音波信号USは、対向する内壁面で再度反射する。そして反射板44により他方の超音波センサ50に超音波信号USが受信される。
【0121】
つまり、第5の実施形態では、流路管10を計測管20として、利用していることになる。
上記第5の実施形態の超音波流量計1によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0122】
○上記第5の実施形態では、第1の実施形態の超音波流量計1よりも極めてコンパクトな形状とすることができる。
○超音波センサユニット保持部中心線CL3、CL3の離間距離Lが同一であれば、第1の実施形態の超音波流量計1よりも超音波伝播距離を長くして、到達時間差Δtを大きくすることができる。
【0123】
(第6の実施形態)
次に、本発明を具体化した超音波流量計1の第6の実施形態を
図14にしたがって説明する。なお、第6の実施形態は、第1の実施形態の超音波センサユニット保持部30の配置を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0124】
図14は、第6の実施形態の水平断面図である。管本体2に設けられた流路管10は、第1の実施形態と基本的に同じ構成であり、流体の流速を速めるため流入口11より内径を小さくした縮径部17を備え、この縮径部17が計測流路15を構成する点でも共通する。
【0125】
第1の実施形態と異なる点は、流入口11と縮径部17の間に、内径が大きい拡径部4を設けている。
また、第1の実施形態では、縮径部17の内側に一対の超音波センサユニット保持部30、30が配置されていた。一方、第6の実施形態では、計測管20の両端部の超音波センサユニット保持部30、30は、縮径部17の外側の拡径部4に配置されている点で異なる。
【0126】
上記第6の実施形態の超音波流量計1によれば、以下のような効果を得ることができる。
○上記第6の実施形態では、計測流路15を構成する縮径部17の外側に拡径部4を設け、一対の超音波センサユニット保持部30、30は、縮径部17の外側の拡径部4に配置されており、縮径部17の形状が円筒形状を保持しているため、測定の為の円滑な流れが期待できる。
【0127】
○また、一対の超音波センサユニット保持部30、30は、拡径部4に配置しているので、縮径部17の外端部での流体の流れ、つまり計測流路15での流体の流れを妨げない。また、一対の超音波センサユニット保持部30、30が流路管10の外側に大きく飛び出すようなオフセットをする必要がなく、流路管10の外部に著しい突起部を形成しなくてもよい。
【0128】
(変形例)なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、熱量供給用の温水を例示したが、流体Fは温水に限らず他の液体でもよく、さらに気体の流量の測定にも適用できる。
【0129】
・管本体2は、流体を通過させる筒状であるが、筒状とは円筒形に限定されず、流体が流せれば各種断面のものや、複数の流路が形成されたものでもよい。
・管本体2は、ステンレススチールを例示したが、青銅鋳物や鋳鉄管や真鍮管、あるは樹脂やセラミックスにより構成されていてもよい。また、必要に応じて内部に超音波信号USの反射を高め、あるは乱反射を抑制するようなコーティングを施したりや研磨を適宜することを妨げない。また、インナーパイプを配設してもよい。
【0130】
・超音波センサは、ここでは送受信が可能なセラミックスの圧電素子が代表に挙げられるが、その素材は限定されない。また、送信用と受信用の超音波センサとを夫々用いてもよく、超音波信号を送信でき且つ受信できればその構成は問わない。
【0131】
・「超音波」とは、可聴音を超える周波数のものをいうが、材質等により適宜周波数は選択でき、また、複数の周波数を組み合わせることも妨げない。
・超音波センサや管同士の接続は、詳細な説明はしないが、適宜周知の方法で、固定し、弾性体や充填剤でシールすることができる。或いは、適宜蓋材やスペーサを用いることも妨げない。また、フランジを形成した接合、ねじによる螺合を含む加工をすることも含む。
【0132】
・管本体2の超音波センサユニット保持部30に対する加工は、リーマや砥石に限定されず、ドリルや刃物、研磨、レーザ加工、放電加工などその方法は限定されない。
・ワークとしての管本体2は、工作機械の構成により、超音波センサユニット保持部30を鉛直上方に開口する姿勢に限らず、水平方向にするなど、工作機械において精度を上げやすい姿勢で加工することができる。また、ワークとしての管本体2の一対の超音波センサユニット保持部30を、固定したまま加工できることが望ましい。
【0133】
・反射部材は、
図5(a)、
図8(c)などに示すような反射板44を樹脂製の反射板保持部43とインサート成形により一体化することに限らず、反射板44を樹脂製の反射板保持部43に熱かしめで一体化してもよい。また、反射部材は、反射板44と反射板保持部43によらず、反射板44のみで構成されていてもよい。また、反射板44は単なる薄膜により形成されていてもよい。
【0134】
・また、温度計、電流計等適宜他の計測器を付加することを妨げない。
・表示部5は、各種の構成が採用でき、単に超音波センサ50からの信号を取りだし、遠隔で処理してもよく、逆に超音波センサ50内で、信号処理などの制御を行ってもよい。
【0135】
なお、各実施形態は例示であり、本発明は特許請求の範囲を逸脱しない限り、当業者により適宜変更し、追加し、削除して実施することができる。