【実施例】
【0039】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0040】
試験区分1(本発明のアミド誘導体の調製)
・アミド誘導体A−1の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにヤシ脂肪酸メチルエステル230部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでヤシ脂肪酸ジエタノールアミドA−1を得た。
【0041】
・アミド誘導体A−2の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにラウリン酸メチルエステル214部とモノエタノールアミン61部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでラウリン酸モノエタノールアミドA−2を得た。
【0042】
・アミド誘導体A−3の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにステアリン酸メチルエステル299部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでステアリン酸ジエタノールアミドA−3を得た。
【0043】
・アミド誘導体A−4の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにオレイン酸メチルエステル296部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでオレイン酸ジエタノールアミドA−4を得た。
【0044】
・アミド誘導体A−5の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにパルミチン酸メチルエステル270部とモノエタノールアミン61部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでパルミチン酸モノエタノールアミドA−5を得た。
【0045】
・アミド誘導体A−6の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにオクチル酸メチルエステル158部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでオクチル酸ジエタノールアミドを得た。得られたオクチル酸ジエタノールアミド231部と水酸化ナトリウム1部をオートクレーブに加えて撹拌しながら減圧下120℃で脱水後、撹拌しながら130℃に加熱してエチレンオキサイド88部を徐々に添加後、1時間加熱撹拌を継続して反応を完了させた。その後、ろ過処理を行うことでオクチル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド2モル付加物A−6を得た。
【0046】
・アミド誘導体A−7の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにヤシ脂肪酸メチルエステル230部とモノイソプロパノールアミド75部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでヤシ脂肪酸モノイソプロパノールアミドA−7を得た。
【0047】
・アミド誘導体A−8の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにラウリン酸メチルエステル214部とジイソプロパノールアミド133部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでラウリン酸ジイソプロパノールアミドA−8を得た。
【0048】
・アミド誘導体A−9の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにオレイン酸メチルエステル296部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでオレイン酸ジエタノールアミドを得た。得られたオレイン酸ジエタノールアミド231部と水酸化ナトリウム1部をオートクレーブに加えて撹拌しながら減圧下120℃で脱水後、撹拌しながら130℃に加熱してエチレンオキサイド352部を徐々に添加後、1時間加熱撹拌を継続して反応を完了させた。その後、ろ過処理を行うことでオレイン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド8モル付加物A−9を得た。
【0049】
表1において、アミド誘導体A−1〜9を構成する脂肪酸の種類、アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数を示す。
【0050】
【表1】
試験区分2(評価用試料の調製)
・実施例1:試験区分1で調製したヤシ脂肪酸ジエタノールアミドA−1を70部とジエタノールアミンB−1を30部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例1の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0051】
・実施例2:試験区分1で調製したラウリン酸モノエタノールアミドA−2を80部とモノエタノールアミンB−2を20部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例2の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0052】
・実施例3:試験区分1で調製したラウリン酸モノエタノールアミドA−2の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにローラー浸漬法にて給油することで実施例3の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0053】
・実施例4:試験区分1で調製したステアリン酸ジエタノールアミドA−3の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにローラー浸漬法にて給油することで実施例4の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリプロピレン樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0054】
・実施例5:試験区分1で調製したオレイン酸ジエタノールアミドA−4の60部とイソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド平均9モル付加物B−3の40部をよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例5の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0055】
・実施例6:試験区分1で調製したパルミチン酸モノエタノールアミドA−5の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリアミド樹脂に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例6の含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂と含浸性向上剤が付与されていない不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0056】
・実施例7:試験区分1で調製したパルミチン酸モノエタノールアミドA−5の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリアミド樹脂、及び、不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにそれぞれスプレー法にて給油することで実施例7の含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂、及び、含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂と含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0057】
・実施例8:試験区分1で調製したヤシ脂肪酸ジエタノールアミドA−1を30部と試験区分1で調製したラウリン酸モノエタノールアミドを30部とトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド平均34モル付加物B−4を40部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリプロピレン樹脂に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例8の含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリプロピレン樹脂を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリプロピレン樹脂と含浸性向上剤が付与されていない不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0058】
・実施例9:試験区分1で調製したステアリン酸ジエタノールアミドA−3を40部と試験区分1で調製したオレイン酸ジエタノールアミドを60部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリアミド樹脂に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例9の含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリアミド樹脂を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリアミド樹脂と含浸性向上剤が付与されていない不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0059】
・実施例10:試験区分1で調製したオクチル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド2モル付加物A−6の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例10の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0060】
・
参考例11:試験区分1で調製したヤシ脂肪酸モノイソプロパノールアミドA−7の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで
参考例11の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0061】
・
参考例12:試験区分1で調製したラウリン酸ジイソプロパノールアミドA−8の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで
参考例12の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0062】
・実施例13:試験区分1で調製したオレイン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド8モル付加物A−9の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例13の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0063】
・比較例1:ポリエチレンイミンB−5の100部をイオン交換水4900部で分散希釈して固形分が2%の水分散液を作成した。この水分散液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにローラー浸漬法にて給油することで比較例1のポリエチレンイミンB−5が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られたポリエチレンイミンB−5が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを試験区分3の評価に供した。
【0064】
表2において、各例で使用したアミド誘導体、その他成分、及び熱可塑性樹脂の種類を示す。また、各成分の含有量の合計を100質量部とした場合の各成分の比率(部)を示す。
【0065】
【表2】
表2において、
B−1:ジエタノールアミン、
B−2:モノエタノールアミン、
B−3:イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド平均9モル付加物、
B−4:トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド平均34モル付加物、
B−5:ポリエチレンイミン、
を示す。
【0066】
試験区分3(評価)
・含浸性の評価
試験区分2で調製した各例の熱可塑性樹脂0.5gと不織布状炭素繊維を10cm四方にカットしたものを2枚とポリテトラフルオロエチレンシート(テフロンシート:デュポン社製)を2枚用意した。テフロンシート、10cm四方にカットした不織布状炭素繊維、熱可塑性樹脂0.5g、10cm四方にカットした不織布状炭素繊維、テフロンシートの順にサンドイッチ状にした。その後、300℃に温めたホットプレス機(アズワン社製、高温熱プレス機0〜1tH400−01)で1MPaの圧力で30秒プレスした後、テフロンシート側に含浸されてきた熱可塑性樹脂の量を以下の基準で目視評価を行った。
◎:熱可塑性樹脂がはっきりとテフロンシート側に含浸されているのが確認できる。
〇:熱可塑性樹脂が僅かにテフロンシート側に含浸されているのが確認できる。
×:熱可塑性樹脂がテフロンシート側に含浸されているのが確認できない。
【0067】
・接着性の評価
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力により評価した。
図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0068】
板状の四角枠状のホルダー11に試験区分2で調製した不織布状炭素繊維から1本の炭素繊維12を取り出し、緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、試験区分2で調製した熱可塑性樹脂を直径がほぼ80μmの樹脂滴13となるように炭素繊維12に付着させ、300℃の雰囲気下で3分間加熱して固定した。
【0069】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0070】
樹脂滴13が固定されている炭素繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される応力が計測される。
【0071】
ホルダー11を15mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が炭素繊維12から剥離する際に生じる最大応力Fを、ロードセル15にて計測した。
【0072】
計測した値を用いて、下記の数1により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を以下の基準により評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0073】
【数1】
数1において、
F:炭素繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大応力(N)。
D:炭素繊維12の直径(m)。
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
◎:界面せん断強度が80MPa以上。
〇:界面せん断強度が70MPa以上且つ80MPa未満。
×:界面せん断強度が70MPa未満。
【0074】
以上、表2の結果からも明らかなように、本発明によれば、無機繊維と熱可塑性樹脂の良好な含浸性と接着性を付与することができるという効果がある。