特許第6556968号(P6556968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556968含浸性向上剤、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6556968
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】含浸性向上剤、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/402 20060101AFI20190729BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20190729BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20190729BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   D06M13/402
   C08J5/06CES
   C08J5/06CFG
   D06M101:00
   D06M101:40
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-10264(P2019-10264)
(22)【出願日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年1月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旬
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 基樹
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−135624(JP,A)
【文献】 特開2011−236533(JP,A)
【文献】 特開2016−216860(JP,A)
【文献】 特許第6338029(JP,B2)
【文献】 国際公開第2018/154867(WO,A1)
【文献】 特開平03−281554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
C08J 5/06
D06M 101/00
D06M 101/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド化合物にアルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体を含むことを特徴とする無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性向上剤。
【請求項2】
前記アミド誘導体が、前記アミド化合物1モルに対し前記アルキレンオキサイドを1〜15モルの割合で付加させた構造のものである請求項1に記載の含浸性向上剤。
【請求項3】
前記アミド誘導体が、前記アミド化合物1モルに対し前記アルキレンオキサイドを1〜4モルの割合で付加させた構造のものである請求項1に記載の含浸性向上剤。
【請求項4】
前記アミド化合物が、炭素数6〜20のカルボン酸とアミンとの反応物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の含浸性向上剤。
【請求項5】
前記無機繊維が、炭素繊維である請求項1〜のいずれか一項に記載の含浸性向上剤。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも一つである請求項1〜のいずれか一項に記載の含浸性向上剤。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の含浸性向上剤を無機繊維に塗布する工程を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の含浸性向上剤を熱可塑性樹脂に塗布する工程を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の含浸性向上剤と熱可塑性樹脂とを混合する工程を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の含浸性向上剤を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性向上剤、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維等の無機繊維及びポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を含む材料として繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が知られ、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。炭素繊維等の無機繊維及びポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂との界面の接着性を向上させるためにサイジング剤を無機繊維に付着させる処理が行われている。
【0003】
従来より、例えば特許文献1に開示の炭素繊維用サイジング剤が知られている。かかる炭素繊維用サイジング剤は、アミノ基又はアミド基を含む化合物(A)をサイジング剤全量の50質量%以上含み、かつ、エポキシ基又はオキサゾリン基を含む化合物を実質的に含まないサイジング剤(B)を使用する。また、かかるサイジング剤(B)を炭素繊維束100質量部に対して0.1〜2質量部の割合で付着されてなり、炭素繊維束とサイジング剤の接着仕事及び接触角が所定の範囲であるサイジング剤塗布炭素繊維束について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−135624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のサイジング剤は、熱可塑性樹脂の無機繊維に対する含浸性が不十分であった。
本発明が解決しようとする課題は、無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性を向上できる含浸性向上剤を提供する処にある。また、かかる含浸性向上剤を用いた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、アミド化合物にアルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体を含むことを特徴とする無機繊維の熱可塑性樹脂との含浸性向上剤が正しく好適であることを見出した。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、アミド化合物にアルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体を含むことを特徴とする無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性向上剤が提供される。
【0008】
前記アミド誘導体が、前記アミド化合物1モルに対し前記アルキレンオキサイドを1〜15モルの割合で付加させた構造のものであることが好ましい。
前記アミド誘導体が、前記アミド化合物1モルに対し前記アルキレンオキサイドを1〜4モルの割合で付加させた構造のものであることが好ましい。
【0009】
前記アミド化合物が、炭素数6〜20のカルボン酸とアミンとの反応物であることが好ましい
【0010】
前記無機繊維が、炭素繊維であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0011】
本発明の別の態様では、前記含浸性向上剤を無機繊維に塗布する工程を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法が提供される。
本発明の別の態様では、前記含浸性向上剤を熱可塑性樹脂に塗布する工程を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様では、前記含浸性向上剤と熱可塑性樹脂とを混合する工程を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法が提供される。
本発明の別の態様では、前記含浸性向上剤を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例欄における接着性評価のための複合材界面特性評価装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の含浸性向上剤を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の含浸性向上剤は、アミド化合物にアルキレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体を含む含浸性向上剤である。
【0016】
本実施形態の含浸性向上剤に使用されるアミド化合物にアルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体の具体例としては、例えばヘキシル酸モノエタノールアミド、ヘプタン酸モノエタノールアミド、オクチル酸モノエタノールアミド、2−エチルヘキシル酸モノエタノールアミド、ノナン酸モノエタノールアミド、イソノナン酸モノエタノールアミド、デシル酸モノエタノールアミド、イソデシル酸モノエタノールアミド、ウンデシル酸モノエタノールアミド、イソウンデシル酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミド、イソドデシル酸モノエタノールアミド、トリデシル酸モノエタノールアミド、イソトリデシル酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、イソテトラデシル酸モノエタノールアミド、ペンタデシル酸モノエタノールアミド、イソペンタデシル酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、イソヘキサデシル酸モノエタノールアミド、ヘプタデシル酸モノエタノールアミド、イソヘプタデシル酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、イソステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、リノール酸モノエタノールアミド、リノレン酸モノエタノールアミド、パーム油脂肪酸モノエタノールアミド、ノナデシル酸モノエタノールアミド、イソノナデシル酸モノエタノールアミド、イコシル酸モノエタノールアミド、イソイコシル酸モノエタノールアミド、ヘンイコシル酸モノエタノールアミド、イソヘンイコシル酸モノエタノールアミド、ドコサン酸モノエタノールアミド、イソドコサン酸モノエタノールアミド、テトラコサン酸モノエタノールアミド等が挙げられる。
【0017】
さらには、ヘキシル酸ジエタノールアミド、ヘプタン酸ジエタノールアミド、オクチル酸ジエタノールアミド、2−エチルヘキシル酸ジエタノールアミド、ノナン酸ジエタノールアミド、イソノナン酸ジエタノールアミド、デシル酸ジエタノールアミド、イソデシル酸ジエタノールアミド、ウンデシル酸ジエタノールアミド、イソウンデシル酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、イソドデシル酸ジエタノールアミド、トリデシル酸ジエタノールアミド、イソトリデシル酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、イソテトラデシル酸ジエタノールアミド、ペンタデシル酸ジエタノールアミド、イソペンタデシル酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、イソヘキサデシル酸ジエタノールアミド、ヘプタデシル酸ジエタノールアミド、イソヘプタデシル酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、イソステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、リノール酸ジエタノールアミド、リノレン酸ジエタノールアミド、パーム油脂肪酸ジエタノールアミド、ノナデシル酸ジエタノールアミド、イソノナデシル酸ジエタノールアミド、イコシル酸ジエタノールアミド、イソイコシル酸ジエタノールアミド、ヘンイコシル酸ジエタノールアミド、イソヘンイコシル酸ジエタノールアミド、ドコサン酸ジエタノールアミド、イソドコサン酸ジエタノールアミド、テトラコサン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0018】
さらにはヘキシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヘプタン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、オクチル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、2−エチルヘキシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ノナン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソノナン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、デシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ウンデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソウンデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ラウリン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソドデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、トリデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソトリデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ミリスチン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソテトラデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ペンタデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソペンタデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、パルミチン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソヘキサデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヘプタデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソヘプタデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ステアリン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソステアリン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、オレイン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、リノール酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、リノレン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、パーム油脂肪酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ノナデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソノナデシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イコシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソイコシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヘンイコシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソヘンイコシル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ドコサン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソドコサン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、テトラコサン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物等が挙げられる。
【0019】
参考例として、ヘキシル酸モノイソプロパノールアミド、ヘプタン酸モノイソプロパノールアミド、オクチル酸モノイソプロパノールアミド、2−エチルヘキシル酸モノイソプロパノールアミド、ノナン酸モノイソプロパノールアミド、イソノナン酸モノイソプロパノールアミド、デシル酸モノイソプロパノールアミド、イソデシル酸モノイソプロパノールアミド、ウンデシル酸モノイソプロパノールアミド、イソウンデシル酸モノイソプロパノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ脂肪酸モノイソプロパノールアミド、パーム核油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、イソドデシル酸モノイソプロパノールアミド、トリデシル酸モノイソプロパノールアミド、イソトリデシル酸モノイソプロパノールアミド、ミリスチン酸モノイソプロパノールアミド、イソテトラデシル酸モノイソプロパノールアミド、ペンタデシル酸モノイソプロパノールアミド、イソペンタデシル酸モノイソプロパノールアミド、パルミチン酸モノイソプロパノールアミド、イソヘキサデシル酸モノイソプロパノールアミド、ヘプタデシル酸モノイソプロパノールアミド、イソヘプタデシル酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミド、イソステアリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、リノール酸モノイソプロパノールアミド、リノレン酸モノイソプロパノールアミド、パーム油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、ノナデシル酸モノイソプロパノールアミド、イソノナデシル酸モノイソプロパノールアミド、イコシル酸モノイソプロパノールアミド、イソイコシル酸モノイソプロパノールアミド、ヘンイコシル酸モノイソプロパノールアミド、イソヘンイコシル酸モノイソプロパノールアミド、ドコサン酸モノイソプロパノールアミド、イソドコサン酸モノイソプロパノールアミド、テトラコサン酸モノイソプロパノールアミド等が挙げられる。
【0020】
参考例として、ヘキシル酸ジイソプロパノールアミド、ヘプタン酸ジイソプロパノールアミド、オクチル酸ジイソプロパノールアミド、2−エチルヘキシル酸ジイソプロパノールアミド、ノナン酸ジイソプロパノールアミド、イソノナン酸ジイソプロパノールアミド、デシル酸ジイソプロパノールアミド、イソデシル酸ジイソプロパノールアミド、ウンデシル酸ジイソプロパノールアミド、イソウンデシル酸ジイソプロパノールアミド、ラウリン酸ジイソプロパノールアミド、ヤシ脂肪酸ジイソプロパノールアミド、パーム核油脂肪酸ジイソプロパノールアミド、イソドデシル酸ジイソプロパノールアミド、トリデシル酸ジイソプロパノールアミド、イソトリデシル酸ジイソプロパノールアミド、ミリスチン酸ジイソプロパノールアミド、イソテトラデシル酸ジイソプロパノールアミド、ペンタデシル酸ジイソプロパノールアミド、イソペンタデシル酸ジイソプロパノールアミド、パルミチン酸ジイソプロパノールアミド、イソヘキサデシル酸ジイソプロパノールアミド、ヘプタデシル酸ジイソプロパノールアミド、イソヘプタデシル酸ジイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジイソプロパノールアミド、イソステアリン酸ジイソプロパノールアミド、オレイン酸ジイソプロパノールアミド、リノール酸ジイソプロパノールアミド、リノレン酸ジイソプロパノールアミド、パーム油脂肪酸ジイソプロパノールアミド、ノナデシル酸ジイソプロパノールアミド、イソノナデシル酸ジイソプロパノールアミド、イコシル酸ジイソプロパノールアミド、イソイコシル酸ジイソプロパノールアミド、ヘンイコシル酸ジイソプロパノールアミド、イソヘンイコシル酸ジイソプロパノールアミド、ドコサン酸ジイソプロパノールアミド、イソドコサン酸ジイソプロパノールアミド、テトラコサン酸ジイソプロパノールアミド等が挙げられる。
【0021】
参考例として、ヘキシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヘプタン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、オクチル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、2−エチルヘキシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ノナン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソノナン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、デシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ウンデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソウンデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ラウリン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヤシ脂肪酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、パーム核油脂肪酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソドデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、トリデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソトリデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ミリスチン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソテトラデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ペンタデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソペンタデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、パルミチン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソヘキサデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヘプタデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソヘプタデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ステアリン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソステアリン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、オレイン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、リノール酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、リノレン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、パーム油脂肪酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ノナデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソノナデシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イコシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソイコシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ヘンイコシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソヘンイコシル酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、ドコサン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、イソドコサン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物、テトラコサン酸ジイソプロパノールアミドのプロピレンオキサイド1モル付加物から20モル付加物等が挙げられる。
【0022】
上記例示した中でも、前記アミド誘導体が前記アミド化合物1モルに対して前記アルキレンオキサイドを1〜15モルの割合で付加させた構造のものが好ましく、前記アミド誘導体が前記アミド化合物1モルに対して前記アルキレンオキサイドを1〜4モルの割合で付加させた構造のものが更に好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。また、無機繊維と熱可塑性樹脂との接着性を向上できる。
【0023】
本実施形態の含浸性向上剤に含まれるアミド化合物にアルキレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体に使用されるアミド化合物の具体例としては、例えばヘキシル酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクチル酸アミド、2−エチルヘキシル酸アミド、ノナン酸アミド、イソノナン酸アミド、デシル酸アミド、イソデシル酸アミド、ウンデシル酸アミド、イソウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド、パーム核油脂肪酸アミド、イソドデシル酸アミド、トリデシル酸アミド、イソトリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、イソテトラデシル酸アミド、ペンタデシル酸アミド、イソペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、イソヘキサデシル酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、イソヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、イソステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、パーム油脂肪酸アミド、ノナデシル酸アミド、イソノナデシル酸アミド、イコシル酸アミド、イソイコシル酸アミド、ヘンイコシル酸アミド、イソヘンイコシル酸アミド、ドコサン酸アミド、イソドコサン酸アミド、テトラコサン酸アミド等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果を向上させる観点からヘキシル酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクチル酸アミド、2−エチルヘキシル酸アミド、ノナン酸アミド、イソノナン酸アミド、デシル酸アミド、イソデシル酸アミド、ウンデシル酸アミド、イソウンデシル酸アミド、ラウリン酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド、パーム核油脂肪酸アミド、イソドデシル酸アミド、トリデシル酸アミド、イソトリデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、イソテトラデシル酸アミド、ペンタデシル酸アミド、イソペンタデシル酸アミド、パルミチン酸アミド、イソヘキサデシル酸アミド、ヘプタデシル酸アミド、イソヘプタデシル酸アミド、ステアリン酸アミド、イソステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、パーム油脂肪酸アミド、ノナデシル酸アミド、イソノナデシル酸アミド、イコシル酸アミド、イソイコシル酸アミド等の炭素数6〜20のカルボン酸とアミンとをアミド化した構造のものが好ましい。
【0024】
本実施形態の含浸性向上剤に含まれるアミド化合物にアルキレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体に使用されるアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイドが適用される。エチレンオキサイドの場合、本発明の効果をより向上させる。その他、アルキレンオキサイドの参考例として例えばプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の含浸性向上剤は、無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性を向上させるために用いられる。本実施形態の含浸性向上剤に適用される無機繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点から炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類としては、例えばポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、リサイクル炭素繊維等が挙げられ、本実施形態において何れの炭素繊維でも用いることができる。
【0026】
本実施形態の含浸性向上剤に適用される熱可塑性樹脂の具体例としては、特に制限はなく、例えばポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点からポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂であるポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0027】
本実施形態の含浸性向上剤によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の含浸性向上剤では、アミド化合物にアルキレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体を含むように構成した。したがって、熱可塑性樹脂と無機繊維との含浸性を向上できる。また、無機繊維と熱可塑性樹脂との接着性を向上できる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法(以下、本製造方法という)を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態と同様の構成が適用される。
【0029】
本製造方法は、第1実施形態の含浸性向上剤を無機繊維に塗布する工程、第1実施形態の含浸性向上剤を熱可塑性樹脂に塗布する工程、及び第1実施形態の含浸性向上剤と熱可塑性樹脂とを混合する工程から選ばれる少なくとも一つの工程を含む製造方法である。
【0030】
本実施形態の含浸性向上剤を無機繊維に塗布する工程を含む繊維強化熱可塑性複合材料の製造方法としては、まず無機繊維を製造した後に例えばローラー接触法、ガイドノズル法、スプレー法、ローラー浸漬法等の方法で第1実施形態の含浸性向上剤を無機繊維に塗布する工程が行われる。次にかかる無機繊維を熱可塑性樹脂に含浸させることにより繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を製造する方法が挙げられる。このときの無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態が挙げられる。
【0031】
本実施形態の含浸性向上剤を熱可塑性樹脂に塗布する工程を含む繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法としては、例えばまず熱可塑性樹脂を繊維状にした後に例えばローラー接触法、ガイドノズル法、スプレー法、ローラー浸漬法等の方法で第1実施形態の含浸性向上剤を熱可塑性樹脂に塗布する工程が行われる。次に無機繊維をかかる熱可塑性樹脂に含浸させることにより繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を製造する方法が挙げられる。このときの熱可塑性樹脂を繊維状にしたもの又は無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態が挙げられる。
【0032】
または、まず熱可塑性樹脂をペレット状にした後に例えば混合法、スプレー法、浸漬法等の方法で第1実施形態の含浸性向上剤を熱可塑性樹脂に塗布する工程が行われる。次に無機繊維をかかる熱可塑性樹脂に含浸させることにより繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を製造する方法が挙げられる。このときの無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態が挙げられる。
【0033】
本実施形態の含浸性向上剤と熱可塑性樹脂とを混合する工程を含む繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法としては、例えばまず熱可塑性樹脂と第1実施形態の含浸性向上剤をあらかじめ混錬して例えばペレット状又は繊維状にする工程が行われる。次に無機繊維とかかる熱可塑性樹脂に含浸させることにより繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を製造する方法が挙げられる。このときの熱可塑性樹脂を繊維状にしたもの又は無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態が挙げられる。
【0034】
本製造方法において、第1実施形態の含浸性向上剤を塗布、又は混錬する形態としては特に制限はないが、例えば含浸性向上剤をそのまま使用する方法、エマルションにして使用する方法、潤滑剤、界面活性剤、溶剤等の希釈剤に希釈して使用する方法等が挙げられる。
【0035】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。本実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、第1実施形態の含浸性向上剤を含むことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂複合材料である。本実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法は、第2実施形態の製造方法を適宜採用することができる。
【0036】
上記実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料、及びその製造方法によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2)上記実施形態では、熱可塑性樹脂の無機繊維に対する優れた含浸性により、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を均質に効率的に製造することができる。また、上記実施形態では、熱可塑性樹脂の無機繊維に対する優れた接着性により、機械特性等の各種特性に優れる繊維強化熱可塑性樹脂複合材料が得られる。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の含浸性向上剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、含浸性向上剤の品質保持のための安定化剤や制電剤として、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常含浸性向上剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0038】
・第1実施形態の含浸性向上剤を熱可塑性樹脂又は無機繊維に付着させる割合に特に制限はないが、含浸性向上剤(溶媒を含まない)を熱可塑性樹脂又は無機繊維に対し0.1〜5質量%となるように付着させることが好ましく、0.5〜3質量%となるように付着させることがより好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。第1実施形態の含浸性向上剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0040】
試験区分1(本発明のアミド誘導体の調製)
・アミド誘導体A−1の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにヤシ脂肪酸メチルエステル230部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでヤシ脂肪酸ジエタノールアミドA−1を得た。
【0041】
・アミド誘導体A−2の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにラウリン酸メチルエステル214部とモノエタノールアミン61部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでラウリン酸モノエタノールアミドA−2を得た。
【0042】
・アミド誘導体A−3の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにステアリン酸メチルエステル299部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでステアリン酸ジエタノールアミドA−3を得た。
【0043】
・アミド誘導体A−4の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにオレイン酸メチルエステル296部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでオレイン酸ジエタノールアミドA−4を得た。
【0044】
・アミド誘導体A−5の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにパルミチン酸メチルエステル270部とモノエタノールアミン61部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでパルミチン酸モノエタノールアミドA−5を得た。
【0045】
・アミド誘導体A−6の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにオクチル酸メチルエステル158部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでオクチル酸ジエタノールアミドを得た。得られたオクチル酸ジエタノールアミド231部と水酸化ナトリウム1部をオートクレーブに加えて撹拌しながら減圧下120℃で脱水後、撹拌しながら130℃に加熱してエチレンオキサイド88部を徐々に添加後、1時間加熱撹拌を継続して反応を完了させた。その後、ろ過処理を行うことでオクチル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド2モル付加物A−6を得た。
【0046】
・アミド誘導体A−7の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにヤシ脂肪酸メチルエステル230部とモノイソプロパノールアミド75部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでヤシ脂肪酸モノイソプロパノールアミドA−7を得た。
【0047】
・アミド誘導体A−8の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにラウリン酸メチルエステル214部とジイソプロパノールアミド133部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでラウリン酸ジイソプロパノールアミドA−8を得た。
【0048】
・アミド誘導体A−9の調製:
窒素雰囲気下でフラスコにオレイン酸メチルエステル296部とジエタノールアミン105部とソジウムメチラート1部を加えて撹拌しながら減圧下85℃に加熱して1時間反応させた後、撹拌しながら減圧下100℃に加熱して3時間反応を実施することでオレイン酸ジエタノールアミドを得た。得られたオレイン酸ジエタノールアミド231部と水酸化ナトリウム1部をオートクレーブに加えて撹拌しながら減圧下120℃で脱水後、撹拌しながら130℃に加熱してエチレンオキサイド352部を徐々に添加後、1時間加熱撹拌を継続して反応を完了させた。その後、ろ過処理を行うことでオレイン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド8モル付加物A−9を得た。
【0049】
表1において、アミド誘導体A−1〜9を構成する脂肪酸の種類、アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数を示す。
【0050】
【表1】
試験区分2(評価用試料の調製)
・実施例1:試験区分1で調製したヤシ脂肪酸ジエタノールアミドA−1を70部とジエタノールアミンB−1を30部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例1の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0051】
・実施例2:試験区分1で調製したラウリン酸モノエタノールアミドA−2を80部とモノエタノールアミンB−2を20部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例2の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0052】
・実施例3:試験区分1で調製したラウリン酸モノエタノールアミドA−2の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにローラー浸漬法にて給油することで実施例3の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0053】
・実施例4:試験区分1で調製したステアリン酸ジエタノールアミドA−3の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにローラー浸漬法にて給油することで実施例4の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリプロピレン樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0054】
・実施例5:試験区分1で調製したオレイン酸ジエタノールアミドA−4の60部とイソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド平均9モル付加物B−3の40部をよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例5の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないペレット状のポリアミド樹脂を以下試験区分3の評価に供した。
【0055】
・実施例6:試験区分1で調製したパルミチン酸モノエタノールアミドA−5の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリアミド樹脂に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例6の含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂と含浸性向上剤が付与されていない不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0056】
・実施例7:試験区分1で調製したパルミチン酸モノエタノールアミドA−5の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリアミド樹脂、及び、不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにそれぞれスプレー法にて給油することで実施例7の含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂、及び、含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたポリアミド樹脂と含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0057】
・実施例8:試験区分1で調製したヤシ脂肪酸ジエタノールアミドA−1を30部と試験区分1で調製したラウリン酸モノエタノールアミドを30部とトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド平均34モル付加物B−4を40部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリプロピレン樹脂に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例8の含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリプロピレン樹脂を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリプロピレン樹脂と含浸性向上剤が付与されていない不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0058】
・実施例9:試験区分1で調製したステアリン酸ジエタノールアミドA−3を40部と試験区分1で調製したオレイン酸ジエタノールアミドを60部とをよく混合したものをイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をペレット状のポリアミド樹脂に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例9の含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリアミド樹脂を調製した。得られた含浸性向上剤が付与されたペレット状のポリアミド樹脂と含浸性向上剤が付与されていない不織布状炭素繊維を以下試験区分3の評価に供した。
【0059】
・実施例10:試験区分1で調製したオクチル酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド2モル付加物A−6の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例10の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0060】
参考例11:試験区分1で調製したヤシ脂肪酸モノイソプロパノールアミドA−7の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで参考例11の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0061】
参考例12:試験区分1で調製したラウリン酸ジイソプロパノールアミドA−8の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで参考例12の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0062】
・実施例13:試験区分1で調製したオレイン酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド8モル付加物A−9の100部をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで実施例13の含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られた含浸性向上剤が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを以下試験区分3の評価に供した。
【0063】
・比較例1:ポリエチレンイミンB−5の100部をイオン交換水4900部で分散希釈して固形分が2%の水分散液を作成した。この水分散液を不織布状炭素繊維に固形分として2%付与されるようにローラー浸漬法にて給油することで比較例1のポリエチレンイミンB−5が付与された不織布状炭素繊維を調製した。得られたポリエチレンイミンB−5が付与された不織布状炭素繊維と含浸性向上剤が付与されていないポリアミド樹脂とを試験区分3の評価に供した。
【0064】
表2において、各例で使用したアミド誘導体、その他成分、及び熱可塑性樹脂の種類を示す。また、各成分の含有量の合計を100質量部とした場合の各成分の比率(部)を示す。
【0065】
【表2】
表2において、
B−1:ジエタノールアミン、
B−2:モノエタノールアミン、
B−3:イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド平均9モル付加物、
B−4:トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド平均34モル付加物、
B−5:ポリエチレンイミン、
を示す。
【0066】
試験区分3(評価)
・含浸性の評価
試験区分2で調製した各例の熱可塑性樹脂0.5gと不織布状炭素繊維を10cm四方にカットしたものを2枚とポリテトラフルオロエチレンシート(テフロンシート:デュポン社製)を2枚用意した。テフロンシート、10cm四方にカットした不織布状炭素繊維、熱可塑性樹脂0.5g、10cm四方にカットした不織布状炭素繊維、テフロンシートの順にサンドイッチ状にした。その後、300℃に温めたホットプレス機(アズワン社製、高温熱プレス機0〜1tH400−01)で1MPaの圧力で30秒プレスした後、テフロンシート側に含浸されてきた熱可塑性樹脂の量を以下の基準で目視評価を行った。
◎:熱可塑性樹脂がはっきりとテフロンシート側に含浸されているのが確認できる。
〇:熱可塑性樹脂が僅かにテフロンシート側に含浸されているのが確認できる。
×:熱可塑性樹脂がテフロンシート側に含浸されているのが確認できない。
【0067】
・接着性の評価
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力により評価した。図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0068】
板状の四角枠状のホルダー11に試験区分2で調製した不織布状炭素繊維から1本の炭素繊維12を取り出し、緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、試験区分2で調製した熱可塑性樹脂を直径がほぼ80μmの樹脂滴13となるように炭素繊維12に付着させ、300℃の雰囲気下で3分間加熱して固定した。
【0069】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0070】
樹脂滴13が固定されている炭素繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される応力が計測される。
【0071】
ホルダー11を15mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が炭素繊維12から剥離する際に生じる最大応力Fを、ロードセル15にて計測した。
【0072】
計測した値を用いて、下記の数1により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を以下の基準により評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0073】
【数1】
数1において、
F:炭素繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大応力(N)。
D:炭素繊維12の直径(m)。
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
◎:界面せん断強度が80MPa以上。
〇:界面せん断強度が70MPa以上且つ80MPa未満。
×:界面せん断強度が70MPa未満。
【0074】
以上、表2の結果からも明らかなように、本発明によれば、無機繊維と熱可塑性樹脂の良好な含浸性と接着性を付与することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0075】
10…複合材界面特性評価装置、11…ホルダー、12…炭素繊維、13…樹脂滴、14…接着剤、15…ロードセル、16…基板、17,18…ブレード。
【要約】
【課題】無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性を向上できる含浸性向上剤を提供する。また、かかる含浸性向上剤を用いた繊維強化熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の含浸性向上剤は、アミド化合物にアルキレンオキサイドを付加させた構造のアミド誘導体を含むことを特徴とする無機繊維と熱可塑性樹脂との含浸性向上剤である。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法は、前記含浸性向上剤を無機繊維に塗布する工程等を含むことを特徴とする。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、前記含浸性向上剤を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
図1