(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先に提案した技術では、木材を砕いて形成した木材砕片に、十分量のクエン酸鉄アンモニウムを添加する。そうすることにより、植物の成長阻害を安定的かつ効果的に防止しながら、タンニンを不活性化し、植物を良好に栽培できる木質培土を製造している。クエン酸鉄アンモニウムは食品添加物に指定されており、農作物を育てる農業でも安全に使用できるだけでなく、水溶液が非常に安定しており、30日以上の長期保管をした場合も、安定的である。従って、先に提案した技術は、木質材料と接触させた場合に、長期に亘ってタンニンの不活性化に寄与するため、植物の栽培という観点でも問題はない。
【0013】
しかし、木質培土のような農業資材は、コストが極めて重要である。コストが、費用対効果に見合う程度に安価でなければ、実用化は難しい。その点、クエン酸鉄アンモニウムは、農業資材に用いるには高額であったことから、先に提案した技術は、コストの観点では改善の余地があった。
【0014】
そこで、本発明者らは、その点を改善すべく、本出願に先立って、木質材料の改質薬液等の発明を出願している(特願2018−183425号)。
【0015】
今回、更に検討を進めた結果、より汎用性に優れ、植物栽培にも好適な木質培土が得られることを見出した。
【0016】
そこで、開示する技術の主たる目的は、そのような木質培土を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
硫酸鉄は、食品添加物に指定されている。硫酸鉄は木質培土が含む有害なポリフェノール成分の改質に有効であるが、水溶液にすると容易に赤褐色の沈殿物を生成する。従って、水溶液の調製に使用した硫酸鉄の量に見合った効果を得るのが難しい。その一方で、酸化・沈殿を見越して過剰に硫酸鉄を添加すると、木質培土に残存した硫酸鉄の作用により、植物の発芽阻害や成長阻害を引き起こす。原因のひとつとして、植物の成長にはリン酸が必須であるが、木質培土中に含まれる余剰の硫酸鉄が土中のリン酸と反応し、植物がリン酸を吸収できなくなるという問題が確認されている。
【0018】
先願の技術では、木材中のタンニンを長期に亘って不活性化するのに最低限の量の硫酸鉄をキレート化させた状態で、木質材料に接触させる。そうすることにより、安定的かつ長期的に、ポリフェノール成分の改質が可能になるとともに、植物を良好に栽培できることを確認し、安価で有効な改質薬液等を実現している。
【0019】
今回開示する技術の1つは、堆肥化されていない植物砕片を主体とし、クエン酸および硫酸鉄を含有する薬液(改質薬液)で改質することによって製造される木質培土に関するものである。
【0020】
前記薬液は、前記硫酸鉄の重量に対する前記クエン酸の重量の含有比率が、0.05以上となるように調製されている。
【0021】
なお、ここでいう「硫酸鉄」は、主に硫酸第一鉄(FeSO
4・7H
2O)をいうが、硫酸第二鉄であってもよい。硫酸第二鉄とした場合、前記含有比率は、水和水を除く重量に基づいて換算すればよい。
【0022】
ここでいう「堆肥化」とは、一般的にいう「堆肥化」又は「野ざらし」の定義を含む。
【0023】
すなわち、「堆肥化」とは、反応を起こしやすい有機廃棄物を含む木質の植物材料(木質材料)を安全に土壌還元可能なレベルまで分解をすることである。反応を起こしやすい有機廃棄物(大豆粕、油粕、家畜の糞尿、落ち葉等)は、未腐熟なまま土中に入れると大量の土中の酸素を消費して分解をおこす。それによって土壌は酸素欠乏を起こし、作物や土壌生態系に大きな打撃を与えてしまう。土中の微生物の種類や含まれる有機物、さらに言うと降雨量や温度等の条件により堆肥化の進み方は異なるため、数年〜数十年堆肥化されたものを「完熟堆肥」というが、完熟堆肥を工業的に得るには長い年月を要する一方、完熟されていない堆肥に関しては、堆積した量や堆積されたときの場所、雨の量や気温等により、微生物による有機物の堆肥化の程度が異なるという不確実な工程を含む。
【0024】
また、「野ざらし」とは、木質材料を屋外で野積み・堆積し、数年に亘り雨風にさらすことで木材中の水溶性成分を洗い流す手法である。木質材料、特に針葉樹(スギ、アカマツ、トドマツ、ヒノキ等)は、ポリフェノール成分(タンニン等)を多く含み、微生物による分解がなかなか進まない。一方では、これらタンニンが植物の成長や微生物の増殖を阻害することがわかっている。粉砕等木質材料を野ざらしすることで木材中の水溶性成分を洗い流すことにより、植物の成長阻害するタンニン成分を洗い流すだけでなく、微生物の働きを活性化させることができる。ただし、堆積した量や堆積されたときの場所、雨の量や気温等により、水溶性成分が洗い流される程度が異なるという不確実な工程を含む。
【0025】
すなわち、堆肥化していない植物砕片には、植物の成長に有害なポリフェノール成分が含まれているため、そのままでは木質培土に利用できない。それに対し、硫酸鉄をポリフェノール成分に作用させれば、ポリフェノール成分を不活性化することができる。
【0026】
少量の硫酸鉄を多量の植物砕片に均一に作用させなければならないため、通常、硫酸鉄は、薬液の形態で用いられる。ところが、上述したように、硫酸鉄は容易に沈殿を生成するし、過剰に残存すると植物の発芽阻害や成長阻害を引き起こす。
【0027】
それに対し、クエン酸を加えることで、硫酸鉄をキレート化することができ、薬液中で硫酸鉄をタンニンと反応可能な2価の鉄として、長期間に亘り安定化させることができる。植物砕片と2価の状態で維持された未反応の硫酸鉄を接触(併存)させること(「養生」という)により、ポリフェノール成分の不活性化は徐々に進行していく。従って、植物砕片が薬液処理された後、少なくとも1週間程度の養生期間を確保するのが好ましい。養生期間を確保することで、ポリフェノール成分の不活性化が十分に達成され、廃液を発生せず、高品質な木質培土を製造することができる。
【0028】
それに対し、この木質培土の薬液では、硫酸鉄の重量に対するクエン酸の重量の含有比率を0.05以上となるように調製する。詳細は後述するが、そうすることで、少なくとも養生期間、木材砕片と未反応の硫酸鉄を接触させることにより、ポリフェノール成分の不活性化は徐々に進行していく。従って、堆肥化されていない植物砕片を主体にして、高品質な木質培土を「堆肥化」という不確実な工程を経ず、工業的に安定的に製造することができる。
【0029】
前記植物砕片は、樹皮または椰子殻を含んでいてもよい。樹皮や椰子殻等は、木質材料の中でも、特にポリフェノール成分を多く含む。従って、木質培土の材料としては、通常、不向きであり、廃棄するのが一般的である。
【0030】
しかし、本発明者らが、更に検討を進めたところ、そのようなポリフェノール成分を多く含む木質材料でも、良好な木質培土が得られることを見出した(後述する「樹皮の使用について」参照)。
【0031】
そのような場合、前記含有比率は、0.3以下となるように調製されている、としてもよい。
【0032】
上述した含有比率を0.3以下となるように調製すれば、安定したポリフェノール成分の不活性化を実現でき、高品質な木質培土を製造できる。
【0033】
前記木質培土において、更に撥水防止剤を含む、としてもよい。
【0034】
開示する技術の他の1つは、植物栽培用の培土に関するものであり、上述した木質培土を含むこと特徴とする。
【0035】
ここで、植物栽培用の培土とは、植物の栽培用に使用される培土を意味する。培土には、市販品のように、予め、各種資材が培土に配合されていて、そのままの状態で使用できる形態や、個別に培土を入手して、赤玉土、ピートモス、バーミキュライト、鹿沼土のような他の資材と混合して使用する形態があるが、ここでいう植物栽培用の培土は、いずれの形態も含む。
【0036】
また、肥料、pH調整剤、各種軽量資材や撥水防止剤等、育苗に一般的に使用される培土、圃場やプランター等への植物の定植に用いる培土であれば、どのようなものでもよい。このような植物栽培用の培土に、上述した木質培土を入れることにより、透水性が向上するとともに、土中の微生物特性が向上する。
【発明の効果】
【0037】
開示する技術によれば、より汎用性に優れ、植物栽培にも好適な木質培土を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0040】
<木質培土>
現在、農業や園芸には、ピートモスや赤玉土、堆肥などを主材として構成された培土が一般に用いられている。培土は、肥料成分はもとより、植える植物に適した保水性、透水性、pH等の品質が求められる。ピートモスなどのいわゆる有機資材は、土壌の保水性・通気性の改善あるいは向上を目的として用いられる。
【0041】
近年では、趣味としての園芸も定着したことから、これを楽しむライトユーザーにとっては、軽量性も重要視されつつある。堆肥は、培土として有効であるが、その製造には、長い保管時間と広大な保管場所を要するだけでなく、雨量、気温等不確実な工程を含むため、工業的に生産しているとはいい難い。
【0042】
また、培土は、コストが極めて重要である。通常、培土は、価格設定が低額なうえに、多量に用いられる。そのため、僅かなコストの差であっても、総額では大きな差になる。従って、製造や材料に要するコストが、その用途との関係で、費用対効果に見合う程度に安価でなければ、品質に優れた培土であっても実用化は難しい。その点、本発明者らが先に提案したクエン酸鉄アンモニウムを用いた技術は、コストの点で改善の余地があった。
【0043】
そのような状況の下、これらの要望を満たし得る培土を開発すべく、本発明者らは、鋭意検討を行った(後述する「新たな改質薬液の検討」参照)。その結果、低コストでありながら、ポリフェノール成分を効果的に不活性化できる技術を確立し、新規な培土(木質培土)を開発した。以下、その詳細について説明する。
【0044】
(木質培土の主原料)
木質培土は、堆肥化されていない細かな木屑状の木材砕片で構成されており、その主たる原料は、針葉樹の木材である。
【0045】
それ以外にも、椰子殻(ヤシガラ)や針葉樹の樹皮等、ポリフェノール成分を多く含む、堆肥化されていない植物砕片を原料に使用できる。
【0046】
これら植物砕片を原料に使用する場合は、含有するポリフェノール成分の量に応じて、改質薬液の添加量を調整すればよい。特に、スギ材、アカマツ材等の樹皮は好適に使用できる。
【0047】
また、ヤシガラは、スリランカ等の海外で製造されるが、完全に堆肥化されるためには、数十年間、雨風にさらす必要がある。そのため、ヤシガラは植物の栽培で一般的に使用されてはいるが、完全に堆肥化されたヤシガラは入手が困難で、近年では、堆肥化が不十分なために、植物栽培に悪影響を与える場合がある。
【0048】
ここで、堆肥化されていないとは、発酵により、木材を構成している多糖類等が生分解されていないことも意味する。木質培土は、細分化されてはいるが、セルロースを主骨格とする木材の繊維成分は、その内部に残存した状態となっている。木材の繊維成分は、生分解され難いため、後述するように、木材を砕いて、保水性や透水性が異なる所定の形態の木材砕片に形成することで、栽培対象の植物に適した栽培条件を長期にわたって維持できる培土が得られる。
【0049】
木質培土の原料には、スギ、アカマツ、ヒノキ、トドマツ等、国産の針葉樹が好適である。広葉樹は、針葉樹よりも、多糖類等、不安定な有機成分を多く含むだけでなく、微生物の働きを抑えるポリフェノール成分が少ないため、腐り易く、針葉樹に比べて品質の安定性に欠ける。針葉樹であれば、腐りにくいため、適切かつ安定したpF値(土壌の湿り具合を表す指標)や三相分布(固相、液相、気相)を、長期にわたって維持できる。
【0050】
更に、国産の針葉樹は、建築材料や木材加工材料などに多用されており、その製造時には多量の端材(木材の余分な切れ端)が発生する。その端材が、木質培土の原料に利用できる。従って、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、トドマツ材等、安価な原料を安定して確保することができる。
【0051】
ポリフェノール成分は、木材の部位では、特に樹皮に多く存在するが、その内側の辺材(樹木の周辺部分)や心材(樹木の中心部分)にも存在する。そして、辺材よりも心材の方が、ポリフェノール成分の含量が多い傾向がある。そのため、心材よりも辺材を原料に多く用いるのが好ましい。具体的には、辺材と心材との割合が1:0〜1:1の範囲となるように、原料となる木材の割合を設定するのが好ましい。
【0052】
辺材の端材は、合板や積層材を製造する際に多量に発生する。合板や積層材の製造時には、薄板を形成するために、所定の寸法に分断した丸太を、外周から中心に向かって周方向に所定の厚みで剥いでいく工程がある。その工程の最後に残る、剥き芯と称する丸太の中心部分からなる端材を、木質培土の原料から排除することで、心材と辺材との割合を調整することができる。
【0053】
(改質薬液)
木質培土は、木材に含まれるポリフェノール成分の不活性化を目的とした硫酸鉄と、その硫酸鉄をキレート化させたクエン酸と、が含有されている。更に、木質培土の品質を向上するために、必要に応じて、撥水防止剤やpH調整剤が、木質培土に添加されている。
【0054】
硫酸鉄およびクエン酸は、個別に木材砕片に添加するのではなく、後述するように、水を主体とする薬液(改質薬液)に混合した状態で、木材砕片に噴霧等することによって木質培土に添加される。
【0055】
硫酸鉄、具体的には、硫酸第一鉄等は、ポリフェノール成分との反応性が高いため、ポリフェノール成分の不活性化には効果的であるが、過剰に添加すると、植物の成長阻害を引き起こす。詳しくは、木材砕片に添加される硫酸鉄の濃度が、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%より多くなると、植物の成長阻害を引き起こす可能性がある(特許文献5参照)。
【0056】
しかし、本発明者らが更に検討を進めた結果、所定量の硫酸鉄およびクエン酸をキレート化した状態で含む改質薬液を、木材砕片の改質に用いることで、木材砕片の絶乾重量に対して、0.2重量%より多い濃度の硫酸鉄、例えば、0.35重量%の硫酸鉄を添加しても、植物の成長を阻害しないことを見出した。
【0057】
更に、硫酸鉄は、水溶液にした場合、比較的短時間で沈殿が生成するという問題がある。その点、本発明者らが検討したところ、硫酸鉄の重量に対するクエン酸の重量の含有比率(クエン酸の含有重量/硫酸鉄の含有重量、以下、「クエン酸/硫酸鉄比率」ともいう)が大きくなるほど、硫酸鉄のキレート化が維持され、長時間、沈殿を生成することなく、安定した品質を確保できることを見出した。
【0058】
すなわち、クエン酸/硫酸鉄比率を大きくすることで、改質薬液としての適切な品質を、長期にわたって安定的に確保することが可能になる。
【0059】
そうすることにより、改質薬液を木材砕片と混合する前に時間的な余裕が得られるので、製造時の利便性が向上し、高品質な木質培土を、安定して製造できるようになる。改質薬液を木材砕片と混合した後も、硫酸鉄は、ポリフェノール成分との結合のために、所定期間の養生が必要である。その養生の際に、硫酸鉄の良好な反応性を長期にわたって維持できる。従って、木材砕片の優れた改質効果も期待できる。
【0060】
その一方で、クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるほど、硫酸鉄とポリフェノール成分との反応性が低下することも見出した。
【0061】
後述する試験結果に基づけば、例えば、改質薬液のクエン酸/硫酸鉄比率としては、0.05以上に調製するのが好ましく、0.1以上に調製するのがより好ましい。また、改質薬液のクエン酸/硫酸鉄比率は、0.3以下に調製するのが好ましい。
【0062】
そして、木材砕片の絶乾重量に対する硫酸鉄の濃度は、0.15%重量以上0.35重量%以下となるように調製するのが好ましい。特に、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、およびトドマツ材では、優れた改質効果が得られる。
【0063】
木材砕片は、乾燥することによって撥水性が生じる。撥水性が生じた木材砕片で木質培土が構成されていると、透水性が悪化することによって水分分布が不均質となり、植物の成長阻害を招くおそれがある。それに対し、撥水防止剤を木材砕片に添加することで、植物の成長阻害を抑制するだけでなく、植物の成長を促進できる効果が得られる(特許文献5参照)。従って、撥水防止剤を、補助的な原料として木質培土に添加してもよい。
【0064】
撥水防止剤としては、界面活性剤や、微細に粉砕された粘土鉱物(例えばベントナイト等)などが好適である。
【0065】
また、植物は、一般に、弱酸性から中性のpHを好むものが多いが、それぞれ適したpHがある。従って、栽培対象とする植物に応じたpH調整剤を、補助的な原料として、木質培土に添加してもよい。例えば、アルカリ性調整剤としての炭酸カルシウムや、酸性調整剤としてのピートモスなど、仕様に応じて木質培土に添加すればよい。
【0066】
(木質培土の特徴)
木質培土は、表面に近い部分はタンニン成分が不活性化されている一方、その内部に木材のポリフェノール成分がそのまま残る、細かな木屑状の木材砕片で構成されており、栽培対象の植物に応じた形態に設定されている。具体的には、木材の繊維成分の解け具合が、仕様に応じて設定されている。繊維分が解けるほど、保水性や吸水性が高くなり易く、木材組織が残るほど、透水性(水はけ)が高くなり易い。
【0067】
原料となる木材を砕く方法としては、例えば、回転鋸やカッターミルなどの切削粉砕機によって木材を細かく切断する方法(切削粉砕)、ハンマーミルやピンミルなどの衝撃粉砕機によって木材を衝撃で砕く方法(衝撃粉砕)、エクストルーダーやボールミルなどの摩砕粉砕機によって木材を磨り潰す方法(摩砕粉砕)がある。これらの中では、摩砕粉砕が最も繊維分が解け易いため、摩砕粉砕によって木材を砕くことで保水性や吸水性を高くできる。
【0068】
木材砕片は、10mm以下のメッシュを通過する大きさに調整するのが好ましい。10mm以下のメッシュを通過しない大きな木材砕片は、根の延び先を塞いでその成長を阻害し易いし、そのような大きな木材砕片を含むと、粒度分布がばらついて扱い難い。10mm以下のメッシュを通過する大きさに調整することで、適切な粒度分布が得られ、適度な保水性や透水性を得ることができる。
【0069】
木質培土は、このような木材砕片のみで構成された状態、例えば、木材砕片を袋詰め等して提供することができる。また、木質培土は、その他の植物の成長に有用な成分、例えば、肥料、炭、ピートモスやヤシガラ等の他の有機資材、赤土、黒土、パーライトやバーミキュライト等の無機資材などを木材砕片に適量混合した状態で提供することもできる。軽量化を目的に添加されるパーライトやバーミキュライト等の軽量資材との置換えも可能である。
【0070】
<木質培土の製造方法>
木質培土は、針葉樹の木材(端材)を砕いて木材砕片を形成する工程(第1工程)、所定の改質薬液を調製する工程(第2工程)、木材砕片を改質薬液で処理する工程(第3工程)などを経て製造される。堆肥化されていない木材を原料にして、堆肥化という不確実な工程を経ることなく工業的に製造できるので、短時間で量産できる。また、浸漬法と異なり、大量の処理廃液が発生することもない。
【0071】
第1工程では、端材を各種粉砕機で細かく砕いて木材砕片を形成する処理(細分化処理)と、10mmメッシュを通過する木材砕片を選別する処理(分級処理)とが行われる。細分化処理では、製造する木質培土の形態に応じて、前述した各種の粉砕機が選択して使用される。端材を砕くだけであるので、短時間で処理できる。
【0072】
分級処理では、細分化処理で得られる木材砕片を10mm以下のメッシュを通過させることで、所定の粒度に分級された木材砕片のみを回収する。作業効率の観点からは、10mmよりサイズの大きなメッシュを前段で通過させ、粗分級を行うのが好ましい。10mm以下のメッシュを通過しない木材砕片は、細分化処理を再度行う(リサイクルする)ことで、処理効率を向上させることができる。リサイクルしながら、細分化処理と分級処理とを同時に行うのが最も効果的である。
【0073】
第2工程では、主に、クエン酸と硫酸鉄とを、所定の比率で水に混合することにより、木材砕片を改質するための改質液を調製する。具体的には、クエン酸/硫酸鉄比率が、少なくとも0.05以上となるように、硫酸鉄およびクエン酸を、水に添加して混合する。クエン酸/硫酸鉄比率は、0.3以下となるように調製するのが好ましい。
【0074】
クエン酸および硫酸鉄は、材料コストに関しては、クエン酸鉄アンモニウムと比較すると、極めて安価である。例えば、10分の1以下のコストで、同程度の改質効果を得ることができる。従って、これらを原料に用いることで、農業資材に見合った低コストを実現できる。
【0075】
第3工程では、木材砕片に含まれるポリフェノール成分の不活性化や、品質の向上を目的とした改質処理が行われる。具体的には、木材砕片の絶乾重量に対し、硫酸鉄が、0.15重量%以上0.35重量%以下の濃度で含まれるように、改質薬液で木材砕片を処理する。
【0076】
その処理方法は、仕様に応じて適宜選択できる。例えば、従来行っていたように、改質薬液を溜めた水槽に木材砕片を浸漬してもよい。但し、この場合は、大量の廃液が発生するためのこの廃液処理にコストがかかる。また、効率的に量産できるように、改質液を木材砕片に噴霧してもよい(特許文献5参照)。噴霧時に、改質液を加温(例えば、50℃以上)してもよい。そうすれば、水分の除去を促進できるので、より効率的に処理できる。
【0077】
なお、撥水防止剤、pH調整剤などの補助的な原料の添加は、これら第1工程から第3工程までの過程において、必要に応じて行えばよい。また、後述するように、第3工程の後、更に第4工程として、改質薬液で処理した木材砕片は、養生するのが好ましい。
【0078】
硫酸鉄は、ポリフェノール成分との反応性が高い。そのため、ポリフェノール成分の不活性化に、硫酸鉄は有効である。クエン酸を適量添加することにより、硫酸鉄をキレート化させる。そうすることにより、改質薬液の品質を長期間にわたって維持できる。その結果、製造時の利便性が向上するし、製造後も、硫酸鉄の反応性を長期間保持されるので、がポリフェノール成分の不活性化が促進される。従って、高品質な木質培土が安定的に低価格で得られる。
【0079】
栽培対象とされる植物に合わせて、適量の撥水防止剤やpH調整剤を木材砕片に添加すれば、より高品質な木質培土が得られるので、植物の成長を、よりいっそう促進できる。
【0080】
(木質培土の養生処理)
上述した木質培土の製造後、すなわち、木材砕片に改質薬液が混合された後においても、ポリフェノール成分と硫酸鉄との結合によるポリフェノール成分の不活性化は徐々に進行していく。従って、木質培土の製造後、直ちに使用するのではなく、少なくとも一定期間放置(養生)するのが好ましい。
【0081】
例えば、1週間程度、好ましくは2週間程度の養生期間を確保するのが好ましい。木質培土の製造後に、このような養生期間を設けることで、より高品質な木質培土を得ることができる。
【0082】
それに対し、養生期間中に硫酸鉄が酸化され、3価の鉄を含む沈殿物を生成すると、硫酸鉄の濃度が低下するので、養生による改質効果が減少する。従って、養生期間中、硫酸鉄が沈殿しない程度に改質薬液の安定性を確保することが重要である。例えば、木質培土の製造後の15日〜20日の期間、硫酸鉄がほとんど沈殿しない程度の安定性を、改質薬液において確保することが要望される。
【0083】
この養生期間は、改質薬液の調製後、すなわち第2工程の後、直ちに第3工程が行われる場合を前提としている。
【0084】
しかし、実際の製造時には、第2工程後に連続して第3工程が行われるとは限らない。第2工程と第3工程との間に、生産調整等のため、数日ないし数十日の空白期間が発生することは、普通にあり得る。従って、養生期間と、そのような調整期間とを考慮すると、改質薬液の調製後、少なくとも30日以上は、改質薬液の品質を安定して維持するのが、より好ましい。
【0085】
この点、上述したように、クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるほど、改質薬液の品質を長期間、安定して確保することが可能になる。その一方で、クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるほど、硫酸鉄とポリフェノール成分との反応性が低下する。従って、これら双方を考慮して、クエン酸/硫酸鉄比率を適切な値に調製する必要がある。
【0086】
<新たな改質薬液の検討>
本発明者らは、安価なコストで、先に提案したクエン酸鉄アンモニウムと同等以上の効果が期待できる原料として、硫酸鉄およびクエン酸に着目し、様々な検討を行った。以下、その内容について説明する。
【0087】
(硫酸鉄およびクエン酸の錯体形成)
クエン酸/硫酸鉄比率による硫酸鉄とクエン酸との錯体の形成への影響について調べるため、試験を行った。その試験では、硫酸鉄・7水和物(以下、単に硫酸鉄という)およびクエン酸を、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜1.0)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。いずれの水溶液も、硫酸鉄およびクエン酸の合計濃度が3重量%となるように調製した。そして、これら水溶液の電気伝導度(以下、ECともいう)を測定した。
【0088】
図1に、その試験結果を示す。硫酸鉄のみ(クエン酸/硫酸鉄比率=0)の状態から、クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるに従ってECが上昇し、クエン酸/硫酸鉄比率が約0.1のときにピークに達し、それ以降は、クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるに従って、ECは低下した。
【0089】
硫酸鉄の3重量%水溶液のECは約9.0mS/cm(クエン酸/硫酸鉄比率=0)であるのに対し、クエン酸の3重量%水溶液のECの測定結果は4.1mS/cmであったことから、同じ濃度であれば、硫酸鉄の水溶液よりもクエン酸の水溶液の方がECは低い。
【0090】
それに対し、クエン酸および硫酸鉄の混合水溶液では、
図1に示すように、ピーク周辺に硫酸鉄の水溶液を越えるECの上昇が認められた。これは、クエン酸の添加によって錯体が形成され、硫酸鉄のイオン化(電離)が促進されて、硫酸イオンの濃度が上昇したためと考えられる。また、ピーク以降の、クエン酸/硫酸鉄比率の上昇に伴うECの低下は、単に、クエン酸の増加に伴う硫酸鉄の希釈によるものと考えられる。
【0091】
この結果から、硫酸鉄およびクエン酸を水溶液に混合すると、錯体が形成され、約0.1のクエン酸/硫酸鉄比率をピークに、硫酸鉄のイオン化が促進されることがわかった。
【0092】
(硫酸鉄およびクエン酸の混合水溶液の安定性)
硫酸鉄およびクエン酸を混合した水溶液の安定性について調べるため、第1試験を行った。第1試験では、硫酸鉄およびクエン酸を、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜1.0)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。いずれの水溶液も、硫酸鉄およびクエン酸の合計濃度が3重量%となるように調製した。そして、これら水溶液を密閉容器に入れ、40℃の温度条件下で保管し、経時的な変化を目視により観察した。
【0093】
図2に、第1試験の結果を示す。硫酸鉄のみの水溶液(クエン酸/硫酸鉄比率=0)では、1日で赤褐色の沈殿が生成した。クエン酸/硫酸鉄比率が0.05の場合、18日経過後では、沈殿は生成しなかったが、38日経過後に沈殿が生成した。クエン酸/硫酸鉄比率が0.1以上の場合、38日を経過しても沈殿は生成しなかった。
【0094】
この結果から、クエン酸/硫酸鉄比率が0.05以上であれば、少なくとも18日の期間、改質薬液の品質を安定して維持できる。従って、上述した養生期間を考慮するだけであれば、クエン酸/硫酸鉄比率が0.05以上であれば足りることになる。
【0095】
一方、上述した調整期間も考慮するのであれば、クエン酸/硫酸鉄比率が0.05以上では足りないおそれがある。それに対し、1.0以上のクエン酸/硫酸鉄比率であれば、38日の期間の経過後でも、改質薬液の品質を安定して維持できるので、調整期間および養生期間に対応できる。
【0096】
上述した第1試験と条件が異なる第2試験も行った。
【0097】
第1試験では、硫酸鉄およびクエン酸の合計濃度が3重量%となるように調製したのに対し、第2試験では、硫酸鉄の濃度が0.25重量%で一定となるように調製した。そのうえで、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜1.0)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。これら水溶液の硫酸鉄およびクエン酸の合計濃度は、0.25重量%から0.5重量%までの異なる値となっている。
【0098】
第2試験でも、第1試験と同様に、これら水溶液を密閉容器に入れ、40℃の温度条件下で保管し、経時的な変化を目視により観察した。
図3に、第2試験の結果を示す。
【0099】
硫酸鉄の水溶液(クエン酸/硫酸鉄比率=0)では、1日で赤褐色の沈殿が生成した。クエン酸/硫酸鉄比率が0.05の場合、26日経過後では、沈殿が生成していた。クエン酸/硫酸鉄比率が0.1以上の場合、33日を経過しても沈殿は生成しなかった。
【0100】
この結果から、クエン酸/硫酸鉄比率が0.1以上であれば、改質薬液の品質に多少の違いがあっても、少なくとも30日以上、安定した品質を維持できる。工業的な生産であれば、調整期間および養生期間を考慮しても、改質薬液の調製後30日以上の安定性があれば、高品質な木質培土を安定して製造できる。
【0101】
(ポリフェノール成分に対する改質薬液の改質効果)
ポリフェノール成分の不活性化に対して、クエン酸/硫酸鉄比率の違いが及ぼす影響について調べるため、試験を行った。その試験では、第2試験と同様に、硫酸鉄の濃度が0.25重量%で一定となるように調製した。そのうえで、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜0.3)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。
【0102】
これら水溶液を、予め測色したスギ材の表面に滴下し、10秒後にふき取った。10分間放置した後、再度測色し、色差を測定した。硫酸鉄とポリフェノール成分とが反応すると変色し、色差が大きくなる。従って、色差は、ポリフェノール成分に対する硫酸鉄の反応性を比較する指標として利用できる。
【0103】
図4に、その試験の結果を示す。クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるほど、色差は小さくなる傾向が認められた。詳しくは、クエン酸/硫酸鉄比率が0〜0.2の範囲では、色差は漸減した。クエン酸/硫酸鉄比率が0.2〜0.3の範囲では、色差は横這いになり、約1.5程度の色差で安定した。
【0104】
この結果から、クエン酸/硫酸鉄比率が大きくなるほど、ポリフェノール成分(すなわち植物の成長を阻害する成分)に対する改質薬液の反応性は低下するが、0.3以下であれば、ある程度の反応性を確保できることがわかった。
【0105】
木材砕片が含有するポリフェノール成分に対する改質薬液の改質効果についても確認した。
【0106】
木材砕片の原料には、スギ材を使用した。そのスギ材をカッターミルで粉砕し、φ4mmのメッシュで篩い分けすることにより、所定サイズ(略4mm以下)の木材砕片を作製した。作製した木材砕片に、硫酸鉄が所定の濃度(0.05重量%〜0.35重量%)となるように改質薬液を噴霧し、14日間養生した後、木材砕片に含まれる水溶性のポリフェノール量を測定した。
【0107】
ポリフェノール量の測定は、フォリンチオカルト法(Folin Ciocalteu法)に従った。具体的には、木材砕片5.0gに、沸騰させた蒸留水50mlを添加し、24時間静置した後に遠心分離し、上澄み液を得た。その上澄み液1mlに、水0.5ml、フォリンチオカルト、フェノール試薬(MP Biomedicals,Inc製)0.5mlを添加した後、0.4M炭酸ナトリウム水溶液5mlを添加し、30分静置した。その後、700nmの吸光度を測定した。検量線には、タンニン酸((株)和光純薬社製)を使用した。
【0108】
図5に、その計測結果を示す。ポリフェノール量は、硫酸鉄の濃度が0.05重量%から0.25重量%になるまでは漸減し、0.25重量%から横這いになり、0.35重量%までは差は認められなかった。この結果から、木材砕片(具体的にはスギ材)において、硫酸鉄の濃度が少なくとも0.15重量%以上であれば、ポリフェノール量が減少し、改質効果が得られることがわかった。
【0109】
(木質培土のクエン酸/硫酸鉄比率が植物の成長に与える影響について)
木質培土のクエン酸/硫酸鉄比率が植物の成長に与える影響を調べるため、試験を行った。その試験では、先の試験と同様に、原料にスギ材を使用し、そのスギ材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの木材砕片を作製した。
【0110】
そして、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0.14〜0.58)となるように、改質薬液を調製した。木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄の濃度が0.25重量%となるように、その改質薬液を木材砕片に噴霧した後、14日間養生し、木質培土を得た。
【0111】
この木質培土に、肥料(マグァンプK小粒:(株)ハイポネックス社製)を4g/L添加した後、コマツナを播種した。これらを所定の人工気象条件下で21日間、栽培試験を実施した。そうして成長したコマツナの最大葉の大きさを比較した。なお、最大葉の大きさと収量と間には、高い相関が認められることがわかっており、最大葉の大きさは収量の指標として利用できる。
【0112】
図6に、その試験結果を示す。クエン酸/硫酸鉄比率が0.14の場合と0.29の場合とでは、最大葉の大きさは、ほとんど差はなかった。クエン酸/硫酸鉄比率が0.58の場合、最大葉の大きさは、これらよりも少し小さかった。この結果から、植物の成長において、クエン酸/硫酸鉄比率は、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましいことがわかった。
【0113】
(木質培土に含まれる硫酸鉄の濃度が植物の成長に与える影響について)
木質培土に含まれる硫酸鉄の濃度が植物の成長に与える影響を調べるため、試験を行った。その試験では、先の試験と同様に、原料にスギ材を使用し、そのスギ材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの木材砕片を作製した。
【0114】
そして、クエン酸/硫酸鉄比率が0.1となるように改質薬液を調製した。木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄が所定の濃度(0.05重量%〜0.35重量%)となるように、その改質薬液を木材砕片に噴霧した後、14日間養生し、木質培土を得た。そして、先の試験と同様に、栽培試験を実施し、播種後10日目および21日目において、最大葉の大きさを比較した。
【0115】
図7に、その試験結果を示す。播種後10日目では、硫酸鉄の濃度が0.05重量%〜0.35重量%の範囲では、最大葉の大きさに大きな差は認められなかったが、播種後21日目では、硫酸鉄の濃度が0.2重量%の辺りにピークが認められた。この結果から、植物の成長において、硫酸鉄の濃度は、木材砕片の絶乾重量に対し、硫酸鉄を0.15重量%以上0.35重量%以下の濃度で含むことが好ましく、硫酸鉄を0.15重量%以上0.25重量%以下の濃度で含むことがより好ましいことがわかった。
【0116】
(木材の種類の影響について)
スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、およびトドマツ材を原料に木質培土を作製し、コマツナの栽培試験を行った。
【0117】
その試験では、先の試験と同様に、各木材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの木材砕片を作製した。そして、クエン酸/硫酸鉄比率が0.1となるように改質薬液を調製した。木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄が0.25重量%となるように、その改質薬液をこれら木材砕片に噴霧した後、14日間養生し、木質培土を得た。そして、先の試験と同様に、栽培試験を実施した。比較試験として、改質処理を行わない条件も実施した。
【0118】
図8に、その試験結果を示す。比較試験の試験区では、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、トドマツ材のいずれにおいても、コマツナの良好な成長は認められなかった。それに対し、改質処理を行った試験区では、いずれにおいても良好な成長が認められた。従って、この試験結果から、開示する技術は、スギ材に限らず、様々な種類の木材に適用可能であることが確認された。また、これら木材を原料に用いれば、低コストで植物を良好に栽培できる木質培土を、確実に製造することができる。
【0119】
(樹皮の使用について)
スギ材の樹皮を原料に、木質培土を作製し、コマツナの栽培試験を行った。
【0120】
(実施例)
植物砕片(スギ材の樹皮)をカッターミルで粉砕し、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの樹皮砕片を作製した。そして、クエン酸/硫酸鉄比率が0.1となるように改質薬液を調製した。さらに、pH調整剤や撥水防止剤を添加した。
【0121】
具体的には、前記樹皮砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄が0.075重量%、0.15%重量%、0.225重量%、0.375重量%、0.75重量%、1.5重量%となるように調製した。0.075重量%が実施例1に相当する。同様に、0.15%重量%が実施例2に、0.225重量%が実施例3に、0.375重量%が実施例4に、0.75重量%が実施例5に、1.5重量%が実施例6に、それぞれ相当する。
【0122】
これらにはまた、非イオン系界面活性剤(竹本油脂社製)を樹皮砕片の絶乾重量に対して界面活性剤が0.3重量%となるように、また、pHが6.5になるようにpH調整剤(炭酸水素アンモニウムおよび炭酸カリウムを適量)を噴霧した。そうして、14日間養生し、実施例1〜6の木質培土を得た。
【0123】
比較例として、硫酸鉄及びクエン酸を含まない改質薬液を樹皮粉砕物に噴霧したものを使用した。具体的には、硫酸鉄およびクエン酸を除いて、実施例と同様に非イオン系界面活性剤、pH調整剤を混合して得た薬液を樹皮砕片に噴霧し、14日間養生して比較例の木質培土を得た。
【0124】
こうして得られた実施例1〜6、比較例の各木質培土に、化学肥料(マグァンプK小粒:(株)ハイポネックス社製)を4g/L添加し、植物栽培用の培土とした。これら培土を用いてコマツナの栽培試験を実施した。そうして栽培したコマツナの最大葉の大きさを比較した。
【0125】
その結果を
図9〜11に示す。
図9は、各実施例および比較例での栽培試験後のコマツナの状態を示している。
図10は、各実施例および比較例での、最大葉の大きさおよび葉の異常の有無をまとめたグラフである。
【0126】
これら
図9、
図10に示すように、実施例1〜6と比較例とで、最大葉の大きさや生理障害の症状(葉の黄変)に違いが確認された。実施例では、改質薬液の添加量が増えるほど、最大葉の大きさが大きくなった。また、生理障害症状も改善された。すなわち、実施例5(0.75重量%)や実施例6(1.5重量%)では、生理障害症状が認められることなく、最大葉も最大となり、好適な栽培結果が得られた。
【0127】
その一方で、実施例6(1.5重量%)は、EC(1.52mS/cm)が高くなる傾向が認められた。
図11に、各実施例および比較例のpHおよびECを比較したグラフを示す。実線のグラフがECであり、破線がpHである。
【0128】
ECが高いと、植物の種類によっては生理障害が発生する。そのため、必要に応じ、ECが高くなりすぎないようにする配慮が必要である。一般的に、ECは、1.0を超えないようにするのが好ましい。
【0129】
従って、ECは、栽培対象とする植物の種類に合わせて適宜調整すればよい。具体的には、育てたい植物の種類に応じて、植物砕片の種類ごとに、植物砕片に含まれるポリフェノール量や改質薬液の添加後の木質培土のECに配慮しながら、改質薬液の添加量を調整すればよい。
【0130】
(木質培土の微生物特性について)
木材砕片そのものと、木材砕片を改質薬液で処理した木質培土との微生物特性の違いを検証した。原料にスギ材を使用し、そのスギ材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの粒状の木材砕片(粒状木材砕片)を作製した。また、原料にスギ材を使用し、そのスギ材をエクストルーダーで摩砕し、さらにカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの繊維状の木材砕片(繊維状木材砕片)を作製した。
【0131】
そして、クエン酸/硫酸鉄比率が0.1となるように改質薬液を調製した。粒状木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄が0.25重量%となるように、改質薬液を粒状木材砕片に噴霧した後、14日間養生し、粒状木質培土を得た。
【0132】
同様に、繊維状木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄が0.25重量%となるように、その改質薬液を繊維状木材砕片に噴霧した後、14日間養生し、繊維状木質培土を得た。
【0133】
粒状木材砕片、繊維状木材砕片、粒状木質培土、繊維状木質培土について、それぞれに含まれる微生物量を測定した。具体的には、SOFIX農業推進機構が定めるMQI分析の手法に準じた。
【0134】
結果は、
図12に示すとおり、粒状木材砕片に比べて粒状木質培土の方が総細菌数が多くなった。また、繊維状木材砕片に比べて繊維状木質培土の方が総細菌数が多くなった。このことから、改質処理により、良好な微生物環境が形成されていると考えられる。
【0135】
(木質砕片を使用した植物栽培用の培土の効果について)
木質砕片を使用した植物栽培用の培土の効果について検証した。
【0136】
(比較例)
比較例として、市販の培土((株)サンブルーム社製「花と野菜の土」)を使用した。その主な材料は、バーク、ボラ土である。
【0137】
(実施例)
原料に、チップ状に切削加工された堆肥化されていないスギ材を使用した。そのスギ材を、2軸摩砕装置(モリマシナリー社製)で繊維状に摩砕した後、ロータリーカッターミルで切削粉砕し、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの粒状の木材砕片(粒状木材砕片)を作製した。
【0138】
次に、クエン酸/硫酸鉄比率が0.1、かつ、硫酸鉄の濃度が1重量%となるように、改質薬液を調製した。硫酸鉄には、硫酸第一鉄(FeSO
4・7H
2O)を使用した。木材砕片の絶乾重量に対し、硫酸鉄の濃度が0.15重量%となるように、その改質薬液を木材砕片に噴霧した。
【0139】
さらに、非イオン系の界面活性剤(竹本油脂社製)を、水溶液の濃度が2.0重量%となるように添加し、二次改質薬液を調製した。木材砕片の絶乾重量に対して界面活性剤が0.3重量%となるように、その二次改質薬液を木材砕片に噴霧した後、pHが6.5になるようにpH調整剤を木材砕片に添加して、14日間養生した。その後、天日干しにより、含水率が15重量%となるように木材砕片を乾燥し、試作用の木質培土を得た。
【0140】
こうして得た木質培土を、1:1の容積比率で比較例の市販培土に混合し、植物栽培用の培土(実施例)を得た。
【0141】
(試験方法)
底面に水抜き穴が開口している2つの円筒状の容器を準備した。水抜き穴の上に透水シートを敷いた状態で、これら容器の各々に、比較例および実施例の各培土を、押し込まないようにして600ml充填した。各培土の表面に、外径が容器の内径と略同一の樹脂製パンチングプレートを載せ、この樹脂製パンチングプレートの上に、重さが2kgで直径が84mmの分銅を、36cmの高さから同じ位置に2回落とし、突き固め操作を行った。
【0142】
突き固め操作の後、各培土に300mlの水を5回灌水して各培土を十分に湿らせた。その後、排水が無くなるまで各培土を静置し、試験に供した。試験では、各培土に300mlの水を灌水し、180秒間の間に排水される排水量を経時的に測定した。
【0143】
(試験結果)
図12に、その試験結果を示す。実線が実施例であり、破線が比較例である。実施例の培土では、灌水した水が速やかに土中に浸透した。対して、比較例の培土では、灌水した水が培土の上に溜まり、徐々に土中に浸透していった。
【0144】
また、実施例の培土の場合、その全体に均一に灌水されたが、比較例の培土の場合、濡れ易い箇所と濡れ難い箇所が認められた。いわゆる「水みち」が形成され、均一な灌水ができなかった。
【0145】
このように、開示技術に基づく木質培土を植物栽培用の培土に添加することで、透水性が改善できる。鉢やプランターに培土を詰め込んでも、水を均一に分散、浸透させる効果が得られので、安定して良好な生育が期待できる。
【0146】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、開示する技術が適用できる木材の種類は、上述した種類に限らない。これらと同程度にポリフェノール成分を含む植物砕片であれば、これらと同様に適用できる。
【解決手段】堆肥化されていない植物砕片を主体とし、クエン酸および硫酸鉄を含有する薬液で改質することによって製造される木質培土である。その薬液は、硫酸鉄の重量に対するクエン酸の重量の含有比率が、0.05以上となるように調製されている。