(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556978
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】車両搭載用アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-53328(P2013-53328)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179858(P2014-179858A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年12月25日
【審判番号】不服2018-9612(P2018-9612/J1)
【審判請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 俊介
(72)【発明者】
【氏名】本村 祐輔
【合議体】
【審判長】
北岡 浩
【審判官】
中野 浩昌
【審判官】
古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−79145(JP,A)
【文献】
特開2005−80074(JP,A)
【文献】
特開2001−119226(JP,A)
【文献】
特開2012−75034(JP,A)
【文献】
特開2008−263265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00-1/10
H01Q1/27-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンが設けられた基板と、
平衡モードのアンテナを形成する2つのアンテナ素子が配置されており、突出領域を有するアンテナ基板であって、当該突出領域の少なくとも一部が前記基板に直接重ねられ、プラスチックフィルムによって形成されたアンテナ基板と、を備え、
各前記アンテナ素子は、
前記突出領域に設けられた給電導線を備え、
2つの前記アンテナ素子から引き出された2本の前記給電導線は、
前記突出領域の少なくとも一部の領域を挟んで前記基板上の2本の導体パターンに、それぞれ対向しており、
各前記給電導線と、各前記給電導線に対向する前記導体パターンとが静電容量を形成していることを特徴とする車両搭載用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用アンテナに関し、特に、アンテナ素子の給電導線の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ラジオ受信機、テレビ受像機等の受信装置が搭載される。受信装置に用いられるアンテナには、アンテナ基板としてのプラスチックフィルム上にアンテナ素子が配置されたものがある。このようなフィルムアンテナは、バンパ、スポイラ等の付属部品や、窓ガラス等に配置される。
【0003】
一般に、車両搭載用のアンテナには、受信信号を増幅するアンプが接続される。アンテナとしてフィルムアンテナが用いられる場合、そのプラスチックフィルムの一部が、アンプが配置された基板に重ねられ固定される。そして、アンプ基板に設けられた導体パターンによって、アンテナ素子とアンプとが接続される。
【0004】
以下の特許文献1〜3には、プラスチックフィルム上にアンテナ素子が配置されたアンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−309412号公報
【特許文献2】特開2010−034924号公報
【特許文献3】特開2012−114783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のフィルムアンテナ等、アンテナ基板がアンプ基板に固定されるアンテナでは、アンプ基板の導体パターン上に設けられた板バネ等を用いて、アンテナ素子と導体パターンとを接触させる構造が用いられていた。しかし、このようなアンテナは構造が複雑であり、部品点数が多くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、アンテナ素子と基板上の導体パターンとを電気的に接続する構造を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明
に関連する技術は、導体パターンが設けられた基板と、アンテナ素子が配置されたアンテナ基板と、を備える車両搭載用アンテナの製造方法に
関するものであり、前記アンテナ基板における突出領域の少なくとも一部を前記基板に重ねる工程と、前記突出領域から前記基板上の導体パターンに亘って、導電性の塗料によって、前記アンテナ素子の給電導線を印刷する工程と、を含
む。
【0009】
本発明は、導体パターンが設けられた基板と、
平衡モードのアンテナを形成する2つのアンテナ素子が配置されており、突出領域を有するアンテナ基板であって、当該突出領域の少なくとも一部が前記基板に
直接重ねられ
、プラスチックフィルムによって形成されたアンテナ基板と
、を備え、
各前記アンテナ素子は、前記突出領域に設けられた給電導線を備え、
2つの前記アンテナ素子から引き出された2本の前記給電導線は、前記突出領域の少なくとも一部の領域を挟んで前記基板上の
2本の導体パターンに
、それぞれ対向し
ており、各前記給電導線と、各前記給電導線に対向する前記導体パターンとが静電容量を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナ素子と基板上の導体パターンとを電気的に接続する構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムを示す図である。
【
図2】アンプユニット、およびアンプユニットとフィルムアンテナとの結合部を示す図である。
【
図3】アンプユニットとフィルムアンテナとの結合部の断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムについて、アンプユニット、およびアンプユニットとフィルムアンテナとの結合部を示す図である。
【
図6】アンプユニットとフィルムアンテナとの結合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本発明の第1実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムが示されている。車両搭載用アンテナシステムは、フィルムアンテナ10およびアンプユニット12を備える。フィルムアンテナ10は、プラスチックフィルムによって形成されたアンテナ基板14、およびアンテナ基板14上に設けられた2つのアンテナ素子16を備える。2つのアンテナ素子16は線対称の形状を有し、平衡モードのアンテナとして動作する。
【0014】
各アンテナ素子16は、アンテナ素子本体部18および給電導線20を備える。アンテナ素子本体部18は、アンテナ基板14上を周回して長方形を描く導線によって形成されている。給電導線20は、アンテナ素子本体部18からアンプユニット12に向かって引き出された導線によって形成されている。アンテナ素子16は、導電性の塗料によってアンテナ基板14上に印刷されている。各アンテナ素子16のアンテナ素子本体部18が描く形状は、長方形の他、その他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、アンテナ素子本体部18の代わりに、アンテナ素子本体部18の導線に囲まれた領域が導体で充填された導体板が用いられてもよい。さらに、アンテナ素子本体部18は線状の導体であってもよい。
【0015】
図2には、アンプユニット12、およびアンプユニット12とフィルムアンテナ10との結合部が示されている。アンプユニット12は、筐体19、アンプ基板22、およびアンプ24を備える。筐体19は、上面が開放された容器形状を有し、側壁25の内側にアンプ基板22が嵌め込まれている。
【0016】
筐体19の側壁25のうち、フィルムアンテナ10側を臨む区間の一部は切り欠かれている。アンテナ基板14はアンプ基板22と重なる突出領域26を有し、突出領域26は、側壁25が切り欠かれた区間からアンプ基板22上に及び、アンプ基板22に重ねられている。突出領域26はビス28によってアンテナ基板14に固定されている。
【0017】
アンプ基板22にはアンプ24が固定されている。アンプ24にはハーネス34が接続されている。ハーネス34は、アンプ24で増幅された信号を伝送する信号線と、アンプ24に電源電力を供給する電源線とが束ねられたものである。ハーネス34は車両内に至り、受信装置および電源供給装置に接続されている。
【0018】
アンプ基板22上には、2つのアンテナ素子16とアンプ24との間を接続する導体パターン30が設けられている。導体パターン30においては、線幅が広げられたパッド32がアンテナ素子16側の先端に形成されている。なお、アンプ基板22として多層構造の基板を用い、アンプ基板22の表面に現れない内層に導体パターン30を設けてもよい。この場合、パッド32の部分はアンプ基板22の表面に設けられる。そして、パッド32と、内層に設けられた導体パターン30とを接続するビアホールがアンプ基板22に設けられる。
【0019】
図3には、AB線断面の一部が示されている。アンテナ基板14の突出領域26は、その一部が導体パターン30のパッド32の一部に重なるようにアンプ基板22に重ねられている。アンテナ素子16の給電導線20は、導電性の印刷用塗料によって形成されており、アンテナ素子本体部18から突出領域26を通ってパッド32に至り、パッド32に電気的に接続されている。
【0020】
図2に戻り、車両搭載用アンテナシステムの動作について説明する。2つのアンテナ素子本体部18において受信され、2本の給電導線20によって各導体パターン30のパッド32に導かれた信号は、各導体パターン30によってアンプ24に導かれる。その信号は、アンプ24によって増幅された後、ハーネス34によって車内の受信装置に導かれる。
【0021】
車両搭載用アンテナシステムの製造は、例えば、次のようにして行われる。初めに、アンテナ素子16のアンテナ素子本体部18と、アンテナ素子本体部18に接続された給電導線20の一部を導電性の塗料によってアンテナ基板14上に印刷する。そして、
図4に示されるように、アンテナ素子本体部18、および給電導線20の一部が形成されたアンテナ基板14をアンプ基板22に固定する。次に、各給電導線20の一部から突出領域26を通って各パッド32に至る導線、すなわち、給電導線20の残りの部分を導電性の塗料によって印刷する。これによって各アンテナ素子本体部18は、給電導線20を介して導体パターン30のパッド32に接続される。
【0022】
このような製造工程の他、アンテナ素子本体部18および給電導線20のいずれもが印刷されていないアンテナ基板14をアンプ基板22に固定した後、アンテナ素子本体部18および給電導線20を印刷する工程を採用してもよい。
【0023】
このような構成によれば、アンテナ素子本体部18とアンプ基板22上の導体パターン30とを接続する給電導線20が、導電性の塗料による印刷によって形成される。これによって、アンテナ素子16と基板上の導体パターン30とを電気的に接続する構造が単純化される。
【0024】
図5には、第2実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムについて、アンプユニット12、およびアンプユニット12とフィルムアンテナ10との結合部が示されている。
図1〜
図4に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0025】
アンプ基板22上には、2つのアンテナ素子16とアンプ24との間を電気的に結合する導体パターン30が設けられている。導体パターン30においては、線幅が広げられたパッド32がアンテナ素子16側の先端に形成されている。アンテナ基板14の突出領域26は、各導体パターン30のパッド32を覆うようにアンテナ基板14に重ねられ、ビス28によってアンテナ基板14に固定されている。
【0026】
図6には、CD線断面の一部が示されている。アンテナ素子16の給電導線20は、導電性の印刷用塗料によって形成されており、アンテナ素子本体部18からアンテナ基板14の突出領域26上を通ってパッド32の上方に至る。これによって、パッド32の上方には突出領域26を挟んで給電導線20の先端部が位置し、パッド32と給電導線20との間に静電容量が形成される。
【0027】
図5に戻り、車両搭載用アンテナシステムの動作について説明する。2つのアンテナ素子本体部18において受信され、2本の給電導線20によって各導体パターン30のパッド32の上方に導かれた信号は、各給電導線20と各パッド32との間に形成された静電容量を介して、各導体パターン30へと導かれる。信号は各導体パターン30によってアンプ24に導かれ、アンプ24によって増幅された後、ハーネス34によって車内の受信装置に導かれる。
【0028】
車両搭載用アンテナシステムの製造は、例えば、アンテナ素子本体部18および給電導線20を導電性の塗料によってアンテナ基板14上に印刷した上で、そのアンテナ基板14をアンプ基板22に固定するという順序で行われる。また、アンテナ素子本体部18および給電導線20のいずれもが印刷されていないアンテナ基板14をアンプ基板22に固定した後に、これらを印刷する工程を採用してもよい。
【0029】
このような構成によれば、アンテナ基板14の突出領域26と、アンプ基板22とが重ねられるという簡単な構造によって、アンテナ素子16とアンプ基板22上の導体パターン30とが電気的に結合する。これによって、アンテナ素子16と基板上の導体パターン30とを電気的に接続する構造が単純化される。また、このような構成によれば、アンテナ基板14をアンプ基板22に固定するのみで、アンテナ素子16とアンプ基板22上の導体パターン30とが電気的に結合する。これによって、車両搭載用アンテナシステムを組み立てる工程が単純化される。
【0030】
なお、上記の各実施形態においては、プラスチックフィルムで形成されたアンテナ基板にアンテナ素子16が配置されている。このような構造の他、車両に搭載される装飾品等の部品にアンテナ素子16を配置した構造を採用してもよい。この場合、アンテナ配置部材としての車両搭載部品には板状に突出する結合板、すなわち上記の突出領域26に相当する領域を設ける。そして、結合板をアンプ基板22に重ねて固定し、結合板に第1実施形態および第2実施形態における給電導線20と同様の給電導線20を設ける。
【0031】
上記の各実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムは、例えば、ディジタルテレビ受像機、AMラジオ受信機、FMラジオ受信機、DAB(Digital Audio Broadcast)受信機、カーナビゲーションシステム等に用いられる。
【0032】
各実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムは、例えば、車両の窓ガラスに固定される。車両搭載用アンテナシステムを窓ガラスに固定することで、ボデー等の導体によってアンテナ性能が影響を受けることが回避される。また、車両の窓ガラスの外周付近には、美観を高めるために、その車室側の面にセラミック等を原料とする装飾用塗料が塗布されることが多い。この装飾用塗料には、窓ガラスの周囲を覆い隠すため、黒色のものが採用されることが多い。本実施形態に係る車両搭載用アンテナシステムを装飾用塗料が塗布された領域の車室側に固定することで、美観が損なわれることが回避される。
【符号の説明】
【0033】
10 フィルムアンテナ、12 アンプユニット、14 アンテナ基板、16 アンテナ素子、18 アンテナ素子本体部、19 筐体、20 給電導線、22 アンプ基板、24 アンプ、25 側壁、26 突出領域、28 ビス、30 導体パターン、32 パッド、34 ハーネス。