(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556993
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】断面形成用途のプロセス自動化のためのパターン認識を伴う差分画像化
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20190729BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20190729BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20190729BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20190729BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20190729BHJP
H01J 37/302 20060101ALI20190729BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20190729BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20190729BHJP
【FI】
G01N1/28 G
H01J37/26
H01J37/28 C
H01J37/22 501Z
H01J37/317 D
H01J37/302
H01J37/20 Z
G01N1/28 F
G01N23/2251
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-218879(P2014-218879)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-111108(P2015-111108A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2017年10月25日
(31)【優先権主張番号】61/897,052
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・バクスバウム
【審査官】
西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−271117(JP,A)
【文献】
特表2008−520066(JP,A)
【文献】
特表2012−507728(JP,A)
【文献】
特開2011−215135(JP,A)
【文献】
特開2011−086606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム・システムを使用して試料上で終点決定を実行する方法であって、
イオン・ビームおよび電子顕微鏡を含む前記荷電粒子ビーム・システム内に試料を装墳するステップと、
前記試料の第1の表面を露出させるために前記試料をイオン・ビーム・ミリングするステップと、
前記電子顕微鏡を使用して、前記試料の前記第1の表面の第1の画像を形成するステップと、
前記試料の第2の表面を露出させるために前記試料の前記第1の表面をイオン・ビーム・ミリングするステップと、
前記電子顕微鏡を使用して、前記試料の前記第2の表面の第2の画像を形成するステップと、
前記第1の画像の上に前記第2の画像を重ね合わせることによって第3の画像を形成するステップであり、前記第3の画像が、前記第1の画像から前記第2の画像を差し引くことによって形成された差分画像であり、前記第3の画像が、前記第2の表面を生成するための前記イオン・ビーム・ミリングによって生じた差異を示し、前記第1の画像の1つまたは複数の画素のグレースケール・レベルが、前記第2の画像の対応する画素のグレースケール・レベルよりも暗いかどうかを判定することを含むステップと、
前記第2の画像の上に前記第1の画像を重ね合わせることによって第4の画像を形成するステップであり、前記第4の画像が、前記第2の画像から前記第1の画像を差し引くことによって形成された差分画像であり、前記第4の画像が、前記第2の表面を生成するための前記イオン・ビーム・ミリングによって生じた差異を示すステップと、
前記第3および前記第4の画像のうちどちらかより明るい方の対応する画素に第5の画像の各画素を設定することによって前記第5の画像を形成するステップと、
イオン・ビーム・ミリングがいつ完了するかを決定するために前記第5の画像上でパターン認識を使用するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第3および前記第4の画像のうちどちらかより明るい方の対応する画素に第5の画像の各画素を設定することによって前記第5の画像を形成するステップが、前記第3の画像中のより暗い画素を、前記第4の画像中のより明るい対応する画素に置き換え、前記第4の画像中のより暗い画素を、前記第3の画像中のより明るい対応する画素に置き換えることにより前記第5の画像を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の画像、前記第4の画像または前記第5の画像を第2の画像の上に点滅するオーバレイで定期的に表示することができ、それによって、前記イオン・ビームが最後にミリングした位置を示す強調表示を生成することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料の第3の表面を生成するために前記試料の前記第2の表面をイオン・ビーム・ミリングするステップと、
前記電子顕微鏡を使用して前記試料の前記第3の表面を画像化し、それによって前記試料の第6の画像を生成するステップと、
前記第2の画像の上に前記第6の画像を重ね合わせることによって第7の画像を形成するステップであって、前記第7の画像は前記第3の表面を生成するための前記イオン・ビームによって生じた差異を示す差分画像であるステップと、
イオン・ビーム・ミリングがいつ完了するかを決定するために前記第7の画像上でパターン認識を使用するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の画像の画像収集ならびに前記第3の画像の生成を自動化するためにコントローラが使用され、前記コントローラが、コンピュータ・プロセッサおよびコンピュータ可読記憶装置を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記コントローラが、前記第3の画像を使用して、前記第2の表面を、前記第3の画像からの差異に基づいて自動的にミリングする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料の表面の前記イオン・ビームのドエル点を、前記コントローラによって、前記第3の画像を使用して決定することができる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
差分画像を生成するための計算を実質的にリアルタイム・フィードバックで実行して、前記差分画像の前記生成の直後に、前記荷電粒子ビーム・システムのオペレータが前記イオン・ビームを使用して試料をミリングすることができるようにするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
荷電粒子ビーム・システムを使用して試料上で終点決定を実行する方法であって、
イオン・ビームおよび電子顕微鏡を含む荷電粒子ビーム・システム内に試料を装墳するステップと、
前記試料の第1の表面を露出させるために前記試料をイオン・ビーム・ミリングするステップと、
前記電子顕微鏡を使用して、前記試料の前記第1の表面の第1の画像を形成するステップと、
前記試料の第2の表面を露出させるために前記試料の前記第1の表面をイオン・ビーム・ミリングするステップと、
前記電子顕微鏡を使用して、前記試料の前記第2の表面の第2の画像を形成するステップと、
前記第2の画像の上に前記第1の画像を重ね合わせることによって第3の画像を形成するステップであり、前記第3の画像が、前記第2の画像から前記第1の画像を差し引くことによって形成された差分画像であり、前記第3の画像が、前記第2の表面を生成するための前記イオン・ビーム・ミリングによって生じた差異を示し、前記第2の画像の1つまたは複数の画素のグレースケール・レベルが、前記第1の画像の対応する画素のグレースケール・レベルよりも暗いかどうかを判定することを含むステップと、
前記第1の画像の上に前記第2の画像を重ね合わせることによって第4の画像を形成するステップであり、前記第4の画像が、前記第1の画像から前記第2の画像を差し引くことによって形成された差分画像であり、前記第4の画像が、前記第2の表面を生成するための前記イオン・ビーム・ミリングによって生じた差異を示すステップと、
前記第3および前記第4の画像のうちどちらかより明るい方の対応する画素に第5の画像の各画素を設定することによって前記第5の画像を形成するステップと、
イオン・ビーム・ミリングがいつ完了するかを決定するために前記第5の画像上でパターン認識を使用するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記第3および前記第4の画像のうちどちらかより明るい方の対応する画素に第5の画像の各画素を設定することによって前記第5の画像を形成するステップが、前記第4の画像中のより暗い画素を、前記第3の画像中のより明るい対応する画素に置き換え、置き換えられた前記第3の画像中のより暗い画素を、前記第4の画像中のより明るい対応する画素に置き換えることによって第5の画像を形成するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の画像を第2の画像の上に点滅するオーバレイで定期的に表示することができ、それによって、前記イオン・ビームが最後にミリングした位置を示す強調表示を生成することができる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記試料の第3の表面を生成するために前記試料の前記第2の表面をイオン・ビーム・ミリングするステップと、
前記電子顕微鏡を使用して前記試料の前記第3の表面を画像化し、それによって前記試料の第6の画像を生成するステップと、
前記第2の画像の上に前記第6の画像を重ね合わせることによって第7の画像を形成するステップであって、前記第7の画像は前記第3の表面を生成するための前記イオン・ビームによって生じた差異を示す差分画像であるステップと、
イオン・ビーム・ミリングがいつ完了するかを決定するために前記第7の画像上でパターン認識を使用するステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の画像の画像収集ならびに前記第3の画像の生成を自動化するためにコントローラが使用され、前記コントローラが、コンピュータ・プロセッサおよびコンピュータ可読記憶装置を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記コントローラが、前記第3の画像を使用して、前記第2の表面を、前記第3の画像からの差異に基づいて自動的にミリングする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記試料の表面の前記イオン・ビームのドエル点を、前記コントローラによって、前記第3の画像を使用して決定することができる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
差分画像を生成するための計算を実質的にリアルタイム・フィードバックで実行して、前記差分画像の前記生成の直後に、前記荷電粒子ビーム・システムのオペレータが前記イオン・ビームを使用して試料をミリングすることができるようにするステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオン・ビーム・システムなどの荷電粒子ビーム・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡(TEM)では、数ナノメートル程度の極めて小さな特徴部分(feature)を見ることができる。材料の表面だけを画像化する走査電子顕微鏡(SEM)とは対照的に、TEMでは、試料の内部構造をも分析することができる。TEMでは、幅の広いビームが試料に衝突し、試料を透過した電子を集束させて試料の画像を形成する。1次ビーム中の電子の多くが試料を透過し反対側へ出ることができるように、試料は十分に薄くなければならない。試料は薄片(lamella)とも呼ばれ、その厚さは一般に100nm未満である。
【0003】
透過型走査電子顕微鏡(STEM)では、1次電子ビームを微小なスポットに集束させ、そのスポットで試料表面を走査する。加工物を透過した電子を、試料の向こう側に置かれた電子検出器によって集める。画像のそれぞれの点の強度は、その表面の対応する点に1次ビームが衝突したときに集められた電子の数に対応する。本明細書で使用する用語「TEM」はTEMまたはSTEMを指し、TEM用の試料を調製すると言うときには、STEMで観察するための試料を調製することも含まれると理解すべきである。本明細書で使用する用語「S/TEM」はTEMとSTEMの両方を指す。
【0004】
集束イオン・ビーム(FIB)顕微鏡システムは、荷電粒子の細い焦束ビームを生成し、このビームが、陰極線管と同様のラスタ方式で試料を走査する。荷電粒子が負に帯電した電子であるSEMとは違い、FIBシステムは、以後イオンと呼ぶ帯電した原子を使用してビームを生成する。それらのイオンは一般に正に帯電している。
【0005】
基板から材料を除去してマイクロスコピック(microscopic)またはナノスコピック(nanoscopic)構造を形成するプロセスはマイクロ機械加工、ミリングまたはエッチングと呼ばれる。半導体試料上にイオン・ビームが導かれると、半導体試料は、その露出した表面から、2次電子、2次イオン(i+またはi−)ならびに中性分子および中性原子を放出する。試料を横切ってビームを移動させ、ビーム電流、スポット・サイズ、画素間隔およびドエル時間(dwell time)などのさまざまなビーム・パラメータを制御することにより、FIBを、ビームが置かれたところの材料を選択的に除去する「原子規模ミリング機械(atomic scale milling machine)」として動作させることができる。ドーズ、または試料表面にぶつかるイオンの量は一般に、ビーム電流、走査の継続期間および走査された面積の関数である。放出された粒子を検出器によって感知することができ、次いで、この感知されたデータを、入射ビームが試料と相互作用したときの既知のビーム位置と相関させることによって、画像を生成し、その画像を、オペレータに対して表示することができる。処理を停止させる時機を決定することは「終点決定」と呼ばれる。マイクロ機械加工プロセスによって第1の材料が最後まで切削され第2の材料が露出したときを検出する方法はいくつか知られているが、材料の変化に到達する前にレーザ処理を停止させるのが一般的であり、そのため終点の決定はより難しい。
【0006】
FIBシステムは、設計の検証を実行するためまたは欠陥のある設計の問題を解決するために顕微処理(microsurgery)操作を実行する目的に使用される。顕微処理は通常、金属線を「切断」することまたは金属線を選択的に付着させて導体を短絡させることを含む。FIB「ラピッド・プロトタイピング(rapid prototyping)」はしばしば、「FIBデバイス修正(device modification)」、「回路編集(circuit editing)」または「顕微処理」と呼ばれる。その速度および有用性のために、FIB顕微処理は、市場に出るまでの時間(time−to−market)を短くするという競争の激しい半導体産業で求められる目標の達成にとって極めて重要になっている。
【0007】
このツールの使用が成功するかどうかは、ミリング・プロセスを正確に制御できるかどうかにかかっている。現在の集積回路は、導電材料と絶縁誘電体とが交互に重なった多数の互層を有し、多くの層が、パターン形成されたエリアを含む。イオン・ビーム・ミリングのミリング速度および効果は、デバイスにわたって大きく異なることがある。破壊を伴うことなく終点決定を実行することが困難である理由はこの点にある。終点決定は一般に、FIBシステムのユーザ・インタフェース画面に表示された画像情報またはグラフ情報をオペレータが評価することに基づいて実行される。大部分のデバイス修正操作では、特定の層が露出したらすぐにミリング・プロセスを停止させることが好ましい。不正確な終点決定は、修正後のデバイスの誤った分析につながることがある。
【0008】
半導体デバイスの特徴部分のサイズが1ミクロン未満から100nm未満へと小さくなり続けるにつれ、イオン・ビーム電流でより小さなアスペクト比およびより大きなアスペクト比をミリングすることが必要になっている。FIBオペレータは、ミリングされているエリアのリアルタイム画像およびリアルタイムのグラフ・データ・プロットを使用する従来の方法に依存して、適当な終点検出を決定する。終点検出を定性的に決定するため、FIBオペレータは一般に、ミリングされたエリアの明るさの変化を視覚的に探している。このような変化は、金属/酸化物界面などの異なる材料を通してミリングが移行したことを示していることがある。オペレータは、スライスごとの進捗を使用し、ミリングが実施されている位置、試料の変化、および終点に向かっての進捗を最終的にオペレータに知らせる変化を探す。
【0009】
最新の技法は時に、ユーザが試料をスライスし、ミリング・プロセスのリアルタイム画像化フィードバックのために断面の画像を「ライブ(live)」で、例えばSPI(simultaneous patterning and imaging mode(同時パターン形成/画像化モード))で生成することを可能にする、FIB/SEM併用システムなどのデュアル・ビーム・システムの使用を含む。TEM試料調製の終点決定はリアルタイムでなされる判断であり、この終点決定を断面パターン内で使用することができるが、試料は一般に、やはり破壊を伴う方法でスライスされる。加えて、画像のフレーム・アベレージング(frame averaging)および高い画像eビーム電流のため、SPI画像はしばしば、より低い分解能を生み出す。I−SPIは、さまざまなスライス間で画像を更新することを可能にするシステムである。これらの画像はスライスごとに更新されるが、連続したスライスは画像間のわずかな変化だけを含むため、ユーザはしばしば、これらの画像スライスを追跡することが非常に困難であると感じる。
【0010】
デュアル・プラットホームFIB/SEM機器を使用した後続の体積の三次元モデル化のために、FIBでミリングされた表面の多数の二次元SEM画像を収集する方法は一般に2つある。すなわち静的モードまたは動的モードである。FIBでミリングされた表面の動的SEM画像化(すなわちSPIモード)では、FIBミリング・プロセス中にSEM画像がリアルタイムで取得される。静的画像取得モードでは、FIBを使用して材料をスライスして除去し、次いでFIBを中断または停止させて、低速走査高分解能SEM画像を取得することができるようにする。このタイプの画像取得は、自動化されたスライス・アンド・ビュー(Slice and View)アルゴリズムまたは機器動作の間欠(intermittent)SPIモードすなわちI−SPIモードに容易にプログラムすることができる。
【0011】
SPIモードでは、イオン/固体相互作用および電子/固体相互作用によって2次電子(SE)が放出され、検出される。SEM画像中のFIBミリングによるSE信号を圧倒するため、SEM画像取得は、決定的に重要な以下の3つのSEM画像化パラメータを変化させることによって実行されなければならない:(i)SEMビーム電流は、イオン・ビーム・ミリング電流の約2倍以上で機能しなければならず、(ii)SEM画像は、非常に速い走査速度で取得されなければならず、(iii)SEM画像は、フレーム・アベレージングを使用して取得されなければならない(例えば大ビーム電流ミリングでは32または64ものフレームが必要となることがある)。したがって、SPIモードで得られた画像のSE SEM取得は、分解能が最も高い画像化に対しては一般に使用されないモードで集められなければならない。あるいは、後方散乱電子(BSE)SEM画像をSPIモードで収集することもできる。BSE画像化プロセスにおいて、FIBミリングによって生じたSEが生み出すノイズはごくわずかである。しかしながら、SPIモード中の画像取得のタイミングは決定的に重要であり、SPIモードでのBSE SEM画像の取得であっても些細なことにはならない可能性がある。
【0012】
SPIモードで取得されたSEM画像は、1つまたは複数のスライスから重複した情報および/または2重の情報を得ることがある。したがって、SPIモードを使用するときには、画像のシーケンスを手動で探索して、重複した画像を、正確な三次元モデルを構築することができるような態様で除去しなければならないであろう。FIBスライスが完成した後にのみそれぞれのSE画像またはBSE画像が保存されるようにタイミングを調整することもできるが、これには、材料のスパッタリング特性を前もって知っている必要があるであろうし、SEM取得時刻を、スライス全体をFIBミリングするのに必要な時間と正確に相関させることも難しいであろう。しかしながら、SPIモードは、FIBミリングをリアルタイムで監視することができるため、FIB操作の終点を決定するのに極めて有用であることに留意されたい。
【0013】
三次元モデル化に対して静的スライス・アンド・ビュー法を使用する利点は、FIBでミリングされたそれぞれのスライスが完成した後に、高分解能低速走査SEM画像が取得されることである。したがって、それぞれの画像は、それぞれのFIBスライスと一意的に対応し、体積決定が容易になる。加えて、自動化されたSEMビーム・シフトおよびオートフォーカス補正を実装して、断面形成の進行中に、関心領域を、中央に置かれ焦束した状態に保つことができる。
【0014】
先行技術の方法は、試料部位上の関心領域に対する感度を測定するリアルタイム能力を一般に生み出すことによって、FIBミリング終点決定操作を改良することを試みた。例えば2005年11月15日に出願された「System and method for focused ion beam data」という名称のEP1812946A1号明細書(米国特許第7,897,918号明細書としても公開されている)(以後、’918号特許と言う)は、FIBシステムによって生成されたネイティブ(native)の画像およびプロットよりも高い感度を有する画素強度のリアルタイム・グラフ・プロットを使用することによって、FIBミリング終点決定操作を改良するシステムおよび方法を開示している。これは、ドエル点(dwell point)強度値を受け取り、感度エリアを生み出すラスタ・パターン・データを生成することによって実行される。
図13(’918号特許の
図9)に示されているのは、ラスタ・パターンで連続的に撮影されたスナップショット画像を使用する方法である。フレーム生成はCPBシステムを使用して実行される。示されているように、差分画像(differential image)428、430は個々のスライスを使用して形成される。
【0015】
この方法は明らかにされるべき多くの欠点を有している。この手順の正確さおよびタイムライン(timeline)は、オペレータが終点決定を完全に制御することを許さず、オペレータが、パターンまたは欠陥をはっきり見分けることも許さない。さらに、この手順を実行するために費やされる時間は、連続的終点決定を同時に使用するリアルタイム終点決定を可能にしうる方式で、オペレータがこの機能を実行することを許さないであろう。
【0016】
終点決定を操作する目的に使用することができる現在の技術を使用する場合、FIBでミリングされた表面の一連のSEM画像をデュアル・ビーム機器を使用して収集するモードは一般に2つある。静的モードおよび動的モードである。FIBでミリングされた表面の動的SEM画像化では、FIBミリング・プロセス中にSEM画像がリアルタイムで取得される。静的画像取得モードでは、FIBを使用して材料を削剥し、次いでFIBを中断または停止させて、低速走査高分解能SEM画像を取得することができるようにする。
【0017】
動的モード画像化中の1つの課題は、所与の瞬間にビームが試料に当たっている位置、および試料がミリングされている部分を正確に知ることである。特に、TEM試料の調製では、試料の薄化を停止させる時機をユーザがリアルタイムで決定しなければならない。試料を薄くしすぎると試料が破壊されることがある。動的モードのより低い分解能は、試料がどれくらい薄くなったのかを知ることを困難にすることがある。
【0018】
したがって、ユーザは一般に、スライスからスライスへの進捗を監視し、スライスからスライスへの変化を探す。このことは、ユーザが、ミリングが実施されている位置(ビームが「当たっている」位置)を知るのに役立ち、試料の変化を知るのに役立ち、終点に向かっての進捗の追跡、例えば終点決定に役立つ。終点では、ユーザがミリングを手動で停止させる。
【0019】
求められているのは、誤りがより少なく生産性がより高い優れた方式でリアルタイム終点決定を実行することができるように、スライスの変化を正確かつ効率的にオペレータに示す方法である。この方法は、TEM試料のスループットおよび再現性を増大させる他の自動化されたプロセスにも役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】EP1812946A1号明細書(米国特許第7,897,918号号明細書)
【特許文献2】米国特許出願公開第20040144924号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】「Towards automated diffraction tomography:Part I−Data acquisition」、U.Kolb他、Ultramicroscopy 107(2007)507〜513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、スライスを視覚的に見分けることができるような態様でオペレータが試料を観察することを可能にする改良された終点決定法を提供することにある。本発明の好ましい実施形態は、差分画像のオーバレイを使用してI−SPIモードをさらに改良し、TEM試料生成のスループットと再現性をともに増大させる改良された試料の終点決定法を提供する。
【0023】
本発明の他の目的は、終点決定手順を実行するときに、歩留り、速度および正確さを向上させる改良された方法を提供することにある。本発明の好ましい実施形態は、歩留り、速度および正確さの向上につながる終点決定結果の視覚的コントラストを向上させるスライス間の差異を、差分画像のオーバレイを使用してより明確に区別する。オーバレイを使用することにより、画像のパイプラインを生成する連続オーバレイを使用できる可能性がある。これは、連続画像のパイプラインが処理されている間にオペレータが画像の第1のセットを処理することを可能にする。これは、より速いスループットおよびより高い効率を可能にする。
【0024】
本発明の他の目的は、自動化することができる終点決定手順を提供することにある。本発明の好ましい実施形態は、システムが、差分画像のオーバレイにおける差異を自動的に示すオーバレイを使用することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり大まかに概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造体を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造体は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0026】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来の方法を使用したTEM試料スライスを左右に並べて表示した画像の図である。
【
図2】本発明に基づくTEM試料の調製を示す図であり、この図は、重ね合わせられたTEM試料のスライスを示している。
【
図3A】「n」とラベル付けされた試料TEMスライスを示す図である。
【
図3B】「n+1」とラベル付けされた次の試料TEMスライスを示す図である。
【
図4B】銅粒子TEM試料の一連の断面画像のうちの他の断面画像である。
【
図4C】銅粒子TEM試料の断面画像の差分画像である。
【
図5A】スライスnを有するTEM試料の22nm平面図である。
【
図5B】スライスn+1を有するTEM試料の22nm平面図である。
【
図5D】本発明の実施形態に基づく重ね合わせられた差分図である。
【
図5E】ラベル付けされたスライスn+2を有する22nm平面図のTEM試料である。
【
図5F】ラベル付けされたスライスn+3を有する22nm平面図のTEM試料である。
【
図5G】本発明の実施形態に基づく
図5A〜5Fの重ね合わせられた差分図である。
【
図5H】スライスn+3を示す重ね合わせられた画像である。
【
図5J】スライスn+3を示す本発明に基づく点滅するオーバレイ(flashing overlay)を示す図である。
【
図6】荷電粒子ビーム・システム内において差分画像化を使用して終点決定を実行する本発明の実施形態に基づく例示的な方法を示す流れ
図600である。
【
図7】試料を形成し、その試料をTEMグリッドへ移動させるように装備された例示的なデュアル・ビームSEM/FIBシステム702を示す図である。
【
図13】米国特許第7,897,918号の
図9を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
概して、本発明は、FIBミリングの終点決定操作を改良する方法を提供する。この方法は、ミリングされているエリアのリアルタイム画像、および重ね合わせて差分画像を生成することができるリアルタイム画像を生成することを含む。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態は、差分画像を生成することができるソフトウェアと、差分画像を処理することができ、さらに差分画像の結果に対して動作することができるコントローラとを使用する。この差分画像によって、試料にわたって均一に実施されていないミリングを検出することができる。差分画像の検出されたミリング・パターンを使用して、ユーザが以降のミリングを補正することができるという点で、差分画像を手動プロセスで使用することができる。
【0030】
好ましい他の実施形態では、ユーザが、自動化されたプロセスで差分画像を使用することができる。例えば、従来の自動化された傾斜機能および回転機能を使用することによって、ミリング・パターンを認識し、ミリング・パターンが均一でない場合を識別するように、コントローラをプログラムすることができる。自動化されたプロセスでは、コントローラが、不均一を補正するように、試料ステージまたは加工物の傾斜および回転を調整することができる。
【0031】
差分画像は、2つの画像間の減算操作の結果である。例えば、提示物Aおよび提示物Bの以下の画像において、2つの画像のそれぞれの画素の対応するグレー・レベル情報の減算を実施することができ、その結果、それぞれの画素の差分画像が得られる。
【0032】
これらの画像は非常によく似ているが、提示物Bは、断面クリーニングを使用したかなりの量のミリングの後に収集したものである。断面クリーニングは、一種のミリング・パターン(例えば、四角いエリアをミリングするのではない、一線ごとに進むミリング)である。デュアル・ビーム・システムのオペレータには、変化したものを決定することが非常に困難である。
【0033】
結果として得られる差分画像が提示物C(
図10)およびD(
図11)に示されている。提示物Cは、提示物Bから提示物Aを差し引いた結果であり、提示物
D(図11)は、提示物Aから提示物Bを差し引いた結果である。最後に、これらの2つの結果(提示物CおよびD)を混合して(例えばPhotoshopの「lighten」ブレンド・モード)、試料内で最も変化したものを全体的に示す提示物E
(図12)を得ることができる。
【0034】
これらの計算をほぼリアルタイムで適用して、ほぼライブの差分画像をユーザ・インタフェース上に示すことができる。これは、試料中でミリングされているものに関するほぼリアルタイムのフィードバックをオペレータに提供し、より高品質の試料調製を可能にし、このことは、このような高分解能リアルタイム・データを使用する適用可能な技術をさらに改良するであろう。差分画像は単独で表示し、または従来の画像上に重ね合わせて、FIBのミリングとミリングの間で変化したものを示すことができる。最後のスライス上に差分画像を、点滅するオーバレイで表示することができる。他の実施形態では、差分画像が、イオン・ビームがミリングしている位置、すなわちイオン・ビームが試料に当たっている位置を強調表示する。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、試料上で終点決定を実行する方法が開示される。試料を画像化することを含むこの手順を実行するため、集束イオン・ビームなどの荷電粒子ビーム・システムと電子ビーム・システムの両方を含むシステム内に試料を配置する。システム内に試料を装墳した後、電子ビーム・システムを使用して、第1の表面の画像を生成する。本発明の目的上、画像化する表面は試料の断面スライスである。荷電粒子ビームを使用して、試料をスライスし、新しい試料表面または試料の第2の表面を生成する。再び、電子ビームを使用して試料の第2の表面を画像化する。この場合も、試料の第2の表面は、試料の第2の断面図を生成するために使用される。
【0036】
図1は、個別に保存された20を超える画像にわたるSPIモード中に取得されたSEM画像を左右に並べて表示した画像の図である。従来の方法を使用すると、オペレータは、それぞれのスライスの差異の推移を決定するために、これらの個々のスライスを手動で目で見て、それぞれのスライスのごくわずかな差異を決定しなければならないであろう。この差異が決定されれば、オペレータはこの差異を使用して、適当な関心領域を決定し、次のミリング・ステップへ進むことができる。例えば、オペレータは、この差異を使用して、試料のどの部分が現在ミリングされているのかを決定することができる。このことは、オペレータがミリング・プロセスを調整するのに役立つ。この調整は、走査回転、ビーム・シフト、または断面クリーニングの線ミリングの前進によって実行することができる。
【0037】
あるいは、オペレータは、それぞれの連続スライスの差異を使用して、試料上でのミリングの進捗を追跡することができる。これによって、オペレータは、次に試料材料がミリングされる位置を予測することができる。次に試料材料がミリングされる場所が分かっていることは、終点決定の準備において助けとなる。他の好ましい実施形態ではこのプロセスの自動化が企図されることを理解すべきである。ミリングの連続スライスの差異を自動的に識別することができる場合には、その識別されたパターンに基づいて、走査回転、ビーム・シフト、または断面クリーニングの線ミリングの前進を調整するように、コントローラ(図示せず)をプログラムすることができる。したがって、差分画像を使用してミリング・パターンを識別することができ、これによって、コントローラはそれらの調整を実施することができる。試料ステージまたは加工物(図示せず)に対する傾斜調整および回転調整など、ミリング・プロセスの調整を自動化することもできる。当技術分野では、試料ステージ、加工物またはビーム変更の自動化された制御を可能にする従来のコントローラおよび従来の手段が知られている。
【0038】
本発明の他の実施形態によれば、第1の表面および第2の表面のディジタル画像を生成するためにソフトウェアが使用され、さらに、画像を重ね合わせ差分画像を生成するのにもソフトウェアが使用される。画像は互いに比較され、その結果生成される第3の画像は、第2の表面を生成するための荷電粒子ビームによって生じた差異を示す。
【0039】
図2は、TEM試料に対して差分画像を使用する従来の方法を示し、最初の2つの試料はTEM試料の連続スライスを示し、3番目の画像は、差分線(differential line)201を示す差分画像を示す。示されているように、オペレータは、この差分画像を見、それぞれのスライスの連続性を識別することができる。線201は、走査された画像からディジタル画素を読み取る方法などの従来の方法を使用して(プロセスは示さない)、コントローラによって、自動化されたプロセスで識別することもできる。
【0040】
本発明に基づく方法は、ソフトウェアを使用して、画像のそれぞれの画素の色情報または濃淡(shade)情報を決定する。さまざまなソフトウェアが、画素化されたレベルで画像を比較することができる。Photoshopは、第1の画像と第2の画像の間で画素を比較するBlend Modeを有する。このソフトウェアは、第3の画像を生成する際に、一方の画像中のより暗い画素をより明るい画素に置き換えることを可能にする。このモードでは、一方の画像からの画素のうち第2の画像中の画素と色または濃淡が同じである画素だけが第3の画像中に残される。これによって、ミリング・プロセスによって生じたミリング・パターン内の差異を強調表示する差分画像が生成される。
【0041】
図3Aは、「n」とラベル付けされた試料TEMスライスであり、
図3Bは、「n+1」とラベル付けされた次の試料TEMスライスである。試料300は、人間の眼で見分けることが非常に難しいミリング部位301を有する。上記の提示物Cの説明と同様に、画像が重ね合わせられ、差分画像が生成された後、
図3Cに示された画像によってミリングの差異が強調表示される。
【0042】
図3Dは、ソフトウェアを使用して減算が実施された後の差分の結果として得られる画像である。示されているように、この重ね合わせられた差分画像によって、302の強調表示された差異は識別がはるかに容易である。
【0043】
上記の提示物と同様に、最後の画像の上に差分画像を、点滅するオーバレイで定期的に表示することができる。この点滅するオーバレイは、イオン・ビームが最後にミリングした位置を強調表示する。必要ならば、コントローラによってこれを使用して、次のミリング・プロセスのドエル点を決定することもできる。
【0044】
図4Aおよび4Bは、銅粒子TEM試料の断面画像400である。この場合も、従来の方法では、オペレータが通常、次のミリング・プロセスまたは後続のミリング・プロセスを決定するために、これらの試料表面401Aのごくわずかな差異を決定しなければならないであろう。
【0045】
図4Cは、本発明のミリング・プロセスによって生じた差異の強調表示をやはり示す、銅粒子TEM試料の断面画像の差分画像である。本発明に基づく方法は、試料部位の多くのスライスまたは表面を荷電粒子ビームを使用して生成するために使用される。以降の差分画像は、画像の後続のスライスを、同じ方法および同じソフトウェアを使用して比較することによって生成することができる。
【0046】
前述のとおり、コントローラを使用して、SEM画像の画像収集および差分画像の生成を自動化することができる。このコントローラを使用し、差分画像からの強調表示された差異を使用して、後続のドエル点を決定し、表面の後続の関心部分を自動的にミリングすることができる。差分画像の生成の直後に、オペレータが、FIBを使用して試料をミリングすることができるように、これらの手順で使用される方法はリアルタイム・フィードバックで実行される。
【0047】
本発明の他の実施形態では、ターゲット構造体の差分画像および取得されたその関連画像を、画像中のコントラストの差が小さい画像によって定めることができる。したがって、これは、1つのスライスから次のスライスへの差分画像とともにミリングの進捗をオペレータが使用することを可能にする用途とは異なる用途である。他の用途では、オペレータが、FIBミリングを使用して特定の層(例えばIC回路中のILD)を除去すること、および次の層(例えばSiN層または金属層)が露出したときにミリング・プロセスを停止させることができる。自動化されたシステムまたは手動オペレータは、差分画像を監視し、画像の特定の部分(ユーザが画定可能な関心領域)の(しきい値よりも大きい)コントラスト変化を検出することができる。マイクロスコピック・レベルのかなりの操作を必要とするこの自動化された機能は、ヒューマン・エラーを低減させ、ミリング・プロセス全体を迅速化し、所与のしきい値が満たされたときにミリング・プロセスを停止させる。
【0048】
SEM試料の多数のスライスの範囲を示すため、
図5Aは、スライス「n」を有するTEM試料500の22nm平面図を示す。
図5Bは、スライス「n+l」を有するTEM試料の22nm平面図である。
図5Cは、
図5Aおよび5Bを使用したオーバレイ・プロセス図である。
図5Dは、本発明の実施形態に基づく重ね合わせられた差分図である。この場合も、示されているように、差分画像505が、最初の2つの画像の差異の位置を容易に決定する。
図5Eは、ラベル付けされたスライス「n+2」を有する22nm平面図のTEM試料である。
図5Fは、ラベル付けされたスライス「n+3」を有する22nm平面図のTEM試料である。
図5Gは、本発明の実施形態に基づく
図5A〜5Fの重ね合わせられた差分図であり、このオーバレイは、画像(n+l)の上に差分画像((n+l)−n)を重ねたものである。示されているように、オペレータは、このコントラストによって、ミリング・プロセスの現在のミリング状況を明確に識別することができる。
【0049】
図5Gに示されているように、この方法を逆にして、2番目の走査画像の上に最初の走査画像が重ね合わせられるようにすることができる。このようにすると、負の反転差分画像が生成される。続いて、これらの差分画像を、互いにまたは他のスライスと重ね合わせて、さまざまな差異を強調表示することができる。
【0050】
さらに、走査の画像化が、同時パターン形成/画像化を使用して実行される。これによって、オペレータは、FIBを使用して、材料を、自動化されたスライス・アンド・ビュー・アルゴリズムでスライスして除去し、同時に他のスライスを処理することができる。これによって、はるかに高いスループットおよび効率が得られるスライスの連続処理が可能になる。
【0051】
したがって、TEM試料調製では、このプロセスによって、歩留り、速度および正確さを向上させることができる。このプロセスは、差分画像上でパターン認識を使用することによって自動終点決定を容易にする。CADデータから得た画像を使用して、実際の画像を、計算された画像と比較することもできる。この画像処理は、次の画像を捕捉している間に実行することができ、それによって画像を処理するスループットを速くすることができる。このプロセスは、TEM試料調製の他のさまざまな用途において有用である。このプロセスを断層撮影装置で使用することもできる。例えば、凍結断層撮影装置(cryo−tomograph)を使用して生体試料を見る際には、システムは、部位Bで何を見つけるべきかを部位Aから学習することができ、システムは、関心領域がもはや見えなくなった後にミリングを停止させることができる。
【0052】
図6は、荷電粒子ビーム・システム内において差分画像化を使用して終点決定を実行する本発明の実施形態に基づく例示的な方法を示す流れ
図600である。この方法は、ステップ602から始まり、ステップ604へ進む。ステップ604で、荷電粒子ビーム・システム内に試料を装墳する。この荷電粒子ビーム・システムはイオン・ビームおよび電子顕微鏡を含む。ステップ606で、イオン・ビームを使用して試料をミリングして、試料の第1の表面を露出させる。ステップ608で、電子顕微鏡を使用して試料の第1の表面の画像を形成する。ステップ610で、イオン・ビームを使用して試料の第1の表面をミリングして、試料の第2の表面を露出させる。ステップ612で、電子顕微鏡を使用して、試料の第2の表面の第2の画像を形成する。ステップ614で、第1の画像の上に第2の画像を重ね合わせることによって第3の画像を形成する。第3の画像は、第1の画像から第2の画像を差し引くことによって形成された差分画像である。第3の画像は、第2の表面を生成するためのイオン・ビーム・ミリングによって生じた差異を示す。
【0053】
図7は、試料を形成し、その試料をTEMグリッドへ移動させるように機器が装備された例示的なデュアル・ビームSEM/FIBシステム702を示す。適当なデュアル・ビーム・システムは例えば、本出願の譲受人である米オレゴン州Hillsboro米オレゴン州HillsboroのFEI Companyから市販されている。適当なハードウェアの一例を以下に示すが、本発明は、特定のタイプのハードウェアで実現することに限定されない。
【0054】
デュアル・ビーム・システム702は、垂直に取り付けられた電子ビーム・カラム704と、垂直から約52度の角度に取り付けられた集束イオン・ビーム(FIB)カラム706とを、排気可能な試料室708上に有する。試料室は、ポンプ・システム709によって排気することができる。ポンプ・システム709は一般に、ターボ分子ポンプ、油拡散ポンプ、イオン・ゲッタ・ポンプ、スクロール・ポンプおよび知られている他のポンピング手段のうちの1つもしくは複数のポンピング手段、またはこれらのポンピング手段の組合せを含む。
【0055】
電子ビーム・カラム704は、ショットキ放出器、冷陰極電界放出器などの電子を発生させる電子源710、ならびに微細集束電子ビーム716を形成する電子−光学レンズ712および714を含む。一般に電子源710は、一般にグランド電位に維持される加工物718の電位よりも500Vから30kV高い電位に維持される。
【0056】
したがって、電子は、約500eVから30keVの入射エネルギー(landing energy)で加工物718に衝突する。電子の入射エネルギーを低減させ、それによって電子と加工物表面との相互作用体積を小さくし、それによって核生成部位のサイズを小さくするために、加工物に負の電位を印加することができる。加工物718は例えば、半導体デバイス、マイクロエレクトロメカニカル・システム(MEMS)、データ記憶デバイス、またはその材料特性もしくは組成を知るために分析されている材料の試料を含むことができる。加工物718の表面に電子ビーム716の衝突点を配置することができ、偏向コイル720によって電子ビーム716の衝突点で加工物718の表面全体を走査することができる。レンズ712および714ならびに偏向コイル720の動作は、走査電子顕微鏡電源および制御ユニット722によって制御される。レンズおよび偏向ユニットは、電場、磁場またはこれらの組合せを使用することができる。
【0057】
加工物718は、試料室708内の可動ステージ724上にある。ステージ724は、水平面(X軸およびY軸)内で移動し、垂直に(Z軸)移動し、約60度傾き、Z軸を軸に回転することができることが好ましい。X−Y−Zステージ724上に加工物718を挿入するため、および内部ガス供給リザーバ(図示せず)が使用される場合には内部ガス供給リザーバの整備作業のために、扉727を開くことができる。試料室708を排気する場合に開かないように、この扉はインタロックされる。
【0058】
真空室には、1つまたは複数のガス注入システム(gas injection system)(GIS)730が取り付けられる。GISはそれぞれ、前駆体材料または活性化材料を保持するためのリザーバ(図示せず)、および加工物の表面にガスを導くための針732を備えることができる。GISはそれぞれさらに、加工物への前駆体材料の供給を調節する手段734を備える。この例では、この調節手段が調整可能な弁として示されているが、調節手段は例えば、前駆体材料を加熱して前駆体材料の蒸気圧を制御する調節された加熱器を含むこともできる。
【0059】
電子ビーム716中の電子が加工物718に当たると、2次電子、後方散乱電子およびオージェ電子が放出される。これらの電子を検出して、画像を形成し、または加工物についての情報を決定することができる。例えば2次電子は、エバーハート−ソーンリー(Everhard−Thornley)検出器、低エネルギーの電子を検出することができる半導体検出デバイスなどの2次電子検出器736によって検出される。検出器736からの信号はシステム・コントローラ738へ送られる。前記コントローラ738はさらに、偏向器信号、レンズ、電子源、GIS、ステージおよびポンプ、ならびにこの機器の他の構成要素を制御する。モニタ740は、ユーザ制御を表示するため、およびその信号を使用して加工物の画像を表示するために使用される。
【0060】
室708は、真空コントローラ741の制御の下、ポンプ・システム709によって排気される。この真空システムは、室708内に約7×10−6ミリバールの真空を提供する。適当な前駆体ガスまたは活性化剤ガスを試料表面に導入すると、室のバックグラウンド圧力が典型的には約5×10−5ミリバールまで上昇することがある。
【0061】
集束イオン・ビーム・カラム706は、イオン源746および集束カラム748がその内部に位置する上ネック部分744を備え、集束カラム748は、引出し電極750および静電光学系を含み、静電光学系は対物レンズ751を含む。イオン源746は、液体金属ガリウム・イオン源、プラズマ・イオン源、液体金属合金源または他の任意のタイプのイオン源を含むことができる。集束カラム748の軸は、電子カラムの軸から52度傾いている。イオン・ビーム752は、イオン源746から、集束カラム748を通り、静電偏向器754間を通過して、加工物718に向かって進む。
【0062】
FIB電源および制御ユニット756は、イオン源746の電位を供給する。イオン源746は一般に、一般にグランド電位に維持される加工物の電位よりも1kVから60kV高い電位に維持される。したがって、イオンは、約1keVから60keVの入射エネルギーで加工物に衝突する。FIB電源および制御ユニット756は偏向板754に結合される。偏向板754は、イオン・ビームが、加工物の718上面に、対応するパターンをトレースすることを可能にする。当技術分野ではよく知られているとおり、システムによっては、最後のレンズよりも前に偏向板が置かれる。イオン・ビーム集束カラム748内のビーム・ブランキング(blanking)電極(図示せず)は、FIB電源および制御ユニット756がブランキング電極にブランキング電圧を印加したときに、イオン・ビーム752を、加工物718ではなくブランキング絞り(図示せず)に衝突させる。
【0063】
イオン源746は一般に、一価の正のガリウム・イオンのビームを発生させる。このビームを、イオン・ミリング、強化エッチング、材料付着によって加工物718を変更するため、または加工物718を画像化するために、加工物718の位置において幅1/10マイクロメートル以下のビームに集束させることができる。
【0064】
米テキサス州DallasのOmniprobe,Inc.のAutoProbe 200(商標)、ドイツReutlingenのKleindiek NanotechnikのModel MM3Aなどのマイクロマニピュレータ757は、真空室内の物体を正確に移動させることができる。真空室内に配置された部分759のX、Y、Zおよびθ制御を提供するため、マイクロマニピュレータ757は、真空室の外側に配置された精密電動機758を備えることができる。小さな物体を操作するため、マイクロマニピュレータ757に別のエンド・エフェクタを取り付けることができる。本明細書に記載した実施形態では、このエンド・エフェクタが細いプローブ760である。分析のため、マイクロマニピュレータ(またはマイクロプローブ)を使用して、(一般にイオン・ビームによって基板から分離された)TEM試料を、TEM試料ホルダ761内のTEMグリッドに移すことができる。ステージ724はさらに、ステージ724上に取り付けられた、例えば本発明の出願人が所有権者であり参照によって本明細書に組み込まれるAsselbergs他の「Method for the Manufacture and Transmissive Irradiation of a Sample,and Particle−optical System」という名称の米国特許出願公開第2004/0144924号明細書に記載されているものなどのフリップ・ステージ(図示せず)を含むことができる。フリップ・ステージ上にTEMグリッドを取り付けると、TEMグリッドの向きを変化させることができ、回転がステージを回転させることによって、試料を所望の向きに取り付けることができる。
【0065】
システム・コントローラ738は、デュアル・ビーム・システム702のさまざまな部分の動作を制御する。従来のユーザ・インタフェース(図示せず)にコマンドを入力することにより、ユーザは、システム・コントローラ738を介して、イオン・ビーム752または電子ビーム716で所望の通りに走査することができる。あるいは、システム・コントローラ738は、プログラムされた命令に従って、デュアル・ビーム・システム702を制御することができる。
図7は略図であり、一般的なデュアル・ビーム・システムの要素の全ては含んでおらず、また、それらの要素の実際の外観およびサイズまたはそれらの要素間の関係の全ては示していない。
【0066】
本発明の実施形態は、荷電粒子ビーム・システムおよび電子ビームを使用して試料上で終点決定を実行する方法を対象とする。この方法は、荷電粒子ビーム・システムおよび電子顕微鏡内に試料を装墳するステップと、電子顕微鏡を使用して試料の第1の表面を画像化して、試料の断面図である第1の画像を生成するステップと、荷電粒子ビームを試料の第1の表面で使用して、試料の第2の表面を生成するステップと、電子顕微鏡を使用して試料の第2の表面を画像化して、試料の断面図である第2の画像を生成するステップと、ソフトウェアを使用して第1の画像の上に第2の画像を重ね合わせ、このソフトウェアを使用してこれらの画像を比較し、第1の画像から第2の画像を差し引き、その結果、第2の表面を生成させるための荷電粒子ビームによって生じた差異を示す第3の画像を得ることによって、差分画像を生成するステップとを含む。本発明の少なくとも1つの代替実施形態では、ソフトウェアを使用して第2の画像の上に第1の画像を重ね合わせ、このソフトウェアを使用してこれらの画像を比較し、第2の画像から第1の画像を差し引き、その結果、第2の表面を生成させるための荷電粒子ビームによって生じた差異を示す第3の画像を得ることによって、差分画像を生成する。
【0067】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、画像のそれぞれの画素の色情報を使用してどの画素がより暗いかを判定することができるソフトウェアを使用するステップをさらに含む。
【0068】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、第1の画像の画素と第2の画像の画素とを比較し、第3の画像を生成する際に、一方の画像中のより暗い画素をより明るい画素に置き換えるステップであり、一方の画像からの画素のうち第2の画像中の画素と色が同じである画素の位置では第3の画像の画素の色を変化させないステップをさらに含む。
【0069】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、第3の画像を第2の画像の上に点滅するオーバレイで定期的に表示し、それによって、イオン・ビームが最後にミリングした位置に強調表示を生成するステップをさらに含む。
【0070】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、荷電粒子ビームを試料の第2の表面で使用して、試料の第3の表面を生成するステップと、電子顕微鏡を使用して試料の第3の表面を画像化して、試料の断面図である第4の画像を生成するステップと、ソフトウェアを使用して、第2の画像の上に第4の画像を重ね合わせ、第3の表面を生成するための荷電粒子ビームによって生じた差異を示す差分画像を生成するステップとをさらに含む。
【0071】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、第1および第2の画像の画像収集ならびに第3の差分画像の生成を自動化するためにコントローラを使用するステップを含む。
【0072】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、第3の差分画像を使用して、第2の表面を、差分画像からの差異を使用して自動的にミリングするために、コントローラを使用するステップを含む。
【0073】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、表面のドエル点を、コントローラによって、第3の差分画像を使用して決定するステップを含む。
【0074】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、差分画像を生成するためのリアルタイム・フィードバックで実行される計算を実行して、差分画像の生成の直後に、オペレータが、集束イオン・ビームを使用して試料をミリングすることができるようにするステップを含む。
【0075】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、第1および第2の画像の画像化を、同時パターン形成および画像化を使用して実行するステップを含み、この同時パターン形成および画像化は、集束イオン・ビームを使用して、材料を、自動化されたスライス・アンド・ビュー・アルゴリズムでスライスして除去する。
【0076】
この方法の少なくとも1つの実施形態は、放出された2次電子を検出および使用して、画像を生成するステップを含む。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。例えば、このTEM試料の重ね合わせられた差分画像の使用を、自動化された回折断層撮影を含む断層撮影の分野で使用することもできる。この方法は、「Towards automated diffraction tomography:Part I−Data acquisition」、U.Kolb他、Ultramicroscopy 107(2007)507〜513から知られている。本発明の実施形態の教示は、生体試料の研究で使用することを含め、多くの異なる技術分野に適用することができる。本発明を、凍結断層撮影の分野で使用することもでき、その際には、部位Aから関心領域を探し、その知見を使用して、部位Bにおいてその関心領域を見つけることをシステムに学習させるシステムを提供することができる。断層撮影を使用して、試料部位から関心領域が除去された後にミリング・シーケンスを停止させることができる。本発明を、IR CE用途および表面下画像化に適用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
702 デュアル・ビームSEM/FIBシステム
704 電子ビーム・カラム
706 集束イオン・ビーム(FIB)カラム
708 試料室
718 加工物
722 走査電子顕微鏡電源/制御ユニット
724 可動ステージ