特許第6557007号(P6557007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557007
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】カソード電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/96 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   H01M4/96 M
   H01M4/96 B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-516446(P2014-516446)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-517494(P2014-517494A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】GB2012051474
(87)【国際公開番号】WO2012175997
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月18日
【審判番号】不服2018-2767(P2018-2767/J1)
【審判請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】1110585.5
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512227074
【氏名又は名称】アカル エネルギー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(72)【発明者】
【氏名】クリース,アンディー
(72)【発明者】
【氏名】ベインズ,ニック
(72)【発明者】
【氏名】ポッター,アンディー
(72)【発明者】
【氏名】ダーソン,クレイグ,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ダウンズ,クレア,ルイーズ
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 中澤 登
【審判官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−129393(JP,A)
【文献】 特開2007−165120(JP,A)
【文献】 特開2005−267981(JP,A)
【文献】 特開2010−95738(JP,A)
【文献】 特開2010−77490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297, 8/08- 8/2495
H01M 4/86- 4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池カソード電極を製造する方法であって、
前記方法は、多孔質金属構造体を用意するステップと、高められた活性化挙動が誘導されるように前記多孔質金属構造体の表面を修飾するステップとを含み、
前記多孔質金属構造体の表面を修飾するステップは、少なくとも1つの増大した表面積ゾーンを設けることにより前記電極の所与の体積に関して表面積を増大させるステップを含み、さらに、
前記多孔質金属構造体の表面修飾が、
a 炭素のスパッターコーティング、
b 炭素の物理吸着、
c 鋳型炭素の堆積、
d 炭素の化学気相成長、
e 炭素の化学気相含浸、
から選択され、
前記多孔質金属構造体が、その当初の厚さの80%未満に圧縮される、方法。
【請求項2】
前記多孔質金属構造体の表面修飾が、さらに、
a.液体化学修飾、および
b.少なくとも1つの酸化領域を設けること
から選択される表面修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの酸化領域が、強酸、または強酸化剤に曝すことによって実現される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質金属構造体の表面を修飾するステップが、さらに、
a)プラズマエッチング、
b)熱処理、および
c)酸素プラズマ処理によって行われる気相化学修飾
から選択される修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質金属構造体が、その当初の厚さの70%未満に圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質金属構造体が、2mm以下の厚さに圧縮される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、燃料電池カソード電極に関し、より詳細には、高められた活性化挙動が誘導されるように表面が修飾されまたはその他の手法で配置構成されもしくは構造化された、カソード電極に関する。そのようなカソード電極を製造する方法も、開示される。さらに、このタイプのカソード電極を有する燃料電池についても記載される。そのようなカソード電極の、燃料電池での使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
カソード電極は、例えば燃料電池などの用途で何年にもわたり使用されており、その技術は十分理解されている。特定の用途では、炭素スルーフロー電極(carbon through-flow electrodes)をカソードとして使用してもよい。そのような電極の主な仕事は、電気化学反応を引き起こすことができる表面積を提供し;電子を電極/液体の界面におよびこの界面から外部電気回路に、バイポーラーまたはモノポーラー板を介して輸送し;脆弱なポリマー電解質膜を支持し;電極内での反応物の最適な流れを可能にすることである。
【0003】
このタイプの電極の例を、図1に示す。図1から、一般に1で示される電極は、膜7とバイポーラー板9との間にある多孔質電極材料3によって構成されることがわかる。カソード電解質の液体の流れは矢印5によって示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極が、その主な機能(上述の)のいずれかを発揮できない場合、電気化学反応速度が遅くなり、またはおそらくはセルの構成要素に損傷を与えることになる。
【0005】
カソード電極を作製するのに様々な材料が提示され使用されてきたが、これらの材料には、利用可能な表面積が不十分でありかつ伝導度が不十分であることを含めた数多くの欠点がある。
【0006】
例えば、網状ガラス質炭素(reticulated vitreous carbon:RVC)電極などの剛性炭素電極には、代わりの電極材料と比べた場合に反応に利用可能な表面積が比較的不十分であるという欠点がある。RVC電極のその他の欠点は、電極の素線端部の尖端が、ポリマー電解質膜を通る穿刺および短絡を引き起こす可能性があることである。RVC電極を、十分細い構成に作製することも難しい。
【0007】
炭素フェルトなど、より軟質の繊維ベースの電極は、RVCよりも広い表面積を提供するが、電気伝導度はより低い。電極キャビティー内のフェルトの圧縮の増大は、電気伝導度の増大を助けることが以前から公知であったが、この増大には、流体の流れに対する抵抗の増大がしばしば伴い、材料内に電解質をポンプ送出するのに必要なエネルギーが増大する。さらに、そのような圧縮力は、炭素繊維の破損によってフェルト材料の損傷をもたらす可能性がある。
【0008】
その他の材料は、燃料電池のアノード上にプリントされる触媒インキに使用されるような高表面積活性炭を含むが、これらの材料ではかなりの液体電解質がミクロおよびナノスケールの細孔構造内を流れることができず、非常に望ましくない。
【0009】
以下に続く説明から、本発明が、これまで従来技術の構造では企図されずまたは可能ではなかった数多くの追加の利点を提供しつつ、公知の配置構成に関連した前述の欠陥にどのように対処するのか明らかにされよう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、多孔質骨格媒体を含み、その媒体の表面が、電極の所与の体積に関する表面積を増大させることによって、かつ/または電極上の反応性部位の数および/または利用可能性を増大させることによって、高められた活性化挙動を誘導するように修飾されまたはその他の手法で配置構成されもしくは構造化されている、燃料電池カソード電極が提供される。
【0011】
所望の電極材料は、燃料電池電極の要件(上記にて論じたような)を満たす電極材料を得るために、利用可能な材料の修飾によって実現することができる。適用するのに必要な、電気伝導度、液体電解質流動分布、および膜支持をもたらす電極構造から始め、著しい性能改善を実現するのに十分な程度までその表面を修飾することが、有利と考えられる。
【0012】
「高められた活性化挙動を誘導する」とは、カソード電極が、前記修飾、配置構成、または構造化がない状態の同じ電極よりも高い効率をもたらして、例えばより多くの電力が、同じ電極体積から発生し得るようになることを意味する。表面の修飾は、様々な方法で実現することができる。例えば、第1の技法は、電極の有効表面積を増大させることであってもよい。別の方法は、電極の表面化学を変化させて、電極表面に特定の官能基が存在する可能性が高まるようにし、反応に利用可能な電極表面の割合を増大させることであってもよい。
【0013】
「またはその他の手法で配置構成されもしくは構造化され」により、多孔質電極材料は、高められた活性化挙動を誘導するように本明細書に定義される必要不可欠な性質を含むことが理解されよう。これらの必要不可欠な性質は、(とりわけ)例えば、反応性挙動が促されるように、反応物との反応に関して十分高い表面積利用可能性を有することおよび/または十分多くの数の反応性部位を表面に有すること、および以下に示す特許請求の範囲で言及されるその他の関連あるまたは独立した性質を含んでいてもよい。
【0014】
1つまたは複数の実施形態では、多孔質電極材料(骨格媒体)が、本明細書に記載される高められた活性化挙動を行うために必要不可欠な性質を有する、既存の材料を含んでいてもよいことが理解されよう。この材料には、例えば、燃料電池の用途に等しく使用することができかつその固有の有利な性質によって高められた活性化挙動を誘導することができる、非修飾基板または多孔質電極媒体を含めてもよい。言い換えれば、本発明は、いくつかの実施形態において、多孔質骨格媒体の修飾なしに行ってもよい。このように、多孔質骨格媒体は、「その他の手法で配置構成されまたは構造化され」てもよい。
【0015】
燃料電池は、非常に多年にわたり、自動車および可搬性エレクトロニクス技術などの可搬性の用途に公知であったが、ごく近年になって、燃料電池は深刻な実用上の懸案事項になりつつある。その最も単純な形では、燃料電池は、燃料および酸化体を(1種または複数の)反応生成物に変換してプロセス中に電気および熱を生成する、電気化学エネルギー変換デバイスである。そのようなセルの一実施例では、水素を燃料として使用し、空気または酸素を酸化体として使用し、反応生成物は水である。気体はそれぞれ、2つの電極間で帯電粒子を運ぶ固体または液体電解質によって分離された、触媒作用をする拡散型電極に供給される。間接的またはレドックス燃料電池では、酸化体(および/または、場合によっては燃料)が電極で直接反応せず、代わりに還元形態(燃料の酸化形態)のレドックス対と反応して酸化し、この酸化された種がカソードに供給される。
【0016】
本発明に関して特に興味深い点は、セルのカソード領域(電極)で生ずる反応である。電極の表面化学を変化させることにより、増強された電気化学反応を実現することができ、それによって電極の生産性および/または効率が高まる。
【0017】
請求項1に定義されるカソード電極は、携帯電話用マストのバックアップ電源および約2から10kWの電力を必要とするコンピューターシステム;オフグリッド用途のためのディーゼルエンジン発電セットまたはより大きなバックアップ電源に代わるような定置用電源;および自動車を含む輸送様となどの燃料技術の用途で、特に有効と考えられる、燃料技術の用途において特に有効と考えられる。
【0018】
高められた活性化挙動は、電極の所与の体積に関する表面積を増大することによって、かつ/または電極上の反応性部位の数および/または利用可能性を増大させることによって誘導され、後者は、電気化学反応の有効表面積を増大させる。
【0019】
多孔質骨格媒体の表面修飾は、少なくとも1つの増大した表面積ゾーンを含むと考えられる。言い換えれば、修飾は、電極の表面積を増大させるように作用する。反応物に曝された表面電極材料の量の物理的な増加は、電気化学反応を生じさせる、より多くの機会をもたらすことになる。
【0020】
媒体の表面修飾は、スパッタリングされた炭素コーティングを設けることを含んでいてもよい。スパッタリング技法を使用して、活性電極材料(例えば、炭素)の小さい粒子を支持構造(多孔質骨格媒体)上に堆積することが可能である。有利には、コーティングプロセスで使用されるパラメーターは、堆積された粒子の形態の制御を行うことができる。形態の制御によって、反応物に曝される表面積の量を最適化することができる。
【0021】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、物理吸着された炭素を含んでいてもよい。このタイプの表面修飾では、その高表面積または電気化学的性質に合わせて選択された炭素粒子が添加される。堆積された追加の炭素のタイプを選択する能力は、表面活性化手順に高度な制御をもたらす。特定の高表面積炭素は、特定のカソード電解質に関する反応性を最大限にするものを選択することができる。
【0022】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、鋳型炭素(templated carbon)の堆積を行うことを含んでいてもよい。この技法では、炭素の添加前に鋳型前駆体を使用する。電極の表面積の増大と同様に、この技法では、電極表面形態(鋳型の選択を通して)と電極表面化学(炭素前駆体および処理条件の選択を通して)との両方でかなりの制御を行うことが可能になる。
【0023】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、化学気相成長させた炭素の提供を含んでいてもよい。化学気相成長(CVD)技法は、支持骨格として多孔質骨格媒体の表面を使用して、追加の炭素構造を「成長」させるのに利用することができる。追加の炭素種が表面に形成される条件の変更および規制によって、電極に得られるミクロ構造の調整が可能になる。
【0024】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、化学気相含浸炭素の提供を含んでいてもよい。化学気相含浸(CVI)技法は、CVD技法(上述の)と類似の手法で追加の炭素構造を「成長」させるのに利用することができる。
【0025】
カソード電極の生産性および/または効率を改善するための効率的な技法は、電極が反応物に対してより反応性を有するようにするために、その表面化学を変化させることである。このように、媒体の表面は、高められた活性化挙動を誘導するように修飾される。したがって、媒体の表面修飾は、単位表面積当たりの電気化学反応性部位が増大した領域を含んでいてもよい。単位表面積当たりの反応性部位の数を増加させることにより、言い換えれば反応性部位の密度を増加させることにより、反応に必要な特定の官能基が液体反応物に適うものである可能性が増大する。反応性部位の割合が高くなると、燃料電池の電流および電力密度が増大する。
【0026】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、液体化学修飾を含んでいてもよい。この技法の少なくとも1つの利点は、低コストの市販の処理剤を利用することができ、そのような処理を行う追加のコストを下げたままにできることである。他の利点は、特定のカソード電解質に必要とされる最適な表面修飾が得られるように、使用される特定の処理剤を調整することができることである。
【0027】
使用されるカソード電解質に応じ、媒体の表面修飾は、少なくとも1つの酸化領域を含んでいてもよい。媒体の表面を酸化することによって、その表面化学が変化し、それによって反応物同士が反応する反応性部位の数が増加する。当然ながら、表面は、数多くの酸化領域を含んでいてもよいことが明らかにされよう。
【0028】
少なくとも1つまたは複数の実施形態では、少なくとも1つの酸化領域は、硝酸もしくは硫酸などの強酸、および/または過硫酸アンモニウムなどの強酸化剤に曝すことによって、実現してもよい。
【0029】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、気相化学修飾を含んでいてもよい。気相化学修飾は、反応が生ずるように、より反応性のある表面部位が生成されるよう作用する。この技法の特定の利点は、気体処理プロセスが、電極の後処理である清浄化を必要としないことであり、良好な細孔含浸を実現することができ、選択された処理用の1種または複数の気体を使用して、カソード電解質溶液の特定の要件を満たすように最終結果の表面化学を調整することができることである。
【0030】
例えば、気相化学修飾は、酸素プラズマ処理によって行われる。この処理は、使用されるカソード電解質次第で特に好ましいと考えられる。
【0031】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、プラズマエッチングを含んでいてもよい。ミクロ細孔を多孔質骨格媒体の表面にエッチングするプラズマを、制御された状態で使用することにより、表面積を増大させることができると共に、材料の流れ、支持、および電気伝導度をその当初の状態に比べて満足のいくレベルに保つことができる。
【0032】
さらに、または代わりに、媒体の表面修飾は、熱処理を含んでいてもよい。電極の熱処理は、多孔質骨格媒体の表面化学が変化するようにミクロ細孔を誘導し、それによってカソード電極の生産性を改善してもよい。この技法の特定の利点は、追加の試薬を必要としないことであり、複雑さが低減した処理と、潜在的なコストの節約とが提供される。
【0033】
媒体の配置構成または構造化は、電極の圧縮を含んでいてもよい。フローバッテリーおよび電気化学反応器の炭素電極は、その当初の厚さの約80%にしか圧縮されるべきではないことが、以前から考えられてきた(例えば、Montiel et al. Ind. Eng. Chem. Res. 1998, 37, 4501-4511参照)。しかし本発明者らは、驚くべきことに、ある燃料電池の用途では、いくつかのカソード材料が、その当初の厚さの80%よりも非常に少なく圧縮されたときに最適な性能を与えることができることを見出した。ある場合には、最適な性能は、カソード材料がその当初の厚さの50%未満まで圧縮されたときに実現された。理論に拘泥するものではないが、そのような圧縮は、媒体の伝導度と、膜表面近くの領域のカソードの表面積とを増大させる。これらの利益は、驚くべきことに、やはり圧縮から得られる流れの低減を上回る。圧縮の前後に、電極をさらに修飾してもよいし、しなくてもよい。
【0034】
したがってカソード電極の配置構成または構造は、その当初の厚さの80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、さらにより好ましくはその当初の厚さの50%未満までの多孔質電極の圧縮を含む。
【0035】
当業者なら、多孔質骨格媒体の表面化学を修飾するための上述の技法は、別々にまたは組み合わせて使用してもよいことが理解されよう。上述の技法の組合せは、非常に望ましいカソード電極の、高められた活性化挙動を誘導する相乗効果を発揮し得る。
【0036】
多孔質骨格媒体は、剛性炭素構造を含んでいてもよい。この構造は、全ての方向で良好な電気伝導度を示しながら、電極の強度および堅牢性を改善することができる。
【0037】
多孔質骨格媒体は、網状ガラス質炭素(RVC)を含んでいてもよい。RVCは、ミクロ細孔性のガラス状炭素電極材料である。RVCは、表面積と体積との高い比と、広範な処理条件での最小限の反応性を、低コストおよび容易な取扱いと組み合わせて提供する。RVC電極を有する電気化学セルの設計は、均一な電流および電位の分布、低いオーム内部抵抗、電極表面への電気活性種の高速での物質輸送を可能にする。
【0038】
多孔質骨格媒体は、軟質繊維ベース構造を含んでいてもよい。軟質繊維ベース構造は、反応物に対して優れた表面積曝露をもたらすことができる。
【0039】
多孔質骨格媒体は、圧縮された炭素フェルトを含んでいてもよい。電極内のフェルトの圧縮は、電気伝導度の増加を助けることができる。
【0040】
一実施形態では、多孔質骨格媒体は、炭素/PTFE複合媒体を含む。他の実施形態では、多孔質骨格媒体は、炭素エアロゲルを含む。さらに他の実施形態では、多孔質骨格媒体は、炭素布を含んでいてもよい。そのような炭素布は、Zorflex活性炭布を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、多孔質骨格媒体は、カーボン紙または炭素ベールを含んでいてもよい。
【0041】
他の実施形態では、多孔質骨格媒体は、炭素布を含んでいてもよい。本発明者らは、驚くべきことに、ある場合には布材料の織り方によってカソードの性能が変化する可能性があることを見出した。織り方の変更によって、カソード電解質の流動特性が変化し、それによって性能を調整することができると考えられる。好ましくは、布は織られているまたは編まれている。
【0042】
多孔質骨格媒体、および/または媒体の表面を修飾する材料は、2mm以下の厚さ;より具体的には1mm未満の厚さ;より具体的には0.4mm未満の厚さ;さらにより具体的には0.25mm未満の厚さを有していてもよい。このように、厚さは0.01mmから2mmに及んでもよい。より薄い全体セルは、動作中の燃料電池システムに組み込まれた場合、燃料電池システムの設計に極めて重要と見なされ得るパラメーター、即ち、より高い容積および質量出力密度を、燃料電池にもたらすことになるので、厚さを低減させることが望ましい。
【0043】
多孔質骨格媒体は、1つまたは複数のパネルの形をとってもよい。より具体的には、1つまたは複数のパネルは、250mm×250mmの寸法を有していてもよい。そのような寸法は、例えば電極の製造を容易にし、輸送を容易にするのに特に適切であってもよい。
【0044】
多孔質骨格媒体の表面は、カソード電解質の液体に反応性があってもよい。これは、支持材料の領域がプロセス中に未処理のままである場合、その領域は低容量であるにも関わらず(1つまたは複数の)電極反応を行うことが可能なままであるので、有利である。
【0045】
多孔質骨格媒体、および/またはこの媒体の表面を修飾する材料は、600から30000cm2/cm3の比表面積を有していてもよい。1つまたは複数の実施形態では、比表面積が3000cm2/cm3であってもよい。指定される表面積は、従来の電極よりも著しく広く、本発明により形成された電極を、電気伝導度および発電の観点から燃料電池の生産性を高めるのに特に適切なものにする。
【0046】
多孔質骨格媒体、および/またはこの媒体の表面を修飾する材料は、17mΩcm2以下の断面通過電気抵抗を有していてもよい。より具体的には、断面通過電気抵抗は、5mΩcm2以下であってもよい。この値は、バイポーラー板との接触抵抗を含む。低抵抗は、燃料電池の関連ある構成要素内での電気伝導により発生した効率損失を低減させるのに、燃料電池にしばしば必要である。
【0047】
多孔質骨格媒体、および/または媒体の表面を修飾する材料は、80℃でpH0の酸化環境で安定であってもよく;あるいは、またはさらに、95℃でpH0の酸化環境で安定であってもよく;あるいは、またはさらに、120℃でpH0の酸化環境で安定であってもよい。そのような環境で電極構造を安定にすることができないと、電極が劣化し、電気化学性能が低下する可能性があり、おそらくは機械的安定性に影響を及ぼしかつ/または腐食生成物で燃料電池システムが汚染される可能性がある。
【0048】
燃料電池は高圧で動作してもよく、したがって多孔質骨格媒体、および/またはこの媒体の表面を修飾する材料は、そのような圧力で安定にすることができる。好ましくは、燃料電池は、大気圧(または周囲圧力)よりも高い圧力、および5バールよりも低い絶対圧力で動作する。
【0049】
多孔質骨格媒体、および/またはこの媒体の表面を修飾する材料は、少なくとも5×10112の細孔構造透過率を有していてもよい。このレベルの透過率は、液体カソード電解質反応物の流れに関して適切な容易さをもたらす。
【0050】
多孔質骨格媒体は、炭素または金属の少なくとも1種を含んでいてもよい。有利には本発明は、例えば、反応性に関する有効表面積を高めるために追加の炭素でコーティングすることによって、かつ/またはより多くの活性部位を表面に生成することによりその表面化学を変化させることによって、炭素電極ベース構造を修飾する柔軟性を提供する。さらに本発明は、本明細書に記載されるように活性炭表面でコーティングすることにより、通常なら電気化学的に未反応の構造(例えば、多孔質金属など)であって通常なら電極のその他の要件を提供する構造を利用する能力も提供する。多孔質骨格媒体は、例えば、白金族金属と、ステンレス鋼、オーステナイトニッケル−クロムベース超合金、およびチタンを含めたそれほど活性ではない金属との、1種または複数を含んでいてもよい。
【0051】
多孔質骨格媒体は、自己支持型であってもよい。このように多孔質骨格媒体は、支持するための任意のその他の手段を必ずしも必要とせず、独立型構造として使用することができる。
【0052】
別の実施形態では、本発明のカソード電極の表面修飾、配置構成、または構造は、カソード電極の高い、ぬれ性をもたらす。その結果、カソード電解質をポンプ送出するのに必要な圧力が低減され、それによって寄生損失が低減することにより、より効率的な燃料電池が得られる。
【0053】
別の態様では、本発明は、燃料電池カソード電極を製造する方法を考え出し、この方法は:多孔質骨格媒体を用意するステップと;この媒体の表面を修飾しまたはその他の手法で配置構成しもしくは構造化して、高められた活性化挙動を誘導するステップとを含む。
【0054】
媒体の表面を修飾するステップは、媒体の表面積を増大させるステップを含んでいてもよい。
【0055】
媒体の表面積は、少なくとも1つの増大した表面積ゾーン、言い換えれば、例えば同じ電極上の隣接領域よりも大きな比表面積を有するゾーンを設けることによって、増大させてもよい。
【0056】
媒体の表面を修飾するステップは、その表面を炭素粒子でスパッターコーティングすることを伴ってもよい。
【0057】
特定の実施形態において、スパッタリングプロセスは真空スパッタリングを伴ってもよい。
【0058】
媒体の表面を修飾するステップは、媒体上に炭素粒子を物理吸着させることを伴ってもよい。物理吸着プロセスは:炭素粒子を担体に懸濁させた懸濁液を用意するステップと;炭素粒子の懸濁液を媒体に接触させるステップと;担体を蒸発させて、物理吸着により炭素粒子が媒体上に堆積したままになるようにするステップとを含んでいてもよい。有利には、この技法を使用することによって、堆積された粒子は物理吸着より所定位置にあるままであり、かつ/または方法がさらに、炭素粒子を熱処理して媒体に接着させるステップを含んでいてもよい。あるいは、Nafion(RTM)などのプロトン伝導性ポリマーを、炭素粒子を取着する手段として使用することができる。このように、高表面積炭素(従来使用される)の制限因子となり得る不十分な電気伝導性は、多孔質骨格媒体の主鎖が大部分の伝導性経路に関して電子を輸送することになるので、それほど影響を及ぼさない。
【0059】
媒体の表面を修飾するステップは、炭素を媒体に付着させるための鋳型方法を伴ってもよい。
【0060】
鋳型方法では;鋳型を媒体に付着させるステップと;炭素を鋳型上に堆積するステップと;鋳型を除去して、媒体の表面に堆積された炭素を残すステップとを行ってもよい。鋳型は、電極表面上に炭素の所望の構成を与えるように選択してもよい。
【0061】
1つまたは複数の実施形態では、鋳型が可溶性であってもよい。この性質は、鋳型の除去をより容易にすることができる。
【0062】
鋳型は、その意図される用途に合わせて選択された特定の形態で、媒体上に配置構成されると考えられる。
【0063】
媒体の表面を修飾するステップは、その表面に炭素を化学気相成長させることを伴ってもよい。
【0064】
媒体の表面を修飾するステップは、その内部に炭素を化学気相含浸させることを伴ってもよい。
【0065】
媒体の表面を修飾するステップは、単位表面積当たりの電気化学反応性部位の数を増加させることを伴ってもよい。このようにすることで、従来のカソード電極燃料電池と比べたときに、より多量の電気を発生することによって、電極の生産性を高めることができ、結果的に燃料電池の生産性を高めることができる。
【0066】
この方法では、媒体の表面化学を変化させるための、液体化学修飾のステップを行ってもよい。
【0067】
この方法では、さらにまたは代わりに、媒体の表面を酸化するステップを行ってもよい。
【0068】
1つまたは複数の実施形態では、酸化ステップは、硝酸もしくは硫酸などの強酸、および/または過硫酸アンモニウムなどの強酸化剤を使用して行ってもよい。
【0069】
媒体の表面を修飾するステップは、気相化学修飾を伴ってもよい。
【0070】
気相化学修飾は、酸素プラズマ処理により行ってもよい。
【0071】
媒体の表面を修飾するステップは、プラズマエッチングを伴ってもよい。
【0072】
プラズマエッチングは、媒体の表面にミクロ細孔をエッチングするステップを含んでもよい。
【0073】
媒体の表面を修飾するステップは、熱処理を伴ってもよい。
【0074】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるカソード電極を有する燃料電池を考え出す。
【0075】
燃料電池は、FlowCath(登録商標)技術;即ち、水素がアノード上で触媒される燃料電池を用いてもよい。電子およびプロトンは、積層体から外部再生容器に連続的に流れる、レドックス触媒系を含有する溶液に吸収される。再生器では、カソード電解質が空気と接触するようになり、電子、プロトン、および空気からの酸素が反応して水を形成し、蒸気として再生器から出て行く。次いでカソード電解質は、元のセルに流れる。
【0076】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるカソード電極の、燃料電池での使用について企図する。
【0077】
次に本発明について、単なる例として添付図面を参照しながら、より具体的に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】ポリマー電解質膜とバイポーラー板との間に据えられた多孔質骨格媒体の側面を示す図である。
図2】高められた電気化学活性のために修飾された表面を有する、本発明により形成された多孔質骨格媒体の部分側面図である。
図3】対照セルと、本発明の実施形態によるスパッターコーティング処理がなされた電極を有する燃料電池との、燃料電池性能を比較するチャートを示す図である。
図4】対照セルと、本発明の実施形態により形成された、追加の高表面積炭素を表面に付加するために鋳型を使用する処理プロセスがなされた電極を有する燃料電池との、燃料電池性能を比較するチャートを示す図である。
図5】対照セルと、表面に反応性部位を増加させるために酸化剤を使用する事前の処理プロセスがなされかつ本発明の実施形態により形成された電極を有する燃料電池との、燃料電池性能を比較するチャートを示す図である。
図6】対照セルと、電極表面の活性反応性部位の割合を増大させるために気相化学修飾を使用する事前の処理プロセスがなされかつ本発明の実施形態により形成された電極を有する燃料電池との、燃料電池性能を比較するチャートを示す図である。
図7】対照セルと、電極表面の活性反応性部位の割合を増大させるために事前の熱処理プロセスがなされかつ本発明の実施形態により形成された電極を有する燃料電池との、開回路電圧0.80Vでの性能を比較する(分極曲線および電力密度曲線を使用して)チャートを示す図である。
図8】対照セルと、電極表面の活性反応性部位の割合を増大させるために事前の処理プロセスである硝酸または硫酸への浸漬およびその後の熱処理プロセスがなされかつ本発明の実施形態により形成された電極を有する燃料電池との、開回路電圧0.80Vでの性能を比較する(分極曲線および電力密度曲線を使用して)チャートを示す図である。
図9】対照セルと、事前の処理プロセスである硝酸または硫酸への浸漬およびその後の熱処理プロセスがなされた電極を有する燃料電池と、電極表面の活性反応性部位の割合を増大させるために事前の熱処理のみがなされかつ本発明の実施形態により形成された電極を有する燃料電池との、開回路電圧0.80Vでの性能を比較する(分極曲線および電力密度曲線を使用して)チャートを示す図である。
図10】対照黒鉛フェルトカソード電極と、本発明の実施形態による熱処理を受けた黒鉛フェルトカソード電極との、異なる親水性を示す図である。
図11】対照黒鉛フェルトカソード電極と、本発明の実施形態による酸および熱処理を受けた黒鉛フェルトカソード電極との、異なる親水性を示す図である。
図12】圧縮に関する、本発明のカソードの性能の変化を示す図である。
図13】炭素布電極の織り方の変化による性能の変化を実証すると共に、従来技術の場合と比較した、本発明によるカソードの性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図2を参照すると、一般に11で示される多孔質骨格媒体の側面図が示されている。多孔質骨格媒体11の表面13は、それに沿って、半球状の窪みが繰り返し生成された形をとるように構成される。各半球状の窪みは、例えば15で表される。半球状の窪み15は、この実施形態では互いに接している。半球状の窪み15は、多孔質骨格媒体11の表面13の修飾を構成する。したがって表面13は、高められた活性化挙動を誘導するように修飾されている。このように、この手法で形成された電極は、単位体積当たり、より大量の電流が発生するようにプロトンおよび酸素などの反応物の広い表面積に関し、優れた電気化学性能を示すと考えられる。
【0080】
次に図3を参照すると、非修飾RVCカソード電極を有する燃料電池と、スパッターコーティング処理がなされた類似のRVC電極を有する燃料電池との、直接比較を行うチャートが示されている。これらは共に、カソードが、寸法50×63×2mmのRVC 1インチ当たり100個の細孔が、5倍圧縮された(このRVC電極は、図3の破線に関して論じられるようにさらに修飾された。)。標準気体拡散層(カーボン紙 約0.3mmの厚さ)をバイポーラー板とRVC電極との間に配置して、接続の伝導度が増大するようにした。炭素ベール(10g/m2)をRVC電極と膜との間に配置した。膜は、膜厚50ミクロンおよび活性面積50×50mmであり、アノード触媒充填が0.3mg Pt cm-2の、市販の膜電極アセンブリーであった。ポリオキソメタレートカソード電解質(Na43[PMo8440]・(H2O)xを水に溶かした0.3モル溶液)を、カソード電解質流240ml/分およびセル温度79〜86℃で使用した。厚さ約0.3mmの標準気体拡散層をアノード区画内で使用した。アノード区画内の水素の絶対圧力は1.5〜2バールであった。対照燃料電池の結果を実線で示し、一方、本発明の実施形態により形成されたカソード電極を有する燃料電池の結果を破線で示す。実験用カソード電極は、51μg/cm2の炭素材料を0Vの加速で堆積することにより形成した。使用される動作条件、その他の燃料電池構成要素、およびカソード電解質溶液は、その他に関しては同一であった。破線による分極曲線でわかるように、スパッターコーティングされたサンプルの性能は、実線による分極曲線で示される対照サンプルに比べ、著しく優れている(所与の電流で、より高いセル電圧)。
【0081】
次に図4を参照すると、図3に示されたものと類似のチャートが示されている。しかしこの図には、非修飾RVCカソード電極を有する対照セルと、類似のRVC電極を有するが既存のRVC支持構造(多孔質骨格媒体)に追加の高表面積炭素を付加するために鋳型を使用する処理プロセスがなされた燃料電池との、燃料電池性能の直接比較が示されている。使用された動作条件、その他の燃料電池構成要素、およびカソード電解質溶液は、その他の点に関しては図3の場合と同一であった。破線の分極曲線からわかるように、追加の鋳型炭素を有する実験サンプルの性能は、実線の分極曲線により示される対照サンプルに比べ、著しく優れている(所与の電流で、より高いセル電圧)。
【0082】
図5は、非修飾RVCカソード電極を有する対照セルと、類似のRVC電極を有するが酸化剤を使用した事前の処理プロセスがなされた燃料電池との、燃料電池性能を比較するその他の試験の結果を図示する。この実施形態の酸化剤は、電気化学的表面の活性反応性部位の割合を増大させるために使用される、過硫酸アンモニウム((NH4228)処理溶液である。全体を通して使用される動作条件、燃料電池構成要素、およびカソード電解質溶液は、膜が、膜厚25ミクロンでありアノード触媒充填が0.4mg Pt cm-2である市販の膜電極アセンブリーであることを除き、その他の点に関しては図3の場合と同一であった。破線の分極曲線からわかるように、事前の電極処理がなされた実験サンプルの性能は、実線の分極曲線により示される対照サンプルに比べて著しく優れている(所与の電流で、より高いセル電圧)。
【0083】
図6も、非修飾RVCカソード電極を有する対照セルの燃料電池性能と、電極表面の活性部位の割合を増大させるために酸素プラズマ処理を使用する事前の処理プロセスがなされた類似のRVC電極を有する燃料電池の性能とを比較する実験の、その他の実施例を示す。使用される動作条件、その他の燃料電池構成要素、およびカソード電解質の選択は、その他の点では図5の場合と同一であった。破線の分極曲線からわかるように、事前の電極処理がなされたサンプルの性能は、実線の分極曲線により示される対照サンプルに比べて著しく優れている(所与の電流で、より高いセル電圧)。
【0084】
図7は、非修飾黒鉛フェルトカソード電極を有する対照セルと、類似の黒鉛フェルト電極を有するが400℃、450℃、または500℃で2時間(空気中で)事前の熱処理がなされた燃料電池との、開回路電圧0.80Vでの性能を比較する試験の結果を示す。全ての場合において、黒鉛フェルト電極は、厚さ2.5mmの50×63mmポリアクリロニトリル黒鉛フェルトであって、セル構築中に1.1mmに圧縮したものであった。カソード電極を、活性面積が50×50mmであり膜厚が15ミクロンでありかつアノード触媒充填が0.3mg Pt cm-2である市販の膜電極アセンブリーの隣に固定した。ポリオキソメタレートカソード電解質(Na43[PMo8440]・(H2O)xを水に溶かした0.3モル溶液)を、カソード電解質流160ml/分およびセル温度75〜80℃で使用した。厚さ約0.3mmの標準気体拡散層(カーボン紙)を、アノード区画で使用した。アノード区画での水素の絶対圧力は1.5〜2バールであった。この実施形態での処理は、電気化学的表面の活性反応性部位の割合を増大させるために使用される。全体を通して使用される動作条件、燃料構成要素、およびカソード電解質溶液は、その他の点では同一であった。図7aは、実験から得られた分極曲線を示し、一方、図7bは電力密度曲線を示す。図からわかるように、450℃または500℃で事前の電極処理がなされた実験サンプルの性能は、対照サンプルに比べて0.80Vでは優れている(所与の電流で、より高いセル電圧/電力密度)。500℃での処理後の性能は、著しく優れている。しかし、400℃でのサンプルは、改善を示さなかった。これは熱処理を特定の材料に合わせて調整しなければならないことを実証している。理論に拘泥するものではないが、400℃は、黒鉛フェルトの表面を活性化するのに低すぎる温度であり、したがって材料が処理される温度は改善された性能が得られるように慎重に選択されるべきと考えられる。
【0085】
図8は、非修飾黒鉛フェルトカソード電極を有する対照セルと、類似の黒鉛フェルト電極を有するが多回前処理プロセス(multiple pre-treatment process)がなされた燃料電池との、0.80Vの開回路電圧での燃料電池性能を比較するその他の試験の結果を示す。全ての場合において、黒鉛フェルト電極は、厚さ2.5mmの50×63mmのポリアクリロニトリル黒鉛フェルトであって、セル構築中に1.1mmに圧縮されたものであった。カソード電極を、活性面積が50×50mmであり膜厚が15ミクロンでありかつアノード触媒充填が0.3mg Pt cm-2である、市販の膜電極アセンブリーの隣に固定した。最初に、処理された電極を、濃硝酸または濃硫酸に5時間室温で浸漬したままにし、その後、完全に濯いだ。次いで修飾されたフェルトを450℃または500℃で2時間(空気中)加熱した。ポリオキソメタレートカソード電解質(Na43[PMo8440]・(H2O)xを水に溶かした0.3モル溶液)を、カソード電解質流160ml/分およびセル温度75〜80℃で使用した。厚さ約0.3mmの標準気体拡散層(カーボン紙)を、アノード区画で使用した。アノード区画の水素の絶対圧力は1.5〜2バールであった。この実施形態での処理は、電気化学的表面の活性反応性部位の割合を増大させるために使用される。全体を通して使用される動作条件、燃料構成要素、およびカソード電解質溶液は、その他の点では同一であった。図8aは、実験から得られた分極曲線を示し、一方、図8bは電力密度曲線を示す。図からわかるように、450℃で事前の電極処理がなされた実験サンプルの性能は、対照サンプルに比べて著しく優れている(所与の電流で、より高いセル電圧/電力密度)。しかし、500℃での処理は、より低い性能をもたらした。やはりこれは、使用される材料に関する条件の選択の重要性を実証している。
【0086】
図9は、図7および8に示されるグラフの組合せであり、熱処理のみでの性能と、熱処理を酸処理と組み合わせた場合の性能とを比較する。グラフからわかるように、酸処理と組み合わせた450℃での熱処理は、熱処理のみ以上に燃料電池の性能を改善する。
【0087】
図10および11は、上記にて論じた処理による、黒鉛フェルトカソード電極の、異なる親水性を示す。図10aは対照サンプルを示し、図10bは400℃で処理した後のサンプルであり、図10cは450℃で処理した後のサンプルであり、図10dは500℃で処理した後のサンプルである。図11aは対照サンプルを示し、図11bは硫酸による処理および450℃での熱処理の後のサンプルであり、図11cは硝酸による処理および450℃での熱処理の後のサンプルであり、図11dは硫酸による処理および500℃での熱処理の後のサンプルであり、図11eは硝酸による処理および500℃での熱処理の後のサンプルである。図10および11a用として、1滴の水をピペットから添加し、60秒後に写真を撮った。図11b、11c、11d、および11e用として、1滴の水をピペットから添加し、1秒後に写真を撮った。処理されたカソード表面のぬれ性(親水性)は、未処理のカソード表面よりも高いことがわかった。このような状態であると、ぬれ性が増大したフェルトではカソード電解質溶液を内部にポンプ送出するのが容易と考えられ、その結果、カソード電解質をポンプ送出するのに必要な圧力が低減し、それにより寄生損失が低減されることによって、より効率的な燃料電池が得られるので、利益をもたらす。さらにこれらの図は、黒鉛フェルトの処理で最適なぬれ性を得ることができることを示唆する。図10dのフェルトは、図11bのフェルトでそうであったように(図8参照)、最良の性能(図7参照)を示した。したがって、これら2種のフェルト同士のぬれ性は最適な例を示すことができ、このレベルからの上昇または低下はフェルトの性能に有害なものとなる。
【0088】
図12は、異なる圧縮比の黒鉛フェルト電極を使用して動作する、本発明の燃料電池に関する性能データ(分極曲線)を示す。全ての場合において、黒鉛フェルト電極は、厚さ2.5mmの50×63mmポリアクリロニトリル黒鉛フェルトであって、実験中に、より薄い厚さに圧縮されたものであった(圧縮パーセンテージは、図の凡例に示されている。)。カソード電極は、活性面積が50×50mmであり膜厚が25ミクロンでありかつアノード触媒充填が0.4mg Pt cm-2である市販の膜電極アセンブリーの隣に固定した。ポリオキソメタレートカソード電解質(Na43[PMo8440]・(H2O)xを水に溶かした0.3モル溶液)を、カソード電解質流240ml/分およびセル温度79〜82℃で使用した。厚さ約0.3mmの標準気体拡散層(カーボン紙)を、アノード区画で使用した。アノード区画の水素の絶対圧力は約2バールであった。燃料電池を種々のカソード圧縮で動作させ、性能をモニターした。図12に示されるように、性能は、圧縮が増大するにつれ改善し、最良の性能は、その当初の厚さの46%まで圧縮されたフェルトで見られる。
【0089】
図13は、厚さ約0.5mmの炭素布電極を使用して動作する本発明の燃料電池に関する性能データ(分極曲線)を、厚さ2mmの網状ガラス質炭素電極と比較して示す。RVC電極のカソード区画は、図3に示されるものに類似していた。編まれた炭素布は、当初は0.47mmの厚さであった。燃料電池の構築の際、この電極を膜の隣に配置し、0.35mmに圧縮した。織られた炭素布は、当初は0.528mmの厚さであった。燃料電池の構築の際、この電極を膜の隣に配置し、0.35mmに圧縮した。図13の全ての燃料電池では、膜は、活性面積が50×50mmであり膜厚が25ミクロンでありかつアノード触媒充填が0.4mg Pt cm-2である、市販の電極膜アセンブリーであった。厚さ約0.3mmの標準気体拡散層(カーボン紙)を、アノード区画に使用した。アノード区画の水素の絶対圧力は約2バールであった。ポリオキソメタレートカソード電解質(Na43[PMo8440]・(H2O)xを水に溶かした0.3モル溶液)を、RVC、織られた炭素布、および編まれた炭素布電極に関してそれぞれカソード電解質流240、156、および180ml/分で使用した。セル温度は79〜82℃であった。図13は、従来技術の場合に比べて本発明のカソードの高い性能を実証する。さらに、図13は、編まれた布電極に比べて織布電極の性能が上昇したことも実証する。したがってこの図は、布材料の織り方を、燃料電池の要件に合わせて調整できることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
図12
図13