特許第6557019号(P6557019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャタピラー エス エー アール エルの特許一覧

<>
  • 特許6557019-建設機械 図000002
  • 特許6557019-建設機械 図000003
  • 特許6557019-建設機械 図000004
  • 特許6557019-建設機械 図000005
  • 特許6557019-建設機械 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557019
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20190729BHJP
   B62D 33/06 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   E02F9/16 A
   B62D33/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-27632(P2015-27632)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-151093(P2016-151093A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 哲士
(72)【発明者】
【氏名】苧野 亮介
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−014927(JP,A)
【文献】 特開2009−133119(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069091(WO,A1)
【文献】 特開2011−117277(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135434(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0140547(US,A1)
【文献】 特開2010−270557(JP,A)
【文献】 特開2010−042761(JP,A)
【文献】 特許第5352980(JP,B2)
【文献】 特開2012−144254(JP,A)
【文献】 特開2003−090387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60K 5/12
B62D 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板を含むキャブと、前側キャブサポート及び後側キャブサポートを含むサポート部材とを備え、該床板の前側は幅方向に間隔をおいて配設された一対の前側防振マウントを介して該前側キャブサポート上に支持され、該床板の後側は幅方向に間隔をおいて配設された一対の後側防振マウントを介して該後側キャブサポート上に支持され、該床板の下面と該前側キャブサポートの上面及び該後側キャブサポートの上面との間には間隙が存在する建設機械において、
該一対の後側防振マウントの幅方向内側に位置する方の後側防振マウントよりも更に幅方向内側において、該床板と該後側キャブサポートとの間には両者間の間隙を低減する板状の低減片が該後側キャブサポートの上面又は該床板の下面のいずれかに固定されており、
該低減片が該後側キャブサポートの上面に固定されている場合には、該床板の下面と該低減片の上面との間には間隙が存在し、かつ該後側キャブサポートの上面と該低減片の下面との間には間隙が存在せず、
該低減片が該床板の下面に固定されている場合には、該後側キャブサポートの上面と該低減片の下面との間には間隙が存在し、かつ該床板の下面と該低減片の上面との間には間隙が存在しない、ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
該低減片は該後側キャブサポートの上面に固定されている、請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
該低減片は該床板の下面に固定されている、請求項1記載の建設機械。
【請求項4】
該キャブは後端且つ幅方向内側端に立設された後内支柱を含み、該低減片は該後内支柱の下方に位置する、請求項1から3までいずれかに記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床板を含むキャブと、前側キャブサポート及び後側キャブサポートを含むサポート部材とを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰動自在に接続された作業腕装置とから大略構成されている。上部旋回体は骨組み構造体をなす旋回フレームを備え、旋回フレームは、底板と、底板上に立設され且つ前後方向に延びる左右一対の縦板と、各縦板の外面から幅方向外方に延出する複数のサポート部材とを含む。複数のサポート部材は前側キャブサポート及び後側キャブサポートを含み、運転員が搭乗するキャブは、前側が幅方向に間隔をおいて配設された一対の前側防振マウントを介して前側キャブサポート上に弾性的に支持され、後側が幅方向に間隔をおいて配設された一対の後側防振マウントを介して後側キャブサポート上に弾性的に支持されている。そして、キャブの下面と前側キャブサポートの上面及び後側キャブサポートの上面との間には間隙が存在し、キャブに加わる振動が各防振マウントによって低減されている。又、作業腕装置は、旋回フレームの縦板の前側に俯仰動自在に接続されたブームと、ブームの先端側に揺動自在に接続されたアームと、アームの先端側に回動自在に接続された作業具と、ブームを俯仰動させるブームシリンダと、アームを揺動させるアームシリンダと、作業具を回動させる作業具シリンダとから大略構成されている。
【0003】
油圧ショベル等の建設機械は、傾斜地や不整地等において転倒しキャブに大きな外力が作用した場合でも、キャブの変位を抑制、即ちキャブ内の空間を一定程度確保、することによってキャブ内に搭乗した運転員が押しつぶされてしまう危険を回避することが重要である。下記特許文献1には、ブームが最大作業半径をなす姿勢にあり且つキャブが側方からブームへ向かう外力を受けたときにキャブの側面に当接される当接部がブームに配設され、この当接部はブームから一方の縦板よりもキャブに近接する側方位置まで延びている上部体が開示されている。そして、この上部体によれば、ブームが最大作業半径をなす姿勢にあり且つキャブが側方からブームへ向かう外力を受けたときに、ブームの当接部とキャブの側面とが当接して外力を受承することから、キャブが旋回フレームの縦板と当接して外力を受承する場合と比較してキャブの変位が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5352980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した上部体においては、ブームが最大作業半径をなす姿勢にあるときに当接部がキャブの側面に当接されるように配設されていることから、ブームが俯仰動され最大作業半径をなす姿勢にないときにキャブが側方からブームへ向かう外力を受けた場合には、ブームの当接部とキャブの側面とが当接せず、このためキャブの変位を抑制することができない。一方、ブームが最大作業半径をなす姿勢以外の姿勢においても当接部がキャブの側面に当接し得るようにすると、当接部の大型化及び重量化を招くこととなってしまう。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ブームの姿勢によらず、簡易な構成でキャブに外力が作用した場合にキャブの変位が抑制される建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記技術的課題を解決する建設機械として、床板を含むキャブと、前側キャブサポート及び後側キャブサポートを含むサポート部材とを備え、該床板の前側は幅方向に間隔をおいて配設された一対の前側防振マウントを介して該前側キャブサポート上に支持され、該床板の後側は幅方向に間隔をおいて配設された一対の後側防振マウントを介して該後側キャブサポート上に支持され、該床板の下面と該前側キャブサポートの上面及び該後側キャブサポートの上面との間には間隙が存在する建設機械において、該一対の後側防振マウントの幅方向内側に位置する方の後側防振マウントよりも更に幅方向内側において、該床板と該後側キャブサポートとの間には両者間の間隙を低減する板状の低減片が該後側キャブサポートの上面又は該床板の下面のいずれかに固定されており、該低減片が該後側キャブサポートの上面に固定されている場合には、該床板の下面と該低減片の上面との間には間隙が存在し、かつ該後側キャブサポートの上面と該低減片の下面との間には間隙が存在せず、該低減片が該床板の下面に固定されている場合には、該後側キャブサポートの上面と該低減片の下面との間には間隙が存在し、かつ該床板の下面と該低減片の上面との間には間隙が存在しない、ことを特徴とする建設機械が提供される。
【0008】
好ましくは、該低減片は該後側キャブサポートの上面に固定されている。該低減片は該床板の下面に固定されているのが好都合である。該キャブは後端且つ幅方向内側端に立設された後内支柱を含み、該低減片は該後内支柱の下方に位置するのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって提供される建設機械においては、幅方向内側に位置する後側防振マウントよりも更に幅方向内側において、床板と後側キャブサポートとの間には両者間の間隙を低減する板状の低減片が後側キャブサポートの上面又は床板の下面のいずれかに固定されており、低減片が後側キャブサポートの上面に固定されている場合には、床板の下面と低減片の上面との間には間隙が存在し、かつ後側キャブサポートの上面と低減片の下面との間には間隙が存在せず、低減片が床板の下面に固定されている場合には、後側キャブサポートの上面と低減片の下面との間には間隙が存在し、かつ床板の下面と低減片の上面との間には間隙が存在しないことから、低減片が配設されていない場合と比較して両者が速やかに当接して外力を受承するため、キャブの変位が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従って構成された油圧ショベルの左側面図。
図2図1に示す旋回フレームを左上前方からみた斜視図。
図3図2に示す旋回フレームの一部を左上後方からみた斜視図。
図4図1に示すキャブのフレーム構造体を左上前方からみた斜視図。
図5図3中のA−A方向からみた断面図(キャブの一部を含む)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態について、代表的な建設機械である油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1を参照して説明する。全体を符号2で示す油圧ショベルは、自走可能な下部走行体4と、下部走行体4上に旋回自在に搭載された上部旋回体6と、上部旋回体6の前側に俯仰動自在に接続された作業腕装置8とから大略構成されている。油圧ショベル2は、土砂等の掘削作業時においては、作業腕装置8が俯仰動され、上部旋回体6が下部走行体4に対し旋回されることによって、土砂等の掘削作業を行うことができるようになっている。
【0013】
作業腕装置8は、上部旋回体6の前側に俯仰動自在に接続されたブーム10と、ブーム10の先端側に揺動自在に接続されたアーム12と、アーム12の先端側に回動自在に接続された作業具14と、ブーム10を俯仰動させる左右一対のブームシリンダ16(左側のみ図示されている)と、アーム12を揺動させるアームシリンダ18と、作業具14を回動させる作業具シリンダ20とから大略構成されている。
【0014】
上部旋回体6は骨組み構造体をなす旋回フレーム22を備え、旋回フレーム22上には、運転員が搭乗するキャブ24と、エンジンやエンジンの冷却水を冷却するための熱交換器等の各種機器が収容された機器収容室26と、作業腕装置8に対して重量バランスをとるカウンタウエイト28と、燃料を貯留する燃料タンク(図示されていない)と、作動油を貯留する作動油タンク(図示されていない)等が配設されている。これらの配設箇所については、キャブ24は旋回フレーム22の左前側に配設され、機器収容室26はキャブ24の後方に配設され、カウンタウエイト28は旋回フレーム22の後端に配設され、燃料タンク及び作動油タンクは旋回フレーム22の右側に配設されている。尚、本明細書の説明で用いられている前後方向及び幅方向は、図1中のキャブ24内に搭乗した運転員から見た前後方向及び幅方向である。
【0015】
図2を参照して説明する。旋回フレーム22は、底板30と、底板30上に立設され且つ幅方向に間隔をおいて前後方向に延びる左右一対の縦板32と、右側に位置する縦板32の外面から右方向に延出する複数の右サポート部材34と、左側に位置する縦板32の外面から左方向に延出する複数の左サポート部材36と、複数の右サポート部材34の延出端の各々に接続され且つ前後方向に延びる右スカート板38と、複数の左サポート部材36の延出端の各々に接続され且つ前後方向に延びる左スカート板40とを備えている。
【0016】
底板30及び縦板32は、作業腕装置8等から大きな荷重が作用する構造部材であり、厚肉の鋼板から形成されている。底板30は、平板状に形成され、前後方向に延在している。縦板32は、三角形状に形成され、下端が底板30の上面に溶接により接合されている。各縦板32の頂部には、ブーム10の基端が連結ピンを介して接続される円形状のブーム連結ピン穴32aが形成されている。又、各縦板32の前端には、ブームシリンダ16の基端が連結ピンを介して接続される円形状のブームシリンダ連結ピン穴32bが形成されている。
【0017】
縦板32間の前側には、鋼板から四角形状に形成された傾斜板42が配設されている。傾斜板42は、縦板32の上端に略沿って傾斜して配設され、幅方向両端部が縦板32の内面に、下端が底板30の上面に、夫々、溶接により接合されている。傾斜板42の下側には、ブームシリンダ16に接続される油圧配管(図示されていない)等が挿通される四角形状の開口42aが形成されている。又、各縦板32の後側には、エンジンが取付けられるエンジンマウント44が前後方向に間隔をおいて2個ずつ配設され、更にその後側には、カウンタウエイト28が取付けられるカウンタウエイトブラケット46が配設されている。
【0018】
複数の右サポート部材34及び左サポート部材36は、キャブ24、熱交換器、燃料タンク及び作動油タンク等を支持する部材である。複数の右サポート部材34及び複数の左サポート部材36は、平板状の鋼板、幅方向の断面形状がL字状に屈曲された鋼板、幅方向の断面形状がコ字状に屈曲された鋼板、又はこれらの組合せから形成されている。右スカート板38及び左スカート板40は、旋回フレーム22の幅方向外縁をなす化粧部材であり、上下方向両端部の夫々が幅方向内方に向かって屈曲された薄肉の鋼板から形成されている。
【0019】
図示された実施形態においては、キャブ24が旋回フレーム22の左前側に配設されており、複数の左サポート部材36は、キャブ24の前側を支持する前側キャブサポート36aと、キャブ24の後側を支持する後側キャブサポート36bとを含む。
【0020】
図2と共に図3を参照して説明する。前側キャブサポート36aは、幅方向の断面形状がL字状に屈曲された鋼板から形成され前面部48a及び前面部48aの下端から後方に延びる底面部48bからなる前板48と、前板48の前面部48aの上端に溶接により接続された上板50とを有している。前板48の幅方向内側端部は底板30の上面前端に接続された基端から前方に延出する接続部材52の延出端に、前板48の幅方向外側端部は左スカート板40の内面前端に、夫々、溶接により接合されている。上板50は、実質上水平に延在し、幅方向両端部の夫々に前後方向の幅が拡幅された拡幅部50aを有している。各拡幅部50aには円形状の前側防振マウント取付穴50b(幅方向外側のみ図示されている)が形成され、各前側防振マウント取付穴50bにはキャブ24の前側を弾性的に支持する前側防振マウント54(幅方向内側のみ図示されている)が配設されている。各拡幅部50aの後側は下方に向かって屈曲されて前板48の底面部48bの上面に溶接により接合されている。又、上板50の幅方向内側端部は接続部材52の延出端に、上板50の幅方向外側端部は左スカート板40の内面前端に、夫々、溶接により接合されている。
【0021】
尚、上記のとおりの記載及び図面を参照することによって明確に理解されるとおり、前側キャブサポート36aの幅方向内側とは作業腕装置8側のことであり、前側キャブサポート36aの幅方向外側とは上部旋回体6の外縁側のことである。図示された実施形態においてはキャブ24が上部旋回体6の左側に配設されているため、前側キャブサポート36aの幅方向内側は前側キャブサポート36aの右側となり、前側キャブサポート36aの幅方向外側は前側キャブサポート36aの左側となる。一方、図示された実施形態とは逆にキャブが上部旋回体の右側に配設される場合、前側キャブサポートの幅方向内側は前側キャブサポートの左側となり、前側キャブサポートの幅方向外側は前側キャブサポートの右側となる。又、幅方向内側及び幅方向外側については、後側キャブサポート36bや後述するキャブ24のフレーム構造体70においても同様である。
【0022】
後側キャブサポート36bは、前後方向に間隔をおいて配設され且つ幅方向に延びる前面板56及び背面板58、前面板56の上端と背面板58の上端とに接続され且つ幅方向に延びる天面板60、並びに前面板56の下端と背面板58の下端とに接続され且つ左右方向に延びる底面板62を有している。
【0023】
図示された実施形態においては、前面板56及び天面板60は幅方向の断面形状がL字状に屈曲された1枚の鋼板から形成され、前面板56の上端と天面板60の前端とが連続している。天面板60は、実質上水平に延在し、幅方向両端部の夫々に前後方向の幅が拡幅された拡幅部60aを有している。各拡幅部60aには円形状の後側防振マウント取付穴60b(幅方向外側のみ図示されている)が形成され、各後側防振マウント取付穴60bにはキャブ24の後側を弾性的に支持する後側防振マウント64(幅方向内側のみ図示されている)が配設されている。又、幅方向内側に位置する拡幅部60aには、後側防振マウント64よりも更に幅方向内側において、鋼板から四角形状に形成された低減片66が溶接により接合されている。低減片66の形状は四角形状に限定されず、円形状、楕円形状又は他の多角形状等であってもよい。低減片66は後述するキャブ24の後内支柱76の下方に位置しているのが好適である(図5参照)。各拡幅部60aの後側は下方に向かって屈曲されて底板30及び底面板62の上面に溶接により接合されている。前面板56の下端は底板30及び底面板62の上面に、前面板56及び天面板60の幅方向内側端部は左側に位置する縦板32の外面に、前面板56及び天面板60の幅方向外側端部は左スカート板40の内面に、夫々、溶接により接合されている。尚、前面板56の下端と底板30の上面とは必ずしも溶接により接合されていることを要しない。
【0024】
背面板58は、上下方向の断面がL字状に屈曲された鋼板から形成され、幅方向に延びる背面部58aと、背面部58aの幅方向内側端部から後方に延出する延出部58bとを有している。背面板58は、背面部58aが天面板60の拡幅部60a間に位置する部分の後端に沿って、且つ延出部58bが天面板60の幅方向内側に位置する拡幅部60aの幅方向外側端部に沿って、配設されている。背面部58aの上端、並びに延出部58bの上端及び延出端は天面板60に、背面部58a及び延出部58bの下端は底板30及び底面板62の上面に、背面部58aの幅方向外側端部は左スカート板40の内面に、夫々、溶接により接合されている。底面板62は、鋼板から四角形状に形成され、幅方向内側端部が底板30の幅方向外側端部に、幅方向外側端部が左スカート板40の内面に、夫々、溶接により接合されている。
【0025】
図4を参照して説明する。キャブ24は、鋼板から四角形状に形成された床板68上に鋼管から形成された複数の支柱、上枠及び下枠からなるフレーム構造体70が接続されている。フレーム構造体70の支柱は、床板68前部の幅方向内側に立設された前内支柱72、床板68前部の幅方向外側に立設された前外支柱74、床板68後部の幅方向内側に立設された後内支柱76、床板68後部の幅方向外側に立設された後外支柱78、及び前外支柱74と後外支柱78との間に立設された中外支柱80から構成されている。前内支柱72及び前外支柱74は、床板68の前縁よりも前側に位置している。一方、後内支柱76、後外支柱78及び中外支柱80は、床板68の外縁よりも内側、即ち床板68の上方、に位置している。
【0026】
フレーム構造体70の上枠は、前内支柱72の上部と前外支柱74の上部とを連結する前上枠82、後内支柱76の上部と後外支柱78の上部とを連結する後上枠84、前内支柱72の上部と後内支柱76の上部とを連結する内上枠86、及び前外支柱74の上部と後外支柱78の上部と中外支柱80の上部とを連結する外上枠88から構成されている。又、フレーム構造体70の下枠は、前内支柱72の下部と前外支柱74の下部とを連結する前下枠90、後内支柱76の下部と後外支柱78の下部とを連結する後下枠92、前内支柱72の下部と後内支柱76の下部とを連結する内下枠94、及び前外支柱74の下部と後外支柱78の下部と中外支柱80の下部とを連結する外下枠96から構成されている。各支柱、各上枠及び各下枠は互いに溶接により接合されている。尚、フレーム構造体70は、上述した各支柱、各上枠及び各下枠のほか、任意の方向及び箇所に他の支柱や枠材又は板材等が設けられていてもよい。
【0027】
キャブ24は、図1に示すとおり、フレーム構造体70の前面、背面、両側面及び天面が窓、ドア及びパネル等によって覆われている。そして、キャブ24の床板68の前側は、各前側防振マウント54を介して前側キャブサポート36a上に弾性的に支持され、キャブ24の床板68の後側は、各後側防振マウント64を介して後側キャブサポート36b上に弾性的に支持されている。図5に示すとおり、床板68の下面と前側キャブサポート36aの上面及び後側キャブサポート36bの上面との間には間隙Gが存在し、キャブ24に加わる振動は各防振マウント54,64によって低減されている。
【0028】
上述したとおりの、図1から図5までに示された油圧ショベル2の作用を説明する。油圧ショベル2が転倒し、キャブ24の左側面が地面に接触した場合、キャブ24には幅方向外側から幅方向内側に向かって外力が作用することとなる。この場合、キャブ24の一部が旋回フレーム22や作業腕装置8等と当接することによって外力を受承することとなるが、床板68の下面と後側キャブサポート36bの上面とについては、両者間には間隙Gが存在するため、両者が当接するまで両者の部分においては外力を受承することができない。しかしながら、本発明に係る油圧ショベル2においては、幅方向内側に位置する後側防振マウント64よりも更に幅方向内側において、後側キャブサポート36bの天面板60の上面には低減片66が固定されており、床板68の下面と天面板60の上面との間隙Gは低減片66の厚さ分だけ低減されているため、低減片66が配設されていない場合と比較して両者が速やかに当接して外力を受承することができ、このような簡易な構成によってキャブ24の変位が抑制される。又、本発明に係る油圧ショベル2においては、低減片66が後内支柱76の下方に位置することから、キャブ24に外力が作用した場合にフレーム構造体70を構成する後内支柱76によって効果的に外力を受承するためキャブ24の変位が効果的に抑制される。
【0029】
尚、上記の実施例においては、低減片が後側キャブサポートの上面に固定されている例について説明を行ったが、低減片はキャブの床板の下面に固定されていてもよい。又、前側キャブサポートや後側キャブサポート等のサポート部材の構造については、実施例において説明した構造に限定されるものではなく、例えば、前面板、背面板、天面板及び底面板とから左右方向の断面が矩形である箱型構造のような構造であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
2:油圧ショベル(建設機械)
22:旋回フレーム
24:キャブ
34:右サポート部材
36:左サポート部材
36a:前側キャブサポート
36b:後側キャブサポート
54:前側防振マウント
64:後側防振マウント
66:低減片
68:床板
70:フレーム構造体
72:前内支柱
74:前外支柱
76:後内支柱
78:後外支柱
80:中外支柱
G:間隙
図1
図2
図3
図4
図5