特許第6557030号(P6557030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557030
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】非接着性湿気硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20190729BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20190729BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 183/00 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190729BHJP
   C09K 3/10 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08L33/06
   C08K5/31
   C09J183/00
   C09J11/06
   !C09K3/10 G
   !C09K3/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-55341(P2015-55341)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-175965(P2016-175965A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107000
【氏名又は名称】シャープ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】河原 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】永江 弘武
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−057563(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094276(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/111598(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/099858(WO,A1)
【文献】 特開2007−039568(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/114376(WO,A1)
【文献】 特開2015−048426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C09K 3/10−3/12
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に反応性ケイ素基を有するポリマー、硬化触媒としてグアニジン化合物、可塑剤、充填剤および脱水剤のみからなり、
両末端に反応性ケイ素基を有するポリマーが、オキシアルキレン単位構造または(メタ)アクリル酸エステル単位構造を主として含むポリマーであり;
可塑剤が、フタル酸アルキルエステル類、脂肪族カルボン酸アルキルエステル類、ペンタエリスリトールエステル、リン酸エステル類、エポキシ可塑剤、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび塩素化パラフィンからなるグループから選択される1種以上;
充填剤が、表面を脂肪酸または樹脂酸系有機物で表面処理した炭酸カルシウム、これを微粉末化した平均粒径1μm以下の膠質炭酸カルシウム、沈降法により製造した平均粒径1〜3μmの軽質炭酸カルシウムまたは平均粒径1〜20μmの重質炭酸カルシウムから選ばれる炭酸カルシウム、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末またはフリント粉末から選ばれる粉体状充填剤、および、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維またはポリエチレンファイバーから選ばれる繊維状充填剤からなるグループから選択される1種以上;
脱水剤がテトラメチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、およびこれらのメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物からなるグループから選択される1種以上、である
非接着性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記グアニジン化合物が、1−フェニルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、シアノグアニジン、フェニルビグアニド、1−o−トリルビグアニド、および1−(2−メチルフェニル)グアニジンから選択される少なくとも1種である、請求項1記載の非接着性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記反応性ケイ素基が以下の一般式(I)で表され、Rは炭素数1〜20のアルキル基、Xは水酸基または炭素数1〜6のアルコキシ基、aは1、2または3である、請求項1または2に記載の非接着性湿気硬化型樹脂組成物。
−SiR3−a (I)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接着性湿気硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基体に接着した被着体を、基体表面を破損することなく、かつ接着剤を基体表面に残留させることなく、容易に剥離できる非接着性樹脂組成物は、建築部材、電気電子部品、自動車部品、事務用品、生活用品等の種々の分野で接着剤やシーリング剤として使用されている。
【0003】
非接着性樹脂組成物には、例えば反応性ケイ素基を有するポリマーが用いられている。反応性ケイ素基を有するポリマーは、常温で湿気により硬化可能であり、硬化触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物が広く用いられている。しかし、近年、有機スズ化合物の毒性が指摘されていることから、より安全な硬化触媒が望まれている。例えば、特許文献1では、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン等のアミノシランを硬化触媒として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−514504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、硬化触媒にアミノシランを用いた樹脂組成物は、金属やガラスに強固に接着するため、剥離できないという問題がある。また、硬化性も十分ではないという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、有機スズ化合物を硬化触媒に用いることなく、金属やガラスから剥離可能で、硬化性に優れた非接着性湿気硬化型樹脂組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討した結果、反応性ケイ素基を有するポリマーの中でも反応性の高いポリマーに対して硬化触媒にグアニジン化合物を用いたところ、金属やガラスから剥離可能で硬化性に優れた樹脂組成物が得られることを見出して本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、両末端に反応性ケイ素基を有するポリマーと、硬化触媒としてグアニジン化合物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機スズ化合物を硬化触媒に用いていないので安全であり、金属やガラスから剥離可能で、硬化性に優れた非接着性湿気硬化型樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、両末端に反応性ケイ素基を有するポリマーと、硬化触媒としてグアニジン化合物を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に用いる両末端に反応性ケイ素基を有するポリマー(以下、両末端活性ポリマーという)とは、主鎖の両末端に反応性ケイ素基を有する重合体である。主鎖には、ポリオキシアルキレン系重合体又はビニル系重合体を用いることができる。
【0011】
ポリオキシアルキレン系重合体には、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CH(CH)CHO−、−CH(C)CHO−、−CHCHCHO−、及び−CHCHCHCHO−から選択された1種以上の繰り返し単位からなるものを用いることができる。好ましくは、−CHCH(CH)O−である。
【0012】
また、ビニル系重合体には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及びこれら重合体のいずれか2種以上を成分として含む共重合体等を挙げることができる。好ましくは、ポリイソブチレンまたはポリ(メタ)アクリレート類である。なお、本発明において、ポリ(メタ)アクリレート類とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを主として含む、単独重合体または共重合体を挙げることができる。ここで、「少なくとも1種のモノマーを主として含む」とは、少なくとも1種のモノマーを50モル%以上、好ましくは70モル%以上含むことをいう。好ましくは(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体、より好ましくはアクリル酸エステルの単独重合体である。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等を挙げることができる。
【0013】
主鎖にポリオキシアルキレン系重合体を用いた場合、両末端活性ポリマーの分子量は500〜30000、好ましくは1000〜20000である。ここで、両末端活性ポリマーの分子量は、原料である水酸基末端ポリオキシアルキレン系重合体の水酸基価換算価分子量に基づいて算出した値である。
【0014】
また、主鎖にビニル系重合体を用いた場合、両末端活性ポリマーの数平均分子量は500〜30000、好ましくは1500〜15000である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0015】
本発明においては、両末端活性ポリマーは、その分子の両末端に反応性ケイ素基を有することが必要である。片末端のみに反応性ケイ素基を有するポリマーでは、硬化触媒にグアニジン化合物を用いた場合、金属やガラスに強固に接着し、剥離することができない。
【0016】
反応性ケイ素基は、例えば、以下の一般式(I)で表すことができる。
−SiR3−a (I)
ここで、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、Xは水酸基または炭素数1〜6のアルコキシ基、aは1、2または3である。
【0017】
例えば、反応性ケイ素基には、アルキルジアルコキシシリル基やトリアルコキシシリル基を用いることができる。アルキルジアルコキシシリル基は、アルキル基が炭素数1から6のアルキル基が好ましく、アルコキシ基が炭素数1から6のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はn−ヘキシルオキシ基が好ましく、より好ましくはメチルジメトキシシリル基又はメチルジエトキシシリル基、さらに好ましくはメチルジメトキシシリル基である。また、トリアルコキシシリル基は、アルコキシ基が炭素数1から6のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基が好ましく、より好ましくはトリメトキシシリル基である。
【0018】
オキシアルキレンに加水分解性ケイ素基を導入する方法としては、2官能の開始剤の存在下、環状エーテルを開環重合させてオキシアルキレンジオールを製造し、このジオールの水酸基に加水分解性ケイ素基を導入する方法等の公知の方法を用いることができる。また、ビニル系重合体に反応性ケイ素基を導入する方法としては、ビニル系モノマーと、反応性ケイ素基含有モノマーとを共重合する方法を用いることができる。
【0019】
また、本発明に用いる両末端活性ポリマーは、主鎖を構成する重合体と、主鎖末端の反応性ケイ素基とを結合する結合基を含んでいてもよい。その結合基としては、ウレタン結合基、置換基を含んでもよい尿素結合基、アミド結合基、第1級アミン結合基、第2級アミン結合基、第3アミン結合基等を挙げることができる。
【0020】
本発明に用いる両末端活性ポリマーの好ましい例としては、主鎖がポリオキシアルキレンであり、その主鎖にウレタン結合を介して両末端にメチルジメトキシシリル基を結合したポリマー、あるいは、(メタ)アクリル酸エステル(A)と反応性ケイ素基含有モノマー(B)とのB−A−Bブロック共重合体である。
【0021】
両末端活性ポリマーとして本発明に使用可能な重合体は、変性シリコーン樹脂として上市されている以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・ワッカーケミー社製 STP E−30(ジメトキシ(メチル)シリルメチルカルバメート末端ポリオキシアルキレン)
・カネカ社製 SAT580(トリメトキシシリル末端ポリオキシアルキレン系重合体)
・カネカ社製 MA451(トリメトキシシリル末端(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体)
【0022】
(硬化触媒)
本発明に用いる非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、硬化反応を促進させるための硬化触媒を含んでいる。硬化触媒にはグアニジン化合物を用いる。グアニジン化合物としては、1−フェニルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、シアノグアニジン、フェニルビグアニド、1−o−トリルビグアニド、1−(2−メチルフェニル)グアニジンから選択される少なくとも1種を用いることができる。好ましくは、1−フェニルグアニジン、または1−(2−メチルフェニル)グアニジン、より好ましくは、1−フェニルグアニジンである。
【0023】
硬化触媒は、剥離性および硬化性の観点から、組成物中の0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、より好ましくは0.2〜1.0重量%である。
【0024】
また、本発明に用いる湿気硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、脱水剤、可塑剤等の添加剤を添加することができる。
【0025】
(充填剤)
充填剤としては、公知の充填剤を使用することができる。具体例としては、表面を脂肪酸または樹脂酸系有機物で表面処理した炭酸カルシウム、さらにこれを微粉末化した平均粒径1μm以下の膠質炭酸カルシウム、沈降法により製造した平均粒径1〜3μmの軽質炭酸カルシウム、平均粒径1〜20μmの重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填剤、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填剤等を挙げることができる。これらの充填剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
充填剤の使用量はポリマーに対して1〜1000重量%であり、好ましくは10〜300重量%である。
【0027】
(可塑剤)
本発明に用いる非接着性湿気硬化型樹脂組成物には、硬度調整のために可塑剤を使用することもできる。可塑剤としては公知の可塑剤を使用することができる。具体例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルエステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステル類;ペンタエリスリトールエステル等;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;ポリプロピレングリコール;ポリエチレングリコール;塩素化パラフィン;等を挙げることができる。これらの可塑剤を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
(脱水剤)
本発明に用いる非接着性湿気硬化型樹脂組成物には、硬化物の物性や硬化性及び貯蔵安定性を調節する目的で加水分解性ケイ素化合物を任意に添加できる。具体例としては、テトラメチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどやこれらのメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。添加量はポリマー 100重量部に対し、0.5〜5重量部である。0.5重量よりも少ないと貯蔵安定性が悪くなる。また5重量部よりも多いとガラスに接着し易くなるからである。
【0029】
その他の添加剤として、チキソ性付与剤、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、顔料、各種の安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、オリゴエステルアクリレートのような表面改質を目的とした光硬化性化合物、粘度調整のための溶剤等を添加することもできる。しかし、湿気硬化性樹脂組成物に一般的に使用される各種のシランカップリング剤といった粘着付与剤は添加しない。粘着付与剤を用いると、被着体に対し強力に接着するようになるからである。
【0030】
また、粘度を調製する目的で溶剤を使用することもできる。溶剤としては、イソパラフィン系溶剤を用いることができる。イソパラフィン系溶剤としては、上市されている以下のものを用いることができるが、それに限定されるものではない。また、組成物中の溶剤の濃度は、1.0〜20.0重量%、好ましくは1.0〜10.0重量%である。
・安藤パラケミー株式会社製 アイソパーG
・安藤パラケミー株式会社製 アイソパーH
・安藤パラケミー株式会社製 アイソパーM
【0031】
また、本発明に用いる非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、環境条件下で硬化可能であり、加熱することにより又は水分を添加することにより硬化を促進させることができる。
【0032】
また、本発明に用いる非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、B型回転粘度計による回転数が2rpmと10rpmでの粘度比で規定される樹脂組成物のチキソ比が2.5以上であり、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であることが好ましい。好ましくは、チキソ比は2.5〜4.0である。ここで、チキソ比は、2rpm、10rpmでの粘度をそれぞれV2rpm、V10rpmとした場合、V2rpm/V10rpmで表すことができる。チキソ比が2.5以上で、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であると、液垂れを防止して、塗布された形状を維持することができる。
【0033】
なお、本発明に用いる非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムを支持体とし、その片面または両面に非接着性湿気硬化型樹脂組成物本発明を塗布した接着テープとしても用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における「%」は、特に断らない限り組成物中の「重量%」を表す。
【0035】
(製造方法)
表1に記載した配合比に基づき、ポリマー成分、可塑剤および充填剤を、遊星式攪拌機を用いて攪拌・混合した。得られた混合物を室温まで冷却した後、脱水剤と触媒を加えて攪拌・混合して、実施例および比較例の樹脂組成物を得た。用いた各成分は以下の通りである。
(ポリマー成分)
STP E−30:ワッカーケミー社製/両末端ジメトキシ(メチル)シリルメチルカルバメート−ポリオキシアルキレン
SAT580:カネカ社製/トリメトキシシリル末端ポリオキシアルキレン系重合体
MA451:カネカ社製/トリメトキシシリル末端(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体
SAT145:カネカ社製/片末端反応性ジメトキシシリル基含有ポリオキシプロピレン
NE−1000:綜研化学社製/片末端反応性トリメトキシシリル基含有ブチルアクリレート重合体
(可塑剤)
エクセノール3020:旭硝子社製/ポリオール
(充填剤)
MS700:丸尾カルシウム社製/軽質炭酸カルシウム
RX−300:日本アエロジル社製/ヒュームドシリカ
(脱水剤)
VTMO:エボニックデグサジャパン社製/ビニルトリメトキシシラン
(硬化触媒)
Z6094:東レ・ダウコーニング社製/3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
AMEO:デグサ社製/γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
1−フェニルグアニジン:日本カーバイド工業社製
【0036】
(試験方法)
製造した樹脂組成物について、以下の方法により剥離性、硬化性および貯蔵安定性を評価した。ここで、硬化性は、タック性とダンベル物性で評価した。
【0037】
剥離性:被着体に樹脂組成物をひも状に施工し、温度23℃、湿度50%の恒温室内で7日間養生後、手で剥離可能がどうか確認し、以下の基準で評価した。ここで、被着体には、ガラス板(エンジニアリングテストサービス社製)とアルミニウム板(TP技研社製)を用いた。
○:剥離可能
×:剥離不可
【0038】
タック性:温度23℃、湿度50%の恒温室内で、製造した樹脂組成物表面の皮張り時間を測定した。指触して、指に樹脂組成物が付着しない時間をタックフリータイムとした。
【0039】
ダンベル物性:樹脂組成物を厚さ3mmのシート状に成型し、完全硬化させた。その後、専用の金型(ダンベル型3号)で切り抜き、引張試験機(東洋精機社製型式ストログラフVE5D)を用いて行い、引張強度(N/mm)を測定した。表中、M50は50%引張強度(N/mm)を示し、Maxは最大引張強度(N/mm)を示す。また、破断伸びはダンベルが切れたときの伸び率(%)を示す。ショアーA硬度は、ダンベルの硬さを、23℃±2℃の温度で、A型硬度計を用い、JIS K6251に準拠して測定した値である。ダンベル物性では、切断時の伸びが大きい方が剥がしやすくなるのでよい。
【0040】
貯蔵安定性:
製造した樹脂組成物を紙管に入れて、乾燥機内で70℃で7日間保管し、増粘および硬化の有無を確認した。
○:増粘および硬化なし
×:増粘または硬化が発生した
【0041】
総合評価:
以下の基準で樹脂組成物を総合的に評価した。
○:剥離性および貯蔵安定に優れている。
×:剥離性または貯蔵安定の1つ以上が不十分である。
【0042】
【表1】
【0043】
(結果)
表1に結果を示す。両末端に反応性ケイ素基を有するポリマー成分と、硬化触媒に1−フェニルグアニジンを用いた実施例1〜5は、ガラスやアルミニウムから剥離することができた。なお、片末端のみに反応性ケイ素基を有するポリマーを用いた場合(比較例3)、硬化しないので、評価を行うことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の非接着性湿気硬化型樹脂組成物は、建築部材、電気電子部品、自動車部品、事務用品、生活用品等の種々の分野で、より安全で、剥離可能な接着剤やシーリング材として用いることができる。