【実施例】
【0013】
実施例に係る仕切り装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。
【0014】
図1に示されるように、本実施例の仕切り装置1は、工場やサーバールーム等において、安全の観点から人の立ち入りを防ぐために、機械周辺やサーバ周辺を区画するものである。この仕切り装置1は、床面から立設する複数の支柱2,2,…と、隣接する支柱2,2,…同士の間に渡って配設される仕切り部材3,3,…と、を備え、支柱2,2,…及び仕切り部材3,3,…が無端状に連設されることにより構成されている。
【0015】
また、仕切り装置1は、隣接する支柱2,2間に仕切り部材3が設けられず開放された出入口部4,4が形成されており、この出入口部4,4を介して仕切り装置1により区画された所定の空間内に出入りすることができるようになっている。また、仕切り装置1は、出入口部4,4をそれぞれ開閉する引き戸装置5と、開閉扉6と、が設けられており、引き戸装置5及び開閉扉6により、通常時には、出入口部4,4を閉塞しておくことができるようになっている。
【0016】
また、本実施例の仕切り装置1は、複数の直角部1A,1A,…と、2箇所の鈍角部1B,1Bと、を備えている。この直角部1Aは、支柱21を構成する四方の側面のうち、隣り合う2つの側面に対して、後述する仕切り部材33,33の面部がそれぞれ直交するように設置されることにより仕切り部材33,33で成す角度が直角となるように形成されている(
図1画面左側参照)。尚、直角部1A,1A,…は、略同一の構成であるため、
図1の画面左側の直角部1Aのみ説明し、他の直角部1A,1A,…の説明を省略する。
【0017】
鈍角部1Bは、支柱22の1つの面に対して、前記仕切り部材3の面部が直交するように設置されるとともに、支柱22における仕切り部材3が設置された面の反対側の面に対して、仕切り部材34が角度をつけて設置されることで形成されており、支柱22に設置された仕切り部材3と仕切り部材34とで成す角度(内角側)が鈍角となっている。尚、鈍角部1B,1Bは、略同一の構成であるため、一方の鈍角部1Bのみ説明し、他方の鈍角部1Bの説明を省略する。また、ここで言う支柱21,22は、通常の支柱2と同一形状のものであり、仕切り部材33,34は、通常の仕切り部材3と同一形状のものであるが、わかりやすく説明するために異なる符号を付している。
【0018】
尚、本実施例の仕切り装置1は、2箇所の鈍角部1B,1Bを備えている態様について説明したが、設けられる鈍角部1Bは1箇所または3箇所以上の複数箇所であってもよいし、仕切り装置の角部を全て鈍角部1Bで形成してもよい。さらに尚、仕切り装置は、区画するスペースの形状によっては、支柱に対して角度をつけて仕切り部材を設置することで、支柱に設置された2つの仕切り部材で成す角度が鋭角を成す鋭角部を形成してもよい。
【0019】
図2に示されるように、支柱2は、金属製であり、押出形成により形成される断面視略矩形状の中空の棒状部材であり、その上端開口部は図示しないキャップ等により塵埃が入り込まないように閉塞されている。また、支柱2は、その下端開口部に挿通される差し込み部(図示せず)を備えた脚部2bにより床面に立設しており、この脚部2bがアンカーボルトへのナットの固定等により床面に固定されている。また、
図2の拡大部に示されるように、支柱2は、該支柱2を構成する各側面の上端部及び下端部に埋込ナット部7,7がそれぞれ形成されており、これら埋込ナット部7,7,…には、雄ネジ材8が着脱可能となっている。この雄ネジ材8は、後述する仕切り部材3の通常時の設置態様に用いられる係合突起部である。
【0020】
また、仕切り部材3は、支柱2,2間を仕切る面部を構成する格子状部材31と、格子状部材31の上下及び側部の辺を囲う枠体32と、から成る。格子状部材31は、上下に延びる複数の線材311,311,…と、横方向に延びる複数の線材312,312,…と、を備え、線材311,311,…及び線材312,312,…間には、前後に連通する複数の連通部313,313,…が形成されており、連通部313,313,…を介して仕切り装置1で区切られた所定の空間内の様子を確認できるようになっている。また、面部が線材311,311,…及び線材312,312,…により形成される格子状部材31であることから、仕切り部材3を軽量化することができる。さらに、格子状部材31は、枠体32により補強されているため、仕切り部材3の面形状を保持することができる。尚、支柱2,2間を仕切る面部は、化粧板等のパネルであってもよい。
【0021】
枠体32は、その側縁である側部枠部材35,35を備え、側部枠部材35,35の上端側には、開口部分から上方に向けて傾斜する切欠き溝9,9(係合凹部)が形成されているとともに、側部枠部材35,35の下端部には、水平方向に延びる切欠き溝9’,9’(係合凹部)が形成されている。
【0022】
次に、仕切り部材3の通常時の設置態様について説明する。通常時とは、支柱2,2の対向面に仕切り部材3の面部(格子状部材31)が直交するように該仕切り部材3が直線的に取付けられる時のことを指す。支柱2,2同士の対向面には、それぞれの上下の埋込ナット部7,7,…に雄ネジ材8,8,…が取付けられている。仕切り部材3は、切欠き溝9,9を支柱2,2の上端側の雄ネジ材8,8に係止させるとともに、切欠き溝9’,9’を支柱2,2の下端側の雄ネジ材8,8に係止させ、各雄ネジ材8,8,…にナット部材10,10,…を締め込むことにより、支柱2,2間に設置される。すなわち、仕切り部材3は、支柱2,2間に着脱可能となっており、仕切り装置1における出入口部4の位置を容易に適宜変更することができる。
【0023】
また、仕切り部材3を切欠き溝9,9に沿って上方側から斜め下方側に移動させながら、支柱2,2の上端側の雄ネジ材8,8に係止させることにより、切欠き溝9’,9’の高さ位置が支柱2,2の下端側の雄ネジ材8,8の高さ位置と合致するようになっており、支柱2,2間に仕切り部材3を設置する作業を行いやすい。
【0024】
尚、図示しないが、直角部1Aを構成する前記した支柱21には、該支柱21における隣り合う2つの側面の各埋込ナット部7,7,…に雄ネジ材8,8,…が取付けられることにより、仕切り部材33,33が互いに直角となるように設置される。
【0025】
次に、
図3から
図5を用いて、鈍角部1Bを構成する支柱22に対して角度をつけて仕切り部材34が設置される設置態様について説明する。
【0026】
図3に示されるように、支柱22は、仕切り部材34側の側面に対して該仕切り部材34がその取付け角度を変更できるように設置されている。詳しくは、支柱22と仕切り部材34とは、上下の蝶番11,11(接続部材)により接続されており、これにより支柱22に対する仕切り部材34の取付け角度を変更できるようになっている。
【0027】
図4に示されるように、蝶番11は、一方側の蝶番片12と、他方側の蝶番片13と、蝶番片12及び蝶番片13を連結する上下に延びるボルト軸14と、蝶番片12に固定されたボルト軸14に螺合するナット15と、を備えており、蝶番片12と蝶番片13とがボルト軸14の軸を中心として相対的に揺動可能となっている。
【0028】
一方側の蝶番片12は、垂直部12aと、垂直部12aの上下端から同一方向に折れ曲がる水平部12b,12bと、から断面視コ字状に形成されている。この垂直部12aには、後述する固定ボルト17を挿通可能な貫通孔12cが形成されているとともに、水平部12b,12bには、他方側の蝶番片13側に張り出す張出部12d,12dがそれぞれ形成されている。この張出部12d,12dには、ボルト軸14を挿通可能な孔12e,12e(片方のみ図示)が形成されているとともに、上方側の張出部12dには、その上面側にナット15が固着されており、ナット15の内周の雌ネジ部と孔12eとが連続するようになっている。
【0029】
他方側の蝶番片13は、垂直部13aと、垂直部13aの一方側の蝶番片12側に設けられる筒状部13bと、から形成されており、この筒状部13bは、蝶番片12の張出部12d,12d間に配置されるようになっている。垂直部13aの片面側には、外周面に雄ネジが形成されたネジ突起部16が設けられている。
【0030】
一方側の蝶番片12と他方側の蝶番片13とは、張出部12d,12dと筒状部13bとにボルト軸14が下方から挿通され、ボルト軸14の先端がナット15に螺合されている。ボルト軸14とナット15が緩く螺合されている状態にあっては、一方側の蝶番片12及びボルト軸14と、他方側の蝶番片13とが相対的に揺動可能となっている。また、ボルト軸14とナット15がきつく螺合された状態にあっては、ボルト軸14とナット15により張出部12d,12dが変形され、その変形された張出部12d,12dが筒状部13bを上下から締め付けるように作用することにより、一方側の蝶番片12と他方側の蝶番片13との相対的な揺動を防止される。すなわち、ボルト軸14及びナット15は、一方側の蝶番片12と他方側の蝶番片13とを所定の角度で固定する固定手段として機能している。
【0031】
図3に示されるように、蝶番11,11は、支柱22における鈍角部1Bの内角側の側面に設けられた埋込ナット部7,7(ここでは図示せず)に対し、固定ボルト17,17で一方側の蝶番片12,12が固定されることにより取付けられている。また、他方側の蝶番片13,13のネジ突起部16,16には、切欠き溝9及び切欠き溝9’が係止されており、ネジ突起部16,16にナット部材10,10,…を締め込むことにより、蝶番片13,13に仕切り部材34が固定的に接続されている。すなわち、ネジ突起部16,16は、支柱22に対して角度をつけて仕切り部材34を設置する設置態様に用いられる係合突起部として機能しており、このネジ突起部16,16は、支柱22に対し蝶番11,11を介して取付けられている。
【0032】
このように、蝶番11,11にネジ突起部16,16が設けられていることにより、支柱22に対して角度をつけて設置する仕切り部材34の切欠き溝9及び切欠き溝9’をネジ突起部16,16に係合させて当該仕切り部材34を支柱22に設置することが可能である。すなわち、前述した仕切り部材3の通常時の設置態様と、支柱22に対して角度をつけて仕切り部材34を設置する態様と、が共通化されることとなり、設置態様ごとに別々の取付け手段を用意する必要が無く、鈍角部1Bを構成する仕切り部材3,34の設置作業が簡便である。
【0033】
また、上記のように仕切り部材34の片側の側縁を蝶番11,11により支柱22に接続した状態で、ボルト軸14とナット15との緊締を緩めた状態にすると、支柱に固定された一方側の蝶番片12及びボルト軸14に対して他方側の蝶番片13が揺動できるようになる。つまり仕切り部材34が支柱22に対して揺動するようになり、支柱22に対する仕切り部材34の前記取付け角度の調整を行うことができるため、仕切り部材34の設置作業、特に仕切り装置1の新設作業が容易である(
図5参照)。
【0034】
また、ボルト軸14とナット15とをきつく緊締すると、支柱22に対する仕切り部材34の前記取付け角度が決定するため、例えば、機械の搬入の際や新しい仕切り部材に交換する際等に、その都度一方側の蝶番片12と他方側の蝶番片13との角度を調整する必要が無く、仕切り部材34を着脱する作業が容易となる。
【0035】
また、蝶番11は、一方の蝶番片12が、その支柱22における該支柱22と仕切り部材34とで成す内角側の面に固定されているため、支柱22と仕切り部材34の隙間に他方の蝶番片13のみが存在することとなり、当該隙間を小さくして仕切り装置1をコンパクトにできる。尚、一方の蝶番片12が支柱22における該支柱22と仕切り部材34とで成す外角側の面に固定されていても、上記と同様の効果が得られる。
【0036】
また、仕切り部材3の通常時の設置態様に用いる埋込ナット部7,7を利用して蝶番11,11が支柱22に固定されるため、仕切り部材34の切欠き溝9,9’に対するネジ突起部16,16の高さ位置の位置決めが容易である。
【0037】
尚、前記実施例では、蝶番11により、支柱22に対して仕切り部材34を取付けていたが、例えば、内角が所定の角度となるように屈曲して形成されたプレート状の接続部材を用い、当該接続部材の一端を支柱22に固定するとともに、当該接続部材の他端に設けられた係合突起部に仕切り部材34を取付けることで、支柱22に対する仕切り部材34の取付け角度を所定の角度で取付けるようになっていてもよい。さらに尚、内角の角度が異なる複数種類の接続部材を用意すれば、支柱22と仕切り部材34との設置に用いる接続部材を変更することで、支柱22に対する仕切り部材34の取付け角度を適宜変更することが可能となる。
【0038】
また、図示しないが接続部材の変形例として、次のようなものもある。この接続部材は、支柱22の一面を少なくとも左右方向に覆うように左右方向における断面が円弧状の板材が固定されており、その板材には円弧状に沿ってスリットが設けられ、そのスリットには、支柱22側から前記板材の外方に突出する係止ボルトが挿通されている。この係止ボルトは、スリットに沿って移動可能となっており、該係止ボルトにナットを締め付けることで前記板材を挟んでスリット上の所定位置で位置決めできるようになっている。したがって、係止ボルトをスリット上での位置を変更することにより、支柱22の前記一面に対する該係止ボルトの軸方向の向きが変更されるようになっており、係止ボルトに仕切り部材34を取付けることにより、支柱22に対する仕切り部材34の取付け角度を変更できる。
【0039】
尚、前記実施例では、蝶番11のボルト軸14及びナット15を、一方側の蝶番片12と他方側の蝶番片13とを所定の角度で固定する固定手段として説明したが、これに限られず、例えば、他方側の蝶番片の筒状部の側部にネジ孔を形成し、当該ネジ孔にネジを緊締することで、当該ネジがボルト軸14の周面を圧接し、支柱22に固定される一方側の蝶番片12及びボルト軸14に対して他方側の蝶番片13が揺動することを防止するようなもの等であってもよい。
【0040】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0041】
例えば、前記実施例では、係合突起部に係合される係合凹部を、切欠き溝9,9及び切欠き溝9’,9’として説明したが、これに限られず、仕切り部材の側縁に設けられるスリット等であってもよく、このスリットに係合突起部を挿通することで仕切り部材が支柱2,2間に設置される態様であってもよい。
【0042】
また、蝶番11は、支柱22の埋込ナット部7,7以外の位置に一方側の蝶番片12を溶接等により固着して取付けられてもよいが、ネジ突起部16,16の高さ位置の位置決めや設置のしやすさ等の観点から前記実施例のように、埋込ナット部7,7を利用して蝶番11,11が支柱22に固定される態様の方が好ましい。