(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る各実施の形態を詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
[実施の形態1]
まず、実施の形態1に係る防煙垂れ壁について説明する。
【0024】
(概要)
最初に、本実施の形態1に係る防煙垂れ壁の概要について説明する。この防煙垂れ壁は、天井の下方に防煙区画を形成するための防煙垂れ壁である。ここで、防煙区画とは、火災発生時等における煙の蔓延を防止する事を目的として、建築基準法により所定の床面積(例えば500平方メートル)毎に設置を義務付けられた防煙区画であるが、これに限定されず、任意の目的や法令に基づく防煙区画を対象とすることができる。
【0025】
次に、本実施の形態1に係る防煙垂れ壁1が設置される対象について説明する。
図1は、本実施の形態1に係る防煙垂れ壁1の正面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。
図3は、
図1のB−B断面図である。
図4は、
図1のC部の拡大図であって、
図4(a)は正面図、
図4(b)は平面図である。なお、以下の説明では、
図1から
図3のX方向を幅方向(X方向を右方、X´方向を左方)、Y方向を前後方向(Y方向を前方、Y´方向を後方)、Z方向(すなわち、X方向及びY方向に直交する方向)を高さ方向(Z方向を上方、Z´方向を下方)、と称する。
【0026】
これら
図1から
図4に示すように、防煙垂れ壁1は、概略的には、天井3から床4に向けてX−Z平面に沿って垂下するように形成されており、上端部が天井3の近傍に位置し、両側端部が壁部の近傍に位置するように配置されている。この防煙垂れ壁1の高さは任意であるが、例えば本実施の形態1においては50cm程度であるものとし、防煙垂れ壁1の下方には人が通行可能なスペースが形成される。ここで、防煙垂れ壁1の右方に位置する壁部を「右方壁部」5、防煙垂れ壁1の左方に位置する壁部を「左方壁部」6と必要に応じて称して説明する。なお、このような天井3、床4、右方壁部5、及び左方壁部6により囲繞された空間を「設置対象空間」2と称して以下では説明する。また、所定の位置を基準として、設置対象空間2における幅方向中央位置に近い側を「内側」、遠い側を「外側」と必要に応じて称して説明する。
【0027】
ここで、この防煙垂れ壁は任意の構造の天井3に対して設置する事ができるが、本実施の形態1に係る防煙垂れ壁1は、上記の
図1から
図4に示すように、天井3の下面に対して、ガラス保持具7を介して設置されている。このガラス保持具7とは、従来のガラス製の防煙垂れ壁の一部であって、ガラス板を天井3の下面に固定するための器具であり、吊り具7aによって天井3の上方に位置する骨材(図示省略)に対して取り付けられている。また、ガラス保持具7には支持部7bが形成されており、この支持部7bの上方に天井3が載置されることにより、天井3が支持部7bを介して吊り具7aによって支持されている。すなわち、本実施の形態1は、予め天井3の下面に取り付けられていた従来のガラス製の防煙垂れ壁を、本実施の形態1に係るシート製の防煙垂れ壁1に取り換えることを想定したものであって、特に本実施の形態1に係るシート製の防煙垂れ壁1は、ガラス製の防煙垂れ壁のガラス保持具7を天井3の下面から取り外すことなく天井3の下面に取り付けることが可能に構成されている。ただし、このような構造に限定されず、例えば天井3の下面に対して直接本実施の形態1に係る防煙垂れ壁1を固定しても構わない。
【0028】
(構成)
次に、防煙垂れ壁1の構成について説明する。
図1から
図4に示すように、この防煙垂れ壁1は、シート10、上レール20、縁部保持部30、カバー40を備えて構成されている。なお、防煙垂れ壁1は左右略対称に形成されているため、以下では左右のうち一方(特に左方)についてのみ注目して説明し、右方については左方と同様に構成することが可能であるものとして説明を省略する。
【0029】
(構成−シート)
シート10は、防煙区画を形成する防煙区画形成手段である。
図5は、シート10を示す図であって、
図5(a)は正面図、
図5(b)は右側面図である。具体的には、このシート10は、長方形の膜状体に形成されており、長手方向の長さは右方壁部5から左方壁部6に至る長さより若干短い長さとなるように形成され、短手方向の長さは約30cm〜100cm程度の長さとなるように形成されている。このシート10の素材は任意であるが、火災発生時にはシート10に高温の煙が当たるため不燃性の素材から形成することが望ましい。例えば、本実施の形態1においては、シート10を不燃性のグラスファイバー材から形成するものとして説明する。なお、シート10のX−Z平面に沿った側面を「主側面」と以下では必要に応じて称して説明する。
【0030】
ここで、
図5に示すように、シート10の上縁部には、シート10の幅方向に沿って複数の抜け止め具11が取り付けられている。
図6は、
図5(a)のA−A断面図である。この抜け止め具11は、シート10を天井3の下面に設置した際に、シート10の上縁部が上レール20から脱落してしまうことを防止するための抜け止め手段である。この抜け止め具11の具体的な数は任意であるが、本実施の形態1では、
図5に示すように幅方向に沿って5つ設けられているものとして説明する。また、各抜け止め具11の具体的な形状については任意であるが、例えば本実施の形態1においては、
図6に示すように一本の金属製の芯材を、両端部をシート10に挿通した状態で複数回折り曲げた形状に形成されている。ここで、上レール20には、シート10の上縁部における抜け止め具11より下方の部分を、シート10の一対の主側面の両側方から挟持する一対の挟持手段(後述する後折り返し22d、及び前折り返し27c)が設けられており、この挟持手段により抜け止め具11が上レール20から脱落することを防止しているが、このような挟持手段の具体的な構成については後述する。
【0031】
(構成−上レール)
上レール20は、シート10の上縁部を保持する上縁保持手段であって、天井3の下面にガラス保持具7を介して固定された上縁保持手段である。この上レール20は、右方壁部5から左方壁部6に至る幅よりも僅かに小さい幅となるように形成されており、このことにより上レール20と右方壁部5との相互間、及び上レール20と左方壁部6との相互間に、隙間が形成されるように配置される。ここで、
図3に示すように、この上レール20は、概略的に、後レール21、及び前レール26を備えて構成されている。
【0032】
(構成−上レール−後レール)
後レール21は、上レール20の後面を構成する部材である。
図7は、後レール21の左側部分を示す図であって、
図7(a)は正面図、
図7(b)は右側面図、
図7(c)は底面図である。この
図7に示すように、後レール21は、概略的に、後被覆部22、及びネジ受け部23を備えて構成されている。
【0033】
後被覆部22は、シート10の上縁部における後方を被覆する部分であって、側断面が略C字状となるように折り曲げられたアルミ製の板状体である。この後被覆部22のうち、天井3の下面に配置された際に鉛直に配置される部分を「後鉛直部」22a、水平に配置される上方の部分を「後水平上部」22b、水平に配置される下方の部分を「後水平下部」22cと必要に応じて称して説明する。
【0034】
後鉛直部22aは、シート10の上縁部を後方から保護する部分であって、後レール21における最も後方に位置する部分である。
後水平上部22bは、ガラス保持具7と当接することにより後レール21を、ガラス保持具7を介して天井3に固定するための部分であり、後レール21における最も上方に位置する部分である。この後水平上部22bには、後レール21を天井3の下面(より具体的には天井3の天井ボードの上方に配置されている骨材)に固定するための複数のネジ孔22eが設けられている。ここで、
図7(a)や
図7(c)においては壁部側の5つのネジ孔22eのみを図示しているが、実際には後水平上部22bの幅方向全長に渡って、所定の間隔でネジ孔22eが設けられている。ここで、この複数のネジ孔22eのうち最も外側(すなわち、最も左端)に位置するネジ孔22eは、後述するレール軸部31と当該後水平上部22bとを一体として天井3に固定するためのネジ孔であって、後述するレール軸部31のネジ孔31d、及び当該ネジ孔22eを順次介して天井3に至るネジが挿通される。また、他のネジ孔22eは、ネジ受け部23と当該後水平上部22bとを一体として天井3に固定するためのネジ孔であって、後述するネジ受け部23のネジ孔23b、及び当該ネジ孔22eを順次介して天井3に至るネジが挿通される。
後水平下部22cは、後レール21における最も下方に位置する部材であって、この後水平下部22cにおける前端部には、鉛直上方向に突出する後折り返し22dが設けられている。この後折り返し22dは、後述する前折り返し27cと共に上述した挟持手段を構成し、この後折り返し22dと後述する前折り返し27cとによってシート10を挟持することにより、シート10を上レール20に対して固定することが可能となる。
【0035】
ネジ受け部23は、上レール20と前レール26とを相互に接続するための部材であって、具体的には略直角に折り曲げられた板状体であり、後被覆部22よりも若干短い幅のアルミ製の板状体として形成されている。そして、一方の面が後水平上部22bに対して介装材24(後述する)を介して接合されることにより、他方の面が鉛直方向に沿って配置されている。なお、この後水平上部22bに対して接合される面には、幅方向に沿ってネジ孔22eと合致する間隔で複数のネジ孔23bが形成されている。なお、
図7(a)や
図7(c)においては壁部側の4つのネジ孔23bのみを図示している。そして、もう一方の鉛直方向に沿って配置された面には、後述する前鉛直部27aに設けられたネジ孔27dと対応する位置に複数のネジ孔23aが設けられている。なお、
図7(a)や
図7(c)においては壁部側の5つのネジ孔23aのみを図示している。これらのネジ孔23a、27dを相互に介してネジを挿通してネジ止めすることにより、後レール21と前レール26とを相互に接続することができる。
【0036】
ここで、介装材24とは、
図7(b)に示すように、ネジ受け部23と後水平上部22bとの相互間に配置された、ネジ受け部23の幅全長と同一幅、かつ後水平上部22bよりも若干短い前後長さの長板形状体であって、この介装材24によって、ネジ受け部23と後水平上部22bとの相互間には介装材24の厚みに対応する上下幅の溝部25が形成される。この介装材24は、上面において後水平上部22bに対して接合されており、下面においてネジ受け部23に対して接合されている。そして、介装材24には幅方向に沿ってネジ孔(図示省略)が形成されており、このネジ孔の間隔は後水平上部22bに設けられたネジ孔22eの間隔や、ネジ受け部23の水平面に設けられたネジ孔23bに合致する。
【0037】
(構成−上レール−前レール)
前レール26は、上レール20の前面を構成する部材である。
図8は、前レール26の左側部分を示す図であって、
図8(a)は正面図、
図8(b)は右側面図である。この
図8に示すように、前レール26は、概略的に2つの板状体である、前被覆部27、及び突起部28を備えて構成されている。
【0038】
前被覆部27は、シート10の上縁部における前方を被覆する部分であって、略直角に折り曲げられたアルミ製の長板形状体である。この前被覆部27のうち、天井3の下面に固定された際に鉛直に配置される部分を「前鉛直部」27a、水平に配置される部分を「前水平部」27bと必要に応じて称して説明する。
【0039】
前鉛直部27aは、シート10の上縁部を前方から保護する部分であって、前レール26における最も前方に位置する部分である。この前鉛直部27aには、幅方向に沿って複数(本実施の形態1においては、5つ)のネジ孔27dが設けられており、このネジ孔27d及びネジ受け部23に設けられたネジ孔23aを順次介してネジを挿通することにより、前レール26を後レール21に対して固定することができる。
前水平部27bは、前レール26における最も下方に位置する部材であって、この前水平部27bにおける後端部には鉛直上方向へ突出する前折り返し27cが設けられている。この前折り返し27cは、上述した後折り返し22dと共に上述した挟持手段を構成し、この前折り返し27cと上述した後折り返し22dとによってシート10を挟持することにより、シート10を上レール20に対して固定することが可能となる。そして、これらの後折り返し22dと前折り返し27cとの相互間の距離が、シート10の厚みよりも大きく、抜け止め具11の前後方向の全長よりも小さいために、抜け止め具11によってシート10の下方向への移動が抑止されてシート10の脱落を防止することができる。
【0040】
突起部28は、前鉛直部27aにおける上端部近傍に公知の方法により接合された板状体であって、略直角に折り曲げられたアルミ製の板状体である。
図8に示すように、突起部28は、一方の面が前鉛直部27aに対して接合されることによって、他方の面が水平方向に沿うように配置されている。ここで、
図9は、後レール21と前レール26の組み合わせを概略的に示す側面図であり、
図9(a)は組み合わせ前、
図9(b)は組み合わせ後を示す図である。このように、突起部28の上下幅は、溝部25の上下幅に対応し、突起部28を溝部25に嵌合させることにより、前レール26を後レール21に仮固定可能となっている。そして、このように仮固定させた状態において前鉛直部27aのネジ孔27d及びネジ受け部23のネジ孔23aを挿通するようにネジを挿通することにより、前レール26を後レール21に固定することが可能である。
【0041】
(構成−縁部保持部)
縁部保持部30は、シート10における垂下方向に対して直交する方向(すなわち、幅方向)の一対の縁部を保持する一対の縁部保持手段であって、天井3に対して取り付けられている。
図10は、縁部保持部30を示す図であって、
図10(a)は正面図、
図10(b)は右側面図、
図10(c)は平面図である。この
図10に示すように、縁部保持部30は、概略的に、レール軸部31、天板部32、固定側保持部33、可動側保持部34、及びシート挟持部35を備えて構成されている。
【0042】
(構成−縁部保持部−レール軸部)
レール軸部31は、固定側保持部33を取り付ける土台となる部分である。
図11は、レール軸部31を示す図であって、
図11(a)は平面図、
図11(b)は正面図、
図11(c)は右側面図、
図11(d)は背面図である。この
図11に示すように、レール軸部31は、断面形状が略C字状となるように折り曲げられて形成されたアルミ板であって、下方に開口面が位置するように天井3の下面に対して固定されている。なお、このように折り曲げられたレール軸部31の各部を以下では、上軸部31a、前軸部31b、及び後軸部31cと称して説明する。
【0043】
上軸部31aは、天井3に対して固定される部分であって、天井3に対して水平に配置される部分である。この上軸部31aには、上軸部31aを天井3に対して固定するための2つのネジ孔31dが幅方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられている。前軸部31bは、固定側保持部33をレール軸部31に固定するための土台となる部分であって、天井3に対して直交する向きに配置される部分である。この前軸部31bには、固定側保持部33を当該前軸部31bに固定するためのネジ孔31eが一箇所に設けられている。後軸部31cは、固定側保持部33を固定する土台となる部分であって、天井3に対して直交する向きに配置される部分である。この後軸部31cには、固定側保持部33を当該後軸部31cに固定するためのネジ孔31fが二箇所に設けられている。すなわち、固定側保持部33は、前軸部31bと後軸部31cとの相互間に配置され、前方及び後方からネジ止めされることにより、レール軸部31に対して固定される。
【0044】
(構成−縁部保持部−天板部)
天板部32は、縁部保持部30の上方を被覆する上方被覆手段であって、レール軸部31の幅方向における端部と、ガラス保持具7との相互間に介装される。
図12は、天板部32を示す図であって、
図12(a)は平面図、
図12(b)は正面図である。この
図12に示すように、天板部32は、矩形の板状体に形成されており、その略中央部分には、ネジ孔32aが設けられている。このネジ孔32aは、天板部32を天井3に固定するためのネジを挿通するための孔であって、レール軸部31の上軸部31aに形成された2つのネジ孔31dのうち左方に配置されたネジ孔31d、及び当該天板部32に形成されたネジ孔32aを順次介してネジを挿通することにより、レール軸部31と天板部32とを一体として天井3に固定することができる。
【0045】
(構成−縁部保持部−固定側保持部)
固定側保持部33は、レール軸部31に対して固定された固定側保持手段である。
図13は、固定側保持部33を示す図であって、
図13(a)は正面図、
図13(b)は右側面図、
図13(c)は平面図である。この
図13に示すように、固定側保持部33は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの固定側保持部33の各部を、基礎部33a、固定側突出片33b、突出先端部33c、及び下方支持部33dと称して説明する。
【0046】
基礎部33aは、レール軸部31に対して固定されるベースとなる部分であって、シート10に対して平行に(すなわち、X−Z平面に沿って)配置される部分である。この基礎部33aの上縁近傍には、幅方向に沿って2つのネジ孔33fが所定の間隔で設けられており、これらのネジ孔33fの間隔は、上述したレール軸部31の後軸部31cに設けられた2つのネジ孔31fの間隔に合致する。そして、基礎部33aを、レール軸部31の後軸部31cの後面に当接させた状態において、基礎部33aの後方から、基礎部33aのネジ孔33f、及びレール軸部31の後軸部31cに設けられたネジ孔31fを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、基礎部33aを後軸部31cに固定することができる。
【0047】
固定側突出片33bは、固定側保持部33と可動側保持部34との間隔を調整するための部分であって、基礎部33aの左側端部に形成されており、天井3の下面及びシート10の主側面に対して直交する方向に突出する(すなわち、基礎部33aの左側端部から前方に向けて突出する)部分である。ユーザが、この固定側突出片33bと後述する可動側突出片34bとの相互間の間隔を、万力等を用いて調整することにより、固定側保持部33と可動側保持部34との相互間の位置を調整することが可能となる。なお、この調整の具体的な手段については後述する。
【0048】
突出先端部33cは、固定側保持部33をレール軸部31に固定するための固定手段であり、かつカバー40を固定側保持部33に固定するための固定手段である。具体的には、突出先端部33cは、固定側突出片33bの先端における右方向に向けて直角に折り返された板状部である。ここで、この突出先端部33cには3つのネジ孔33g、33h、33iが設けられている。このうち1つのネジ孔33gは、固定側保持部33をレール軸部31に固定するためのネジ孔であり、具体的には、当該ネジ孔33g及びレール軸部31の前軸部31bに設けられたネジ孔31eを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、固定側保持部33をレール軸部31に固定することができる。また、残りの2つのネジ孔33h、33iは、カバー40を突出先端部33cに固定するためのネジ孔であり、具体的には、カバー40に設けられたネジ孔41d、41e(後述する)と、これら2つのネジ孔33h、33iを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、カバー40を突出先端部33cに固定することができる。また、この突出先端部33cの高さ方向中央部分には切欠き33eが形成されており、このことにより、固定側保持部33と可動側保持部34との間隔を調整する作業の施工性を向上させることが可能となる。なお、このような作業の詳細については後述する。
【0049】
下方支持部33dは、可動側保持部34を下方から支持するための部分であって、基礎部33aの下端部から前方に向けて直角に突出した部分である。この下方支持部33dの先端部(すなわち、最も前方に位置する端部)は、上方向に向けて直角に折り返されている。このように折り返しを形成することにより、可動側保持部34を下方支持部33dに載置した際に、可動側保持部34が前方に脱落してしまうことを防止でき、可動側保持部34を固定側保持部33にネジ止めする作業の施工性を向上させることが可能となる。なお、このような作業の詳細については後述する。
【0050】
(構成−縁部保持部−可動側保持部)
可動側保持部34は、固定側保持部33よりもシート10に近い位置に配置されてシート10の縁部を保持する可動側保持手段である。
図14は、可動側保持部34を示す図であって、
図14(a)は正面図、
図14(b)は左側面図、
図14(c)は平面図である。この
図14に示すように、可動側保持部34は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの可動側保持部34の各部を、基礎接続部34a、可動側突出片34b、シート固定部34c、及び摺動補佐部34dと称して説明する。
【0051】
基礎接続部34aは、可動側保持部34を固定側保持部33に対して接続するための部分であって、基礎部33aに対して平行に配置される。この基礎接続部34aには、高さ方向に沿って5つのネジ孔36a、36b、36c、36d、36eが形成されている。このうち、2つのネジ孔(上から二番目のネジ孔36bと、上から四番目のネジ孔36d)は、可動側保持部34と固定側保持部33とを仮接続するためのネジを挿通するための孔である。すなわち、可動側保持部34及び固定側保持部33を設置場所まで運搬する際にこれらが別個の部材として形成されていると運搬に手間を要するため、これらを仮接続することが望ましい。そこで、運搬時には、この2つのネジ孔36b、36dにネジを挿通して、固定側保持部33の基礎部33aに貫通させて仮接続することが可能である。さらに、このように仮接続を行うことにより、シート10に張力を付加させる作業を行う際においても作業を容易にすることが可能であるが、このような点については後述する。また、残りの3つのネジ孔(最も上のネジ孔36aと、上から三番目のネジ孔36cと、上から五番目のネジ孔36e)は、可動側保持部34と固定側保持部33とを本接続するためのネジを挿通するための孔である。すなわち、シート10を張った状態において、これら3つのネジ孔36a、36c、36eにネジを挿通して固定側保持部33の基礎部33aに貫通させることにより、可動側保持部34と固定側保持部33とを本接続することができる。
【0052】
可動側突出片34bは、固定側保持部33と可動側保持部34との間隔を調整するための部分であって、基礎接続部34aの左側端部に形成されており、天井3の下面及びシート10の主側面に対して直交する方向に突出する(すなわち、基礎接続部34aの左側端部から前方に向けて突出する)部分である。なお、この可動側突出片34bにおける上端部及び下端部には、可動側突出部と、突出先端部33cや当該突出先端部33cに形成されたネジ孔33hに挿通されたネジとが相互に接触しないようにするための上方切欠き部34e、及び可動側突出部と、突出先端部33cや当該突出先端部33cに形成されたネジ孔33iに挿通されたネジとが相互に接触しないようにするための下方切欠き部34fが形成されている。
【0053】
シート固定部34cは、可動側保持部34に対してシート10を固定するための部分であって、基礎接続部34aの右側端部から前方に突出した、平断面形状をコ字状とする部分である。このシート固定部34cの最も前方に位置する面には、高さ方向に沿って6つのネジ孔36fが形成されており、これらのネジ孔36fは、シート固定部34cに対してシート10を固定する際に用いられる。
【0054】
摺動補佐部34dは、可動側保持部34を固定側保持部33の基礎部33aに沿って平行に移動させるための部分であり、具体的には、シート固定部34cから右側方に突出しており、基礎接続部34aと同一平面上に形成された部分である。このように摺動補佐部34dが形成されていることにより、基礎接続部34a及び摺動補佐部34dを基礎部33aに当接させた状態において、可動側保持部34を左右方向に沿って一層円滑に摺動させることが可能となる。
【0055】
(構成−縁部保持部−シート挟持部)
シート挟持部35は、シート10を挟持するためのシート挟持手段である。
図15は、シート挟持部35を示す図であって、
図15(a)は正面図、
図15(b)は右側面図を示す図である。このように、シート挟持部35は、シート固定部34cと同一幅及び同一高さの縦長の板状体に形成されており、このシート挟持部35の板状面には、上述した可動側保持部34のシート固定部34cに形成されたネジ孔36fと対応する間隔で、高さ方向に沿って6つのネジ孔35aが形成されている。ここで、
図16は、シート固定部34cにシート10を固定した状態を示す平面図である。この
図16に示すように、シート固定部34cの前面にシート10の縁部を当接させ、さらに当該シート10の前方に当該シート挟持部35を当接させた状態でネジ孔35a、36fにネジを挿通することにより、シート固定部34cとシート挟持部35とによってシート10を挟持することができる。
【0056】
(構成−カバー)
カバー40は、可動側保持部34及び固定側保持部33を覆う外装手段である。
図17は、カバー40を示す図であって、
図17(a)は正面図、
図17(b)は左側面図、
図17(c)は右側面図、
図17(d)は平面図、
図17(e)は底面図である。
図18は、
図17のA−A断面図である。これら
図17及び
図18に示すように、カバー40は、前カバー41、後カバー42、下カバー43、閉塞部材44、及び閉塞部材固定部45を備えて構成されている。なお、
図17(a)及び
図17(b)においては閉塞部材44及び閉塞部材固定部45の図示を省略している。また、
図18には、カバー40の内部に収容された固定側保持部33及び可動側保持部34を併せて示している。なお、
図18においては、シート10を一点鎖線で図示している。
【0057】
(構成−カバー−前カバー)
前カバー41は、カバー40の前面を構成する部分である。
図19は、前カバー41を示す図であって、
図19(a)は正面図、
図19(b)は左側面図、
図19(c)は右側面図、
図19(d)は平面図である。この
図19に示すように、前カバー41は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの前カバー41の各部を、前外装部41a、右前外装部41b、左外装部41cと称して説明する。
【0058】
前外装部41aは、可動側保持部34及び固定側保持部33を前方から覆う部分であって、X−Z平面に沿って配置される。この前外装部41aには、前カバー41を固定側保持部33に対して固定するための2つのネジ孔41d、41eが設けられている。そして、当該2つのネジ孔41d、41eの前方から、固定側保持部33の突出先端部33cに形成されたネジ孔33h、33iを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、前カバー41を固定側保持部33に対して固定することができる。また、前外装部41aの下端部には、下カバー43を前カバー41に対して固定するためのリベットを挿通するための2つのリベット孔41fが形成されている。そして、当該2つのリベット孔41fの前方から、後述する下カバー43の底爪部43aに形成された2つのリベット孔43cを介してリベットを挿通してリベット止めすることにより、下カバー43を前カバー41に対して固定することができる。
【0059】
ここで、上述したネジ孔41d、41eのうち、下方のネジ孔41eは、幅方向に沿った長手方向を有する長孔に形成されている。すなわち、固定側保持部33は、その上端のみにおいてレール軸部31を介して天井3に固定されているため、シート10の張力が加わった場合には上方に比べて下方に一層大きな曲げモーメントが作用するため、下方が僅かに内側に撓むことが有る。このような場合には、固定側保持部33の突出先端部33cに形成されたネジ孔33iの位置が33hよりも相対的に内側に位置してしまうことになるが、このような場合においても、下方のネジ孔41eを幅方向に沿った長孔としているため、このネジ孔41eのいずれかの位置にネジ孔33iを対応させることが可能になり、ネジ孔41eからネジ孔33iを順次介してネジを挿通することが可能になる。
【0060】
ここで、このネジ孔41eの前方には、ネジ孔41eを覆うための長孔カバー46が取り付けられている。
図20は、長孔カバー46を示す図であって、
図20(a)は平面図、
図20(b)は、正面図である。この長孔カバー46は、具体的には、円環状の板状体として形成されており、中心部にはネジ孔46aが形成されている。そして、上述したように前カバー41を固定側保持部33に対して固定する際に、前外装部41aのネジ孔41eの前面に長孔カバー46を当接させた状態において、当該長孔カバー46のネジ孔46a、前外装部41aの長孔のネジ孔41e及び突出先端部33cのネジ孔33iを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、長孔カバー46、前カバー41、及び固定側保持部33を一体に接続することができる。この長孔カバー46の形状は、ネジ孔41eのいずれの位置にネジを挿通した場合においても、長孔カバー46によってネジ孔41eを前方から遮蔽することが可能な形状である限りにおいて任意である。このような長孔カバー46を、前カバー41における長孔の前面に取り付けられることにより、挿通されたネジが長孔のネジ孔41eの幅方向のいずれの端部に位置している場合であっても、前方からネジ孔41eを覆うことができ、カバー40の意匠性を向上させることが可能となる。
【0061】
右前外装部41bは、可動側保持部34及び固定側保持部33を右前方から覆う部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。この右前外装部41bの先端部は、カバー40の内側に向けて(すなわち、左方向に向けて)折り返されている。そして、当該折り返しの部分は、
図18に示すように、後述する右後外装部42bの折り返し部分と所定の間隔を隔てて配置され、このことにより、これらの部材の相互間にシート10が介在可能となっている。
【0062】
左外装部41cは、可動側保持部34及び固定側保持部33を左方から覆う部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。ここで、左外装部41cには、
図19(d)に示すように、平面視において凹部47が形成されており、この凹部47には、閉塞部材固定部45を固定するためのリベット孔47aが高さ方向に沿って複数(本実施の形態1では5つ)形成されている。また、この凹部47以外の部分であって、凹部47よりも後方に位置する部分には、前カバー41と後カバー42とを相互に接続するためのリベット孔41gが、高さ方向に沿って複数(本実施の形態1では3つ)形成されている。
【0063】
(構成−カバー−後カバー)
後カバー42は、カバー40の後面を構成する部分である。
図21は、後カバー42を示す図であって、
図21(a)は正面図、
図21(b)は左側面図、
図21(c)は右側面図、
図21(d)は平面図である。この
図21に示すように、後カバー42は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの後カバー42の各部を、後外装部42a、右後外装部42b、カバー接続部42cと称して説明する。
【0064】
後外装部42aは、可動側保持部34及び固定側保持部33を後方から覆う部分であって、X−Z平面に沿って配置される。この後外装部42aの下端部には、下カバー43を後カバー42に対して固定するためのリベットを挿通するための2つのリベット孔42dが形成されている。
【0065】
右後外装部42bは、可動側保持部34及び固定側保持部33を右後方から覆う部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。この右後外装部42bの先端部は、カバー40の内側に向けて(すなわち、左方向に向けて)折り返されている。そして、当該折り返しの部分は、
図18に示すように、上述した右前外装部41bの折り返し部分と所定の間隔を隔てて配置され、このことにより、これらの部材の相互間にシート10が介在可能となっている。
【0066】
カバー接続部42cは、前カバー41と後カバー42とを相互に接続するための部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。このカバー接続部42cには、前カバー41の左外装部41cに形成された3つのリベット孔41gと対応する位置に、3つのリベット孔42eが形成されており、これらのリベット孔41g、42eを介してリベットを挿通してリベット止めすることにより、前カバー41と後カバー42とを相互に接続することが可能となっている。
【0067】
(構成−カバー−下カバー)
下カバー43は、カバー40の下面を構成する部分である。
図22は、下カバー43を示す図であって、
図22(a)は正面図、
図22(b)は右側面図、
図22(c)は平面図、
図22(d)は底面図である。この
図22に示すように、下カバー43は、概略的に、底爪部43a、及び底外装部43bを相互に接続して構成されている。
【0068】
底爪部43aは、一枚の板状体を箱状に折り曲げて形成された部分であって、前カバー41と後カバー42との相互間に嵌め込まれている。具体的には、この底爪部43aにおける前方に位置する板状部には、前カバー41の前外装部41aに形成された2つのリベット孔41fと対応する位置に、2つのリベット孔43cが形成されており、この底爪部43aにおける後方に位置する板状部には、後カバー42の後外装部42aに形成された2つのリベット孔42dと対応する位置に、2つのリベット孔43dが形成されている。また、この底爪部43aにおける右側方に位置する板状体は、前方の部分と後方の部分に分割されており、これら各部分の相互間には、シート10を介在させることが可能な隙間が形成されている。また、この底爪部43aにおける下方に位置する板状体には、底爪部43aと底外装部43bとを相互に接続するためのリベットを挿通可能な2つのリベット孔43fが形成されている。
【0069】
底外装部43bは、可動側保持部34及び固定側保持部33を下方から覆う部分であって、概略的にX−Y平面に沿って配置される。具体的には、この底外装部43bは一枚の矩形の平板として形成されており、底外装部43bと底爪部43aとを相互に接続するためのリベットを挿通可能な2つのリベット孔43gが形成されている。
【0070】
(構成−カバー−閉塞部材)
閉塞部材44は、縁部保持部30と壁部との相互間の隙間を塞ぐための閉塞手段である。この縁部保持部30は、このように隙間を塞ぐことが可能な限りにおいて任意に構成することが可能であるが、本実施の形態1においては、縁部保持部30の高さ方向の長さと略同一の長さを有する矩形の弾性部材として形成されており、前カバー41の左外装部41cの凹部47と、閉塞部材固定部45との相互間に挟まれて配置されているものとして説明する。ここで、閉塞部材44の素材は任意であるが、この閉塞部材44には高温の煙が当たるため不燃性の素材にて形成されることが望ましい。
【0071】
(構成−カバー−閉塞部材固定部)
閉塞部材固定部45は、閉塞部材44を前カバー41に対して固定するための閉塞部材固定手段である。
図23は、閉塞部材固定部45を示す図であって、
図23(a)は左側面図、
図23(b)は平面図である。この
図23に示すように閉塞部材固定部45は、前カバー41の左外装部41cの凹部47と略同一の高さ及び前後長さを有する一枚の矩形平板として構成されており、長手方向に沿って複数(本実施の形態1においては5つ)のリベット孔45aが形成されている。ここで、このリベット孔45aは、前カバー41の左外装部41cの凹部47に形成されたリベット孔47aと対応する間隔で形成されている。
【0072】
(設置方法)
続いて、このように構成された防煙垂れ壁1の設置方法について説明する。まず、天井3の下面に、ガラス保持具7を介して後レール21を接続する。具体的には、後レール21をガラス保持具7の下面に当接させた状態において、ネジ受け部23のネジ孔23b、介装材24のネジ孔(図示省略)、後水平上部22bのネジ孔22e、及びガラス保持具7を順次介して天井3に対してネジを挿通してネジ止めすることにより接続を行う。なお、ネジ受け部23のネジ孔23b、介装材24のネジ孔と対応していないネジ孔22e(すなわち、後水平上部22bのネジ孔22eのうち最も外側に位置するネジ孔22e)については、このようなネジ止めを行わない。
【0073】
次に、右方壁部5の近傍の縁部保持部30(シート挟持部35を除く)と、左方壁部6の近傍の縁部保持部30(シート挟持部35を除く)を天井3に対して固定する。このような固定を行うために、まずは、レール軸部31、天板部32、固定側保持部33、及び可動側保持部34を用いて、縁部保持部30を一体に組み立てる。この組み立ての具体的な方法を以下に例示する。すなわち、初めに、固定側保持部33の基礎部33aに設けられた2つのネジ孔33fから、レール軸部31の後軸部31cに設けられた2つのネジ孔31fにネジを挿通してネジ止めすることにより、基礎部33aとレール軸部31とを接続する。続いて、突出先端部33cの上端部近傍に設けられたネジ孔33gから、レール軸部31の前軸部31bに設けられたネジ孔31eにネジを挿通してネジ止めすることにより、突出先端部33cとレール軸部31とを接続する。このように、レール軸部31の前方及び後方から挟み込むように、固定側保持部33を取り付けることにより、固定側保持部33をレール軸部31に対して安定的に取り付けることができる。なお、上述したように、固定側保持部33と可動側保持部34とは相互にネジ止めされて仮接続されている。また、レール軸部31の上面に対して天板部32を載置する。これにて、レール軸部31、天板部32、固定側保持部33、及び可動側保持部34の組み立てが完了し、
図10に示すような正面視略L字状の縁部保持部30を一体に構成することができる。
【0074】
そして、このように一体に構成した縁部保持部30を、後レール21の側方かつガラス保持具7の下面に対して前方から当接させる。この際には、レール軸部31における一部分を天板部32の下面に当接させたままの状態で、レール軸部31における他の部分を後水平上部22bに対して当接させる。このような状態において、上軸部31aにおける外側のネジ孔31d、及び天板部32のネジ孔32aを順次介してネジを挿通してネジ止めすると共に、上軸部31aにおける内側のネジ孔31d、及び後水平上部22bにおける最も外側のネジ孔22eを順次介してネジを挿通してネジ止めする。このようにして、
図10に示す正面視略L字状の縁部保持部30を、天井3の下面に対してガラス保持具7を介して取り付ける。なお、このように取り付けを終えた状態において、固定側保持部33の固定側突出片33bと壁部との相互間には一定の間隔(例えば、数センチ)の隙間が形成される。なお、右方壁部5の近傍の縁部保持部30(シート挟持部35を除く)と、左方壁部6の近傍の縁部保持部30(シート挟持部35を除く)とは、上述した方法により同様に取り付けを行うことができる。
【0075】
次に、上レール20に対してシート10を仮固定する。このような仮固定は以下のように行う。すなわち、まずはシート10の上縁部に所定の間隔で抜け止め具11を取り付ける。次に、後レール21の前方から前レール26を仮固定する。具体的には、前レール26の突起部28を後レール21の溝部25に嵌め込むことにより、後レール21に前レール26を係止させ、この状態において前レール26の前鉛直部27aに形成されたネジ孔27d、及び後レール21のネジ受け部23に形成されたネジ孔23aを順次介してネジを挿通して仮のネジ止めを行う。すなわち、この際の仮ネジ止めにおいてはネジを完全に締めずに、後レール21の後折り返し22dと前レール26の前折り返し27cの相互間に、シート10の厚みよりも大きく、抜け止め具11の前後幅よりも小さい隙間が形成される程度にネジを締める。
【0076】
そして、後レール21と前レール26の内部に抜け止め具11が位置するように、後折り返し22dと前折り返し27cの相互間に、後レール21及び前レール26の側方からシート10を摺動させることにより、後レール21及び前レール26の幅全域に渡ってシート10を配置する。ここで、シート10における後レール21の後折り返し22d及び前レール26の前折り返し27cの上方の位置には抜け止め具11が配置されるので、抜け止め具11によってシート10の下方向の移動が規制され、シート10が下方に脱落してしまう事を防止することが可能となる。
【0077】
これにて、上レール20に対するシート10の仮固定を完了する。なお、この状態においては、シート10は上レール20に対して幅方向に沿って摺動可能となっており、シート10に対して幅方向に沿った張力は未だ付加されていない。また、レール軸部31における内側の一部は、上レール20の内部(すなわち、後レール21と前レール26との相互間に形成された空間の内部)に収容されており、レール軸部31における外側の一部は、固定側保持部33や天板部32に対して取り付けられている。
【0078】
次に、シート10の左右の縁部を可動側保持部34に対して取り付ける。具体的には、まず、可動側保持部34のシート固定部34cの前面に、上レール20に取り付けられたシート10の縁部を当接させ、さらにそのシート10の前面にシート挟持部35を当接させて、シート固定部34cに形成されたネジ孔36fと、シート挟持部35に形成されたネジ孔35aとの位置が合致する位置で、シート挟持部35及びシート固定部34cをネジ止めして固定する。このようにシート挟持部35とシート固定部34cによって前後からシート10を挟み込んで固定することにより、シート10を強固に固定する事が可能となる。なお、シート10における左方壁部6の近傍の縁部と、右方壁部5の近傍の縁部とは上述した方法により同様に可動側保持部34に対して取り付けることができる。
【0079】
次に、右方壁部5の近傍の可動側保持部34及び左方壁部6の近傍の可動側保持部34を外側に引っ張ることにより、シート10に張力を付加する。具体的には、まずは、可動側保持部34と固定側保持部33とを仮止めするためのネジを外して、可動側保持部34を固定側保持部33の下方支持部33dの上方に載置する。そして、固定側保持部33の固定側突出片33bと、可動側支持部の可動側突出片34bとの相互間の間隔を調整する。この調整の具体的な方法は任意であるが、本実施の形態1においては、公知の万力を用いて、固定側保持部33の固定側突出片33bと、可動側支持部の可動側突出片34bとを挟み込んでこれらの間隔を狭めることにより調整を行う。なお、本実施の形態1においては、まずは左方壁部6の近傍の可動側保持部34を外側に引っ張ることによりシート10の張力を調節し、続いて右方壁部5の近傍の可動側保持部34を外側に引っ張ることによりシート10の張力を微調節するものとして説明するが、これに限らず左右逆の順序で行っても良いし、左右同時に行っても良い。
【0080】
次に、このようにシート10に所定の張力を付加した状態においてシート10を固定する。具体的には、まず、上述したように万力を用いてシート10に張力を付加した状態において、固定側保持部33の基礎部33aにおける、基礎接続部34aにおける本固定用のネジ孔36a、36c、36eと対応する位置に、ドリル等を用いて孔を空ける。そして、基礎接続部34aにおける本固定用のネジ孔36a、36c、36eから、当該ドリル等により形成した基礎部33aの孔に掛けて貫通するようにネジを挿通してネジ止めすることにより、可動側保持部34を固定側保持部33に対して固定する。なお、このようなドリル等を用いる方法に限らず、任意の方法により可動側保持部34を固定側保持部33に対して固定しても良く、例えば、ドリルを使用せずにタッピングネジやドリルビス等をネジ孔36a、36c、36eから基礎部33aに挿通させることにより固定を行っても良い。
【0081】
次に、上述したように仮ネジ止めしていた後レール21と前レール26とのネジを完全に締めることにより、後レール21と前レール26とを本固定する。このことにより、後レール21の後折り返し22dと前レール26の前折り返し27cによってシート10の上縁部が挟持されてシート10の上方を固定することができる。
【0082】
次に、可動側保持部34及び固定側保持部33に対してカバー40を取り付ける。具体的には、まずは前カバー41の左外装部41cに形成されたリベット孔41g、及び後カバー42のカバー接続部42cに形成されたリベット孔42eを順次介してリベットを挿通してリベット止めすることにより、前カバー41と後カバー42とを相互に接続する。そして、前カバー41の左外装部41cの凹部47に閉塞部材44を当接させた状態において、左外装部41cの凹部47と閉塞部材固定部45とによって閉塞部材44を挟持するように、閉塞部材44を閉塞部材固定部45に対してリベット止めして固定する。また、下カバー43の底爪部43aを取り付けて、前カバー41に形成されたリベット孔41fから底爪部43aに形成されたリベット孔43cにかけてリベットを挿通し、また後カバー42に形成されたリベット孔42dから底爪部43aに形成されたリベット孔43dにかけてリベットを挿通し、これらをリベット止めする。また、このように取り付けられた底爪部43aの下方に底外装部43bを当接させて、底外装部43bのリベット孔43gから底爪部43aのリベット孔43fにかけてリベットを挿通し、これらをリベット止めして固定する。
【0083】
このようにして前カバー41、後カバー42、下カバー43、閉塞部材44、及び閉塞部材固定部45を一体に接続した状態において、これら一体の部材を可動側保持部34及び固定側保持部33の下方から挿通し、これら一体の部材の上端部が天板部32に当接するまで上方に摺動させる。この際に、前カバー41の右前外装部41bと、後カバー42の右後外装部42bとの相互間の隙間にシート10を通すようにこれら一体の部材を摺動させる。
【0084】
そして、前カバー41の前外装部41aに形成されたネジ孔41d、及び固定側保持部33の突出先端部33cに形成されたネジ孔33hを順次介してネジを挿通してネジ止めすると共に、長孔カバー46に設けられたネジ孔46a、前カバー41の前外装部41aに形成されたネジ孔41e、及び固定側保持部33の突出先端部33cに形成されたネジ孔33iを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、これら一体の部材を固定側保持部33に対して取り付けることができる。この際に、固定側保持部33に対してはシート10の張力が付加されているため、ネジ孔33iはシート10を取り付ける前の位置よりも内側に位置していることが有るが、ネジ孔41eは長孔として形成されているためこのようなネジ孔33iの位置の移動に関わらず、ネジ孔41eからネジ孔33iにかけてネジを挿通することができる。また、このように長孔の前方に長孔カバー46が介装されるため、長孔を塞いで意匠性を向上させることが可能となる。
【0085】
このように、固定側保持部33や可動側保持部34を柱部に対して固定することなく防煙垂れ壁1を構築することができるので、地震時等における耐力を向上させることが可能であり、かつ、壁部に骨材を固定する手間や費用を削減することが可能となる。また、上述した各作業をいずれも一方向(本実施の形態1においては前方)から行うことが可能であり、施工性を向上させることが可能となる。
【0086】
(実施の形態1の効果)
このように、本実施の形態1によれば、縁部保持部30を壁部に取り付けることなくシート10を固定するので、縁部保持手段と壁部との干渉を防止することができ、縁部保持部30や上レール20の地震時の破損や落下を防止して耐力を向上させることが可能であると共に、壁部に縁部保持部30を固定するための骨材を形成する手間を省略でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0087】
また、縁部保持部30の少なくとも一方を、縁部保持部30よりもシート10から遠い位置に配置された壁部に対して接触しないように配置したので、縁部保持部30が壁部に干渉することを一層防止でき、縁部保持部30や上縁保持手段の地震時の耐力を一層向上させることが可能である。
【0088】
また、縁部保持部30と壁部との相互間の隙間を塞ぐための閉塞部材44を設けたので、当該隙間を介して煙が移動することを防止でき、縁部保持部30と壁部との干渉を防止しつつ防煙性能を向上させることが可能となる。
【0089】
また、既存のガラス製の防煙垂れ壁の構成部材であるガラス保持具7を介して、上縁保持手段を天井3に固定するので、ガラス保持具7を取り外すことなく上レール20を天井3に固定でき、ガラス製の防煙垂れ壁からシート製の防煙垂れ壁1への取り換えを極めて容易に行うことが可能となる。
【0090】
また、固定側突出片33bと、可動側突出片34bとの間隔を調整することにより、極めて容易に固定側保持部33と可動側保持部34との相互間の間隔を調整できるので、施工性をより一層向上させることが可能となる。
【0091】
また、抜け止め具11と後折り返し22d及び前折り返し27cとを備えるので、極めて容易な方法によりシート10の脱落を防止することができ、施工性を向上させることが可能となる。
【0092】
また、シート10を、不燃性のグラスファイバー材から形成するので、シート10の燃焼を防止でき、防煙性能を向上させることが可能となる。
【0093】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2に係る防煙垂れ壁について説明する。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0094】
(概要)
最初に、本実施の形態2に係る防煙垂れ壁の概要について説明する。
図24は、本実施の形態2に係る防煙垂れ壁100の正面図である。
図25は、
図24のA−A断面図である。
図26は、
図24のB−B断面図である。
図27は、
図24のC部の拡大図である。
図28は、
図27のD部の拡大図であって、
図28(a)は正面図、
図28(b)は平面図である。この防煙垂れ壁100は、実施の形態1と同様に、天井3、床4、右方壁部5、及び左方壁部6により囲繞された設置対象空間2に設置されている。
【0095】
ここで、この防煙垂れ壁100は任意の構造の天井3に対して設置する事ができるが、本実施の形態2に係る防煙垂れ壁100は、上記の
図24から
図28に示すように、実施の形態1に示すようなガラス保持具7(
図1から
図3参照)を介することなく、天井3の下面に対してドリルビス51fで直接固定されている。
【0096】
(構成)
次に、防煙垂れ壁100の構成について説明する。
図24から
図28に示すように、この防煙垂れ壁100は、シート10、上レール50、縁部保持部60、カバー70を備えて構成されている。なお、防煙垂れ壁100は左右略対称に形成されているため、以下では左右のうち一方(特に左方)についてのみ注目して説明し、右方については左方と同様に構成することが可能であるものとして説明を省略する。
【0097】
(構成−シート)
シート10は、防煙区画を形成する防煙区画形成手段である。ここで、実施の形態2に係るシート10には、実施の形態1のような抜け止め具11(
図5及び
図6参照)が取り付けられておらず、本実施の形態2においてはこの抜け止め具11を使用せずにシート10の取り付けを行う。なお、シート10の他の部分の構造については実施の形態1と略同様であるため、シート10に関する詳細な説明及び図示を省略する。
【0098】
(構成−上レール)
上レール50は、シート10の上縁部を保持する上縁保持手段である。この上レール50は、右方壁部5から左方壁部6に至る幅よりも僅かに小さい幅となるように形成されており、このことにより上レール50と右方壁部5との相互間、及び上レール50と左方壁部6との相互間に、隙間が形成されるように配置される。
【0099】
ここで、本実施の形態2においては、複数の上レール50を幅方向に沿って並設して、これらの各上レール50を、ジョイント部53により相互に一体に接続している。
図29は、ジョイント部53の近傍を示す図であって、
図29(a)は左側面図、
図29(b)は正面図である。
図30は、ジョイント部53を示す図であって、
図30(a)は正面図、
図30(b)は右側面図、
図30(c)は底面図である。これらの
図29及び
図30に示すように、ジョイント部53は、各上レール50の端部に跨るように下方から添え当てられて配置されている。そして、各ジョイント部53は、いずれもコの字状に折り曲げられて形成された長板部材として形成されており、ジョイント部53の上面には、幅方向に沿って2箇所にネジ孔53aが形成されている。そして、ジョイント部53の下方から、当該ネジ孔53aを介して、後述する後レール51における後水平上部51bを貫通し、天井3に至るようにドリルビス53bが挿通されることにより、各後レール51を一体に接続している。
【0100】
ここで、
図26に示すように、この上レール50は、概略的に、後レール51、及び前レール52を備えて構成されている。
【0101】
(構成−上レール−後レール)
後レール51は、上レール50の後面を構成する部材である。
図31は、後レール51を示す図であって、
図31(a)は正面図、
図31(b)は右側面図である。
【0102】
この
図31に示すように、後レール51は、シート10の上縁部における後方を被覆する部分であって、側断面が略C字状となるように形成されたアルミ製の板状体である。この後レール51のうち、天井3の下面に配置された際に鉛直に配置される部分を「後鉛直部」51a、水平に配置される上方の部分を「後水平上部」51b、水平に配置される下方の部分を「後水平下部」51cと必要に応じて称して説明する。
【0103】
後鉛直部51aは、シート10の上縁部を後方から保護する部分であって、後レール51における最も後方に位置する部分である。
後水平上部51bは、天井3と当接することにより後レール51を天井3に固定するための部分であり、後レール51における最も上方に位置する部分である。この後水平上部51bには、後レール51を天井3の下面(より具体的には天井3の天井ボードの上方に配置されている骨材)に固定するための複数のドリルビス51f(
図28等参照)が、幅方向全長に渡って所定の間隔で挿通される。なお、この後水平上部51bにネジ孔等は設けられておらず、当該後水平上部51b及び天井3を切削するようにドリルビス51fを打ち込むことにより、固定が行われる。また、この後水平上部51bの前端部には、鉛直下方向に突出する上部折り返し51dが設けられている。この上部折り返し51dは、後述する前鉛直部52aと相互に当接する部分であって、後述する前鉛直部52aから当該上部折り返し51dに至るようにドリルビス52d(後述する
図33参照)が打ち込まれることにより、後レール51と前レール52とが相互に接続される。
後水平下部51cは、後レール51における最も下方に位置する部材であって、この後水平下部51cにおける前端部には、鉛直上方向に突出する下部折り返し51eが設けられている。この下部折り返し51eは、シート10が取り付けられる土台となる部分であって、シート10から下部折り返し51eに至るようにドリルビス52e(後述する
図33参照)が打ち込まれることにより、シート10が固定されている。
【0104】
(構成−上レール−前レール)
前レール52は、上レール50の前面を構成する部材である。
図32は、前レール52を示す図であって、
図32(a)は正面図、
図32(b)は右側面図である。
【0105】
この
図32に示すように、前レール52は、シート10の上縁部における前方を被覆する部分であって、側断面が略L字状となるように形成されたアルミ製の長板形状体である。この前被覆部27のうち、天井3の下面に固定された際に鉛直に配置される部分を「前鉛直部」52a、水平に配置される部分を「前水平部」52bと必要に応じて称して説明する。
【0106】
前鉛直部52aは、シート10の上縁部を前方から保護する部分であって、前レール52における最も前方に位置する部分である。この前鉛直部52aには、幅方向に沿って複数(本実施の形態2においては、2つ)のネジ孔52cが設けられており、このネジ孔52c及び上述した上部折り返し51dを順次介してドリルビス52d(後述する
図33参照)を挿通することにより、前レール52を後レール51に対して固定することができる。
前水平部52bは、前レール52における最も下方に位置する部材であって、この前水平部52bと、上述した後レール51の下部折り返し51eとの相互間にシート10が介在されている。
【0107】
ここで、
図33は、後レール51と前レール52の組み合わせを概略的に示す側面図であり、
図33(a)は組み合わせ前、
図33(b)は組み合わせ後を示す図である。この
図33に示すように、後レール51の下部折り返し51eに対して両面テープ(図示省略)でシート10が固定され、このシート10の前方からドリルビス52eが打ち込まれて後レール51に固定されている。そして、後レール51の前方から前レール52を被せて、前レール52の前鉛直部52aと後レール51の上部折り返し51dとを相互に当接させた状態において、ドリルビス52dが打ち込まれることにより、後レール51と前レール52とが相互に接合されている。なお、このような後レール51と前レール52との接合方法の詳細については後述する。
【0108】
(構成−縁部保持部)
図24から
図28に戻り、縁部保持部60は、シート10における垂下方向に対して直交する方向(すなわち、幅方向)の一対の縁部を保持する一対の縁部保持手段であって、天井3に対して取り付けられている。
図34は、縁部保持部60を示す図であって、
図34(a)は正面図、
図34(b)は右側面図、
図34(c)は平面図である。
図35は、後述する可動側保持部65、後シート挟持部66、及び前シート挟持部67を取り外した状態の縁部保持部60を示す図であって、
図35(a)は正面図、
図35(b)は右側面図、
図35(c)は平面図である。これらの
図34、及び
図35に示すように、縁部保持部60は、概略的に、レール軸部61、外側天板部62、内側天板部63、固定側保持部64、可動側保持部65、後シート挟持部66、及び前シート挟持部67を備えて構成されている。
【0109】
(構成−縁部保持部−レール軸部)
レール軸部61は、固定側保持部64を取り付ける土台となる部分である。
図36は、レール軸部61を示す図であって、
図36(a)は平面図、
図36(b)は正面図、
図36(c)は右側面図である。この
図36に示すように、レール軸部61は、断面形状が略C字状となるように折り曲げられて形成されたスチール板であって、下方に開口面が位置するように天井3の下面に対して固定されたスチール板と、当該スチール板の端部における前面に溶接されたスペーサー61eとを備えている。なお、このようにスチール板を折り曲げて形成されたレール軸部61の各部を以下では、上軸部61a、前軸部61b、及び後軸部61cと称して説明する。
【0110】
上軸部61aは、天井3に対して固定される部分であって、天井3に対して水平に配置される部分である。この上軸部61aには、上軸部61aを天井3に対して固定するための複数(本実施の形態2では4つ)のネジ孔61dが幅方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられている。前軸部61bは、レール軸部61の前面を形成する部分であって、天井3に対して直交する向きに配置される部分である。後軸部61cは、レール軸部61の後面を形成する部分であって、天井3に対して直交する向きに配置される部分である。スペーサー61eは、レール軸部61と固定側保持部64との相互間に介装される直方体形状の部材であって、前軸部61bの幅方向の端部における前面に対して溶接されている。このようにスペーサー61eを設けることで、このスペーサー61eとレール軸部61とを合わせた厚み(奥行き)を、後述する
図39に示す固定側保持部64の基礎部64aと突出先端部64cとの隙間の厚み(奥行き)に合わせる事ができる。そして、レール軸部61及びスペーサー61eは、固定側保持部64の基礎部64aと突出先端部64cに挟持された状態で、固定側保持部64に対して溶接されて固定されている。
【0111】
(構成−縁部保持部−外側天板部)
図34及び
図35に戻り、外側天板部62は、縁部保持部60の端部近傍の上方を被覆する上方被覆手段である。この外側天板部62は、レール軸部61の幅方向における端部と、天井3との相互間に介装されており、レール軸部61の上軸部61aの上面、及び固定側保持部64の上端に対して溶接されることにより、レール軸部61及び固定側保持部64と一体の部材となっている。ここで、
図37は、外側天板部62を示す図であって、
図37(a)は平面図、
図37(b)は正面図である。この
図37に示すように、外側天板部62は、略矩形の板状体に形成されており、右端部の中央には、後述するように、上レール50及びカバー70を、上レール50がカバー70の内部に挿通されるように天井3に取り付けた際に、上レール50が外側天板部62に干渉してしまう事を防止するための切欠き62bが形成されている。ここで、外側天板部62の略中央部分には、複数(本実施の形態2においては、2つ)のネジ孔62aが設けられている。このネジ孔62aは、外側天板部62を天井3に固定するためのドリルビス51f(
図1参照)を挿通するための孔であって、レール軸部61の上軸部61aに形成された4つのネジ孔61dのうち左方に配置された2つのネジ孔61d、及び当該外側天板部62に形成されたネジ孔62aを順次介してドリルビス51fを挿通することにより、レール軸部61と外側天板部62とを一体として天井3に固定することができる。
【0112】
(構成−縁部保持部−内側天板部)
図34及び
図35に戻り、内側天板部63は、レール軸部61の上方を被覆する上方被覆手段である。この内側天板部63は、上レール50の内部に収容されており、レール軸部61の上軸部61aの上面に対して溶接されることにより、レール軸部61と一体の部材となっている。ここで、
図38は、内側天板部63を示す図であって、
図38(a)は平面図、
図38(b)は正面図である。この
図38に示すように、内側天板部63は、矩形の板状体に形成されており、内側天板部63の略中央部分には、複数(本実施の形態2においては、2つ)のネジ孔63aが設けられている。このネジ孔63aは、内側天板部63を天井3に固定するためのドリルビス51f(
図1参照)を挿通するための孔であって、レール軸部61の上軸部61aに形成された4つのネジ孔61dのうち右方に配置された2つのネジ孔61d、及び当該内側天板部63に形成されたネジ孔63aを順次介してドリルビス51fを挿通することにより、レール軸部61、及び当該レール軸部61と相互に溶接された内側天板部63、を一体として天井3に固定することができる。なお、内側天板部63は、
図34に示すように、左方の端部が外側天板部62の切欠きの内部に収まるように配置されている。
【0113】
(構成−縁部保持部−固定側保持部)
図34及び
図35に戻り、固定側保持部64は、
レール軸部61に対して固定された固定側保持手段である。
図39は、固定側保持部64を示す図であって、
図39(a)は正面図、
図39(b)は右側面図、
図39(c)は平面図である。この
図39に示すように、固定側保持部64は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの固定側保持部64の各部を、基礎部64a、固定側突出片64b、突出先端部64c、及び下方支持部64dと称して説明する。
【0114】
基礎部64aは、レール軸部61に対して固定されるベースとなる部分であって、シート10に対して平行に(すなわち、X−Z平面に沿って)配置される部分である。この基礎部64aの上端は、上述した
図35に示すように、外側天板部62に対して隅肉溶接されて接合されており、この基礎部64aの前面は、レール軸部61の後軸部61cに対してスポット溶接又は栓溶接されて接合されている。
【0115】
固定側突出片64bは、固定側保持部64と可動側保持部65との間隔を調整するための部分であって、基礎部64aの左側端部に形成されており、天井3の下面及びシート10の主側面に対して直交する方向に突出する(すなわち、基礎部64aの左側端部から前方に向けて突出する)部分である。ここで、この固定側突出片64bには、高さ方向に沿って複数(本実施の形態2においては3つ)のボルト挿通孔64fが設けられている。このボルト挿通孔64fには、
図35に示すようにボルト68が挿通されており、このボルト68は、図示のように挿通された状態で、固定側突出片64bに対して溶接されている。そして、後述する
図41に示すように、可動側保持部65の可動側突出片65bには、ボルト挿通孔64fと相互に同一の間隔で、ボルト挿通孔64fと対応する位置にボルト挿通孔65hが設けられており、後述する
図44に示すように、上述したボルト68の先端部はボルト挿通孔65hに挿通されている。そして、この固定側突出片64bと後述する可動側突出片65bとの相互間の間隔を、ボルト68に螺合されるナット69により調節することにより、固定側保持部64と可動側保持部65との相互間の位置を調整することが可能となる。なお、この調整の具体的な手段については後述する。
【0116】
また、当該ボルト68及びナット69により、固定側保持部64と可動側保持部65とを仮接続する事も可能である。すなわち、固定側保持部64及び可動側保持部65を設置場所まで運搬する際にこれらが別個の部材として形成されていると運搬に手間を要するため、これらを仮接続した状態で運搬することが望ましい。そこで、運搬時には、固定側保持部64に溶接されたボルト68を可動側保持部65のボルト挿通孔65hに挿通させて、ボルト68の端部をナット69で留めておくことにより仮接続する事ができる。さらに、このように仮接続を行うことにより、シート10に張力を付加させる作業を行う際においても作業を容易にすることが可能であるが、このような点については後述する。
【0117】
突出先端部64cは、固定側保持部64をレール軸部61に固定するための固定手段であり、かつカバー70を固定側保持部64に固定するための固定手段である。具体的には、突出先端部64cは、固定側突出片64bの先端における右方向に向けて直角に折り返された板状部である。この突出先端部64cは、レール軸部61のスペーサー61eに対して溶接(スポット溶接又は栓溶接、及び隅肉溶接)されており、このように突出先端部64cと上述した基礎部64aとによってレール軸部61を挟持することで、固定側保持部64とレール軸部61とを相互に安定的に接合している。ここで、この突出先端部64cには2つのネジ孔64g、64hが設けられている。これら2つのネジ孔64g、64hは、カバー70を突出先端部64cに固定するためのネジ孔であり、具体的には、カバー70に設けられたネジ孔71d、71e(後述する)と、これら2つのネジ孔64g、64hを順次介してネジ(図示省略)を挿通してネジ止めすることにより、カバー70を突出先端部64cに固定することができる。また、この突出先端部64cの高さ方向中央部分には切欠き64eが形成されており、このことにより、固定側保持部64と可動側保持部65との間隔を調整する作業の施工性を向上させることが可能となる。なお、このような作業の詳細については後述する。
【0118】
下方支持部64dは、可動側保持部65を下方から支持するための部分であって、基礎部64aの下端部から前方に向けて直角に突出した部分である。この下方支持部64dの先端部(すなわち、最も前方に位置する端部)は、上方向に向けて直角に折り返されている。このように折り返しを形成することにより、可動側保持部65を下方支持部64dに載置した際に、可動側保持部65が前方に脱落してしまうことを防止でき、可動側保持部65を固定側保持部64にネジ止めする作業の施工性を向上させることが可能となる。なお、このような作業の詳細については後述する。
【0119】
(構成−縁部保持部−可動側保持部)
図34及び
図35に戻り、可動側保持部65は、固定側保持部64よりもシート10に近い位置に配置されてシート10の縁部を保持する可動側保持手段である。
図40は、可動側保持部65及び後シート挟持部66を示す図であって、
図40(a)は正面図、
図40(b)は左側面図、
図40(c)は平面図、
図40(d)は右側面図である。
図41は、可動側保持部65を示す図であって、
図41(a)は正面図、
図41(b)は左側面図、
図41(c)は平面図、
図41(d)は右側面図である。ここで、
図41に示すように、可動側保持部65は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの可動側保持部65の各部を、基礎接続部65a、可動側突出片65b、及びシート伸張部65cと称して説明する。
【0120】
基礎接続部65aは、固定側保持部64に対して可動側保持部65を接続するための部分であると共に、後シート挟持部66を取り付ける部分であって、基礎部64aに対して平行に配置される。この基礎接続部65aには、高さ方向に沿って7つのネジ孔65fが所定の間隔で並設されており、これらのネジ孔65fの側方には、高さ方向に沿って3つのネジ孔65gが所定の間隔で並設されている。なお、この基礎接続部65aの前面には、後シート挟持部66が溶接されている。
【0121】
このうち、7つのネジ孔65fは、前シート挟持部67を後シート挟持部66に対してネジ67b(後述する
図44参照)で取り付ける際に、ネジ67bが基礎接続部65aに対して干渉してしまわないようにするための孔であって、ネジ67bの軸部の径よりも大きい径の孔である。これらのネジ孔65fは、後シート挟持部66に設けられた8つのネジ孔66a(後述する
図42参照)のうち、上端のネジ孔66aを除く7つのネジ孔66a、及び、前シート挟持部67に設けられた8つのネジ孔67a(後述する
図43参照)のうち、上端のネジ孔67aを除く7つのネジ孔67aと相互に対応する位置に形成されている。そして、後シート挟持部66と前シート挟持部67との間にシート10を挟持した状態で、ネジ67b(後述する
図44参照)を、ネジ孔67aを介してネジ孔66aにネジ止めしてシート10を取り付ける。この際に、ネジ孔66aから後方にネジ67bが突出した場合であっても、基礎接続部65aにおけるネジ孔66aと対応する位置に、7つのネジ孔65fが設けられていることにより、ネジ67bが基礎接続部65aに対して干渉してしまう事はなく、ネジ67bを締結することにより後シート挟持部66と前シート挟持部67との間に隙間が形成されてしまう事を防止できる。
【0122】
また、3つのネジ孔65gは、固定側保持部64に対して可動側保持部65を接続するためのネジ孔である。具体的には、シート10を張った状態において、当該ネジ孔65gから固定側保持部64の基礎部64aを貫通するようにネジ65i(後述する
図44参照)を打ち込むことにより、固定側保持部64に対して可動側保持部65を接続する事ができる。
【0123】
可動側突出片65bは、固定側保持部64と可動側保持部65との間隔を調整するための部分であって、基礎接続部65aの左側端部に形成されており、天井3の下面及びシート10の主側面に対して直交する方向に突出する(すなわち、基礎接続部65aの左側端部から前方に向けて突出する)部分である。なお、この可動側突出片65bにおける上端部及び下端部には、可動側突出部と、突出先端部64c自体や当該突出先端部64cに形成されたネジ孔64gに挿通されたネジとが相互に接触しないようにするための上方切欠き部65d、及び可動側突出部と、突出先端部64c自体や当該突出先端部64cに形成されたネジ孔64hに挿通されたネジとが相互に接触しないようにするための下方切欠き部65eが形成されている。
【0124】
ここで、可動側突出片65bには、高さ方向に沿って複数(本実施の形態2においては3つ)のボルト挿通孔65hが並設されている。このボルト挿通孔65hは、上述したように固定側突出片64bに設けられたボルト挿通孔64fと相互に同一の間隔で、ボルト挿通孔64fと対応する位置に設けられた孔である。
【0125】
シート伸張部65cは、シート10を張った際にシート10に撓みが生じてしまうことを防止するため部分であって、基礎接続部65aの右側端部から前方に突出した、平断面形状をコ字状とする部分である。このようなシート伸張部65cを設けることにより、後シート挟持部66及び前シート挟持部67の相互間に挟持したシート10が当該シート伸張部65cに沿うように湾曲して、設置対象空間2に至るので、シート10に撓みが生じてしまう事を防止できる。なお、シート伸張部65cの高さは、シート10の高さと略一致している。
【0126】
(構成−縁部保持部−後シート挟持部)
図34及び
図35に戻り、後シート挟持部66は、シート10を挟持するためのシート挟持手段である。
図42は、後シート挟持部66を示す図であって、
図42(a)は正面図、
図42(b)は平面図である。このように、後シート挟持部66は、シート伸張部65cと同一高さの縦長の板状体に形成されており、この後シート挟持部66の板状面には、上述した可動側保持部65の基礎接続部65aに形成された7つのネジ孔65fと対応する間隔で、高さ方向に沿って8つのネジ孔66aが形成されている。なお、この後シート挟持部66は、
図40に示すように可動側保持部65の基礎接続部65aの前面に対して溶接されており、可動側保持部65と一体の部材となっている。
【0127】
(構成−縁部保持部−前シート挟持部)
図34及び
図35に戻り、前シート挟持部67は、シート10を挟持するためのシート挟持手段である。
図43は、前シート挟持部67を示す図であって、
図43(a)は正面図、
図43(b)は平面図である。このように、前シート挟持部67は、後シート挟持部66と略同一の形状の板状体に形成されており、この前シート挟持部67の板状面には、後シート挟持部66に形成された8つのネジ孔66aと同一の間隔で、ネジ孔66aと対応する位置に、高さ方向に沿って8つのネジ孔67aが形成されている。なお、このネジ孔67aは、前シート挟持部67を後シート挟持部66に対して取り付ける際に、ネジ67bを挿通させるための孔であって、ネジ67bの軸部の径よりも大きい径の孔である。
【0128】
ここで、
図44は、可動側保持部65に対してシート10を固定した状態を示す平面図である。この
図44に示すように、シート10の側面をシート伸張部65cに当接させ、後シート挟持部66と前シート挟持部67との相互間にシート10を挟持した状態で、ネジ67bを、ネジ孔67aを介して、ネジ孔66aに螺合することにより、シート10を可動側保持部65に対して固定できる。なお、ネジ67bの先端は、図示のようにネジ孔65fの内部に至っており、上述したように、ネジ67bが当該基礎接続部65aに干渉してしまう事を防止している。なお、ネジ孔66aのうち最も上端のネジ孔66aと対応する位置には、基礎接続部65aは設けられておらず、ネジ67bが当該基礎接続部65aに干渉してしまう事もない。
【0129】
(構成−カバー)
図24から
図28に戻り、カバー70は、可動側保持部65及び固定側保持部64を覆う外装手段である。
図45は、カバー70を示す図であって、
図45(a)は正面図、
図45(b)は左側面図、
図45(c)は右側面図、
図45(d)は平面図、
図45(e)は底面図である。
図46は、
図24のE−E断面図である。これらの
図45及び
図46に示すように、カバー70は、前カバー71、後カバー72、下カバー73、閉塞部材74、及び閉塞部材固定部75を備えて構成されている。なお、
図45(a)及び
図45(b)においては閉塞部材74及び閉塞部材固定部75の図示を省略している。
【0130】
(構成−カバー−前カバー)
前カバー71は、カバー70の前面を構成する部分である。
図47は、前カバー71を示す図であって、
図47(a)は正面図、
図47(b)は左側面図、
図47(c)は右側面図、
図47(d)は平面図である。この
図47に示すように、前カバー71は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの前カバー71の各部を、前外装部71a、右前外装部71b、左外装部71cと称して説明する。
【0131】
前外装部71aは、可動側保持部65及び固定側保持部64を前方から覆う部分であって、X−Z平面に沿って配置される。この前外装部71aには、前カバー71を固定側保持部64に対して固定するための2つのネジ孔71d、71eが設けられている。そして、当該2つのネジ孔71d、71eの前方から、固定側保持部64の突出先端部64cに形成されたネジ孔64g、64hを順次介してネジ(図示省略)を挿通してネジ止めすることにより、前カバー71を固定側保持部64に対して固定することができる。また、前外装部71aの下端部には、2つのネジ孔71fが形成されており、これらのネジ孔71fは、下カバー73を前カバー71に対して固定するためのネジ71h(
図45参照)を挿通するためのネジ孔である。そして、当該2つのネジ孔71fの前方から、後述する下カバー73の底爪部73aに形成された2つのネジ孔73cを介してネジ71hを挿通してネジ止めすることにより、下カバー73を前カバー71に対して固定することができる。
【0132】
ここで、上述したネジ孔71d、71eのうち、下方のネジ孔71eは、幅方向に沿った長手方向を有する長孔に形成されている。すなわち、固定側保持部64は、その上端のみにおいてレール軸部61を介して天井3に固定されているため、シート10の張力が加わった場合には上方に比べて下方に一層大きな曲げモーメントが作用するため、下方が僅かに内側に撓むことが有る。このような場合には、固定側保持部64の突出先端部64cに形成されたネジ孔64hの位置が64gよりも相対的に内側に位置してしまうことになるが、このような場合においても、下方のネジ孔71eを幅方向に沿った長孔としているため、このネジ孔71eのいずれかの位置にネジ孔64hを対応させることが可能になり、ネジ孔71eからネジ孔64hを順次介してネジを挿通することが可能になる。
【0133】
ここで、このネジ孔71eの前方には、ネジ孔71eを覆うための長孔カバー46が取り付けられている。なお、当該長孔カバー46の構造や機能、及び取り付け方法については実施の形態1と同様であるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0134】
右前外装部71bは、可動側保持部65及び固定側保持部64を右前方から覆う部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。この右前外装部71bの先端部は、カバー70の内側に向けて(すなわち、左方向に向けて)折り返されている。そして、当該折り返しの部分は、
図46に示すように、後述する右後外装部72bの折り返し部分と所定の間隔を隔てて配置され、このことにより、これらの部材の相互間にシート10が介在可能となっている。
【0135】
ここで、右前外装部71bの上端には、図示のように切欠き71iが形成されている。そして、後述するように、後カバー72におけるこの切欠き71iと対応する位置には、同様の切欠き72f(
図45参照)が形成されている。なお、これらの切欠き71iと切欠き72fとの間の奥行きは、
図37(a)に示す外側天板部62の右端部の切欠き62bの奥行き、及び上レール50の奥行きと相互に合致する。そして、これらの切欠き71i及び切欠き72fと、外側天板部62の切欠き62bとの間に挿通されるように、上レール50が配置されている。このように、上レール50をカバー70の内部に挿通可能な構成とすることにより、正面や背面から当該防煙垂れ壁100を見た際に上レール50とカバー70との隙間を視認できなくなり、意匠性を向上させる事ができる。
【0136】
左外装部71cは、可動側保持部65及び固定側保持部64を左方から覆う部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。ここで、左外装部71cには、
図47(d)に示すように、平面視において凹部76が形成されており、この凹部76には、閉塞部材固定部75を固定するためのリベット孔76aが高さ方向に沿って複数(本実施の形態2では2つ)形成されている。また、この凹部76以外の部分であって、凹部76よりも後方に位置する部分には、前カバー71と後カバー72とを相互に接続するためのリベット孔71gが、高さ方向に沿って複数(本実施の形態2では3つ)形成されている。
【0137】
また、この左外装部71cの下端部にはネジ孔76bが形成されている。このネジ孔76bは、
図27に示すドリルビス76cを挿通するための孔であって、高さ方向に長い孔として形成されている。このドリルビス76cは、構造的な強度を確保するためのネジではなく、カバー70が鉛直方向に沿って配置されるように位置を調整するためのネジである。すなわち、カバー70が天井3に対して上端のみで取り付けられている場合、カバー70全体が奥行き方向に傾いて取り付けられてしまう可能性がある。そこで、カバー70の奥行き方向への傾きを抑止して意匠性を向上させるために、カバー70から右方壁部5又は左方壁部6に至るようにドリルビス76cを打ち込んでカバー70を掛止している。なお、後述するように、ドリルビス76cはカバー70の下方から右方壁部5又は左方壁部6に打ち込むため、ドリルビス76cは斜め上方に向けて打ち込まれており、このためネジ孔76bは長孔となっている。なお、カバー70の奥行き方向への傾きを無視できる場合には、このネジ孔76bやドリルビス76cについては設けなくても構わない。
【0138】
(構成−カバー−後カバー)
図45及び
図46に戻り、後カバー72は、カバー40の後面を構成する部分である。
図48は、後カバー72を示す図であって、
図48(a)は正面図、
図48(b)は左側面図、
図48(c)は右側面図、
図48(d)は平面図である。この
図48に示すように、後カバー72は一枚の板状体を折り曲げて形成されており、以下ではこの後カバー72の各部を、後外装部72a、右後外装部72b、カバー接続部72cと称して説明する。
【0139】
後外装部72aは、可動側保持部65及び固定側保持部64を後方から覆う部分であって、X−Z平面に沿って配置される。この後外装部72aの下端部には、下カバー73を後カバー72に対して固定するためのネジ72g(
図45参照)を挿通するための2つのネジ孔72dが形成されている。
【0140】
右後外装部72bは、可動側保持部65及び固定側保持部64を右後方から覆う部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。この右後外装部72bの先端部は、カバー70の内側に向けて(すなわち、左方向に向けて)折り返されている。そして、当該折り返しの部分は、
図46に示すように、上述した右前外装部71bの折り返し部分と所定の間隔を隔てて配置され、このことにより、これらの部材の相互間にシート10が介在可能となっている。また、右後外装部72bの上端には、図示のように切欠き72fが形成されている。この切欠き72fは、上述したように前カバー71に形成された切欠き71iと合わさって上レール50を挟み込み、防煙垂れ壁100の意匠性を向上させるための切欠きである。
【0141】
カバー接続部72cは、前カバー71と後カバー72とを相互に接続するための部分であって、概略的にY−Z平面に沿って配置される。このカバー接続部72cには、前カバー71の左外装部71cに形成された3つのリベット孔71gと対応する位置に、3つのリベット孔72eが形成されており、これらのリベット孔71g、72eを介してリベット(図示省略)を挿通してリベット止めすることにより、前カバー71と後カバー72とを相互に接続することが可能となっている。
【0142】
(構成−カバー−下カバー)
図45及び
図46に戻り、下カバー73は、カバー70の下面を構成する部分である。
図49は、下カバー73を示す図であって、
図49(a)は正面図、
図49(b)は右側面図、
図49(c)は平面図、
図49(d)は底面図である。この
図49に示すように、下カバー73は、概略的に、底爪部73a、及び底外装部73bを相互に接続して構成されている。
【0143】
底爪部73aは、一枚の板状体を断面略コ字状に折り曲げて形成された部分であって、前カバー71と後カバー72との相互間に嵌め込まれている。具体的には、この底爪部73aにおける前方に位置する板状部には、前カバー71の前外装部71aに形成された2つのネジ孔71fと対応する位置に、2つのネジ孔73cが形成されており、この底爪部73aにおける後方に位置する板状部には、後カバー72の後外装部72aに形成された2つのネジ孔72dと対応する位置に、2つのネジ孔73dが形成されている。また、この底爪部73aにおける下方に位置する板状体には、底爪部73aと底外装部73bとを相互に接続するためのリベット73gを挿通可能な2つのリベット孔73eが形成されている。
【0144】
底外装部73bは、可動側保持部65及び固定側保持部64を下方から覆う部分であって、概略的にX−Y平面に沿って配置される。具体的には、この底外装部73bは一枚の矩形の平板として形成されており、底外装部73bと底爪部73aとを相互に接続するためのリベットを挿通可能な2つのリベット孔73fが形成されている。なお、これらの底爪部73a及び底外装部73bは、リベット孔73eとリベット孔73fを挿通するリベット73gによって接続され、一体の部材となっている。
【0145】
(構成−カバー−閉塞部材)
図45及び
図46に戻り、閉塞部材74は、縁部保持部60と壁部との相互間の隙間を塞ぐための閉塞手段である。この縁部保持部60は、このように隙間を塞ぐことが可能な限りにおいて任意に構成することが可能であるが、本実施の形態2においては、縁部保持部60の高さ方向の長さと略同一の長さを有する矩形の弾性部材として形成されており、前カバー71の左外装部71cの凹部76と、閉塞部材固定部75との相互間に挟まれて配置されているものとして説明する。ここで、閉塞部材74の素材は任意であるが、この閉塞部材74には高温の煙が当たるため不燃性の素材にて形成されることが望ましい。
【0146】
(構成−カバー−閉塞部材固定部)
閉塞部材固定部75は、閉塞部材74を前カバー71に対して固定するための閉塞部材固定手段である。
図50は、閉塞部材固定部75を示す図であって、
図50(a)は左側面図、
図50(b)は平面図である。この
図50に示すように閉塞部材固定部75は、前カバー71の左外装部71cの凹部76と略同一の高さ及び前後長さを有する一枚の矩形平板として構成されており、長手方向に沿って複数(本実施の形態2においては2つ)のリベット孔75aが形成されている。ここで、このリベット孔75aは、前カバー71の左外装部71cの凹部76に形成されたリベット孔76aと対応する間隔で形成されている。
【0147】
(設置方法)
続いて、このように構成された防煙垂れ壁100の設置方法について説明する。まず、天井3の下面に、後レール51を接続する。具体的には、後レール51の後水平上部51bを天井3の下面に当接させた状態において、後水平上部51bから天井3に貫通するようにドリルビス51fを幅方向に所定の間隔で打ち込む。なお、当該後水平上部51bの下方にレール軸部61が位置する部分(例えば
図24においては、左から3番目と4番目のドリルビス51f、及び右から3番目と4番目のドリルビス51f)については、この段階においてはまだこのようなネジ止めを行わない。なお、各後レール51の継ぎ目の位置には、
図29に示すようにジョイント部53をドリルビス53bで取り付けることにより、後レール51同士を接続する。
【0148】
次に、右方壁部5の近傍の縁部保持部60(前シート挟持部67を除く)と、左方壁部6の近傍の縁部保持部60(前シート挟持部67を除く)を天井3に対して固定する。具体的には、上述したように相互に溶接されて一体化されたレール軸部61、外側天板部62、内側天板部63、及び固定側保持部64と、固定側保持部64に対して上述したようにボルト68及びナット69により仮接続された可動側保持部65とを、一体の部材(
図34に示すような正面視略L字状の部材)として天井3に対して固定する。
【0149】
この際には、このように一体に構成した縁部保持部60を、後レール51の側方かつ天井3の下面に対して前方から当接させる。具体的には、レール軸部61の上方に溶接された外側天板部62を、天井3に当接させ、同じくレール軸部61の上方に溶接された内側天板部63を、後レール51の後水平上部51bに当接させる。このような状態において、レール軸部61の上軸部61aにおける外側の2つのネジ孔61d、及び外側天板部62のネジ孔62aを順次貫通するように天井3に対してドリルビス51fを挿通してネジ止めすると共に、上軸部61aにおける内側の2つのネジ孔61d、内側天板部63のネジ孔63a、及び後レール51の後水平上部51bを貫通するように天井3に対してドリルビス51fを挿通してネジ止めする。このようにして、
図34に示す正面視略L字状の縁部保持部60を、天井3の下面に対して取り付ける。なお、このように取り付けを終えた状態において、固定側保持部64の固定側突出片64bと壁部との相互間には一定の間隔(例えば、数センチ)の隙間が形成される。なお、右方壁部5の近傍の縁部保持部60(前シート挟持部67を除く)と、左方壁部6の近傍の縁部保持部60(前シート挟持部67を除く)とは、上述した方法により同様に取り付けを行うことができる。
【0150】
次に、可動側保持部65及び上レール50に対してシート10を仮固定する。このような仮固定は以下のように行う。まずは、シート10の左方の端部を、左方の縁部保持部60の可動側保持部65に溶接された後シート挟持部66に対して、両面テープで固定する。次にシート10を幅方向に沿って右方へと広げていき、この際にシート10の上端部を後レール51の下部折り返し51eに対して両面テープで順次固定していく。そして、シート10の右方の端部を、右方の縁部保持部60の可動側保持部65に溶接された後シート挟持部66に対して、両面テープで固定する。なお、以上の仮固定の手順は左右逆方向から実施しても良い。
【0151】
次に、後シート挟持部66及び前シート挟持部67によりシート10を前後から挟み込んで固定する。具体的には、
図44に示すように、後シート挟持部66の前面に、シート10を挟み込むように前シート挟持部67を配置し、前シート挟持部67に設けられたネジ孔67a、シート10、及び後シート挟持部66に設けられたネジ孔66aを順次貫通するようにネジ67bを挿通する。このようにして、シート10を2つの部材で挟み込んで固定することにより、シート10を可動側保持部65に対して強固に固定することができる。
【0152】
次に、右方壁部5の近傍の可動側保持部65及び左方壁部6の近傍の可動側保持部65を外側に引っ張ることにより、シート10に張力を付加する。具体的には、
図44に示すように、固定側突出片64b及び可動側突出片65bにおける相互に対向しない両側方のうち一方の側方(
図44において固定側突出片64bの左方)にボルト68の頭部を配置し(本実施の形態では、ボルト68は固定側突出片64bに溶接されている)、他方の側方(
図44において可動側突出片65bの右方)にナット69を配置した状態において、ボルト68の頭部に対するナット69の位置を変動させることにより、固定側突出片64bと可動側突出片65bとの相互間の間隔を調整する。すなわち、
図44の状態において、ナット69をボルト68に対して螺合することにより、ナット69により可動側突出片65bを左方に押圧する事ができ、このことにより、固定側突出片64bと可動側突出片65bとの相互間の間隔が狭まる。なお、ナット69を逆回転させることにより、ナット69により可動側突出片65bを左方に押圧する力を弱める事ができ、この場合には、シート10の張力により固定側突出片64bと可動側突出片65bとの相互間の間隔が広がる。このようにしてナット69の螺合を調節するという極めて簡素な作業により、シート10の張力を調節する事ができる。
【0153】
なお、本実施の形態2においては、まずは左方壁部6の近傍の可動側保持部65を外側に引っ張ることによりシート10の張力を調節し、続いて右方壁部5の近傍の可動側保持部65を外側に引っ張ることによりシート10の張力を微調節するものとして説明するが、これに限らず左右逆の順序で行っても良いし、左右同時に行っても良い。また、このようにシート10の張力を調整することで、シート10と上レール50とを接着する両面テープが剥がれてしまう可能性があるが、この場合には適宜両面テープを貼り直しながらシート10の張力を調整すれば構わない。
【0154】
次に、このようにシート10に所定の張力を付加した状態においてシート10を固定する。具体的には、まず、上述したようにナット69を螺合してシート10に張力を付加した状態において、固定側保持部64の基礎部64aに対して、基礎接続部65aにおける本固定用のネジ孔65gと対応する位置に、ドリル等を用いて孔を空ける。そして、基礎接続部65aにおける本固定用のネジ孔65gから、当該ドリル等により形成した基礎部64aの孔に掛けて貫通するようにネジ65iを挿通してネジ止めすることにより、可動側保持部65を固定側保持部64に対して固定する。なお、このようなドリル等を用いる方法に限らず、任意の方法により可動側保持部65を固定側保持部64に対して固定しても良く、例えば、ドリルを使用せずにタッピングネジやドリルビス等をネジ孔65gから基礎部64aに挿通させることにより固定を行っても良い。
【0155】
次に、シート10の上端部を後レール51に本固定する。具体的には、
図33に示すように、シート10の前方から、シート10、及び後レール51の下部折り返し51eを貫通するように、ドリルビス52eを幅方向に沿って所定の間隔で打ち込む。
【0156】
次に、前レール52を後レール51に固定する。具体的には、後レール51の前方に前レール52を配置し、
図33に示すように前レール52の前方から、前レール52の前鉛直部52aに形成されたネジ孔52c、及び後レール51の上部折り返し51dを貫通するように、ドリルビス52dを幅方向に沿って所定の間隔で打ち込む。このことにより、後レール51の下部折り返し51eと前水平部52bとによってシート10の上縁部が挟持されてシート10の上方を固定することができる。
【0157】
次に、可動側保持部65及び固定側保持部64に対してカバー70を取り付ける。具体的には、まずは前カバー71の左外装部71cに形成されたリベット孔71g、及び後カバー72のカバー接続部72cに形成されたリベット孔72eを順次介してリベットを挿通してリベット止めすることにより、前カバー71と後カバー72とを相互に接続する。そして、前カバー71の左外装部71cの凹部76に閉塞部材74を当接させた状態において、左外装部71cの凹部76と閉塞部材固定部75とによって閉塞部材74を挟持するように、閉塞部材74を閉塞部材固定部75に対してリベット止めして固定する。
【0158】
このようにして前カバー71、後カバー72、閉塞部材74、及び閉塞部材固定部75を一体に接続した状態において、これら一体の部材を可動側保持部65及び固定側保持部64の下方から挿通し、これら一体の部材の上端部が外側天板部62に当接するまで上方に摺動させる。この際に、前カバー71の右前外装部71bと、後カバー72の右後外装部72bとの相互間の隙間にシート10を通すようにこれら一体の部材を摺動させる。なお、このように上端まで摺動させた際には、前カバー71の切欠き71iと後カバー72の切欠き72fとの間に上レール50が挟み込まれた状態となる。
【0159】
そして、前カバー71の前外装部71aに形成されたネジ孔71d、及び固定側保持部64の突出先端部64cに形成されたネジ孔64gを順次介してネジを挿通してネジ止めすると共に、長孔カバー46に設けられたネジ孔46a、前カバー71の前外装部71aに形成されたネジ孔71e、及び固定側保持部64の突出先端部64cに形成されたネジ孔64hを順次介してネジを挿通してネジ止めすることにより、これら一体の部材を固定側保持部64に対して取り付けることができる。この際に、固定側保持部64に対してはシート10の張力が付加されているため、ネジ孔64hはシート10を取り付ける前の位置よりも内側に位置していることが有るが、ネジ孔71eは長孔として形成されているため、このようなネジ孔64hの位置の移動に関わらず、ネジ孔71eからネジ孔64hにかけてネジを挿通することができる。また、このように長孔の前方に長孔カバー46が介装されるため、長孔を塞いで意匠性を向上させることが可能となる。
【0160】
次に、ドリルビス76cを取り付けて、カバー70の傾きを調整する。すなわち、カバー70の下面から、ネジ孔76b、及び壁面に至るようにドリルビス76cを挿通し、カバー70の下端の奥行き方向における位置を調整する。このようにドリルビス76cの取り付けが終わった後に、下カバー73を取り付ける。具体的には、上述したようにリベット73gにより一体化された底爪部73a及び底外装部73bを、カバー70の下端に対して、底爪部73aが前カバー71と後カバー72との相互間に嵌めこまれるように取り付ける。最後に、前カバー71に形成されたネジ孔71fから底爪部73aに形成されたネジ孔73cにかけてネジ71hを挿通し、また後カバー72に形成されたネジ孔72dから底爪部73aに形成されたネジ孔73dにかけてネジ72gを挿通し、これらをネジ止めする。
【0161】
このように、固定側保持部64や可動側保持部65を柱部に対して固定することなく防煙垂れ壁100を構築することができるので、地震時等における耐力を向上させることが可能であり、かつ、壁部に骨材を固定する手間や費用を削減することが可能となる。また、上述した各作業をいずれも一方向(本実施の形態2においては前方)から行うことが可能であり、施工性を向上させることが可能となる。
【0162】
(実施の形態2の効果)
このように、本実施の形態2によれば、ボルト68の頭部に対するナット69の位置を変動させることにより、固定側突出片64bと可動側突出片65bとの相互間の間隔を調整するので、シート10を極めて容易に張る事が可能となる。
【0163】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、各発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0164】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、地震時によるシート10の破損や落下を防止することができない場合や、施工性を向上させることができない場合が生じたとしても、防煙区画の形成を従来とは異なる手段によって達成できている場合には、本願の課題が解決されている。
【0165】
(設置対象について)
本実施の形態1においては、ガラス保持具7を介して天井3の下面に対して防煙垂れ壁1、100を固定するものとして説明したが、これに限定されず、例えばガラス保持具7を介することなく天井3の下面に対して直接固定しても良い。また、壁部の相互間に防煙垂れ壁1、100を設置するものとして説明したが、これに限定されず、例えば柱部と他の柱部の相互間や、壁部と柱部の相互間等に設置しても構わない。
【0166】
(接合方法について)
各実施の形態においては、部材同士を接合する方法として、ネジ、タッピングネジ、ドリルビス、スポット溶接、栓溶接、及び隅肉溶接等といった様々な方法を記載したが、これらの接合方法は単に例示に過ぎず、適宜その他の接合方法を適用しても構わない。
【0167】
(シートについて)
各実施の形態においては、シート10の長手方向が幅方向に沿うように配置されているものとして説明したが、これに限定されず、例えばシート10の長手方向が高さ方向に沿うように配置されていても構わない。
【0168】
(後レール及び前レールについて)
本実施の形態1においては、上レール50を構成する後レール21は、複数の部材(後被覆部22とネジ受け部23と介装材24)を接合して形成し、前レール26は複数の部材(前被覆部27と突起部28)を接合して形成するものとして説明したが、これに限定されない。例えば後レール21及び前レール26のそれぞれを、一体の部材として押し出し成形しても良い。
図51は、第1の変形例に係る後レール81と前レール82の組み合わせを概略的に示す側面図であり、
図51(a)は組み合わせ前、
図51(b)は組み合わせ後を示す図である。このように、上レール80を構成する後レール81及び前レール82をそれぞれ一体の部材として形成することにより、各部材を接合する手間を省略することができ、施工性を向上させることが可能となる。
【0169】
(縁部保持部について)
本実施の形態1においては、防煙垂れ壁1の左右両端部に縁部保持部30を形成するものとして説明したが、これに限定されず、左右のどちらか一方に縁部保持部30を形成しても構わない。具体的には、左右いずれか一方にのみ、本実施の形態1に示す縁部保持部30を形成し、いずれか他方には、本実施の形態1に示す固定側保持部33と可動側保持部34のようにシート10の張力を調整する機構を形成しなくても良い。また、左右いずれか一方にのみ本実施の形態1に示す縁部保持部30を形成し、いずれか他方においては、シート10を固定側保持部33に直接固定しても良い。以上の点について実施の形態2についても同様である。
【0170】
本実施の形態1においては、可動側保持部34によりシート10の張力を調整した後に、可動側保持部34を固定側保持部33に対して本固定するものとして説明したが、これに限定されず、例えば可動側保持部34を天井3に対して本固定しても構わないし、天井3及び固定側保持部33の両方に対して本固定しても構わない。
【0171】
(位置の調整について)
本実施の形態1においては、固定側突出片33bと可動側突出片34bとの相互間の間隔を万力により調整するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、手動で行ってもよい。あるいは、可動側突出片34bから固定側突出片33bに掛けてネジを貫通させて、このネジの締め込み具合に応じて固定側突出片33bと可動側突出片34bとの相互間の間隔が狭まるような調整構造を採用してもよく、この場合には、間隔の調整と、可動側保持部34及び固定側保持部33の固定とを同時に行うことが可能となる。
【0172】
各実施の形態においては、壁とカバー40、70との相互間の隙間を閉塞部材44、74により閉塞するものとして説明したが、これに限らず縁部保持部30、60が壁や柱に対して構造上の影響を受けない程度において、縁部保持部30、60と壁や柱を接触させたり連携させたりしても構わない。例えば、当該隙間をパテやコーキング等で埋めてもよく、この場合であっても、パテやコーキング等が弾性力を有するため、地震時の振動を受けた場合には、壁や柱に対して縁部保持部30、60が連動せずに独立して振動することが可能となり、壁や柱の変位に伴って防煙垂れ壁1、100が損傷等するような事態を回避することが可能となる。
【0173】
(天井について)
また、各実施の形態においては、段差の無い平坦な天井3の下面に対して防煙垂れ壁1、100を設置するものとして説明したが、これに限らず、段差の有る天井3の下面に対して防煙垂れ壁1、100を設置しても構わない。
図52は、第2の変形例に係る防煙垂れ壁90を示す正面図である。この
図52に示すように、天井3に段差がある場合には、段のつなぎ目の部分には、図示のように、煙が漏れないようにするためのパネル91を設ける必要があるが、本発明に係る防煙垂れ壁1、90、100は、側方に対しての固定を必要としないため、このようなパネル91といった防煙垂れ壁を固定するために十分な強度を有しない物が側方に位置する場合であっても、天井3に対する固定のみで容易に取り付けが可能である。
【0174】
(防煙垂れ壁の配置について)
各実施の形態においては、壁の相互間に単一の防煙垂れ壁1、100を設置するものとして説明したが、これに限らず、様々な配置で防煙垂れ壁1、100を設置する事ができる。例えば、複数の防煙垂れ壁1、100を平面視において直角やT字状や十字状になるように配置しても構わない。
【0175】
(付記)
付記1の防煙垂れ壁は、天井の下方に防煙区画を形成するための防煙垂れ壁であって、前記防煙区画を形成するシートであって、前記天井の下面に対して垂下するように配置されたシートと、前記シートの上縁部を保持する上縁保持手段であって、前記天井の下面に固定された上縁保持手段と、前記シートにおける垂下方向に対して直交する方向の一対の縁部を保持する一対の縁部保持手段であって、前記天井又は前記上縁保持手段に対して取り付けられた一対の縁部保持手段とを備え、前記一対の縁部保持手段の少なくとも一方は、前記天井又は前記上縁保持手段に対して固定された固定側保持手段と、前記固定側保持手段よりも前記シートに近い位置に配置されて当該シートの前記縁部を保持する可動側保持手段とを備え、前記固定側保持手段と前記可動側保持手段との相互間の位置を調整することによって、前記シートに印加する張力を調整するため、前記可動側保持手段を前記固定側保持手段又は前記上縁保持手段に対して可動自在とし、前記固定側保持手段と前記可動側保持手段との相互間の位置を調整した状態で、前記可動側保持手段を前記固定側保持手段又は前記上縁保持手段に対して固定自在とした。
【0176】
また、付記2の防煙垂れ壁は、付記1に記載の防煙垂れ壁において、前記縁部保持手段の少なくとも一方を、前記縁部保持手段よりも前記シートから遠い位置に配置された壁部又は柱部に対して接触しないように配置した。
【0177】
また、付記3の防煙垂れ壁は、付記2に記載の防煙垂れ壁において、前記縁部保持手段の少なくとも一方を、前記縁部保持手段よりも前記シートから遠い位置に配置された壁部又は柱部に対して隙間を隔てて配置し、前記縁部保持手段における前記シートと反対側の側面には、当該縁部保持手段と前記壁部又は前記柱部との相互間の隙間を塞ぐための閉塞部材を設けた。
【0178】
また、付記4の防煙垂れ壁は、付記1から3のいずれか一項に記載の防煙垂れ壁において、前記上縁保持手段を、前記天井の下面に固定されたガラス保持手段であって、前記天井の下方に防煙区画を形成するガラスの上縁部を保持可能なガラス保持手段を介して前記天井の下面に固定した。
【0179】
また、付記5の防煙垂れ壁は、付記1から4のいずれか一項に記載の防煙垂れ壁において、前記固定側保持手段は、前記天井の下面及び前記シートの主側面に対して直交する方向に突出する固定側突出片を備え、前記可動側保持手段は、前記天井の下面及び前記シートの主側面に対して直交する方向に突出する可動側突出片を備え、前記固定側突出片と前記可動側突出片との相互間の間隔を調整することにより、前記固定側保持手段と前記可動側保持手段との相互間の位置を調整可能とした。
【0180】
また、付記6の防煙垂れ壁は、付記5に記載の防煙垂れ壁において、前記固定側突出片及び前記可動側突出片を貫通する軸部を有するボルトと、前記ボルトに螺合されるナットと、を備え、前記固定側突出片及び前記可動側突出片における相互に対向しない両側方のうち一方の側方に前記ボルトの頭部を配置し、他方の側方に前記ナットを配置し、前記ボルトの頭部に対する前記ナットの位置を変動させることにより、前記固定側突出片と前記可動側突出片との相互間の間隔を調整可能とした。
【0181】
また、付記7の防煙垂れ壁は、付記1から6のいずれか一項に記載の防煙垂れ壁において、前記シートを、不燃性のグラスファイバー材から形成した。
【0182】
また、付記8の防煙垂れ壁は、付記1から7のいずれか一項に記載の防煙垂れ壁において、前記シートの上縁部には、当該上縁部が前記上縁保持手段から脱落することを防止するための抜け止め具が固定され、前記上縁保持手段は、前記シートの上縁部における前記抜け止め具より下方の部分を、当該シートの一対の主側面の両側方から挟持する一対の挟持手段を備える。
【0183】
(付記の効果)
付記1に記載の防煙垂れ壁によれば、縁部保持手段を壁部や柱部に取り付けることなくシートを固定するので、縁部保持手段と壁部又は柱部との干渉を防止することができ、縁部保持手段や上縁保持手段の地震時の破損や落下を防止して耐力を向上させることが可能であると共に、壁部や柱部に縁部保持手段を固定するための骨材を形成する手間を省略でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0184】
また、付記2に記載の防煙垂れ壁によれば、縁部保持手段の少なくとも一方を、縁部保持手段よりもシートから遠い位置に配置された壁部又は柱部に対して接触しないように配置したので、縁部保持手段が壁部や柱部に干渉することを一層防止でき、縁部保持手段や上縁保持手段の地震時の耐力を一層向上させることが可能である。
【0185】
また、付記3に記載の防煙垂れ壁によれば、縁部保持手段と壁部又は柱部との相互間の隙間を塞ぐための閉塞部材を設けたので、当該隙間を介して煙が移動することを防止でき、縁部保持手段と壁部又は柱部との干渉を防止しつつ防煙性能を向上させることが可能となる。
【0186】
また、付記4に記載の防煙垂れ壁によれば、既存のガラス製の防煙垂れ壁の構成部材であるガラス保持手段を介して、上縁保持手段を天井に固定するので、ガラス保持手段を取り外すことなく上縁保持手段を天井に固定でき、ガラス製の防煙垂れ壁からシート製の防煙垂れ壁への取り換えを極めて容易に行うことが可能となる。
【0187】
また、付記5に記載の防煙垂れ壁によれば、固定側突出片と、可動側突出片との間隔を調整することにより、極めて容易に固定側保持手段と可動側保持手段との相互間の間隔を調整できるので、施工性をより一層向上させることが可能となる。
【0188】
また、付記6に記載の防煙垂れ壁によれば、ボルトの頭部に対するナットの位置を変動させることにより、固定側突出片と可動側突出片との相互間の間隔を調整するので、シートを極めて容易に張る事が可能となる。
【0189】
また、付記7に記載の防煙垂れ壁によれば、シートを、不燃性のグラスファイバー材から形成するので、シートの燃焼を防止でき、防煙性能を向上させることが可能となる。
【0190】
また、付記8に記載の防煙垂れ壁によれば、抜け止め具と挟持手段とを備えるので、極めて容易な方法によりシートの脱落を防止することができ、施工性を向上させることが可能となる。