(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前輪ワイヤと前記キャスタロック切り換え部材の接続部、および前記後輪ワイヤと前記キャスタロック切り換え部材の接続部は、車体フレームに形成されるハウジングに収容される、請求項1または2に記載の乳母車。
前記被係合部は、前記キャスタロック切り換え部材の車幅方向外側端に設けられて前記キャスタロック切り換え部材の内部を覆うカバーである、請求項5に記載の乳母車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のような乳母車のプーリにあっては、以下に説明するような問題を生ずる。つまりプーリの中心を挟んで対向する位置に、各リードワイヤの一端がそれぞれ接続されているため、各リードワイヤの巻き出し長さおよび巻き取り長さはプーリの半周未満となる。したがって特許文献1にあっては、各リードワイヤの巻き出し長さおよび巻き取り長さを確保するためにプーリの直径を大きくしなければならない。そうするとベビーカー全体の外観の中でプーリが目立ってしまい、ベビーカーの美観を損ねてしまう。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも小型化されたオート四輪切り換え機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明による乳母車は、前脚および後脚を含む車体フレームと、前脚の下端部に固定される前輪キャスタ保持部材および前輪キャスタ保持部材に上下方向に延びる転回軸線回りに回動可能に保持されて前輪を軸支する前輪キャスタ回動部材を有し前輪の方向転回を可能にする前輪キャスタ機構と、前輪キャスタ保持部材に取り付けられロック位置で前輪キャスタ回動部材の回動を規制しフリー位置で前輪キャスタ回動部材の回動を許容する前輪キャスタロック部材と、前脚に沿って延び一端側が前輪キャスタロック部材と連結する前輪ワイヤと、後脚の下端部に固定される後輪キャスタ保持部材および後輪キャスタ保持部材に上下方向に延びる転回軸線回りに回動可能に保持されて後輪を軸支する後輪キャスタ回動部材を有し後輪の方向転回を可能にする後輪キャスタ機構と、後輪キャスタ保持部材に取り付けられロック位置で後輪キャスタ回動部材の回動を規制しフリー位置で後輪キャスタ回動部材の回動を許容する後輪キャスタロック部材と、後脚に沿って延び一端側が後輪キャスタロック部材と連結する後輪ワイヤと、前輪ワイヤの他端および後輪ワイヤの他端と接続するキャスタロック切り換え部材とを備えることを前提とする。そしてキャスタロック切り換え部材は、車体フレームに軸支されて正方向および逆方向に回動可能であり、軸線方向一端部に設けられて前輪ワイヤの他端部を正方向に巻き取り可能かつ逆方向に巻き出し可能な前輪ワイヤ巻き取り部と、軸線方向他端部に設けられて後輪ワイヤの他端部を逆方向に巻き取り可能かつ正方向に巻き出し可能な後輪ワイヤ巻き取り部とを含む。
【0009】
かかる本発明によれば、前輪ワイヤ巻き取り部と後輪ワイヤ巻き取り部が回動軸線の一方と他方に隔てて配置され、前輪ワイヤ巻き取り部は前輪ワイヤのみ巻き取ることから、後輪ワイヤをさらに巻き取るために大径にする必要が無い。したがって従来のプーリと比較して前輪ワイヤ巻き取り部の小径化を図ることができる。同様に後輪ワイヤ巻き取り部は後輪ワイヤのみ巻き取ることから、前輪ワイヤをさらに巻き取るために大径にする必要が無い。したがって従来のプーリと比較して後輪ワイヤ巻き取り部の小径化を図ることができる。この結果、キャスタロック切り換え部材の小型化を図ることができる。なお前輪および後輪ワイヤの一端は、前輪および後輪キャスタロック部材と直接連結してもよいし、あるいはロッドや他の部材を介して前輪および後輪キャスタロック部材と間接的に連結してもよい。
【0010】
本発明の一実施形態としてキャスタロック切り換え部材は、該キャスタロック切り換え部材の回動軸線に沿って延び車体フレームを貫通する軸部をさらに含み、前輪ワイヤ巻き取り部は、軸部よりも大径であって軸部の一端と結合し、後輪ワイヤ巻き取り部は、軸部よりも大径であって軸部の他端と結合する。かかる実施形態によれば、車体フレームのフレーム部材の断面寸法を超えない範囲でキャスタロック切り換え部材を大径化して、前輪ワイヤおよび後輪ワイヤの巻き取り長さを確保することができる。他の実施形態として、軸部は前輪ワイヤ巻き取り部または後輪ワイヤ巻き取り部よりも大径であってもよいし、あるいは同径であってもよい。
【0011】
本発明の好ましい実施形態として、前輪ワイヤとキャスタロック切り換え部材の接続部、および後輪ワイヤとキャスタロック切り換え部材の接続部は、車体フレームに形成されるハウジングに収容される。かかる実施形態によれば前輪および後輪ワイヤの巻き取り箇所が外部に露出せず、安全性を確保できる。
【0012】
キャスタロック切り換え部材の姿勢は特に限定されないが、本発明の好ましい実施形態としてキャスタロック切り換え部材の軸線は、車体フレームの車幅方向に延びる。かかる実施形態によれば、キャスタロック切り換え部材から前方へ延びる前輪ワイヤおよびキャスタロック切り換え部材から後方へ延びる後輪ワイヤを円滑に巻き取りないし巻き出すことができる。他の実施形態として、回動軸線が乳母車の前後方向に延びていてもよい。
【0013】
オート四輪機構は、押棒の位置に連動して、キャスタロックおよびキャスタフリーを切り換えると良い。本発明の一実施形態として車体フレームは、後脚に近い背面押し位置または前脚に近い対面押し位置に選択的に変位する押棒をさらに含み、キャスタロック切り換え部材は、押棒と係合する被係合部をさらに含み、背面押し位置から対面押し位置に切り換わる押棒がキャスタロック切り換え部材の被係合部と係合することにより逆方向に回動されて、後輪ワイヤを巻き取るとともに前輪ワイヤを巻き出して、後輪キャスタロック部材をフリー位置にするとともに前輪キャスタロック部材をロック位置にする。あるいはキャスタロック切り換え部材は、対面押し位置から背面押し位置に切り換わる押棒がキャスタロック切り換え部材の被係合部と係合することにより正方向に回動されて、前輪ワイヤを巻き取るとともに後輪ワイヤを巻き出して、前輪キャスタロック部材をフリー位置にするとともに後輪キャスタロック部材をロック位置にする。かかる実施形態によれば、乳母車の操作者がキャスタロック切り換え部材を操作しなくても、自動的に後輪キャスタフリーかつ前輪キャスタロックにされる。他の実施形態として、押棒以外で対面押し位置あるいは背面押し位置に選択的にされる切り換え部材を備え、かかる切り換え部材をキャスタロック切り換え部材の被係合部に係合させてもよい。
【0014】
あるいはキャスタロック切り換え部材は、対面押し位置から背面押し位置に切り換わる押棒が被係合部と係合することにより正方向に回動されて、前輪ワイヤを巻き取るとともに後輪ワイヤを巻き出して、前輪キャスタロック部材をフリー位置にするとともに後輪キャスタロック部材をロック位置にしてもよい。
【0015】
本発明の好ましい実施形態として被係合部は、キャスタロック切り換え部材の車幅方向外側端に設けられてキャスタロック切り換え部材の内部を覆うカバーである。かかる実施形態によれば押棒とキャスタロック切り換え部材の係合を実現するとともに、キャスタロック切り換え部材の内部構造を覆うことができる。したがって安全性を確保できる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態としてキャスタロック切り換え部材を、正回転方向または逆回転方向に付勢するばねをさらに備える。かかる実施形態によれば押棒が被係合部と係合しない等の理由で、キャスタロック切り換え部材が別な部材によって正方向または逆方向に回動されない場合でも、キャスタロック切り換え部材を正方向または逆方向に自動的に回動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、ワイヤの巻き取るキャスタロック切り換え部材を小型化することができる。したがってワイヤの巻き取り機構を目立たなくして、乳母車全体の見栄えを良くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1および
図2は、本発明の基本構成を模式的に示す側面図であって、紙面左側を乳幼児用座席の前方とし、乳母車の乳幼児用座席の左側からみた状態を表す。
図1では押棒が後方の背面押し位置にされ、
図2では押棒が前方の対面押し位置にされる。乳母車10は、主要部品として、車体フレーム11と、前輪キャスタ機構14と、後輪キャスタ機構15と、押棒29と備える。
【0020】
車体フレーム11は、前脚12、後脚13、座席支持部材31、アームレスト32、フレーム部材33、図示しない車幅方向部材、および図示しない逆U字状の背もたれ支持部材を含む。これら車体フレーム11のフレーム部材のうち前脚12、後脚13、座席支持部材31、アームレスト32、およびフレーム部材33は、乳母車10の車幅方向左右に離れて配置され対をなす。これら1対のフレーム部材は車幅方向部材によって互いに連結されて
図1および
図2に示すように枠体(車体フレーム11)を構成する。立体的な枠体になる車体フレーム11には図示しない乳幼児用座席が取り付けられる。このとき1対の座席支持部材31は乳幼児用座席の座部を支持する。フレーム部材33は上下方向に延び、アームレスト32を支持する。
【0021】
前脚12は乳母車10の前側で上下方向に延び、前脚12の上端は、乳母車10の前後方向に延びるアームレスト32の前端と連結する。後脚13は乳母車10の後側で上下方向に延び、後脚13の上端は前脚12の上端よりも後方でアームレスト32の前端領域と連結する。アームレスト32の後端部は、上下方向に延びるフレーム部材33の上端部と連結する。
【0022】
前脚12および後脚13は、乳母車10の車幅方向にみてハの字状に配置され、その上端部同士が近接するとともに、その下端部同士が離隔する。アームレスト32よりも下方には、乳母車10の前後方向に延びる座席支持部材31が配置される。座席支持部材31の前端部は前脚12の中央部と連結する。座席支持部材31の後端部は、後脚13の中央部と、押棒29の下端部と、フレーム部材33の下端部と連結する。押棒29は車体フレーム11に前後方向に揺動可能に設けられ、
図1に示す背面押し位置および
図2に示す対面押し位置の間で切り替え可能である。具体的には後脚13に隣り合う位置に揺動軸29cが配置される。この揺動軸29cは車幅方向に延び、押棒29の下端部と回動可能に連結する。
【0023】
前輪キャスタ機構14は、前脚12の下端部に設けられる。前輪キャスタ機構14は、前脚12の下端部に固定される前輪キャスタ保持部材16、および前輪キャスタ保持部材16の下側に配置される前輪キャスタ回動部材20を有する。前輪キャスタ回動部材20は、前輪キャスタ保持部材16に上下方向に延びる転回軸線回りに回動可能に保持されて、前輪18を軸支する。これにより前輪キャスタ回動部材20は、前輪18の方向転回を可能にする。
【0024】
後輪キャスタ機構15は、後脚13の下端部に設けられる。後輪キャスタ機構15も、前輪キャスタ機構14と同様であり、後脚13の下端部に固定される後輪キャスタ保持部材17、および後輪キャスタ保持部材17に上下方向に延びる転回軸線回りに回動可能に保持されて後輪19を軸支する後輪キャスタ回動部材21を有し、後輪19の方向転回を可能にする。
【0025】
前輪キャスタ保持部材16には前輪キャスタロック部材22と、ばね26が設けられる。前輪キャスタロック部材22は、下方のロック位置および上方のフリー位置のいずれか一方に変位可能である。前輪キャスタロック部材22は、ロック位置で
図2に示すように前輪キャスタ保持部材16から下方へ突出し、前輪キャスタ回動部材20と係合する。これにより前輪キャスタロック部材22は、前輪キャスタ回動部材20が転回軸線回りに回動することを規制する。また前輪キャスタロック部材22は、フリー位置で
図1に示すように前輪キャスタ保持部材16に収容され、前輪キャスタ回動部材20と非係合になる。これにより前輪キャスタロック部材22は、前輪キャスタ回動部材20の転回軸線回りの回動を許容する。ばね26は前輪キャスタロック部材22を下方へ付勢する。
【0026】
後輪キャスタ保持部材17には後輪キャスタロック部材23とばね27が設けられる。後輪キャスタロック部材23は、下方のロック位置および上方のフリー位置のいずれか一方に変位可能であり、ロック位置で
図1に示すように後輪キャスタ回動部材21の回動を規制し、フリー位置で
図2に示すように後輪キャスタ回動部材21の回動を許容する。ばね27はばね26よりも強い力で後輪キャスタロック部材23を下方へ付勢する。
【0027】
車体フレーム11には前輪ワイヤ24および後輪ワイヤ25が変位可能に設けられる。前輪ワイヤ24は、パイプ状の前脚12と、アームレスト32内部と、パイプ状の後脚13に順次通される。前輪ワイヤ24の一端は、前輪キャスタ保持部材16の内部で前輪キャスタロック部材22と接続する。前輪ワイヤ24の他端は、後脚13の内部で、キャスタロック切り換え部材30と接続する。後輪ワイヤ25は、パイプ状の後脚13に通される。後輪ワイヤ25の一端は、後輪キャスタ保持部材17の内部で後輪キャスタロック部材23と接続する。後輪ワイヤ25の他端は、後脚13の内部で、キャスタロック切り換え部材30と接続する。前輪ワイヤ24および後輪ワイヤ25は屈曲自在な金属製の紐である。
【0028】
図3は、キャスタロック切り換え部材を後脚ととともに拡大して示す側面図であり、乳母車の車幅方向左側からみた状態を表す。
図4は、キャスタロック切り換え部材を車体フレームとともに示す部分斜視図である。
図5は、キャスタロック切り換え部材を車体フレームとともに示す分解斜視図である。
図6は、キャスタロック切り換え部材を車体フレームとともに示す縦断面図である。キャスタロック切り換え部材30は、車体フレーム11に保持されて、車幅方向に延びる回動軸線O(以下、単に軸線Oという)を中心として正方向および逆方向に回動可能である。
【0029】
キャスタロック切り換え部材30は、軸線Oに沿って延び、軸線O方向一端部に設けられる前輪ワイヤ巻き取り部34と、軸線O方向他端部に設けられる後輪ワイヤ巻き取り部35とを含む。軸線Oは乳母車10の車幅方向に延びる。前輪ワイヤ巻き取り部34は、
図5に示すように後脚13の車幅方向外側に形成される円形ハウジング13sの中に収容される。後輪ワイヤ巻き取り部35は、後脚13の車幅方向内側に形成される円形ハウジング13tの中に収容される。
【0030】
前輪ワイヤ巻き取り部34は内部に、回動中心になる中心部34cと、中心部34cから外径方向に突出するワイヤ接続部34rを有する。ワイヤ接続部34rには丸穴34hが形成される。丸穴34hは円柱形状にされた前輪ワイヤ他端24nを保持する。前輪ワイヤ巻き取り部34が正方向に回動すると前輪ワイヤ24は中心部34cの外周に沿って巻き取られる。これに対し前輪ワイヤ巻き取り部34が逆方向に回動すると中心部34cに巻き付いている前輪ワイヤ24が巻き出される。この点については後で詳細に説明する。
【0031】
中心部34c、ワイヤ接続部34r、および中心部34cに巻き付いている前輪ワイヤ24は、車幅方向外側から、外側カバー36で覆われる。このため前輪ワイヤ巻き取り部34の内部は車幅方向外側に向かって露出しない。外側カバー36は、円形であり、前輪ワイヤ巻き取り部34と一体に結合して、前輪ワイヤ巻き取り部34と共に回動する。外側カバー36には押棒29と係合する被係合部39が設けられる。被係合部39よりも車幅方向外側に配置される押棒29には、突起29pが設けられる。突起29pは車幅方向内側に突出し、被係合部39と係合可能である。
【0032】
被係合部39は、外側カバー36の円形端面のうちの一部を車幅方向内側に窪ませて形成した段差面であり、車両後方に指向する。押棒29が後方の背面押し位置から前方の対面押し位置に移動すると、押棒29が外側カバー36に近づき、突起29pが被係合部39に係合してトルクを付与し、キャスタロック切り換え部材30を回動させる。この点については後で詳細に説明する。
【0033】
後輪ワイヤ巻き取り部35も同様に、回動中心になる中心部35cと、中心部35cから外径方向に突出するワイヤ接続部35rと、丸穴35hを有する。丸穴35hは円柱形状にされた後輪ワイヤ他端25nを保持する。但し後輪ワイヤ巻き取り部35は、前輪ワイヤ巻き取り部34とは反対の回転方向に後輪ワイヤ25を巻き取りおよび巻き出す。この点については後で詳細に説明する。
【0034】
後輪ワイヤ巻き取り部35は、車幅方向内側から、内側カバー37で覆われる。このため後輪ワイヤ巻き取り部35の内部は乳幼児座席に向かって露出しない。内側カバー37は後脚13の表面に取付固定され、前輪ワイヤ巻き取り部34と共に回動しない。これによりカバーは、乳幼児用座席に近い側に位置する後輪ワイヤ巻き取り部35を覆い隠す。
【0035】
前輪ワイヤ巻き取り部34および後輪ワイヤ巻き取り部35は円板状である。キャスタロック切り換え部材30は軸部38をさらに含む。軸部38は、軸線Oに沿って延び、後脚13に設けられる円筒部材13cの中心孔を貫通する。
【0036】
前輪ワイヤ巻き取り部34の中心には軸部38aが形成される。後輪ワイヤ巻き取り部35の中心には軸部38bが形成される。円筒部材13cの両端開口のうち車幅方向外側から軸部38aを差し込み、円筒部材13cの車幅方向内側の開口から軸部38bを差し込み、共に凹凸形状にされた軸部38a,38bの先端同士を突き合わせて接続することにより、軸部38aおよび軸部38bは相対回転不能に係合して軸部38が構成される。このため軸部38の一端側は前輪ワイヤ巻き取り部34と結合し、他端側は後輪ワイヤ巻き取り部35と結合する。リベット42の頭部は外側カバー36に係合し、リベット42の先端領域は外側カバー36と、前輪ワイヤ巻き取り部34と、軸部38と、後輪ワイヤ巻き取り部35とを順次貫通してこれらを同軸に接続固定する。これにより前輪ワイヤ巻き取り部34と後輪ワイヤ巻き取り部35は軸部38で連結固定される。なおリベット42の先端部は、内側カバー37の中心に形成される通孔37hを貫通し、車幅方向内側へ突出する。
【0037】
軸部38aの外周には、ねじりばね40が設けられる。ねじりばね40は中心部34cの内部に収容される。ねじりばね40の一端は後脚13の円形ハウジング13sと係合し、ねじりばね40の他端は前輪ワイヤ巻き取り部34の中心部34cと係合する。これによりねじりばね40は前輪ワイヤ巻き取り部34を周方向に付勢する。
【0038】
また軸部38bの外周には、ねじりばね41が設けられる。ねじりばね41は中心部35cの内部に収容される。ねじりばね41の一端は後脚13の円形ハウジング13tと係合し、ねじりばね41の他端は後輪ワイヤ巻き取り部35の中心部35cと係合する。これによりねじりばね41は後輪ワイヤ巻き取り部35を周方向に付勢する。
【0039】
まず押棒29が後方の背面押し位置(
図1)にされる場合につき説明する。
【0040】
図7は、キャスタロック切り換え部材を車体フレームとともに示す正面図であり、乳母車の前後方向にみた状態を表す。
図8Aは、押棒と係合しないキャスタロック切り換え部材を示す側面図であり、
図7中のA方向(車幅方向外側)からみた状態を表す。
図8Bは、前輪キャスタをフリーにした状態を示す横断面図であり、
図7中のB―Bで切断し切断面を矢の方向からみた状態を表す。
図8Cは、後輪キャスタをロックした状態を示す横断面図であり、
図7中のC―Cで切断し切断面を矢の方向からみた状態を表す。
図8A〜
図8Cは同一状態を表す。
【0041】
押棒29が後方の背面押し位置(
図1)にされる場合、押棒29はキャスタロック切り換え部材30よりも後方に離れており、係合部としての突起29pは被係合部39と係合しない。キャスタロック切り換え部材30はねじりばね40,41によって
図8A〜
図8Cに示すように正方向に付勢される。そしてキャスタロック切り換え部材30のワイヤ接続部34rが円形ハウジング13sの内周面に形成される正方向ストッパ13uに当接し、キャスタロック切り換え部材30の正方向の回動を規制する。
図8Bに示すように前輪ワイヤ24は前輪ワイヤ巻き取り部34に巻き取られ、前輪ワイヤ24の一端と接続する22は上方のフリー位置Fにされる。20はキャスタとしての方向転回を許容される。
【0042】
これに対し後輪ワイヤ25は後輪ワイヤ巻き取り部35から巻き出され、後輪ワイヤ25の一端と接続する23は下方のロック位置Lにされる。21はキャスタとしての方向転回を禁止される。これにより押棒29が後方の背面押し位置(
図1)にされると、乳母車10の操作者がキャスタロック切り換え部材30を操作しなくても、自動的に前輪キャスタフリーかつ後輪キャスタロックにされる。
【0043】
なお前輪ワイヤ24はワイヤチューブ44に通されて、ワイヤチューブ44内を円滑に進退動する。ワイヤチューブ44の一端は16に固定され、ワイヤチューブ44の他端は
図8Bに示すように円形ハウジング13sの内周に形成されて内径方向へ突出する逆方向ストッパ13vに固定される。前輪ワイヤ24の端部は、ワイヤチューブ44の他端から引き出されて延び、ワイヤ接続部34rに取り付けられる。
【0044】
後輪ワイヤ25も同様にワイヤチューブ45に通されて、ワイヤチューブ45内を円滑に進退動する。ワイヤチューブ45の一端は17に固定され、ワイヤチューブ45の他端は
図8Cに示すように内側カバー37の内壁面に形成される保持部37bに固定される。後輪ワイヤ25の端部は、ワイヤチューブ45の他端から引き出されて延び、ワイヤ接続部35rに取り付けられる。なおワイヤチューブ44,45は省略可能である。
【0045】
次に押棒29が前方の対面押し位置(
図2)にされる場合につき説明する。
【0046】
図9Aは、押棒と係合するキャスタロック切り換え部材を示す側面図であり、
図7中のA方向(車幅方向外側)からみた状態を表す。
図9Bは、前輪キャスタをロックした状態を示す横断面図であり、
図7中のB―Bで切断し切断面を矢の方向からみた状態を表す。
図9Cは、後輪キャスタをフリーにした状態を示す横断面図であり、
図7中のC―Cで切断し切断面を矢の方向からみた状態を表す。
図9A〜
図9Cは同一状態を表す。
【0047】
押棒29が前方の対面押し位置(
図2)にされる場合、押棒29は後方からキャスタロック切り換え部材30に近づき、押棒29の突起29pが被係合部39と係合する。そして押棒29は被係合部39を押し込み、ねじりばね40,41の付勢力に抗してキャスタロック切り換え部材30を逆方向に回動させる(
図9A)。なおキャスタロック切り換え部材30が逆方向へ過度に回動しようとしても、キャスタロック切り換え部材30のワイヤ接続部34rが円形ハウジング13sの内周面に形成される逆方向ストッパ13vに当接して、キャスタロック切り換え部材30が逆方向へ過度に回動することを防止する。
図9Bに示すように前輪ワイヤ24は前輪ワイヤ巻き取り部34から巻き出され、前輪ワイヤ24の一端と接続する22は下方のロック位置Lにされる。20はキャスタとしての方向転回を禁止される。
【0048】
これに対し後輪ワイヤ25は後輪ワイヤ巻き取り部35に巻き取られ、後輪ワイヤ25の一端と接続する23は上方のフリー位置Fにされる。21はキャスタとしての方向転回を許容される。これにより押棒29が前方の対面押し位置(
図2)にされると、乳母車10の操作者がキャスタロック切り換え部材30を操作しなくても、自動的に後輪キャスタフリーかつ前輪キャスタロックにされる。
【0049】
ところで本実施形態によれば、キャスタロック切り換え部材30は、車体フレーム11に軸支されて正方向および逆方向に回動可能であり、
図6に示すように軸線O方向一端部に設けられて前輪ワイヤ24の他端部を正方向に巻き取り可能かつ逆方向に巻き出し可能な前輪ワイヤ巻き取り部34と、軸線O方向他端部に設けられて後輪ワイヤ25の他端部を逆方向に巻き取り可能かつ正方向に巻き出し可能な後輪ワイヤ巻き取り部35とを含む。このように前輪ワイヤ巻き取り部34は前輪ワイヤ24のみ巻き取ることから、後輪ワイヤ25をさらに巻き取るために大径にする必要が無い。したがって従来のプーリと比較して前輪ワイヤ巻き取り部34の小径化を図ることができる。同様に後輪ワイヤ巻き取り部35は後輪ワイヤ25のみ巻き取ることから、前輪ワイヤ24をさらに巻き取るために大径にする必要が無い。したがって従来のプーリと比較して後輪ワイヤ巻き取り部35の小径化を図ることができる。この結果、キャスタロック切り換え部材30の小型化を図ることができる。
【0050】
また本実施形態によれば、キャスタロック切り換え部材30は、キャスタロック切り換え部材30の回動軸線Oに沿って延び車体フレーム11を貫通する軸部38をさらに含み、前輪ワイヤ巻き取り部34は軸部38よりも大径であって軸部38の一端と結合し、後輪ワイヤ巻き取り部35は軸部38よりも大径であって軸部の他端と結合する。これにより車体フレーム11のフレーム断面寸法を超えない範囲でキャスタロック切り換え部材30を大径化して、前輪ワイヤ24および後輪ワイヤ25の巻き取り長さを確保することができる。
【0051】
また本実施形態によれば、前輪ワイヤ24とキャスタロック切り換え部材30が接続するワイヤ接続部34r、および後輪ワイヤ25とキャスタロック切り換え部材30が接続するワイヤ接続部35rは、車体フレーム11に形成される円形ハウジング13s,13に収容される。これによりワイヤの巻き取り箇所になる中心部34c,35cが露出せず、安全性を確保できる。本実施形態のワイヤ接続部35rおよびワイヤ接続部34rは軸線Oと中心として異なる位相に配設されるが、図示しない変形例として同じ位相に配設されてもよい。本実施形態によれば、軸線Oと中心として共通する周方向領域にワイヤ24,25同士を巻き取り可能である。
【0052】
また本実施形態によれば、キャスタロック切り換え部材30の回動軸線Oは、車体フレームの車幅方向に延びることから、キャスタロック切り換え部材30から前方へ延びる前輪ワイヤ24およびキャスタロック切り換え部材30から後方へ延びる後輪ワイヤ25を円滑に巻き取りないし巻き出すことができる。
【0053】
また本実施形態によれば、車体フレーム11は、下端が揺動軸29cに軸支されて上端が後脚13に近い背面押し位置(
図1)または前脚12に近い対面押し位置(
図2)に選択的に変位する押棒29をさらに含む。キャスタロック切り換え部材30は、押棒29と係合する被係合部39をさらに含み、背面押し位置から対面押し位置に切り換わる押棒29が被係合部39と係合することにより逆方向に回動されて、後輪ワイヤ25を巻き取るとともに前輪ワイヤ24を巻き出して、後輪キャスタロック部材23をフリー位置Fにするとともに前輪キャスタロック部材22をロック位置Lにする。これにより乳母車10の操作者がキャスタロック切り換え部材30を操作しなくても、自動的に後輪キャスタフリーかつ前輪キャスタロックにされる。
【0054】
あるいは図示しない変形例としてキャスタロック切り換え部材30は、対面押し位置から背面押し位置に切り換わる押棒が被係合部39と係合することにより正方向に回動されて、前輪ワイヤ24を巻き取るとともに後輪ワイヤ25を巻き出して、前輪キャスタロック部材22をフリー位置Fにするとともに後輪キャスタロック部材23をロック位置Lにしてもよい。
【0055】
また本実施形態によれば、被係合部39は、キャスタロック切り換え部材30の車幅方向外側端に設けられてキャスタロック切り換え部材30の内部を覆うカバーであることから、押棒29とキャスタロック切り換え部材30の係合を実現するとともに、キャスタロック切り換え部材30の内部構造、具体的にはワイヤ接続部34rや中心部34cを覆うことができる。したがって安全性を確保できる。
【0056】
また本実施形態によれば、キャスタロック切り換え部材30を、
図8A〜
図8Cに矢で示す正回転方向に付勢するねじりばね40,41をさらに備えることから、押棒29が被係合部39と係合せず、キャスタロック切り換え部材30が別な部材によって正方向に回動されない場合でも、キャスタロック切り換え部材30を正方向に自動的に回動させることができる。
【0057】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 乳母車、 11 車体フレーム、 12 前脚、
13 後脚、 13c 円筒部材、 13s,13t 円形ハウジング、
13u 正方向ストッパ、 13v 逆方向ストッパ、
14 前輪キャスタ機構、 15 後輪キャスタ機構、
16 前輪キャスタ保持部材、 17 後輪キャスタ保持部材、
18 前輪、 19 後輪、 20 前輪キャスタ回動部材、
21 後輪キャスタ回動部材、 22 前輪キャスタロック部材、
23 後輪キャスタロック部材、 24 前輪ワイヤ、
25 後輪ワイヤ、 29 押棒、
30 キャスタロック切り換え部材、 31 座席支持部材、
32 アームレスト、 33 フレーム部材、
34 前輪ワイヤ巻き取り部、 35 後輪ワイヤ巻き取り部、
36 外側カバー、 37 内側カバー、 38 軸部、
39 被係合部、 44,45 ワイヤチューブ、 F フリー位置、
L ロック位置、 O 軸線(回動軸線)。