特許第6557118号(P6557118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6557118-合成樹脂製ギヤ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557118
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】合成樹脂製ギヤ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/06 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   F16H55/06
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-222077(P2015-222077)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-89791(P2017-89791A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 保典
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−43813(JP,A)
【文献】 特開2009−222219(JP,A)
【文献】 特開平10−278124(JP,A)
【文献】 実開昭51−96180(JP,U)
【文献】 特開平11−13861(JP,A)
【文献】 特開2008−75872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に両端部を支持される支軸と、
前記支軸の中間部から径方向に広がる円板状のウェブと、
前記ウェブの外周に連接され、外周にギヤ歯を有するリムと、
前記ウェブの両面から突出し、前記支軸から間隔をおいて前記支軸を同軸に囲む円筒形のボスと
を合成樹脂で一体に成形してなることを特徴とする合成樹脂製ギヤ。
【請求項2】
請求項1に記載の合成樹脂製ギヤにおいて、前記ウェブの少なくとも一面には、前記リムから離れた位置で前記支軸に同軸に延びる環状の第1リブと、前記第1リブおよび前記ボスの間を湾曲しながら延びて、前記第1リブおよび前記ボスを相互に接続する複数筋の第2リブとが一体に突設されることを特徴とする合成樹脂製ギヤ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の合成樹脂製ギヤにおいて、前記支軸に中空部を設けて、該支軸の肉厚を前記ウェブの肉厚と等しく、もしくは略等しく設定したことを特徴とする合成樹脂製ギヤ。
【請求項4】
請求項3記載の合成樹脂製ギヤにおいて、前記中空部を支軸の一端部側で閉塞し、この支軸の一端部をジョイント部としたことを特徴とする合成樹脂製ギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支軸、ウェブ、リムおよびボスを合成樹脂で一体に成形してなる合成樹脂製ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に開示されるように、合成樹脂製ギヤはボスから径方向に広がるウェブと、ウェブの外周から連続し、外周にギヤ歯を有するリムとを有する。ボスの中心穴を挿通する支軸が構造体に支持される際に、ボスは、構造体に突き当てられて、軸方向に構造体とウェブとの間隔を確保する役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28277号公報
【特許文献2】特許第4473605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コスト低減および軽量化のために、単純に支軸とボスとを合成樹脂により一体化すると、小径の支軸と大径のボスとが同軸に連なることから、特に大径のボスのボリュームは、支軸の一部を取り込むことで大となり、このため成形後の冷却時、ボスには大きな引けが生じ、これが支軸のみならず、ウェブにも影響し、ギヤの各部に歪みを来す虞がある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、形状歪みを抑制することができる高品質の合成樹脂製ギヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る合成樹脂製ギヤは、構造体に両端部を支持される支軸と、前記支軸の中間部から径方向に広がる円板状のウェブと、前記ウェブの外周に連接され、外周にギヤ歯を有するリムと、前記ウェブの両面から突出し、前記支軸から間隔をおいて前記支軸を同軸に囲む円筒形のボスとを合成樹脂で一体に成形してなる。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記ウェブの少なくとも一面には、前記リムから離れた位置で前記支軸に同軸に延びる環状の第1リブと、前記第1リブおよび前記ボスの間を湾曲しながら延びて、前記第1リブおよび前記ボスを相互に接続する複数筋の第2リブとが一体に突設される。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記支軸に中空部を設けて、該支軸の肉厚を前記ウェブの肉厚と等しく、もしくは略等しく設定した。
【0009】
第4側面によれば、前記中空部を支軸の一端部側で閉塞し、この支軸の一端部をジョイント部とした。
【発明の効果】
【0010】
第1側面によれば、利用にあたって合成樹脂製ギヤは支軸で構造体に両持ち支持される。このとき、合成樹脂製ギヤはボスで構造体に突き当てられ、構造体に対して軸方向に位置決めされる。ここで、支軸と、前記支軸の中間部から径方向に広がる円板状のウェブと、前記ウェブの外周に連接され、外周にギヤ歯を有するリムと、前記ウェブの両面から突出し、前記支軸から間隔をおいて前記支軸を同軸に囲む円筒形のボスとが合成樹脂で一体に成形されるので、支軸付き合成樹脂製ギヤの各部の肉厚や軸径を極力均等にすることができる。即ち、ボスを円筒状にして支軸から離して配置したことで、大径のボスといえども、各部の肉厚を均等に薄く設定して、そのボリュームを減少させることができるので、成形後の引けによる歪みを抑えることができる。一方、支軸は、ボスから離れたことで、その各部を同径にすることができ、これも成形後の引けによる歪みを抑えることができる。かくして高品質で軽量な支軸付きの合成樹脂製ギヤを得ることができる。
【0011】
第2側面によれば、第1リブおよび第2リブは効果的にウェブの剛性を補強する。しかも、環境の温度変化でウェブが膨張収縮しても、湾曲した第2リブが適度に撓み、リムの形状歪みを防ぎ、ギヤ歯の形状精度を維持することができる。したがって、この支軸付き合成樹脂製ギヤは、環境温度が変化しても、相手ギヤとの良好な噛合状態を維持することができる。また、環状の第1リブは、成形時の引けによる外周のギヤ歯の歪みを抑制する。
【0012】
第3側面によれば、支軸に中空部を設けたので、支軸付きの合成樹脂製ギヤの更なる軽量化を図ることができる。その上、この支軸の肉厚をウェブの肉厚と等しく設定したことで、成形後、支軸およびウェブの冷却速度が等しくなり、互いの引けが影響し合うことを防ぎ、支軸付きの合成樹脂製ギヤの一層の品質向上に寄与し得る。
【0013】
第4側面によれば、支軸の中空部が支軸の一端側で閉塞されることで、その一端部の剛性が強化される。この強化された支軸の一端部をジョイント部としたので、このジョイント部に駆動機器または従動機器などを強固に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る合成樹脂製ギヤの全体構成を概略的に示す概念図である。
図2】合成樹脂製ギヤの垂直断面図である。
図3】合成樹脂製ギヤの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は一実施形態に係る合成樹脂製ギヤ11を概略的に示す。合成樹脂製ギヤ11は、外周にギヤ歯12を有するギヤ本体13を備える。ギヤ本体13は回転軸Xs回りで回転する。ギヤ歯12は回転軸Xsに同軸の環状に配列される。ここでは、合成樹脂製ギヤ11は平歯車やはずば歯車に形成される。したがって、ギヤ歯12は相手方のギヤに噛み合って回転を伝達する。ただし、合成樹脂製ギヤ11はその他の種類の歯車に形成されてもよい。
【0017】
ギヤ本体13には支軸14が一体に結合される。支軸14はギヤ本体13の両面から回転軸Xsに沿ってそれぞれ延びる第1支軸部15aおよび第2支軸部15bを含む。第1支軸部15aおよび第2支軸部15bは回転軸Xsに重なる軸心を備える。第1支軸部15aおよび第2支軸部15bは個別に構造体16a、16bに回転自在に支持される。支持にあたって、第1支軸部15aは構造体16aに固定される第1滑り軸受け17aに受け入れられ、第2支軸部15bは構造体16bに固定される第2滑り軸受け17bに受け入れられる。こうして合成樹脂製ギヤ11は回転軸Xs回りで回転自在に両持ち支持される。
【0018】
ギヤ本体13にはボス21が一体に結合される。ボス21はギヤ本体13の両面から回転軸Xsに沿ってそれぞれ延びる第1ボス部22aおよび第2ボス部22bを含む。第1ボス部22aの一端は第1滑り軸受け17a周りで構造体16aに突き当てられる。こうして第1滑り軸受け17a側では構造体16aとギヤ本体13との間に軸方向に間隔が確保される。第2ボス部22bの一端は第2滑り軸受け17b周りで構造体16bに突き当てられる。こうして第2滑り軸受け17b側では構造体16bとギヤ本体13との間に軸方向に間隔が確保される。
【0019】
図2に示されるように、ギヤ本体13は、支軸14から径方向に広がる円板状のウェブ23を備える。ウェブ23の両面から第1支軸部15aおよび第2支軸部15bはそれぞれ反対向きに突出する。こうしてウェブ23は支軸14の中間部に配置される。ウェブ23の外周には、外向きにギヤ歯12を有するリム24が連続する。
【0020】
第1ボス部22aおよび第2ボス部22bはウェブ23の両面から個別に突出する。第1ボス部22aは、第1支軸部15aから間隔をおいて第1支軸部15aを同軸に囲む円筒形に形成される。第2ボス部22bは、第2支軸部15bから間隔をおいて第2支軸部15bを同軸に囲む円筒形に形成される。その結果、第1ボス部22aおよび第2ボス部22bの内側では、ウェブ23は均一な板厚を有し、第1支軸部15aおよび第2支軸部15bは均一な径を有することができる。第1ボス部22aおよび第2ボス部22bは均一な壁厚を有する。支軸14、ウェブ23、リム24およびボス21は合成樹脂で一体に成形されてなる。合成樹脂には例えばポリアセタール、ナイロン、その他が用いられればよい。
【0021】
支軸14は中空部25を有する。支軸14の肉厚はボス21およびウェブ23の肉厚に等しい。もしくは、支軸14の肉厚はボス21およびウェブ23の肉厚に略等しく設定されればよい。中空部25は支軸14の一端で閉塞する。中空部25の他端は開放されてもよい。閉塞された一端部にはジョイント部26が設けられる。ジョイント部26は支軸14の軸心に平行な平面で支軸14の円筒面を切り欠く。
【0022】
図3に示されるように、ウェブ23の少なくとも一面には環状の第1リブ27と複数筋の第2リブ28とが一体に連続する。第1リブ27は、リム24から離れた位置で支軸14に同軸に延びて円形を描く。個々の第2リブ28は第1リブ27およびボス21を相互に接続する。第2リブ28は、第1リブ27およびボス21の間を湾曲しながら延びる。第1リブ27および第2リブ28はウェブ23の表面に連続しウェブ23の表面から盛り上がる。図3では、ウェブ23の片面に第1リブ27および第2リブ28は形成されるものの、これら第1リブ27および第2リブ28に重なるようにウェブ23の反対面にもリブが形成されてもよい。
【0023】
合成樹脂製ギヤ11は支軸14で構造体16a、16bに両持ち支持される。このとき、合成樹脂製ギヤ11はボス21で構造体16a、16bに突き当てられ、構造体16a、16bに対して軸方向に位置決めされる。ここで、支軸14と、支軸14の中間部から径方向に広がる円板状のウェブ23と、ウェブ23の外周に連接され、外周にギヤ歯12を有するリム24と、ウェブ23の両面から突出し、支軸14から間隔をおいて支軸14を同軸に囲む円筒形のボス21とが合成樹脂で一体に成形されるので、支軸付き合成樹脂製ギヤ11の各部の肉厚や軸径を極力均等にすることができる。即ち、ボス21を円筒状にして支軸14から離して配置したことで、大径のボス21といえども、各部の肉厚を均等に薄く設定して、そのボリュームを減少させることができるので、成形後の引けによる歪みを抑えることができる。一方、支軸14は、ボス21から離れたことで、その各部を同径にすることができ、これも成形後の引けによる歪みを抑えることができる。かくして高品質で軽量な支軸付きの合成樹脂製ギヤ11を得ることができる。
【0024】
合成樹脂製ギヤ11では第1リブ27および第2リブ28は効果的にウェブ23の剛性を補強する。しかも、環境の温度変化でウェブ23が膨張収縮しても、湾曲した第2リブ28が適度に撓み、リム24の形状歪みを防ぎ、ギヤ歯12の形状精度を維持することができる。したがって、この支軸付き合成樹脂製ギヤ11は、環境温度が変化しても、相手ギヤとの良好な噛合状態を維持することができる。また、環状の第1リブ27は、成形時の引けによる外周のギヤ歯の歪みを抑制する。
【0025】
また、支軸14に中空部25を設けたので、支軸付きの合成樹脂製ギヤ11の更なる軽量化を図ることができる。その上、この支軸14の肉厚をウェブ23の肉厚と等しく設定したことで、成形後、支軸14およびウェブ23の冷却速度が等しくなり、互いに引けが影響し合うことを防ぎ、支軸付きの合成樹脂製ギヤ11の一層の品質向上に寄与し得る。
【0026】
また、支軸14の中空部25が支軸14の一端側で閉塞されることで、その一端部の剛性が強化される。この強化された支軸14の一端部をジョイント部26としたので、このジョイント部26に駆動機器または従動機器などを強固に連結することができる。
【符号の説明】
【0027】
11…合成樹脂製ギヤ、12…ギヤ歯、14…支軸、21…ボス、23…ウェブ、24…リム、27…第1リブ、28…第2リブ。
図1
図2
図3