【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、無機ガラスシートを含むガラス基材の開口部の端部を、開口部の周りに結合せせることができる結合トラックを含む補強用部材をガラス基材の主面に結合させることによって補強する。この結合トラックは、ガラス基材の主面への結合後にガラス基材から突出する補強用部材の一体部分によって支持される。結合トラックは、部材を開口部の周りに結合させるための接着剤を受け取る。この補強用部材は、ガラス基材に結合されたならそれから突出して開口部を隠蔽するディスクでよい。「開口部の周りに」との表現は、結合トラックの少なくとも一部分が開口部の全体に延在することを意味するものであり、結合トラックを支持する面は開口部を少なくとも部分的に隠蔽してもよく、あるいは逆に開口部を隠蔽しなくてもよいものと理解される。よって、結合トラック及び開口部を含むガラス基材の主面の両者と接触する接着剤は、連続的にあるいは不連続的に、開口部の全体に延在する。
【0010】
従って、本発明は第一に、無機ガラスシートを含むガラス基材を含むグレージングユニットに関し、このガラス基材は貫通する開口部を含み、当該ガラス基材の主面には補強用部材が当該開口部を取り囲む結合トラックを用いて結合される。
【0011】
とりわけ、ガラス基材に面し又はその開口部の内側で、グレージングユニットの内部に電気モジュールを収容してもよい。本発明による補強用部材は、この電気モジュールを適所に保持するのに寄与することができる。特に、補強用部材は電気モジュールを受け入れるハウジングを含むことができる。補強用部材は、補強すべきガラス基材の開口部に面して位置する孔(円形又は非円形状の)を含むことができる。一般に、補強用部材の孔の軸線はガラス基材の開口部の軸線と一致する。この孔は、結合トラックを支持する面に位置し、そしてこの結合トラックにより囲まれている。補強用部材の孔の周囲長さは開口部の周囲長さより短くてもよく、この場合の補強用部材は開口部の一部を隠蔽する。補強用部材の孔の周囲長さはガラス基材の開口部より大きくてもよく、この場合の孔は基材の主面により少なくとも部分的に隠蔽され得る。基材の主面が補強用部材の孔を少なくとも部分的に隠蔽する場合には、開口部の端面と孔の端面との距離は好ましくは5mmを超えない。同様に、この場合には、接着剤の少なくとも一部は、ガラス基材と、ガラス基材の開口部の周りに7mm離れて位置する線により形成される周縁部内の結合トラックとの間に存在する。基材の主面が補強用部材の孔を少なくとも部分的に隠蔽する場合には、補強用部材の孔は一般に、ガラス基材の開口部を取り囲む。
【0012】
本発明は、その端部が既にそれを補強している内部圧縮端部応力を有するか、又はその端部が圧縮端部応力を有しない開口部を含むガラス基材に関する。全ての場合において、補強用部材が開口部の端部の強度を増加させる。補強の度合は、補強用部材の結合トラックを支持する部分の剛性とともに増加する。補強用部材の孔と同様に、結合トラックを支持する部分は、ポリマー材料で、例えばポリアミド、特にPA 66 GF30又はPA 12などで、製作することができる。補強用部材の結合トラックを支持する部分は0.1〜5mm、好ましくは0.5〜4mmの範囲内の厚さを有するのが好ましい。
【0013】
好ましくは、結合トラックは、それを結合させようとするガラス基材の表面と同じ曲率を有する。従って、ガラス基材が開口部の位置で湾曲している場合、結合トラックは、補強用部材が結合トラックを介して強制あるいは変形なしに機材と接触することができるように、同じ曲率を有することが好ましい。補強用部材の結合トラックは、ガラス基材の開口部を完全に取り囲むことができる外側輪郭を有する。従って、その周囲長さは、ガラス基材の開口部のそれより大きい。ガラス基材の開口部は、円形又は楕円形でもよく、あるいは直線のへりを有し、実質的に正方形又は長方形であってもよく、後者の場合の両方において角は丸味を帯びているのが好ましい。
【0014】
補強用部材の結合トラックを支持する面は、補強しようとする開口部に面してガラス基材と平行に延在することができ、従って、ガラス基材の開口部の端面が結合トラックが結合するガラス基材の主面と接触することにより画定される端部を覆うことができる。
【0015】
結合トラックとガラス基材とに適用される接着剤は一般に、使用時(硬化後)の条件で0.1〜5mm、好ましくは0.1〜1mmの範囲の厚さを有する。接着剤は、例えば、構造用接着タイプの両面テープ、例として3M社のSBT 9270テープ、でよい。この接着剤を用いて組み立てられる部分は、例えば最低限4kg/m
2の圧力で、互いに対し押しつけられるのが好ましい。この接着剤の場合、ガラスは特別な表面処理を必要としない(もちろんクリーニングすることは別として)。とは言え、結合トラックは事前にプラズマで処理することが好ましい。HMR(ホットメルト反応性)接着剤、又は二成分あるいは単一成分タイプのPU接着剤、例えばDow Automotive Corporationにより市販されているBetamat 7112など、を使用することも可能である。これらのタイプの接着剤の場合、接着剤を適用する前にガラスに接着剤用プライマーを適用するのが好ましい。この場合にも、結合トラックは事前にプラズマ処理するのが好ましい。
【0016】
結合トラックは、補強用部材のガラス基材の開口部に面して孔が位置するリングの形をした部分よって支持することができる。
【0017】
補強用部材は一般に、軸線が結合トラックに対して垂直である管状の部分を含む。この管状部分は、結合トラックを支持する部分と同じ材料で製作するのが好ましい。結合トラックを支持するこの部分と管状部分は、ポリマー材料を成形型へ注入して同時に形成することができ、従って両者とも互いどうし「ワンピースで製作」される。この管状部分は補強用部材に剛性を付与し、そして補強用部材の内部にハウジングを形成するのに寄与し、例えば電気モジュールを、そこに配置するのを可能にする。この管状部分は、円形、楕円形、正方形又は長方形の断面を有することができる。一般には、管状部分の断面は結合トラックを支持する部分の形状、とりわけ円形と、外見は同一の形状を有する。従って、結合トラックをリング状の部分により支持してもよく、そして管状部分をリングに、それに対して垂直に接続してもよく、この管状部分の軸線はリングの孔の軸線と一致する。
【0018】
管状部分は、結合トラックをガラス基材の開口部の周りに結合するときに、ガラス基材の開口部に入ることができる。管状部分はまた、結合トラックをガラス基材に結合させたならば、ガラス基材からそして結合トラックを支持する部分(例えばリングなど)から突出したままであってもよい。管状部分はまた、結合トラックをガラス基材に結合させたならば、ガラス基材の開口部に入り込んでもよく、且つガラス基材から突出してもよい。補強用部材、結合トラックをガラス基材に結合させたならば、一方はガラス基材から突出し他方はガラス基材の開口部に入り込む複数の管状部分を含んでもよい。
【0019】
「ガラス基材」という用語は、単一のガラスシートを含み、湾曲していても湾曲していなくてもよく、1以上の薄層(日射遮蔽又は反射防止など)又は1以上のエナメル層で被覆されていても被覆されていなくてもよい、シートを意味する。ガラス基材は、2つの主面と端面を含む。本発明の全ての実施形態において、その端部を補強しようとする開口部を含むガラス基材は、無機ガラスのシート、すなわちシリカを、一般には40wt%より多くの割合のシリカを含むガラスのシートを含む。補強すべき開口部の端部は、この無機ガラスシートのそれである。ガラスは一般に、特に光放射線を通過させなければならない場合、透明である。それは無色のソーダ石灰無機ガラス、例えば本出願人が販売するPlanilux(商標)など、でよい。この孔開きのガラス基材は一般に、1.4〜6mmの範囲の厚さを有する。
【0020】
ガラス基材は、別のガラス基材と一緒にされていないことが可能である。とは言え、それは積層グレージングユニットにおいて別のガラス基材と一緒にされていることも可能である。積層グレージングユニットは、ポリマー材料の中間層により隔てられてそれに結合している複数のガラス基材を含む。中間層のポリマー材料は、一般にはポリビニルブチラール、もっと一般的には“PVB”と称されるものである。
【0021】
積層グレージングユニットの場合、それに含まれる全てのガラス基材は一般に、無機ガラスで製作される。自動車向けのグレージングユニットの場合、その積層グレージングユニットは一般に、2つの無機ガラスシートとこれら2つのガラス基材の間に配置されたポリマー材料のシートとを含む。
【0022】
積層グレージングユニットの場合、開口部は、グレージングユニットに関して外側の位置の第1のガラス基材に位置する。これは、開口部を含む第1のガラス基材がグレージングユニットの2つのガラスシートの間に挿入されていないことを意味する。第1のガラス基材の開口部は、第2のガラス基材へと続いてもよい。従って、積層グレージングユニットが2つのガラス基材を含む場合には、開口部は積層グレージングユニットの全体を通り抜ける「貫通」開口部である。しかし、第1のガラス基材の開口部はポリマー材料の中間層によりそれに接合する第2のガラス基材に引き継がれないことが可能であり、この場合当該第2のガラス基材には第1のガラス基材の開口部に面する開口部がない。ここでは、次の2つの場合がある。
a)開口部が2つのガラス基材の間の中間層を通じて継続し、中間層に空所が作られる。この場合、第2のガラス基材が、第1のガラス基材の開口によって部分的に形成されるグレージングユニットのハウジングの基部を形成する。
b)開口部が2つのガラス基材の間の中間層を通じて継続しない。この場合、第1のガラス基材の開口部によって形成されるグレージングユニットのハウジングの基部を形成するのは中間層である。
【0023】
結合トラックが補強用部材の孔を取り囲む場合には、補強用部材はその孔に面する部品を含むことができる。フィラー部品と呼ばれるこの部品は、補強用部材に直接又は間接的に固定される。それは、ガラス基材の開口部により部分的に形成されるグレージングユニットのハウジング内に収容されるように、結合トラックから突出してもよい。この部品は、補強用部材の少なくとも2つの箇所に接合され、これらの箇所は孔の両側で結合トラックの範囲内に位置し、これらの2つの箇所を結ぶ直線は、孔をその軸線に沿ってみたときに、孔を通り抜ける。必要なら、このフィラー部品は程度の差はあれ中空でなくてよく、そして補強用部材の真の基部を形成することができる。積層グレージングユニットの場合にあって、結合トラックを結合させることができるように第1のガラス基材の開口部をこのフィラー部品が貫通する場合、及び開口部が基部(ポリマー材料の中間層の形をしているか、あるいは第2のガラス基材の形をしている)を有する場合には、この基部を使用して、フィラー部品とガラス基材の開口部により少なくとも部分的に形成されるグレージングユニットのハウジングの基部との間に配置された接着剤(例えばのりなど)によって積層グレージングユニットに補強用部材を保持するのに寄与することができる。
【0024】
このように、補強用部材は、補強用部材の少なくとも2つの箇所を連絡するフィラー部品を含むことができ、これらの2つの箇所は孔の両側で結合トラックの範囲内に位置し、フィラー部品はこの孔に少なくとも部分的に面し、そしてフィラー部品は結合トラックから突出してガラス基材に面するグレージングユニット内に、又はガラス基材の開口部内に収容される。
【0025】
補強用部材は、ガラス基材の開口部を補強するというその機能に加えて、別の機能を有してもよい。とりわけ、それは場合によりそれを通り抜ける導電体を有してもよく、この導電体は場合により電流の導体である1以上の金属ケーブルを含む。補強用部材が上述のとおりの孔とフィラー部品を含む場合、このフィラー部品はそれ自体が導電体の通過のための孔を含むことができる。
【0026】
補強用部材は、例として照明装置、電気スイッチ、又はレインセンサーなどの、電気装置、とりわけ電子装置のための収容器として働くこともできる。
【0027】
補強用部材はまた、電気モジュール、とりわけ発光ダイオード(LED)タイプのモジュールのための収容器として働くこともできる。とりわけ、LEDは、LEDを開口部を有するガラス基材の端面に向けて配置するように補強用部材の内部に配置した電子回路により支持してもよい。LEDの光はガラス基材の端面を通り抜け、そしてガラス基材の光導波路として働く2つの主面の間を通り抜ける。ガラス基材を通り抜けるこの光は、開口部を有するガラス基材の主面に開口部から所定の距離をあけて配置された抽出エナメル又は反射エナメルにより、ガラス基材を横断する方向に少なくとも一部の向きを変更することができる。抽出(又は拡散)エナメルの場合には、エナメルに到達する光はエナメルを通過してガラス基材から出てゆく。反射エナメルの場合において、照明装置が車両の搭乗室を照らすこと、又は搭乗室において照明効果を生じさせることを目的とする場合には、反射エナメルをガラス基材の搭乗室の外部に向く主面上に配置する。抽出エナメルの場合において、照明装置が車両の搭乗室を照らすこと、又は搭乗室において照明効果を生じさせることを目的とする場合には、抽出エナメルをガラス基材の搭乗室の内部に向く主面上に配置する。
【0028】
このように、本発明によるグレージングユニットは積層グレージングユニットでよく、貫通開口部を含むガラス基材は第1の外側ガラス基材であり、第2のガラス基材が積層グレージングユニットにおいてそれと一緒にされていて、これら2つのガラス基材はポリマー材料の中間層により隔てられている。この場合、第2のガラス基材は第1のガラス基材の開口部に面する開口部を含まないことが可能である。補強用部材は、この場合には、結合トラックにより取り囲まれた孔を含み、この孔はガラス基材の開口部に面して配置されており、当該補強用部材はその孔により少なくとも部分的に画定されたハウジングを含み、このハウジングが、ガラス基材の開口部の端面を照らすように配置されたLEDを支持する電気モジュール(複数のLEDが存在し得る可能性を示唆する)を受け入れ、且つ必要ならば、グレージングユニットの外部側から直接照明するために配置されたLEDを含む。とりわけ、ポリマー材料の中間層は、第1のガラス基材の開口部に面する空所と、結合トラックの範囲内で孔の両側の補強用部材の少なくとも2つの箇所を連絡するフィラー部品とを含むことができ、このフィラー部品は少なくとも部分的に上記の孔に面しており、また当該フィラー部品は結合トラックから突出し、グレージングユニットの範囲内且つガラス基材に面しており又はその開口部内の空所の範囲内に収容されている。本発明はまた、ガラス基材の開口部のための照明及び補強装置であって、当該開口部の周りに結合させようとする結合トラックにより取り囲まれた孔を含む補強用部材を含み、この補強用部材が当該孔により少なくとも部分的に形成されたハウジングを含み、このハウジングが上記開口部の端面を照らすLEDを支持する電子回路を受け入れている装置にも関する。
【0029】
補強用部材は、レインセンサーを収容してもよい。この場合において、補強用部材を孔開きの積層グレージングユニットに取り付ける場合には、レインセンサーが一方のガラス基材を通してのみ動作するように、ガラス基材の開口部に面するPVBを貫通する空所の形で切り取るのが好ましい。これは、レインセンサーは積層グレージングユニットのガラス基材を通して効果的に動作するが、ガラス基材と特定の厚みのPVBの両方を通しての場合ははるかに効果的でないからである。
【0030】
補強用部材は、ガラス基材を結合トラックが結合されるその主面の側から見たときに、開口部の領域と、そして適切な場合補強用部材の孔とを隠蔽するトリム部品を支持する働きをしてもよい。このトリム部品は、補強用部材に収容される例えばLEDなどの電気装置、又は補強用部材の外部にある電気装置を作動させることができる電気スイッチを有してもよい。
【0031】
本発明によるグレージングユニットが積層グレージングユニットである場合、補強用部材を備え付けたガラス基材の開口部に面する開口部のないガラス基材には、グレージングユニットの補強用部材を支持する側とは反対側から開口部又は開口部の領域を隠蔽するように、補強用部材を備え付けたガラス基材の開口部に面する開口部のないガラス基材に黒色エナメルの塗装を施すことができる。これは、グレージングユニットが自動車の屋根である場合に特に有効であり、その理由は、それが自動車の外側から屋根を通して開口部の領域が見えるのを防止するからである。
【0032】
本発明によるグレージングユニットが積層グレージングユニットであり、且つポリマー材料の中間層が補強用部材を備え付けたガラス基材の開口部に面する開口部を含む場合には、補強用部材を備え付けたグレージングユニットの開口部に面する開口部のないガラス基材上に貫入防止フィルムを配置してもよく、この貫入防止フィルムは、ガラス基材及びポリマー材料の中間層の開口部によって脆くされた領域を覆う。このフィルムは、グレージングユニットの補強用部材を支持する側と反対側からの開口部の領域への衝撃によって侵入が試みられた場合に、グレージングユニットの補強用部材を支持する側をガラスの突出及び補強用部材により支持された装置に由来する材料の突出から保護する。これは、グレージングユニットが自動車の屋根である場合に特に有効である。
【0033】
本発明による補強用部材の補強効果は、例えば、鋼製ボールをガラス基材上へ又はガラス基材を含むグレージングユニット上へ落下させる試験によって、確認することができる。このボール落下試験は、ガラス基材又はガラス基材を含むグレージングユニットの補強用部材を結合させたガラス基材の主面の側と反対側にボールを落下させることにより行われる。好適なボール落下試験は国連規則R43に記載されている。