特許第6557150号(P6557150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティドの特許一覧

<>
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000002
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000003
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000004
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000005
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000006
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000007
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000008
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000009
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000010
  • 特許6557150-リンクアーム組立体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557150
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】リンクアーム組立体
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20190729BHJP
   F16C 11/08 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F16C11/06 N
   F16C11/06 G
   F16C11/06 K
   F16C11/06 R
   F16C11/08 C
   F16C11/06 Q
   F16C11/06 D
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-558857(P2015-558857)
(86)(22)【出願日】2014年2月8日
(65)【公表番号】特表2016-511371(P2016-511371A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014015450
(87)【国際公開番号】WO2014130273
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】61/768,754
(32)【優先日】2013年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ケー.トロッター
(72)【発明者】
【氏名】デニス エム.マーク
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第1031745(EP,A2)
【文献】 特開2012−218707(JP,A)
【文献】 特開2002−153940(JP,A)
【文献】 特表2008−506907(JP,A)
【文献】 実開昭54−91577(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0103883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールスタッドを受けて保持するように構成されたリンクアーム組立体であって、
末端部を有する細長いロッドであって、該末端部に隣接して、少なくとも1つの径方向に突出する表面リブが配置され、該表面リブは隆起した表面を有し、前記末端部は該表面リブから外方に突出するロッドと、
前記ロッドの前記末端部にプレス嵌めで取り付けられるように構成された、一体成形構成の少なくとも第1のソケットヘッドであって、該第1のソケットヘッドは、ソケット受け部を有し、弾性の近位本体部分が該ソケット受け部から離れるように第1の方向に延び、遠位カラー部分が前記ソケット受け部から離れるように第2の方向に延び、前記近位本体部分は、前記ロッドの前記末端部に対して相補的な形状を有し該末端部を受けるように構成された、前記ソケット受け部に面しないアクセス開口付きの内部チャネルを有し、
前記遠位カラー部分は、前記ボールスタッドのボール構造部を受けて保持するように構成された、前記ソケット受け部内の凹状ソケット空洞部と略整合するスタッド差込み通路を形成する少なくとも第1のソケットヘッドと、
前記遠位カラー部分の回りにシール関係に配置構成された第1の端部と、前記ボール構造部から外方にある前記ボールスタッドの一部をシールして囲むように構成された第2の端部とを有する可撓性鞘状シールとを備えるリンクアーム組立体。
【請求項2】
前記表面リブは、上側曲面および下側曲面が該表面リブの外縁まで延びている略輪状の凸部輪郭を有する請求項1に記載のリンクアーム組立体。
【請求項3】
前記第1のソケットヘッドは、略「L」字状である請求項2に記載のリンクアーム組立体。
【請求項4】
前記内部チャネルは、前記ロッドの前記末端部に略合わせて起伏して成形される請求項2に記載のリンクアーム組立体。
【請求項5】
前記内部チャネルの側壁には、前記ロッドの前記末端部と嵌合関係に適合するように構成された略正弦波状の内部輪郭が内部成形されている請求項4に記載のリンクアーム組立体。
【請求項6】
前記内部チャネルへの前記アクセス開口は、前記ロッドの断面に略合致する周縁幾何形状を有する請求項5に記載のリンクアーム組立体。
【請求項7】
前記ソケット空洞部は、略椀状である請求項1に記載のリンクアーム組立体。
【請求項8】
窪んだ油溝が、前記ソケット空洞部の壁に沿ってハブアンドスポークパターンに延びる請求項7に記載のリンクアーム組立体。
【請求項9】
隆起した内側リブが、前記ソケット空洞部の壁に沿ってハブアンドスポークパターンに延びる請求項7に記載のリンクアーム組立体。
【請求項10】
前記隆起した内側リブのうちの1つは、「V」字パターンに構成された一対のフラップ間に配置され、該フラップは、回転中に前記ソケット空洞部内で前記ボール構造部に係合して連続的に付勢力を加えるように構成された板ばね部材を形成する請求項9に記載のリンクアーム組立体。
【請求項11】
ボールスタッドを受けて保持するように構成されたリンクアーム組立体であって、
ポリマー断面の細長いロッドであって、該ロッドは、第1の末端部および第2の末端部と、前記第1の末端部に隣接して配置される、径方向に突出し離間した第1の複数の表面リブ、および、前記第2の末端部に隣接して配置される、径方向に突出し離間した第2の複数の表面リブとを有し、該表面リブは、該表面リブ間に介在する凹部を伴って隆起した表面を有し、前記第1の末端部および前記第2の末端部は、隣接する表面リブから外方にそれぞれ突出し、前記表面リブは、前記隣接する末端部の有効直径よりも大きく、前記ロッドにおいて該表面リブから内方にある部分の有効直径よりも大きい有効直径を規定する細長いロッドと、
前記第1の末端部にプレス嵌めで取り付けられるように構成された、一体成形構成の第1のソケットヘッド、および、前記第2の末端部にプレス嵌めで取り付けられるように構成された、一体成形構成の第2のソケットヘッドであって、該第1と第2のソケットヘッドの各々がソケット受け部を有し、弾性の近位本体部分が前記ソケット受け部から離れるように第1の方向に延び、遠位カラー部分が前記ソケット受け部から離れるように第2の方向に延び、前記第1と第2のソケットヘッドの各々の前記近位本体部分は、対応する前記ソケット受け部には面しないアクセス開口付きの内部チャネルを有し、該内部チャネルは、前記ロッドの末端部に対して相補的な形状を有し該末端部を受けるようにそれぞれ構成され、前記第1と第2のソケットヘッドの各々の前記遠位カラー部分は、ボールスタッドのボール構造部を受けて保持するように構成された前記ソケット受け部内の凹状ソケット空洞部と略整合する、スタッド差込み通路を形成する、第1のソケットヘッドおよび第2のソケットヘッドと、
前記遠位カラー部分の回りにシール関係に配置構成された第1の端部と、前記ボール構造部から外方にある前記ボールスタッドの一部をシールして囲むように構成された第2の端部とを有する可撓性鞘状シールとを備えるリンクアーム組立体。
【請求項12】
前記表面リブの各々は、上側曲面および下側曲面が該表面リブの外縁まで延びている略輪状の凸部輪郭を有する請求項11に記載のリンクアーム組立体。
【請求項13】
前記ソケットヘッドの各々は、略「L」字状である請求項12に記載のリンクアーム組立体。
【請求項14】
前記内部チャネルの各々は、前記ロッドの前記末端部に略合わせて起伏して成形される請求項12に記載のリンクアーム組立体。
【請求項15】
前記内部チャネルの側壁には、前記ロッドの末端部にある前記表面リブと嵌合関係に適合するように構成された略正弦波状の内部輪郭が内部成形されている請求項14に記載のリンクアーム組立体。
【請求項16】
前記内部チャネルへの前記アクセス開口は、前記ロッドの断面に略合致する周縁幾何形状を有する請求項15に記載のリンクアーム組立体。
【請求項17】
前記ソケット空洞部の各々は略椀状である請求項11に記載のリンクアーム組立体。
【請求項18】
隆起した内側リブが、前記ソケット空洞部のそれぞれの壁に沿ってハブアンドスポークパターンに延びる請求項17に記載のリンクアーム組立体。
【請求項19】
窪んだ油溝が、前記ソケット空洞部の壁に沿ってハブアンドスポークパターンに延びる請求項17に記載のリンクアーム組立体。
【請求項20】
ボールスタッドを受けて保持するように構成されたリンクアーム組立体であって、
ポリマー断面の細長いロッドであって、該ロッドは、第1の末端部および第2の末端部と、前記第1の末端部に隣接して配置される径方向に突出し離間した第1の複数の表面リブ、および、前記第2の末端部に隣接して配置される径方向に突出し離間した第2の複数の表面リブとを有し、該表面リブは、該表面リブ間に介在する凹部を伴って隆起した表面を有し、前記第1の末端部および前記第2の末端部は、前記表面リブから外方にそれぞれ突出し、前記表面リブは、隣接する前記末端部の有効直径よりも大きく、前記ロッドにおいて該表面リブから内方にある部の有効直径よりも大きい有効直径を規定し、前記表面リブの各々は、上側曲面および下側曲面が該表面リブの外縁まで延びている略輪状の凸部輪郭を有する細長いロッドと、
前記第1の末端部にプレス嵌めで取り付けられるように構成された、一体成形構成の第1のソケットヘッド、および、前記第2の末端部にプレス嵌めで取り付けられるように構成された、一体成形構成の第2のソケットヘッドであって、該第1と第2のソケットヘッドの各々は、ソケット受け部を有して略「L」字状であり、弾性の近位本体部分が前記ソケット受け部から離れるように第1の方向に延び、遠位カラー部分が前記ソケット受け部から離れるように第2の方向に延び、前記近位本体部分は、前記ソケット受け部には面しない内部チャネルへのアクセス開口付きの該内部チャネルを有し、該内部チャネルは、前記ロッドの末端部を受けるように構成されているとともに、前記ロッドの前記末端部に略合わせて起伏して成形され、該内部チャネルの側壁が、前記ロッドの前記末端部にある前記表面リブと嵌合関係に適合するように構成された略正弦波状の内部輪郭を有し、前記アクセス開口は、前記ロッドの断面と略合致する周縁幾何形状を有し、前記遠位カラー部分は、ボールスタッドのボール構造部を受けて保持するように構成された前記ソケット受け部内の略椀状のソケット空洞部と略整合する、スタッド差込み通路を形成し、前記ソケット空洞部は、径方向および軸方向に、前記ソケット受け部の壁に沿ってハブアンドスポークパターンに延びる複数の内部成形された油溝を有する、第1のソケットヘッドおよび第2のソケットヘッドと、
前記遠位カラー部分の回りにシール関係に配置構成された第1の端部と、前記ボール構造部から外方にある前記ボールスタッドの一部をシールして囲むように構成された、スタッド受入れ開口付きの外面を有する第2の端部とを有する可撓性鞘状シールとを備えるリンクアーム組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、リンクアーム組立体に関し、より詳細には、ロッド部と、リンクアームを別の構造体に連結するように構成された例えばボールスタッド等の係合部材との、向上した作動接続部を有するリンクアーム組立体に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本非仮特許出願は、2013年2月25日に出願された米国仮特許出願第61/768754号の利益および優先権を主張する。該米国仮特許出願の内容および本願において引用される全ての他の特許文献は、本願と一体をなすものとして引用する。
【背景技術】
【0003】
多くの使用環境において、規定の基準位置に対する構造体の位置の監視に用いるために、1または複数のリンクアーム組立体をその構造体に作動的に接続することができる。これらのリンクアーム組立体の多くにおいて、ロッドが、ロッドの両端にある一対のソケットヘッド間または他の取付け部材間に延びる。ロッドの一方の端部にある取付け部材は、監視される構造体にあるボールスタッドその他の係合部材に取り付けられ、他方の端部にある取付け部材は、基準構造体に作動的に接続されるか、或いは、規定の様式で関節連結することが可能である。ロッドは、端部の相対位置を監視する1または複数のセンサーを備えることができる。こうして端部の間隔および/またはは相対位置の変化を監視し、それにより位置変化を指示することができる。リンクアーム組立体は、通常は著しい荷重を支えることを要求されないが、使用中に、かなりの振動および高振動数の関節運動を受ける場合がある。このようなリンクアーム組立体を、車両用コンピューターと併せて用いて、ヘッドライト光軸調整、サスペンション地上高等を監視することができる。単に例として、本開示に係るリンクアーム組立体には、車両地上高センサーのリンク機構としての用途を見出すことができる。このようなリンク機構は、車両の可動サスペンションと、電子制御ユニットに位置情報を提供する例えばホイールセンサー等のセンサーとの接続部を確立する。当然ながら、このような組立体は、いかなる数の他の目的にも同様に用いることができる。
【0004】
いくつかの従来のリンクアームにおいて、リンクアームと、取り付けられるソケット構造部との確実な接続部を確立および維持するには、比較的複雑な組立て作業が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、部品間の確実な接続を促進しつつ、組立てプロセスの複雑性を低減するリンクアーム組立体が、現行技術に優る有益な進歩を示す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、細長いロッド部と、リンクアームを別の構造体に連結するように構成された、例えばボールスタッド等の係合部材との向上した接続部を組み込むリンクアーム組立体を提供することにより、従来技術に優る利点および代替物を与える。リンクアーム組立体は、ボールスタッドの近位部を囲むように構成された圧縮ソケットを組み込んだ、向上したボールソケット接続部を組み込むことができる。ソケットには、このソケットの内側に、ボールスタッドのボールが差し込まれる場合に圧縮されて、使用中にボールに対して連続的に付勢する表面を配設することができる。上記予圧縮が、ソケット内でのボールのセンタリングを助ける。更に、上記ばね付勢が、製造公差または経時による摩耗に起因するボールとソケットとの直径のばらつきを調整する。従って、この連結部は、潜在的な「緩み」状態を回避し、それにより、経時によるノイズや不具合の可能性を低減する。
【0007】
1つの例示的な態様によれば、本開示は、ボールスタッドを受けて保持するように構成されたリンクアーム組立体を提供する。該組立体は、末端部を有する細長い差込み可能ロッドを備え、この末端部に隣接して、径方向に突出し離間した複数の表面リブが配置される。該表面リブは、該表面リブ間に介在する凹部を伴って隆起した表面を有し、前記末端部は該表面リブから外方に突出する。該組立体は、ロッドの末端部にプレス嵌めで取り付けられるように構成された、一体成形構成の少なくとも第1のソケットヘッドを更に備える。該ソケットヘッドはソケット受け部を有し、弾性の近位本体部分が前記ソケット受け部から離れるように第1の方向に延び、遠位カラー部分が、近位本体部分に対して横断方向に前記ソケット受け部から離れるように第2の方向に延びる。前記近位本体部分は、前記ロッドの末端部を受けるように構成された内部チャネルを有する。前記遠位カラー部分は、ソケット受け部内の凹状ソケット空洞部と略整合する、スタッド差込み通路を形成する。該組立体は、前記遠位カラー部分の回りにシール関係に配置構成された第1の端部と、前記ボール構造部から外方にある前記ボールスタッドの一部をシールして囲むように構成された第2の端部とを有する、可撓性鞘状シールを更に備えることができる。
【0008】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲および図面を検討すれば当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に一致するリンクアーム組立体の例示的な一実施形態を示す概略斜視図である。
図2】本開示に一致する、図1の例示的なリンクアーム組立体の部品を示す概略分解図である。
図3】本開示に一致する一例示的なリンクアーム組立体の対応するソケットヘッドと嵌合するように構成された、一例示的な接続ロッドの末端部の1つの実施形態を示す概略図である。
図4】本開示に一致する一例示的なリンクアーム組立体のソケットヘッドの対応する部分に嵌合している、図3の例示的な接続ロッド末端部を示す、概略断面図である。
図5図3の例示的な接続ロッド末端部と、本開示と一致する一例示的なリンクアーム組立体のソケットヘッドの対応する部分との最終的な差込み係合状態を示す、概略図である。
図6】一例示的なソケットヘッドを示す概略斜視図であり、このソケットヘッドは、任意選択のばね付勢フラップメンブレンおよび可撓性リブが、本開示に一致するリンクアーム組立体のソケット空洞部へのボールスタッドの差込みに続いて、協働するボール構造部に対して連続的にセンタリングおよび付勢接触するように構成されたハブアンドスポーク配向にあるソケット空洞部を組み込んでいる。
図7】ばね付勢フラップが弛緩した無負荷状態にある、図6の例示的なソケットヘッドの周縁部を示す、概略図である。
図8】本開示に一致するリンクアーム組立体へのボールスタッドの差込みに対応する負荷状態のばね付勢フラップを示す、図7と同様の図である。
図9】本開示に一致する別の例示的なリンクアーム組立体の部品を示す、図2と同様の概略分解図である。
図l0】一例示的なソケットヘッドの代替的な一実施形態を示す、図6と同様の図であり、このソケットヘッドは、増大した引抜き力をもたらすように構成されているとともに、ハブアンドスポーク配向にある油溝を有するソケット空洞部を組み込んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されているか、或いは、図面に示する部品の詳細および配置にその用途または構成が決して限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することが可能である。また、本明細書において使用される表現および用語は単に説明目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことが理解されたい。本明細書における、「含む」および「備える」並びにそれらの変形形の使用は、その対象となる部材およびその等価物、並びに追加の部材およびその等価物を包含することを意味する。
【0011】
以下では図面を参照する。図面では、同様の要素は、種々の図において同様の参照符号で示されている。ここで図1、2を併せて参照すると、本開示と一致する一例示的なリンクアーム組立体10が示されている。図示のように、例示的なリンクアーム組立体は、プラスチック、金属、セラミックその他の好適な材料によって形成される細長い構成のロッド12を備えることができる。ロッド12は、一対のソケットヘッド14間に延びる。これに関して、リンクアーム組立体は図示の「Z」字状構成であってもよいが、最終的な使用環境に応じて、限定はしないが「C」、「L」または「T」字状構成を含む他の構成を用いることもできる。更に、ソケットヘッド14はロッド12の両端に示されているが、望ましい場合には、一方の端部の単一のソケットヘッドを用いることもできる。ソケットヘッド14は、以下で更に記載する様式でロッド12およびボールスタッド40を差し込んで保持するのを容易にするように或る程度の弾性を有する、略一体成形構成としてもよい。限定ではなく単に例として、ソケットヘッド14は、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の弾力のある可撓性ポリマーによって成形してもよいが、望ましい場合には、天然ゴムおよび合成ゴム等の他の弾力のある材料を用いることもできる。
【0012】
図2図4を併せて参照すると理解されるように、ロッド12は、周縁の回りに複数の略平坦面を呈するように、略多角形の断面幾何形状を有することができる。これに関して、ロッド12は、ロッドの長さ寸法に亘って角部間に延びる4つの略等しい平坦面を呈するように、略正方形の断面を有するものとして示されているが、実際には所望に応じて任意の他の周縁幾何形状を用いることができることも想定される。実際に、ロッド12は、例えばアセタール樹脂、ナイロン等の比較的剛性構造のポリマー材料によって一体構造体として成形してもよい。当然ながら、望ましい場合には、他のポリマー材料、および、例えば金属等の非ポリマー材料を用いることもできる。
【0013】
図示のように、例示的な構成では、ロッド12の各端部は、対向する外方末端部15を有し、末端部15のそれぞれに対して内方に隣接する関係に、1組の離間した表面リブ16が配置されている。図3に示すように、表面リブ16は、ロッド12の表面から離れるように径方向に、ロッド12の長さ寸法に沿って延在する長手軸に対して略垂直方向に突出し、末端部15と、1組の表面リブ16から内方にあるロッドの中央部とに対して局所的に拡大した直径を規定する。これに関して、各組の表面リブ16は、隣り合う表面リブ16間に凹部18が形成されるように、ロッド12の長さに沿って異なる高さに配置される、2つ以上のリブを含んでもよい。図3、4に示すように、この構成では、表面リブ16は、各末端部15に隣接して略正弦波状輪郭を形成する。
【0014】
図示のように、1つの例示的な実施形態によれば、表面リブ16は、ロッド12の各平坦面に配置され、実質的にロッド12の外周の回りに協働するように延びるリング部分の形態とすることができる。しかし、望ましい場合には、表面リブ16がロッド12の外周の回りに完全には延びないように、ロッド12の1または複数の表面は表面リブ16を備えなくともよいことも想定される。図示のように、表面リブ16は、ロッド12の隣り合う角部間に延びる、隆起した弧状部に形成してもよい。これらの弧状部の頂点は、ロッド12の各平坦面の実質的に中央に配置される。一方で、他の径方向突出構成部を用いることもできる。
【0015】
図3、4に示すように、表面リブ16は、略輪状の断面輪郭を有し、ロッド12の本体から離れるように突出する略滑らかな輪状凸部を有することができる。このとき、輪状凸部の上側曲面と下側曲面とがリブl6の外縁に向かって収束する。これに関して、表面リブ16は、互いにサイズおよび形状が略同様としてもよいことが想定されるが、望ましい場合には、異なるサイズおよび/またはは形状の表面リブ16を用いることもできる。更に、図示の例示的な構成は、ロッド12の各端部に複数対の離間した表面リブ16を組み込んでいるが、望ましい場合には、単一の表面リブを用いてもよいし、ロッド12の長さに沿って互いに対して離間した関係にある複数組の3つ以上のリブとして、協働する表面リブ16を構成してもよいことも想定される。
【0016】
図示の例示的な実施形態では、ソケットヘッド14の各々は、略椀状のソケット受け部22から離れるように延びる、端部が開口した筒状構成の近位本体部分20を組み込む略「L」字状構成を有してもよい。図示の構成では、ソケットヘッド14は、ソケット受け部22に対して略整合関係に向きを定められている、略中空リング構成の遠位カラー部分24を含むこともできる。実際に、ソケットヘッド14は、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、TPE(熱可塑性エラストマー)、または、取付け時の力に応じて変形するとともに弾性的に元に戻るようになっている他の同様の材料等の熱可塑性材料によって、一体構造体として成形することができる。
【0017】
図示のように、ソケットヘッド14のそれぞれの近位本体部分20は、ロッド12の相補的な末端部15を近位本体部分の内側に対してプレス嵌め関係で受けるように構成されたロッド受けチャネルにつながる、アクセス開口26を有することができる。これに関して、アクセス開口26は、ピッタリと嵌るようにロッド12の外周幾何形状およびサイズに略合致する、周縁幾何形状を有することができるが、望ましい場合には、他の形状を用いることもできる。図4に示すように、ロッド受けチャネルを形成する近位本体部分の内側は、近位本体部分の内側に保持されるロッド12の一部の外側に対して、実質的に嵌合する適合形状であるように成形することができる。1つの例示的な実施形態によれば、近位本体部分20の内側は、ロッド12上の表面リブ16を略覆うように配置される、嵌合輪郭の離間したスカラップ状の窪みを有して成形することができ、それにより、ロッド12が最終差込み状態にある場合、ロッド12と近位本体部分20の内側との間に実質的に許容差がないか、或いは僅かな干渉をもたらす。これに関して、最終差込み状態において、近位本体部分20がロッド12の回りでテンションを帯び、ロッド12とソケットヘッド14との間の自由な遊びが略排除されるように、近位本体部分20の受け溝の内径が表面リブ16によって規定される外径よりも僅かに小さい、僅かな干渉状態が望ましい場合がある。
【0018】
理解されるように、表面リブ16によって形成される正弦波状輪郭と、近位本体部分20の内側の嵌合輪郭とを組み合せることで、ロッド12の不所望な抜け落ちに抗する干渉をもたらすことによって、ロッド12とソケットヘッド14との確実なテンションフィット接続をもたらすのを助けることができる。更に、このような構成は、スナップイン組立ての手順を容易にすることができ、それにより、人員が、組立てプロセス中にロッド12が最終的な所望の向きにおいて近位本体部分20内で適所にスナップインするのを感取することができる。これに関して、ロッド12が近位本体部分20に差し込まれる際、まず、最外の表面リブが、近位本体部分20の内側にあるスカラップ状の窪み間に突点を規定しながら径方向内方に突出するデテント28に当たり、近位本体部分20が弾性変形して、この比較的剛性の表面リブを通過させる。次に、ロッド12が更に内方に押されると、デテント28は、表面リブ16間の凹部18と略整合する適所にスナップバックすることができる(図4)。このスナップ動作により、人員が、完全かつ適切な差込みが行われたことを感取することが可能になる。その結果得られる接続は確実であるが、十分な軸方向の分離力を意図的に加えると解消することができる。図5に示すように、最終差込み状態において、近位本体部分20の弾性が、アクセス開口26が表面リブ16から内方の位置においてロッド12の回りで密にシールするのを助ける。このシールは、ソケットヘッド構造部への塵芥その他の汚れの侵入を防止するのを助ける。
【0019】
ここで図1、2、6を参照すると、図示の例示的な構成では、ソケットヘッドl4は、近位端部にあるボール構造部42と、遠位端部にあるねじ切り接続部等の係合構造部44とを組み込むボールスタッド40を、受けて保持するように構成されている。これに関して、ボールスタッド40は、雄ねじ部の形態の係合構造部44を有するものとして示されているが、係合構造部44は、所望に応じて、任意の他の雄接続要素または雌接続要素としてもよいことも想定される。
【0020】
図示のように、例示的な構成では、ソケット受け部22は、協働するボールスタッド40のボール構造部42を受けて保持するように構成された、内側ソケット空洞部50(図6)を収容する。この構成では、ボール構造部42は、遠位カラー部分24内のスタッド差込み通路53を通して、嵌合するように差し込むことができる。図示のように、スタッド差込み通路53は、ソケット空洞部50の奥部に対して略整合関係にある。ゴム、プラスチック等の鞘状エラストマーシール54を、鞘状シール54と遠位カラー部分24内のスタッド差込み通路53とが略同軸関係になるように、遠位カラー部分24の回りに周方向にシール関係で嵌めることができる。図示の例示的な構成では、鞘状シール54は、スタッド差込み通路53と整合されるとともに、ボールスタッド40の近位端部を受けるように構成された、スタッド受入れ開口58を形成する略環状の外面56を有する。これに関して、スタッド受入れ開口58は、ボール構造部42の差込み中に弾性拡張し、その後反発して、ボール構造部42から内方にある減径ネック部46をシールして囲むことができる。図示のように、隆起した可撓性中空ニップル60が、スタッド受入れ開口58を囲んで、ボールスタッド40の差込みに続いてネック部46の回りにシールを形成するのを助けることができる。理解されるように、鞘状シール54は、ソケット空洞部50内に任意の潤滑剤を閉じ込めると同時に、またデブリが連結部に侵入するのを阻止するように機能することができる。
【0021】
ここで図6図8を併せて参照すると、1つの例示的な構成において、ソケット空洞部50は、必要に応じて、略楔状の断面を有する一対の内部成形された可撓性フラップ62を有することができる。可撓性フラップ62は、フラップ62の自由縁部が互いから分かれるように、ソケット空洞部50の基部において互いに対して略「V」字の向きに構成される。フラップ62は、その長さ寸法に関して、ボール構造部42の差込み経路を規定するスタッド差込み通路53と略平行に向きを定められる。実際に、フラップ62は、ボール構造部42がソケット空洞部50内にある場合、通常の無負荷位置(図7)から、ソケット空洞部50の隣接する内壁63に向かって弾性的に撓む(図8)ように構成されている。この撓み状態では、フラップ62は、ソケット空洞部内でのボール構造部42の回転中、ボール構造部42の表面に対して連続的に付勢する板ばね部材を形成する。理解されるように、このような連続的な付勢関係は、表面が経時により摩耗しても、フラップがボール構造部42との接触を維持するのを可能にすることができる。当然ながら、望ましい場合には、フラップ62を排除してもよいことも想定される。
【0022】
また、図6に示すように、ソケット空洞部50には、ソケット空洞部に内部成形されるとともに、使用中にボール構造部42に押し当たるように構成された、隆起した可撓性内側リブ66を配設することができる。図示のように、内側リブ66は、ソケット空洞部の内側内で径方向および軸方向の双方に延びるように、椀状のソケット空洞部50の外形に沿うことができる。図示のように、例示的な向きでは、リブ66のうちの1つは、望ましい場合には、ソケット空洞部の基部にあるフラップ62間に延びることができる。図示の例示的な構成では、略平らに隆起した可撓性ハブ67を、スタッド差込み通路53と略整合状態でソケット空洞部50の奥部に内部成形することができ、内側リブ66と隆起ハブ67とがハブアンドスポーク配向を構成するようになっている。内側リブ66間の凹部を形成するポケット68が、潤滑剤を保持するとともにデブリがボール表面に接触するのを防止するように機能することができる。ソケットヘッド14を一体構造体として成形する場合があることから、全ての内部部品を共通の弾性ポリマー材料によって形成してもよい。
【0023】
理解されるように、可撓性ソケット受け部22および可撓性内側リブ66は、組立てにおけるボールの差込みを容易にすることができる。更に、弾性を有する可撓性内側リブ66は、所望の性能および耐久性を達成するレベルのトルクをもたらす予圧縮レベルを提供することができる。
【0024】
理解されるように、本開示に係るリンクアーム組立体は、ロッドの長さおよび/または幾何形状を変更することにより、多種多様の環境に容易に適合させることができる。限定ではなく単に例として、図9は、本開示に一致する代替的な一実施形態を示し、ここで、前述した要素は、100だけ増した対応する参照符号によって示されている。図示のように、この実施形態では、ロッド112は断面が略円形であり、表面リブ116は、ロッド112の周縁全体の回りに環状関係に延びている。ソケットヘッド114のアクセス開口126は、ロッド112をシール関係に受けるように、同様に円い。全ての他の観点において、図9の実施形態は、前述した記載に従って機能する。
【0025】
一部の使用環境において、実質的に高いボールスタッド引抜き力をもたらすことが望ましい場合がある。このような用途では、ソケット空洞部は、ボール構造部に接触する表面積を増大させ、同時にそれにもかかわらず所望に応じて相対回転を可能にするように構成することができる。ここで図10を参照すると、本開示に一致するとともに増大した引抜き力をもたらす1つの実施形態が示されており、ここで、前述した要素は、200番台の対応する参照符号によって示されている。
【0026】
高いボールスタッド引抜き力をもたらすように構成された図10の図示の例示的なソケットヘッド214では、フラップおよび内側リブの双方が排除され、そのため、ソケット空洞部250は、協働するボール構造部(図示せず)を受けるように構成された略滑らかな凹面を有する。この構成では、空洞部の奥部にある浅い油ウェル267に対して比較的狭小の油溝266のパターンを、ハブアンドスポーク形態に構成することができる。これに関して、油溝266は、前述した実施形態に関して記載した隆起リブと略同じパターンに構成することができる。
【0027】
図10に示す例示的な構成では、ソケット空洞部250は、協働するボール構造部(図示せず)と略合致する直径、或いは、協働するボール構造部よりも僅かに小さい直径を有し、締り嵌め関係を促進することができる。ソケット空洞部の深さは、ボール構造部を差し込むと、ソケット受け部222がボール構造部の中間地点を越える包込み関係に延びるように、180度よりも大きい弧の回りに延びることができる。理解されるように、この構成では、ソケット空洞部250の内側とボール構造部の表面との高表面積の接触面が、可撓性ソケット受け部222からボール構造部を引き抜くのに必要な力を実質的に増大させる。油溝266間に配置される略楔状の表面部材268は、協働するボール構造部の表面に対して連続的に付勢して、使用中に接触を維持しかつ緩みを防止しながらセンタリングを促進する、僅かに圧縮可能なばね部材として機能することができる。同時に、油溝266を通してソケット空洞部250とボール構造部との間で潤滑剤を伝達し、それにより使用中の相対回転を容易にすることができる。
【0028】
本発明の実施形態を記載するのに、例えば、上側、水平、垂直、前方等の種々の空間および方向に関する用語を用いている場合があるが、このような用語は、図面に示す向きに関して用いられているにすぎないことが理解される。それらの向きは、上側部が下側部になるように、また下側部が上側部になるように、水平が鉛直になるように等と、反転、回転、或いは別様に変更することができる。
【0029】
当然ながら、上記の変形および変更は本開示の範囲内にある。本明細書の開示は、言及されているか或いは本文および/または図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替的な組合せに及ぶことを理解されたい。これらの様々な組合せの全ては、本開示の種々の代替的な態様を構成する。本明細書に記載の実施形態は、当業者が本開示の内容を利用することを可能にする。特許請求の範囲は、従来技術が許容する最大範囲まで代替的な実施形態を含むものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0030】
10 リンクアーム組立体
12 ロッド
14 ソケットヘッド
15 外方末端部
16 表面リブ
18 凹部
20 近位本体部分
22 部
24 遠位カラー部分
26 アクセス開口
28 デテント
40 ボールスタッド
42 ボール構造部
44 係合構造部
46 ネック部
50 ソケット空洞部
53 通路
54 鞘状エラストマーシール
56 外面
58 開口
60 可撓性中空ニップル
62 可撓性フラップ
63 内壁
66 内側リブ
67 隆起ハブ
68 ポケット
112 ロッド
114 ソケットヘッド
116 表面リブ
126 アクセス開口
214 ソケットヘッド
250 ソケット空洞部
266 油溝
267 油ウェル
268 表面部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10