特許第6557154号(P6557154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557154電動機の回転子、および回転子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557154
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】電動機の回転子、および回転子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20190729BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
   H02K1/27 501D
   H02K1/27 501A
   H02K15/03 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-3638(P2016-3638)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-127070(P2017-127070A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年2月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】西福元 彰
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−117732(JP,A)
【文献】 特開2000−014062(JP,A)
【文献】 特開昭62−166755(JP,A)
【文献】 特開平01−270756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子を製造する方法であって、
前記回転子は、
回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の径方向外側に配置される複数の磁石と、
前記複数の磁石を取り囲む筒状の保護管と、
前記回転子鉄心の外周面と前記保護管の内周面との間に形成された隙間に充填された樹脂と、を備え、
前記回転子鉄心の軸方向寸法は、前記複数の磁石の軸方向寸法、および前記保護管の軸方向寸法よりも長く、
前記方法は、
前記回転子鉄心の径方向外側に前記複数の磁石を配置することと、
前記複数の磁石を取り囲むように前記保護管を配置することと、
第1の金型を、前記回転子鉄心の軸方向第1方向の端面に当接させることと、
樹脂射出ノズルが形成された第2の金型を、前記樹脂射出ノズルが前記回転子鉄心の外周面と前記保護管の内周面との間に形成された隙間に面し、且つ、前記第2の金型が前記保護管および前記複数の磁石の軸方向第2方向の端面から該軸方向第2方向へ離間するように、前記回転子鉄心の前記軸方向第2方向の端面に押し当てることと、
前記樹脂射出ノズルから前記隙間に樹脂を射出することと、を備える、方法。
【請求項2】
記樹脂は、
前記複数の磁石の軸方向区間において、各々の該磁石と前記保護管との間、および、前記回転子鉄心と前記保護管との間に充填された本体部と、
前記本体部の前記軸方向第2方向の端部に接続され、前記回転子鉄心の周方向へ延在する第1のリング部であって、前記保護管の前記軸方向第2方向の端面、および、各々の前記磁石の前記軸方向第2方向の端面に、該軸方向第2方向の側から当接する、第1のリング部と、を有する、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記樹脂は、前記本体部の前記軸方向第1方向の端部に接続され、前記周方向へ延在する第2のリング部であって、前記保護管の前記軸方向第1方向の端面、および、各々の前記磁石の前記軸方向第1方向の端面に、該軸方向第1方向の側から当接する、第2のリング部をさらに有する、請求項に記載の方法
【請求項4】
前記保護管の前記軸方向寸法は、前記複数の磁石の前記軸方向寸法よりも長い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の回転子、および回転子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転子鉄心と、該回転子鉄心の径方向外側に配置された複数の磁石と、該複数の磁石を取り囲む筒状の磁石と、回転子鉄心と保護官との間の隙間に充填された樹脂とを備える、電動機の回転子が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−169103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、上述のような回転子は、射出成形機を用いて上記の隙間に樹脂を射出することによって、製造される。この場合において、磁石または保護管が射出成形機の金型と当接し、これにより、該磁石または該保護管が破損してしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様において、電動機の回転子は、回転子鉄心と、回転子鉄心の径方向外側に配置される複数の磁石と、複数の磁石を取り囲む筒状の保護管と、回転子鉄心の外周面と保護管の内周面との間に形成された隙間に充填された樹脂とを備える。回転子鉄心の軸方向寸法は、複数の磁石の軸方向寸法、および保護管の軸方向寸法よりも長い。保護管の軸方向寸法は、複数の磁石の軸方向寸法よりも長くてもよい。
【0006】
本発明の他の態様において、回転子を製造する方法は、回転子鉄心の径方向外側に複数の磁石を配置することと、複数の磁石を取り囲むように筒状の保護管を配置することと、第1の金型を、回転子鉄心の軸方向第1方向の端面に当接させることとを備える。
【0007】
この方法は、樹脂射出ノズルが形成された第2の金型を、樹脂射出ノズルが回転子鉄心の外周面と保護管の内周面との間に形成された隙間に面し、且つ、第2の金型が保護管および複数の磁石の軸方向第2方向の端面から該軸方向第2方向へ離間するように、回転子鉄心の軸方向第2方向の端面に押し当てることと、樹脂射出ノズルから隙間に樹脂を射出することとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る回転子の側方断面図である。
図2図1に示す回転子を、図1中のII−IIに沿って切断した断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る回転子の側方断面図である。
図4図3に示す回転子を、図1中のIV−IVに沿って切断した断面図である。
図5】回転子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6図1に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS2で作製される組立体の側方断面図である。
図7図3に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS2で作製される組立体の側方断面図である。
図8図1に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS3の終了時の状態を示す断面図である。
図9図3に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS3の終了時の状態を示す断面図である。
図10図1に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS4の終了時の状態を示す断面図である。
図11図3に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS4の終了時の状態を示す断面図である。
図12図1に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS5の終了時の状態を示す断面図である。
図13図3に示す回転子を製造する場合において、図5中のステップS5の終了時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る回転子10について説明する。
【0010】
なお、以下の説明において、軸方向とは、回転子の回転軸線Oに沿う方向を示し、径方向とは、軸線Oを中心とする円の半径方向を示し、周方向とは、該円の円周方向を示す。また、便宜上、図1図3図6図13の紙面左方を、軸方向前方とする。
【0011】
回転子10は、電動機の固定子(図示せず)の径方向内側に回転可能に配置され、該固定子とともに電動機を構成する。回転子10は、回転シャフト12、回転子鉄心14、複数の磁石16、保護管18、および樹脂20を備える。回転シャフト12は、軸方向に延びる円柱部材である。
【0012】
回転子鉄心14は、回転シャフト12の径方向外側に固定された筒状部材である。回転子鉄心14は、軸線Oを中心とするように配置されている。回転子鉄心14は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板から構成される。回転子鉄心14の中心には、貫通孔14aが形成されており、該貫通孔14aに、回転シャフト12が挿通されている。回転子鉄心14は、軸方向寸法Dを有する。
【0013】
複数の磁石16の各々は、軸方向へ延びる細長い磁性部材(たとえば、ネオジムまたはフェライト)であって、回転子鉄心14の外周面22の上に固定されている。本実施形態においては、計8個の磁石16が、周方向に略等間隔で配置されている。磁石16の各々は、軸方向寸法Dを有する。ここで、磁石16の軸方向寸法Dは、回転子鉄心14の軸方向寸法Dよりも短い(すなわち、D<D)。
【0014】
本実施形態においては、全ての磁石16の軸方向後方の端面28は、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも、軸方向前方にずれて位置している。その一方で、磁石16の軸方向前方の端面32は、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34と略同じ軸方向位置に、配置されている。
【0015】
保護管18は、複数の磁石16を径方向外側から取り囲む筒状部材である。保護管18は、ステンレス等の非磁性材料から作製され、軸線Oを中心とするように配置されている。ここで、保護管18の軸方向寸法Dは、回転子鉄心14の軸方向寸法Dよりも短く、且つ、磁石16の軸方向寸法Dよりも長い(すなわち、D<D<D)。
【0016】
本実施形態においては、保護管18の軸方向後方の端面26は、全ての磁石16の軸方向後方の端面28よりも軸方向後方にずれて位置し、且つ、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも軸方向前方にずれて位置している。その一方で、保護管18の軸方向前方の端面36は、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34と略同じ軸方向位置に、配置されている。
【0017】
樹脂20は、回転子鉄心14の外周面22と、保護管18の内周面24と、複数の磁石16の外面38との間の隙間Gに充填されている。より具体的には、樹脂20は、磁石16の軸方向区間において隙間Gに充填された本体部20aと、該本体部20aの軸方向後端に接続されたリング部20bとを有する。
【0018】
リング部20bは、保護管18の軸方向後方の端面26、および磁石16の軸方向後方の端面28よりも軸方向後側に位置し、該端面26および28と軸方向後側から当接している。また、リング部20bは、保護管18の内周面24の軸方向後端部と当接する。
【0019】
次に、図3を参照して、本発明の他の実施形態に係る回転子50について説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、既述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0020】
回転子50は、回転シャフト12、回転子鉄心14、複数の磁石52、保護管54、および樹脂56を備える。
【0021】
複数の磁石52の各々は、軸方向へ延びる細長い磁性部材であって、回転子鉄心14の外周面22の上に固定されている。上述の実施形態と同様に、計8個の磁石52が、周方向に略等間隔で配置されている。磁石52の各々は、軸方向寸法Dを有する。磁石52の軸方向寸法Dは、回転子鉄心14の軸方向寸法Dよりも短い(すなわち、D<D)。
【0022】
本実施形態においては、全ての磁石52の軸方向後方の端面58は、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも、軸方向前方にずれて位置している。また、全ての磁石52の軸方向前方の端面60は、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34よりも、軸方向後方にずれて位置している。
【0023】
保護管54は、複数の磁石52を径方向外側から取り囲む筒状部材である。ここで、保護管54の軸方向寸法Dは、回転子鉄心14の軸方向寸法Dよりも短く、且つ、磁石52の軸方向寸法Dよりも長い(すなわち、D<D<D)。
【0024】
保護管54の軸方向後方の端面62は、磁石52の軸方向後方の端面58よりも軸方向後方にずれて位置する一方、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも、軸方向前方にずれて位置している。
【0025】
また、保護管54の軸方向前方の端面64は、磁石52の軸方向前方の端面60よりも軸方向前方にずれて位置する一方、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34よりも、軸方向後方にずれて位置している。
【0026】
樹脂56は、回転子鉄心14の外周面22と、保護管54の内周面66と、複数の磁石52の外面68との間の隙間Gに充填されている。
【0027】
より具体的には、樹脂56は、磁石52の軸方向区間において隙間Gに充填された本体部56aと、該本体部56aの軸方向後端に接続された第1のリング部56bと、本体部56aの軸方向前端に接続された第2のリング部56cとを有する。
【0028】
第1のリング部56bは、保護管54の軸方向後方の端面62、および磁石52の軸方向後方の端面58よりも軸方向後側に位置し、該端面62および58と軸方向後側から当接している。また、第1のリング部56bは、保護管54の内周面66の軸方向後端部と当接している。
【0029】
一方、第2のリング部56cは、保護管54の軸方向前方の端面64、および磁石52の軸方向前方の端面60よりも軸方向前側に位置し、該端面64および60と軸方向前側から当接している。また、第2のリング部56cは、保護管54の内周面66の軸方向前端部と当接している。
【0030】
次に、図5を参照して、回転子10、50の製造方法について説明する。ステップS1において、製造者は、回転子鉄心14の径方向外側に、複数の磁石16、52を配置する。
【0031】
一例として、回転子10を製造する場合、製造者は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層して回転子鉄心14を作製する。また、製造者は、各々が軸方向寸法Dを有する、計8個の磁石16を準備する。そして、製造者は、回転子鉄心14の外周面22の上に、計8個の磁石16を周方向に略等間隔で固定する。
【0032】
このとき、全ての磁石16の軸方向後方の端面28は、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも、軸方向前方にずれて配置される。一方、磁石16の軸方向前方の端面32は、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34と略同じ軸方向位置に、配置される(図6)。
【0033】
他の例として、回転子50を製造する場合、製造者は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層して回転子鉄心14を作製する。また、製造者は、各々が軸方向寸法Dを有する、計8個の磁石52を準備する。そして、製造者は、回転子鉄心14の外周面22の上に、計8個の磁石52を周方向に略等間隔で固定する。
【0034】
このとき、全ての磁石52の軸方向後方の端面58は、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも、軸方向前方にずれて配置される。また、全ての磁石52の軸方向前方の端面60は、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34よりも、軸方向後方にずれて配置される(図7)。
【0035】
なお、製造者は、このステップS1において、磁石16、52を、回転子鉄心14の外周面22に、接着剤等で固定してもよい。
【0036】
ステップS2において、製造者は、複数の磁石16、52を取り囲むように、保護管18’、54’を配置する。
【0037】
一例として、回転子10を製造する場合、製造者は、保護管18’(図6)を準備する。この保護管18’は、図1および図2に示す保護管18よりも小さい直径と、保護管18と同じ軸方向寸法Dとを有する筒状部材である。次いで、製造者は、回転子鉄心14に固定された磁石16を径方向外側から取り囲むように、保護管18’を嵌着する。この状態を、図6に示す。
【0038】
ステップS2において、保護管18’の軸方向後方の端面26は、磁石16の軸方向後方の端面28よりも軸方向後方にずれて配置され、且つ、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも軸方向前方にずれて配置される。一方、保護管18’の軸方向前方の端面36は、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34と略同じ軸方向位置に、配置される。
【0039】
このステップS2によって、回転子鉄心14、磁石16、および保護管18’からなる組立体70が作製される。この組立体70においては、保護管18’の内周面24は、磁石16の外面38と当接している。
【0040】
他の例として、回転子50を製造する場合、製造者は、保護管54’(図7)を準備する。この保護管54’は、図3および図4に示す保護管54よりも小さい直径と、保護管54と同じ軸方向寸法Dとを有する筒状部材である。次いで、製造者は、回転子鉄心14に固定された磁石52を径方向外側から取り囲むように、保護管54’を嵌着する。この状態を、図7に示す。
【0041】
このステップS2において、保護管54’の軸方向後方の端面62は、磁石52の軸方向後方の端面58よりも軸方向後方にずれて配置される一方、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30よりも軸方向前方にずれて配置される。
【0042】
また、保護管54’の軸方向前方の端面64は、磁石52の軸方向前方の端面60よりも軸方向前方にずれて配置される一方、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34よりも、軸方向後方にずれて配置される。
【0043】
このステップS2によって、回転子鉄心14、磁石52、および保護管54’からなる組立体72が作製される。この組立体72においては、保護管54’の内周面66は、磁石52の外面68と当接している。
【0044】
ステップS3において、製造者は、射出成形機80の第1の金型82を、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34に当接させる。ここで、図8を参照して、本実施形態に係る射出成形機80について説明する。
【0045】
射出成形機80は、第1の金型82、第2の金型84、樹脂供給ユニット86、およびホットランナ88を備える。第1の金型82には、円形状のキャビティー90が形成されている。
【0046】
第2の金型84は、第1の金型82に対して接近および離反する方向へ可動に設置されている。第2の金型84は、第1の金型82に面する側に、加圧プレート92を有する。加圧プレート92は、キャビティー90に対応する円形状の外形を有し、キャビティー90に面する平面状の加圧面94を含む。樹脂供給ユニット86は、加熱されて液状化した樹脂を、ホットランナ88内に供給する。
【0047】
ホットランナ88は、ヒータ(図示せず)を含み、樹脂供給ユニット86から供給された樹脂を、液状化した状態のまま送給する。ホットランナ88の出口端には、樹脂射出ノズル96が設けられている。
【0048】
樹脂射出ノズル96は、加圧プレート92の加圧面94の上で外部に開口している。樹脂供給ユニット86からホットランナ88内に供給された樹脂は、ホットランナ88内を流動して、樹脂射出ノズル96から外部へ射出される。
【0049】
ステップS3において、製造者は、ステップS2にて作製した組立体70、72を、第1の金型82のキャビティー90内に設置する。
【0050】
一例として、回転子10を製造する場合、製造者は、ステップS2にて作製した組立体70を、第1の金型82のキャビティー90内に挿入し、キャビティー90を画定する底面98に、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34を当接させる。
【0051】
この状態を図8に示す。図8に示す例においては、回転子鉄心14の端面34、磁石16の端面32、および保護管18’の端面36は、キャビティー90の底面98に面接触している。
【0052】
他の例として、回転子50を製造する場合、製造者は、このステップS3において、ステップS2にて作製した組立体72を、第1の金型82のキャビティー90内に挿入し、キャビティー90の底面98に、回転子鉄心14の軸方向前方の端面34を当接させる。
【0053】
この状態を図9に示す。図9に示す例においては、回転子鉄心14の端面34は、キャビティー90の底面98に面接触する一方、磁石52の端面60、および保護管54’の端面64は、底面98から軸方向後方に離隔している。
【0054】
ステップS4において、射出成形機80は、第2の金型84を、回転子鉄心14の軸方向後方の端面30に押し当てて、第1の金型82のキャビティー90を、第2の金型84で閉鎖(いわゆる、型締め)する。
【0055】
一例として、回転子10を製造する場合、射出成形機80は、第2の金型84を第1の金型82に向かって移動させ、第2の金型84の加圧プレート92を、組立体70の回転子鉄心14の軸方向後方の端面30に、押し当てる。これにより、第1の金型82のキャビティー90は、加圧プレート92によって閉鎖される。
【0056】
この状態を図10に示す。図10に示す例においては、回転子鉄心14の端面30は、加圧プレート92の加圧面94に面接触する一方、磁石16の軸方向後方の端面28、および保護管18’の軸方向後方の端面26は、加圧面94から軸方向前方に離隔している。
【0057】
また、保護管18’は、キャビティー90を画定する側面100から径方向内側に離隔している。また、加圧プレート92の加圧面94上に配置された樹脂射出ノズル96は、保護管18’の内周面24と、回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に面するように、配置される。
【0058】
上述したように、回転子鉄心14の軸方向寸法Dは、磁石16の軸方向寸法D、および保護管18の軸方向寸法Dよりも長く設定されている。この構成によれば、このステップS4にて加圧プレート92を回転子鉄心14の端面30に押し当てたとき、図10に示すように、磁石16の軸方向後方の端面28、および保護管18’の軸方向後方の端面26を、加圧面94から離間して配置させることができる。
【0059】
これにより、磁石16および保護管18’に加圧プレート92から大きな加圧力が掛かるのを回避できるので、加圧プレート92からの加圧力によって磁石16および保護管18’が破損するのを防止することができる。
【0060】
他の例として、回転子50を製造する場合、射出成形機80は、第2の金型84を第1の金型82に向かって移動させ、第2の金型84の加圧プレート92を、組立体72の回転子鉄心14の軸方向後方の端面30に、押し当てる。
【0061】
この状態を図11に示す。図11に示す例においては、回転子鉄心14の端面30は、加圧プレート92の加圧面94に面接触する一方、磁石52の軸方向後方の端面58、および保護管54’の軸方向後方の端面62は、加圧面94から軸方向前方に離隔している。
【0062】
また、保護管54’は、キャビティー90の側面100から径方向内側に離隔している。また、樹脂射出ノズル96は、保護管54’の内周面66と、回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に面するように、配置される。
【0063】
ここで、上述したように、回転子鉄心14の軸方向寸法Dは、磁石52の軸方向寸法D、および保護管54の軸方向寸法Dよりも長く設定されている。この構成によれば、ステップS4にて加圧プレート92を回転子鉄心14の端面30に押し当てたとき、図11に示すように、磁石52の軸方向後方の端面58、および保護管54’の軸方向後方の端面62を、加圧面94から離間して配置させることができる。
【0064】
これにより、磁石52および保護管54’に加圧プレート92から大きな加圧力が掛かるのを回避できるので、加圧プレート92からの加圧力によって磁石52および保護管54’が破損するのを防止することができる。
【0065】
また、組立体72においては、加圧プレート92を回転子鉄心14の端面30に押し当てたときに、磁石52の軸方向前方の端面60、および保護管54’の軸方向前方の端面64を、キャビティー90の底面98から離間して配置させることも可能となる。
【0066】
これにより、磁石52および保護管54’に加圧力が掛かるのをより確実に回避できるので、加圧プレート92からの加圧力によって磁石52および保護管54’が破損するのを、確実に防止することができる。
【0067】
ステップS5において、射出成形機80は、保護管18’54’の内周面24、66と、回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に、樹脂を射出する。
【0068】
一例として、回転子10を製造する場合、射出成形機80は、樹脂供給ユニット86を駆動してホットランナ88内に樹脂を供給し、樹脂射出ノズル96から、保護管18’の内周面24と、回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に、樹脂を射出する。
【0069】
これにより、保護管18’の内周面24と回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に樹脂が導入される。そうすると、保護管18’は、導入された樹脂の圧力によって、径方向外側へ膨張し、キャビティー90の側面100に当接する。その結果、上述の保護管18が形成される。
【0070】
樹脂射出ノズル96から射出された樹脂は、回転子鉄心14の外周面22と、保護管18’の内周面24と、磁石16の外面38との間の隙間に充填される。また、射出された樹脂は、加圧面94と保護管18の端面26との間、および、加圧面94と磁石16の端面28の各々との間に形成された空間に充填される。
【0071】
その結果、本体部20aおよびリング部20bを有する樹脂20が形成される。この状態を、図12に示す。このステップS5によって、回転子鉄心14、磁石16、保護管18、および樹脂20からなる組立体102が作製される。
【0072】
上述したように、保護管18の軸方向寸法Dは、磁石16の軸方向寸法Dよりも長く設定され(すなわち、D<D)、これにより、保護管18の軸方向後方の端面26は、磁石16の軸方向後方の端面28よりも軸方向後方にずれて位置している。
【0073】
この構成によれば、磁石16を、その軸方向全域に亘って保護管18で覆うことができる。これにより、回転子10の稼働中に発生する磁石16の遠心力を、保護管18で均等に受けることができるので、回転子10の稼働中に該回転子10の構成要素が変形して、該回転子10に偏心が生じてしまうのを、防止できる。
【0074】
また、このステップS5によって形成される、樹脂20のリング部20bは、保護管18の内周面24に当接することになる。これにより、回転子10の稼働中において、保護管18は、磁石16のみならず、リング部20bの径方向外側への変位を抑制するので、回転子10の径方向強度を、より効果的に向上することができる。
【0075】
他の例として、回転子50を製造する場合、射出成形機80は、樹脂供給ユニット86を駆動してホットランナ88内に樹脂を供給し、樹脂射出ノズル96から、保護管54’の内周面66と、回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に樹脂を射出する。
【0076】
これにより、保護管54’の内周面66と回転子鉄心14の外周面22との間の隙間に樹脂が導入される。保護管54’は、導入された樹脂の圧力によって、径方向外側へ膨張し、キャビティー90の側面100に当接する。その結果、上述の保護管54が形成される。
【0077】
樹脂射出ノズル96から射出された樹脂は、回転子鉄心14の外周面22と、保護管54’の内周面66と、磁石52の外面68との間に形成される隙間に充填される。また、射出された樹脂は、キャビティー90の底面98と、保護管54’の軸方向前方の端面64との間、および、底面98と磁石52の軸方向前方の端面60の各々との間に形成された空間に、充填される。
【0078】
また、射出された樹脂は、加圧面94と保護管54’の軸方向後方の端面62との間、および、加圧面94と磁石52の軸方向後方の端面58の各々との間に形成された空間に、充填される。
【0079】
その結果、本体部56a、第1のリング部56b、および第2のリング部56cを有する樹脂56が形成される。この状態を、図13に示す。このステップS5によって、回転子鉄心14、磁石52、保護管54、および樹脂56からなる組立体104が作製される。
【0080】
上述したように、保護管54の軸方向寸法Dは、磁石52の軸方向寸法Dよりも長く設定されている(すなわち、D<D)。これにより、保護管54の軸方向後方の端面62は、磁石52の軸方向後方の端面58よりも軸方向後方にずれて位置するとともに、保護管54の軸方向前方の端面64は、磁石52の軸方向前方の端面60よりも軸方向前方にずれて位置している。
【0081】
この構成によれば、磁石52を、その軸方向全域に亘って保護管54で覆うことができる。これにより、回転子50の稼働中に発生する磁石52の遠心力を、保護管54で均等に受けることができるので、回転子50の稼働中に該回転子50の構成要素が変形して、該回転子50に偏心が生じてしまうのを、防止できる。
【0082】
また、このステップS5によって形成される、樹脂56の第1のリング部56bおよび第2のリング部56cは、保護管54の内周面66に当接することになる。これにより、回転子50の稼働中において、保護管54は、磁石52のみならず、第1のリング部56bおよび第2のリング部56cの径方向外側への変位を抑制するので、回転子50の径方向強度を、より効果的に向上することができる。
【0083】
ステップ6において、製造者は、回転子鉄心14に回転シャフト12を嵌め入れる。具体的には、製造者は、回転シャフト12を準備し、該回転シャフト12を、ステップS5にて作製した組立体102、104の回転子鉄心14の貫通孔14aに、嵌め入れて固定する。
【0084】
例えば、回転シャフト12は、回転子鉄心14の貫通孔14aに、焼き嵌めによって固定される。このステップS6によって、図1に示す回転子10、または図3に示す回転子50が製造される。
【0085】
なお、磁石16、52の軸方向寸法D、Dと、保護管18、54の軸方向寸法D、Dとは、ステップS4にて加圧プレート92を回転子鉄心14の軸方向後方の端面30に所定の力(例えば、40MPa)で押し当てたときの回転子鉄心14の軸方向寸法Dよりも小さい値として、設定される。
【0086】
ここで、ステップS4にて加圧プレート92を回転子鉄心14の端面30に押し当てたときの回転子鉄心14の軸方向寸法Dとは、以下の式1によって、定められ得る。
=(t−ξ)×n ・・・(式1)
【0087】
ここで、tは、回転子鉄心14を構成する各電磁鋼板の軸方向の厚さである。ξは、ステップS4にて回転子鉄心14に加圧プレート92を所定の力(例えば、40MPa)で押し当てたときの、各電磁鋼板の軸方向の弾性変形量である。nは、回転子鉄心14を構成する電磁鋼板の枚数である。
【0088】
また、磁石16、52は、軸方向に並ぶように配置された複数の磁石セグメントから構成されてもよい。この場合、磁石16、52の軸方向前方の端面32、60は、複数の磁石セグメントのうち、最も軸方向前方に配置された磁石セグメントの軸方向前方の端面によって、構成される。
【0089】
また、磁石16、52の軸方向後方の端面28、58は、複数の磁石セグメントのうち、最も軸方向後方に配置された磁石セグメントの軸方向後方の端面によって、構成される。また、保護管18、54と磁石16、52は、互いに同じ軸方向寸法を有してもよい。
【0090】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0091】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」、「次いで」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0092】
10,50 回転子
12 回転シャフト
14 回転子鉄心
16,52 磁石
18,54 保護管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13