特許第6557169号(P6557169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6557169-深絞り体の開口端部形状矯正装置 図000002
  • 特許6557169-深絞り体の開口端部形状矯正装置 図000003
  • 特許6557169-深絞り体の開口端部形状矯正装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557169
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】深絞り体の開口端部形状矯正装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/14 20060101AFI20190729BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20190729BHJP
   B21D 22/30 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B21D3/14 J
   B21D37/08
   B21D22/30 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-85814(P2016-85814)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-192975(P2017-192975A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】文田 勉
(72)【発明者】
【氏名】山下 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】山越 和幸
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−115673(JP,A)
【文献】 実開昭55−122928(JP,U)
【文献】 特開2001−205543(JP,A)
【文献】 特開平9−94614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/14
B21D 22/30
B21D 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状側壁(6a,6b,6c,6d)を含む横断面多角形の周壁(6)を有するようにプレス成形されて成る金属製の深絞り体(5)の開口端部(5a)を内側に押圧して矯正する深絞り体の開口端部形状矯正装置であって、固定の基台(7)と、開口端を下向きとした姿勢の前記深絞り体(5)を内側から支持するようにして前記基台(7)上に配設される下型(8)と、前記深絞り体(5)を前記下型(8)と協働して保持することを可能としつつ前記下型(8)の上方で昇降可能な上型(9)と、所定位置まで降下した前記上型(9)で押し下げられるようにしつつ前記下型(8)を囲んで前記基台(7)に浮動支持される浮動支持台(10)と、前記深絞り体(5)が有する複数の前記平板状側壁(6a〜6d)と平行な軸線を有して前記浮動支持台(10)に支持される複数の支軸(11)と、複数の前記平板状側壁(6a〜6d)に個別に対応して配置されるとともに前記支軸(11)で回動可能に支持される複数の可動片(12)と、前記浮動支持台(10)が前記上型(9)で押し下げられるのに応じて前記深絞り体(5)の開口端部(5a)を内側に押圧する側に前記可動片(12)を回動駆動することを可能としつつ前記浮動支持台(10)を貫通して前記可動片(12)の下面に上端が当接されるドライバ(13)とを備え、前記可動片(12)に対応する部分で上下に延びて前記浮動支持台(10)を貫通する前記ドライバ(13)の下端部が前記基台(7)に固定されることを特徴とする深絞り体の開口端部形状矯正装置。
【請求項2】
前記深絞り体(5)の開口端部(5a)を内側に押圧可能な押圧部(32)を一端部に有する前記可動片(12)の他端部の外面に、前記支軸(11)の軸線を中心とした円弧状の被支持面(34)が形成され、その被支持面(34)を摺動可能に支持するようにして円弧状に凹んだ支持面(35)を有するバックアップブロック(36)が前記浮動支持台(10)に固定されることを特徴とする請求項1に記載の深絞り体の開口端部形状矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の平板状側壁を含む横断面多角形の周壁を有するようにプレス成形されて成る金属製の深絞り体の開口端部を内側に押圧して矯正する深絞り体の開口端部形状矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板状側壁を周壁の少なくとも一部に有する深絞り体を金属板のプレスによって形成すると、一般的には、平板状側壁の部分で深絞り体の開口端部は外側に広がろうとする。そこで深絞り体の開口端部を内側に押圧して矯正する必要があり、特許文献1、特許文献2および特許文献3で開示されるものでは、カムスライダ機構を用いて深絞り体の開口端部を内側に押圧するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−080551号公報
【特許文献2】特開平09−239444公報
【特許文献3】特開2004−337900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1、特許文献2および特許文献3で開示されるもののようにカムスライダ機構を用いると、装置が大型化するという課題があり、単発のプレス機であれば特に問題は生じないが、トランスファープレスでは矯正の工程前後の工程との間のスペースを広く設定する必要が生じ、スペース的な無駄が生じてしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、深絞り体の開口端部をコンパクトな機構で矯正可能とし、トランスファープレスにスペース的な無駄なく組み込み可能とした深絞り体の開口端部形状矯正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の平板状側壁を含む横断面多角形の周壁を有するようにプレス成形されて成る金属製の深絞り体の開口端部を内側に押圧して矯正する深絞り体の開口端部形状矯正装置であって、固定の基台と、開口端を下向きとした姿勢の前記深絞り体を内側から支持するようにして前記基台上に配設される下型と、前記深絞り体を前記下型と協働して保持することを可能としつつ前記下型の上方で昇降可能な上型と、所定位置まで降下した前記上型で押し下げられるようにしつつ前記下型を囲んで前記基台に浮動支持される浮動支持台と、前記深絞り体が有する複数の前記平板状側壁と平行な軸線を有して前記浮動支持台に支持される複数の支軸と、複数の前記平板状側壁に個別に対応して配置されるとともに前記支軸で回動可能に支持される複数の可動片と、前記浮動支持台が前記上型で押し下げられるのに応じて前記深絞り体の開口端部を内側に押圧する側に前記可動片を回動駆動することを可能としつつ前記浮動支持台を貫通して前記可動片の下面に上端が当接されるドライバとを備え、前記可動片に対応する部分で上下に延びて前記浮動支持台を貫通する前記ドライバの下端部が前記基台に固定されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記深絞り体の開口端部を内側に押圧可能な押圧部を一端部に有する前記可動片の他端部の外面に、前記支軸の軸線を中心とした円弧状の被支持面が形成され、その被支持面を摺動可能に支持するようにして円弧状に凹んだ支持面を有するバックアップブロックが前記浮動支持台に固定されることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、ドライバで回動駆動される可動片で深絞り体の開口端部を内側に押すようにしており、ドライバは、上下に延びて基台に固定されるものであるので、従来のカムスライダ機構を用いたものと比べると、水平方向に移動する移動部材ならびにその移動部材を支持する部材が不要であり、水平方向でのコンパクト化が可能となり、トランスファープレスにもスペース的な無駄なく組み込むことが可能となる。
【0009】
また本発明の第2の特徴によれば、バックアップブロックの支持面で可動片にかかる荷重を受けることができ、支軸に過大な荷重がかからないようにして支軸の耐久性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】上型の降下途中での深絞り体の開口端部形状矯正装置を示す縦断面図であって図2の1−1線に沿う断面図である。
図2図1の2矢視方向から見た平面図である。
図3】上型が所定位置まで降下した状態での図1に対応した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図1図3を参照しながら説明すると、先ず図1および図2において、金属製の深絞り体5は、複数たとえば4つの平板状側壁6a,6b,6c,6dを含む横断面多角形(この実施の形態では四角形)の周壁6を有するようにして、トランスファープレスの複数工程を経てプレス成形されて成るものであり、その深絞り体5の開口端部5aを内側に押圧して矯正するために、前記トランスファープレスの途中に本発明に従う開口端部形状矯正装置が配設される。
【0012】
ところで前記開口端部形状矯正装置は、前記深絞り体6の4つの平板状側壁6a〜6dに対応した部分が同様の構造を有するように構成されるものであり、以下、前記深絞り体6の1つの平板状側壁6aに対応する部分の構造について詳細に説明し、他の平板状側壁6b,6c,6dに対応する部分にも、平板状側壁6aに対応する部分と同様の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0013】
前記開口端部形状矯正装置は、固定の基台7と、開口端を下向きとした姿勢の前記深絞り体5を内側から支持するようにして前記基台7上に配設される下型8と、前記深絞り体5を前記下型8と協働して保持することを可能としつつ前記下型8の上方で昇降可能な上型9と、所定位置まで降下した前記上型9で押し下げられるようにしつつ前記下型8を囲んで前記基台7に浮動支持される浮動支持台10と、前記深絞り体5が有する前記平板状側壁6aと平行な軸線を有して前記浮動支持台10に支持される支軸11と、前記平板状側壁6aに対応した位置に対応して配置されるとともに前記支軸11で回動可能に支持される可動片12と、前記浮動支持台10が前記上型9で押し下げられるのに応じて前記深絞り体5の開口端部5aを内側に押圧する側に前記可動片12を回動駆動することを可能としつつ前記浮動支持台10を貫通してて前記可動片12の下面に上端が当接されるドライバ13とを備える。
【0014】
前記基台7は、横断面形状を四角形状として上方に隆起した下型支持部7aを中央部に有するように形成されており、前記下型8は、前記下型支持部7a上に複数のボルト14で固定されるベース下型15と、該ベース下型15に対して上下方向に制限された範囲での変位を可能として前記ベース下型15の上方に配置される可動下型16とを備え、ベース下型15および可動下型16が相互に当接した状態にある前記下型8は、開口端を下向きとした姿勢の前記深絞り体5の内面に当接して、該深絞り体5を内側から支持することが可能である。
【0015】
前記下型支持部7aおよび前記ベース下型15の複数箇所に軸方向移動可能に挿通される連結ロッド17の下端部には、前記ベース下型15に下方から当接可能な鍔部17aが設けられ、この連結ロッド17の上端部に設けられるねじ軸部17bが前記可動下型16に螺合される。また前記基台7の前記下型支持部7aおよび前記可動下型16間の複数箇所にはコイル状の第1スプリング18が縮設され、前記可動下型16には、前記第1スプリング18の上部に挿入されるロッド状のスプリングガイド19が固定される。すなわち前記ベース下型15の上方の前記可動下型16は、前記ベース下型15から離反して上方に変位する方向に付勢されて前記下型支持部7aに浮動支持され、前記可動下型16の前記ベース下型15に対する上方への移動限は、前記鍔部17aが前記ベース下型15の下面に当接することで規制される。
【0016】
前記上型9は、図示しない油圧ラム等に連結されるベース上型20と、該ベース上型20に対して上下方向に制限された範囲での変位を可能として前記ベース上型20に吊り下げ支持されるパッド21とを備え、前記パッド21は、開口端を下向きとした姿勢の前記深絞り体5の外面に当接して、該深絞り体5を前記下型8と協働して保持することが可能である。
【0017】
前記パッド21の複数箇所に下端部が固定される第1ガイドロッド22の上部が前記ベース上型20に摺動可能に支持され、前記パッド21の前記ベース上型20に対する上下方向相対移動が前記第1ガイドロッド22でガイドされる。また前記ベース上型20の複数箇所に軸方向移動可能に挿通される吊り下げロッド23の上端部には、前記ベース上型20に上方から当接する鍔部23aが設けられ、この吊り下げロッド23の下端部に設けられるねじ軸部23bが前記パッド21に螺合される。すなわち前記パッド21は、前記鍔部23aが、図1で示すように、前記ベース上型20に上方から当接することで前記ベース上型20に対する下方への移動限が規制されるようにして、前記ベース上型20に吊り下げ支持される。
【0018】
前記基台7に下端部が固定される4本の第2ガイドロッド24の上部が前記上型9の前記ベース上型20に摺動可能に嵌合されており、前記上型9は前記第2ガイドロッド24でガイドされるようにして昇降する。
【0019】
前記浮動支持台10は、前記下型8のベース下型15および前記基台7の下型支持部7aを囲むようにして四角形状に形成される。また前記浮動支持台10の下方で前記下型支持部7aを囲む押さえ板25が前記基台7に固定されており、前記浮動支持台10および前記押さえ板25間の複数箇所には、前記浮動支持台10を上方に向けて付勢するコイル状の第2スプリング26が縮設される。すなわち前記浮動支持台10は、前記基台7に固定される前記押さえ板25に第2スプリング26を介して浮動支持されることなる。
【0020】
ところで前記浮動支持台10の複数箇所には、前記浮動支持台10から上方に延びる棒状の受け部材27がボルト28で締結されており、前記上型9のベース上型20には、前記受け部材27の上端部に当接可能な当接突部29が一体に形成される。したがって前記上型9が、図3で示すように、所定位置まで降下したときに前記当接突部29が前記受け部材27の上端部に当接して下向きの押圧力を及ぼすことで前記浮動支持台10が第2スプリング26のばね力に抗して押し下げられることになる。
【0021】
前記浮動支持台10上には、前記下型8および上型9で保持された状態にある前記深絞り体5が有する前記平板状側壁6aに対応した一対のブラケット30が、相互に間隔をあけて一対ずつのボルト31で固定されており、それらのブラケット30に、前記支軸11がそれぞれ支持され、前記平板状側壁6aに沿って長く延びる可動片12の長手方向両端部が、前記支軸11で回動可能に支持される。
【0022】
前記可動片12の一端部には、前記深絞り体5の開口端部5aを内側に押圧可能な押圧部32が形成されており、前記下型8におけるベース下型15の上部外面には、望ましい最終形状の前記深絞り体5における開口端部5aの内面形状に対応した受け面33が形成され、前記深絞り体5の開口端部5aは、前記押圧部32で前記受け面33に押しつけられる。
【0023】
前記可動片12の他端部の外面には、前記支軸11の軸線を中心とした円弧状の被支持面34が形成され、その被支持面34を摺動可能に支持するようにして円弧状に凹んだ支持面35を有するバックアップブロック36が、複数個たとえば4個のボルト37で前記浮動支持台10に固定される。
【0024】
前記ドライバ13は、前記可動片12の長手方向に沿って長い矩形状の横断面形状を有して上下方向に延びるものであり、このドライバ13の下端部は、その下端部に設けられる鍔部13aが前記押さえ板25および前記基台7間に挟持されるようにして前記基台7に固定される。しかも前記ドライバ13は前記浮動支持台10を貫通するものであり、前記支軸11および前記押圧部32間で前記可動片12の下面に前記ドライバ13の上端が当接する。したがって前記浮動支持台10が、前記上型9の所定位置までの降下で下方に押し下げられると、前記基台7に固定された前記ドライバ13で前記可動片12が前記支軸の軸線周りで図1および図3の反時計方向に回動駆動され、それによって前記可動片12の前記押圧部が前記深絞り体5の開口端部5aを内側の前記受け面33に向けて押し付けることになる。
【0025】
また前記上型9における前記パッド21の複数箇所には、その上型9の前記所定位置までの降下時に、図3で示すように、前記支軸11および前記押圧部32間で前記可動片12の上面に当接する当接ロッド38を有するダンパ39が配設されており、前記ドライバ13による前記可動片12の急激な回動作動が前記ダンパ39によって緩衝される。
【0026】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、開口端を下向きとした姿勢の深絞り体5を内側から支持するようにして基台7上に配設される下型8と協働して深絞り体5を保持し得る上型9が下型8の上方で昇降可能であり、所定位置まで降下した前記上型9で押し下げられる浮動支持台10が下型8を囲んで基台7に浮動支持され、深絞り体5が有する複数の前記平板状側壁6a〜6dと平行な軸線を有する支軸11が浮動支持台10に支持され、前記平板状側壁6a〜6dに個別に対応して配置されるとともに前記支軸11で回動可能に支持される複数の可動片12が、浮動支持台10の上型9による押し下げに応じて深絞り体5の開口端部5aを内側に押圧する側にドライバ13で回動駆動されるものであり、ドライバ13が、可動片12に対応する部分で上下に延びて浮動支持台10を貫通し、基台7に固定されるドライバ13の上端部が可動片12の下面に当接されるので、従来のカムスライダ機構を用いたものと比べると、水平方向に移動する移動部材ならびにその移動部材を支持する部材が不要であり、水平方向でのコンパクト化が可能となり、トランスファープレスにもスペース的な無駄なく組み込むことが可能となる。
【0027】
また深絞り体5の開口端部5aを内側に押圧可能な押圧部32を一端部に有する可動片12の他端部の外面に、支軸11の軸線を中心とした円弧状の被支持面34が形成され、その被支持面34を摺動可能に支持するようにして円弧状に凹んだ支持面35を有するバックアップブロック36が浮動支持台10に固定されるので、バックアップブロック36の支持面35で可動片12にかかる荷重を受けることができ、支軸11に過大な荷重がかからないようにして支軸11の耐久性向上に寄与することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0029】
5・・・深絞り体
5a・・・深絞り体の開口端部
6・・・周壁
6a,6b,6c,6d・・・平板状側壁
7・・・基台
8・・・下型
9・・・上型
10・・・浮動支持台
11・・・支軸
12・・・可動片
13・・・ドライバ
32・・・押圧部
34・・・被支持面
35・・・支持面
36・・・バックアップブロック
図1
図2
図3