(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557196
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20190729BHJP
B66B 23/22 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B66B29/04 J
B66B23/22 E
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-168947(P2016-168947)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-34943(P2018-34943A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡村 直子
(72)【発明者】
【氏名】宇津宮 博文
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0164117(US,A1)
【文献】
実公昭55−010384(JP,Y2)
【文献】
特開2004−217416(JP,A)
【文献】
米国特許第06006889(US,A)
【文献】
実公昭50−017190(JP,Y1)
【文献】
実開昭56−124666(JP,U)
【文献】
特開2002−211869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/04
B66B 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて乗降口間を移動する複数の踏段と、
該複数の踏段の進行方向側方に設けられ、本体枠に固定された複数の柱、該複数の柱に支持された欄干パネルと手摺枠、および、該手摺枠の側方を覆う外デッキを有する欄干と、
該欄干の上部の手摺枠を介して取り付けられ、前記踏段と同期してに移動する移動手摺と、
前記欄干の外側に配置されるフェンスと、
を備えた乗客コンベアにおいて、
前記フェンスは、前記外デッキの垂直投影面内に配置されるとともに、その下端が、前記柱の設置位置の垂直投影面上で前記外デッキに固定金具で固定されることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記踏段の踏面から当該踏面の側方の前記フェンス上端までの高さ寸法を、標準的な成人の身長より大きな値に設定することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記移動手摺と前記フェンスの間の隙間寸法を、標準的な成人の体幅より小さな値に設定することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、パネル型欄干で欄干の外側にフェンスを設置した乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、一般に、無端状に連結されて乗降口間を移動する複数の踏段と、これらの踏段の進行方向側方に立設される欄干と、この欄干の周縁部に配置され、踏段と同一方向に移動する移動手摺とを備えている。
【0003】
そして、欄干の外側に乗客や物が落下するのを防ぐため、透明型欄干における欄干の外側にフェンスを設置した乗客コンベアとして、フェンスを略U字状の板体から構成し、この板体の一端を手摺枠に固定したものが開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、乗客コンベアの本体枠の側部に取り付けられると共に、本体枠の長手方向に沿って複数配置され、かつ、移動手摺の上方に向けて延びる支柱を設け、これらの支柱の間に、フェンスを配置したものが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−36054号公報
【特許文献2】特開平08−2866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、略U字状のフェンスの一端をガラスパネル等の透明型欄干に固定した片持ち構造のため、剛性を確保する点で課題があった。すなわち、安全性の観点から、物だけではなく、子どもや飲酒者等の乗客が欄干の外側に転落することをフェンスにより防止することが期待されるが、乗客をささえる剛性をフェンスの支持部に備えることが難しかった。さらに、特許文献1に記載のものは、手摺枠と外デッキの高さ方向の間寸法が小さいパネル型欄干には適用が難しい構造でもあった。
【0007】
また、特許文献2に記載のものは、本体枠の側部に立設された支柱にフェンスを取り付ける構造であることから、乗客コンベア幅内にフェンスを配置することができず、欄干とフェンスの間に大きな隙間が生じる構成であった。このため、欄干に寄りかかった飲酒者等の乗客がその隙間に挟まってしまう可能性があることに加え、省スペース化を図ることも難しかった。また、既設の乗客コンベアにフェンスを追設しようとした場合、本体フレームに支柱を固定する大掛かりな作業が必要となるという課題もあった。
【0008】
本発明の目的は、新設既設を問わず、欄干の外側に設置されるフェンスの剛性をより高め、かつ、フェンスを欄干により近接して配置することのできる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、本発明の目的を達成するために、本発明の乗客コンベアは、無端状に連結されて乗降口間を移動する複数の踏段と、該複数の踏段の進行方向側方に設けられ、本体枠に固定された複数の柱、該複数の柱に支持された欄干パネルと手摺枠、および、該手摺枠の側方を覆う外デッキを有する欄干と、該欄干の上部の手摺枠を介して取り付けられ、前記踏段と同期してに移動する移動手摺と、前記欄干の外側に配置されるフェンスと、を備え、前記フェンスは、前記外デッキの垂直投影面内に配置されるとともに、その下端が、前記柱の設置位置の垂直投影面上で前記外デッキに固定金具で固定されるものとした。
【発明の効果】
【0010】
前記構成の乗客コンベアによれば、欄干の外側に設置されるフェンスを、新設既設を問わず、剛性の高いものとし、かつ、乗客コンベア幅内に配置することができる。
【0011】
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施例に係る乗客コンベアを示す全体構成図である。
【
図2】一実施例に係る欄干およびフェンスの構成例を示す断面図である。
【
図3】一実施例に係るフェンスの構成例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の乗客コンベアを実施するための形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。なお、各図において同一または類似の構成には同じ符号を付して繰り返しの説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る乗客コンベアを示す全体構成図である。この乗客コンベアは、異なる階床間に設置される昇りのエスカレーター1であり、図面では、進行方向をx、幅方向をy、鉛直方向をzで示している。このエスカレーター1は、下階床と上階床との間に架設され、下階床に向かって延在する下部水平部2a、上階床に向かって延在する上部水平部2b、および下部水平部2aと上部水平部2bとの間に形成される傾斜部2cとを有する本体枠2と、本体枠2内に設けられて無端状に連結され、乗降口3,4間を循環移動する複数の踏段5と、これらの踏段5の進行方向側方に設けられる欄干6と、この欄干6の周縁部に取り付けられ、踏段5と同期して同一方向に移動する移動手摺7と、欄干6の外側に配置されるフェンス8とを備えている。なお、
図1では、後述する外装板13の図示を省略することで、欄干6内部に設けられる複数の柱11の概略形状及び位置を図示している。
【0015】
図2は、
図1のA−A位置での片側の欄干6およびフェンス8等の構成例を示す断面図である。
図3は、
図1のB方向から見た片側の移動手摺7およびフェンス8等の構成例を示す上面図である。
【0016】
図2に示すように、欄干6は、柱11と、柱11に支持される欄干パネル12と手摺枠16、手摺枠16と外装板13との間を覆う外デッキ14と、欄干パネル12の内側下部とステップ5との間を覆う内デッキ15とを有している。
【0017】
移動手摺7は、欄干パネル12の上端に固定される手摺枠16を介して移動可能に取り付けられている。
【0018】
そして、本実施例のエスカレーター1は、欄干の外側に設置されるフェンス8を、乗客コンベア幅W2内に配置するとともに、新設既設を問わず、剛性の高いものとするために工夫が施されている。具体的には、フェンス8は、その下端が、柱11の垂直投影面上に設置したフェンス固定金具21により外デッキ14に固定され、外デッキ14の垂直投影面内に配置されている。
【0019】
フェンス固定金具21は、固定ボルト21aにより外デッキ14の上面に取り付けられる水平部21bと、この水平部21bから対となって立ち上がり、フェンス8の下端部が挿入されるとともに、固定ボルト21cによりフェンス8の下端部を挟持する挟持部21dとを有している。
【0020】
フェンス8にあっては、踏段5の踏面からフェンス上端までの高さ寸法H1が、標準的な成人の身長である約170cmより大きな値になるよう、その高さ寸法が設定されている。また、移動手摺7とフェンス8との間の隙間寸法W1が、標準的な成人の体幅より小さな値(具体的には、60〜100mm程度)となるよう、フェンス固定金具21の固定位置が設定されている。なお、フェンス8の上端部8aは、垂直としても良いし、外側に向かって丸みを帯びた形状としても良い。
【0021】
本実施例にあっては、例えば、既設のエスカレーター1にフェンス8を追設しようとする場合、まず、欄干パネル12をエスカレーター1から取り外し、柱11の取付位置を確認し、柱11の取付位置の垂直投影面上の外デッキ14にフェンス固定金具21を取り付ける。すなわち、剛性の高い柱11の位置でフェンス固定金具21の水平部21bを外デッキ14の上面に対向させた状態で固定ボルト21aにより固定する。
【0022】
次いで、フェンス8の下端を、フェンス固定金具21により固定する。すなわち、フェンス8の下端部をフェンス固定金具21の挟持部21dに挿入し、この状態で固定ボルト21cを締結して固定する。
【0023】
このようにフェンス8を取り付けた状態で、エスカレーター1を稼働すると、踏段5の踏面からフェンス上端までの高さ寸法H1が、標準的な成人の身長より大きな値となっていることから、子どもや飲酒者等の乗客が欄干6を乗り出したとしてもフェンス8でそれ以上外側に身を乗り出すことが阻まれる。このとき、乗客による押圧によってフェンス8には比較的大きな荷重がかかるが、フェンス8は、その下端がフェンス固定金具21により固定され、フェンス固定金具は、柱11の取り付け位置の垂直投影面上でもっとも剛性の高い位置であることから、十分に荷重に耐えることができる。また、移動手摺7とフェンス8との間の隙間寸法W1が、標準的な成人の体幅より小さな値となっていることから、フェンス8と移動物である移動手摺7との間に乗客の身体が挟まる危険を低減することができる。
【0024】
本実施例によれば、フェンス8は、その下端が、剛性の高い箇所でフェンス固定金具21により外デッキ14に固定されることから、既設新設を問わず、剛性の高いフェンス8を移動手摺7に近接させて設置することができ、乗客の落下防止と挟まり防止を担うフェンスとしての機能を確実に発揮することができる。
【0025】
また、フェンス8は、外デッキ14の垂直投影面内に配置されることにより、フェンス8を乗客コンベア幅W2内に配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0026】
以上、本発明の乗客コンベアの実施例について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の乗客コンベアは、上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 エスカレーター
2 本体枠
3,4 乗降口
5 踏段
6 欄干
7 移動手摺
8 フェンス
11 柱
12 欄干パネル
13 外装板
14 外デッキ
15 内デッキ
16 手摺枠
21 フェンス固定金具
21a,21c 固定ボルト
21b 水平部
21d 挟持部
H1 踏段の踏面からフェンス上端までの高さ寸法
W1 移動手摺とフェンスとの間の隙間寸法
W2 乗客コンベア幅