(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るファンモータ制御装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0010】
〔第1の実施の形態〕
[ファンモータ制御装置の構成]
図1はファンモータ制御装置10のブロック図である。ファンモータ制御装置10は、ファン12Aおよびファン12Bを回転駆動するファンモータ14Aおよびファンモータ14Bを駆動制御する。以下、ファン12A、12Bおよびファンモータ14A、14Bを特に区別しないときには、ファン12およびファンモータ14と記載する。ファン12は、図示しない工作機械を制御する数値制御装置の筐体内の空気を排出することにより、筐体内のCPU16等の機器の冷却を促進するものである。ファンモータ14は、供給電圧(供給電流)を可変にして、ファンモータ14の回転数が制御されるものであってもよいし、パルス制御により回転数が制御されるものであってもよいが、本実施の形態では、供給電圧を可変にして回転数が制御されるものについて説明する。
【0011】
ファンモータ制御装置10は、マイクロコンピュータ18、回転数センサ20A、20B、報知部22、電源24を有している。マイクロコンピュータ18はマイクロプロセッサ等を有し、マイクロコンピュータ18は、ファンモータ制御部26、異常判定制御部28、交換判定部30を有している。
【0012】
回転数センサ20A、20Bは、ファンモータ14A、14Bの回転数を検出して、検出した回転数の情報をマイクロコンピュータ18に出力する。報知部22は、異常判定制御部28からの指令に基づき、音、文字、画像、光またはこれらの組み合わせにより工作機械を操作するオペレータ等に報知を行う。ファンモータ制御部26は、CPU16等の温度に応じて、電源24からファンモータ14A、14Bに供給する電力の電圧を制御して、ファンモータ14A、14Bの回転数を制御する。以下では、本実施の形態の例を簡単にするため、ファンモータ制御部26は、ファンモータ14A、14Bに供給する電力の電圧を定格電圧とし、ファンモータ14A、14Bの回転数が定格回転数となるように制御しているものとして説明する。
【0013】
異常判定制御部28は、ファンモータ14A、14Bの異常を判定する。また異常判定制御部28は、ファンモータ14A、14Bについて後述する異常判定モードを実行するときには、ファンモータ14A、14Bを制御する。また、異常判定制御部28は、ファンモータ14Aまたはファンモータ14Bについて異常と判定した後は、ファンモータ14A、14Bを制御する。交換判定部30は、ファンモータ14A、14Bが交換されたことを判定する。
【0014】
[ファンモータの異常判定について]
ここでファンモータ14の異常判定について、基本的な考え方について説明する。
図2Aは、ファンモータ14への電力供給をオフからオンにしたときのファンモータ14の異常判定について説明する図である。異常判定制御部28は、ファンモータ14への電力供給をオフからオンにしてから所定時間T1経過したときのファンモータ14の回転数Nが所定回転数N1以上であれば、ファンモータ14を正常と判定する。一方、異常判定制御部28は、ファンモータ14への電力供給をオフからオンにしてから所定時間T1経過したときのファンモータ14の回転数Nが所定回転数N1未満であれば、ファンモータ14を異常と判定する。
【0015】
図2Bは、ファンモータ14への電力供給をオンからオフにしたときのファンモータ14の異常判定について説明する図である。異常判定制御部28は、ファンモータ14への電力供給をオンからオフにしてから所定時間T2経過したときのファンモータ14の回転数Nが所定回転数N2以上であれば、ファンモータ14を正常と判定する。一方、異常判定制御部28は、ファンモータ14への電力供給をオンからオフにしてから所定時間T2経過したときのファンモータ14の回転数Nが所定回転数N2未満であれば、ファンモータ14を異常と判定する。
【0016】
以下では、ファンモータ14への電力供給をオフからオンにしたときのファンモータ14の異常判定について説明するが、ファンモータ14への電力供給をオンからオフにしたときのファンモータ14の異常判定もほぼ同様にして行うことができる。
【0017】
[異常判定モードについて]
通常、ファンモータ制御部26は、CPU16が起動したときにファンモータ14への電力供給をオフからオンにし、CPU16が停止した後にファンモータ14への電力供給をオンからオフにする。前述のファンモータ14の異常判定は、ファンモータ14への電力供給がオフからオン、または、オンからオフになったときに行われるため、ファンモータ14の異常判定を行う機会が限られていた。
【0018】
そこで本実施の形態では、CPU16の稼働中であっても、異常判定制御部28により、ファンモータ14への電力供給のオフとオンとを繰り返す異常判定モードを実行するようにし、ファンモータ14の異常判定を行う機会を増やしている。
【0019】
図3は異常判定モードについて説明する図である。
図3では、ファンモータ14Aを「ファンモータA」と記載し、ファンモータ14Bを「ファンモータB」と記載している。
図3に示すように、CPU16の稼働中にファンモータ14Aへの電力供給のオフとオンを繰り返す異常判定モードを実行している。ファンモータ14Aについて異常判定モードが実行されているときには、ファンモータ14Bについて異常判定モードは実行しない。ファンモータ14Aについて異常判定モードの実行が終了した後に、ファンモータ14Bについて異常判定モードを実行する。ファンモータ14Bについて異常判定モードが実行されているときには、ファンモータ14Aについて異常判定モードは実行しない。
【0020】
異常判定制御部28は、ファンモータ14Aについて異常判定モードを実行しているときには、ファンモータ14Bの回転数が、ファンモータ14Aについて異常判定モードが実行される前よりも大きくなるように制御する。同様に、異常判定制御部28は、ファンモータ14Bについて異常判定モードを実行しているときには、ファンモータ14Aの回転数が、ファンモータ14Bについて異常判定モードが実行される前よりも大きくなるように制御する。これにより、一方のファンモータ14について異常判定モードが実行されることにより低下するCPU16等の冷却性能を、他方のファンモータ14により補うことができる。
【0021】
本実施の形態では、1回の異常判定モード中にファンモータ14への電力供給のオフとオンを5回繰り返すようにしているが、回数は5回より多くてもよいし、5回未満であってもよい。異常判定モードの実行は、CPU16等の稼働中に複数回行ってもよいし、1回のみ行うようにしてもよい。また異常判定モードの実行は、CPU16等が起動する毎に行ってもよいし、CPU16等の起動が数回行われる毎に行ってもよい。本実施の形態では、2つのファンモータ14A、14Bについて異常判定モードを実行する例を示しているが、2つ以上のファンモータについて異常判定モードを実行する場合にも、1つのファンモータについて異常判定モードを実行し、他のファンモータについては異常判定モードを実行しないようにすればよい。
【0022】
[異常判定制御]
図4はファンモータ14の異常判定制御の流れを示すフローチャートである。
図4では、ファンモータ14Aを「ファンモータA」と記載し、ファンモータ14Bを「ファンモータB」と記載している。
【0023】
ステップS1では、ファンモータ14Aの交換直後である(ファンモータ14Aが交換された後に初めて駆動制御された)か否かを判定する。ファンモータ14Aの交換直後の場合にはステップS2に移行する。ファンモータ14Aが直前に交換されていないときにはステップS3へ移行する。ステップS2では、ファンモータ14Aの異常判定に用いる所定時間および所定回転数を設定して、ステップS3へ移行する。所定時間および所定回転数は、
図2Aにおける所定時間T1および所定回転数N1のことを示す。所定時間および所定回転数の設定については、
図5および
図6を用いて後に詳述する。
【0024】
ステップS3では、ファンモータ14Bの交換直後である(ファンモータ14Bが交換された後に初めて駆動制御された)か否かを判定する。ファンモータ14Bの交換直後の場合にはステップS4に移行する。ファンモータ14Bが直前に交換されていないときにはステップS5へ移行する。ステップS4では、ファンモータ14Bの異常判定に用いる所定時間および所定回転数を設定して、ステップS5へ移行する。
【0025】
ステップS5では、前回のステップS6の処理でファンモータ14Aが正常と判定されたか否かを判定する。ファンモータ14Aが正常と判定されたときには、ステップS6へ移行する。ファンモータ14Aが異常と判定されたときには、ステップS7へ移行する。ステップS6では、ファンモータ14Aの異常判定処理を行い、ステップS7へ移行する。
【0026】
ステップS7では、前回のステップS8の処理でファンモータ14Bが正常と判定されたか否かを判定する。ファンモータ14Bが正常と判定されたときには、ステップS8へ移行する。ファンモータ14Bが異常と判定されたときには、ステップS5へ移行する。ステップS8では、ファンモータ14Bの異常判定処理を行い、ステップS5へ移行する。ファンモータ14A、14Bの異常判定処理については、
図7を用いて後に詳述する。
【0027】
(所定時間および所定回転数の設定処理)
ファンモータ14は、定格電流および定格電圧の電力が供給されたときに、予め決められた定格回転数で駆動するように設計されている。ファンモータ14の異常判定に用いる所定時間および所定回転数は、このように設計されたファンモータ14を想定して予め設定されている。しかし、ファンモータ14はメーカ出荷時においても製品毎にバラツキがあり、またファンモータ14が長期保管されたことにより性能が低下し、ファンモータ14を交換した直後であっても期待できる性能を十分に発揮できないことがある。そこで、本実施の形態では、ファンモータ14の異常判定に用いる所定時間および所定回転数を、ファンモータ14毎に補正するようにしている。
【0028】
図5は、所定時間および所定回転数の設定処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、所定時間および所定回転数の設定処理において用いられる第1回転数閾値、第2回転数閾値および第3回転数閾値と定格回転数との関係を示す図である。所定時間および所定回転数の設定処理は、ファンモータ14A、14Bともに同じである。ここではファンモータ14Aの異常判定に用いる所定時間および所定回転数の設定処理についてのみ説明する。
【0029】
ファンモータ14Aの異常判定に用いる所定時間および所定回転数の設定は、ファンモータ14Aを定格電圧で駆動したときの定常回転数に応じて設定される。定常回転数は、ファンモータ14Aへの電力供給をオンにした後、ある程度時間が経過して回転数の変化が安定した状態である定常状態のときの回転数を100回程度計測し、その平均値を用いている。
【0030】
ステップS11では、ファンモータ14Aの定常回転数が第1回転数閾値よりも小さく、第2回転数閾値以上であるか否かを判定する。ファンモータ14Aの定常回転数が第1回転数閾値よりも小さく、第2回転数閾値以上であるときにはステップS12へ移行し、ファンモータ14Aの定常回転数が第1回転数閾値以上、または、第2回転数閾値未満であるときにはステップS13へ移行する。ここで、第1回転数閾値はファンモータ14Aの定格回転数よりも低い回転数であって、例えばファンモータ14Aの定格回転数に対して−1[%]の回転数に設定される。第2回転数閾値は第1回転数閾値よりも低い回転数であって、例えばファンモータ14Aの定格回転数に対して−4[%]の回転数に設定される(
図6参照)。
【0031】
ステップS12では、所定時間を予め設定されていた時間よりも長く設定する(または、所定回転数を予め設定されていた回転数よりも低く設定する)。所定時間を予め設定されていた時間よりも長く設定する、または、所定回転数を予め設定されていた回転数よりも低くすることにより、ファンモータ14Aを異常と判定する判定値を甘く(異常と判定され難くなるように)設定することとなる。このように設定する理由は、ファンモータ14Aの定常回転数が、定格回転数よりも若干低い程度であれば、CPU16等の冷却性能への影響がほぼなく、ファンモータ14Aのベアリング等の回転部の摩耗が少なく、ファンモータ14Aの長寿命化が望めるためである。
【0032】
ステップS13では、ファンモータ14Aの定常回転数が第2回転数閾値未満であるか否かを判定する。ファンモータ14Aの定常回転数が第2回転数閾値未満であるときには、ステップS15へ移行する。ファンモータ14Aの定常回転数が第2回転数閾値以上であるときにはステップS14へ移行する。
【0033】
ステップS14では、ファンモータ14Aの定常回転数が第3回転数閾値より大きいか否かを判定する。ファンモータ14Aの定常回転数が第3回転数閾値より大きいときには、ステップS15へ移行する。ファンモータ14Aの定常回転数が第3回転数閾値未満であるときにはステップS16へ移行する。ここで、第3回転数閾値はファンモータ14Aの定格回転数より高い回転数であって、例えばファンモータ14Aの定格回転数に対して+1[%]の回転数に設定される(
図6参照)。
【0034】
ステップS15では、所定時間を予め設定されていた時間よりも短く設定する(または、所定回転数を予め設定されていた回転数よりも高く設定する)。所定時間を予め設定されていた時間よりも短く設定する、または、所定回転数を予め設定されていた回転数よりも高く設定することにより、ファンモータ14Aを異常と判定する判定値を厳しく(異常と判定され易くなるように)設定することとなる。このように設定する理由は、ファンモータ14Aの定常回転数が定格回転数よりもかなり低い場合には、ファンモータ14Aのベアリング等の回転部の状態が悪く、また、回転部のグリスが固まりつつあり、ファンモータ14Aの長寿命化が望めないため、オペレータ等に早めに交換品を用意するよう促すためである。または、ファンモータ14Aの定常回転数が定格回転数よりも高い場合には、ベアリング等の回転部の摩耗が早く、ファンモータ14Aの長寿命化が望めないため、オペレータ等に早めに交換品を用意するよう促すためである。
【0035】
ステップS16では、所定時間および所定回転数を通常値(予め設定されていた値)に設定して、処理を終了する。なお、ここで説明した定格電圧および定格回転数を、定格電圧および定格回転数とは異なる予め決められた基準電圧および基準回転数に置き換えてもよい。
【0036】
(異常判定処理)
図7はファンモータ14の異常判定処理の流れを示すフローチャートである。異常判定処理は、ファンモータ14A、14Bともに同じである。ここではファンモータ14Aの異常判定処理についてのみ説明する。
【0037】
ステップS21では、変数mと変数nをリセット(変数mと変数nに0を代入)して、ステップS22へ移行する。ステップS22では、ファンモータ14Aへの電力供給をオフにしてステップS23へ移行する。ステップS23では、ファンモータ14Aへの電力供給をオンにしてステップS24へ移行する。
【0038】
ステップS24では、タイマをスタートしてステップS25へ移行する。ステップS25では、タイマをスタートしてから(ファンモータ14Aへの電力供給をオンにしてから)の経過時間Tが所定時間となったか否かを判定する。経過時間Tが所定時間となったときにはステップS26に移行する。経過時間Tが所定時間となっていないときには、ステップS25の処理を繰り返して待機する。
【0039】
ステップS26では、ファンモータ14Aの回転数Nが所定回転数以上であるか否かを判定する。ファンモータ14Aの回転数Nが所定回転数以上であるときには、ステップS27へ移行する。ファンモータ14Aの回転数Nが所定回転数未満であるときには、ステップS30へ移行する。
【0040】
ステップS27では、変数mをインクリメントして、ステップS28へ移行する。ステップS28では、変数mが「5」であるか否かを判定する。変数mが「5」であるときにはステップS29へ移行し、変数mが「5」でないときにはステップS22に移行する。本実施の形態では、1回の異常判定モード中にファンモータ14Aへの電力供給のオフとオンを5回繰り返すようにしているため、ステップS28では変数mが「5」であるか否かを判定している。1回の異常判定モード中にファンモータ14Aへの電力供給のオフとオンを繰り返す回数は適宜設定してよく、設定した回数に応じてステップS28の条件を設定すればよい。ステップS29では、ファンモータ14Aを正常と判定して、処理を終了する。
【0041】
ステップS30では、変数nをインクリメントして、ステップS31へ移行する。ステップS31では、変数nが「3」であるか否かを判定する。変数nが「3」であるときにはステップS32へ移行し、変数nが「3」でないときにはステップS27に移行する。本実施の形態では、ファンモータ14Aへの電力供給のオフとオンを5回繰り返す間に、ステップS26の条件を3回満たさないときにファンモータ14Aを異常と判定するようにしているため、ステップS31では変数nが「3」であるか否かを判定している。ステップS26の条件を満たさない回数は適宜設定してよく、設定した回数に応じてステップS31の条件を設定すればよい。ステップS32では、ファンモータ14Aを異常と判定して、ステップS33に移行する。
【0042】
ステップS33では、報知部22によりオペレータ等に報知を行い、ステップS34へ移行する。ステップS34では、ファンモータ14Aについて異常判定モードを実行することを禁止して、処理を終了する。
【0043】
[異常と判定されたファンモータの制御]
異常判定制御部28は、例えば、ファンモータ14Aを異常と判定したときには、ファンモータ14Aの回転数を、ファンモータ14Aを異常と判定する前よりも高くなるように制御する。これにより、ファンモータ14Aにゴミ等が付着している場合、ファンモータ14Aの回転数を高くすることで、ゴミ等を弾き飛ばすことができ、ファンモータ14を正常に戻すことができる。
【0044】
[異常と判定された後の他のファンモータの制御]
異常判定制御部28は、例えば、ファンモータ14Aを異常と判定したときには、ファンモータ14Bの回転数を、ファンモータ14Aを異常と判定する前よりも高くなるように制御する。これにより、一方のファンモータ14A
の異常のため低下するCPU16等の冷却性能を、他方のファンモータ14Bにより補うことができる。なお、交換判定部30によりファンモータ14Aが交換されたと判定された以降は、ファンモータ制御部26によりファンモータ14Bの通常の制御を行う。
【0045】
[交換判定部]
交換判定部30は、例えば、ファンモータ14Aおよびファンモータ14Bの固体毎に固有の識別番号を有し、図示しない入力部により交換判定部30に識別番号を登録するようにすればよい。本実施の形態では、
図4に示すステップS1〜ステップS4の処理(所定時間および所定回転数の補正処理)を行っているが、この所定時間および所定回転数の補正処理は行わないようにしてもよい。また前回の処理で、ファンモータ14A(またはファンモータ14B)が正常と判定された場合のみ、今回の処理でファンモータA(またはファンモータB)の異常判定処理を行っているが、ファンモータ14A(またはファンモータ14B)が異常と判定された後であっても、異常判定処理を行うようにしてもよい。
【0046】
所定時間および所定回転数の補正処理を行わない場合には、またはファンモータ14A(またはファンモータ14B)が異常と判定された後であっても、異常判定処理を行う場合には、交換判定部30は、次のようにしてファンモータ14Aおよびファンモータ14Bが交換されたことを判定してもよい。例えば、異常判定制御部28によりファンモータ14Aを異常と判定した後に、数値制御装置(CPU16)の電源がオフとなり、その後、数値制御装置(CPU16)の電源がオンとなった後に、異常判定制御部28がファンモータ14Aの異常を判定しなかった場合には、交換判定部30はファンモータ14Aが交換されたと判定する。
【0047】
[作用効果]
ファンモータ14の異常判定は、ファンモータ14への電力供給がオフからオンになったとき、または、オンからオフになったときに行われる。特に、ファンモータ14への電力供給がオフからオンとなるときには、ファンモータ14は停止状態から駆動するため、ファンモータ14の回転数の立ち上がりに対して静止摩擦の影響が大きく、ファンモータ14の異常を判定し易い。
【0048】
しかし、通常のファンモータ14の制御では、CPU16等が起動したときにファンモータ14への電力供給がオフからオンになる、または、CPU16等が停止した後にファンモータ14の電力供給がオンからオフになる。そのため、ファンモータ14への電力供給がオフからオンになる、または、オンからオフになる場面が少なく、ファンモータ14の異常判定を行う機会が限られる。そのため、ファンモータ14の異常判定制御を向上させることが難しかった。さらに、CPU16の稼働中に、ファンモータ14が異常と判定される状態に陥ったとしても、ファンモータ14の駆動中にはファンモータ14の異常を判定することができなかった。
【0049】
以下、本実施の形態の作用効果について説明するが、ファンモータ14Aについて異常判定モードが実施され、ファンモータ14Aが異常と判定された場合の例として説明する。ファンモータ14Bについて異常判定モードが実施され、ファンモータ14Bが異常と判定された場合は、下記で説明するファンモータ14Aに対する制御や作用と、ファンモータ14Bに対する制御や作用とが逆になるだけで、同様に考えてよい。
【0050】
本実施の形態では、CPU16(稼働時に発熱する機器)を冷却するファンモータ14Aを駆動制御するファンモータ制御装置10であって、ファンモータ14Aの回転数を検出する回転数センサ(回転数検出部)20Aと、CPU16の稼働中にファンモータ14Aへの電力供給のオンとオフとを繰り返す異常判定モードを実行するとともに、異常判定モードの実行中にファンモータ14Aの回転数に基づきファンモータ14Aの異常を判定する異常判定制御部28と、を有する。
【0051】
これにより、異常判定制御部28は、CPU16の稼働中にもファンモータ14Aの異常判定を複数回行うことができるため、ファンモータ14Aの異常判定精度を向上させることができる。さらに、CPU16の稼働中にファンモータ14Aの異常を判定することができ、早期にファンモータ14Aの異常を検出することができる。
【0052】
また、異常判定制御部28は、異常判定モード実行中に、ファンモータ14Aへの電力供給をオンにしてから予め設定された所定時間内にファンモータ14Aの回転数が予め設定された所定回転数に達しないことを検出したときには、ファンモータ14Aを異常と判定する。
【0053】
これにより、ファンモータ14Aの回転数の立ち上がりに対して静止摩擦の影響が大きくファンモータ14の異常を判定し易い場面で、ファンモータ14Aの異常判定を行うことができるため、異常判定精度を向上させることができる。
【0054】
また、異常判定制御部28は、
異常判定モード実行中に、ファンモータ14Aへの電力供給をオンにしてから予め設定された所定時間内にファンモータ14Aの回転数が予め設定された所定回転数に達しないことを検出した回数が設定回数となったときには、ファンモータ14Aを異常と判定する。これにより、ファンモータ14Aを異常と誤判定するおそれが少なくなり、ファンモータ14Aの異常判定精度を向上させることができる。
【0055】
また、異常判定制御部28は、ファンモータ14Aが交換された後に、交換されたファンモータ14Aが初めて駆動制御されたときに、異常判定に用いる所定時間および所定回転数を補正し、ファンモータ14Aに定格電圧(予め決められた基準電圧)で電力供給したときの定常回転数が、定格回転数(予め決められた基準回転数)よりも低い回転数である第1回転数閾値よりも低く、第1回転数閾値よりも低い回転数である第2回転数閾値以上であるときには、所定時間を予め設定された時間よりも長く設定すること、または、所定回転数を予め設定された回転数よりも低く設定することの少なくとも一方を実施し、ファンモータ14Aの定常回転数が、第2回転数閾値よりも低いときには、所定時間を予め設定された時間よりも短く設定すること、または、所定回転数を予め設定された回転数よりも高く設定することの少なくとも一方を実施する。
【0056】
これにより、ファンモータ14Aの製品バラツキ等に応じて、ファンモータ14Aの異常判定に用いる所定時間または所定回転数を設定することができるため、ファンモータ14Aの製品のバラツキ等に応じた異常判定を行うことができる。
【0057】
また、異常判定制御部28は、ファンモータ14Aが交換された後に、交換されたファンモータ14Aが初めて駆動制御されたときに、異常判定に用いる所定時間および所定回転数を補正し、ファンモータ14Aに定格電圧(予め決められた基準電圧)で電力供給したときの定常回転数が、予め決められた基準回転数よりも高い回転数である第3回転数閾値よりも高いときには、所定時間を予め設定された時間よりも短く設定すること、または、所定回転数を予め設定された回転数よりも高く設定する。
【0058】
これにより、ファンモータ14Aの製品バラツキ等に応じて、ファンモータ14Aの異常判定に用いる所定時間または所定回転数を設定することができるため、ファンモータ14Aの製品のバラツキ等に応じた異常判定を行うことができる。
【0059】
また、
ファンモータ制御装置10は、ファンモータ14Aが交換されたことを判定する交換判定部30を有し、異常判定制御部28は、ファンモータ14Aを異常と判定したときには、異常と判定したファンモータ14Aが交換されるまでの間、異常と判定したファンモータ14A以外のファンモータ14Bの回転数を、異常と判定したファンモータ14Aを異常と判定する前よりも高くなるように制御する。これにより、ファンモータ14Aの異常により低下するCPU16等の冷却性能を、ファンモータ14Bにより補うことができる。
【0060】
また、交換判定部30は、異常判定制御部28がファンモータ14Aの異常と判定した後であって、数値制御装置(CPU16)の電源がオフとなり、その後、数値制御装置(CPU16)の電源がオンとなった後に、異常判定制御部28がファンモータ14Aの異常を判定しなかった場合には、ファンモータ14Aは交換されたと判定する。ファンモータ14Aの交換を判定するためには、例えば、ファンモータ14Aの固体番号等を交換判定部30に読み込ませるようにしてもよいが、固体番号等を読み込ませるためのハードウェア等を追加する必要があり、コストの増加に繋がるおそれがある。上記のようにして、ファンモータ14Aの交換を判定することにより、ハードウェア等の追加の必要がなく、コストの増加を抑制することができる。
【0061】
また、
ファンモータ制御装置10は、異常判定制御部28がファンモータ14Aを異常と判定したときに報知を行う報知部22を有し、異常判定制御部28は、報知部22により報知を行った後には、異常と判定したファンモータ14Aについて異常判定モードの実行を禁止する。
【0062】
ファンモータ14Aは停止から駆動する際には定常回転時よりも大きなトルクを必要とする。異常と判定したファンモータ14Aを停止させると、ファンモータ14Aは再び駆動することができないおそれがある。異常を判定したファンモータ14Aについては、異常判定モードにより停止させることを避けて、再びファンモータ14Aが駆動しなくなることを抑制することができる。
【0063】
また、異常判定制御部28は、ファンモータ14Aを異常と判定したときには、異常と判定したファンモータ14Aの回転数を、ファンモータ14Aを異常と判定する前よりも高くなるように制御する。
【0064】
これにより、ファンモータ14Aにゴミ等が付着している場合、ファンモータ14Aの回転数を高くすることで、ゴミ等を弾き飛ばすことができ、ファンモータ14Aを正常に戻すことができる。
【0065】
また、異常判定制御部28は、複数のファンモータ14A、14Bのうち、1つのファンモータ14Aについて異常判定モードを実行し、同時に複数のファンモータ14A、14Bについて異常判定モードを実行しない。これにより、CPU16の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0066】
また、異常判定制御部28は、複数のファンモータ14A、14Bのうち、1つのファンモータ14Aについて異常判定モードを実行しているときには、他のファンモータ14Bの回転数を、1つのファンモータ14Aについて異常判定モードを実行する前よりも高くなるように制御する。これにより、一方のファンモータ14Aについて異常判定モードが実行されることにより低下するCPU16等の冷却性能を、他方のファンモータ14Bにより補うことができる。
【0067】
〔他の実施の形態〕
以上、本発明を第1の実施の形態に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0068】
ファンモータ14への電力供給をオンからオフにしたときのファンモータ14の異常判定もほぼ同様にして行うことができる。ただし、この場合、ファンモータ14の異常判定に用いる所定時間および所定回転数の設定処理については、
図5に示すステップS12において「所定時間を予め設定されていた時間よりも長く設定する(または、所定回転数を予め設定されていた回転数よりも低く設定する)。」としていたものを、「所定時間を予め設定されていた時間よりも短く設定する(または、所定回転数を予め設定されていた回転数よりも低く設定する)。」とする。