特許第6557208号(P6557208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557208PD−1抗原またはPD−1リガンド抗原を含むウイルス様粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557208
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】PD−1抗原またはPD−1リガンド抗原を含むウイルス様粒子
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20190729BHJP
   C07K 14/18 20060101ALI20190729BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20190729BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20190729BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20190729BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190729BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20190729BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20190729BHJP
   C12N 15/40 20060101ALN20190729BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   C12N7/01ZNA
   C07K14/18
   C07K14/47
   C07K19/00
   A61K35/76
   A61K39/385
   A61P37/04
   A61P35/00
   A61P31/00
   !C12N15/12
   !C12N15/40
   !C12N15/62 Z
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-501252(P2016-501252)
(86)(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公表番号】特表2016-526374(P2016-526374A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2014069122
(87)【国際公開番号】WO2015005500
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/845,712
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514207706
【氏名又は名称】ブイエルピー・セラピューティクス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VLP Therapeutics, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】赤畑 渉
(72)【発明者】
【氏名】上野 隆司
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6306518(JP,B2)
【文献】 特表2007−512842(JP,A)
【文献】 特許第4896327(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318373(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/006180(WO,A1)
【文献】 特表2007−537761(JP,A)
【文献】 ATKINS G.J. et al,Expert Reviews in Molecular Medicine,Vol.10 e33(2008),p.1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/01
A61K 35/76
A61K 39/385
A61P 31/00
A61P 35/00
A61P 37/04
C07K 14/18
C07K 14/47
C07K 19/00
C12N 15/12
C12N 15/40
C12N 15/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チクングニアウイルスまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス由来のウイルス構造タンパク質および、10〜300アミノ酸残基のPD-1断片であるPD-1由来の抗原および10〜300アミノ酸残基のPD-L1またはPD-L2断片であるPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を有し、該抗原が該ウイルス構造タンパク質のエンベロープタンパク質に挿入されている、ウイルス様粒子。
【請求項2】
該ウイルス構造タンパク質が、チクングニアウイルス由来のウイルス構造タンパク質である、請求項1記載のウイルス様粒子。
【請求項3】
該ウイルス構造タンパク質が、カプシド、E1およびE2を含む、請求項1または2に記載のウイルス様粒子。
【請求項4】
PD-1由来の抗原が配列番号4〜12で表されるアミノ酸配列から選択されるPD-1断片であり、PD-1のリガンド由来の抗原が配列番号13〜24で表されるアミノ酸配列から選択されるPD-L1断片である、請求項1〜3いずれかに記載のウイルス様粒子。
【請求項5】
PD-1またはPD-L1由来の抗原が挿入されている1つ以上のエンベロープタンパク質E2、1つ以上のエンベロープタンパク質E1および1つ以上のカプシドからなる、チクングニアウイルス様粒子であって、PD-1またはPD-L1由来の抗原が挿入されている該エンベロープタンパク質E2が、配列番号33〜36に表されるアミノ酸配列からなり; 該エンベロープタンパク質E1が配列番号37で表されるアミノ酸配列からなり; 該カプシドが配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる、請求項4記載のウイルス様粒子。
【請求項6】
PD-1またはPD-L1由来の抗原が挿入されている1つ以上のエンベロープタンパク質E2、1つ以上のエンベロープタンパク質E1および1つ以上のカプシドからなる、ベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子であって、PD-1またはPD-L1由来の抗原が挿入されている該エンベロープタンパク質E2が、配列番号39〜42に表されるアミノ酸配列からなり; 該エンベロープタンパク質E1が配列番号43で表されるアミノ酸配列からなり; 該カプシドが配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる、請求項4記載のウイルス様粒子。
【請求項7】
請求項5または6記載のウイルス様粒子のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるウイルス様粒子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のウイルス様粒子をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項9】
請求項8記載の核酸分子を含み、該核酸分子に操作可能に連結した発現調節配列を含む、ベクター。
【請求項10】
(a) 請求項1〜7のいずれかに記載のウイルス様粒子および
(b) 薬学的に許容される担体
を含む、医薬組成物。
【請求項11】
該医薬組成物がワクチンである、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
がんまたは感染性疾患の処置または予防;哺乳動物におけるPD-1またはPD-1のリガンドに対する抗体の産生;免疫応答の調節;免疫刺激;PD-1とPD-1のリガンドの間の相互作用の阻害;またはPD-1活性の阻害のための請求項10記載の医薬組成物。
【請求項13】
(a) 請求項1〜7のいずれか記載のウイルス様粒子を含む医薬組成物;および
(b) 請求項1〜7のいずれか記載のウイルス様粒子を含む他の医薬組成物
を含むキットであって、(a) に含まれるウイルス様粒子が、(b) に含まれるウイルス様粒子と異なる、キット。
【請求項14】
がんまたは感染性疾患の処置または予防;哺乳動物におけるPD-1またはPD-1のリガンドに対する抗体の産生;免疫応答の調節;免疫刺激;PD-1とPD-1のリガンドの間の相互作用の阻害;またはPD-1活性の阻害のための請求項13記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2013年7月12日に出願された、米国仮出願第61/845,712号に対する優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書中に包含される。
【0002】
本発明は、ウイルス構造タンパク質およびPD-1またはPD-1のリガンド由来の抗原を含むウイルス様粒子およびそれを含む組成物またはキット、その免疫応答における使用等に関する。
【背景技術】
【0003】
Programmed Cell Death 1またはPD-1 (PDCD1とも称する) は、50〜55kDaの、特定のリガンドと相互作用することによって、T細胞抗原受容体を負に制御する、CD28スーパーファミリーのI型膜貫通受容体であり、自己寛容の維持に機能していると考えられている。
【0004】
PD-1抗原は、免疫応答の殆ど全ての局面、例えば自己免疫、腫瘍免疫、感染免疫、移植免疫、アレルギーおよび免疫特権に関わっている。
【0005】
PD-1は、活性化T細胞、B細胞およびマクロファージの表面に発現し(Y. Agata et al. , International Immunology vol.8, No. 5 p765-772, 1996)、このことは、同様に免疫系において重要な調節機能を果たすCTLA-4と比較して、PD-1がより広範囲に、免疫応答を負に制御することを示す。
【0006】
一般的に、免疫障害、例えば自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー、移植片拒絶、がん、免疫不全および他の免疫系関連障害の安全および有効な治療方法を提供することが必要とされている。これらの障害に関連する免疫応答の調節は、PD-1経路を操作することによって行い得る。
【0007】
PD-1は、PD-L1 (Programmed Death Ligand 1またはPDCD1L1またはB7-H1) およびPD-L2 (Programmed Death Ligand 2またはPDCD1L2またはB7-DC)の2つのリガンドを持ち、これらはB7ファミリーリガンドの一員である。
【0008】
一つの方法において、PD-1ならびにそのリガンド (PD-L1、PD-L2または両方)との相互作用を遮断することにより、腫瘍およびウイルスの免疫療法に有効な方法を提供し得る。
【0009】
米国特許第5,629,204号および米国特許第5,698,520号明細書は、ヒトPD-1に関連する膜タンパク質および該タンパク質をコードするDNAに関し、PD-1タンパク質が種々の感染症、免疫の低下または促進、腫瘍等の処置に有用であり得る。
【0010】
米国特許第7,595,048号および米国特許出願公開第2011/0081341号明細書は、PD-1、PD-L1またはPD-L2により誘発される免疫抑制性のシグナルを阻害することにより特徴付けられる、免疫強化、がんまたは感染症の処置用の組成物およびそれらを用いる治療に関する。
【0011】
いくつかの大手製薬企業は、PD-1抗体を最初に市場に出すために互いに競争している。現在のところ、3つのモノクローナル抗体、具体的には、PD-1に対して作用するヒト化モノクローナルIgG4抗体である、Merckのランブロリズマブ (MK-3475)、完全抗ヒトPD-1抗体である、Bristol-Myers Squibbのニボルマブ (BMS-936558) およびPD-1を遮断せず、むしろPD-L1を遮断するRoche GenentechのMPDL3280Aがある。
【0012】
しかしながら、PD-1を標的とする、より強力で安全な化合物が強く望まれている。
【0013】
ウイルス様粒子(VLP)は、標準の天然ウイルスの組織および構造を模倣しているが、ウイルスゲノムを欠損しており、より安全で安価なワクチン候補を産生できる可能性のある、多タンパク質構造である。予防用の、VLPベースのワクチンは、現在のところ、世界中でごく少数しか市販されていない: GlaxoSmithKlineによるEngerix(登録商標) (B型肝炎ウイルス) およびCervarix(登録商標) (ヒトパピローマウイルス)およびMerck and Co., Inc.によるRecombivax HB(登録商標) (B型肝炎ウイルス) およびGardasil(登録商標) (ヒトパピローマウイルス) はそのいくつかの例である。他のVLPベースのワクチンの候補は、臨床試験が行われているかまたは前臨床評価が行われており、例えば、インフルエンザウイルス、パルボウイルス、ノーウォークウイルスおよび種々のキメラVLPである。前臨床試験が成功しているにも関わらず、未だに小規模の基礎研究に限定されているものが他に多く存在する。大規模のVLP産生の意味は、プロセス制御、モニタリング化および最適化の点で議論されている。主要な上流および下流の技術的課題が特定されており、それに基づいて議論されている。VLPベースのワクチンの、成功した画期的新薬が、臨床試験の最新の結果ならびに治療的または予防的なワクチン接種のいずれかのためのキメラVLPベース技術の近年の発展とともに端的に表されている (Expert Rev. Vaccines 9(10), 1149-1176, 2010)。
【0014】
チクングニアウイルス (CHIKV) は、2004年にこのアルファウイルスがケニアで再出現して以来、アフリカ、欧州およびアジアにおいて、数百万人の人々に感染している。該疾患の重症度およびこの流行性ウイルスの蔓延は、ワクチンまたは抗ウイルス療法の非存在下で、深刻な公衆衛生上の脅威を示す。流行性チクングニアウイルスに対するVLPワクチンは、感染に対して非ヒト霊長類を保護することが報告されている (Nat Med. 2010 March; 16(3): 334-338)。米国特許出願公開第2012/0003266号明細書は、感染またはその少なくとも1つの症状に対して免疫を誘発する、チクングニアウイルスに対するワクチンまたは抗原性組成物の製剤に有用な、1つ以上のチクングニアウイルス構造タンパク質を含む、ウイルス様粒子 (VLP) を開示している。国際公開第2012/106356号には、アルファウイルスまたはフラビウイルスの修飾ウイルス様粒子 (VLP) およびアルファウイルスおよびフラビウイルス介在疾患の予防または処置に用いるための、修飾VLPの産生の増強方法が開示されている (これらの引用文献は、参照により本明細書中に包含される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,629,204号明細書
【特許文献2】米国特許第5,698,520号明細書
【特許文献3】米国特許第7,595,048号
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0081341号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0003266号明細書
【特許文献6】国際公開第2012/106356号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Y. Agata et al. , International Immunology vol.8, No. 5 p765-772, 1996
【非特許文献2】Expert Rev. Vaccines 9(10), 1149-1176, 2010
【非特許文献3】Nat Med. 2010 March; 16(3): 334-338
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一の局面において、本発明は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む、粒子を提供する。
【0018】
第二の局面において、本発明は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む、核酸分子を提供する。
【0019】
第三の局面において、本発明は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む、粒子; またはウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む核酸分子; および薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物および、医薬組成物を含むキットを提供する。
【0020】
第四の局面において、本発明は、対象における、免疫応答の調節、がんの処置または感染性疾患の処置用の医薬組成物の作製またはキットのための、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子; またはウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む、核酸分子の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】PD-1のN末端 (1〜167aa) に結合する抗体を検出した、ELISAの結果を示す。
図2】PD-1-Fcに結合する抗体を検出した、ELISAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1) ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子
第一の局面において、本発明は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を提供する。
上述の粒子を修飾することにより作製し得る、上述の粒子の誘導体もまた、本発明により提供される。修飾の例としては、1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失または置換が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の提供する粒子は、i) 少なくとも1つのウイルス構造タンパク質およびii) PD-1由来の少なくとも1つの抗原またはPD-1のリガンド由来の少なくとも1つの抗原からなるか、またはこれらを含む粒子であってよい。少なくとも1つのウイルス構造タンパク質は、1種以上のタンパク質またはペプチドからなっていてよく、自発的に、集合して本発明の提供する粒子を形成し得る。態様の一において、本発明の提供する粒子は少なくとも10nmの直径、例えば、少なくとも20nm、好ましくは、少なくとも50nmの直径を有する。態様の一において、該粒子の分子量は、100kDa〜100,000kDaであり、好ましくは400kDa〜30,000kDaである。
【0024】
好ましくは、本発明に用いるウイルス構造タンパク質は、アルファウイルスまたはフラビウイルス由来のウイルス構造タンパク質であってよい。したがって、本発明の提供する粒子は、アルファウイルスまたはフラビウイルス由来のウイルス様粒子を含む、ウイルス様粒子であり得る。
アルファウイルスおよびフラビウイルスの例としては、アウラウイルス、ババンキウイルス(Babanki virus)、バーマフォレストウイルス (Barmah Forest virus) (BFV)、ベバルウイルス、カバソウウイルス(Cabassou virus)、チクングニアウイルス (CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、エイラートウイルス (Eilat virus)、エバーグレードウイルス (Everglades virus)、フォートモーガンウイルス (Fort Morgan virus)、ゲタウイルス、ハイランドJウイルス (Highlands J virus)、キジラガチウイルス (Kyzylagach virus)、マヤロウイルス、メトリウイルス(Me Tri virus)、ミデルバーグウイルス (Middelburg virus)、モッソダスペドラスウイルス (Mosso das Pedras virus)、ムカンボウイルス、ヌドゥムウイルス、オニョンニョンウイルス、ピクスナウイルス、リオネグロウイルス、ロスリバーウイルス (RRV)、サケ膵臓病ウイルス (Salmon pancreas disease virus)、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、ミナミゾウアザラシウイルス (Southern elephant seal virus)、トナテウイルス (Tonate virus)、トロカラウイルス (Trocara virus)、ウナウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス (WEEV)、ワタロアウイルス、ウエストナイルウイルス、デングウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスおよび黄熱ウイルスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
ウイルス構造タンパク質は、カプシドタンパク質、エンベロープタンパク質、その断片または複合体であってよい。したがって、本発明に用いるウイルス構造タンパク質は、カプシドタンパク質および/またはエンベロープタンパク質および/またはその断片からなるか、またはそれらを含んでいてよい。態様の一において、本発明の提供するウイルス様粒子は、カプシド、E2およびE1からなるか、またはそれらを含む。抗原は、E2に挿入されていてよい。例えば、本発明の提供するウイルス様粒子は、240のカプシド、240のE1タンパク質および240のE2タンパク質を集合させることにより形成してよく、ここで、PD-1抗原は、各E2タンパク質に挿入されている。
【0026】
本明細書において、「PD-1抗原」という語は、PD-1由来の抗原を指す。好ましくは、PD-1はヒトPD-1である。PD-1由来の抗原は、PD-1の断片またはPD-1の断片の誘導体であってよい。
【0027】
本明細書において、「PD-1リガンド抗原」という語は、PD-1のリガンド由来の抗原を指す。PD-1リガンドの例としては、例えば、PD-L1およびPD-L2が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、PD-1リガンドはヒトPD-L1またはヒトPD-L2である。PD-L1またはPD-L2由来の抗原は、PD-L1またはPD-L2の断片; またはPD-L1またはPD-L2の断片の誘導体であってよい。
【0028】
本発明の提供する粒子に含まれる抗原に使用するためのPD-1、PD-L1またはPD-L2の断片は、PD-1、PD-L1またはPD-L2のアミノ酸配列および/またはその3次元構造に基づいて選択してよい。
【0029】
例えば、抗原に用いる断片は、PD-1、PD-L1またはPD-L2の表面に位置する断片からなるか、またはそれを含んでいてよい。好ましくは、本発明の提供する粒子に含まれる抗原に対する抗体は、PD-1とPD-L1またはPD-1とPD-L2間の相互作用を遮断する。抗原に用いるためのPD-1、PD-L1またはPD-L2断片の長さは、10〜300アミノ酸残基 (例えば10〜120、10〜30または15〜30アミノ酸残基) であってよい。
【0030】
態様の一において、抗原に用いる断片は、抗原のN−末端残基とC−末端残基の間の空間距離が、該抗原または該抗原を含む天然起源のタンパク質またはそれ由来の修飾タンパク質の結晶において測定した場合に、30Å以下であるように選択してよい。例えば、本発明の提供する粒子に用いる抗原は、フリーソフトウェア、例えばPyMOL (例えば、PyMOL v0.99: http:/www.pymol.org) を用いて設計してよい。態様の一において、該抗原のN−末端残基およびC−末端残基の空間距離は、30Å(オングストローム)以下、20Å以下、または10Å以下 (例えば、5Å〜15Å、5Å〜12Å、5Å〜11Å、5Å〜10Å、5Å〜8Å、8Å〜15Å、8Å〜13Å、8Å〜12Å、8Å〜11Å、9Å〜12Å、9Å〜11Å、9Å〜10Åまたは10Å〜11Å)である。
【0031】
抗原に用いるPD-1断片の例としては、lnwyrmspsnqtdklaaf (配列番号4)、mlnwyrmspsnqtdklaafs (配列番号5)、vlnwyrmspsnqtdklaafp (配列番号6)、gaislhpkakiees (配列番号7)、cgaislhpkakieec (配列番号8)、VLNWYRMSPSNQTDKLAAF (配列番号9)、GAISLAPKAQIKES (配列番号10)、RNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVT (配列番号11)およびRNDSGIYLCGAISLHPKAKIEESPGAELVVT (配列番号12)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗原に用いるPD-L1断片の例としては、ciisyggadyc (配列番号13)、CMISYGGADYC (配列番号14)、
LQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVN (配列番号15)、LQDAGVYRAMISYGGADYKRITVKVN (配列番号16)、DLAALIVYWEMEDKNIIQFVH (配列番号17)、DLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGG (配列番号18)、FTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVE (配列番号19)、Lqdagvycciisyggadykritlkvn (配列番号20)、lqdagvyaaiisyggadykritlkvn (配列番号21)、dllalvvywekedeqviqfva (配列番号22)、dllalvvywekedeqviqfvagg (配列番号23) およびftitapkdlyvveygsnvtmecrfpve (配列番号24)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
PD-1、PD-L1またはPD-L2の断片の誘導体は、PD-1、PD-L1またはPD-L2の断片に、1つまたは数アミノ酸残基を付加、欠失または置換させることによって作製し得る。態様の一において、PD-1、PD-L1またはPD-L2の断片の誘導体は、天然起源のPD-1、PD-L1またはPD-L2の相当する断片と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有する。態様の一において、PD-1、PD-L1またはPD-L2の断片の誘導体は、天然起源のPD-1、PD-L1またはPD-L2の相当する断片に基づいて、アミノ酸の最大10%が欠失、置換および/または付加されている変異体である。
【0033】
本発明の提供する粒子において、ウイルス構造タンパク質および抗原は、ウイルス構造タンパク質中に存在する少なくとも1つの第一付着部位と、抗原中に存在する少なくとも1つの第二付着部位を介して連結していてよい。
【0034】
本明細書中の、「第一付着部位」および「第二付着部位」という語はそれぞれ、2つ以上の物質が互いに連結している部位をさす。
態様の一において、ウイルス構造タンパク質および抗原は直接融合している。態様の一において、1つまたは2つのリンカーが、抗原のN−末端残基とウイルス構造タンパク質および/または抗原のC−末端残基とウイルス構造タンパク質の間に介在していてもよい。
【0035】
抗原またはウイルス構造タンパク質は、切断されており、短いリンカーにより置換されていてよい。いくつかの態様において、抗原またはウイルス構造タンパク質は、1つ以上のペプチドリンカーを含む。典型的には、リンカーは2〜25アミノ酸からなる。通常、リンカーは、2〜15アミノ酸の長さであるが、特定の状況下では、1アミノ酸のみ、例えば単独のグリシン残基であってもよい。
【0036】
態様の一において、ウイルス構造タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、抗原をコードするポリヌクレオチドと遺伝学的に融合している核酸分子が、ホスト細胞中で、第一付着部位と第二付着部位がペプチド結合を介して連結しているように発現する。この場合、該ウイルス構造タンパク質および該抗原はペプチド結合を介して連結している。この態様に関して、該第一付着部位および/または第二付着部位は、本来のタンパク質または抗原から遺伝学的に改変されていてもよい。例えば、第一付着部位は、SG、GS、SGG、GGSおよびSGSGを含むリンカーペプチドを介して該タンパク質が抗原と結合するように、ウイルス構造タンパク質から改変されている。
ウイルス構造タンパク質が抗原と化学的に結合している場合、第一付着部位および第二付着部位は、化合物である化学クロスリンカーを介して連結していてよい。
クロスリンカーの例としては、SMPH、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIAおよびPierce Chemical Companyより入手し得る他のクロスリンカーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
好ましくは、抗原は、チクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質に遺伝工学を用いて作製した融合タンパク質として連結していてよい。
【0038】
本発明で用いるチクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質は、チクングニアまたはベネズエラウマ脳炎ウイルスエンベロープタンパク質またはカプシドまたは1以上のエンベロープタンパク質および/またはカプシドタンパク質の複合体であってよい。
【0039】
チクングニアウイルスの例としては、37997およびLR2006 OPY-1株が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ベネズエラウマ脳炎ウイルスの例としては、TC-83が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明で用いるチクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質は、天然起源のウイルス構造タンパク質またはその修飾タンパク質を含んでいてよい。該修飾タンパク質は、天然起源のウイルス構造タンパク質の断片であってよい。態様の一において、該修飾タンパク質は、天然起源のウイルスカプシドおよび/またはエンベロープタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有する。態様の一において、修飾タンパク質は、アミノ酸の最大10%が天然起源のウイルスカプシドおよび/またはエンベロープタンパク質に基づいて欠損、置換および/または付加されている変異体である。例えば、K64AまたはK64N変異を、本発明で用いるベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質のカプシドに導入してよい。
【0041】
チクングニアまたはベネズエラウマ脳炎ウイルスの構造タンパク質は、カプシド、E2、およびE1からなっていても、またはこれらを含んでいてもよい。
【0042】
チクングニアウイルス構造タンパク質の例としては、チクングニアウイルス株37997のカプシド-E2-E1およびチクングニアウイルス株LR2006 OPY-1のカプシド-E2-E1が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質の例としては、ベネズエラウマ脳炎ウイルス株TC-83のカプシド-E2-E1が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
チクングニアウイルス構造タンパク質配列の例は、Genbank受入番号第ABX40006.1にて提供される、以下の配列である (配列番号1):
【化1】
【0045】
チクングニアウイルス構造タンパク質配列の他の例は、Genbank受入番号第ABX40011.1にて提供される以下の配列である (配列番号2):
【化2】
【0046】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質の例は、以下の配列である (配列番号3):
【化3】
【0047】
態様の一において、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含む。態様の一において、第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含む。
【0048】
本発明によれば、チクングニアまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質と、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)由来の抗原からなる群から選択される抗原とを含む、チクングニアウイルス様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子であって、該チクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質および該抗原が、融合タンパク質として発現する、粒子を提供し得る。
PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド (例えばPD-L1、PD-L2) 由来の抗原からなる群から選択される抗原は、チクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質の任意の部位と融合していてもよい。例えば、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド (例えばPD-L1、PD-L2) 由来の抗原からなる群から選択される抗原が、チクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質のN末端またはC末端に直接または間接的に結合していても、または、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド (例えば、PD-L1、PD-L2) 由来の抗原からなる群から選択される抗原が、チクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質に挿入されていてもよい。
【0049】
態様の一において、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)由来の抗原からなる群から選択される少なくとも1つの抗原は、チクングニアウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質のE2に挿入されている。例えば、チクングニアウイルス構造タンパク質について、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)由来の抗原からなる群から選択される少なくとも1つの抗原は、配列番号1または2の第519番と第520番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の、第519番のGと第520番のQの間); 配列番号1または2の第530番および第531番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の、第530番のGと第531番のSの間); 配列番号1または2の、第531番と第532番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の第531番のSと第532番のNの間); 配列番号1または2の第529番と第530番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の、第529番のGと第530番のGの間); または配列番号1または2の第510番と第511番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の、第510番のSと第511番のGの間);または配列番号1または2の第511番と第512番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の第511番のGと第512番のNの間); または配列番号1または2の第509番と第510番の残基の間 (すなわち、配列番号1または2の第509番のQと第510番のSの間) に挿入される。VLP_CHI 532ベクター (配列番号25) を、抗原が配列番号1または2の第531番と第532番の残基の間に挿入されているチクングニアウイル様粒子の作製に用いてよい。
【0050】
例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質について、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)由来の抗原からなる群から選択される少なくとも1つの抗原は、配列番号3の第517番と第518番の残基の間 (すなわち、配列番号3の第517番のGと第518番のSの間); 配列番号3の第518番と第519番の残基の間 (すなわち配列番号3の第518番のSと第519番のSの間); 配列番号3の第519番と第520番の残基の間 (すなわち配列番号3の第519番のSと第520番のVの間); 配列番号3の第515番と第516番の残基の間 (すなわち、配列番号3の第515番のLと第516番のSの間); 配列番号3の第516番と第517番の残基の間 (すなわち配列番号3の第516番のSと第517番のGの間); 配列番号3の第536番と第537番の残基の間 (すなわち配列番号3の第536番のCと第537番のGの間); 配列番号3の第537番と第538番の残基の間 (すなわち配列番号3の第537番のGと第538番のGの間); 配列番号3の第538番と第539番の残基の間 (すなわち、配列番号3の第538番のGと第539番のTの間)に挿入される。VLP_VEEV VLP 518ベクター (配列番号26) を、抗原が配列番号3の第517番と第518番の残基の間に挿入されている、ベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子の作製に用いてよい。
【0051】
該融合タンパク質は、当該分野で慣用される技術を用いて発現させてよい。該融合タンパク質の発現に、種々の発現系を用いてよい。例えば、該融合タンパク質は、293細胞、Sf9細胞または大腸菌(E.coli)に発現させてよい。
【0052】
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 由来のタンパク質は、天然起源のウイルスタンパク質であっても、その修飾されたタンパク質であってもよい。
【0053】
ウイルス由来のタンパク質が抗原由来のタンパク質と結合している場合、SG、GS、SGG、GGS SGSGおよびTRGGSを含むリンカーペプチドを用いてよい。ウイルス由来のタンパク質(以降「PFV」と称する)の抗原由来のタンパク質(以降「PFA」と称する)との結合の例としては、PFV-SG-PFA-GS-PFV; PFV-SG-PFA-GGS-PFV; PFV-SSG-PFA-GS-PFV; PFV-SGG-PFA-GGS-PFV;PFV-SGSG-PFA-GS-PFV; およびPFA-SGG-PFA-TRGGS-PFVが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
態様の一において、本発明は、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 由来のタンパク質およびPD-1またはPD-L1由来のタンパク質の融合タンパク質を含むウイルス様粒子を提供し、ここで、該ウイルス様粒子は、配列番号27〜32で表されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む発現ベクターを哺乳類細胞 (例えば293F細胞) に遺伝子導入することにより作製される。この態様については、修飾融合タンパク質を、本発明が提供するウイルス様粒子に用いてもよく、これは、配列番号27〜32と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む発現ベクターを、哺乳類細胞 (例えば293F細胞) に遺伝子導入することによって作製し得る。
【0055】
態様の一において、本発明は:
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の1つ以上のカプシド;
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の1つ以上のE1; および
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の1つ以上のE2
を含むか、またはこれらからなるウイルス様粒子を提供し、ここで、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)由来の抗原からなる群から選択される抗原は、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) のE2に挿入されている。例えば、本発明は:
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の240のカプシド;
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の240のE1; および
チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の240のE2
を含むか、またはこれらからなるウイルス様粒子を提供し、ここで、
PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)由来の抗原からなる群から選択される抗原は、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV)のそれぞれのE2に挿入される。
【0056】
この態様において、該抗原が挿入されるE2は配列番号33〜36で表されるアミノ酸配列でなっていてよく; 該E1は、配列番号37で表されるアミノ酸配列からなっていてよく;該カプシドは、配列番号38で表されるアミノ酸配列でなっていてよく、または
該抗原が挿入されるE2は、配列番号39〜42で表されるアミノ酸配列からなっていてよく; 該E1は、配列番号43で表されるアミノ酸配列でなっていてよく; 該カプシドは、配列番号44で表されるアミノ酸配列でなっていてよい。
【0057】
さらに、この態様に関しては、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の修飾カプシド、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の修飾E1ならびにチクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の修飾E2を、該ウイルス様粒子に用いてもよい。例えば、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の該修飾カプシドは、配列番号38または配列番号44で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有していてよく;チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の修飾E1は、配列番号37または配列番号43で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有していてよく; および/またはチクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) の修飾E2は、配列番号33〜36または配列番号39〜42で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有していてよい。また、該修飾カプシド、E1またはE2は、配列番号38または配列番号44で表されるアミノ酸配列からなるカプシド; 配列番号37または配列番号43で表されるアミノ酸配列からなるE1;および/または配列番号33〜36または配列番号39〜42で表されるアミノ酸配列からなるE2に基づいて、該アミノ酸の最大10%が欠損、置換および/または付加されている、変異体であってもよい。
ウイルス様粒子は、該ウイルス様粒子をコードするヌクレオチド配列を有するDNA分子を含む発現ベクターを細胞(例えば293細胞)に導入し、超遠心分離法を用いて該ウイルス様粒子を馴化培地から回収することにより作製してよい。
【0058】
(2) ヌクレオチド、ベクター、ホスト細胞
第二の局面において、本発明は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む、本明細書に記載の粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0059】
本発明の提供する核酸分子は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含むチクングニアウイルス様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子を発現させるための単離核酸分子であってよい。
【0060】
当業者は、配列番号63〜64で表されるカプシドおよび/またはエンベロープをコードする例示的なヌクレオチド配列に基づいて、上述の本発明の提供する核酸分子を作製し得る。
【0061】
例えば、当業者は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む、チクングニアウイルス様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子を発現させるためのベクターに導入する核酸分子の作製のために、PD-1またはPD-L1由来の抗原をコードするヌクレオチド配列を、チクングニアもしくはベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質のE2をコードするヌクレオチド配列に導入してよい。抗原由来の配列が上述のE2に導入されるヌクレオチド配列の例としては、(PD-1抗原を含むチクングニアウイルス様粒子の発現させるための) 配列番号27または29に表されるヌクレオチド配列; (PD-L1抗原を含むチクングニアウイルス様粒子を発現させるための) 配列番号31で表されるヌクレオチド配列; (PD-1抗原を含むベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子を発現させるための) 配列番号28または30で表されるヌクレオチド配列; および (PD-L1抗原を含むベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子を発現させるための) 配列番号32で表されるヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
態様の一において、本発明は、上述の核酸分子を含むベクターを提供し、ここで、該ベクターは、該核酸分子に操作可能に連結した発現調節配列を含んでいてよい。
【0063】
発現調節配列の例としては、プロモーター、例えばCMVプロモーター、ファージラムダPLプロモーター、大腸菌のlac、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーターおよびレトロウイルスのLTRのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
この態様において、上述の核酸分子に操作可能に連結している発現調節配列を含むベクターは、本発明の提供する粒子を作製するための発現ベクターとして使用し得る。
【0065】
該発現ベクターは、国際公開第2012/006180号に基づいて当業者が作製してよく、当該文献の内容はその全体が参照により本明細書に包含される。
【0066】
チクングニアウイルス (CHIKV) 由来のタンパク質とPD-1由来の抗原の融合タンパク質を含むウイルス様粒子を発現させるのに使用し得るベクターの例としては、VLP31.11ベクター(配列番号45)およびVLP274.11ベクター (配列番号46) に示すベクターが挙げられる。
【0067】
チクングニアウイルス (CHIKV) 由来のタンパク質とPD-L1由来の抗原の融合タンパク質を含むウイルス様粒子の発現に使用し得るベクターの例としては、VLP299.15ベクター (配列番号47) に示すベクターが挙げられる。
【0068】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 由来のタンパク質とPD-1由来の抗原の融合タンパク質を含む、ウイルス様粒子を発現させるのに使用し得るベクターの例としては、VLP31.21ベクター (配列番号48) およびVLP274.21ベクター (配列番号49) に示すベクターが挙げられる。
【0069】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 由来のタンパク質とPD-L1由来の抗原の融合タンパク質を含む、ウイルス様粒子の発現に使用し得るベクターの例としては、VLP299.25ベクター (配列番号50) に示すベクターが挙げられる。
【0070】
配列番号45〜50のいずれかによって表されるヌクレオチド配列を有する核酸分子と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のヌクレオチド配列同一性を有する核酸分子および、配列番号45〜50のいずれかによって表されるヌクレオチド配列を有する核酸分子に基づくアミノ酸の最大10%が欠失、置換および/または付加されている変異体であってもよい核酸分子もまた、本発明によって提供される。
【0071】
さらに、上述のベクターをホスト細胞に導入することによって得られる組換え細胞は、本発明によって提供される。例えば、CHO細胞または293細胞がホスト細胞として用いられる。
【0072】
(3) 医薬組成物、キット
第三の局面において、本発明は、医薬組成物および医薬組成物を含むキットを提供し、ここで、該医薬組成物は、ウイルス構造タンパク質および、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子; またはウイルス構造タンパク質および、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む核酸分子;および薬学的に許容される担体を含む。
【0073】
態様の一において、本発明は、医薬組成物または医薬組成物を含むキットを提供し、ここで、該医薬組成物は、上述のアルファウイルスまたはフラビウイルスのウイルス様粒子(例えばチクングニアウイルス様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子)または上述の核酸分子;および薬学的に許容される担体を含む。該アルファウイルスまたはフラビウイルス様粒子の含有量および核酸分子の含有量は、医薬組成物の0.00001〜1 w/w%であってよい。
【0074】
本発明の提供する粒子 (例えばCHIKV VLPまたはVEEV VLP) の用量は、1〜500μg/日であってよい。
【0075】
1つ以上のPD-1抗原またはPD-1リガンド抗原を、本発明で提供する1つの医薬組成物に用いてもよい。
【0076】
該医薬組成物は、さらにアジュバントを含んでいてもよい。アジュバントの例としては、Ribi solution (Sigma Adjuvant system, Sigma-Aldrich) が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明の提供する医薬組成物は、緩衝剤、例えばリン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素ナトリウムおよび塩化ナトリウム; および保存剤、例えばチメロサールを含んでいてよい。態様の一において、該医薬組成物は、0.001〜1 w/w%の、ウイルス構造タンパク質およびPD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子 (例えばCHIKV VLPまたはVEEV VLP)、1〜10w/w%の緩衝剤、0.01〜1w/w%のアジュバントおよび0.00001〜0.001 w/w%の保存剤を含む水溶液である。
【0077】
当業者は、慣用的な技術を用いて、本医薬組成物を作製し得る。例えば、ウイルス構造タンパク質および、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子 (例えばCHIKV VLPまたはVEEV VLP) を、生理学的なpH (例えばpH 5〜9、pH7) を有する緩衝溶液と混合して、本発明の提供する医薬組成物を作製する。
態様の一において、該医薬組成物は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を含む、ワクチンまたは免疫刺激薬である。例えば、本発明の提供するワクチン組成物を、免疫療法(例えばがんの処置)に用いてよい。
【0078】
態様の一において、該医薬組成物は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むDNAワクチンである。態様の一において、本発明の提供する該DNAワクチンは、CpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0079】
本発明の第三の局面で提供する医薬組成物は、1回以上投与してもよい。本発明の第三の局面で提供する医薬組成物を2回以上投与する場合、各投与に、異なる本発明の第一の局面で提供する粒子 (例えばCHIKV VLPまたはVEEV VLP) を用いてよい。態様の一において、本発明の第一の局面で提供するCHIKV VLPを用いた免疫化および、本発明の第一の局面で提供するVEEV VLPを用いた免疫化の組み合わせを用いる。例えば、本発明の第一の局面で提供するCHIKV VLPを1回目の免疫化に使用し、本発明の第一の局面で提供するVEEV VLPを2回目の免疫化に用いても、または、本発明の第一の局面で提供するVEEV VLPを1回目の免疫化に用い、本発明の第一の局面で提供するCHIKV VLPを2回目の免疫化に用いてよい。
【0080】
当業者は、本発明の提供する組成物またはワクチンを用いた免疫化のタイミングを決定し得る。例えば、2回目の免疫化は、1回目の免疫化の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10週後に行われる。
態様の一において、本発明は、
(a) 本発明の第一の局面で提供する粒子を含む医薬組成物;および
(b) 本発明の第一の局面で提供する粒子を含む他の医薬組成物
を含むキットを提供し、ここで、(a) に含まれる粒子は、(b) に含まれる粒子とは異なるウイルス様粒子である。この態様において、(a) に含まれる粒子は、チクングニアウイルス様粒子であってよく、(b) に含まれる粒子がベネズエラウマ脳炎ウイルスウイルス様粒子であってよい。
【0081】
態様の一において、本発明は、
(a) 本発明の第一の局面で提供する粒子を含む医薬組成物; および
(b) 本発明の第一の局面で提供する粒子を含む他の医薬組成物、
(c) 本発明の第一の局面で提供する粒子をそれぞれが含む、1つ以上の医薬組成物
を含むキットを提供し、ここで、(a) は免疫化を刺激するのに用いられ、(b) および (c) は免疫化の追加に使用され; (a) に含まれる粒子は、(b) に含まれる粒子とは異なるウイルス様粒子であり; (c) に含まれる粒子は、(a) および (b) に含まれる粒子とは異なるか、または (a) または (b) に含まれる粒子と同じである。
【0082】
上述のキットに含まれるそれぞれの医薬組成物は、同時、別または連続的に投与してよい。
【0083】
本発明の第一の局面で提供する、アルファウイルスまたはフラビウイルスのウイルス様粒子 (例えばチクングニアウイルスまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス) または本発明の第二の局面で提供する核酸分子は、本発明の第三の局面で提供する医薬組成物に使用し得る。
【0084】
例えば、
1つ以上 (例えば240) のチクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) のカプシド;
1つ以上 (例えば240) のチクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) のE1; および
1つ以上 (例えば240) のチクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) のE2
を含むか、またはこれらからなるチクングニアまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子であって、PD-1抗原が、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) のE2に挿入されているチクングニアまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子は、本発明の第三の局面で提供する組成物またはワクチンの作製に使用し得る。該抗原が挿入されるE2は、配列番号33〜36で表されるアミノ酸配列からなっていてよく; E1は配列番号37で表されるアミノ酸配列でなっていてよく; 該カプシドは、配列番号38で表されるアミノ酸配列でなっていてよいか; または
該抗原が挿入されるE2は、配列番号39〜42で表されるアミノ酸配列でなっていてよく; 該E1は、配列番号43で表されるアミノ酸配列でなっていてよく;該カプシドは、配列番号44で表されるアミノ酸配列でなっていてよい。
【0085】
(4) 本発明に記載する粒子等の使用
第四の局面において、本発明は、ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子; またはウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される抗原を含む粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む核酸分子の、がんまたは感染性疾患の処置または予防;哺乳動物(例えばヒト)におけるPD-1またはPD-1のリガンドに対する抗体の産生; 免疫応答の調節; 免疫刺激; PD-1とPD-1のリガンド間の相互作用の阻害; またはPD-1活性を阻害するための、医薬組成物またはキットの作製のための使用を提供する。がんまたは感染性疾患の処置または予防;哺乳動物(例えばヒト)における、PD-1またはPD-1のリガンドに対する抗体の産生;免疫応答の調節;PD-1とPD-1のリガンドの間の相互作用の阻害;またはPD-1活性を阻害する方法において使用するための、本明細書に記載の粒子、医薬組成物またはキットも提供される。
【0086】
該医薬組成物は哺乳動物(例えばヒト)に、筋肉内 (i.m.)、皮内 (i.e.)、皮下 (s.c)、真皮内 (i.d.) または腹腔内 (i.p.) に投与し得る。
態様の一において、該医薬組成物は、ワクチンであり、免疫療法(例えばがんの処置)に適用し得る。
【0087】
処置し得るがんの例としては、黒色腫、腎臓がん、前立腺がん、乳がん、結腸がんおよび非小細胞肺がんが挙げられるが、これらに限定されるものではない。該がんの他の例としては、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚性または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎腺がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性または急性白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、幼児期の固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱がん、腎臓または尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系 (CNS) の腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹がん、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、環境誘発性のがん、例えばアスベストにより誘発されるがんおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
処置し得る感染性疾患の例としては、HIV、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、肝炎ウイルス (A型、B型およびC型)、ヘルペスウイルス (例えばVZV、HSV-I、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス (cornovirus)、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスによる病原体感染症、クラミジア菌、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌およびコノコッカス (conococci)、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風菌、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症およびライム病菌による病原体感染症、カンジダ菌 (カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・トロピカリス等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス(アスペルギルス・フミガーツス、クロコウジカビ等)、ケカビ属 (Genus Mucorales) (ムコール属、アブシディア属、リゾプス属)、スポロトリックス・シェンキイ、ブラストミセス・デルマチチジス、南アメリカ分芽菌、コクシジオイデス・イミチスおよびヒストプラズマ・カプスラーツムによる病原体感染症ならびに寄生生物である、赤痢アメーバ、大腸バランチジウム、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ菌種、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム菌種、ニューモシスチス・カリニ、三日熱マラリア原虫、ネズミバベシア、ブルセイトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ドノバンリーシュマニア、トキソプラズマ原虫およびブラジル鉤虫による病原体感染症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1またはPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択された抗原を含む医薬組成物を哺乳類(例えばヒト)に投与すると、PD-1またはPD-1のリガンドに対する抗体が、該哺乳動物の血液中で産生される。産生された抗体は、免疫応答を調節するか;免疫刺激性の効果を示すか; PD-1とPD-1のリガンド(例えばPD-L1、PD-L2)間の相互作用を阻害するか;またはPD-1活性を阻害し得る。
【0090】
産生された抗体は、慣用される技術を用いてヒト化してよい。本発明の第一の局面で提供される粒子を用いて、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を作製し得る。態様の一において、本発明は、PD-1またはPD-1のリガンドに対する抗体の作製方法であって、本発明の第一の局面で提供する粒子を非ヒト哺乳動物に投与し、非ヒト哺乳動物が産生した抗体をヒト化することを含む、方法を提供する。
【0091】
本明細書中で用いる、「抗体」という語は、エピトープまたは抗原決定基に結合できる分子を指す。該用語は、抗体全体およびその抗原結合断片、例えば一本鎖抗体を含むことを意図する。該抗体は、ヒト抗原結合性抗体断片を含み、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、一本鎖Fvs (scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs (sdFv) およびVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。該抗体は、鳥および哺乳動物を含む任意の動物由来であってよい。好ましくは、抗体は、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダおよびウマ等、または他の適当な動物、例えばニワトリ由来であってよい。本明細書中で、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体または、例えば、米国特許第5,939,598号明細書 (その記載は、全体が参照により本明細書中に包含される) に記載されているように、1つ以上のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであり、内在性の免疫グロブリンを発現しない動物由来の抗体を含む。
【0092】
「PD-1活性」という語は、PD-1に関連する1つ以上の免疫調節性の活性を指す。例えば、PD-1は、TcR/CD28-介在性免疫応答の負の調節因子である。したがって、免疫応答の調節の例としては、例えば、TcR/CD28-介在性免疫応答の亢進が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0093】
態様の一において、本発明は、本発明の第一の局面において提供するチクングニアまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子の作製方法であって、該粒子を発現するように設計したベクターを作製すること; 該粒子を発現するように該ベクターを用いて遺伝子導入した細胞を培養すること;該粒子を回収することを含む、方法を提供する。この態様において、遺伝子導入は、慣用的な方法を用いて行い得る。遺伝子導入に用いる細胞は、293細胞であってもよい。VLPの回収は、細胞をベクターを用いて遺伝し導入した後の馴化培地を回収することを含んでいてよく、該馴化培地から超遠心分離法を用いてVLPを精製することをさらに含んでいてよい。
【0094】
以下の例示的な態様 (1)〜(35) は、本発明がさらに提供するものである:
(1) ウイルス構造タンパク質ならびに、PD-1由来の抗原およびPD-1のリガンド由来の抗原からなる群から選択される少なくとも1つの抗原を含む粒子;
(2) (1) に記載の粒子の誘導体である、粒子;
(3) 抗原が、PD-1、PD-L1またはPD-L2由来の抗原である、(1) または (2) 記載の粒子;
(4) 該粒子の動物への投与が、該抗原に対する抗体を誘発し、該抗体が、PD-1およびPD-L1の相互作用またはPD-1およびPD-L2の相互作用を遮断する、(1)〜(3) のいずれか記載の粒子;
(5) 該粒子がウイルス様粒子である、(1)〜(4) のいずれか記載の粒子;
(6) 該粒子が、アルファウイルスまたはフラビウイルス由来であるウイルス様粒子である、(1)〜(5) のいずれか記載の粒子;
(7) 該粒子がチクングニアウイルスまたはベネズエラウマ脳炎ウイルス由来のウイルス様粒子である、(1)〜(6) のいずれか記載の粒子;
(8) ウイルス構造タンパク質が少なくとも1つの第一付着部位を含み、少なくとも1つの抗原が少なくとも1つの第二付着部位を含み、該ウイルス構造タンパク質および該抗原が少なくとも1つの第一付着部位および少なくとも1つの第二付着部位を介して連結している、ウイルス様粒子である、(1)〜(7) のいずれか記載の粒子;
(9) 該ウイルス構造タンパク質が、カプシドおよび/またはエンベロープタンパク質E1およびE2を含む、(1)〜(8) のいずれか記載の粒子;
(10) 少なくとも1つのPD-1由来の抗原または少なくとも1つのPD-L1由来の抗原が、エンベロープタンパク質のE2に挿入されている、(9) 記載の粒子;
(11) 該ウイルス構造タンパク質が、チクングニアウイルス (CHIKV) またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 由来のタンパク質である、(1)〜(10) のいずれか記載の粒子;
(12) PD-1由来の抗原が挿入されている1つ以上のエンベロープタンパク質E2、1つ以上のエンベロープタンパク質E1および1つ以上のカプシドからなるチクングニアウイルス様粒子である粒子であって、PD-1由来の抗原が挿入されているエンベロープタンパク質E2が、配列番号33〜35で表されるアミノ酸配列からなり;エンベロープタンパク質E1が配列番号37で表されるアミノ酸配列からなり;該カプシドが配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる、(1)〜(11) のいずれか記載の粒子;
(13) PD-1由来の抗原が挿入されている1つ以上のエンベロープタンパク質E2、1つ以上のエンベロープタンパク質E1および1つ以上のカプシドからなるベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子である粒子であって、PD-1由来の抗原が挿入されているエンベロープタンパク質E2が配列番号39〜41で表されるアミノ酸配列からなり;該エンベロープタンパク質E1が配列番号43で表されるアミノ酸配列からなり; 該カプシドが配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる、(1)〜(11) のいずれか記載の粒子;
(14) PD-L1由来の抗原が挿入されている1つ以上のエンベロープタンパク質E2、1つ以上のエンベロープタンパク質E1および1つ以上のカプシドからなるチクングニアウイルス様粒子である粒子であって、PD-L1由来の抗原が挿入されているエンベロープタンパク質E2が配列番号36で表されるアミノ酸配列からなり;該エンベロープタンパク質E1が配列番号37で表されるアミノ酸配列からなり; 該カプシドが配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる、(1)〜(11) のいずれか記載の粒子;
(15) PD-L1由来の抗原が挿入されている1つ以上のエンベロープタンパク質E2、1つ以上のエンベロープタンパク質E1および1つ以上のカプシドからなるベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子である粒子であって、PD-L1由来の抗原が挿入されているエンベロープタンパク質E2が配列番号42で表されるアミノ酸配列からなり; 該エンベロープタンパク質E1が配列番号43で表されるアミノ酸配列からなり; 該カプシドが配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる、(1)〜(11) のいずれか記載の粒子;
(16) (1)〜(15) のいずれかに記載の粒子のアミノ酸配列と90%以上 (または95%以上) の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる粒子;
(17) (1)〜(16) のいずれかに記載の粒子を発現させるためのヌクレオチド配列を含む単離核酸分子;
(18) 配列番号27〜32のいずれかによって表されるヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列かなる単離核酸分子;
(19) 該核酸分子が配列番号27〜32のいずれかによって表されるヌクレオチド配列からなる、(18) 記載の核酸分子;
(20) (17)〜(19) のいずれかに記載の核酸分子を含むベクターであって、該核酸分子に操作可能に連結した発現調節配列を含んでいてよい、ベクター (例えば、配列番号45、46、47、48、49または50で表されるヌクレオチド配列からなるベクター);
(21) (a) (1)〜(16) のいずれか記載の粒子、(17)〜(19) のいずれか記載の核酸分子および/または (20) 記載のベクター; および
(b) 薬学的に許容される担体;
を含む、医薬組成物
(22) (1)〜(16) のいずれか記載の粒子および薬学的に許容される担体を含む、(21) 記載の医薬組成物(例えばワクチン)
(23) がんまたは感染性疾患の処置または予防;哺乳動物におけるPD-1またはPD-1リガンドに対する抗体産生;免疫応答の調節;免疫刺激;PD-1とPD-1のリガンド間の相互作用の阻害;またはPD-1活性を阻害するための医薬組成物またはキットの作製のための、(1)〜(16) のいずれか記載の粒子、(17)〜(19) のいずれか記載の核酸分子および/または (20) 記載のベクターの使用;
(24) 該医薬組成物が、PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を阻害するために投与される、(23) 記載の使用;
(25) 該がんが黒色腫、腎臓がん、前立腺がん、乳がん、結腸がんまたは非小細胞肺がんである、(23) または (24) 記載の使用;
(26) 該がんが、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚性または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎腺がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性または急性白血病、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、幼児期の固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱がん、腎臓または尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系 (CNS) の腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹がん、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、環境誘発性のがん、例えばアスベストにより誘発されるがんおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、(23) または(24) 記載の使用;
(27) 感染性疾患が、HIV、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、肝炎ウイルス (A型、B型およびC型)、ヘルペスウイルス (例えばVZV、HSV-I、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス (cornovirus)、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスによる病原体感染症、クラミジア菌、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌およびコノコッカス (conococci)、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風菌、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ症およびライム病菌による病原体感染症、カンジダ菌 (カンジダ・アルビカンス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・トロピカリス等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス(アスペルギルス・フミガーツス、クロコウジカビ等)、ケカビ目(Genus Mucorales) (ムコール属、アブシディア属、リゾプス属)、スポロトリックス・シェンキイ、ブラストミセス・デルマチチジス、南アメリカ分芽菌、コクシジオイデス・イミチスおよびヒストプラズマ・カプスラーツムによる病原体感染症ならびに寄生生物である、赤痢アメーバ、大腸バランチジウム、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ種、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム種、ニューモシスチス・カリニ、三日熱マラリア原虫、ネズミバベシア、ブルセイトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ドノバンリーシュマニア、トキソプラズマ原虫およびブラジル鉤虫による病原体感染症からなる群から選択される、(23) または (24) 記載の使用;
(28) (a) (1)〜(16) のいずれか記載の粒子を含む医薬組成物; および
(b) (1)〜(16) のいずれか記載の粒子を含む他の医薬組成物
を含むキットであって、(a) に含まれる粒子が、(b) に含まれる粒子と異なるウイルス様粒子である、キット;
(29) (a) に含まれる粒子がチクングニアウイルス様粒子であり、(b) に含まれる粒子がベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子であるか、または、(a) に含まれる粒子がベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子であり、(b) に含まれる粒子がチクングニアウイルス様粒子である、(28) 記載のキット;
(30) (c) (1)〜(16) のいずれかに記載の粒子をそれぞれが含む1つ以上の医薬組成物をさらに含むキットであって、(a) が免疫化の開始に用いられ、(b) および (c) が追加免疫に用いられ、(c) に含まれる粒子が、(a) および(b) に含まれる粒子と異なるか、または (a) または (b) に含まれる粒子と同じである、(28) または (29) 記載のキット;
(31) それぞれの医薬組成物が、同時、別または連続的に投与される、(28)〜(30)のいずれかに記載のキット;
(32) がんまたは感染性疾患の処置または予防;哺乳動物におけるPD-1またはPD-1リガンドに対する抗体産生;免疫応答の調節;免疫刺激;PD-1とPD-1のリガンド間の相互作用の阻害;またはPD-1活性を阻害する方法に用いるための、(1)〜(16) のいずれかに記載の粒子、(17)〜(20) のいずれかに記載の核酸分子、(20) に記載のベクター、(21) または (22) 記載の医薬組成物または (28)〜(31) のいずれか記載のキット;
(33) (25) または(26) に記載のがんから選択される、がんの処置または予防方法に用いるための、(1)〜(16) のいずれかに記載の粒子、(17)〜(20) のいずれかに記載の核酸分子、(20) に記載のベクター、(21) または (22) 記載の医薬組成物または (28)〜(31) のいずれか記載のキット;
(34) (27)に記載の感染性疾患から選択される感染性疾患の処置または予防方法に用いるための、(1)〜(16) のいずれかに記載の粒子、(17)〜(20) のいずれかに記載の核酸分子、(20) に記載のベクター、(21) または (22) 記載の医薬組成物または (28)〜(31) のいずれか記載のキット;
(35) チクングニアウイルス様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子の作製方法であって、該粒子を発現させるために、(20) に記載のベクターを用いて遺伝子導入した細胞を培養し、超遠心分離法を用いて該粒子を精製することを含む、方法。

【0095】
本発明は、以下の実施例により詳細に記述されるが、これは本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1: ウイルス構造タンパク質およびPD-1抗原の断片を含むチクングニアウイルス (CHIKV) 様粒子の作製
以下のPD-1のポリヌクレオチドを、VLP_CHI 532ベクター (配列番号25) に挿入するのに用いた。N末端リンカーはアミノ酸配列ではSGG (核酸配列ではTCCGGAGGA)であり、C末端リンカーは、アミノ酸配列ではGGS (核酸配列ではGGAGGATCC)である。
【0097】
1. VLP31 (PD-1 No.1配列): 抗原に用いた、PD-1断片付着リンカーの配列:
核酸配列
Tccggaggactaaactggtaccgcatgagccccagcaaccagacggacaagctggccgccttcggaggatcc (配列番号51)
アミノ酸配列
sgglnwyrmspsnqtdklaafggs (配列番号52)
2. VLP32 (PD-1 No.2配列): 抗原に用いた、PD-1断片付着リンカーの他の配列:
核酸配列
Tccggaggaatgctaaactggtaccgcatgagccccagcaaccagacggacaagctggccgccttctcaggaggatcc (配列番号53)
アミノ酸配列
sggmlnwyrmspsnqtdklaafsggs (配列番号54)
3. VLP33 (PD-1 No.3 配列): 抗原に用いたPD-1断片付着リンカーの他の配列:
核酸配列Tccggaggagtgctaaactggtaccgcatgagccccagcaaccagacggacaagctggccgccttccccggaggatcc (配列番号55)
アミノ酸配列
sggvlnwyrmspsnqtdklaafpggs (配列番号56)
【0098】
各ポリヌクレオチドを、配列番号2の第531番のSerをコードするコドンと第532番のAsnをコードするコドンの間に挿入し、PD-1由来の改変ペプチドがチクングニアウイルス構造タンパク質のE2に挿入されているチクングニアウイルス様粒子の発現用プラスミド(以降、VLP31_11、VLP32_11またはVLP33_11と称する)を構築した。
【0099】
293F細胞 (Lifetechnology)を、PEI (GE Healthcare) またはGeneX (ATCC)を用いてプラスミドで遺伝子導入した。該遺伝子導入の4日後、馴化培地を回収し、3000rpmで15分間遠心分離して、細胞から分離した。該上清を0.45μmフィルターを用いて濾過し、ウイルス様粒子を得た。該ウイルス様粒子は、TFFカラムを用いて濃縮し、QXLカラム(GE Healthcare) を用いて精製し、精製ウイルス様粒子を得た。
【0100】
チクングニアウイルス構造タンパク質に結合したVLP31、32または33を含むVLPの発現は、CHIKVに特異的な抗体 (ATCC: VR-1241AF)を用いたウェスタンブロッティングにより確認した。
【0101】
実施例2: ウイルス構造タンパク質およびPD-1抗原の断片を含むベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 様粒子の作製
実施例1で用いたのと同じPD-1のポリヌクレオチドを用いて、VLP_VEEV VLP 518 ベクター (配列番号26) に挿入した。N末端リンカーおよびC末端リンカーは実施例1と同じである。
【0102】
各ポリヌクレオチドを、配列番号3の第518番のSerをコードするコドンと第519番のSerをコードするコドンの間に挿入し、PD-1由来の改変ペプチドが、ベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質のE2に挿入されている、ベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子の発現用のプラスミド (以降、VLP31_21、VLP32_21またはVLP33_21と称する)を構築した。
【0103】
293F細胞を、実施例1と同様にプラスミドを用いて遺伝子導入した。ベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質に結合したVLP31、32または33を含むVLPの発現は、VEEVに特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングにより確認した。
【0104】
実施例3:ウイルス構造タンパク質およびPD-1抗原またはPD-L1抗原の断片を含む、チクングニアウイルス (CHIKV) 様粒子およびベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 様粒子の作製
以下のマウスPD-1およびマウスPD-L1のポリヌクレオチドを用いて、VLP_CHI 532ベクター (配列番号25) またはVLP_VEEV VLP 518ベクター (配列番号26) に挿入した。N末端リンカーは、アミノ酸配列ではSGG (核酸配列ではTCCGGAGGA) であり、C末端リンカーは、アミノ酸配列ではGGS (核酸配列ではGGAGGATCC) である。
1. VLP299 (マウスPD-L1配列): 抗原に用いた、マウスPD-L1ドメイン3S付着リンカー断片配列:
核酸配列
Tccggaggatgcatcatcagctacggcggagccgactacggaggatcc (配列番号57)
アミノ酸配列
SGG-ciisyggadyC-GGS (配列番号58)
2. VLP274 (マウスPD-1配列): 抗原に用いた、短いマウスPD-1ドメイン2付着リンカー断片配列:
核酸配列
Tccggaggaggcgccatcagcctgcaccccaaggccaagatcgaggaatctggaggatcc (配列番号59)
アミノ酸配列
SGG-gaislhpkakiees-GS (配列番号60)
3. VLP275 (マウスPD-1配列): 抗原に用いた、短いマウスPD-1ドメイン2付着リンカーの断片配列_v2:
核酸配列
Tccggaggatgtggcgccatcagcctgcaccccaaggccaagatcgaggaaggaggatcc (配列番号61)
アミノ酸配列
SGG-cgaislhpkakieeC-GGS (配列番号62)
【0105】
各ポリヌクレオチドを、配列番号2の第531番のSerをコードするコドンと第532番のAsnをコードするコドンの間に挿入し、PD-1由来の改変ペプチドまたはPD-L1由来の改変ペプチドが、チクングニアウイルス構造タンパク質のE2に挿入されている、チクングニアウイルス様粒子の発現用のプラスミド (以降、VLP299挿入ベクターについては、VLP299_15、VLP299_25; VLP274挿入ベクターについてはVLP274_11、VLP274_15; VLP275挿入ベクターについては、VLP275_11、VLP275_15と称する)を構築した。
【0106】
293F細胞に、実施例1と同様に、該プラスミドで遺伝子導入を行った。チクングニアウイルス構造タンパク質と結合したVLP299、274または275を含むVLPの発現は、CHIKVまたはVEEVに特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングにより確認した。
【0107】
実施例4: PD-1の免疫原性
マウスPD-1遺伝子にも見られる、以下のヒトPD-1のポリヌクレオチドを用いて、VLP_CHI 532ベクター (配列番号25) またはVLP_VEEV VLP 518ベクター (配列番号26) に挿入した。N末端リンカーはアミノ酸配列ではSGG (核酸配列ではTCCGGAGGA) であり、C末端リンカーはアミノ酸配列ではGGS (核酸配列ではGGAGGATCC) である。
核酸配列
Tccggaggactaaactggtaccgcatgagccccagcaaccagacggacaagctggccgccttcggaggatcc (配列番号51)
アミノ酸配列
SGGLNWYRMSPSNQTDKLAAFGGS (配列番号52)
【0108】
該ポリヌクレオチドを、配列番号2の第531番のSerをコードするコドンと第532番のAsnをコードするコドンの間に挿入し、PD-1由来の改変ペプチドが、チクングニアウイルス構造タンパク質のE2に挿入されている、チクングニアウイルス様粒子の発現用のプラスミド (以降、pCHIKV-hPD-1と称する) を構築した。また、該ポリヌクレオチドを、配列番号3の第518番のSerをコードするコドンと第519番のSerをコードするコドンの間に挿入し、PD-1由来の改変ペプチドが、ベネズエラウマ脳炎ウイルス構造タンパク質のE2に挿入されている、ベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子の発現用のプラスミド (以降、pVEEV-hPD-1と称する) を構築した。
【0109】
293F細胞 (Lifetechnology) に、PEI (GE Healthcare) またはGeneX (ATCC) を用いて該プラスミドで遺伝子導入を行った。該遺伝子導入の4日後、馴化培地を回収し、3000rpmで15分間遠心分離し、細胞から分離した。該上清を0.45μm フィルターを用いて濾過し、ウイルス様粒子を得た。該ウイルス様粒子をTFFカラムを用いて濃縮し、QXLカラム (GE Healthcare) を用いて精製し、精製ウイルス様粒子を得た。該精製ウイルス様粒子をさらに、スピンカラム (分子量カットオフ: 100kDa) を用いて濃縮し、免疫化用のウイルス様粒子を調製した (CHIKV-hPD-1およびVEEV-hPD-1)。
【0110】
マウス (4週齢、雄) を、Ribiアジュバントとともに筋肉内注射することにより、VEEV-hPD-1で0週目および8週目の2回免疫化し (マウス1匹あたりVLP 20μg)、4週目に1回、CHIKV-hPD-1でRibiアジュバント (Sigma Adjuvant system, Sigma-Aldrich) とともに筋肉内注射することにより免疫化した (マウス1匹あたりVLP 20μg)。1回目の免疫化から10週間後に採血を行った。
【0111】
96ウェルELISAプレートを、1ウェルあたりPBS 100μl中のPD-1の組換えN末端断片 (1〜167aa)またはPD-1-Fc結合体 50ngでコートした。2時間インキュベーションした後、プレートを0.05% Tween-20を含むTBS緩衝液で3回洗浄し、0.05% Tween-20および5%粉乳を含むTBS緩衝液でブロッキングした。熱失活したマウス由来の希釈血清を、該ブロッキング緩衝液に添加し、室温で1時間インキュベーションした。3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを1:4000希釈で添加し、1時間室温でインキュベーションした。3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質を、発色用に添加し、10分間インキュベーションして、2N H2SO4を添加して発色を停止させた。データをGen5 (BioTek)およびGraphPad Prism6 (GraphPad software Inc)を用いて解析した。
【0112】
免疫原性を図1および2に示す。図1および2に示すように、CHIKV-PD-1およびVEEV-PD-1で免疫化したマウスの血清中では、PD-1に対する抗体の誘発が見られた。
【0113】
実施例5: ウイルス構造タンパク質およびPD-1抗原の断片を含むチクングニアウイルス (CHIKV)様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 様粒子を含む医薬組成物の作製
ウイルス構造タンパク質およびPD-1抗原の断片を含むチクングニアウイルス (CHIKV) 様粒子およびウイルス構造タンパク質およびPD-1抗原の断片を含むベネズエラウマ脳炎ウイルス (VEEV) 様粒子を実施例4にしたがって作製した。ワクチン組成物である医薬組成物の作製のために、作製した粒子80μgをそれぞれ、リン酸スクロース溶液 pH 7.2、エンドトキシン不含有 (Teknova, SP buffer) 1mlと混合した。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]